後編
晴人の言う通りに仲直りした私達は、チョコアイスの甘美なる味を楽しんでいた。
更に、晴人が私に買ってきてくれた物、感動すら覚える。
「そうだ、今日ね友達が告白されたんだ」
そうか、高校生。そういう事が起こってもなんら不思議でもないか。
私が高校生の時には、そんな甘酸っぱい場面には出くわさなかったな。
そんな昔の事をしみじみと思って聞いていたが
「ドラゴンの娘でしかも二人同時にだったんだ、すごいよね」
!?ド、ドラゴン二人に同時にだと…!
ドラゴンに告白される事自体なかなか聞かない事だというのに、それに加え二人にとは
「そ、それでどうなったんだ?」
「うん、二人共友達の恋人になったよ。」
……。凄いな色々。奈々も口にスプーンを咥えながら目を丸くしている。
差こそあれ、我々ドラゴンは所有欲の塊だ。それなのに丸く収まるなど、よほどその友達の男気が凄まじいのか、彼女達の仲がいいのか。
…同胞達に影響されたわけでは無いが、私には一つだけ聞きたいことがある。
「な、なぁ晴人、私の事はどう思っているんだ?」
私はずっとこの事を晴人に聞きたかった。
初めて会った晴人は、寂しそうな顔をしたまま、黙って一人でいたのを今でも憶えている。
私はそんな晴人のことがどうしても放っておけなかった。多分この時なんだろう。
私の保護欲が目覚めたのは。晴人が欲しいと思ったのは。
家族になり、一番近くに晴人がいる。一番近くで晴人を守ってやれる。その事実が何より嬉しかった。
しかし、晴人は私の事をどう思っているのだろう。
義弟とはいえ、弟を一人の男として見ている姉のことを。
「…僕は姉さんの事好きだよ。だって大事な家族だもん」
あぁ、目の前が真っ白になるとはこの事なんだろう。
振られてしまったのだ。私は。付き合ってすらいないが、
嫌いでも好きでもないと、言われるよりましだろうが、ショックだ
あぁ、辛い。ただただ辛い。
「…ありがとう晴人。アイス、美味しかったぞ。
今日は疲れたからもう寝るな、お休み晴人」
そう言って、空になったアイスの容器をゴミ箱に入れ、自分の部屋に向かった。
寝るなんて言ったが、寝られるだろうか。
私の部屋は二階にあるが、今日ばかりは踏み外さない様、注意しなければな
―――――
…あんな事ほんとは思ってもないし、言うつもりも無かった。
ほんとは、姉さんの事女の子として大好きだし、ずっとそばに居たい。
でも、それが姉さんのためになるのかな。
僕の周りには、僕よりカッコいい人は沢山いるし、頭の良い人だって沢山。
姉さんはもっと他の人を見るべきなんだ。
こんな頭も良くない、顔も良くない僕なんかより、姉さんに相応しい人が絶対いるから。
「…晴人君。それが君の答えなのか?」
奈々さんが尋ねる。
「……うん。さっきのが僕の本音だよ」
「本当にそうか?晴人君」
そう問いただす奈々さんの眼は、悲しそうで、怒っている様にも見えた。
「あいつは本当に、心の底から君の事を想っている。
確かに、君の事となると妙な行動をとったり、何も考えずに突っ走ろうとする事も多々ある。だがそれは全て君の為だ。あれで意外と乙女なんだよ。
聡い君の事だ。それが分からない朴念仁ではないだろう?」
そんな事言われなくてもわかってる。ましてや奈々さんに、
「そうさ、うん。僕は姉さんが大好きだ。
でもそれじゃあダメなんだ。
大好きだからこそ、姉さんには幸せになってもらいたい。
経済的で、頭もいい、そういう男性と一緒になって、良い家庭を築いてほしい
そう、幸福になってほしいんだよ。僕じゃダメだ。」
「…本当に優しいな君は。でも、それは君の本心か?」
「…うん」
「ならその涙はなんだ?」
「!?」
そう言われて初めて気づいた。いつの間にか僕は、泣いていたみたいだ。
「本当は光の事、誰にも渡したくないのだろう?」
「…そうだよ。本当はそうだよ!大好きな姉さんが誰かと一緒になるなんて、
考えただけでも胸が張り裂けそうになる!
ずっと、僕の傍にいて欲しい!ずっと僕だけの姉さんでいて欲しい!」
「なら、それを光に聞かせてやるといい。
アイツは、君と一緒にいる時が何より大事で、幸せなんだ。
晴人君の、光の幸せを願う想いはとても強い。だがな、それと同じくらい光の
気持ちを酌んでやってくれ。
光の気持ち。本当の幸せを」
奈々さんは僕の事をそう諭しながら、頭を撫でてくれた。
とても優しい手つきだった。
「ありがとう奈々さん。僕、姉さんのとこ行ってくる。」
「あぁ、行って来い。私はここで祈っているよ」
僕は心を決めた。姉さんに本当の事を伝えに。
僕の本当の気持ちを伝えに。
「…光のヤツは本当に良い男を見付けたな。
私にも、運命の出会いってものが来るのだろうか」
――――
案の定、私はまだ眠れていない。
眼を閉じても、布団に包っても思い出されるのは晴人の事ばかり。
今日だけは、私のこの特技を恨む。
私の何がいけなかったのだろう。
どこで間違えたのか、何をすればよかったのか。
いっそ、晴人の事を諦めるべきなのか。まぁ、出来ればの話だが。
晴人…。
ん、ドアを、ノックする音か?奈々だろうか
「姉さん、僕だけど」
!?は、晴人!?いやいや、今会えるような顔では無いというのに、
くっ、かくなる上は、フトンチェンジ!
……。頭まで布団被って丸まっただけだがな。
だがこれで、まともに顔を会わせずに済むはずだ。
「入るよ」
く、来るか!
晴人が私のベッドに腰掛けるのを感じた。
「ごめんね姉さん、僕はさっき嘘をついた。
姉さん、僕は姉さんが好きだ。家族としてじゃなく、女の子として。
僕は姉さんに幸せになってほしかったから。
いいヒトと幸せな家庭を持ってもらうことが、姉さんの幸せだと思ってた。
でも、それは姉さんの気持ちを一切無視したものだって気づいたんだ。
そして、僕の気持ちも。
姉さん、もう一度言うね。姉さん大好きだ。」
そうか、晴人は真剣に私の事を想ってくれていたのか、
晴人…、今まで黙って聞いていたがもう限界だ!
滾る感情が抑えられず、同時に魔力も漏れ出す。
いつもの青でも無く、赤でもない。
緑色の、暖かく力強い輝きだ。
愛が止まらない!
「晴人ぉぉぉお!大好き!大好きだよ晴人!」
「ね、姉さん!ちょっと力強いよ。」
「もう離さない!絶対離さないからな晴人!」
「僕もだよ、って、姉さん!?ちょ、ちょっと何して!?」
「愛しい晴人に大好きのキスだよ晴人!ちゅっ、ちゅっ」
「え、ちょ、んんん!?」
嫌われてなかった。家族としてではなかった。女として見てくれていた。
そして、私の事を受け入れてくれた。
晴人、これからもずっと大好きだぞ。
「すまん晴人、姉さんもう辛抱たまらない!」
「へ?姉さん何で服脱いでるの…?」
「それはな、晴人を食べるためだよ!晴人ぉぉぉん!」
「ちょ、ムードも何も無いよ!」
「知らん、そんなの私の管轄外だ!ドラゴンの寝床に来たんだ!覚悟の上だろう!」
「ふぇ、姉さん、心の準備がまだ…!」
「大丈夫!優しくするよ晴人ぉぉぉ!」
これから始まる晴人との甘い日々を思い描きながら、晴人の服を脱がしに掛かる。
あ、子供は何人がいいだろうか。
「待って姉さん、無理やりなんて!」
「そんな事言って、晴人だって満更でもないだろう!」
「ひ、ひゃあぁぁぁ!」
私は今とても幸せだ。
更に、晴人が私に買ってきてくれた物、感動すら覚える。
「そうだ、今日ね友達が告白されたんだ」
そうか、高校生。そういう事が起こってもなんら不思議でもないか。
私が高校生の時には、そんな甘酸っぱい場面には出くわさなかったな。
そんな昔の事をしみじみと思って聞いていたが
「ドラゴンの娘でしかも二人同時にだったんだ、すごいよね」
!?ド、ドラゴン二人に同時にだと…!
ドラゴンに告白される事自体なかなか聞かない事だというのに、それに加え二人にとは
「そ、それでどうなったんだ?」
「うん、二人共友達の恋人になったよ。」
……。凄いな色々。奈々も口にスプーンを咥えながら目を丸くしている。
差こそあれ、我々ドラゴンは所有欲の塊だ。それなのに丸く収まるなど、よほどその友達の男気が凄まじいのか、彼女達の仲がいいのか。
…同胞達に影響されたわけでは無いが、私には一つだけ聞きたいことがある。
「な、なぁ晴人、私の事はどう思っているんだ?」
私はずっとこの事を晴人に聞きたかった。
初めて会った晴人は、寂しそうな顔をしたまま、黙って一人でいたのを今でも憶えている。
私はそんな晴人のことがどうしても放っておけなかった。多分この時なんだろう。
私の保護欲が目覚めたのは。晴人が欲しいと思ったのは。
家族になり、一番近くに晴人がいる。一番近くで晴人を守ってやれる。その事実が何より嬉しかった。
しかし、晴人は私の事をどう思っているのだろう。
義弟とはいえ、弟を一人の男として見ている姉のことを。
「…僕は姉さんの事好きだよ。だって大事な家族だもん」
あぁ、目の前が真っ白になるとはこの事なんだろう。
振られてしまったのだ。私は。付き合ってすらいないが、
嫌いでも好きでもないと、言われるよりましだろうが、ショックだ
あぁ、辛い。ただただ辛い。
「…ありがとう晴人。アイス、美味しかったぞ。
今日は疲れたからもう寝るな、お休み晴人」
そう言って、空になったアイスの容器をゴミ箱に入れ、自分の部屋に向かった。
寝るなんて言ったが、寝られるだろうか。
私の部屋は二階にあるが、今日ばかりは踏み外さない様、注意しなければな
―――――
…あんな事ほんとは思ってもないし、言うつもりも無かった。
ほんとは、姉さんの事女の子として大好きだし、ずっとそばに居たい。
でも、それが姉さんのためになるのかな。
僕の周りには、僕よりカッコいい人は沢山いるし、頭の良い人だって沢山。
姉さんはもっと他の人を見るべきなんだ。
こんな頭も良くない、顔も良くない僕なんかより、姉さんに相応しい人が絶対いるから。
「…晴人君。それが君の答えなのか?」
奈々さんが尋ねる。
「……うん。さっきのが僕の本音だよ」
「本当にそうか?晴人君」
そう問いただす奈々さんの眼は、悲しそうで、怒っている様にも見えた。
「あいつは本当に、心の底から君の事を想っている。
確かに、君の事となると妙な行動をとったり、何も考えずに突っ走ろうとする事も多々ある。だがそれは全て君の為だ。あれで意外と乙女なんだよ。
聡い君の事だ。それが分からない朴念仁ではないだろう?」
そんな事言われなくてもわかってる。ましてや奈々さんに、
「そうさ、うん。僕は姉さんが大好きだ。
でもそれじゃあダメなんだ。
大好きだからこそ、姉さんには幸せになってもらいたい。
経済的で、頭もいい、そういう男性と一緒になって、良い家庭を築いてほしい
そう、幸福になってほしいんだよ。僕じゃダメだ。」
「…本当に優しいな君は。でも、それは君の本心か?」
「…うん」
「ならその涙はなんだ?」
「!?」
そう言われて初めて気づいた。いつの間にか僕は、泣いていたみたいだ。
「本当は光の事、誰にも渡したくないのだろう?」
「…そうだよ。本当はそうだよ!大好きな姉さんが誰かと一緒になるなんて、
考えただけでも胸が張り裂けそうになる!
ずっと、僕の傍にいて欲しい!ずっと僕だけの姉さんでいて欲しい!」
「なら、それを光に聞かせてやるといい。
アイツは、君と一緒にいる時が何より大事で、幸せなんだ。
晴人君の、光の幸せを願う想いはとても強い。だがな、それと同じくらい光の
気持ちを酌んでやってくれ。
光の気持ち。本当の幸せを」
奈々さんは僕の事をそう諭しながら、頭を撫でてくれた。
とても優しい手つきだった。
「ありがとう奈々さん。僕、姉さんのとこ行ってくる。」
「あぁ、行って来い。私はここで祈っているよ」
僕は心を決めた。姉さんに本当の事を伝えに。
僕の本当の気持ちを伝えに。
「…光のヤツは本当に良い男を見付けたな。
私にも、運命の出会いってものが来るのだろうか」
――――
案の定、私はまだ眠れていない。
眼を閉じても、布団に包っても思い出されるのは晴人の事ばかり。
今日だけは、私のこの特技を恨む。
私の何がいけなかったのだろう。
どこで間違えたのか、何をすればよかったのか。
いっそ、晴人の事を諦めるべきなのか。まぁ、出来ればの話だが。
晴人…。
ん、ドアを、ノックする音か?奈々だろうか
「姉さん、僕だけど」
!?は、晴人!?いやいや、今会えるような顔では無いというのに、
くっ、かくなる上は、フトンチェンジ!
……。頭まで布団被って丸まっただけだがな。
だがこれで、まともに顔を会わせずに済むはずだ。
「入るよ」
く、来るか!
晴人が私のベッドに腰掛けるのを感じた。
「ごめんね姉さん、僕はさっき嘘をついた。
姉さん、僕は姉さんが好きだ。家族としてじゃなく、女の子として。
僕は姉さんに幸せになってほしかったから。
いいヒトと幸せな家庭を持ってもらうことが、姉さんの幸せだと思ってた。
でも、それは姉さんの気持ちを一切無視したものだって気づいたんだ。
そして、僕の気持ちも。
姉さん、もう一度言うね。姉さん大好きだ。」
そうか、晴人は真剣に私の事を想ってくれていたのか、
晴人…、今まで黙って聞いていたがもう限界だ!
滾る感情が抑えられず、同時に魔力も漏れ出す。
いつもの青でも無く、赤でもない。
緑色の、暖かく力強い輝きだ。
愛が止まらない!
「晴人ぉぉぉお!大好き!大好きだよ晴人!」
「ね、姉さん!ちょっと力強いよ。」
「もう離さない!絶対離さないからな晴人!」
「僕もだよ、って、姉さん!?ちょ、ちょっと何して!?」
「愛しい晴人に大好きのキスだよ晴人!ちゅっ、ちゅっ」
「え、ちょ、んんん!?」
嫌われてなかった。家族としてではなかった。女として見てくれていた。
そして、私の事を受け入れてくれた。
晴人、これからもずっと大好きだぞ。
「すまん晴人、姉さんもう辛抱たまらない!」
「へ?姉さん何で服脱いでるの…?」
「それはな、晴人を食べるためだよ!晴人ぉぉぉん!」
「ちょ、ムードも何も無いよ!」
「知らん、そんなの私の管轄外だ!ドラゴンの寝床に来たんだ!覚悟の上だろう!」
「ふぇ、姉さん、心の準備がまだ…!」
「大丈夫!優しくするよ晴人ぉぉぉ!」
これから始まる晴人との甘い日々を思い描きながら、晴人の服を脱がしに掛かる。
あ、子供は何人がいいだろうか。
「待って姉さん、無理やりなんて!」
「そんな事言って、晴人だって満更でもないだろう!」
「ひ、ひゃあぁぁぁ!」
私は今とても幸せだ。
15/05/26 00:32更新 / 空我
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