連載小説
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3夜目
 ああ、待っていたよ。最近は君が来るのが私の人生の中でも3本の指に入るくらいには楽しみでね、君のように私の下らない話を辛抱強く聞いてくれる人に出会えて本当に嬉しいよ。そうそう、これは独り言なのだけれども「閲覧回数1000回突破ありがとう」。
 さてと、今日も私の下らない前座から入ろうと思ったのだけれども・・・何か言いたそうだね?君と私の仲なのだから遠慮せずに言って欲しいのだが?







・・・ふむ、つまり君はこう言いたいわけかな?「最近身の回りに変わったことは無いですか?」と。それが一体どの様な意図の質問かはさっぱり解らないのだが、私の記憶にあるだけの事は話そうか・・・。

 私が京都に下宿している大学生である事はまだ言ってなかったね。京都での下宿を始めたのは丁度魔物娘が世の中に出始める4か月前程だった気がするよ。
 比較的新しく安い小さなアパートが大学の近くに見つかってね、これは貧乏学生には願ったりも無い物件だったのだが・・・ほら、こういった物件は何か曰くつきの物が多いだろう?だからこそ大家さんに話を聞きに行ったのだが、これが又美人でね。
 本人は「28歳の叔母さんだよ。」なんて謙遜していたけれども肌のハリツヤを見ただけでも新成人に負け劣らない美しさでね、説明を受けてる最中に少しドギマギしてしまったよ。
 それで、肝心のマンションなのだがどうやら大家さん自身が近くの大学の大学生だったらしくてその恩返しと学生の援助の為に格安で提供していてくれたらしい。まぁなんとも泣ける話だね、現代日本だと金の亡者が多い中から余計に美談らしく思うね。・・・ただ、妙なルールが幾つか存在してね折角だから書き出してみようか。
 
@ 夜間の騒音は気にしないでも構わない事。
A やむを得ず無断で契約を切るときは部屋の鍵を握りながら念じる事。
B トラブルが起きてどうしようもなくなった時は部屋の中で祈る事。
C 鍵を粗雑に扱わない事。(程度に因れば厳罰に処す)
D 週に1度は鍵を大家に戻すこと。
E 決して何があっても鍵のかかった東の物置だけは開けない事。

夜間の騒音は普通は嫌がるだろうしわざわざ許可する意味が解らない、やたらと祈ったり念じたりと精神論に頼る手法が多いのも不思議だね、私は宇宙人で無いからテレパシーは使えないのに契約解除をどうやって判断するのだろうね?
 まぁただ4,5番はいたって普通だろうか、大家なら鍵を壊されるのは困るだろうし定期的なチェックも恐らくは紛失を防ぐために大切な事なのだろう。
 6番はもうホラーとかではお馴染みの約束だね、尤も私は被害者にはなりたくないから開けることは無いとは思うが・・・。一応大家さんに物置の事を聞いてみたのだがにっこり笑ってはぐらかされてしまってね、これは本格的にダメなやつだと思って私はどんな状況になっても開けない事を決意したよ。
 
一応、これが私の住んでいるアパートの説明だね。で、妙な事かどうかは解らないのだけれどもこのアパートは確かに困ったことがあればそれとなく解決する事が多いんだ。例えば不注意で食器を割ってしまった事があるのだけれど、次の朝になったら割れた食器とそっくりの食器・・・あれはもう全く同じと言っても良いかもしれないけれども、そんな物が差出人不明で届いたりしたことがあったね。
 

後は・・・そうだな、度々私が君以外の「たった一人の友人」について述べていたのを憶えているだろうか?彼女も又、私にとっての恩人の様な存在でね。ちょっと変わった性格をしているのだけれども今回そこは置いておこうか。
 彼女とは大学の図書館でお互い暇をしている時に知り合ったのだが、その時の状況を詳しく再現してみ・・・・矢張り止めておくことにするよ。彼女と私はなんたって2時間以上お互い一切声を発生させずにずっと本を読み続けた挙句、アパートに着くまで一言も話さず、隣の部屋の住民だったことに部屋の前で気が付いて漸く会話が生まれたのだからね。それはもう石の方が余程雄弁ではないかと思うほどには静かだったんだ。

 ああ、もうまた自分語りで大幅に時間を使ってしまっているね。悪癖だとは思っているのだがこればかりはどうも止められなくてね・・・申し訳ないとは思っているのだよ。
 それで話を戻して、「妙な事」なのだけれども。彼女もちょっと変わっていてね、お隣さんとして友誼を深めると妙な勘の鋭さを発揮するようになってね。例えば、私がお腹が減っている時に丁度食事に誘われたのだがそのお店が「私が彼女に一度も言ったことが無い好物を取り扱っている店」だったんだ。尤も、偶然である可能性の方が高い上に好物を食べていたお陰かそこから話題がふくらんで彼女との友誼をさらに深められたからね、困ったことは一つも起ってはいないのさ。
 ・・・え?女性と出かけられる時点で勝ち組じゃないかって?そう言われると、否定は出来ないのだがあくまでも彼女は私の大切な友人であって恋人では無いんだ。そこだけはどうか解ってほしい。
 
 最も不思議なことといえば、私にここ数か月間で大学では彼女以外の友人がいないことぐらいだろうか?・・・・君、ここは笑って欲しかったのだけれども。
 他には、猫屋敷でのナンパは実は週末土日に2週間分通って合計4回行ったのだけれども帰ってきたら彼女が妙に辛辣でね、「まさか君がこんな事をする軽薄な男だとは知らなかった、軽蔑させてもらうよ」と言った内容の言葉を冷たい視線と共に叩きつけられた事もあったね。どうも、彼女はそう見えなかったのだが潔癖症らしい事を知った珍しい日だったね。唯一の友人から軽蔑されてショックで寝込んだのはここだけの秘密だ。
 最後に、これは下らないのだけれども、ここだけの話最近私物が減るペースが速いんだ。私自身が無精だから物を無くすのは不思議でも無いのだけれども、それにしても最近妙に下着類が減りやすくてね。最初はふと下着泥棒を考えたのだけれども女性ならいざしらず男性の下着を盗む人間が居るとは考えにくいからね、きっと私が何かの衣類と混ぜてしまって居るのだろうね。

 こんな所だろうか、君の期待に添えたかどうかはさっぱり解らないのだけれども・・・。
 私としては自分語りが嫌と言う程出来て満足でしかないよ、こんな事で構わないのならば毎日でも話したいぐらいだね。まぁ、私みたいな人間に興味を持つのは君みたいなちょっと感性のズレた人だけだろうけどね。・・・これは褒めたのだよ?君にすら見捨てられたら私はどうしようもなくなるからね、本当に君が来てくれているお陰で毎日が充実しているんだ。
 ・・・それで、話は一気に戻るけれども。今日の私の話で君は本当に私が魔物娘から愛されない理由が解ったって言うのかい?君の話を存分に聞きたいところなのだけれども、どうやら今日はここで時間切れのようだね。
 次に会う時に、いつもの下らない私の失敗談を存分に話した後に君の推理を聞くとしよう。君が私の謎を全て解き明かしてくれる事を期待しているよ、それではお休み。
18/06/24 18:52更新 / JPcat
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■作者メッセージ
投稿に日にちが空いてしまい、大変申し訳ありませんでした。
この物語に関しまして、次辺りでさっさと幕を閉じ、これ以上皆様のお目汚しをしないようにしたいと思っております。(嘘かもしれませんが)
 既に多くの方が、推論を建ててくださっておりますが、新しく気がついたことや気になる事、新たな発想をコメントしていただけたら感動で胸が張り裂けてしまうでしょう。
 下らない酔っ払いが始めた、小説ですらないチラ裏のような駄文ですが最後までお付き合いいただけたら幸いです。それでは皆さんお元気で、おやすみなさい。

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