連載小説
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 9語目 バトレーニング(バトル+トレーニング)
どれくらい

ガキンッ!

「はははっ!」

どれくらい

ヒュン、ヒュヒュン!!

「巳継!」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

どれくらい

「大樹様っ!!」

「・・・・っ」

こうやって、戦い続けているんだろう
俺と木原の体力はゼロに等しくて、もはや立っているのがやっと
呼吸を整えようにも次々と迫りくる攻撃を前に、立ち止まることが許されない

「面白い、面白いよ君たち!」

もはや剣を持つ右手には力が入らず、盾を持つ左手も上がらない。
はぁ、はぁ、重力がこんなにも重いと感じたのは初めてだ

「ほらほら!ガードが甘いよ!!」

剣を振りかざし、猛烈な勢いで瑞季という名の少年が俺に突っ込んでくる

ギンッ!

それを青葉が割って入り、盾で受け止め弾き返す

「大樹様っ」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

自分でも分かる、足手纏いだということが。
しかしアンサーとメイドは運命共同体、俺の敗北は青葉の敗北を意味する。

「はぁ、はぁ、はぁ、まけ、られ、ないっ・・・!」

腕と足に渾身の力を込める

「ああああああああああああああっ!!!」

なんとか体勢を維持することに成功
まだだ・・・・・・まだ、戦える

「巳継!!」

木原とオリヴィエは黒羽と交戦中
向こうの状況も厳しいことには変わりない。

「動きが鈍ってるよ〜ん♪」

黒羽の斬撃にオリヴィエが弓で応戦している
木原が今あの状態では新たなイメージを要求するのは難しいだろう

「と、はぁ、青葉」

「はい」

「俺たちの、技と、木原たちの、技を、コラボって、出来る?」

「イメージの相性が良ければ」

俺には考えがあった
それには第一世代教育<風>(サグ・エスティロ)の木原たちの能力を要する。

「何をコソコソしてんのさっ!!」

ギャリィン!

俺の盾が瑞季の薙ぎを弾く
体力を消耗しきっていた俺の防御は予想外だったらしく、瑞季は後方に一瞬蹌踉ける

「はあっ!」

余裕がないからだろうか
俺はその一瞬の隙を見逃さず、瑞季に向かって剣を振るう
当たりはしなかったが、チッと服を掠めた。

「くっ」

瑞季は後方へ飛び退き、再び体勢を立て直す。
はぁ、いい、運動能力だな、チクショウ

「木原っ!!」

肺にある残りの空気全てを吐き出しながら、大声で呼びかける

「酸欠で、きっと、脳に血が回ってないだろうけど、イメージしろ」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「針だ!針をイメージしろ!!」

俺の声が聞こえているかすら分からない
でも、今の奴らを追い返すには、これしかないだろう

「せあっ!」

青葉は黒羽に切り込む

「っ?!」

突然の攻撃に黒羽は体勢を崩し、瑞季のもとまで飛び退く
今しか、無いっ!
木原を信じ、俺もイメージする
青葉と俺は掴む!堅牢な拳「ガントレット」を。
丁度その時、オリヴィエが両手を前方にかざす
木原・・・・・ありがとう
宙にはキラキラ輝く無数の”線”が浮かぶ。

「青葉!」

「はい!」

俺たちはガントレットをはめた右拳を限界まで後方に引きつける
そして

「「はあああああああああああっ!!」」

一気に前方へ押し出す!

ドンッ

突きだした拳からは、宙を揺らす波が放たれる
その波は、細く鋭い針をのせ、相手に
押し寄せる!

バフゥンッ!

「ぐっ・・・・」「あぅ・・・・」

可視出来ないが、声からするに二人の全身に針が刺さっていることだろう
頼む・・・・退いてくれ・・・・頼む・・・・!

「くふふふふふ、はははははっ!!楽しい!楽しいよ!!」

だめ・・・・か

がくっ

下半身が一気に脱力し、俺はその場に膝をつく。
今の一拳が本当に最後の力だった。
もう、声すら出ない・・・

「大樹様っ!」

「なら、お返しさせてもらおうかな?黒羽」

「そうだね♪」

視界が霞み始める
黒羽が低い姿勢に構えているのが辛うじて分かる
逃げ、なきゃ・・・・

「大樹様っ!!」

逃げ、な、きゃ・・・・逃げ・・・・な・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「・・・・・き」

「・・・・・まっ」

「たいき・・・・」

呼んでる。
温かい何かが、俺を、呼んでる

「大樹・・・・」

ち、あき?
目蓋がようやく持ち上がっていく。

「大樹・・・・」

「大樹様っ!」

青葉の顔がすぐそこにある
その隣には千彰の顔

「青葉・・・・千彰・・・・俺は」

まだ思考が追いついていない
ただ分かるのは、ここが屋外で、青葉の膝の上で、今が夕焼け時ってことだ。

「根本」

「き、はら・・・・」

っ!!
そうだ、俺バトってて、それで!

「そんな心配そうな顔すんなし。俺もオリヴィエも大丈夫」

「そ、そっか」

木原の優しい物言いに、安堵感が俺の体の力を抜く
・・・・なんか寒い
そういえば、なんで俺ビショビショなんだろ?

「俺さ、もしかして・・・・・漏らしたりした?」

「寝てても憶えてるもんだね・・・・」

公衆の面前で寝ション便とか超恥ずかしいじゃん・・・・マジで
って
よく見たら、みんな濡れてんじゃんよ・・・・

「・・・・それで、結局どうなったの?」

俺は率直に聞いてみた
とりあえずみんな無事だが、奴らがただで帰るとは思えない。

「千彰さんたちが、助けて下さったんですよ?」

「そっか・・・・ありがとう、千彰、蓮」

ぐっ

二人はいつものように俺に向かって親指を立てる。

「根本」

「ん、何?」

「あいつら、こう言い残していった。『残り4人になったらまた会おう』って」

彼奴らの余裕の笑みが目に浮かぶ言葉だ。
つまり、4人倒してくるからそれまで取って置いてやると、そういう事だろう

「うん、わかった」

そういえば、千彰と木原は初対面のはずだが
・・・・ま、心配するまでもないか。

「木原、初戦だったのに色々無理言ってごめんだったな」

「いや、逆に緊急感が持てたし、いい経験になった」

ひゅぅぅぅ・・・・

「う゛ぁっっくしゅん!!」

うぃい、さみぃ・・・・

「オリヴィエ、風邪ひかないうちに帰ろうか」

「そうだな」

「じゃ、みんな、お先」

そう言って木原は去っていった。

「あ、連絡先」

「私が聞いておきました」

流石だ、申し分ない。

「俺たちも、帰ろう・・・・」

「そだね。青葉、肩貸してくれる?」

「はい」

青葉の肩に掴まり何とか立ち上がれた。
俺の体はどうやら、自分で思っている以上に限界らしい
こうして青葉に掴まる腕でさえも小刻みに震え、思ったように力が入らない
明日に支障がでなければいいけど・・・・
一歩一歩ゆっくりと進み出す。
今日は本当に、当たり前が上手くいかない日だ。
今歩いている帰路でさえ、こんなにも長く感じるなんて・・・・





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「ん・・・・くっ・・・」

熱い、全身が熱い
その夜、案の定俺は熱を出して寝込んでしまった。
原因は恐らく、濡れたまま長い間外気に晒されていたからだろう
でもそれを責めることは出来ない。
なぜなら、その”水”によって千彰たちが助けてくれたのだから。
だからむしろ、風邪をひけたことに感謝するべきだ。

コンコン

「失礼します」

桶を持った青葉が戻ってきた。
時刻は既に日付を跨いでいるというのに
こうして俺のために付きっきりで看病してくれている。
いくら彼女が体力があるからといって、今日の戦いでの体力の消耗は誰の目にも明らか
気絶していた俺と違って、彼女は一睡もしていないのだ。
この布団には俺ではなく、青葉が寝るのが本来なら相応しい
だが何度言っても「大丈夫です」の一点張り
しかも僅かだが語調に不機嫌さが表れているような気がする。
俺、なんかしたのかな・・・・?
青葉は俺の額にあるタオルを、水を取り替えてきた桶に浸す

ちゃぷん、ざば、ぴちゃちゃちゃちゃ・・・・

絞ったタオルが再び俺の額に乗せられる
ひんやりしてて、凄く気持ちいい。

「ありがと」

「それはもう聞き飽きました」

やはり少し怒っているようだ
看病には温かさがあるものの、言葉にはどこか突き放した印象を受ける。

「・・・・怒ってる?」

本当に俺はデリカシーに欠ける奴だと常々思う。
何でも真っ直ぐに聞かないと相手の気持ちを察することが出来ないのだから。
みんなは「そんなお前がいい」って言うけど、そんなのは甘えでしかない
逆に真っ直ぐ聞かずとも相手の気持ちを察することが出来るなら
みんなは口を揃えて言うだろう、「そんなお前がいい」と。

「・・・・・・・。」

青葉は答えない
ただ無言で、俺に冷ややかな視線を送ってくるだけ。
こんな青葉は初めてだ
少し怒ってる?馬鹿か俺は。きっと出会ってから今までの中で一番怒っている。
何に対してかは、彼女の口から聞くまで分からない
だから今は待つしかない、彼女が口を開くまで

「少し、外の空気を吸ってきます。すぐ戻りますから」

「わかった」

そう言うと、青葉は部屋から出て行ってしまった。
待つしかない、待つ、しか・・・・・
・・・・・本当に、待つだけでいいのか?
俺から行動した事なんて、今まであったか?
いつも積極的に動いてくれたのは彼女、青葉だったじゃないか
俺はいつの間にか積極性を忘れ、ただ青葉についていくだけの金魚の糞になってた
思い出したい、初めて学校で友達をつくれた日のことを。
思い出したい、学校で俺がムードメーカーと呼ばれる意味を。
思い出したい、いつ忘れたのかを。

「ふぅ・・・・」

熱でぼやけていた思考がようやく覚醒し始めた
そうだ、思い出す必要なんてない。
青葉のいない日々を思い出す事なんてない。
ただ、俺は自分の足で立ちさえすればいい。
今までのように傍観者のようにではなく、一人のアンサーとして。

「とりあえず今は」

青葉が何に怒っているのか、それを理解する必要がある。
彼女をここまで怒らせることって一体・・・
逆に青葉の一番の関心事ってなんだろう?
優先順位で一番のものって

「・・・・俺」

そう、俺だ
いつでも青葉は俺を第一にしてくれていた。
そして今回の俺の行動
よく考えれば、自分を格好良く見せようとしていたことに気付く。
一人で強がって、最後の力を使ったからって倒れて、
まるで自分が勇者であるかのように振る舞って・・・・

コンコン

「ただいま戻りました」

「う、うん、おかえり」

いつの間にか、相当時間が経過していたらしい
部屋の時計を見ると、ざっと1時間は経過していた。
でも丁度良かった。考えをまとめる時間が出来たんだから。
青葉は俺の枕元に腰を降ろす

「・・・・・。」

「・・・・・。」

いざってなると、やっぱ凄く緊張するな
もう喉カラカラ。
でも言わなきゃ、このままじゃ”後の事”を伝えることすら出来ない

「ごめんな、青葉」

「・・・・・・・。」

青葉の鋭い視線に怖じ気づきそうになる自分を必死で抑え、言葉を紡ぐ。

「いつも俺のことを第一にしてくれて、いつも俺を見てくれてたのに、俺はそれに甘えすぎてた、本来の性格である積極性を見失ってた。ホント、ゴメン」

「・・・・・・。」

「俺、これからは、アンサーとして積極的に頑張るから、だから、ついてきてくれないか?」

「・・・・・・。」

返事はない
顔を見ることはこの体勢で叶わないが、解るのはじっとこちらを見ているということ。

「・・・・・・・ないです」

青葉は顔を伏せ、ポツリと呟く
とても小さくて聞き取る事が出来なかった。

「・・・・え?」

「わかってないです!!!」

「っ?!」

突然の大声に呆気をとられてしまう
いつも冷静な青葉が、こんなにも大きな声を出すなんて
そこまで思い詰めてたってことなのか・・・・

「なぜ?!・・・・・こんなにボロボロになるまで私に言ってくれなかったのです?私はそれほどまで、頼りになりませんか?!『頑張る』?しなくて結構です!!あなた様が頑張って死ぬくらいなら・・・・私が殺します!」

「青葉・・・・」

塞き止められていた思いが溢れ出す

「知っていましたよ!あなた様の限界がとうに超えていることなど!でも、信じていました・・・・きっともうすぐ、頼って下さると。そしたら私は思う存分助けて差し上げられるのだと!!」

「・・・・・・。」

「あなた様が倒れたとき、私は気が狂いそうでした。自分の不甲斐なさとあなた様に対する疑念で胸がいっぱいになり、自分の汚い感情が湧き上がってくるのを感じました」

青葉は肩を震わせながら、顔を俯かせる
膝の上に乗せられた両手は、今にも血が滲んできそうな程固く握られていた。

「・・・・・本当に、死んでしまったら・・・・・私、どう、しよう、って・・・・不安、で・・・」

膝の上にぽたっと雫が落ちる

「・・・・ごめん」

しばらくの沈黙の後

「・・・・・誓って下さい。」

「・・・・うん」

「今後無茶なことはしないと!私を置いて、いかないと・・・・」

上げられた青葉の顔は苦悩に満ちていて、俺を睨み付けようとする目には大量の涙が浮かんでいた。

「約束、するよ」

そんな彼女を見ていると、寝ている俺の目尻からつー・・・っと温かいものが伝う
そんな悲しい顔、して欲しくない
ただ、笑っていて欲しい。

「・・・・おいで」

独りで涙を流すのが辛くて
独りで涙を流させるのが辛くて
俺は無性に青葉を抱きしめてあげたくなった。

「っ・・・・うっ・・・・ぁ・・・・大樹様」

ぽすん、と
布団越しではあるが、俺の胸に青葉はしがみついてくれた。
その愛おしく感じる存在を、俺は両腕で包む。
布団で籠もった青葉の泣く声が室内に響き、それにつられて俺もはらはらと涙を流した。
流した涙はいつもより温かくて
熱のせいだけじゃないと、確かにそう感じた


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


チッコ、チッコ、チッコ、チッコ

部屋の壁掛け時計の音が、いつもより大きく聞こえる
俺たちが泣き止んだ頃には、既に夜が明けようとしていた。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

互いに先程から声一つ発しない
気まずさだけが部屋に残る。
何話したらいいんだろ?青葉のためにも「おやすみ」と言うべきなのか?

チッコ、チッコ、チッコ、チッコ

もうすぐ朝だし、このままって訳にもいかないし
何を話そうとか考えない事にしよう。
自然にいこう、自然に。

「青葉」 「大樹様」

・・・・・・かぶった

「ん?どうしたの?」

「いえ、大樹様からどうぞ」

どうぞって言われたって、特に何かあるわけじゃないんだけど
・・・・このタイミングで恥ずかしいが仕方ない、アレか。

「覚えてる?伝えたいことがあるって言ったの」

「はい、もちろんです」

そら覚えてるか。イツデモチロンだもんな

「結局まだ全部終わったわけじゃないけど、半分だけ言うね」

「半分、ですか?」

「残り半分は、本当に終わった時まで取っておこうと思って」

「そうですか」

青葉は柔らかな表情でこちらを見つめる。
一日見なかっただけで、こんなにも久しく感じるなんて
それだけいつも俺に対して優しく接してくれているということか

「青葉」

「はい」

「俺、青葉のことが」

そこまで俺が言うと、青葉ははにかんだ表情で俺を見つめる
その熱い視線に罪悪感を感じるのは、これから”かます”俺の焦らし故だろう

「す――――――。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ぽわん?
そんな効果音が似合うようなそんな表情で青葉は俺を見つめる
なぜ続きが来ないのだろう、そんな顔。
そう、半分。
これが俺にとっての半分、文字通りの半分だったのだ!
それをようやく悟った青葉は満面の笑みを浮かべる
にこにこ。俺の望んでいる感情と正反対の笑顔を。

「大樹様」

「は、はぃぃ」

「トレーニングメニュー、濃くしておきます。覚悟、して下さいね。」

「ぃや、そ、それは・・・」

「熱なんて”仮病”を使ったら・・・・どうなっても知りませんから」

こ、こわい・・・・

「では」

そのまま部屋を出て行こうとする青葉。
やばい、どうにか機嫌をとらなければ!

「ま、待って」

俺の声にぴたっとその場に立ち止まる

「い、一緒に、寝る?」

青葉はくるっとこちらに振り向く
そして

「すぅぅ・・・・・結構ですっ!!」

思えば、この大きな声と共に夜が明けたような気がする。
竜の咆哮。恐るべし・・・・





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「もしもし?俺」

「・・・・根本?」

「そうそう、根本!」

「・・・・・・。」

「・・・・・だあああっ!切ろうとするなよ、おい!木原!!」

「ああ、本当に根本か」

逆に本当に詐欺だと思ったんだろうか?

「どうしたの?」

「いや、無事かなと思って」

そう、こうして安否を定期的に確認するために連絡先を聞いたのだ。
千彰とはマメに連絡が取れるものの、木原においては家すら知らない
だからこうすることを思いついたのだった。

「わざわざ、ありがと。オリヴィエは今出掛けてるけど、問題ないよ」

「そっか、了解」

まぁ、いきなり動き出すことは多分無いとは思う
だから一応。

「じゃ、明日にでもまた連絡するわ」

「ん?何か急いでるん?」

「ちょっと、ね・・・・」

「わかった」

「じゃ」

ピッ

俺は急いでいた。
なぜならこれからトレーニングがあるからだ。
昨日のような怒りではないものの、違う意味で怒っている青葉は
言葉通り、ハードなトレーニングメニューを用意してくれた。
そんなわけで昼を食べた後も、こうしてランニングに行くことになっている。
うあ・・・・腹八分目にするべきだった。すぐ腹を痛くしそう・・・

「大樹様ー」

「うぃーっす!」

既に玄関前で待っている青葉の呼び出しを受け、急いでそっちに向かう。
本番になったら、腹が痛いなんて気にしてられないし。よし、頑張るか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

し、死ぬぅ。これは死ぬぅ・・・・
病み上がりというのもあるが、何より今日は青葉がスパルタさんだからだ。
いつもよりペースが早いうえに、一度も休むことないバリバリのノンストップ。
大分走れるようになったと思っていたのに、まだ上があることを痛感させられてしまった。

「大樹様、大丈夫ですか?」

いくらスパルタでも、最後にはちゃっと気遣ってくれる
そんな青葉にも魅力を感じるほどだった。
俺、ゾッコンだな

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、大丈夫、じゃないけど、大丈夫」

「そうですか、では次のメニュー、行きましょうね?」

お・・・・・鬼・・・・・

「次はバトレーニングです。その場で構えて下さい」

バトレーニング。
正直言って初めてなのでよくわからない。
とりあえずお決まりのファイティングポーズとる

「こ、こう?」

「はい。これから私が攻撃しますので、受けるか避けるかで全て回避してください」

え?それ無理ポ。
俺の攻撃を青葉が避けるならまだしも、初心者にそれって

「いきますよ?」

も、問答無用?!
とりあえず見極めようと意識を集中させる。
最初の拳は・・・・右か!
俺は全身をその反対側に移動させる。

ぼこ

「ぐはぁ」

予想が外れモロ直撃。
無理無理、避けるとか無理だって

「大樹様、予想するだけではダメです。第六感で感じ取って下さい」

「そ、そんなこといっても・・・」

第六感?なんじゃそら?
それで感じ取れば、髪を金色に染めるくらいの戦闘力が得られるんだろうか
なんて考えてたら次の拳がもう飛んできていた

「うおっと!」

紙一重で何とかセーフ、だが

「回避に余裕がありません。はい、もう一回」

「そ、そんなぁ」

ぼこ

「あがっ」

どす

「おふぁっ」

ばき

「ぐひぃっ」

結局、夕方になるまでこの訓練は行われたのだった。

しかし
この時俺たちは気付いていなかった
ナンバーディスプレイの警告に・・・・



用件、一件、午後、四時、二八分、デス。ピーーーーー。

『オリヴィエが帰ってこない!探しに行ってくる!!・・・生きて戻るから』

用件ノ、再生ガ、終ワリマシタ、ピーーーーー。




11/01/23 10:30更新 / パっちゃん
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■作者メッセージ
シリアス進行中の今作品。
最近、執筆してて思ったのは
「あ、BGMっていいな!!」です。
某SSの書き方作品にて推薦されていたのを最近知り、やってみました。
描写が生き生きしてくるような、そんな感じがします
伝わるかは解りませんが・・・・;
次回も、まあご期待ください!パっちゃんでした!はい。

ちなみに、現在「テ○アーズ・トゥ・テ○アラ」のサントラで頑張ってます!

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