読切小説
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ドッペルゲンガー「変身が出来ないんです」
 魔物用クリニック

「変身が出来ないんです」

「ほうほう、変身ができない、ですか」

「はい。何度も試してみたんですけど、変身したつもりでも、まったく姿が変わらないんです」

「今の姿のまま、だと?」

「はい」

「ふむ。思い当たる原因は?」

「いえ、特に……」

「相手に正体がばれた覚えは?」

「……面と向かって会ってないです」

「じゃあばれるも何もないわけか」

「はい……」

「魔力が不足してるわけでもなさそうね」

「はあ……」

「ところで、ターゲットは誰なの?」

「え……?」

「貴方が惚れた相手」

「ほ、惚れたって……あうう///」



 町のどこか

「でな、あいつときたら」

「やめろ、独り身の俺を憤死させる気か」

「だって、誰かに聞いてほしいんだよ、あいつの可愛さ」

「はいはい、幸せで何よりだね全く、俺は死にたいよ」



 クリニック

「へー、その名前、聞いたことくらいはあるわね。聞いたことあるだけだけど」

「は、はあ……」

「で、そいつのどこに惚れたわけ?」

「さ、最初は、か、かっこいい人だなーって、それだけで……」

「へぇ、ひとめぼれ?」

「ひ、ひとめぼれって、そこまでじゃ……、ただ、ちょっと気になっただけで」

「はいはい、で?」

「な、何してる人かなーって、ちょっと、眺めてて」

「仕事ぶりを?」

「は、はい、そ、その様子が……」

「すごくかっこよかったと?」

「……はうう///」

「っかー。いいねー甘酸っぱいねー」



 町のどこか

「そういや、お前の奥さんって、なんて種族だったっけ?」

「ホルスタウロスだ」

「おっぱい星人」

「何を言う、俺はあいつの内面に惚れたんだ。のんびりしてるあいつはほんとにかわいいんだ。思わず抱きしめたくなる」

「で、胸の感触を楽しむんだろ」

「……まあそこは否定できんな」

「ほら見ろ」

「だがな、実はな、いざというときは、あいつしっかりしてるんだ。俺なんかよりはるかに」

「で、そのギャップが」

「正直、たまりません」

「殴る」

「いてえな。何する」

「独り身の男たちを代表したまでだ。受け取っとけ」



 クリニック

「それから、その人は……」

「待った。そいつがかっこよくて性格もよし。非の打ちどころがなくて、あんたはそいつにメロメロなのは、よくわかった。もてそうだねーそいつ。……ああ、だからそんなにあんたはあせってるわけか」

「あ……、あうう///」


 町のどこか

「ああ、独り身はつらい」

「まあ、俺に限らず、おおっぴらにいちゃいちゃするやつばっかりだからなあこの町は」

「一人で町を歩くだけで敗北感を感じなきゃならんなんて、この世界は変だ」

「だったらお前も結婚すればいいじゃないか。先週も交際を迫られたんじゃなかったか?」

「交際じゃない、本物の交わりだ」

「いきなり襲われたのか」

「おう。で、撃退した」

「なんだそりゃ、もったいないな」

「俺はそういう奴好きじゃないんだよ」



 クリニック

「しっかし、相手にばれてもいないのに、変身が出来なくなるなんて、聞いたことないわね」

「は、はあ」

「まーとりあえず、症例がないか調べておくわ。今私ができるのは、申し訳ないけどそれだけね」

「……うう」

「大丈夫よ。あなたそのままでもかわいらしい姿してるじゃない」

「……そんなこと言われても」

「とにかく、何か変化があればまた連絡頂戴。こっちも何かいい手が見つかったら連絡するわ」

「よ、よろしくお願いします」



 町のどこか

「じゃあお前はどんな奴が好きなんだ」

「あれ、言ってなかったか?」

「なんだかんだで聞いてないな」

「なんていうかな、小さいやつ?」

「……うわー」

「いや、そういう意味じゃない。なんていうかな、ちょっと自分に自信が持てないような奴だ」

「引っ込み思案ってことか?」

「そんな感じかな。で、ちょっとしたことで照れるような感じで、お前とは違う意味で抱きしめたくなるような感じ?」

「あー、俺は甘える感じだけど、お前は甘えさせてあげる感じか」

「そう、それだな」

「ふーん、なるほどね。確かにかわいいかもね」

「だろ、だろ?」

「ま、しっかり者のお前にはいいんじゃないの?」

「ま、魔物だらけのこの町じゃそんなやついないけどな」

「いや、どこかにはいるんじゃないか? ほら、ちょうどそこのクリニックから出てきた奴なんかそれっぽいぞ」


12/11/15 01:28更新 / 辰野

■作者メッセージ
ふらっと思いついてふらっと書きました。

初投稿でいきなり訳のわからないもの書いてすいませんでした。

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