サンダーバード1
数年前のことを思い出していた。私はその時からずっと、この東の町で過ごしている。
この町には時折どこからともなく人がやってくる。流れ者の町だ。国はずれの小さな町。
見るものと言えば、今私が住まわせてもらっている、託児所兼孤児院兼病院と化している大きな教会ぐらい。大きなステンドグラスが太陽の光を浴びて救いを求めるものを妖しく美しく照らす、この町の中心。しかし管理をしているのはダークプリーストだ。
今日は町を回る日だ。午前のうちにおおよそ向かう予定だったところは回りきった。少し疲れたので、町はずれの原っぱにある大きな石の一つに腰掛ける。
魔方陣を書いて、とばされた場所がここでよかったとつくづく思う。ここは流れ者を深く詮索もせず受け入れてくれる。
「あ、せんせーこんにちは」
男の子が話しかけてきた。教会で生活している子だ。
「やあこんにちは、ルカ」
ルカはにこにこしている。
「せんせーは今日はサボり?」
子供は直球勝負だ。
「いや、今日はみんなのおうちに行って仕事する日なんだ。今は休憩中」
「ふーん。せんせー今度いつ勉強教えてもらえる?」
「うーん、最近は忙しいからなあ。でもまあ、近いうちにな」
「ホント? 絶対来てね」
この世界に来てすぐは、こんな仕事をしていて子供になつかれるのは何とも不思議な感覚だった。同じ仕事でも、技術によって扱いが変わる。
その時、強烈な爆音と同時に、突然視界が真っ白になった。
原っぱに焼け焦げた円形の空間が出来ている。そして中心には少女が一人横たわっている。
ルカは私にすがり付いている。
「ルカ、大丈夫。ここにいなさい」
私はルカを石に座らせ、少女の元に走った。
危険かもしれない。だがそんなことは問題じゃあなかった。
少女の手はハーピィのように羽を生やしている。魔物だ。しかし、基本的な体系は人に近い。
脈をみようと首に手をやると、静電気のような痛みが私に走った。おそらくこの子の力だろう。
まだ脈はある。しかし、
「ルカ、町に行って大人を呼んできてくれ、急患だ」
ルカは一度うなずいて町に向かって
「だれかー急患だよー急患だー」
叫びながら走って行った。
見慣れない天井。顔を横に向けると、男の子が一人。
「あ、起きた! せんせー! 起きたよー!」
男の子はボクの顔を見ると何か声を張り上げながら走って出て行った。
しばらくするとさっきの男の子と男の人がやってきた。
「やあ遅くなってすまない。気が付いたか。よかったよかった」
男の人はほっとしたという様子だ。
「あの、ここはどこでしょうか」
とりあえずそれを聞く。
「ここは東の町の教会だよ。君は町はずれで倒れていたんだ」
知らない町だ。ずいぶんと遠くに来てしまったらしい。
不意に、右腕に痛みが走る。
右腕には包帯が巻かれていた。
一気に血の気が引く。
「あの、これは」
男の人はバツが悪そうに話す。
「あー、いいか、落ち着いて聞いてくれ」
聞きたくない。
「キミの右翼は、いま折れている」
やはりそうだった。
ああ、ボクは失敗したんだ。
目の前がゆがんでいく。力がうまく制御できなくなっていくのがわかる。
「お、落ち着きなさい」
男の人の声が聞こえる。
「ボクみたいな魔物の翼が折れたらどうなるか知ってますか? 骨はつながったとしても、今までのようには飛べなくなるんです」
稲妻が制御できない。
「もしかしたら、二度と飛べなくなるかも」
「もう、二度と故郷には戻れない」
稲妻が目に見えてきた。バチバチと音がする。
急に男の子がボクに抱き着いてきた。体に痛みが走る。
「っつっ!」
「ルカ、危ないからやめなさい!」
男の人があわてた様子でボクからルカと呼ばれた子を引きはがそうとする。
「やだ!僕は男だ!」
よくわからないことを言って、ルカはボクを離れようとしない。
いつの間にかボクが放っていた稲妻は止んでしまった。
「ここに住めばいいよ、ねえ、ここで一緒に住もうよ」
ルカはボクに話しかけ、ボクの体をゆさゆさを揺らす。痛い。
「ちょっと、ごめん、痛い」
「あ……、ごめんなさい……」
ルカはボクから離れた。
男の人が頭を掻きながら話し始める。
「……あーまあ、順番に話していこうか。とにかく、翼は、時間がかかるが治せる。また今までのように飛べる」
「本当ですか」
「私は医者だ。とある理由で一応この世界では誰よりも生き物の構造に詳しい。はず」
凄い自信だ。
「勇者様が使う、大けがを一瞬で治すようなとんでもない治癒術が使えるわけじゃあないが、骨折を適切に治すことはできる。もう30人以上また飛べるようにしてきた」
……よかった。
「ただまあ、さっき言ったように、時間はかかる。そのあいだ、この教会で生活してもらうことになるかな。いいですよね? シスター?」
男の人は隣にいたシスターに話しかける。……いつの間にいたのだろう?
「もちろんです。ずっといてもらって構いませんよ」
笑顔でシスターはそう話す。
「……ありがとうございます」
ふうと男の人は息を吐く。
「そういってもらえてよかった。ついでと言ってはなんだが、そのあいだ、シスターに魔力の扱い方を教えてもらいなさい」
「……ふふふ、久しぶりの教え子だわ。楽しくなりそうね。ふふふふふ」
なんだかシスターの笑みが不気味だった。
「ああそうだ、君、名前は?」
男の人がボクに聞いてくる。
「サヤです」
「サヤか。私は井上青一。井上先生と呼んでくれ」
聞きなれない名前だ。
「せんせーのことはせんせーでいいよ。ボクはルカ」
「私はマリアです。そうね、せっかくだから師匠と呼んでください。ふふふ」
なぜだろう、保護者たるはずのシスターが一番妖しい。
しかしまあ、とりあえず、
「よろしくお願いします」
ボクはこの教会にお世話になることになった。
「サヤお姉ちゃんってなんて魔物なの?」
ルカが私に質問する。
「サンダーバード。雷を使えるとっても珍しい種族です」
「それってすごいの?」
「凄いんです」
「へー。よくわかんないや、はい、あーん」
教会で過ごすことが決まった日の夜、ボクはルカに食事の世話をしてもらっていた。
「君は右利きだろ?治るまでルカに世話をしてもらいなさい」
イノウエ先生がそう提案してきたのだ。ボクは流石に断ったが、
「やるやる! やらせて!」
ルカ本人がそういうので、ついつい乗せられてしまった。
「右腕だけじゃなくて、そこらじゅう傷だらけだから、動くだけで痛いでしょ? じっとしてていいから」
ルカはそう言って食事をすくったスプーンを差し出す。
ボクのケガは最初に感じていた以上にひどいものだった。
イノウエ先生の診断はこうだった。
「右、尺骨っていうべきかな? まあとにかく右翼。さらに左足脛骨腓骨、左手は親指以外の指の骨折。それに加えて骨折部位周辺筋肉の断裂。全身に擦り傷と軽いやけど、首はおそらく捻挫かな。シスターに治癒術はかけてもらうけど、それでも全治は1か月以上かかると思ってくれ」
……正直、とにかくひどいということしかわからない。
「ごめんなさいね、私も治癒術が専門じゃないから……」
マリアさんはそういって済まなそうな顔をするが、手厚く世話をしてもらえるだけで十分ありがたかった。
「明日になったら、僕が町を案内してあげる」
食事が終わってからもルカは話し続ける。
「マリア様が案内してあげなさいって、えーと、そのついでに図書館で雷の魔法に関する本を借りてきなさいとも言ってたかな」
マリアさんがボクの魔力制御を教えるというのは本当なのだろうか。
「マリアさんってどんな人?」
ボクはルカに尋ねる。
「マリア様も魔物だよ。ダークプリーストなんだって」
……通りで妖しい雰囲気なわけだ。
「とっても優しいんだ。魔法もすごいよ。この広い教会を一人で管理してるんだ。……でも怒らせちゃダメだよ。この前トモがいたずらしててうっかり花瓶を割ったときはね」
「ルカ、あんまり余計なことまで言っちゃいけませんよ」
いきなりルカの後ろにマリアさんが現れた。……またいつの間に現れたのだろう。
「あっ、ごめんなさい!」
ルカはあわててマリアさんに謝った。
「ふふふ、さあルカ、もう遅いから寝なさい。明日サヤちゃんを町に案内するんでしょ。早起きしなくちゃね」
マリアさんはルカの頭をなでながら言う。
「はーい。サヤお姉ちゃん、マリア様、おやすみなさい」
ぺこりと頭を一度下げ、ルカは部屋を勢いよく駆け出して行った。
「ふふ、歳の割に幼いですけど、とっても賢くていい子なんですよ」
マリアさんは笑顔でルカを見送る。
「ここで過ごしている子の中でも一番優秀なんですよ。何にでも興味を持ってくれて」
「そう、なんですか」
「ええ、イノウエの話なんてもしかしたら私よりも理解できているかも」
「はあ」
「ふふふ、さて、私はサヤに治癒術をかけるために来たわけですが、その前に、してあげたほうがいいことがありそうね。サヤ、あなた昼からずっと我慢していたでしょう?」
「あ……///」
ばれている。
「ふふ、恥ずかしがることなんてないわ、今ここには私とあなただけ」
そういってマリアさんは小ぶりな妙な形状の入れ物をボクに見せる。
「腕を使えないのだから、しょうがないわ。観念しなさい」
右手も左手も包帯でぐるぐる巻き。どうしようもない。
「……はい///」
「ふふふ、いい子ね。これからはしたくなったら我慢せずに私を呼びなさい」
マリアさんはそういいながら、ボクの着ていたショートパンツとショーツをゆっくりと下ろす。秘部が風を受けて、我慢が効かなくなってくる。
「ふふ、綺麗ね」
マリアさんはじっとボクのアソコを見つめるばかり。
「……あ、あの、早くしてください///」
顔がどうしようもなく赤くなってくるのが自分でわかる。
「ふふふ、わかってるわ」
そういってマリアさんは入れ物をボクのアソコに当てる。
「大きい方は大丈夫?」
「……大丈夫ですっ///」
「そう、したくなったら言ってね。はい、出して大丈夫よ」
意を決してボクは下腹部に力を込めた。
治療も終えた後、マリアさんは私にペンダントをくれた。
「これから先は私を呼びたくなったらそれに魔力を込めなさい。どこにいても、遅くても30分で駆けつけるわ」
「……はい」
「……ふふふ、見られながらおしっこするのは初めてだった?」
はっきり言われると改めて恥ずかしくなってくる。
「ふふ、ごめんなさい、ちょっといじめすぎちゃったわね。でもしばらくは我慢してもらうしかないわ。大丈夫よ、じき慣れるわ」
まったく、とんでもない一日だった。
でも、教会の人はみんないい人でよかった。……マリアさんはちょっと苦手だけど。
明日はルカが町を案内してくれるという。楽しみだ。
体じゅう痛みがあるが、何とかボクは眠りについた。
この町には時折どこからともなく人がやってくる。流れ者の町だ。国はずれの小さな町。
見るものと言えば、今私が住まわせてもらっている、託児所兼孤児院兼病院と化している大きな教会ぐらい。大きなステンドグラスが太陽の光を浴びて救いを求めるものを妖しく美しく照らす、この町の中心。しかし管理をしているのはダークプリーストだ。
今日は町を回る日だ。午前のうちにおおよそ向かう予定だったところは回りきった。少し疲れたので、町はずれの原っぱにある大きな石の一つに腰掛ける。
魔方陣を書いて、とばされた場所がここでよかったとつくづく思う。ここは流れ者を深く詮索もせず受け入れてくれる。
「あ、せんせーこんにちは」
男の子が話しかけてきた。教会で生活している子だ。
「やあこんにちは、ルカ」
ルカはにこにこしている。
「せんせーは今日はサボり?」
子供は直球勝負だ。
「いや、今日はみんなのおうちに行って仕事する日なんだ。今は休憩中」
「ふーん。せんせー今度いつ勉強教えてもらえる?」
「うーん、最近は忙しいからなあ。でもまあ、近いうちにな」
「ホント? 絶対来てね」
この世界に来てすぐは、こんな仕事をしていて子供になつかれるのは何とも不思議な感覚だった。同じ仕事でも、技術によって扱いが変わる。
その時、強烈な爆音と同時に、突然視界が真っ白になった。
原っぱに焼け焦げた円形の空間が出来ている。そして中心には少女が一人横たわっている。
ルカは私にすがり付いている。
「ルカ、大丈夫。ここにいなさい」
私はルカを石に座らせ、少女の元に走った。
危険かもしれない。だがそんなことは問題じゃあなかった。
少女の手はハーピィのように羽を生やしている。魔物だ。しかし、基本的な体系は人に近い。
脈をみようと首に手をやると、静電気のような痛みが私に走った。おそらくこの子の力だろう。
まだ脈はある。しかし、
「ルカ、町に行って大人を呼んできてくれ、急患だ」
ルカは一度うなずいて町に向かって
「だれかー急患だよー急患だー」
叫びながら走って行った。
見慣れない天井。顔を横に向けると、男の子が一人。
「あ、起きた! せんせー! 起きたよー!」
男の子はボクの顔を見ると何か声を張り上げながら走って出て行った。
しばらくするとさっきの男の子と男の人がやってきた。
「やあ遅くなってすまない。気が付いたか。よかったよかった」
男の人はほっとしたという様子だ。
「あの、ここはどこでしょうか」
とりあえずそれを聞く。
「ここは東の町の教会だよ。君は町はずれで倒れていたんだ」
知らない町だ。ずいぶんと遠くに来てしまったらしい。
不意に、右腕に痛みが走る。
右腕には包帯が巻かれていた。
一気に血の気が引く。
「あの、これは」
男の人はバツが悪そうに話す。
「あー、いいか、落ち着いて聞いてくれ」
聞きたくない。
「キミの右翼は、いま折れている」
やはりそうだった。
ああ、ボクは失敗したんだ。
目の前がゆがんでいく。力がうまく制御できなくなっていくのがわかる。
「お、落ち着きなさい」
男の人の声が聞こえる。
「ボクみたいな魔物の翼が折れたらどうなるか知ってますか? 骨はつながったとしても、今までのようには飛べなくなるんです」
稲妻が制御できない。
「もしかしたら、二度と飛べなくなるかも」
「もう、二度と故郷には戻れない」
稲妻が目に見えてきた。バチバチと音がする。
急に男の子がボクに抱き着いてきた。体に痛みが走る。
「っつっ!」
「ルカ、危ないからやめなさい!」
男の人があわてた様子でボクからルカと呼ばれた子を引きはがそうとする。
「やだ!僕は男だ!」
よくわからないことを言って、ルカはボクを離れようとしない。
いつの間にかボクが放っていた稲妻は止んでしまった。
「ここに住めばいいよ、ねえ、ここで一緒に住もうよ」
ルカはボクに話しかけ、ボクの体をゆさゆさを揺らす。痛い。
「ちょっと、ごめん、痛い」
「あ……、ごめんなさい……」
ルカはボクから離れた。
男の人が頭を掻きながら話し始める。
「……あーまあ、順番に話していこうか。とにかく、翼は、時間がかかるが治せる。また今までのように飛べる」
「本当ですか」
「私は医者だ。とある理由で一応この世界では誰よりも生き物の構造に詳しい。はず」
凄い自信だ。
「勇者様が使う、大けがを一瞬で治すようなとんでもない治癒術が使えるわけじゃあないが、骨折を適切に治すことはできる。もう30人以上また飛べるようにしてきた」
……よかった。
「ただまあ、さっき言ったように、時間はかかる。そのあいだ、この教会で生活してもらうことになるかな。いいですよね? シスター?」
男の人は隣にいたシスターに話しかける。……いつの間にいたのだろう?
「もちろんです。ずっといてもらって構いませんよ」
笑顔でシスターはそう話す。
「……ありがとうございます」
ふうと男の人は息を吐く。
「そういってもらえてよかった。ついでと言ってはなんだが、そのあいだ、シスターに魔力の扱い方を教えてもらいなさい」
「……ふふふ、久しぶりの教え子だわ。楽しくなりそうね。ふふふふふ」
なんだかシスターの笑みが不気味だった。
「ああそうだ、君、名前は?」
男の人がボクに聞いてくる。
「サヤです」
「サヤか。私は井上青一。井上先生と呼んでくれ」
聞きなれない名前だ。
「せんせーのことはせんせーでいいよ。ボクはルカ」
「私はマリアです。そうね、せっかくだから師匠と呼んでください。ふふふ」
なぜだろう、保護者たるはずのシスターが一番妖しい。
しかしまあ、とりあえず、
「よろしくお願いします」
ボクはこの教会にお世話になることになった。
「サヤお姉ちゃんってなんて魔物なの?」
ルカが私に質問する。
「サンダーバード。雷を使えるとっても珍しい種族です」
「それってすごいの?」
「凄いんです」
「へー。よくわかんないや、はい、あーん」
教会で過ごすことが決まった日の夜、ボクはルカに食事の世話をしてもらっていた。
「君は右利きだろ?治るまでルカに世話をしてもらいなさい」
イノウエ先生がそう提案してきたのだ。ボクは流石に断ったが、
「やるやる! やらせて!」
ルカ本人がそういうので、ついつい乗せられてしまった。
「右腕だけじゃなくて、そこらじゅう傷だらけだから、動くだけで痛いでしょ? じっとしてていいから」
ルカはそう言って食事をすくったスプーンを差し出す。
ボクのケガは最初に感じていた以上にひどいものだった。
イノウエ先生の診断はこうだった。
「右、尺骨っていうべきかな? まあとにかく右翼。さらに左足脛骨腓骨、左手は親指以外の指の骨折。それに加えて骨折部位周辺筋肉の断裂。全身に擦り傷と軽いやけど、首はおそらく捻挫かな。シスターに治癒術はかけてもらうけど、それでも全治は1か月以上かかると思ってくれ」
……正直、とにかくひどいということしかわからない。
「ごめんなさいね、私も治癒術が専門じゃないから……」
マリアさんはそういって済まなそうな顔をするが、手厚く世話をしてもらえるだけで十分ありがたかった。
「明日になったら、僕が町を案内してあげる」
食事が終わってからもルカは話し続ける。
「マリア様が案内してあげなさいって、えーと、そのついでに図書館で雷の魔法に関する本を借りてきなさいとも言ってたかな」
マリアさんがボクの魔力制御を教えるというのは本当なのだろうか。
「マリアさんってどんな人?」
ボクはルカに尋ねる。
「マリア様も魔物だよ。ダークプリーストなんだって」
……通りで妖しい雰囲気なわけだ。
「とっても優しいんだ。魔法もすごいよ。この広い教会を一人で管理してるんだ。……でも怒らせちゃダメだよ。この前トモがいたずらしててうっかり花瓶を割ったときはね」
「ルカ、あんまり余計なことまで言っちゃいけませんよ」
いきなりルカの後ろにマリアさんが現れた。……またいつの間に現れたのだろう。
「あっ、ごめんなさい!」
ルカはあわててマリアさんに謝った。
「ふふふ、さあルカ、もう遅いから寝なさい。明日サヤちゃんを町に案内するんでしょ。早起きしなくちゃね」
マリアさんはルカの頭をなでながら言う。
「はーい。サヤお姉ちゃん、マリア様、おやすみなさい」
ぺこりと頭を一度下げ、ルカは部屋を勢いよく駆け出して行った。
「ふふ、歳の割に幼いですけど、とっても賢くていい子なんですよ」
マリアさんは笑顔でルカを見送る。
「ここで過ごしている子の中でも一番優秀なんですよ。何にでも興味を持ってくれて」
「そう、なんですか」
「ええ、イノウエの話なんてもしかしたら私よりも理解できているかも」
「はあ」
「ふふふ、さて、私はサヤに治癒術をかけるために来たわけですが、その前に、してあげたほうがいいことがありそうね。サヤ、あなた昼からずっと我慢していたでしょう?」
「あ……///」
ばれている。
「ふふ、恥ずかしがることなんてないわ、今ここには私とあなただけ」
そういってマリアさんは小ぶりな妙な形状の入れ物をボクに見せる。
「腕を使えないのだから、しょうがないわ。観念しなさい」
右手も左手も包帯でぐるぐる巻き。どうしようもない。
「……はい///」
「ふふふ、いい子ね。これからはしたくなったら我慢せずに私を呼びなさい」
マリアさんはそういいながら、ボクの着ていたショートパンツとショーツをゆっくりと下ろす。秘部が風を受けて、我慢が効かなくなってくる。
「ふふ、綺麗ね」
マリアさんはじっとボクのアソコを見つめるばかり。
「……あ、あの、早くしてください///」
顔がどうしようもなく赤くなってくるのが自分でわかる。
「ふふふ、わかってるわ」
そういってマリアさんは入れ物をボクのアソコに当てる。
「大きい方は大丈夫?」
「……大丈夫ですっ///」
「そう、したくなったら言ってね。はい、出して大丈夫よ」
意を決してボクは下腹部に力を込めた。
治療も終えた後、マリアさんは私にペンダントをくれた。
「これから先は私を呼びたくなったらそれに魔力を込めなさい。どこにいても、遅くても30分で駆けつけるわ」
「……はい」
「……ふふふ、見られながらおしっこするのは初めてだった?」
はっきり言われると改めて恥ずかしくなってくる。
「ふふ、ごめんなさい、ちょっといじめすぎちゃったわね。でもしばらくは我慢してもらうしかないわ。大丈夫よ、じき慣れるわ」
まったく、とんでもない一日だった。
でも、教会の人はみんないい人でよかった。……マリアさんはちょっと苦手だけど。
明日はルカが町を案内してくれるという。楽しみだ。
体じゅう痛みがあるが、何とかボクは眠りについた。
15/01/21 16:02更新 / 辰野
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