狂気の女王と堕ちた王子
「アハハハハッ! ステキよ坊やぁ♥ こんなに交わってるのにまだ萎えないなんてッ!!」
逃げ場無き廃墟にて、アポピスは囚われの王子を思う存分交わり犯す。遮る物の無い夜の砂漠のど真ん中という立地故、氷点下に近いはずの気温であるが、それを感じさせぬほどに寂れた玉座には熱が籠もり、また愛液と精液の入り混じった生臭くも淫らな匂いが充満する。
そんな中、アポピスは狂ったように腰を動かし、胴体に黒い蛇体を巻きつける。好いた少年の童貞を奪い、淫毒でそそり勃つ逸物を貪る快楽と愉しさはたまらないものらしく、女の興奮は増すばかりである。
そんな蛇女の心情を反映するかの如く、処女を捨てたばかりにもかかわらず、魔物娘の持つ名器のほぐれきった肉襞は熟練の娼婦顔負けだった。とぐろを巻く蛇が獲物を締め付けるが如き締まりで、かつそのまま回転するかの如く動く。
その快感はあまりにも強烈であり、童貞を捨てたばかりの少年には酷なものだった。
「あ…ぅ…」
当然ながら、少年の意識は快楽のあまり飛びそうだった。しかし、少年の両目より伝う涙はそれが理由ではなかったのだが、快楽に酔い狂うアポピスは気づいておらず、知ったところでどうでもいい事であろう。
「あぁぁぁぁっ♥ またスッゴイ出たぁ……坊やの赤ちゃんできちゃうかも♥」
少年の心情など露知らず、彼を愛しつつも容赦の無い冥界の蛇の荒々しい腰使いとうねる肉襞は、今また少年を八発目の射精に導く。浅ましい黒蛇は上半身をビクビクと仰け反らせ、貪欲な肉壷は吐き出された少年の子種と生命力に満ちた精を一滴も零さずに収めていく。
「うん? お客さんのようね…」
妊娠の可能性と快感の余韻に浸っていたところで、アポピスは廃墟の周りに近づく者の存在に気づく。
「あ〜あ、お楽しみの邪魔してくれちゃってぇ」
お楽しみのところを邪魔され、アポピスは不愉快に思うが、そこで昼間の出来事をふと思い出す。
(「狼藉者め! 王子を放せ!」――あの犬っころはそう言ってたわねぇ)
目障りなアヌビスを叩き伏せる直前、確かに彼女はそう叫んでいた。
「へぇ〜、貴方王子なの? 確かに普通の子とはちょっと違う雰囲気だとは思ってたけどねぇ〜」
意識が朦朧とするトーヴに語りかけて笑うアポピスだが、彼の身分を今更知ったところで動揺はしなかった。別に彼が王子だろうが乞食だろうが、気に入った男である事には変わりはないからだ。
元が何者であろうと、アポピスはこの少年と生涯を共にしたいと考えているし、例え身分が卑しかろうと差別しない。別に肩書や高貴な見た目で気に入ったのではないし、ただありのままのこの少年を見て、番になりたいと思っただけだ。
もっとも、そのやり方は文字通りの誘拐であり、本人の同意を得ていないのはもちろん、親元からも無理矢理引き離してしまっているのが問題なのだが。
「…という事は、“追手”か」
探知魔術で遺跡の周囲を探ると、明らかに百人以上の魔物娘の集団が遺跡を囲んでいるのが分かった。これほどの集団である以上、単に旅行者や隊商の一団が遺跡に近づいたのではなく、明らかに自身及びこの王子が目的だろう。
「アヌビス、スフィンクス、マミー、ギルタブリル、サンドウォーム。そして…」
彼女の種族が本能的に敵対する種族。神話の時代の砂漠の支配者にして、冥界の蛇と対になる『太陽の王』。
「ファラオ」
その存在を感知した途端、アポピスは臨戦態勢となり、邪悪な魔力が全身から滲み出る。その存在を憎み、毛嫌いしつつも、種族の宿敵との出会いから、蛇女は黒い目を見開き長い舌をだらりと垂らした、淫らながらも凶悪な笑みを浮かべる。
「んもぅ、坊やも人が悪い。貴方のママはファラオだったなんてねぇ」
しかし、それとこれとは話は別。ファラオの息子だったとしても、アポピスがこの少年を嫌いになるわけではない。
「でも、だからかしら? 貴方からどこか不愉快で、それでいて懐かしい匂いがしたのは」
アポピスの本能から、ファラオの匂いが不愉快なのは納得出来る。けれども、その匂いから何故か“懐かしさ”を感じるのも何故だろう。それはこの冥界の蛇にも分からない。
だが、自分好みの牡の匂いと共にそれらが混じり、このアポピスを少年の下へ導いてくれたのは事実である。
「ま、今考えてもしょうがないか」
とはいえ、今そんな事を考えても結論は出ない。遺跡の外側には百人以上の魔物娘達が集結しており、それらへの対処が先決だ。
「坊やはどうしたい?」
「………」
しかし、淫毒と快感のあまり意識が朦朧とした少年に尋ねたところで応えるはずもない。だが返答がどうであれ、アポピスはこの少年を好いており、彼と別れるという選択肢は無かった。
「ん〜〜追い返すか……」
それ以上に、アポピスの本能としてファラオと交渉する事も、屈する事も嫌だったのだ。
傍迷惑な事に、そんなファラオ憎しの思いと本能のせいで、王子が親元に帰りたがっているなどとは全く思い至らなかったのである。もっとも、気づいたところでわざわざ親元に帰してやろうと、この悪辣な女は考えもしないだろうが。
「待ってて頂戴。すぐに終わらせて帰るからね。そして、また愛し合いましょう♥」
意識の朦朧とする“夫”に微笑みかけるアポピス。このように極めて自己中心的な性格ではあるが、魔物娘の端くれである以上、アポピスはこの少年を守ろうという想いはある。
戦闘が高確率で起きるであろうと予想し、着替えを終えたアポピスはこの廃墟に防護結界を張ると、ファラオとその手下どもが待ち受ける場所へと進んでいったのだった。
「アポピスが出てきました!」
一方その頃、遺跡を囲むメシェネトの部下達は中心の廃墟より這い出たアポピスの姿を発見、緊張が走る。
(あれが冥界の蛇…)
(強大な魔力を感じる。ファラオの敵対者というだけあるな……)
各々抱く印象は様々だが、『強大な力を感じる』というのは皆共通していた。事実、アポピスはラミア属の中でもエキドナと並ぶ上級種族であり、並の魔物娘を遥かに上回る実力を持つのを彼女等は感じ取っていた。
(あらあら、臆病風に吹かれた腰抜けばかりね。ファラオの部下といっても所詮はこの程度か)
そんな風にやや気圧される魔物娘達を遠目から眺め鼻で笑いながら、アポピスは悠々と蛇体を波打たせ、廃墟の石段を器用に降っていく。
「こんばんわ、皆さん」
月光に照らされながら、柔和ながらも陰のある笑みを浮かべたアポピスは彼女等の前まで進み出た。
「貴様には我が国の王子を誘拐した嫌疑がかかっている!」
「王子? 知らないわねぇ」
アポピスは知らないと白々しく語る。だが、ファラオの部下達にはそれが嘘だと分かっていた。
「ならば、その精の匂いは?」
「私の夫とお楽しみの最中だったのよぉ。それを貴方達が邪魔したんじゃなぁい」
「………!」
先頭に立って問い質していたアヌビスの顔に怒りが浮かぶ。何故なら、アポピスが夫と称する人物の匂いが、彼女等の知る少年の精の匂いと同じであったからである。
「その言葉を証明してもらうためにも、中を改めさせてもらう」
「イヤよ」
「自身の疑惑を晴らしたくないのか?」
集団の最前列にいたアヌビスは挑発気味に問いかけるが、
「やれるものならやってみればぁ!?」
「――っ!」
さすがは精鋭。その直後に矢の如く飛びかかってきたアポピスの毒牙をなんとか躱したのだった。
「渡すわけないじゃなぁい! 私の可愛い旦那様だものぉ!
私達の絆はもう誰にも切れないの! 心も体も繋がって、そして“家族”という血の繋がりまで出来るものっ!」
先ほどの底の見えぬ態度から一転、凶暴な本性を現した蛇女は禍々しさを全開にしてまくし立てる。その態度からは絶対にトーヴ少年の事を帰さないという強固な意思が感じられた。
「蛇の割には随分とお喋りだこと」
「! あらあら、ようやく“御義母様(おかあさま)”のお出ましね!」
傍若無人なアポピスが腹に据えかね、前に進み出た一人の貴婦人。彼女の存在を待ちかねたとばかりにアポピスは鋭い視線を向ける。
「アポピス……息子は返してもらうわよ」
トーヴの養母にして、この国の女王であるファラオのメシェネト。息子を目の前の女に拐われて冷静さを欠きながらも、それを少しも態度に出さず堂々としているのはさすがと言えよう。
「そうはいきませんわ御義母様! 彼は最早私の半身! 愛し合い繋がり合う二人を裂くという事は死と同義ですもの!」
しかし、メシェネトが大物でも小物でも、このアポピスにはどうでもいい事だ。王だろうが神だろうが、愛する夫を渡すつもりなどない。
「返す気はないということね」
「子どもはいつか親元を離れるものよ? あの子の場合はそれが単に今ってだけーー」
「それ以上喋らなくていいわ。貴方の生臭い口臭に耐えられないもの」
元より交渉に来たわけではない。故にメシェネトはアポピスと問答を交わす気はないため、彼女の言葉を遮った。
「あらぁ残念。では最後に言っておきましょうか」
「………」
「もうあの子は私の物よ。何度も淫毒を打ち込まれ、身も心も私に捧げてしまったの」
「……!!!!」
恐れていた最悪の事態だった。メシェネトの世界で一番大切な、それこそ己の命よりも尚重い息子が、この蛇女に未来永劫隷属するという宣言。
この薄汚れた蛇と息子は常に交わらなければ心満たされないーー即ち『この女がいなければ生きていけない』ということだ。
「あぁ……っ!!」
ファラオは絶望のあまり足が震え、膝を突きそうになった。そして、それは部下達も同じだ。一生解けぬ呪いに蝕まれたも同然のトーヴの身を悲しみ、涙を流す者さえいた。
「ふぅん、なるほど。あの子は愛されているようねぇ……」
一方、アポピスはそんな王と配下達の態度を見て、逆に嗜虐的な歓びを抱いた。
彼女等の偶像(アイドル)を自分は思う存分弄び、犯したのだ。これが痛快でないはずがない。
ただし、トーヴはアポピスにとっても大切な存在である。彼はアポピスが数十年生きてきた中で初めて恋し、自らの全てを捧げてもよいとひと目で直感したほどの男だった。だからこそ、そんな男を此奴等から奪い取り、自らの色に染めたことを誇りに思う。
誰からも愛されるトーヴだが、王子はこのアポピスのことしか愛せない。だから王子が薄汚い雌どもに誘惑されようとも、心を寄せることはない。
どんなに愛の言葉を囁かれようと、どんなに色目を使われようと、あの少年はこの蛇女以外を受け入れず、交わろうとも最早満たされないのだ。
「うっうぅ……」
「うふふ……」
威厳のある態度から一転、幼い少女のように啜り泣くメシェネト。対して、アポピスはそんなファラオの姿を見てますます優越感に浸ると同時に、トーヴへの邪な愛を強くする。
「あぁ御義母様、なんとおいたわしいお姿。でも、わたくしめには貴方をお救いすることは出来ません。
だって、わたくしがいただくのはあの可愛い坊やだけではありませんもの」
嗜虐的な笑みを浮かべ、この場にいる全員にそう宣言するアポピス。
「国と民………そして貴方達。皆私の忠実な手駒となるのよ」
「「「「「「「「………!!」」」」」」」」
アポピスの本能はファラオの持つ全てを奪い取り、支配すること。メシェネトの愛しい息子を奪い取った次は、彼女の治める国である。
ファラオの側は軍勢、対するアポピスはたった一人。だがそれでも、蛇女は勝利を確信し、戦うつもりでいる。
「いいでしょう」
「! メシェネト様!」
アポピスの野望を感じ取り、王としての責務を思い出したのか。啜り泣いていたメシェネトは泣くのをやめて立ち上がり、冥界の蛇を見据えた。
「貴方の野望、ここで打ち砕いてあげるわ」
息子を穢し、さらには国まで奪わんとするアポピスの野望を粉砕する決意に満ちたファラオの姿に、配下達も揺らいでいた闘志が戻った。
「大言壮語……いくらファラオでも出来ないことはあるのよ?」
一方、それを茶番と見たアポピスは冷笑を浮かべ皮肉を飛ばす。
「盗人猛々しいとはこの事かしら。断っておくけれど、蛇一匹に屈するほど私の国も、私の息子も弱くはない」
しかし、メシェネトも負けじと言い返す。
「へぇ、ならば見せてもらいたいものね」
お喋りはここまで、とばかりにアポピスは身構える。
「お待ちなさい。息子を傷つけた罪人といえども、丸腰の相手を討つのは私の流儀に反する」
だが、待ったをかけたメシェネトは虚空に魔方陣を描くと、そこから武器を二つ取り出す。
「好きな方を選びなさい」
鎌剣(ケペシュ)と三日月斧。ファラオはそれらをアポピスの前に投げ刺した。
「ふぅん、なるほど。決闘をお望みのようね。ま、当然か」
愛する息子を無理矢理犯された母親の怒りが尋常でないのはアポピスも理解はしている。故に、このような決闘を望まれたことに少しも違和感はなかった。
「では、この斧を貰いましょう」
アポピスは二つの内、三日月斧の方を選び、屈んだ。
「え……? これはっ!?ーーーーッアアアアアアアア!!!!????」
しかし斧を掴んだ瞬間、地面に魔方陣が浮かび上がる。
気づいた時には遅かった。魔方陣よりすぐさま紫電が奔ってアポピスは感電、拘束される。
「アアアアアアアア!!!! キサマアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
感電しながらも口汚く絶叫するアポピス。そして、その光景を見つめるファラオの顔には、普段の慈悲や鷹揚さを欠片も感じさせないほどの邪悪な笑みが浮かんでいた。
「愚かな女ね。私がお前のような獣と決闘などするとでも?」
メシェネトは立派な女王である。しかし、国を守るためなら卑劣な手段も躊躇わない。
一方、アポピスは邪悪で狡猾なようでいて、実は決闘を申し込まれればそれを二つ返事で受諾する案外素朴な面があった。だから決闘の申し出自体が罠だとは思わず、差し出された武器をあっさり掴んでしまったが、そこに意識を向けていたせいで対処が遅れてしまったのである。
「痛い? 苦しい?」
「っ……!!」
アポピスが感電し、苦痛に苛まれ続ける様を、目を細めて満足気に眺めるメシェネト。
この女は愛しい息子を犯し、汚し、永久に消えない呪いをかけたも同然。本来ならば八つ裂きにしても飽き足らない。そんな憎い相手に正々堂々決闘を挑む気など最初(はな)から無かった。
「アポピス風情が私の息子を犯し、あまつさえ国まで奪い取るですって? 成程成程、身の程知らずらしい、御大層な夢物語だこと。
でも残念、愚かな貴方のそんなくだらない覇道もここで終わり」
陰惨な笑みを浮かべたメシェネトは地に突き刺さっていたケペシュを引き抜き、感電しないように魔力で絶縁を施したところで、
「お前はここで死ぬのよ」
アポピスの首元へ突きつける。
「……っ!!」
「後悔してももう遅いわ。お前は私の愛しい坊やに二度と消えぬ汚れと傷をつけてしまったの。
それだけではないわ。お前は私から今まで苦労して築き上げてきた国まで奪おうとした。そんな輩をこれ以上生かしておくと思う?」
ファラオが少し力を入れただけでアポピスの首筋に刃がめり込み始め、うっすらと血が流れた。
「! メシェネト様それは…!」
「どうかおやめに!」
この不穏なやり取りを見守っていた配下達だが、さすがに殺すのはやりすぎだとファラオを諌めるもーー
「お黙り!!!!」
「「「「「「「「……!!」」」」」」」」
鬼気迫る形相で振り向いたファラオに“王の力”をもって一喝され、皆一様に黙りこくってしまう。
「この女は私の愛しいトーヴを穢したのよ!! そんな忌まわしい不浄の獣を生かしておくものですか!!」
目を見開き、大声で叫ぶメシェネトに普段の慈悲深き統治者としての姿は全くない。そこにいるのは、狙っていた男を横取りされて嫉妬し復讐しようとする、見苦しくも哀れな魔物娘であった。
「おやめください!! 我等は王のそのような見苦しい姿を見たくはありませぬ!!」
ここでリーダー格のアヌビスが反発し、なんとファラオの呪縛から抜け出てしまう。その事実が示すのは、ファラオの命令が聞けないほど耐え難いものであるということだ。
「………!」
「冷静になってくださいませ。王子もきっとアポピスを殺すことは望んでおりませぬ」
驚くファラオだが、そのおかげか正気に戻る。
「え、えぇそうね……私としたことが見苦しい振る舞いを……」
アヌビスの提案を受け入れ、アポピスを殺すことはやめにしたメシェネト。しかし、相変わらずその目には闇色の蛇に対する憎悪が尽きず、復讐心は未だ燻り続けていた。
「この女をどうするかは後回し。さっさとトーヴを迎えに行きましょう」
「あ゛う゛ッッ!!!!」
「「「「「「「「………………」」」」」」」」
今までは気絶しないギリギリのラインで流されていた電撃だが、ファラオが右手の指を弾くと最後に大電流が流れ、アポピスは倒れる。それを見届けたメシェネトは何事もなかったかのように、トーヴが隠されている廃墟へ配下達と共に向かった。
(ぼ、坊や………)
全身から煙を燻らせながら、意識の途切れかけるアポピスには悠々と立ち去るファラオ一行を見送るしかない。さらに、廃墟に隠しておいたトーヴが救い出されるのもまた見ているしかなかったのだった。
トーヴは救出後、アポピスと共に王都へと運ばれて手当を受けた。ベッドで目を覚ましたのは拐われた翌々日の正午頃である。
目を覚ましてすぐ、その報せを聞きつけて大急ぎで駆けつけた母に抱き着かれ、大泣きされた。
「ただいま」
その様に初めは呆気にとられるも、母の愛を感じた息子も同じくメシェネトを抱き締めたのである。
こうしてトーヴは無事王都へ帰還し、アポピスも牢に放り込まれ、平穏な日常が戻ったーーーーと、トーヴは思っていた。
「母様……?」
「心配しないで」
夕食時、神妙な顔で母に告げられたのはトーヴがアポピスの呪いを受けてしまったことだった。残念ながら、トーヴは救出後に手当を受けたものの、淫毒自体は結局取り除けなかったそうだ。
それは即ち、王子は一生アポピスの影響下にあるということだ。しかし母曰くその支配力を弱め、なんとか意識を保ち続け平穏な日常を送る方法はあるのだという。
「全て私に任せて頂戴」
入浴して身を清めたトーヴは寝室に戻ってベッドに座り、母の話を聞いていた。ただし、母の言いつけで服は着ず、全裸である。
そしてメシェネトもまた全裸であり、絶世の美貌と豊満で扇情的な肢体を余すことなく晒している。他人から見ればとても官能的な光景だが、息子にとっては毎日母と共に入浴しているという事情から、裸体を晒し続けるのを不思議に思えど、他には特に何も感じはしない。
「母様? 何を……」
夕食か入浴中に運び込まれたのか、部屋の真ん中にはレンガ製の小さな祭壇が置かれている。その上には色々な物が置かれているが、その中でも目立つのは中央に置かれた紫色の宝玉、両端にそれぞれ設置された香炉だった。
「………」
母が蝋燭で香炉の中の香草に火を点けて燻すと、毒々しい桃色の煙が空間に満ちていく。
「雰囲気は大切なのよ♥」
振り返って微笑んだ母の顔はそれはもう淫靡なものであった。
「あ……」
何故かその時、王子の顔には母の顔にアポピスが重なって見えた。その理由は分からないが、デジャヴュというか、同じ印象を受けたのである。
「ぅ……」
アポピスのことを思い出し、めまいが起きるトーヴ。望まぬ童貞喪失は彼にとって良い思い出ではなかった。相手が如何に上級魔族の極上の美貌、齎された快楽はこの世のものとは思えぬものであれどもだ。
慕う者(メティト)は毒牙に倒れ、自らの誤った判断により事態は悪化した。まだ年端も行かぬ少年であるが、その失態は恥じていたのだ。
「大丈夫よ」
怯えて縮こまる息子を母は優しく抱きしめる。その温もりは少年には懐かしく、また安心できるものであった。
「忘れなさい、怖いことは全て」
背後から囁くメシェネト。それに伴い、大きな両乳房がまだ頼りない背中に押し付けられる。
しかし、その姿は優しい母親というよりは美しくも淫靡な毒婦、あるいは甘言を囁く女悪魔にも見えた。
「う、うん……」
母の言葉を王子は聞き入れた。
「良い子ね…」
メシェネトは息子を向き直らせ、対面する。
「さぁトーヴ、愛しい我が子よ。これより儀式を始めます」
「ぎ、儀式……?」
全裸になったことや、部屋に置かれた祭壇からしてそういった事をするつもりだったのは予想していた。
「そう、貴方にかけられた呪いを和らげるための儀式」
そう厳かに告げる母の顔は発情しきって紅潮しーー
「………!」
ーーその瞳は漆黒の夜の闇、あるいは永劫に光の注がぬ深淵の底の如く澱んでいた。
「かあ…さま…?」
母と違い、息子がその時感じたのは興奮と歓びでなく、恐怖だった。
「……まだ効きが弱いようね。さすがは私の息子♥」
祭壇の香炉から燻される桃色の煙だが、当然燃えているのはただの香料ではない。これには強い興奮・発情作用があり、魔物娘が夫と性交時にさらに深い快感を得やすくするという代物だ。
そんな煙を吸い込んで尚トーヴが正気を保っているのをメシェネトは残念に思えども、それ以上に息子の頼もしさを嬉しく思った。
「アポピスの毒を和らげる方法ーーそれは『愛しい者と交わり、契りを結ぶこと』」
「え…」
「トーヴ、貴方にアポピスが毒を注いだのは、奴が貴方を自分の物にしようとしたから。それを跳ね除けるには貴方が『アポピス以外の女を愛さねばならない』のよ……」
煙に当てられてか、恍惚の表情で語るメシェネトだが、息子はようやく異常な状況だと気づき、冷や汗をかいていた。
ちなみにメシェネトの述べていることは全て根拠のない、まったくのデタラメである。当然、アポピスの淫毒を解毒する儀式というのも存在しないが、それをトーヴは知る由もない。
「ここまで言えば……解るでしょう?」
このような嘘八百のデタラメを並べてまで、ファラオは息子に一体何をしたいのか? しかし、その淫蕩な笑み、汗ばんだ官能的な肉体、濡れた雌穴を見れば、最早説明は不要であろう。
そこに子を可愛がる母の姿はない。嫉妬し暴走する果てに生まれたのは、ただ夫の寵愛を求め、媚びる、淫らで浅ましい一匹の雌だった。
「や、ヤダよぅ…」
最早母としての立場をかなぐり捨てたメシェネトは、まずはお互いの愛を確認すべく、口づけをしようと迫る。
しかしそんな義母に対し、トーヴは拒絶の意思を口にしてしまう。
「何故?」
「か、母様とボクは親子じゃないか! いくらアポピスの毒を和らげるためだっていったって、母様とこんなことしたくないよ!」
いくら天真爛漫とて、最低限の倫理観は持ち合わせている。そんな王子が涙目で母君に主張するはもっともな正論。
きっと誰もがトーヴの意見を支持するであろう。
「そう……貴方はそんなつまらないことを気にして、私を拒絶するのね……」
しかし、この母には常識だとか倫理観だとか、そんなものは一切なかった。
「母様はこんなに貴方のことを愛しているのに」
悲しげに呟くメシェネト。しかし、彼女の言う“愛”とは子に対するものか、それとも“夫”に対するものか、一体どちらであろう。
「かあ、さま…」
「“この国を治めるファラオの名において命ずる。
トーヴよ、私と交わりなさい。淫らに、情熱的に、そして深い愛を確かめ合うようにお互いの全てを曝け出して”」
「!!?? 母様!?」
息子である以上、それが何かを知らぬはずがない。
母は使ったのだ。ファラオの“王の力”、絶対遵守命令ーー息子である自身を犯すため、ただそれだけに。
「あ、あぁぁ……」
既にインキュバスであるためか、それとも女王の教育の賜物か、トーヴには催淫香も効果を示さなかった。しかし、救出時におけるアヌビスの場合と違い、“王の力”にまでは抗しきれなかった。
ファラオから放出された魔力が、息子の体へと流れ込む。もうこの体は彼の物ではなく、この狂った母親の望むままだ。
「怖がらないで♥」
そう諭す母の顔はこれからのことを思うあまり発情して蕩けきり、とても部下達に見せられるようなものではない。
「あ、ぁ…」
王子は母に肉体の主導権を奪われ、呂律さえ回らない。ただし唯一ヶ所、下半身にぶら下がる肉竿だけは弛緩するどころか、痛々しいぐらいに怒張し張り詰めている。
そして不幸なことに、母の呪縛に意識だけはそのまま残っていた。これからの許されざる行為を想像し、体は震えが止まらない。
「トーヴ、いい加減に理解して頂戴。これは必要なことなのよ?」
母はでっち上げた嘘の儀式を建前に、幼さの残る息子の瑞々しい肉体を味わう。背後から二つのたわわに実った果実を押し付けながら、火照った肌をまさぐり、耳を舐めしゃぶり、息子の髪の毛に顔を押し付け、雄の匂いを堪能する。
「イイ香り……直に嗅ぐと違うわね♥」
わざとらしいぐらいに鼻息を吸い込み、後頭部に直に吐く。
「んふふ♥」
ひとしきり愉しんだところで、悪戯っぽく笑う母は今度は背後から勃起する肉竿を右手で掴んだ。
「なんだかんだ言っても、こっちは素直なのね♥」
赤子の時から見続けた物であるが、今母が目にしているそれは天を向き、下腹部にくっつかんばかりに反り返っている。
その成長ぶりに母は感銘を受けると共に、今すぐそれを味わいたいと下半身が疼いてしまう。
「それにしても立派に育ったわね。母様とっても嬉しいわぁ♥」
メシェネトは発情しきっただらしない淫笑を浮かべながら、ガチガチに勃起した肉竿を扱き始める。
「あぅっ!」
トーヴは二度目の性交ながら、初めての刺激にビクリと体を震わせる。心は拒んでいるのだが、彼の分身はそうでもないようだった。
「アハッ♪」
息子の葛藤を感じ取った母は、それを嘲笑うかのように扱く速さを上げた。さらに、五指はそれぞれ息子の怒張を的確に刺激し、時に緩急をつけ、時に力加減を変えて捻りを入れるなどして追い詰めていく。
「我慢しなくたってイイじゃない♥」
耳穴に舌を這わせ舐めながら、淫母は耐える息子へと囁く。
「……っ!!」
懇願するような目つきで母に無言で訴えるトーヴ王子。
あの優しかった母は何処に行ってしまったのだろう? 目の前にいるのはただ禁断の関係に溺れる狂った女がいるのみである。
「ん〜〜ふふふふ……♪」
そんな息子の悲しみも今の母には届かない。それどころか、この女は子犬のように震えて悶える息子に、逆に嗜虐心が刺激されてしまう有様だった。
「カワイイ♥」
そう思ったからこそ、果てるところが見てみたい。息子に寄りかかった母は、今度は左手で睾丸を掴みーー
「!? うああっ!?」
中指を肛門に突き入れ、前立腺を刺激する。
「あっ……あっ、あっ、あっあっ」
限界まで来ていたところで、背中を貫かれるような鋭くももどかしい感覚。そして脳が電流で焼き切れるかのような形容し難い強烈な快感。
これに王子は耐えきれずーー
「うあぁーーーーーーッッ!!!!」
「きゃっ!!」
絶叫をあげ、たまらず射精してしまう。
「うふふ♥」
「あ……あ……」
身動きの取れない状態で精通を迎え、その異常な状態の中での異常な快感と余韻に浸り、放心状態になるトーヴ。
一方、顔面に勢い良く射精され、驚いて可愛い声を上げてしまったファラオだが、垂れてきた精液が口の中に入った途端、さらに興奮、発情してしまう。
「やはり貴方は王の器よ、トーヴ………こんなに濃い子種と力強い精を母様に御馳走してくれるなんて♥」
淫母は器用に指で精液を掬い取り、口に運ぶ。そして恍惚の表情でそれを口中で泡立て、飲み込んだ。
「ん〜〜、濃くってまろやかぁ♥ そして貴方の力強い生命力を感じるわぁ♥」
珍しく顔をほころばせ、感想を述べるメシェネト。しかし、トーヴからしたら全く嬉しくないし、今そんなことを気にする余裕もなかった。
「あ……ぅ………」
「それぐらいで呆けちゃダメでしょ、トーヴ。これから母様ともっとスゴイことをして、も〜っとキモチよくなるんだから♥」
「んぶぅっ!?」
この最低の母親は息子が呆ける中思い返す気持ちなど最早どうでもよい。それを示すかの如く、まだ精液の残る口で息子の唇を奪い、精液入りの唾液を流し込んだのである。
「んっ……んっ♥」
息子への愛の誓いだと言わんばかりに、母はトーヴへ濃厚な口づけをする。下の口で交わる前に上の口を交えようとばかりに、その様は情熱的で、卑猥で、そして淫らであった。
「ん……あぁ……」
心では拒絶していた王子であるが、母の魔物娘らしい卓越した淫技に、徐々に取り込まれつつあった。
ファーストキスが己の精液の味とは屈辱の極みであるが、それを忘れかけるほどに母の絶技は半端ではない。
「んちゅ、んっ……んぷっ……」
生まれて初めて、母とここまで顔を近づけあった。トーヴはそれを実感すると共に、母の美貌を性的な意味で初めて意識してしまう。
舌を絡め合い、唇を合わせ、唾液を啜り合う。吐く息をお互いで押し合い、循環させるという行為に、トーヴはたまらない興奮を覚えつつあった。
(き……キモチイイ……)
後悔しかなかった先ほどの手コキと違い、今は心からそう思いつつある。背徳と禁忌でしかないこれらの行為も、段々と受け入れつつあった。
「やっと素直になってくれたのね♥ 母様とっても嬉しいわぁ♥」
母もトーヴが段々と行為を受け入れつつあるのを感じ、ちょっと得意気な顔で喜ぶ。
「分かるでしょ、母様の気持ちが」
息子は誰にも渡さない。この子を愛してあげられるのは自分だけなのだ。
「……うん」
そして、そんな狂った母を見ても、息子からは嫌悪感がなくなっていった。
「見て、ここを♥ 母様は貴方のことを想うあまり、ここがこんなになってしまったのよ♥」
あぐらの状態から両脚を広げ、息子へ秘所を見せつけるメシェネト。
「………」
まだ未通ながら、そこは男を求め、僅かに開閉する。大陰唇も薄く、年齢に似つかわぬ幼い秘部は、初めての相手として息子を求め、禁断ともいえる交わりを望んだ。
動けなかったはずだが、受け入れたことである程度自由になったのか。トーヴは開いた母の股に力なく倒れ込みーー
「あうっ!」
「………………」
そのまま舌を這わせた。
「あっ! あっ! 上手よぉ♥」
母はびくりと体を震わせ、やがて激しい快感のあまり仰け反る。
卑猥な水音を立て、トーヴは忌まわしくも淫らに母の筋を舐めしゃぶる。その様は背徳的であり、また冒涜的であった。
「母様のココ、とってもおいしいよ……」
つい先ほどまでは絶対ありえなかったであろう言葉が王子から飛び出す。幼い王子も発情し、今までは目にしても全く意識してこなかった母の陰部へ拙いながらも愛情を籠め、奉仕する。
痛々しいほどに勃起した陰核に舌を這わせ、舐め転がし、筋の中に舌を突き挿れる。さらには陰部全体を吸い上げ、愛液を啜る。
「あぁ、トーヴ……私の愛しい坊や……♥」
その様に感極まり、涙を浮かべるメシェネト。愛と狂気に囚われた母は、今息子と心が通じ合ったことに対する無上の歓喜に打ち震えている。
「とてもキモチイイわ……♥ 貴方の愛が伝わってくるようで……♥」
快感と歓喜にのぼせる母。対する息子もまた、母への愛と献身を見せる。
技は拙いながらも奉仕の心で母の感じる所を慎重かつ丁寧に探し、舌と指を使い一つ一つ探り当てていく。
「ああっ!!!!」
母は陰核を攻められるのが好みだとやっているうちに理解し、トーヴはそこを重点的に攻め始めた。
陰核を舌で舐め弄り、あるいは指でつまんで弾く。その都度母は嬌声をあげ、息子の背中に脚を絡めた。
「………………」
母が自分の攻めで気持ちよくなってくれている。それがトーヴは嬉しかったし、母親とはいえ年上の女を年端も行かぬ小僧である自分がヨガらせているのも興奮していた。
「あっ、ぁ、キちゃう!」
「!」
拙いながらも懸命に奉仕するトーヴだが、頑張りが功を奏したのか、母の昂ぶりを感じ取り、
「いぎっ!」
それを逃さぬべくクリトリスを甘噛みした。
「あっあぁっ……あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!」
先ほどの息子と同じく絶叫をあげ、母はオーガズムに達した。そして勢い良く潮を噴き、息子の顔面に浴びせたのだった。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ………」
絶頂の余韻か、荒く息を切らすファラオ。一方、息子も先ほどの母の行動をなぞるかのように潮を舐めた。
(変な味だ……)
母と違い、息子はそれを美味いとは思わなかった。しかし、嫌とも思わない味ではあった。
「とってもキモチよかったわ、トーヴ……♥」
「……うん」
母に褒められるも、照れくさいのかトーヴは俯いた。すると、先ほど舐めていた母の秘所が目に入る。
「ねぇ、次もここよ…♥」
母も子も、お互い次に何をやるのかを理解していた。そして、その行為こそまさに『交わり』と呼ぶべきものだということも。
「母様…」
「貴方が童貞でないことが残念でならないわ…」
母は淫らで冒涜的な最低の母親そのものだった今までと違い、陰のある笑みを浮かべた。
その笑顔を見たトーヴは母に対し、申し訳なく思ったがーーそこで何故かアポピスの顔が浮かんだ。何故かは自分でも分からなかったが、憎みきれなかったことは確かだ。
「忘れなさい、あの女のことは」
その複雑な想いをを感じ取ってか、息子を諭す母。
(あんな最低の犯し方では、童貞喪失に入らないわ)
しかし心中では嫉妬も籠め、アポピスを悪罵していた。もっとも、自分も似たようなことをしているのは棚に上げていたのだが。
「さぁ、来て……貴方は一人前の男になるのよ……」
悪い思い出はこの場では一旦忘れ、仰向けになった母に促され、覆いかぶさる息子。
「そう、ここよ…」
母は息子の怒張を秘裂にあてがいーー
「!! んっぐぅぅぅぅ!!!!」
貫かせた。
「か、母様、大丈夫!?」
「いいのよ……これで私も“一人前の女”になったのよ……♥」
痛みに震える姿を見て心配そうに見下ろす息子を安心させるべく微笑む母。
「見なさい……これがその証よ」
二人の結合部からは血が流れていた。これこそ破瓜の証である。
メシェネトは今まで相応しい男に出会うことが出来ず、未婚のまま朽ち果てるかと思っていた。そう、あの日川に流される赤ん坊を拾い、立派に成長するまでは。
「さぁ、このまま動きなさい」
「え…でも……」
涙目で痛みに震える母を見かね、躊躇する王子。
「躊躇わず進みなさい。貴方は王になる男なのですよ」
しかし、気にせず動くよう促すファラオ。そんな母を気遣い、ゆっくりと腰を動かすトーヴ。
「んっ……イイわよトーヴ♥」
性行為に対する順応性は、魔物娘は人間の比ではない。メシェネトもそれを承知であり、息子に動くよう命じるが、効果はすぐに現れた。
痛みが和らぐと共に、甘い声を漏らすファラオ。グイグイと腰を押し付けてくる息子に応え、彼女も脚を彼の腰に絡める。
「スゴイよ母様! 中がまるで生き物みたいに絡みついて……ふぁあ!!」
息子もまた母の蜜壺の絶品さに驚嘆し、情けない声を上げる。手淫や口淫も初めて故に新鮮で鋭い快楽があったが、こちらはそれ以上、数倍もの快感を少年に齎した。
「ふふ、キモチイイでしょう♥ 貴方の好きに動いてイイのよ♥」
甘い声で息子に囁くファラオは、快感でそれどころではない息子を見て微笑むと、祭壇の宝玉を見やった。
「うふふ………羨ましい?」
しかし、そちらに向けた笑みは息子に向ける慈愛に満ちたものと違い真逆、極めて悪辣なものであった。
「♥」
再び息子の方に向き直ったファラオは、名器から絡みつく襞の悦楽に悶える王子と対面し、その表情の変化を愉しむ。
そして、性交の快感を覚えたばかりの息子からの荒々しいピストンを受け、自身も段々と増していく快感の奔流に流されていった。
「あぁ……♥」
愛する息子に犯され、共に快楽を分かち合う。その初々しい肉欲を受け止め、奉仕する。
その体を蹂躙され、弄ばれ、征服されることに歓びを感じる。成長した息子の逞しい物で乱暴に子宮口を小突かれ、かつて母乳を与えていた乳を乱暴に吸われ、荒々しく何度も口づけを交わして舌を絡ませる。
なんと幸福なのだろうーー故国から逃げ延びてより数十年、ここまで安心し、そして満足出来たのは初めてかもしれない。
「母様! 母様!」
王子は滾る肉欲と快感の赴くまま、母へと腰を打ちつける。その度愛液が飛び散り、破裂音が寝室に響くと共に、ぬめった襞の一本一本が息子の肉竿を優しく包み込み愛撫する。
ファラオの最初の命令通り、息子は母の柔肉を思う存分犯した。しかし、実はもう母は命令を解いている。だから、今この荒々しい性交は、彼本人が望んで行なっているのだ。
「トーヴ♥」
夢中で腰を打ちつける息子の頭を愛おしそうに撫でるメシェネト。
息子の息遣いはますます荒くなると共に、突き挿れられた肉竿がビクビクと痙攣し始めるのを感じ取ったファラオは息子の限界が近いのを悟った。
「もうイキそうなのね………」
「うん、母様! ボクもうイキそう!」
「イイわよ。濃いのを注いで私を孕ませなさい♥ 私を貴方の母でなく、貴方の妻にしてぇ♥」
二度目の性交ではまだ我慢が足りず早漏気味である。それでも、両者の肉体は最高の悦楽を、心は至上の幸福感で満たされていた。
「あぁっ、母様! 母様! 母様ぁぁぁぁぁぁぁぁ♥」
ついに限界が来たトーヴは絶叫しながら、肉竿の先端を母の一番奥に突き挿れる。
「ああああああああああああ♥♥ トーヴの熱いの流れ込んでくるぅぅ♥」
親子である故か、両者は同時に絶頂を迎えた。二人は脳内が焼き切れそうな快感と共に、王子は大量に射精し、ファラオはそれを迎え入れるべく子宮口が開いた。
「うっ……ぅっ……」
肉竿と睾丸に痛みさえ感じるほどの大量の射精。幼いインキュバスは子孫を残すべく、血の繋がらぬ母の子宮にその子種と精を放った。
「………………♥」
愛、快楽、幸福………全てがファラオの頭を巡る。
「母様……」
「おめでとう♥ でも、これで終わりではないでしょ?」
そう、息子はまだこの肉体を征服しきれてはいない。その証拠に、母はまだ意識がはっきりし、問題なく動ける。
「次は貴方の好きなように母を犯してみなさい♥」
相変わらず淫らな笑みを浮かべる母。それを見て興奮した王子の肉竿は再び天を衝く。
「うん……母様♥ 四つん這いになって…」
言われるまま四つん這いになった母を見て口元を歪めるトーヴ。そして嗜虐的な衝動のまま。その秘裂に怒張をあてがい、突き挿れた。
「アァン♥」
快楽に再び嬌声を上げるファラオ。王子も興奮し、その大きな尻を掴み、痣が出来そうな強さで腰を叩きつける。
「もっと犯してトーヴ♥ 母様を妊娠させてぇ♥」
後背位で犯されながら乳を揉まれ、嬌声を上げてヨガるメシェネト。親子の交わりはどちらかの限界が来るまで続くであろう。
しかし、背徳的な交わりに夢中だったトーヴは気づいていなかった。
メシェネトはトーヴから顔が見えない位置になる度、必ず祭壇中央部に置かれていた宝玉を見つめていたのだ。
この宝玉は一体何か? 儀式自体が嘘っぱちである以上、大した効果がある物ではない。
そう、この紫色の宝玉【シアタークリスタル】は、ただ『映った光景を映像にして中継する』というだけの代物だ。そして撮った映像は受信側のシアタークリスタルに送られる。
そして、もう一個のクリスタルのあるのは王宮最深部にあるーーーー
「んんーーっ!! んぅんうううう!!!!」
アポピスの収監されている地下牢だった。
「んぐぅぅぅぅぅぅ(やめてぇぇぇぇぇぇ)!!!!」
牢自体が魔術を封じる材質な上、アポピスの首、両手首、尾はそれぞれに壁からの鎖が繋がれて拘束され、まともに身動きが取れない。さらに口には猿轡が噛まされ、自殺防止と呪文詠唱が封じられていた。
しかし、アポピスにとって苦痛なのはそんなことではない。
一生を捧げるに足る愛しい少年。だから誘拐し、童貞を奪ってやった男が『自分以外の女』と交わり、自分との性交より遥かに悦楽を感じている。その様を否が応でも延々と見せ続けられる。
「んぅぅんん(やめてよぉ)!!!!」
止めるよういくら叫んでも坊やには届かない。嫉妬深いラミア属のアポピスにとって、好いた男が自分以外の女と交わりを愉しむ様を見せ続けられるのは当然地獄の苦しみだった。
「うふふ………」
自らを捕らえた宿敵の女は確かに笑っていた。息子との交わりの悦楽に狂い、身を委ねながらも、同時に地下牢のアポピスを嘲笑っていたのだ。
そう、ファラオは息子を傷つけ、強姦し、二度と消えぬ呪いを刻みつけた闇色の蛇を憎悪し、恋慕していた息子の童貞を奪ったことに嫉妬していた。
そしてそれらの事実に精神の均衡を崩した砂漠の女王は、毒の呪いを中和する儀式という建前で息子と無理矢理性交するという凶行に及んだのだ。
「んぐうううう(ふざけるなぁ)!!!! ぐぐぅんんんんんん(殺してやるぅぅぅぅ)!!!!」
ファラオが悪辣なのは、同時にこのアポピスへの復讐も行なったことだ。
メシェネトが見せつけようとしたのは、トーヴの隣にアポピスの居場所はないという事実。何故なら、その場所に座っているのは自分だからだ。
それをこの蛇女に見せつけ、心をへし折る。そのために親子の交わりをリアルタイムで見せつけていたのだ。
「あぁっ、母様! 母様! 母様ぁぁぁぁぁぁぁぁ♥」
「ああああああああああああ♥♥ トーヴの熱いの流れ込んでくるぅぅ♥」
「んぎゅうううううう(やめてぇぇぇぇぇぇ)!!!! ぐぅぅじゅううぇぇぇぇ(私以外の女でイカないでぇぇぇぇ)!!!!」
自分以外の女の体で絶頂し射精する王子の姿に、アポピスの心は深い絶望で満たされた。
さらに行為はそれで終わらず、二回戦へと続く。王子は四つん這いになった女の尻を掴み、腰を打ちつけている。
「ぅぅぅぅぅぅ……」
見開いた黒い目からは苦痛のあまり滂沱の涙が流れ、強く噛むあまり猿轡には血が滲む。
それでも、親子の交わりは止まらない。坊やとその母親はアポピスのことなど気にもせず、背徳的な交わりに没頭する。
「母様! また出るよ!」
「あぁァン♥」
一体何度目の射精だろう。王子はまたその不愉快な穴に多量の白濁液をぶち込む。
「あぁぁ……またこんな出しちゃった♥」
王子はなんと幸せそうな顔だろう。だからこそアポピスには苦痛極まりない。
「今度は私の番よ♥」
今度は攻守を入れ替え、母が上となる騎乗位。先ほどまで処女だったはずの母は娼婦顔負けの腰使いを見せる。
「!」
そこでアポピスは気づいた。ファラオが口を動かしたが、それは喘ぎ声でない。
「………………」
いや、声には出していない。だが、アポピスは唇の動きで何を言ったのか読み取ってしまった。
(「お」「ま」………「ま」「け」………)
確かにそう言っていた。
「………んぎゅううううがああああああああああああ!!!!」
地下牢にアポピスのくぐもった怒りの絶叫がこだまする。
「がああああああ………………ッッッッ!!!!」
「お前の負けよ」ーーーーファラオは確かにそう言っていたのだった。
逃げ場無き廃墟にて、アポピスは囚われの王子を思う存分交わり犯す。遮る物の無い夜の砂漠のど真ん中という立地故、氷点下に近いはずの気温であるが、それを感じさせぬほどに寂れた玉座には熱が籠もり、また愛液と精液の入り混じった生臭くも淫らな匂いが充満する。
そんな中、アポピスは狂ったように腰を動かし、胴体に黒い蛇体を巻きつける。好いた少年の童貞を奪い、淫毒でそそり勃つ逸物を貪る快楽と愉しさはたまらないものらしく、女の興奮は増すばかりである。
そんな蛇女の心情を反映するかの如く、処女を捨てたばかりにもかかわらず、魔物娘の持つ名器のほぐれきった肉襞は熟練の娼婦顔負けだった。とぐろを巻く蛇が獲物を締め付けるが如き締まりで、かつそのまま回転するかの如く動く。
その快感はあまりにも強烈であり、童貞を捨てたばかりの少年には酷なものだった。
「あ…ぅ…」
当然ながら、少年の意識は快楽のあまり飛びそうだった。しかし、少年の両目より伝う涙はそれが理由ではなかったのだが、快楽に酔い狂うアポピスは気づいておらず、知ったところでどうでもいい事であろう。
「あぁぁぁぁっ♥ またスッゴイ出たぁ……坊やの赤ちゃんできちゃうかも♥」
少年の心情など露知らず、彼を愛しつつも容赦の無い冥界の蛇の荒々しい腰使いとうねる肉襞は、今また少年を八発目の射精に導く。浅ましい黒蛇は上半身をビクビクと仰け反らせ、貪欲な肉壷は吐き出された少年の子種と生命力に満ちた精を一滴も零さずに収めていく。
「うん? お客さんのようね…」
妊娠の可能性と快感の余韻に浸っていたところで、アポピスは廃墟の周りに近づく者の存在に気づく。
「あ〜あ、お楽しみの邪魔してくれちゃってぇ」
お楽しみのところを邪魔され、アポピスは不愉快に思うが、そこで昼間の出来事をふと思い出す。
(「狼藉者め! 王子を放せ!」――あの犬っころはそう言ってたわねぇ)
目障りなアヌビスを叩き伏せる直前、確かに彼女はそう叫んでいた。
「へぇ〜、貴方王子なの? 確かに普通の子とはちょっと違う雰囲気だとは思ってたけどねぇ〜」
意識が朦朧とするトーヴに語りかけて笑うアポピスだが、彼の身分を今更知ったところで動揺はしなかった。別に彼が王子だろうが乞食だろうが、気に入った男である事には変わりはないからだ。
元が何者であろうと、アポピスはこの少年と生涯を共にしたいと考えているし、例え身分が卑しかろうと差別しない。別に肩書や高貴な見た目で気に入ったのではないし、ただありのままのこの少年を見て、番になりたいと思っただけだ。
もっとも、そのやり方は文字通りの誘拐であり、本人の同意を得ていないのはもちろん、親元からも無理矢理引き離してしまっているのが問題なのだが。
「…という事は、“追手”か」
探知魔術で遺跡の周囲を探ると、明らかに百人以上の魔物娘の集団が遺跡を囲んでいるのが分かった。これほどの集団である以上、単に旅行者や隊商の一団が遺跡に近づいたのではなく、明らかに自身及びこの王子が目的だろう。
「アヌビス、スフィンクス、マミー、ギルタブリル、サンドウォーム。そして…」
彼女の種族が本能的に敵対する種族。神話の時代の砂漠の支配者にして、冥界の蛇と対になる『太陽の王』。
「ファラオ」
その存在を感知した途端、アポピスは臨戦態勢となり、邪悪な魔力が全身から滲み出る。その存在を憎み、毛嫌いしつつも、種族の宿敵との出会いから、蛇女は黒い目を見開き長い舌をだらりと垂らした、淫らながらも凶悪な笑みを浮かべる。
「んもぅ、坊やも人が悪い。貴方のママはファラオだったなんてねぇ」
しかし、それとこれとは話は別。ファラオの息子だったとしても、アポピスがこの少年を嫌いになるわけではない。
「でも、だからかしら? 貴方からどこか不愉快で、それでいて懐かしい匂いがしたのは」
アポピスの本能から、ファラオの匂いが不愉快なのは納得出来る。けれども、その匂いから何故か“懐かしさ”を感じるのも何故だろう。それはこの冥界の蛇にも分からない。
だが、自分好みの牡の匂いと共にそれらが混じり、このアポピスを少年の下へ導いてくれたのは事実である。
「ま、今考えてもしょうがないか」
とはいえ、今そんな事を考えても結論は出ない。遺跡の外側には百人以上の魔物娘達が集結しており、それらへの対処が先決だ。
「坊やはどうしたい?」
「………」
しかし、淫毒と快感のあまり意識が朦朧とした少年に尋ねたところで応えるはずもない。だが返答がどうであれ、アポピスはこの少年を好いており、彼と別れるという選択肢は無かった。
「ん〜〜追い返すか……」
それ以上に、アポピスの本能としてファラオと交渉する事も、屈する事も嫌だったのだ。
傍迷惑な事に、そんなファラオ憎しの思いと本能のせいで、王子が親元に帰りたがっているなどとは全く思い至らなかったのである。もっとも、気づいたところでわざわざ親元に帰してやろうと、この悪辣な女は考えもしないだろうが。
「待ってて頂戴。すぐに終わらせて帰るからね。そして、また愛し合いましょう♥」
意識の朦朧とする“夫”に微笑みかけるアポピス。このように極めて自己中心的な性格ではあるが、魔物娘の端くれである以上、アポピスはこの少年を守ろうという想いはある。
戦闘が高確率で起きるであろうと予想し、着替えを終えたアポピスはこの廃墟に防護結界を張ると、ファラオとその手下どもが待ち受ける場所へと進んでいったのだった。
「アポピスが出てきました!」
一方その頃、遺跡を囲むメシェネトの部下達は中心の廃墟より這い出たアポピスの姿を発見、緊張が走る。
(あれが冥界の蛇…)
(強大な魔力を感じる。ファラオの敵対者というだけあるな……)
各々抱く印象は様々だが、『強大な力を感じる』というのは皆共通していた。事実、アポピスはラミア属の中でもエキドナと並ぶ上級種族であり、並の魔物娘を遥かに上回る実力を持つのを彼女等は感じ取っていた。
(あらあら、臆病風に吹かれた腰抜けばかりね。ファラオの部下といっても所詮はこの程度か)
そんな風にやや気圧される魔物娘達を遠目から眺め鼻で笑いながら、アポピスは悠々と蛇体を波打たせ、廃墟の石段を器用に降っていく。
「こんばんわ、皆さん」
月光に照らされながら、柔和ながらも陰のある笑みを浮かべたアポピスは彼女等の前まで進み出た。
「貴様には我が国の王子を誘拐した嫌疑がかかっている!」
「王子? 知らないわねぇ」
アポピスは知らないと白々しく語る。だが、ファラオの部下達にはそれが嘘だと分かっていた。
「ならば、その精の匂いは?」
「私の夫とお楽しみの最中だったのよぉ。それを貴方達が邪魔したんじゃなぁい」
「………!」
先頭に立って問い質していたアヌビスの顔に怒りが浮かぶ。何故なら、アポピスが夫と称する人物の匂いが、彼女等の知る少年の精の匂いと同じであったからである。
「その言葉を証明してもらうためにも、中を改めさせてもらう」
「イヤよ」
「自身の疑惑を晴らしたくないのか?」
集団の最前列にいたアヌビスは挑発気味に問いかけるが、
「やれるものならやってみればぁ!?」
「――っ!」
さすがは精鋭。その直後に矢の如く飛びかかってきたアポピスの毒牙をなんとか躱したのだった。
「渡すわけないじゃなぁい! 私の可愛い旦那様だものぉ!
私達の絆はもう誰にも切れないの! 心も体も繋がって、そして“家族”という血の繋がりまで出来るものっ!」
先ほどの底の見えぬ態度から一転、凶暴な本性を現した蛇女は禍々しさを全開にしてまくし立てる。その態度からは絶対にトーヴ少年の事を帰さないという強固な意思が感じられた。
「蛇の割には随分とお喋りだこと」
「! あらあら、ようやく“御義母様(おかあさま)”のお出ましね!」
傍若無人なアポピスが腹に据えかね、前に進み出た一人の貴婦人。彼女の存在を待ちかねたとばかりにアポピスは鋭い視線を向ける。
「アポピス……息子は返してもらうわよ」
トーヴの養母にして、この国の女王であるファラオのメシェネト。息子を目の前の女に拐われて冷静さを欠きながらも、それを少しも態度に出さず堂々としているのはさすがと言えよう。
「そうはいきませんわ御義母様! 彼は最早私の半身! 愛し合い繋がり合う二人を裂くという事は死と同義ですもの!」
しかし、メシェネトが大物でも小物でも、このアポピスにはどうでもいい事だ。王だろうが神だろうが、愛する夫を渡すつもりなどない。
「返す気はないということね」
「子どもはいつか親元を離れるものよ? あの子の場合はそれが単に今ってだけーー」
「それ以上喋らなくていいわ。貴方の生臭い口臭に耐えられないもの」
元より交渉に来たわけではない。故にメシェネトはアポピスと問答を交わす気はないため、彼女の言葉を遮った。
「あらぁ残念。では最後に言っておきましょうか」
「………」
「もうあの子は私の物よ。何度も淫毒を打ち込まれ、身も心も私に捧げてしまったの」
「……!!!!」
恐れていた最悪の事態だった。メシェネトの世界で一番大切な、それこそ己の命よりも尚重い息子が、この蛇女に未来永劫隷属するという宣言。
この薄汚れた蛇と息子は常に交わらなければ心満たされないーー即ち『この女がいなければ生きていけない』ということだ。
「あぁ……っ!!」
ファラオは絶望のあまり足が震え、膝を突きそうになった。そして、それは部下達も同じだ。一生解けぬ呪いに蝕まれたも同然のトーヴの身を悲しみ、涙を流す者さえいた。
「ふぅん、なるほど。あの子は愛されているようねぇ……」
一方、アポピスはそんな王と配下達の態度を見て、逆に嗜虐的な歓びを抱いた。
彼女等の偶像(アイドル)を自分は思う存分弄び、犯したのだ。これが痛快でないはずがない。
ただし、トーヴはアポピスにとっても大切な存在である。彼はアポピスが数十年生きてきた中で初めて恋し、自らの全てを捧げてもよいとひと目で直感したほどの男だった。だからこそ、そんな男を此奴等から奪い取り、自らの色に染めたことを誇りに思う。
誰からも愛されるトーヴだが、王子はこのアポピスのことしか愛せない。だから王子が薄汚い雌どもに誘惑されようとも、心を寄せることはない。
どんなに愛の言葉を囁かれようと、どんなに色目を使われようと、あの少年はこの蛇女以外を受け入れず、交わろうとも最早満たされないのだ。
「うっうぅ……」
「うふふ……」
威厳のある態度から一転、幼い少女のように啜り泣くメシェネト。対して、アポピスはそんなファラオの姿を見てますます優越感に浸ると同時に、トーヴへの邪な愛を強くする。
「あぁ御義母様、なんとおいたわしいお姿。でも、わたくしめには貴方をお救いすることは出来ません。
だって、わたくしがいただくのはあの可愛い坊やだけではありませんもの」
嗜虐的な笑みを浮かべ、この場にいる全員にそう宣言するアポピス。
「国と民………そして貴方達。皆私の忠実な手駒となるのよ」
「「「「「「「「………!!」」」」」」」」
アポピスの本能はファラオの持つ全てを奪い取り、支配すること。メシェネトの愛しい息子を奪い取った次は、彼女の治める国である。
ファラオの側は軍勢、対するアポピスはたった一人。だがそれでも、蛇女は勝利を確信し、戦うつもりでいる。
「いいでしょう」
「! メシェネト様!」
アポピスの野望を感じ取り、王としての責務を思い出したのか。啜り泣いていたメシェネトは泣くのをやめて立ち上がり、冥界の蛇を見据えた。
「貴方の野望、ここで打ち砕いてあげるわ」
息子を穢し、さらには国まで奪わんとするアポピスの野望を粉砕する決意に満ちたファラオの姿に、配下達も揺らいでいた闘志が戻った。
「大言壮語……いくらファラオでも出来ないことはあるのよ?」
一方、それを茶番と見たアポピスは冷笑を浮かべ皮肉を飛ばす。
「盗人猛々しいとはこの事かしら。断っておくけれど、蛇一匹に屈するほど私の国も、私の息子も弱くはない」
しかし、メシェネトも負けじと言い返す。
「へぇ、ならば見せてもらいたいものね」
お喋りはここまで、とばかりにアポピスは身構える。
「お待ちなさい。息子を傷つけた罪人といえども、丸腰の相手を討つのは私の流儀に反する」
だが、待ったをかけたメシェネトは虚空に魔方陣を描くと、そこから武器を二つ取り出す。
「好きな方を選びなさい」
鎌剣(ケペシュ)と三日月斧。ファラオはそれらをアポピスの前に投げ刺した。
「ふぅん、なるほど。決闘をお望みのようね。ま、当然か」
愛する息子を無理矢理犯された母親の怒りが尋常でないのはアポピスも理解はしている。故に、このような決闘を望まれたことに少しも違和感はなかった。
「では、この斧を貰いましょう」
アポピスは二つの内、三日月斧の方を選び、屈んだ。
「え……? これはっ!?ーーーーッアアアアアアアア!!!!????」
しかし斧を掴んだ瞬間、地面に魔方陣が浮かび上がる。
気づいた時には遅かった。魔方陣よりすぐさま紫電が奔ってアポピスは感電、拘束される。
「アアアアアアアア!!!! キサマアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
感電しながらも口汚く絶叫するアポピス。そして、その光景を見つめるファラオの顔には、普段の慈悲や鷹揚さを欠片も感じさせないほどの邪悪な笑みが浮かんでいた。
「愚かな女ね。私がお前のような獣と決闘などするとでも?」
メシェネトは立派な女王である。しかし、国を守るためなら卑劣な手段も躊躇わない。
一方、アポピスは邪悪で狡猾なようでいて、実は決闘を申し込まれればそれを二つ返事で受諾する案外素朴な面があった。だから決闘の申し出自体が罠だとは思わず、差し出された武器をあっさり掴んでしまったが、そこに意識を向けていたせいで対処が遅れてしまったのである。
「痛い? 苦しい?」
「っ……!!」
アポピスが感電し、苦痛に苛まれ続ける様を、目を細めて満足気に眺めるメシェネト。
この女は愛しい息子を犯し、汚し、永久に消えない呪いをかけたも同然。本来ならば八つ裂きにしても飽き足らない。そんな憎い相手に正々堂々決闘を挑む気など最初(はな)から無かった。
「アポピス風情が私の息子を犯し、あまつさえ国まで奪い取るですって? 成程成程、身の程知らずらしい、御大層な夢物語だこと。
でも残念、愚かな貴方のそんなくだらない覇道もここで終わり」
陰惨な笑みを浮かべたメシェネトは地に突き刺さっていたケペシュを引き抜き、感電しないように魔力で絶縁を施したところで、
「お前はここで死ぬのよ」
アポピスの首元へ突きつける。
「……っ!!」
「後悔してももう遅いわ。お前は私の愛しい坊やに二度と消えぬ汚れと傷をつけてしまったの。
それだけではないわ。お前は私から今まで苦労して築き上げてきた国まで奪おうとした。そんな輩をこれ以上生かしておくと思う?」
ファラオが少し力を入れただけでアポピスの首筋に刃がめり込み始め、うっすらと血が流れた。
「! メシェネト様それは…!」
「どうかおやめに!」
この不穏なやり取りを見守っていた配下達だが、さすがに殺すのはやりすぎだとファラオを諌めるもーー
「お黙り!!!!」
「「「「「「「「……!!」」」」」」」」
鬼気迫る形相で振り向いたファラオに“王の力”をもって一喝され、皆一様に黙りこくってしまう。
「この女は私の愛しいトーヴを穢したのよ!! そんな忌まわしい不浄の獣を生かしておくものですか!!」
目を見開き、大声で叫ぶメシェネトに普段の慈悲深き統治者としての姿は全くない。そこにいるのは、狙っていた男を横取りされて嫉妬し復讐しようとする、見苦しくも哀れな魔物娘であった。
「おやめください!! 我等は王のそのような見苦しい姿を見たくはありませぬ!!」
ここでリーダー格のアヌビスが反発し、なんとファラオの呪縛から抜け出てしまう。その事実が示すのは、ファラオの命令が聞けないほど耐え難いものであるということだ。
「………!」
「冷静になってくださいませ。王子もきっとアポピスを殺すことは望んでおりませぬ」
驚くファラオだが、そのおかげか正気に戻る。
「え、えぇそうね……私としたことが見苦しい振る舞いを……」
アヌビスの提案を受け入れ、アポピスを殺すことはやめにしたメシェネト。しかし、相変わらずその目には闇色の蛇に対する憎悪が尽きず、復讐心は未だ燻り続けていた。
「この女をどうするかは後回し。さっさとトーヴを迎えに行きましょう」
「あ゛う゛ッッ!!!!」
「「「「「「「「………………」」」」」」」」
今までは気絶しないギリギリのラインで流されていた電撃だが、ファラオが右手の指を弾くと最後に大電流が流れ、アポピスは倒れる。それを見届けたメシェネトは何事もなかったかのように、トーヴが隠されている廃墟へ配下達と共に向かった。
(ぼ、坊や………)
全身から煙を燻らせながら、意識の途切れかけるアポピスには悠々と立ち去るファラオ一行を見送るしかない。さらに、廃墟に隠しておいたトーヴが救い出されるのもまた見ているしかなかったのだった。
トーヴは救出後、アポピスと共に王都へと運ばれて手当を受けた。ベッドで目を覚ましたのは拐われた翌々日の正午頃である。
目を覚ましてすぐ、その報せを聞きつけて大急ぎで駆けつけた母に抱き着かれ、大泣きされた。
「ただいま」
その様に初めは呆気にとられるも、母の愛を感じた息子も同じくメシェネトを抱き締めたのである。
こうしてトーヴは無事王都へ帰還し、アポピスも牢に放り込まれ、平穏な日常が戻ったーーーーと、トーヴは思っていた。
「母様……?」
「心配しないで」
夕食時、神妙な顔で母に告げられたのはトーヴがアポピスの呪いを受けてしまったことだった。残念ながら、トーヴは救出後に手当を受けたものの、淫毒自体は結局取り除けなかったそうだ。
それは即ち、王子は一生アポピスの影響下にあるということだ。しかし母曰くその支配力を弱め、なんとか意識を保ち続け平穏な日常を送る方法はあるのだという。
「全て私に任せて頂戴」
入浴して身を清めたトーヴは寝室に戻ってベッドに座り、母の話を聞いていた。ただし、母の言いつけで服は着ず、全裸である。
そしてメシェネトもまた全裸であり、絶世の美貌と豊満で扇情的な肢体を余すことなく晒している。他人から見ればとても官能的な光景だが、息子にとっては毎日母と共に入浴しているという事情から、裸体を晒し続けるのを不思議に思えど、他には特に何も感じはしない。
「母様? 何を……」
夕食か入浴中に運び込まれたのか、部屋の真ん中にはレンガ製の小さな祭壇が置かれている。その上には色々な物が置かれているが、その中でも目立つのは中央に置かれた紫色の宝玉、両端にそれぞれ設置された香炉だった。
「………」
母が蝋燭で香炉の中の香草に火を点けて燻すと、毒々しい桃色の煙が空間に満ちていく。
「雰囲気は大切なのよ♥」
振り返って微笑んだ母の顔はそれはもう淫靡なものであった。
「あ……」
何故かその時、王子の顔には母の顔にアポピスが重なって見えた。その理由は分からないが、デジャヴュというか、同じ印象を受けたのである。
「ぅ……」
アポピスのことを思い出し、めまいが起きるトーヴ。望まぬ童貞喪失は彼にとって良い思い出ではなかった。相手が如何に上級魔族の極上の美貌、齎された快楽はこの世のものとは思えぬものであれどもだ。
慕う者(メティト)は毒牙に倒れ、自らの誤った判断により事態は悪化した。まだ年端も行かぬ少年であるが、その失態は恥じていたのだ。
「大丈夫よ」
怯えて縮こまる息子を母は優しく抱きしめる。その温もりは少年には懐かしく、また安心できるものであった。
「忘れなさい、怖いことは全て」
背後から囁くメシェネト。それに伴い、大きな両乳房がまだ頼りない背中に押し付けられる。
しかし、その姿は優しい母親というよりは美しくも淫靡な毒婦、あるいは甘言を囁く女悪魔にも見えた。
「う、うん……」
母の言葉を王子は聞き入れた。
「良い子ね…」
メシェネトは息子を向き直らせ、対面する。
「さぁトーヴ、愛しい我が子よ。これより儀式を始めます」
「ぎ、儀式……?」
全裸になったことや、部屋に置かれた祭壇からしてそういった事をするつもりだったのは予想していた。
「そう、貴方にかけられた呪いを和らげるための儀式」
そう厳かに告げる母の顔は発情しきって紅潮しーー
「………!」
ーーその瞳は漆黒の夜の闇、あるいは永劫に光の注がぬ深淵の底の如く澱んでいた。
「かあ…さま…?」
母と違い、息子がその時感じたのは興奮と歓びでなく、恐怖だった。
「……まだ効きが弱いようね。さすがは私の息子♥」
祭壇の香炉から燻される桃色の煙だが、当然燃えているのはただの香料ではない。これには強い興奮・発情作用があり、魔物娘が夫と性交時にさらに深い快感を得やすくするという代物だ。
そんな煙を吸い込んで尚トーヴが正気を保っているのをメシェネトは残念に思えども、それ以上に息子の頼もしさを嬉しく思った。
「アポピスの毒を和らげる方法ーーそれは『愛しい者と交わり、契りを結ぶこと』」
「え…」
「トーヴ、貴方にアポピスが毒を注いだのは、奴が貴方を自分の物にしようとしたから。それを跳ね除けるには貴方が『アポピス以外の女を愛さねばならない』のよ……」
煙に当てられてか、恍惚の表情で語るメシェネトだが、息子はようやく異常な状況だと気づき、冷や汗をかいていた。
ちなみにメシェネトの述べていることは全て根拠のない、まったくのデタラメである。当然、アポピスの淫毒を解毒する儀式というのも存在しないが、それをトーヴは知る由もない。
「ここまで言えば……解るでしょう?」
このような嘘八百のデタラメを並べてまで、ファラオは息子に一体何をしたいのか? しかし、その淫蕩な笑み、汗ばんだ官能的な肉体、濡れた雌穴を見れば、最早説明は不要であろう。
そこに子を可愛がる母の姿はない。嫉妬し暴走する果てに生まれたのは、ただ夫の寵愛を求め、媚びる、淫らで浅ましい一匹の雌だった。
「や、ヤダよぅ…」
最早母としての立場をかなぐり捨てたメシェネトは、まずはお互いの愛を確認すべく、口づけをしようと迫る。
しかしそんな義母に対し、トーヴは拒絶の意思を口にしてしまう。
「何故?」
「か、母様とボクは親子じゃないか! いくらアポピスの毒を和らげるためだっていったって、母様とこんなことしたくないよ!」
いくら天真爛漫とて、最低限の倫理観は持ち合わせている。そんな王子が涙目で母君に主張するはもっともな正論。
きっと誰もがトーヴの意見を支持するであろう。
「そう……貴方はそんなつまらないことを気にして、私を拒絶するのね……」
しかし、この母には常識だとか倫理観だとか、そんなものは一切なかった。
「母様はこんなに貴方のことを愛しているのに」
悲しげに呟くメシェネト。しかし、彼女の言う“愛”とは子に対するものか、それとも“夫”に対するものか、一体どちらであろう。
「かあ、さま…」
「“この国を治めるファラオの名において命ずる。
トーヴよ、私と交わりなさい。淫らに、情熱的に、そして深い愛を確かめ合うようにお互いの全てを曝け出して”」
「!!?? 母様!?」
息子である以上、それが何かを知らぬはずがない。
母は使ったのだ。ファラオの“王の力”、絶対遵守命令ーー息子である自身を犯すため、ただそれだけに。
「あ、あぁぁ……」
既にインキュバスであるためか、それとも女王の教育の賜物か、トーヴには催淫香も効果を示さなかった。しかし、救出時におけるアヌビスの場合と違い、“王の力”にまでは抗しきれなかった。
ファラオから放出された魔力が、息子の体へと流れ込む。もうこの体は彼の物ではなく、この狂った母親の望むままだ。
「怖がらないで♥」
そう諭す母の顔はこれからのことを思うあまり発情して蕩けきり、とても部下達に見せられるようなものではない。
「あ、ぁ…」
王子は母に肉体の主導権を奪われ、呂律さえ回らない。ただし唯一ヶ所、下半身にぶら下がる肉竿だけは弛緩するどころか、痛々しいぐらいに怒張し張り詰めている。
そして不幸なことに、母の呪縛に意識だけはそのまま残っていた。これからの許されざる行為を想像し、体は震えが止まらない。
「トーヴ、いい加減に理解して頂戴。これは必要なことなのよ?」
母はでっち上げた嘘の儀式を建前に、幼さの残る息子の瑞々しい肉体を味わう。背後から二つのたわわに実った果実を押し付けながら、火照った肌をまさぐり、耳を舐めしゃぶり、息子の髪の毛に顔を押し付け、雄の匂いを堪能する。
「イイ香り……直に嗅ぐと違うわね♥」
わざとらしいぐらいに鼻息を吸い込み、後頭部に直に吐く。
「んふふ♥」
ひとしきり愉しんだところで、悪戯っぽく笑う母は今度は背後から勃起する肉竿を右手で掴んだ。
「なんだかんだ言っても、こっちは素直なのね♥」
赤子の時から見続けた物であるが、今母が目にしているそれは天を向き、下腹部にくっつかんばかりに反り返っている。
その成長ぶりに母は感銘を受けると共に、今すぐそれを味わいたいと下半身が疼いてしまう。
「それにしても立派に育ったわね。母様とっても嬉しいわぁ♥」
メシェネトは発情しきっただらしない淫笑を浮かべながら、ガチガチに勃起した肉竿を扱き始める。
「あぅっ!」
トーヴは二度目の性交ながら、初めての刺激にビクリと体を震わせる。心は拒んでいるのだが、彼の分身はそうでもないようだった。
「アハッ♪」
息子の葛藤を感じ取った母は、それを嘲笑うかのように扱く速さを上げた。さらに、五指はそれぞれ息子の怒張を的確に刺激し、時に緩急をつけ、時に力加減を変えて捻りを入れるなどして追い詰めていく。
「我慢しなくたってイイじゃない♥」
耳穴に舌を這わせ舐めながら、淫母は耐える息子へと囁く。
「……っ!!」
懇願するような目つきで母に無言で訴えるトーヴ王子。
あの優しかった母は何処に行ってしまったのだろう? 目の前にいるのはただ禁断の関係に溺れる狂った女がいるのみである。
「ん〜〜ふふふふ……♪」
そんな息子の悲しみも今の母には届かない。それどころか、この女は子犬のように震えて悶える息子に、逆に嗜虐心が刺激されてしまう有様だった。
「カワイイ♥」
そう思ったからこそ、果てるところが見てみたい。息子に寄りかかった母は、今度は左手で睾丸を掴みーー
「!? うああっ!?」
中指を肛門に突き入れ、前立腺を刺激する。
「あっ……あっ、あっ、あっあっ」
限界まで来ていたところで、背中を貫かれるような鋭くももどかしい感覚。そして脳が電流で焼き切れるかのような形容し難い強烈な快感。
これに王子は耐えきれずーー
「うあぁーーーーーーッッ!!!!」
「きゃっ!!」
絶叫をあげ、たまらず射精してしまう。
「うふふ♥」
「あ……あ……」
身動きの取れない状態で精通を迎え、その異常な状態の中での異常な快感と余韻に浸り、放心状態になるトーヴ。
一方、顔面に勢い良く射精され、驚いて可愛い声を上げてしまったファラオだが、垂れてきた精液が口の中に入った途端、さらに興奮、発情してしまう。
「やはり貴方は王の器よ、トーヴ………こんなに濃い子種と力強い精を母様に御馳走してくれるなんて♥」
淫母は器用に指で精液を掬い取り、口に運ぶ。そして恍惚の表情でそれを口中で泡立て、飲み込んだ。
「ん〜〜、濃くってまろやかぁ♥ そして貴方の力強い生命力を感じるわぁ♥」
珍しく顔をほころばせ、感想を述べるメシェネト。しかし、トーヴからしたら全く嬉しくないし、今そんなことを気にする余裕もなかった。
「あ……ぅ………」
「それぐらいで呆けちゃダメでしょ、トーヴ。これから母様ともっとスゴイことをして、も〜っとキモチよくなるんだから♥」
「んぶぅっ!?」
この最低の母親は息子が呆ける中思い返す気持ちなど最早どうでもよい。それを示すかの如く、まだ精液の残る口で息子の唇を奪い、精液入りの唾液を流し込んだのである。
「んっ……んっ♥」
息子への愛の誓いだと言わんばかりに、母はトーヴへ濃厚な口づけをする。下の口で交わる前に上の口を交えようとばかりに、その様は情熱的で、卑猥で、そして淫らであった。
「ん……あぁ……」
心では拒絶していた王子であるが、母の魔物娘らしい卓越した淫技に、徐々に取り込まれつつあった。
ファーストキスが己の精液の味とは屈辱の極みであるが、それを忘れかけるほどに母の絶技は半端ではない。
「んちゅ、んっ……んぷっ……」
生まれて初めて、母とここまで顔を近づけあった。トーヴはそれを実感すると共に、母の美貌を性的な意味で初めて意識してしまう。
舌を絡め合い、唇を合わせ、唾液を啜り合う。吐く息をお互いで押し合い、循環させるという行為に、トーヴはたまらない興奮を覚えつつあった。
(き……キモチイイ……)
後悔しかなかった先ほどの手コキと違い、今は心からそう思いつつある。背徳と禁忌でしかないこれらの行為も、段々と受け入れつつあった。
「やっと素直になってくれたのね♥ 母様とっても嬉しいわぁ♥」
母もトーヴが段々と行為を受け入れつつあるのを感じ、ちょっと得意気な顔で喜ぶ。
「分かるでしょ、母様の気持ちが」
息子は誰にも渡さない。この子を愛してあげられるのは自分だけなのだ。
「……うん」
そして、そんな狂った母を見ても、息子からは嫌悪感がなくなっていった。
「見て、ここを♥ 母様は貴方のことを想うあまり、ここがこんなになってしまったのよ♥」
あぐらの状態から両脚を広げ、息子へ秘所を見せつけるメシェネト。
「………」
まだ未通ながら、そこは男を求め、僅かに開閉する。大陰唇も薄く、年齢に似つかわぬ幼い秘部は、初めての相手として息子を求め、禁断ともいえる交わりを望んだ。
動けなかったはずだが、受け入れたことである程度自由になったのか。トーヴは開いた母の股に力なく倒れ込みーー
「あうっ!」
「………………」
そのまま舌を這わせた。
「あっ! あっ! 上手よぉ♥」
母はびくりと体を震わせ、やがて激しい快感のあまり仰け反る。
卑猥な水音を立て、トーヴは忌まわしくも淫らに母の筋を舐めしゃぶる。その様は背徳的であり、また冒涜的であった。
「母様のココ、とってもおいしいよ……」
つい先ほどまでは絶対ありえなかったであろう言葉が王子から飛び出す。幼い王子も発情し、今までは目にしても全く意識してこなかった母の陰部へ拙いながらも愛情を籠め、奉仕する。
痛々しいほどに勃起した陰核に舌を這わせ、舐め転がし、筋の中に舌を突き挿れる。さらには陰部全体を吸い上げ、愛液を啜る。
「あぁ、トーヴ……私の愛しい坊や……♥」
その様に感極まり、涙を浮かべるメシェネト。愛と狂気に囚われた母は、今息子と心が通じ合ったことに対する無上の歓喜に打ち震えている。
「とてもキモチイイわ……♥ 貴方の愛が伝わってくるようで……♥」
快感と歓喜にのぼせる母。対する息子もまた、母への愛と献身を見せる。
技は拙いながらも奉仕の心で母の感じる所を慎重かつ丁寧に探し、舌と指を使い一つ一つ探り当てていく。
「ああっ!!!!」
母は陰核を攻められるのが好みだとやっているうちに理解し、トーヴはそこを重点的に攻め始めた。
陰核を舌で舐め弄り、あるいは指でつまんで弾く。その都度母は嬌声をあげ、息子の背中に脚を絡めた。
「………………」
母が自分の攻めで気持ちよくなってくれている。それがトーヴは嬉しかったし、母親とはいえ年上の女を年端も行かぬ小僧である自分がヨガらせているのも興奮していた。
「あっ、ぁ、キちゃう!」
「!」
拙いながらも懸命に奉仕するトーヴだが、頑張りが功を奏したのか、母の昂ぶりを感じ取り、
「いぎっ!」
それを逃さぬべくクリトリスを甘噛みした。
「あっあぁっ……あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!」
先ほどの息子と同じく絶叫をあげ、母はオーガズムに達した。そして勢い良く潮を噴き、息子の顔面に浴びせたのだった。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ………」
絶頂の余韻か、荒く息を切らすファラオ。一方、息子も先ほどの母の行動をなぞるかのように潮を舐めた。
(変な味だ……)
母と違い、息子はそれを美味いとは思わなかった。しかし、嫌とも思わない味ではあった。
「とってもキモチよかったわ、トーヴ……♥」
「……うん」
母に褒められるも、照れくさいのかトーヴは俯いた。すると、先ほど舐めていた母の秘所が目に入る。
「ねぇ、次もここよ…♥」
母も子も、お互い次に何をやるのかを理解していた。そして、その行為こそまさに『交わり』と呼ぶべきものだということも。
「母様…」
「貴方が童貞でないことが残念でならないわ…」
母は淫らで冒涜的な最低の母親そのものだった今までと違い、陰のある笑みを浮かべた。
その笑顔を見たトーヴは母に対し、申し訳なく思ったがーーそこで何故かアポピスの顔が浮かんだ。何故かは自分でも分からなかったが、憎みきれなかったことは確かだ。
「忘れなさい、あの女のことは」
その複雑な想いをを感じ取ってか、息子を諭す母。
(あんな最低の犯し方では、童貞喪失に入らないわ)
しかし心中では嫉妬も籠め、アポピスを悪罵していた。もっとも、自分も似たようなことをしているのは棚に上げていたのだが。
「さぁ、来て……貴方は一人前の男になるのよ……」
悪い思い出はこの場では一旦忘れ、仰向けになった母に促され、覆いかぶさる息子。
「そう、ここよ…」
母は息子の怒張を秘裂にあてがいーー
「!! んっぐぅぅぅぅ!!!!」
貫かせた。
「か、母様、大丈夫!?」
「いいのよ……これで私も“一人前の女”になったのよ……♥」
痛みに震える姿を見て心配そうに見下ろす息子を安心させるべく微笑む母。
「見なさい……これがその証よ」
二人の結合部からは血が流れていた。これこそ破瓜の証である。
メシェネトは今まで相応しい男に出会うことが出来ず、未婚のまま朽ち果てるかと思っていた。そう、あの日川に流される赤ん坊を拾い、立派に成長するまでは。
「さぁ、このまま動きなさい」
「え…でも……」
涙目で痛みに震える母を見かね、躊躇する王子。
「躊躇わず進みなさい。貴方は王になる男なのですよ」
しかし、気にせず動くよう促すファラオ。そんな母を気遣い、ゆっくりと腰を動かすトーヴ。
「んっ……イイわよトーヴ♥」
性行為に対する順応性は、魔物娘は人間の比ではない。メシェネトもそれを承知であり、息子に動くよう命じるが、効果はすぐに現れた。
痛みが和らぐと共に、甘い声を漏らすファラオ。グイグイと腰を押し付けてくる息子に応え、彼女も脚を彼の腰に絡める。
「スゴイよ母様! 中がまるで生き物みたいに絡みついて……ふぁあ!!」
息子もまた母の蜜壺の絶品さに驚嘆し、情けない声を上げる。手淫や口淫も初めて故に新鮮で鋭い快楽があったが、こちらはそれ以上、数倍もの快感を少年に齎した。
「ふふ、キモチイイでしょう♥ 貴方の好きに動いてイイのよ♥」
甘い声で息子に囁くファラオは、快感でそれどころではない息子を見て微笑むと、祭壇の宝玉を見やった。
「うふふ………羨ましい?」
しかし、そちらに向けた笑みは息子に向ける慈愛に満ちたものと違い真逆、極めて悪辣なものであった。
「♥」
再び息子の方に向き直ったファラオは、名器から絡みつく襞の悦楽に悶える王子と対面し、その表情の変化を愉しむ。
そして、性交の快感を覚えたばかりの息子からの荒々しいピストンを受け、自身も段々と増していく快感の奔流に流されていった。
「あぁ……♥」
愛する息子に犯され、共に快楽を分かち合う。その初々しい肉欲を受け止め、奉仕する。
その体を蹂躙され、弄ばれ、征服されることに歓びを感じる。成長した息子の逞しい物で乱暴に子宮口を小突かれ、かつて母乳を与えていた乳を乱暴に吸われ、荒々しく何度も口づけを交わして舌を絡ませる。
なんと幸福なのだろうーー故国から逃げ延びてより数十年、ここまで安心し、そして満足出来たのは初めてかもしれない。
「母様! 母様!」
王子は滾る肉欲と快感の赴くまま、母へと腰を打ちつける。その度愛液が飛び散り、破裂音が寝室に響くと共に、ぬめった襞の一本一本が息子の肉竿を優しく包み込み愛撫する。
ファラオの最初の命令通り、息子は母の柔肉を思う存分犯した。しかし、実はもう母は命令を解いている。だから、今この荒々しい性交は、彼本人が望んで行なっているのだ。
「トーヴ♥」
夢中で腰を打ちつける息子の頭を愛おしそうに撫でるメシェネト。
息子の息遣いはますます荒くなると共に、突き挿れられた肉竿がビクビクと痙攣し始めるのを感じ取ったファラオは息子の限界が近いのを悟った。
「もうイキそうなのね………」
「うん、母様! ボクもうイキそう!」
「イイわよ。濃いのを注いで私を孕ませなさい♥ 私を貴方の母でなく、貴方の妻にしてぇ♥」
二度目の性交ではまだ我慢が足りず早漏気味である。それでも、両者の肉体は最高の悦楽を、心は至上の幸福感で満たされていた。
「あぁっ、母様! 母様! 母様ぁぁぁぁぁぁぁぁ♥」
ついに限界が来たトーヴは絶叫しながら、肉竿の先端を母の一番奥に突き挿れる。
「ああああああああああああ♥♥ トーヴの熱いの流れ込んでくるぅぅ♥」
親子である故か、両者は同時に絶頂を迎えた。二人は脳内が焼き切れそうな快感と共に、王子は大量に射精し、ファラオはそれを迎え入れるべく子宮口が開いた。
「うっ……ぅっ……」
肉竿と睾丸に痛みさえ感じるほどの大量の射精。幼いインキュバスは子孫を残すべく、血の繋がらぬ母の子宮にその子種と精を放った。
「………………♥」
愛、快楽、幸福………全てがファラオの頭を巡る。
「母様……」
「おめでとう♥ でも、これで終わりではないでしょ?」
そう、息子はまだこの肉体を征服しきれてはいない。その証拠に、母はまだ意識がはっきりし、問題なく動ける。
「次は貴方の好きなように母を犯してみなさい♥」
相変わらず淫らな笑みを浮かべる母。それを見て興奮した王子の肉竿は再び天を衝く。
「うん……母様♥ 四つん這いになって…」
言われるまま四つん這いになった母を見て口元を歪めるトーヴ。そして嗜虐的な衝動のまま。その秘裂に怒張をあてがい、突き挿れた。
「アァン♥」
快楽に再び嬌声を上げるファラオ。王子も興奮し、その大きな尻を掴み、痣が出来そうな強さで腰を叩きつける。
「もっと犯してトーヴ♥ 母様を妊娠させてぇ♥」
後背位で犯されながら乳を揉まれ、嬌声を上げてヨガるメシェネト。親子の交わりはどちらかの限界が来るまで続くであろう。
しかし、背徳的な交わりに夢中だったトーヴは気づいていなかった。
メシェネトはトーヴから顔が見えない位置になる度、必ず祭壇中央部に置かれていた宝玉を見つめていたのだ。
この宝玉は一体何か? 儀式自体が嘘っぱちである以上、大した効果がある物ではない。
そう、この紫色の宝玉【シアタークリスタル】は、ただ『映った光景を映像にして中継する』というだけの代物だ。そして撮った映像は受信側のシアタークリスタルに送られる。
そして、もう一個のクリスタルのあるのは王宮最深部にあるーーーー
「んんーーっ!! んぅんうううう!!!!」
アポピスの収監されている地下牢だった。
「んぐぅぅぅぅぅぅ(やめてぇぇぇぇぇぇ)!!!!」
牢自体が魔術を封じる材質な上、アポピスの首、両手首、尾はそれぞれに壁からの鎖が繋がれて拘束され、まともに身動きが取れない。さらに口には猿轡が噛まされ、自殺防止と呪文詠唱が封じられていた。
しかし、アポピスにとって苦痛なのはそんなことではない。
一生を捧げるに足る愛しい少年。だから誘拐し、童貞を奪ってやった男が『自分以外の女』と交わり、自分との性交より遥かに悦楽を感じている。その様を否が応でも延々と見せ続けられる。
「んぅぅんん(やめてよぉ)!!!!」
止めるよういくら叫んでも坊やには届かない。嫉妬深いラミア属のアポピスにとって、好いた男が自分以外の女と交わりを愉しむ様を見せ続けられるのは当然地獄の苦しみだった。
「うふふ………」
自らを捕らえた宿敵の女は確かに笑っていた。息子との交わりの悦楽に狂い、身を委ねながらも、同時に地下牢のアポピスを嘲笑っていたのだ。
そう、ファラオは息子を傷つけ、強姦し、二度と消えぬ呪いを刻みつけた闇色の蛇を憎悪し、恋慕していた息子の童貞を奪ったことに嫉妬していた。
そしてそれらの事実に精神の均衡を崩した砂漠の女王は、毒の呪いを中和する儀式という建前で息子と無理矢理性交するという凶行に及んだのだ。
「んぐうううう(ふざけるなぁ)!!!! ぐぐぅんんんんんん(殺してやるぅぅぅぅ)!!!!」
ファラオが悪辣なのは、同時にこのアポピスへの復讐も行なったことだ。
メシェネトが見せつけようとしたのは、トーヴの隣にアポピスの居場所はないという事実。何故なら、その場所に座っているのは自分だからだ。
それをこの蛇女に見せつけ、心をへし折る。そのために親子の交わりをリアルタイムで見せつけていたのだ。
「あぁっ、母様! 母様! 母様ぁぁぁぁぁぁぁぁ♥」
「ああああああああああああ♥♥ トーヴの熱いの流れ込んでくるぅぅ♥」
「んぎゅうううううう(やめてぇぇぇぇぇぇ)!!!! ぐぅぅじゅううぇぇぇぇ(私以外の女でイカないでぇぇぇぇ)!!!!」
自分以外の女の体で絶頂し射精する王子の姿に、アポピスの心は深い絶望で満たされた。
さらに行為はそれで終わらず、二回戦へと続く。王子は四つん這いになった女の尻を掴み、腰を打ちつけている。
「ぅぅぅぅぅぅ……」
見開いた黒い目からは苦痛のあまり滂沱の涙が流れ、強く噛むあまり猿轡には血が滲む。
それでも、親子の交わりは止まらない。坊やとその母親はアポピスのことなど気にもせず、背徳的な交わりに没頭する。
「母様! また出るよ!」
「あぁァン♥」
一体何度目の射精だろう。王子はまたその不愉快な穴に多量の白濁液をぶち込む。
「あぁぁ……またこんな出しちゃった♥」
王子はなんと幸せそうな顔だろう。だからこそアポピスには苦痛極まりない。
「今度は私の番よ♥」
今度は攻守を入れ替え、母が上となる騎乗位。先ほどまで処女だったはずの母は娼婦顔負けの腰使いを見せる。
「!」
そこでアポピスは気づいた。ファラオが口を動かしたが、それは喘ぎ声でない。
「………………」
いや、声には出していない。だが、アポピスは唇の動きで何を言ったのか読み取ってしまった。
(「お」「ま」………「ま」「け」………)
確かにそう言っていた。
「………んぎゅううううがああああああああああああ!!!!」
地下牢にアポピスのくぐもった怒りの絶叫がこだまする。
「がああああああ………………ッッッッ!!!!」
「お前の負けよ」ーーーーファラオは確かにそう言っていたのだった。
19/03/29 17:06更新 / フルメタル・ミサイル
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