あの日
俺がベンチに座って尻を汚したあの日
ＤＲコーポレーションの使者は新君祭の開催を宣言した。
つまり、あの時既に千彰は巻き込まれていたんだ
この子と組むことで・・・・
俺は蓮（れん）と呼ばれた少女に目をやる

じ〜・・・・・

なんか、既に超見られてるし

チョィチョィ

俺から目を離すと、隣に座っている千彰の服を引っ張り、何やら耳打ちを始めた。
それに答えるように千彰も蓮に耳打ち
千彰の言葉にうんうん頷いた後、俺の方に立ち膝でちょこちょこと寄ってくる。
どしたんだ？

「失礼、します・・・・」

そんな前置きの後

ぎゅっ

突然抱きつかれる

「え？え？えぇ？？？？」

なんで？なんで急に？
千彰は何を耳打ちしたんだ？！
小さな体が俺にしがみつき、胸の辺りに顔を埋める。

「ち、ち、ち、ち、千彰！何したの？！」

「もうすぐわかる・・・・」

意味分からん！
と、
いつの間にか蓮は俺の顔を見上げていた。
心地よさそうな瞳が俺に向けられる。
その目は凄く大人びて見えて、一瞬ドキッとした自分がいた。

「千彰と、同じ匂い・・・・」

「え？」

同じ匂い？

「大樹、好き・・・・」

す、す、好き？！
ぽふっと、もう一度体をあずけてくる。
あぁ、こんな光景を一般人に見られたら、間違いなくロリコン野郎決定だろう
ましてやメイド服も着せるなんて・・・・
でも俺は今一瞬思ってしまった
それでも構わないかも、と。

「蓮、大樹が体も欲しいって・・・・」

なっ？！

「好きにして、いい・・・・」

かはっ・・・
その大きな瞳で俺を見つめないで
ホントにその気になったらどうす・・・・

「大樹、様？」

ぞくっ
おぉ、何だこの俺にのしかかってくる負のオーラは・・・・
背後を確認。
そこには明らかに負の炎を纏った青葉の姿があった

「と、青葉、あ、いや、ちがうんだ、これは」

じと〜〜〜・・・・

わ、忘れてた
青葉は人一倍の嫉妬の持ち主だった！
ど、どうしよう、この状況をなんて説明すれば・・・・

「蓮、もういいよ・・・・」

「うん・・・・」

は？
もういいよ？

「大樹の『あれ？俺、もしかしてロリコン？』大作戦、成功・・・・」

ま、まさか？！

「蓮に色々言ってもらったけど、ホントは匂いを嗅ぎに行っただけ・・・・」

ハメられた？！

「そのまさか・・・・」

「心読めんのかよっ！」

そんな俺の突っ込みが届いた様子はなく

「ちょっとは安心した・・・・？」

二人で話し始める

「うん、大樹は、もう一人の千彰・・・・」

つまり、安心してくれたのか。

「うん・・・・」

「え、蓮まで心読めるの？！」

「大樹、単純・・・・」

グサッ

初対面の蓮に言われてしまった・・・・ショック
俺も一度あなたたちみたいな複雑な奴になってみたいよ、ほんと。

「で、新君祭の話・・・・」

「ああ、そういやそれが本題だったね」

「忘れてたの・・・・・・・？ﾄﾘｱﾀﾏ」

「千彰、前から言おうと思ってたけど」

「話逸れるから、黙ってて・・・・・」

ぐ・・・・

「もう、戦ったの・・・・？」

「ん？ああ、昨日さ、ラブレターあったじゃん？あれ、アンサーからの罠だったんだよね」

「そう・・・・・」

千彰の感情は表情よりも語調に表れる
憂い。
語調の中に今確かに含まれていた。

「なら、扉も見たんだ・・・・」

「ああ」

思い出すだけで後悔の念が心に渦巻く。
青葉と一緒にいるためには勝たなくてはならない
しかし、それは同時に他の誰かを踏み台にしていくということ。
それを昨日、身をもって思い知らされたばかりだ。

「蓮、あれを見せて・・・・」

「わかった・・・・」

蓮は一度襖の奥に入っていくと、ガラスの板のようなモノを持ってきた。

「何それ？」

「ここ、見て・・・・」

千彰の指差すところ
そこには数字が書いてあった。

「６３？」

何を表しているんだろう

「残りのアンサーの数、ですか？」

青葉が指摘する。

「ん・・・・」

肯定。
どうやら当たっているらしい

「ごめん。俺アホだからイマイチ分かんないんだけど、詳しく教えてくれない？」

「実はこの新君祭、参加社は合計１００社。つまり初期の状態だとアンサーが１００人いることになります。」

「つまり？」

「昨日一日だけで３７人敗者が出た、という事になります。」

「・・・・っ」

３７人
しかも開催初日でこれだけの人数が・・・・

「多分、機会はすぐそこまで来てる・・・・」

免れられない現実。
それが目前まで・・・・

「だから・・・・」

しばしの沈黙
・・・・・・・。
わかってしまった、千彰が何を言おうとしているか。
何を望んでいるか。

「出来るだけ一緒にいて協力し合おう、でしょ？」

俺の言葉に千彰は微笑む

「もちろん俺は賛成」

青葉に目配せすると、当然です、と言わんばかりに頷く。

「決まりだね」

「うん・・・・ありがとう」

この時から俺たちは、二人一組から四人一組として行動することになった。
この決定がどんな結果を生み出すのかは分からない。
でも
今一番欲しいのは、支えてくれる人。
だから俺たちは迷わなかった。

「今日、うちに呼んだのは、それを見越した親睦会・・・・」

「よっしゃ、なら早速始めようぜ！」

こうして尾形千彰主催の親睦会（主に蓮のため）が始まった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「次、王様ゲーム・・・・」

・・・・・俺たちは
俺たちは、どこで道を踏み外したんだろう？
最初は普通だったのに
なんで、段々、段々、合コンみたいなノリになっちゃってるの？！
そんな思いを他所に始められる『王様ゲーム』

「みんな青の箱に自分の名前１０枚。黄色の箱に１０枚。赤の箱に動詞を１０枚。紙に書いて入れて・・・」

動詞か
何にしようかなぁ〜？
あんまり卑猥なのと結びつかないようにしよう。
さらさらさら〜っと

「引く順番は、最初俺。次は大樹。その次青葉。最後蓮・・・・」

文章はこんな感じになるらしい

＜青＞が＜黄色＞を（に）＜赤＞。
＜青＞と＜黄色＞が＜赤＞。

これも交互に変えていくらしい。
今思ったけど、超本格的やん。
まず、最初は千彰
青・黄・赤の箱からそれぞれ一枚ずつ取り、紙を開き読みあげる

「　大樹　が　青葉　に・・・・」

俺が、俺が青葉にどうするんだ？

「パイズリする・・・・」

・・・・・ぱ？
ぱ・・・・ぱ、ぱ、ぱ、パイズリ？！
出来ねぇし！そもそも動詞おかしいだろうがぁ！！

「ちっ・・・・」

あ、舌打ちした
千彰だ、奴が犯人だ。あいつの動詞は全部ハードに違いない！！
くそっ、引いて堪るか！

「次は俺だよな」

俺が望むモノ。それは復讐
このゲームは運がカギだ、流石の千彰も覆せまい！
俺は青・黄・赤に手を入れ、紙を掴む。
くふふふふふ・・・・
俺の運を舐めるなよぉ・・・・・どんっ！
紙を開く

「　大樹　」

・・・・・・・。
気を取り直して次っ・・・・・どんっ！

「　大樹　」

何でよっ？！
もっとまともなの来いや！

「　大樹　と　大樹　が」

もう何出ても無理だろ、こりゃ流されて終わりだな
そう思いつつ最後の紙を開く。

「　会話　」

か、会話？！
って、これも俺が書いた奴じゃん！

「早くやって・・・・」

「は？」

「会話・・・・」

「ちょっ、何言って」

「一人二役・・・・・」

マジで？

「早く、次始まらない・・・・」

「わ、わかったよ」

もう、どうすればいいのかさっぱりわからん。
こうなりゃ勢いしかない！！

「おう、ひさしぶり」
「おう」
「他愛もない話しようぜ」
「おう」
「実はさあ」

「紙、引き終わりました」

「スルーーーーーーーーーーーーッ！！」

みんな・・・・俺に対しての愛が足りなさすぎ！

「おいっ、千彰っ！次始まらないんじゃなかったのかよ？！」

「え？大樹が始めたからこっちも始めただけ・・・・」

あ、待っててはくれないのね
つまり同時進行しろってことなのね；
がくっ
膝を着いてorzのポーズ。
それまでも皆はスルーし、青葉は手の上の三枚の紙を開ける

「　蓮　さんが　わたし　に」

そこまで言って口籠もる。

「青葉？」

「で・・・・・電気、アンマ、だそうです」

エロい！
実にエロエロな構図だ！！
てか、電気アンマなんていうマニアックネタを持ってきたのは一体・・・
いや、考えるまでもない
どうせ千彰に決まって

「私、電気アンマ、得意・・・・」

・・・・は？
得意ってまさか

「ほ、本当にやるんですか？」

青葉が珍しく動揺している。
まあ、自分で言うのもなんだが、恐らく主人の前であんな姿やこんな姿は見せたくないのだろう。

「青葉、そこに寝て・・・・」

蓮はちょいちょいと床を指す
顔を赤くしながらも、素直に従う青葉。

「始めるから、千彰と大樹はそっち・・・・」

要するに、青葉のスカートの中が見えないように横から見ろってことだろう。
俺と千彰は指示に従い移動。

「始めるよ・・・・」

蓮はその場に腰を降ろし、目の前にある青葉の両足首を掴む。
そして、蓮の片足がゆっくりと青葉のスカートの中へ伸びていく。
どきどきどきどき
ああ、ああ、ああ、ああ、ああ！！
さっきから胸の高鳴りが止まらないっす！
あれ？もしかして、俺・・・・楽しんでる？

「あ・・・・・」

目をぎゅっと瞑った青葉から声が漏れる
どうやら始まったようだ。

ゆさゆさゆさゆさ

優しく、尚かつ一定の間隔で蓮は足を前後に動かす
それに同調して青葉の体も揺れる。

「あと、１５秒・・・・」

ちゃんと制限時間があるっぽい

「青葉、大樹が見てるよ・・・・？」

「そん、な、んっ、み、見ないでください、ぁ」

そんな
荒い息をしながら、しかも薄く開かれた色っぽい目で見られたら
もう釘付けですよっ！！

「７、６、５、４・・・・」

「んっ、ぁ・・・・・」


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ
ああ、なんか俺まで呼吸が乱れてきた。
てか、さっきから俺に対しての攻撃が多過ぎね？

「終わり・・・・」

そういうと蓮は何事も無かったかのように立ち上がり
直ぐさま３つのボックスの前に移動し始める。
それに対して、青葉はというと

「はぁ、はぁ、はぁ」

未だ放心状態で横になったまま。

「青葉、だいじょぶ？」

「は・・・・・・・恥ずかしかったです」

気の毒に。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「今日は、ありがとう・・・・」

「な、何の、何の」

ようやく終わった親睦会。
正直終盤はきつかった
俺と蓮の両端ポッキーは、観客からの鋭い視線に晒されるし
俺と千彰の野球拳に至っては、青葉も蓮も恥ずかしがり、ほとんど二人BLプレー。
今思えば、俺ばかりやらされていたような気がする・・・・
まあそんな波乱の王様ゲームはようやく幕を下ろした訳で
主役である蓮は既に疲れて寝てしまい、玄関先まで出てこられたのは千彰だけだった。

「これから、すごく大変になる・・・・」

「だね」

今日一日は新君祭など忘れて遊ぶことが出来た
でも、明日からは辛い現実が待っている
何気ないこの瞬間さえも戦い、そんな日々。

「・・・・・・。」「・・・・・・。」

俺と千彰は見つめ合う。
生まれてから今まで決して離れることがなかった、もう一人の自分
これからの戦いで確実に傷ついていくだろう、もう一人の自分。
手が自然に前へ出る
そして掴む、目前の手を。

「お二人は、ズットモダチです」

青葉の柔らかな声が、手を結ぶ俺たちを包む
ズットモダチ・・・・
ずっと・・・・友達・・・・・
はは、このタイミングでそれとか。青葉らしいわ

「これからもよろしく、千彰」　「これからもよろしく、大樹・・・・」

寒空の下
俺と千彰、そして青葉の白い息が混ざり合う。
混ざり合った息は今までとは違い、すぐに飛散せず中空を彷徨う
まるで、今の俺たちの関係を表しているかのようなその息。
ここに蓮が加われば、もっと濃くもっと残るものになるんだろうな・・・・

「じゃ」

「失礼します」

「うん・・・・」

俺と青葉は歩き出す
自分の家を目指して。そこにある温かさという安らぎを求めて




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「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい！！」

女は宝石のようなモノを、隣で気絶している男のポケットから取り出す

「ふ〜ん、これが君のシンボル」

「は、はい」

「あ〜・・・・・興味ない」

ゴッ

殴る。

ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ！！

殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る

真夜中の街に、女の断末魔と骨の砕ける音が響く

「くふふふふ、あ〜ぁ、もう動かなくなっちゃった」

どさっ

「第二世代、か・・・・・早く会いたいなぁ・・・・」

■作者メッセージ
毎回毎回長文をお読み頂き、本当にありがとうございます。
パっちゃんです。
この話は笑い要素が少なく、いささか退屈なモノになったしまいましたが
決して笑いを失ったわけではありませんので、ご安心（？）ください。

もう６話ですね
ようやく、ゴールが水平線の向こうに見えてきた感じです。
え？一生たどり着けないんじゃないか？
・・・・・まあ、ご期待