連載小説
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 1語目 トモダチアキ(友達+千彰)
えっ!内定!?
ほ、ほんとですか!?あ、あ、ありがとうございます!
よっしゃああああああぁぁぁっ!!
第一希望の企業に受かるなんてまるで夢のようだ。
あはは、うふふ、この喜びを誰かと分かち合いたいなぁ

「ひさしぶりじゃのぉ、大樹」

あ、じいちゃん!
俺やったよ、合格したよ!

「うんうん、祝いにこれやる」

ほんと?!なになに

ズッシィィン・・・・ズッシィィン!!

ぎゃあああああああっ!!!!
ド〜〜〜ラ〜〜〜ゴ〜〜〜ン〜〜〜〜〜ッ!!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「大樹様、起きて下さい。大樹様」

ゆさゆさ

「おふ・・・」

誰かに揺すられているのに気づき俺は目を開ける。
まだ視界はぼやけたまま。
だんだん焦点が定まってきて
定まってきて
定まって、
きて・・・・・
金色の瞳と目が合う

「・・・・・。」

もう一度ゆっくりと目を閉じる。

「ふぉぉぉぉぉぉ・・・・」
「!? た、大樹様!どうしたんですか?!」

そりゃ心配するだろうて。目を閉じたまま「ふぉぉぉぉ・・・」なんて奇怪な唸り声あげたら

バッ

俺は急に上体を起こす。

「だいじょぶ、だいじょぶ。」

そう言って目を閉じたまま、側にいる女性に向き直り頷く。

「あの・・・目」
「だいじょぶ、だいじょぶ」

と言いつつ
ちらっと目を開け彼女を確認・・・
混じりっ気ありのエロ仕様メイド服。
それを見て再び目を閉じる。

「ふぉぉぉぉぉ・・・・」
「た、大樹様っ?!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「す、すげぇ・・・」

食卓の上には日本の朝食のが見本のように並べられていた。
特に好きって訳じゃないけど、壮観だよな・・・

「昨夜は大樹様の好物を聞きませんでしたので、朝はベーシックにしました。」

べ、ベーシック?!
これがベーシックだというなら、彼女から見てどれほどの人間がその領域に達していないことか。
恐るべし、めいどらごん。

「大樹様?学校のお時間が迫っていますが?」
「あ、ホントだ!じゃあいただきます!」
「はい、召し上がれ」

今、にっこりと笑う彼女に見とれていたのは内緒である。

「ふむ」

俺はそんなに料理の味にうるさくない。
だからこれが他の人から見ておいしいのかはわからない。
そんな俺でも分かったのは、みそ汁のうまさ。
作った人の味付けが顕著に出るこの料理でこの出来はすごい。

「・・・おいしい!」
「ありがとうございます」

・・・あ
もっと早く褒めてあげるべきだった
きっとこの一言を待っていたに違いない。
彼女の本当に嬉しそうな笑顔からそう気付かされる。
なんか、勉強になった。

「あ、これ里芋?おいしそうだな」

プスッ

ばしっ

「アウチッ!」
「大樹様、それは刺し箸です」

にこにこ。

・・・勉強になりました

「あ、そうでした。大樹様、これを」

青葉の両手がこちらまで伸びてくる
その手を上から覘くと

「・・・笛?」
「はい、とても大事なものです。あなた様に持っていて頂きたいのです」

ホイッスルというより
小さな角笛のような形。

「持ってるだけでいいの?」
「その笛の出す音はドラゴンの可聴出来る周波数の音が出ます。なにかありましたらすぐにお吹きください、すぐに駆けつけます。」
「あ、ありがとう」

素直にもらっておこう
青葉の掌から笛を受け取る。

「俺、そろそろ行くけど。青葉はどうするの?」
「ここでお待ちしています」

当然と言わんばかりの口調。
この尽くし様、これがメイドか!

「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃいませ、大樹様」

ガチャ、バタン!

・・・・良い。
なんか良い。
ジイジ、俺あなたのこと誤解してたかも。
昨日は驚いたけどこの感じなら上手くやっていけそう!
そう考えると学校へ向かう足取りは自然と軽いものになった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「おーっす」

教室に入るとみんなに声をかける。
クラスメイトは口々に「おはよう」とか「おう」と
口々に挨拶を返してくれる。
クラスの中でもムードメーカーと呼ばれる俺は、友達に苦労することなく当たり前の日常を過ごしていた。

「だんだん寒くなってきた・・・」

どこからともなく声がする。

「そうだねぇ」

特に驚くことなど無い。
この声の主とは長い付き合いで、声色どころか行動パターンも把握している。
つまり幼馴染みってことなんだけど。

「今日、マフラーしてきた・・・」

声のする方に向き直ると、初見の人なら息を呑むほどのイケメンがマフラーで決めポーズしていた。
なんつーか、クールなのに行動は突拍子もない事ばっかすんだよな。

「俺が言うのも何だけど、やっぱお前掴み所無いよ」

ぽんぽんと肩を叩く。

「触んなよ」
「お前ホント何なんだよ!」

こいつ、尾形千彰(おがたちあき)とは昔からこんな仲だ。
性格は正反対、俺が陽気で奴がクール。
そのサバサバした性格から言いたいことをズバっと言って相手を傷つけたりすることも多々。それが祟って人付き合いも苦手になってしまったようだ。
だが、先程言ったとおり超イケメン。二人で並んで歩いていると俺が完全に引き立て役。

「もう、自分で言ってて悲しくなるわ!」
「ん?」
「いや、なんでもないさぁ〜・・・」

で、街歩いてたら普通に逆ナン。
でもそれを冷たい言葉で粉砕。
その繰り返しで今に至っている。
そんなこんなで俺にしか心を開かない、そんな男になってしまった。

「・・・なんかあった?」

うっ、流石に千彰は鋭いな。
生まれたときから一緒にいる俺たちにとって、互いの変化に気付くのは容易い。

「実はさあ・・・」

俺が話し始めようとすると、ガラガラっと教卓横の引き戸が開く。

「はい、みんなおはよう」

絶妙のタイミングで教師が入ってきた。

「あちゃ、続きは帰りでいいか?」
「・・・優しくしてね・・・///」
「いらん!そんなボケいらんっ!」

教師は生徒が静まる前にすぐ出席をとり、教室から出て行った。
次の授業は・・・物理か
教科書、教科書っと

ゴソゴソ

あ、あれ?・・・ない!ないぞ!
どうやら教科書を忘れてしまったようだ、
ちくせう。
しゃーない、隣の女子に見せてもらおう

「わりぃ、教科書・・・」

と、

ブワァッ

一陣の風が教室に吹き込み
俺と隣の奴の間を駆け抜ける。

「うわっぷ!何々?!」

風が収束していくのを見計らって辺りを見回す。
だが、特に何かがあるわけではない。
何だったんだ?廊下に強い風が入ったんだろうか。
とりあえず教科書を・・・

「わりぃ、教科書・・・」

ふと自分の机に目をやる。
本だ、本が置いてある。
ぶ・つ・り♪

「わりぃーーーーーーーーー!!」

思わず教科書に向かって叫ぶ。
突然のことにクラスの目が俺に集中。
そして教科書を借りようとした隣の女子がトドメの一言。

「大樹、なんで教科書に謝ってんの?」

・・・・・。

ドッと爆笑の渦が巻き起き、笑い声・机を叩く音・しゃっくりする奴まで出る始末。
くそぅ、ナチュラルボケ扱いされたぁ・・・
恥ずっ!俺、すごく恥ずい!

ぴら

教科書を手に取ると、手元から紙切れが一枚ひらひらと落ちる。
何やこれ。
そこには綺麗な文字が並べられていてこうあった。


忘れ物です。
次はありませんからね? 青葉


・・・・まさか、さっきの風?
でもどうやって?窓が開いている訳でもないのに・・・・
考えれば考えるほど謎だ。
とりあえず、帰ったらお礼を言おう。なんか「次はありません」が恐いし。
その紙をブレザーのポケットにしまうと、俺は授業の準備を再開した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「そういえば、朝の話、なんだったの?・・・」
「おお、そうだった」

帰宅途中。
他愛もない話についつい華が咲いてしまいすっかり忘れていた。

「いやさ、実は俺の家に・・・」

と、

「大樹様」

前方から女性の声が聞こえた。
誰かは・・・確認するまでもない。
俺を様付けで呼ぶのは今のところ一人しかいないのだから。

「ただいま」

顔をあげると、そこには両手一杯にすごい量の荷物を持ったメイドの姿があった。

「おかえりなさいませ」

ぺこり

「ええぇーーーーーーっ!!」
「?」

なぜ驚いているのか、首を傾げた彼女はそんな顔をしていた。
だ、だって、明らかに多い!
大体彼女の2倍くらいの量である。
一体、その細い腕の何処にそんな力があるの?

ぽん

ん?
肩に手が乗る。
手の主は言うまでもなく千彰。

「大丈夫、変態でも幼馴染み・・・」

哀れむような千彰の目。

「何?何が!?」

千彰はゆっくり指差す。
青葉を。
いや、正確には彼女の着ているメイド服を!!

「いや、待て、違う、おい!」

すすっと千彰は俺から身を退く。

「ま、待って」

手を彼の肩に置こうとする

ひらりとかわされてしまった。

「・・・汚れる」
「さっきの大丈夫はどうしたぁぁっ!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ドラゴン・・・」
「はい」

これは珍しい、千彰が異性と喋ってる。
青葉は俺にしたのと同じように自己紹介し、俺が昨日の出来事をを補足した。
すると、いつもなら初対面の相手に、ましてや異性に話しかけなどしない千彰が青葉に話しかけたのだ。
明日は・・・雪かな。
う〜ん、この季節なら雪は妥当かぁ。
明日は・・・あんパンかな。

「大樹がなんかあったの、これだったんだ・・・」
「まあ、そういうこと」

確信の込められた千彰の言葉に俺は素直に頷く。
そんな話をしている間に俺たちの岐路に着いてしまった。

「詳しくは、明日きかせて・・・」
「おう、じゃあな」
「お気をつけて」
「ありがとう・・・」

ふっと微笑んだ後、千彰は踵を返して帰路を進んでいく。
遠ざかっていく千彰の後ろ姿を二人で手を振りながら見送る。
この季節。日が短くなり、5時現在で既に真っ暗。

「うし、帰るか」
「はい」

千彰とは反対の道を二人並んで歩く。
すると突然

「トモダチアキさんですね」
「はい?」

聞き捨てなりませんねその言葉。

「もう一回言って?」
「ドモダチアキさんですか?」
「ともだちあき?」
「はい」

出た!「何か問題でも?」顔

「ごめん、苗字は”尾形”なんだけど」
「はい」
「でも、ともだちあき?」
「友達+千彰さん=トモダチアキさんです」

マイブームなんだろうか。
どんどん造語を生み出していく。
そこで、俺はこの現象を『青葉辞書』と名付けることにした。

「それはそうと・・・」

青葉の手に視線を移す。
彼女はず〜〜〜〜っと荷物をもったまま。
何か隣を歩いてる俺が罪悪感を感じる。

「それ、ちょっと持とうか?」
「大丈夫ですよ」

にこっと余裕の笑顔。
芸術ものだな、この笑顔・・・
ぁあ!いかんいかん!

「いや、相当重いよね?」
「お気遣いありがとうございます。でも鍛えてますから」

またまた余裕の笑み
・・・ホント、底が知れん。

「あっ・・・」

っと、そういやまだ言ってなかったっけ。

「そうそう青葉、教科書助かったよ、ありがとう」

久しぶりに心からそう思った。
どうやって届けたか、どうして忘れているのを知っていたのか。
そんなことはどうでもいい。
ただ、感謝したかった。

「もちろんです、あなた様のメイドですから」

顔を赤くし少し俯く。
誘惑してますね、この人。

チリッ

「!!」

咄嗟に後ろを振り返る。
急に視線を感じたからだ。
だが、この道は人が隠れられるような障害物がない開けた道。
何もいないということは気のせいなのだろう。
横を見ると、なぜか彼女も振り返っていた。
偶然、だろうか・・・

「・・・・」

彼女もそれが気になったようでこちらを見る。
目が合う。
き、気恥ずかしい・・・こんな時は

「ん・・・・」

顔芸をしてみた。
フガフガと鼻を鳴らしてみたり。

「ふがっ・・・・」
「・・・・・・っ」
「ふが、ふががっ・・・」
「・・・・・・ぷっ」

俺の勝ち
まあ、小学校あたりから顔芸には自信あったから当然の結果だな。

「人の顔見て吹き出すなんて、失礼だろ?」

確信犯の説得力のない言葉に

「す、すみません・・・・・・ぷっ」

再び吹き出す。
ここまでツボるとは思ってなかった。
だが、チャンスであることは確かだ。

「罰として、その片手分の荷物を俺に渡しなさい」
「ふふふ・・・で、ですがそれは」
「いいから、ほれ」

目の前に差し出される俺の手に流石の彼女も観念し、渋々、だけど笑いを堪えながらその場に右手で持っていた荷物を置く。

「では、お願いしますね」
「まかせと・・・」

荷物を持ち上げようと腕に渾身の力を入れる。
が、
持ち上がったのは地上わずか1cm

「け・・・・って、重っ!!」

尋常じゃない重さ。
これを片手とは・・・とんだ怪力メイドだな。

「大樹様、大丈夫ですか?」
「イケルッ!!」

俺はそのまま1cmの距離を保ちながら
前を歩く青葉の後を追った。
これじゃあ、俺の方が罰ゲームじゃん・・・



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



夕食後
なんかゆっくりしているところに、青葉から声がかかる。

「大樹様、こちらへどうぞ」
「え?こちらってどちら?」
「ここです」

微笑みながら正座している青葉は、ポンポンと膝の上を叩く。

「な・・・」

何ぃ!膝枕だとぉぉーーー?!
や、それはやばい、無理無理、流石にいけない気分になっちゃうって!

「いや、でもね青葉」
「荷物持ちのお礼です、気にしないで下さい」

屈託のない笑みが俺に向けられる。
そうじゃねぇ!そうじゃねぇよぉぉぉ!
もおぉぉ!綺麗だなちくしょぉぉぉぉ!!!

「お早めに」
「わ、わかった」

心拍数が急上昇!
人生初膝枕がこんなにも俺の寿命を縮めるものになるとは
つか、どうしたらいいの?!どっち向くの?息止めた方がいいの??
もう、頭ん中ぐちゃぐちゃ

「大樹様?」
「今行くぞぅ・・・」

おそるおそる
頭を青葉の膝に近づける。
もしかして今俺、サイみたいな格好しているんじゃないだろうか。

ぽふ

着地成功。
でも、この後ってどうすんの?
まさかぐりぐりするわけにもいかないし・・・
てか、いい匂い!ぽふってなった時のふわって感じがもうドキューンだな?!

「どうですか?」

何気ない一言が随分といやらしく聞こえる。
それは、俺が今煩悩の塊だってことを証明してるのかもしれない。

「さ、さいこぉっす」

まともに話も出来なくなった
たぶんこの女性特有の匂いが脳を溶かしているんだ!
シンナーだ、シンナー。

「少しの間、じっとしててくださいね?」

うぐっ
ヤヴァイ、勃ってきた・・・
その時
耳の中に何かが入ってくる。
背筋がゾクゾクし、次のアクションに緊張が走る。

カリ、カリ

うほぉいっ!気持ちいい!!
って・・・ん?何だこれ?
み、耳かき?

カリカリ、カリ

どうやらそのようだ。
ちょっとがっかりかも・・・いや、こっちで正解だろ!むしろ。

「耳の中、お綺麗にされていますね」
「そ、そう?」
「はい」

わ、忘れてたけど、まだ膝枕中だった
がああぁっ!思い出すんじゃなかったぁ!

「こっちは終わりました、反対を向いて下さい」

は、反対ですか?!
そ、そそ、そっちはもう顔埋まっちゃいますけど?!

「ほ、本当に?」
「?」
「いや、そうだよね、ごめん」

くるっと頭を回転。
視界いっぱいに彼女の体が広がる
さらに鼻孔一杯に甘い匂いが広がる。
青葉一色です!

カリカリ

うぅ・・・とっても良い気持ち・・・

「・・・・迷惑、でしたか?」
「え?」

急に沈んだ口調で問いかけてくる青葉。
話の展開が急すぎて一瞬、意味を把握できなかった。

「突然でしたから、私のこと迷惑に思っているのではないかと」
「・・・・」

なんと言葉を返していいのかわからない。
確かに、迷惑に思ったのは事実。だけど、今は青葉の存在に感謝し始めている自分がいる。
それはなぜ?
身の回りの世話をしてくれるから?
・・・わからない。
だから俺はありのままを言うことしか出来なかった。

「わからない」
「・・・・・」
「でもきっとそれは、これからの青葉次第なんじゃないかな」
「私・・・次第?」
「うん。迷惑に思ってなかったといえば嘘になるけど、今は青葉に感謝し始めてるんだ。」
「・・・・。」

彼女は何も言わない。
俺の言葉をただ待ち続ける。

「だからさ、今はそんなこと考えなくていいと思う」
「わかり、ました・・・」

沈黙。
既に耳をかいていた手は停止し、俺の耳の横に添えられている。

「てっきり」
「え?」

青葉が口を開く。

「てっきり、『そんなこと無いよ』と言って気を遣われるのかと思っていました」
「・・・・」

今度は俺が聞く番だった。

「今日一日を見ていて、そのようなお優しい方だと思いましたから」
「そ、そう」
「はい。なので、ありがとうございます」
「ん?」
「私、もっとあなた様の側でもっとあなた様を見ていきたくなりました」
「・・・・」
「これからも、よろしくお願いします大樹様」

柔らかな声が、俺の耳に降り注ぐ。
積もっていた塵が取り払われてから最初に聞いたのは、出会ったときと同じ、屈託のない彼女の決意の言葉だった。

「お、おう、よろしくっす」

モウ、日本語ワかラナイっす
気恥ずかしくなった俺はその場で頭の向きを変えようとする
と、
ふにゅ、という柔らかくも弾力のある領域に触れる。

「きゃっ!」

ぎりっ

耳に激痛が走る。

「いだだだだ!痛い痛いっ!!」
「す、すみません!」

耳からぱっと手が離される。
どうやら反射的に俺の耳を掴んでしまったようだ。

「く、くすぐったくなってしまって・・・」

そういうことか。
ただでさえ短いスカートなのに正座なんてしたら更に短くなる。
まして俺が枕にしているのだって半分スカートの半分地肌だ、そこに俺の髪の毛が擦りつけられればくすぐったくもなる。

「ご、ごめん」
「いえ、こちらこそ」

互いに恥ずかしくなり謝り合う。

「・・・・・ぶっ」
「・・・・・くすっ」
「あははははははっ!!」
「くすくす・・・うふふふふ」

膝枕という恥ずかしい体勢ながらも笑い合う俺たち。
秋の夜。
鳴き通す虫の声をかき消すほどの笑い声は、高くなった夜空の向こうに吸い込まれていった。

そしてまた、新しい1日が始まる。



「今のところ問題ありません。・・・はい、継続して監視を続けます。」



12/06/27 21:11更新 / パっちゃん
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■作者メッセージ
長文、お読み頂きありがとうございます!
物語連載を書くのは2回目ですが、一向に上達している気がしないのはわたしだけでしょうか?
ギャグって難しいですね、書いてて痛感させられました;
でも、めげずに頑張っていきたいと思いますので
末永よろしくお願いしますぅー!

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