連載小説
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 7語目 レンジツカレ(連日+疲れ)
「ねぇ、青葉」

「はい」

「平和だね」

「そうですね」

温かな日差しが室内に差し込む、日曜の正午。
俺と青葉は日当たりの良いソファに肩を並べ座っていた。
内心はこのシチュエーションにドキドキしているものの
心地よさがそれに勝り、平常心を保てている。
それにしても・・・・・平和だ。

「大樹様?」

「ん?」

「お昼ご飯は何にいたしましょう?」

「う〜ん、そうだなぁ」

さっき朝ご飯を食べたばかりのような気もするが、まいっか。

「とりあえず、買い物でも行こうか」

「はい」

ぼーーーーーー・・・・・・

「大樹様?」

「ん?」

「買い物に行かないのですか?」

「よし、行こうか」

ぼーーーーーー・・・・・・

「すぅぅぅ・・・・・大樹様!!」

「どぅわぁぁっ!!!」

「買い物に、行きましょう?」

「そ、そだね」

がちゃ

外に出ると、気温は普段より格段に暖かく
羽織ったジャケットがなくても良いくらいだった。
青葉によると、今日の気温は夏下旬並だとニュースでやっていたらしい。
もう季節は秋の下旬だというのに、全く、最近の天気ときたら季節感を全然考えないもんなぁ
って、天気に文句言ったら季節もクソもあったもんじゃないか;
とにかく、今日は普通に暑い。

「大樹様、お暑いのでしたらジャケットお持ち致しますよ?」

両手を嬉しそうにこちらへ差し出している青葉に誘惑され、思わず渡しそうになる。

「ああ、おねが・・・・・・・・・いや、大丈夫」

危ない危ない。そんなのお願いしたら、周囲に女性を酷使するダメ男にしか映らん。
・・・・・・・。
立ち止まる。
もう一度、隣の青葉を見る。

「どうされました?」

彼女はいつものメイド服で隣を歩いていた。
あれ?何か大切なことを忘れているような・・・・

「大樹様?」

あ、わかった。

「青葉。私服ってもしかして、それだけ?」

「はい」

マジで?
暑い日も寒い日もメイド服の一張羅ってきつくないですか?
今日みたいな日ならまだしも、これからが冬本番だもんな〜
・・・・うし、今日の予定はこれにしよう!

「服、青葉の服、買いに行こう」

「そ、そんな、私のために大樹様の貴重なお時間を使わせるわけには・・・」

「いいっていいって行こう行こう」

青葉の手を引き歩き出す。
今、普通に手を取ったけど、超恥ずかしい・・・・
そろそろ免疫が付いても良いと思うんだけどなぁ
そんな思いを胸に、横目で青葉を見ると
はにかんだ表情を浮かべながらもしっかりと手を握り、俺の後に従っている彼女の姿を確認できた。
ああ、何度見ても飽きない




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




街に入る直前にある公園に差し掛かったとき

「大樹様」

鋭い青葉の声が聞こえる

「アンサーの気配がします」

「え゛」

こういう時くらい静かにさせてくれよって
とりあえず周囲を見渡す
・・・・・・・・・いた
公園内のベンチに少し太めの男とメイド服の女性が目を瞑り座っていた。

「どうする?」

「出来るだけ交戦は避けたいですね」

さて、どうしたものか

ぱちっ

メイド服の女性は片眼でこちらを見やる。

「やべ、目が合っちゃった」

しかし彼女は、何事もなかったかのように目を閉じた。
ん?戦う意志は、ないのかな??

「ねぇ、青葉?」

「はい」

「ちょっと話しかけてみようか?」

「大丈夫でしょうか?」

「まぁ、俺にまかせといて」

「はい」

俺たちは公園の方に歩いていくとベンチの前で立ち止まる

「あの〜」

「ん?ああ、先程のアンサーか」

メイド服の女性は特に敵意を向けるでもなく片眼を開けこちらを見る

「いや、ちょっと話したいなぁ、と」

「ほぅ、肝の据わった奴だな。話を聞こう」

彼女が微笑んだことで、周囲の空気が和らいだのを感じた。

「見たところ、あまり戦いにこだわっていないように感じたんですけど」

「良い洞察力だ。ああ、私たちは望んでいないな」

褒められてしまった
てか、メイドってこんなに美人揃いなんですか?
一種のギャルゲーを彷彿とさせる世界になったなぁ、この世界も。

「そのような質問をしてくるということは、お前たちも同じということだな?」

「ええ、まあ」

「だそうだ。おい、お前もなんか言ってやれ」

そう言って女性は隣の男を肘で突く

「ん?」

体の大きな男は目覚めると、俺たちを見て驚いた顔をする

「え、誰っすか?」

「いや、すいません、通りすがりの者です」

あれ?二人で敬語とか、どっちが上か分からんぞ?
体の大きさでいったら向こうの方が上に見えるが
顔的にいうと、若干童顔で下にも見える。
ここは迷わず名乗り出てみるか・・・・

「俺、根本大樹っていいます。もうすぐ18歳の高3です」

個人情報丸出しの自己紹介。

「あ、同い年なんだ・・・・俺も高3」

まさかの>でも<でもなくて=とは

「名前は 木原巳継(きはらみつぐ)」

「ども」

「ども」

「いや、こちらこそ」

「どもども」

・・・・・・・・。

「だああああっ!!」

「わ、びっくりした」

おっと、思わず咆哮してしまった。
はぁ・・・・これで第一印象は『障害者』で決定か・・・・hahaha

「急に話変わるけど、俺アンサーなんだよね」

「え!俺、バトルとか初めてなんだけど?!」

まあ、それが普通の反応だよ

「いや、戦いたい訳じゃなくて、なんていうのかなぁ〜」

「え?」

「んーっ、とりあえず、こっちが俺のパートナーの青葉、種族はドラゴン」

青葉は紹介されると、木原に恭しくお辞儀する。

「つまり俺たちも非戦闘派なわけ」

「だから、そっちの情報を教えてくれたわけ?」

「そうなわけ」

こういっちゃ失礼だが、見かけによらず切れ者らしい。
察しがいいというかなんというか

「・・・・なら、隣にいるのが俺のパートナーのオリヴィエ、種族はエルフ」

「よろしくたのむ」

オリヴィエと呼ばれている女性から握手を求められる
まさか、手中に画鋲が入ってたりはしないだろう。
素直に応じることにした

「お前を信用してみるよ、根本」

「リアルに?!」

こんなにも理解が得られるとは思ってもみなかった。

「ありがとね!」

「こっちこそ」

みんな見習えよ!
新君祭なんかに目を眩らましてんじゃねぇよ!!
まあ、こんな状況で人を信用しろと言っても簡単な話ではないけど
結局のところ、自分から信用しないと相手から信用なんてきっと得られない
だから俺は木原を疑わない。信用することに決めた。
千彰だって。蓮だって。オリヴィエだって。
俺の隣にいる、青葉だって。

「おい」

「ぬ?」

俺はオリヴィエの声に咄嗟に返事(ぬ?)する。

「違う、そこのドラゴン。確か、青葉、といったか」

「はい?」

どうやら、俺ではなかったようだ
ちょっと恥ずかしかったので、ゴホゴホと咳をしながら会話から離脱。

「先程から、私のオーナーに色目を使っているだろう!」

早速疑う?!
さっき俺、ありがたい話したばっかじゃん!
って、心の中だけでか・・・・

「上目遣いとは卑怯な・・・・」

オリヴィエさん、そこら辺で

「それでしたら、こちらにも言い分があります」

青葉?!

「大樹様と馴れ馴れしく握手。あれは決して黙認できません」

え?これは、楽観視するべきか悲観視するべきか
理解できないのは、俺だけでしょうか?

「はっ、握手ごときで。器の小さい女だ」

「有らぬ疑いを掛ける方が、人格的に問題があるような気がしますが?」

一・触・即・発!!

「と、青葉、そろそろ」

「お、オリヴィエ」

「黙っていて下さい!」「黙っていろ!」

「「はいい!!」」

女性って恐いです。
もう、手がつけられません・・・・

「ふん、ならこうしてやるまで!」

そう言ってオリヴィエは俺の右腕に抱きつく

「おわっ・・・」

「そうするのでしたら・・・・」

青葉は一瞬動揺したように見えたものの、すぐに木原の右腕に抱きつく

「えっ・・・」

いや、何この構図。
不倫相手が実は友達の妻で、自分の妻はその友達に不倫していた。みたいな奴
なんか確実におかしいですよ???
まさかどっかで家政婦が見てたなんてこと無いよな?
キョロキョロ
その間にも俺たちを中心として繰り広げられる女の戦い

「貴様、上目遣いだけでは飽きたらず、乳までをも擦りつけるか!」

「そ、そんなこと」

まあ、こちらから見ればそう見えなくもない。
対してこちらはというと
右腕に特に大きな感触はなく、慎ましい小さな感触が伝わってくる。
ええ、分かっていますとも。他人と比べるのは良くないですよね

「だが覚えておくがいい、我がオーナーは”小さい”ほうが好きだということをな!」

「ちょ・・・・」

「た、大樹様こそ・・・・お、”大きい”ほうが、お好きなんです!!」

「ぅ・・・・・」

公園の真ん中でそんな雪合戦みたいに性癖合戦しないでいただけますか?
恥ずかしいのは他でもない、俺たちなんですよ?!
お〜わ〜れ〜!
終わってくれぇぇぇぇ!!!

「おい!早く離れろ!」

「そちらこそ、大樹様から離れて下さい!」

むむむむむ〜〜〜〜〜
っとした、にらみ合いが続く
その間、ようやくタイミングが出来たので口を開く

「オリヴィエは、木原のことを大切に想っているんだね」

「なっ・・・・」

何気なく放った俺の言葉に、オリヴィエは顔を赤くし狼狽え始める。

「べ、別に、奴は私のオーナーだからだ!それ以上でもそれ以下でもない!」

もしや、これが噂のツンデレというやつか!
その言葉を聞いた青葉がくすくすと笑う

「な、なんだ!何がおかしい?!」

「いえ、素直ではないな、と」

「う、うるさい・・・・」

オリヴィエは急にしおらしくなり俺の腕から離れていく。
それに乗じて青葉も木原の腕から離れ、こちらへと戻ってくる。
こうして、逆転していた二人の立ち位置も元に戻り、ようやく女の戦に終止符が打たれたのだった

「ま・・・・躓く事はたくさんあると思うけど、よろしくね、木原」

「オケ、わかった」

そしてここに大木修好通商条約みたいなやつが結ばれた。

・・・・・てか修好通商ってなんだっけ?




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




さてと、ようやくデパートに到着したわけだが
とりあえず衣料を売っているのは・・・・・・5階か
あ、ちょうどそこにエレベータがあるわ

「青葉、エレベータで行こう」

「いいえ」

ケフィアです。
・・・・・あれ?
今、いいえって聞こえたんだけど?

「階段で行きましょう?」

「おふ・・・・」

か、階段って、5階っていったら中途半端に長いし!

「大樹様、これも朝のランニングと思えば大したことありません」

「そ、そっか」

デパートでもトレーニングしろと・・・・
ちなみに、朝のランニングではようやく10分間走れるようにりました;

タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

きつ・・・・
な、なんで、デパートで、汗かかなきゃ、いけないんだろ;

「大丈夫ですか?」

大丈夫なんですか?!
本当に底が知れませんね、あなたは。
と、

ピーンポーンパーンポ〜〜ン

『お呼び出し申し上げます』

グッドタイミングで放送アナウンスが流れる

『近くからお越しの根本大樹くん、根本大樹くん』

は?俺?しかも『くん』って

『お連れ様がお待ちですので、至急4階おもちゃ売り場までお越しください』

ば、馬鹿な!
俺のお連れ様は隣の青葉しかいないはずだ?!

「大樹様、呼ばれましたよ?」

そんな、素で心配しているような顔しないで・・・・

「いや、心当たりが無いっていうか」

「とりあえず行ってみてはどうです?」

「お、おう」

タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタ

てか何で!何で、また走しらなくちゃいけないんだよチクショォォォォォォ!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

やっとの思いで玩具売り場にたどり着いた俺を待っていたのは

「ち・・・・・・千、彰・・・・・・」

「よっ・・・・」

雲のように軽い挨拶で汗ダクの俺を迎える

「よっ・・・・」

もちろん蓮も一緒だった。

「はぁ、はぁ、よっ、じゃないでしょ?!」

「今日は来てたんだ・・・・」

「きょ、今日は?」

「毎回デパートに来たら、この放送かけてる・・・・」

「なっ・・・」

ってことは、俺・・・・迷子の常連さん扱い?!

「や、やめようよ!とんだ恥さらしじゃん!」

「いいでしょ、どうせ今に始まった事じゃないんだから・・・・」

「尚更早期にやめるべきでしょ?!」

「青葉のとこ、行こう・・・・?」

蓮、お前がこれから千彰色に染まると考えると
お兄ちゃん。涙と鼻水と脱毛が止まらないよ・・・・

「はーげーろ、はーげーろ・・・・・」

「だあっ!なんで千彰は俺の思考に干渉できるのよ!!」

「話すと長くなる・・・・」

急に千彰の声が真剣モードに入った。

「ど、どうぞ」

「勘・・・・」

タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタ

勘?勘ってなんだっけ?
か・ん?

「二文字じゃねぇかぁぁぁぁっ!!」

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダ

疲れを忘れ、小さくなっていく二人の背中を無我夢中で追いかけた


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あれ?千彰さんと蓮さん?」

「「よっ・・・・」」

それ流行ってんのか?

「はぁ、はぁ、ほ、放送かけたの、二人だってさ」

「そうだったのですね」

「大樹から色々聞いた。俺たちも服買いに来た・・・・」

嘘つけ。
さっき決めたんでしょ、どうせ

「大樹、大樹・・・・」

二人の話とは別に、蓮が俺の服の端をチョイチョイ引っ張ってくる。

「はぁ、はぁ、な、何?蓮」

「”服を買いに来た”と掛けて”千彰”と解いて・・・・」

蓮、またそんなムチャぶりして・・・・
謎かけどころか、呼吸が整わないよ・・・・

「はぁ、はぁ、とりあえず、行こうか?」

「はい」

「「よっ・・・・」」

使い方くらい一貫したら?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「では、少々お待ちください」

シャァァァァーーーー・・・・・・

カーテンが青葉と俺、蓮と千彰を隔てる。

「千彰、色々ありがとね」

ぐっ

親指を立て「気にすんな・・・・」のポーズ
最初は二人が一緒に買い物なんてどうなるかと思ったが、むしろ一緒で正解だった。
女性のファッションに疎かった俺とは違い、様々な事に精通している千彰は
その人に合った服を的確にチョイスしてくれたし、その選び方さえも教えてくれた。
それで丁度、千彰がチョイスしてくれた服を試着中というわけ
そういったところはすごく尊敬してるんだけど・・・・

「何・・・・?」

「い、いや、なんでも」

いつの間にかガン見していたようだ。
まあ昔から何かとおしゃれだったし、二枚目だったし
やっぱりそういったところによく気を遣ってるからこそなんだろうなぁ・・・・

「何・・・・?」

「あ、ごめんごめん、ぼーっとしてた」

「いつものことでしょ・・・・」

「・・・・・・。」

あ〜ぁ、俺、生まれ変わるなら絶対千彰だな

「お待たせしました」

そんなくだらない事を考えている間に、どうやら装備が整ったようだ

シャァァァーーー・・・・・・

カーテンが開く

「ど、どうでしょうか」

「・・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・はっ、意識が飛んでた!
や、やばいってこれ。

「大樹、様?」

「すごく、すごく良いと思う!」

殺傷率120%の必殺ものだった。
マキシ丈の暖色スカートに、胸元が程よく開いた白のインナー
その上にシーンズ色のシャツを羽織り、端を胸のところで結び合わせた
青葉という綺麗さをベースに可愛らしさを表現した、とてもレベルの高いファッションだった。

「そうですか、千彰さん、ありがとうございます」

「うん・・・・」

ほんのり赤く色付いた顔が更に青葉を映えさせている

「次は私・・・・」

青葉の隣の更衣室のカーテンが開く

シャァァァァーーー・・・・・・

「おお〜」

思わず声が出てしまった
なんというか、流石千彰だ。
幼い容姿の蓮が大人びた服装をすると、どうしても背伸びをしているような印象を受けることが多いが
そういった感じもない。
黒のペチワンピースに、重ね着として黒系ボーダーの七分丈ニットセーターを着るという比較的シンプルなもの。
全体的にふわふわした容姿で、子供っぽく見えるものの
シンプルさが逆に大人っぽさを演出している。

「似合ってるよ」

「うん・・・・」

二人で褒めたからだろうか、とてもご機嫌のようだ。

「決まりだね」

「はい」

互いに顔を合わせ微笑み合う

「青葉・・・・」

と、
服を脱ぐため、再度カーテンを閉めようとした青葉を千彰が呼び止める

「どうされました?」

「耳貸して・・・・」

こちらまで聞こえないが、何やら耳打ちをしている様子
千彰の耳打ちはろくなことないからなぁ・・・・

ごにょごにょごにょ

「大樹様!」

「わっ!ど、どうしたの?」

「次、本屋さんに行きましょう!」

「ほ、本屋?わかった、了解した」

シャァァァァーーー・・・・・・

カーテンが閉まる。

「おい、千彰。何を話してたんだよ?」

「大樹をドキドキさせる話・・・・」

ドキドキて
大雑把すぎて分からんが、これ以上聞き出すような無粋な真似はしなくてもいいか

「大樹・・・・」

「何?蓮」

「本屋さんと掛けて千彰と」

「だめ」

「・・・・ケチ・・・・」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「大樹様、紅茶がはいりました」

「ありがと」

かちゃ・・・・ずずず〜・・・・・かちゃん

「おいし」

「今日は私のためにありがとうございました」

青葉は正面に向き直って深々と頭を下げる

「いいっていいって、いつものお礼だと思ってくれれば」

「それはいけません。今日、これからお礼をしようと思っているのですから」

ずるっ

す、すごい理屈だな

「大樹様、ここへ」

ぽんぽん

そこは!
幻想の地、膝枕!!
以前に一度踏み入れたことがある
視界を覆う肌色と鼻孔内にシンナーを漂わせる、依存性の高い土地!
再びそこへ赴けと?!

「ひ、膝枕はこの前やってもらったし、いいかな」

なんて心にも無いことを言う。

「だめです、あれは耳かきで本当の膝枕ではありませんから」

本当の膝枕?!
そういわれると体験してみたいところだが、断った手前言いにくい・・・

「は・や・く♪」

「是非!!」

即答。
甘え声の青葉の誘惑に余裕で屈した俺。
しかし未練はない!

ぽふん

今回は前回学んだ事を生かし、無事着地。
息を止めなくていい、これも学んだのだった。
流石に2度目だからか、感触を楽しむ余裕も出来た
すごく柔らかくて温かいものなんですね、これって

「いかがですか?」

「うん、気持ちいい」

・・・・感想として合ってるか?

さわ・・・

「今日はお疲れでしょう、このままお休みになられて結構ですよ?」

青葉の手が俺を優しく撫でる。
とても心地良くて、なつかしい感じがした

「でも、それじゃあ青葉が」

「ふふ、言うと思いました。心配なさらないでください、嫌なときは嫌と言いますので」

「・・・・わかった」

「くすっ、偉い偉い♪」

まるで子供を寝かしつけるように、優しく語りかけてくる。
もしかしたら甘えるっていうのはこういう事なのかもしれない。
甘えることから随分離れていた俺は、きっと甘えることを恐れていた
だから相手を気遣うことで回避していた。
でも、こうして青葉に自覚させてもらうことで気付く
甘えることの大切さを、甘えないことの愚かさを。

「青葉、ありがと」

「はい、こちらこそ」

その言葉とほぼ同時に、俺は意識を深いところまで墜とした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


「大樹様?・・・・・ふふ、すっかり寝てしまいましたね」

さわ・・・・

「最近はレンジツカレでしたからね」

「すぅ・・・・」

「今日、本屋さんで購入したのは千彰さんに薦められたファッション雑誌でした」

「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・」

「私、きっとあなた様の理想になってみせます。ですからもし、その時がきましたら」



私を、愛してくれますか?





======================================




「くそっ!なんだこりゃあっ、何も見えねぇ!!」

厳つい顔をした大男は不思議な形状をした槍をぶんぶん振り回す

「あ〜ぁ、勿体ない。それ、あんたが使うべきじゃないな」

「どこだ!どこにいやがるっ」

大男は目を開けている
が、それでも見えないというのだ。
雲に隠れた月が姿を見せる頃、闇に隠れたもう一人が姿を現す。

「くふふ、どうやら耳の方もいかれているらしい」

少年の茶色の毛髪が月に照らされ金色を装う。

「ならいっそのこと耳なんていらないか」

スパンッ

手に持っていた短剣で素早く大男の耳を削ぎ落とす。

「ぎゃああああああああああああっ」

「うるさいなぁ」

鬱陶しいといった表情をして、地面をのたうち回る大男を見下げる。

「バルディナッ!バルディナはどこだぁぁぁぁっ!!」

「バルディナ?ああ、あんたのパートナーの魔女か」

少年はつまらなそうに「あれ」と小さく丸まった”モノ”を指差す
しかし、大男は視力を奪われているため確認することが出来ない

「ああ、見えないのか。・・・・半殺しにした、もう息してるかわかんないや」

「食べちゃってもいいよね♪」

「ああ、だけど後始末もちゃんとしろよ?黒羽(くれは)」

少年は再度大男を見る

「あとはあんただけ。力を封じられた力ある者が、嬲られるのは当然だろ?」

月光の逆光で少年の顔は影に隠れてしまっている
だが、その声には確かに悦が含まれていた。

「まだまだ夜は長いよ?第二世代教育<力>(マトンネズ・ビゴー)?」

11/01/23 10:29更新 / パっちゃん
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■作者メッセージ
皆さん、おはこんばんちは、パっちゃんです。
普段より少し長めの作品となってしまいましたが、お読み頂き感謝致します!
さあ、数え切れないほど立ったフラグがどんどん明らかになっていきます。
更新速度は遅すぎず早すぎずの丁寧な執筆を心がけて行きたいと思いますので
まあご期待ください!!

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