受胎
(………………)
どれだけ時が経ったのだろう。今のアポピスにはそれすら分からない。
延々と繰り返される“生き地獄”の中で泣き喚き、呪詛の言葉を吐くもやがてそれらの行為にも疲れ果てたアポピスは、いつしか全ての感覚が麻痺してしまった。
(………………)
毒々しく、禍々しく、冷酷で我儘。それでいてこの世のものとは思えぬほどに妖艶で淫らな冥界の蛇だが、今や心ここにあらず。ファラオの治める国、さらには彼女の愛する王子を奪わんとする覇気も尽きてしまった。
そう、今の彼女は文字通り『蛇の脱け殻』である。
「ぅ………ぁ………」
時折呻き声を上げて身じろぎするが、それ以外は無言で涎を垂らしながら、アンデッドよりも虚ろな目で虚空を見つめるのみである。
以前は人外の美しさ、滾る肉欲、溢れる生命力の象徴のような、豊満で瑞々しく、血色良い肉体も今や過去のもの。見ていて哀れなほどに衰弱しきっている。
「ぅ………………」
このように美貌は色褪せ、身はやつれ、心もへし折れかけた彼女。だがそれでも、彼女の肉体はまだ死を望まなかった。
何故だかは分からない。しかし、何故か死ぬ気にはならなかった。何故かまだ生きなければならぬ気がした。
(………………)
それは自分に残った最後の誇り、ファラオに対するせめてもの意地なのだろうか。あるいは魔物娘の本能が、夫を奪われたままで死ぬのを拒んだか。
「ぼ……ぅ………ゃ………………」
不憫なことに、その愛する夫の名前さえ知らぬ冥界の蛇。しかし、その名前さえ知らぬ少年が、彼女の心の最後の拠り所の一つであるのは間違いなかった。
「っ………………」
だが、その心の拠り所は、同時に彼女をさらなる絶望に追いやってもいた。
「………………」
今またシアタークリスタルが作動し、映像を中継する。途端、女王と王子の背徳の交わりが映し出され、物音一つしない暗い牢獄に破廉恥な音声が響き渡る。
「………………」
これでもまだ死を望まないが、かといってもう放送を止めるよう懇願する気力もない。けれども、愛しい男にいつも跨がり、娼婦の如く腰を振る女王を見つめるその瞳には、まだ憎しみがあったのも確かである。
同刻、親子の寝室ーー捕らえられた冥界の蛇が拷問を受けているなどつゆ知らず、今日も王子は養母と淫らな愉しみに浸っている。
「あぁっ、母様!」
二人は血の繋がりはないとはいえ親子でありながら、今日もお互いの肉体を求め合う。ましてや脂の乗った美女と年若い少年の交わりともなれば、その激しさは否応でも増すというものだ。
「んっ……♥ そうよ、もっと奥を突いて……っ♥」
正常位で腰を打ちつける息子に優しく微笑む母は、両脚を愛おしそうに彼の腰に絡める。相変わらず技術も何もない、若さに任せた拙いトーヴのピストンであるが、寛大な女王のほぐれた膣肉にはむしろ好ましい刺激を与え、快感を齎していた。
「でも、ただ腰を打ちつけるだけではダメよ? 正常位ではーー」
しかしただ甘やかすばかりでなく、時には息子に性技について教え諭し、導くのも忘れない。
「うん」
トーヴは素直な子だから、母の教えを真摯に聞いてくれる。
それに夫の性技が拙いというのも悪いことばかりではない。今みたいに教える楽しみがあるし、腕前の上達の過程を見るのもまた楽しい。
「イイ子ね♥」
にっこり微笑んだ女王は、御褒美とばかりに息子と濃厚な口づけを交わす。
「次は母様の番♥」
性交時、最初は息子の好きにさせるが、後半はメシェネト自らが好きなように動くようにしている。
正常位自体は息子の顔を見て交われるので好きだが、彼女が一番好む体位は騎乗位である。女王らしく主導権を握るのが好きというのもあるが、何より激しい腰の動きになんとか耐えようと歯を食いしばるトーヴの顔を見下ろすのが愉しかったのだ。
「んっ♥ ふっ♥ んぅっ♥」
甘い声を漏らしながら、息子に跨がり激しく腰を上下させる女王。大きな尻が弾み、爆乳が跳ねるその様はたまらなく淫靡である。そして、それは一物を呑み込まれ、多量の愛液で湿った極上の蜜壺で扱かれるトーヴにもそう見えた。
「ふあぁ……っ!」
白い肌の華奢な少年はクネクネと蠢く搾り取ろうとする養母の肉厚の膣の名器ぶりにたまらず声を上げる。
「ウフフ♥」
それも当然とばかりに媚笑を浮かべる母。彼女の体は最早息子専用に仕上がっており、彼が性交において最も快楽を感じるように出来ているからだ。
(………………)
そう、他の誰よりも。断じて、あの蛇にこの体が負けるはずがない。
「トーヴ、私をもっと感じて……」
メシェネトは騎乗位のまま倒れ込み、快感に翻弄されるトーヴにどこか切なく、そして懇願するように囁いた。
アポピスに息子の童貞を奪われたのは一生の不覚、痛恨の極みだが、今となっては大した問題ではない。何故ならトーヴの反応からして、もう彼はメシェネトの体の完全に虜になっている。
仮にアポピスにもう一度襲われ、淫毒を打ち込まれたとしても、もうトーヴの体はファラオの媚肉の味を忘れることは出来ないだろう。それほどにメシェネトは自らの肉体の仕上がり方に自信を持っていた。
「あっぁ……母様ぁぁ!!」
無理矢理襲いかかり、淫毒を打ち込んで強引に犯したのと、愛に満ちた正当な性交では、後者の方が気持ち良いに決まっている。それは快楽のあまり息を荒くする息子の表情からも明らかだ。
「………………」
しかし、まだ油断は出来ない。アポピスは自身と並ぶ強大な魔物娘には違いなく、その毒はそこらの蛇の毒とは一線を画する代物であって、強力な呪いを帯びている。
そしてトーヴはあの忌々しい闇色の蛇に見初められたため、多量の毒を打ち込まれてしまった。故に、最早ファラオやその優秀な配下達の尽力をもってしても解毒は不可能であろう。
(トーヴ、貴方は何も心配しなくていいのよ……)
息子の将来を案じたメシェネトは今まで以上にトーヴを公私共に支え、彼か自らの生涯が終わるまで全ての面倒を見続けることを決意していた。
……しかし、それも結局は息子と交わり、男と女として愛し合う方便の一つでしかないのかもしれないが。
「あっ………あぁぁ!!!!」
「イキそうなのね? イイわよトーヴ、母様を満たして頂戴♥」
大きな尻と愛液で濡れた蜜壺が下品な水音を響かせ、荒々しく上下する。そのさなか、ファラオはとても息子に向けるべきでない、発情しきった淫らで下劣な顔で射精をねだった。
「出るよ母様!! もうっ……もう出……!!」
「んぐぅぅぅぅ♥」
ファラオが腰を一番深くまで沈め、子宮口と亀頭を密着させる。同時に、我慢の限界が来た若き精と白濁液がミックスされた奔流が容赦なく彼女の子袋へと注がれる。
「うんんんん♥♥」
くぐもった嬌声と共に、女王の汗でぬめる茶褐色の艷やかな肢体が歓びのあまり痙攣し、たわわに実ったメロンの如き乳房が何度も跳ねる。
「ハァ……ハァ……」
「………♥」
肩で息をするトーヴ。一方、そんな息子を味わい足りぬのか、母は快感に酔いつつも、さらなる交わりを求めた淫靡な表情で息子を見下ろしている。
「まだまだ出来るでしょう?」
母の問いかけに息子は無言で頷く。
「射精の量と勢いは合格ね。ただ射精までの時間が早いけれど、今はまだ仕方ないわ」
息子をそう評するが、そんなものは性交を重ねていく内に改善されていく程度のもの。メシェネトも気にしてはいない。
「それに慣れるまでの鍛錬が今だものね♥」
女王とはいえ、夫を得た淫らな魔物娘である以上、ファラオの性欲はそれこそ“底なし”である。如何に射精量が多かろうと一回で満足するはずもない。
そして今のトーヴの犯し方は、ただ若さと勢いに任せただけで技術も何もない。だが、そんな青臭く拙いセックスもまた“教育中”の今しか味わえないのは確かであり、その拙さも醍醐味の内だとメシェネトは考え、むしろ愉しんでいる。
「さぁトーヴ、また愛し合いましょう♥」
息子の愛と肉体に餓える養母の膣はさらに圧を増し、彼のまだ衰えぬ肉竿を放さそうとしない。それでいて別の生き物の如く蠕動し、トーヴに再び快感を齎していく。
「母様……」
「んっ♥ もっと強く揉んでぇ♥」
仰向けになって母を見上げながら、王子の両手は母の乳房を揉みしだき、固くなった乳首を摘む。息子の愛撫にファラオは甘い声を漏らし、快感によって結合部から淫らな蜜を多量に滴らせると、水音と共に再び激しく尻を上下させたのだった。
「うぅ……ん」
母は自らが満足するまで息子を犯した後、彼を抱きながらベッドで眠りについた。
「うぅぅ……」
息子との背徳の関係を結んだことで、二人の間に垣根がなくなった。故に、今のメシェネトは満たされていた。
アポピスの毒は一生息子を苛むだろうが、その都度自らが犯し、その肉体で惑わせばいい。そうすれば、息子はあの忌々しい毒蛇のことなど忘れていくだろう。
「ぅぅぅぅ………」
だが、それはファラオの思い上がりというものだった。“今の”アポピスの毒は女ならば堕落させ下僕とし、夫ならば快楽をもたらし、常に魔物、それも未婚であればアポピス本人と交わることのみを身体に刻み込む。
確かに最初は母の肉体が極上のあまり、誤魔化せていた。しかし、なまじ時が空いたため、その影響は段々と強くなっていく。
「うぐぐ………」
眠りについた王子の身体は異常に汗ばみ、微睡みの中苦しそうに呻き声を上げる。全裸なので尚はっきりと分かるのは、あれだけ交わりをしたにもかかわらず、満足していないように、痛々しく勃起する肉棒だった。
「はぁはぁ………」
先ほどの交わりにおいて、快楽を感じていなかったわけではない。事実、トーヴは母親の最奥の子袋に溢れ出るほどの子種を放ち、子どもらしい若々しい精は貪欲な母親を満足させるものであった。にもかかわらずトーヴの肉棒は尚疼き、段々と母親の身体では“代用”が利かなくなりつつあった。
「王子……具合が良くないようですね」
「そんなこと……ないよ」
それから数日経ったある日のこと。前と同じようにメティトと午前の剣の稽古をつけていたトーヴだが、いまいち元気のない王子を見たアヌビスは一旦稽古を打ち切った。
「いいえ、見るからに元気がありません。匂いで分かります」
アヌビスは両目を閉じ、鼻を鳴らす。理知的だがウルフ属だけあり、王子の体調不良をすぐに嗅ぎ取っていた。
「今日の稽古はここでやめておきましょう。無理をすれば、鍛錬どころかかえってお身体を壊します」
王子の体調を慮り、アヌビスは神妙な顔でそう告げる。
「ごめん……」
せっかくの鍛錬の時間を潰してしまったことを申し訳無さそうに詫びる王子。
「お気になさいますな。まだアポピスの毒の影響があるのでしょう」
気に病ませないよう、トーヴに微笑むアヌビス。それを見た王子も安心し、やや表情が和らいだのだった。
「………………」
しかし、その目が一瞬だが淫蕩な色を帯びていたことには、やや注意力が散漫な少年は気づかなかった。
その夜。自室のベッドに寝転ぶアヌビス。だが、その様子は穏やかではなかった。
「うぅ………………はぁあ………」
アポピスに噛まれた者は二人。トーヴと、そしてメティトである。当然、このアヌビスもあの蛇女の毒の影響下にあり、噛まれた日から毎夜うなされていた。
「あぁぁうぅ………」
昼間は自律心の強い種族らしく影響を抑え込んで冷静に振る舞えるのだが、毒の影響の強まる夜になるとそうもいかなかった。
苦しげな表情でうめくアヌビスは全身が汗にまみれ、悶え苦しんでいた。
「くぅ………………」
煮え滾る淫猥なる欲望。まだおらぬ伴侶を求め、下腹部が甘く疼く。
(王子………っ)
抑え込まれていた魔物娘の本能が、最も身近な牡を彼女に求めさせる。まだ青い果実だが、それでも彼女に極上の美味を齎すであろう。
(ダメ……ッ)
しかし、彼女は最後の一線を越えないでいた。将来の王であるあの少年を自らの浅ましい衝動のために汚したくはない。
その自制心の強さこそが女王に見いだされた理由の一つであり、そこを買われたからこそ王子の警護役兼守り役を仰せつかっている。
(………………)
だが、その我慢強さも一体いつまで保つか。この毒は呪いであり、一生解けることはない。さらにはトーヴ王子を犯せば治るわけでもない。
だがそれを頭では理解していても体は、そして性器と子宮は彼のことを求めてしまう。
「くぅっ……」
結局今日も我慢しきれなかった。女陰に右手を伸ばし、弄り始めたのだ。けれども、所詮は一時凌ぎにしかならない。日に日に強くなる衝動を少しばかり弱くする程度だった。
(トーヴ王子……)
メティトは赤ん坊の頃から彼を知っている。自身の立場を弁えていたため、そう振る舞うことこそなかったが、内心では弟のように思っていた。だからこそ、己の浅ましく淫らな肉欲のために穢したくはなかった。
だが、それも時間の問題だった。姉としての想いが、妻になりたいという想いに変わるまで、そう長くは保たないだろう。
「………………」
それから一週間ばかり経ったある日の夕暮れ時。メティトは宮殿の地下牢に繋がれたアポピスを訪ねようと地下の階段を下っていた。
(臭うな……)
ウルフ属らしく鼻が利くアヌビスは、漂う臭いに不快感を覚える。石造りの宮殿の地下にある故仕方のないことだが、非常にカビ臭い。さらには砂漠地方らしからぬ湿気の高さも不快だった。
(恐らくは無駄だろう。だが、それでも何もせず耐えるよりは……)
メティトがアポピスに会う理由は一つ。それは彼女と王子を苦しめる毒の影響を少しでも和らげる方法を聞き出すためだった。
もっとも、あの毒蛇が彼女の申し出に応じるはずもない。だがそれでも、何もせず毒の苦しみに悶々とするよりはいい。
「ふっ……」
魔物娘が沸き上がる肉欲に耐えきれず、それを抑える方法を他者に聞きに行く。その矛盾にアヌビスは目を瞑って自嘲した。
「ここか」
やや錆びた鉄扉を開け、牢獄の中に入る。
「っ!」
魔物娘は夜目が利く。だから灯なしでも暗闇の中アポピスの姿が見えたのだが、途端目に入ったその有様に思わず驚いた。
(大分痩せた上薄汚れたな……)
これが主人であるファラオの宿敵たる冥界の蛇の姿か。水さえ飲まされていないのかその体躯はかなり痩せ細っていた。その上、メシェネトの罠にはめられた際に付いた上半身の多数の電撃傷も治癒しておらず、蛇体の鱗も多数が焼け焦げたままである。そのせいで退廃的だが妖しい美貌も色褪せている。
何より、水が貴重な砂漠地方とはいえ、十日も放置されたまま故全身から悪臭を放っている。爬虫類系の魔物娘は独特の生臭さがあるのだが、それがさらに増していた。
「チッ」
鼻が曲がりそうだったが、我慢して檻に近づくメティト。
「おい」
檻の前に立ち、メティトはアポピスに呼びかけるが反応はない。
「起きているか」
反応はない。しかし別に死んでいるわけでなく、単に意識がないだけであろう。
「おい!」
今度はもっと大声で呼びかける。
「う…ぅ〜………ん」
そこでようやくアポピスは反応する。
「んぐぐ……」
「起きたか。早速だが、お前に聞きたいことがある」
「……うふ」
微睡みから目覚めたアポピスだが、格子の外側に立つアヌビスを目にした途端、折れかけていた心が一瞬で立ち直った。その時浮かべた邪悪な笑みをアヌビスは一生忘れることは出来ないだろう。
「うっ!?」
立ちくらみと共にアヌビスの意識が遠のき、そのまま意識を失って崩れ落ちる。アポピスの毒がどのようなものか、メティトは、いやこの国の誰もが完全には理解していなかった。
(自分から戻ってくるなんて………おバカさぁん♥)
やつれた姿ながら、アポピスは愉快げにクスクスと笑う。
アポピスの毒は噛んだ者をただ発情させるだけではない。その者を洗脳し、自らの忠実な手駒へと変えてしまうのだ。
出会った当初こそアポピスにとって、この雌犬は王子を犯すのを邪魔してくる障害物程度の認識でしかなかった。王子を守ろうと鬱陶しく立ち塞がってきたため、噛みついて毒を注入して黙らせたのだが、それが思わぬ所で役に立った。
(私から離れていたからこそ、単なる発情程度で済んでいたのにねぇ)
当初、アポピスはメティトを従える気は全くなかった。それに加え、自身の目的を優先してアヌビスを捨て置いて遠くへ行ってしまったので毒の呪力が弱まり、メティトには催淫程度の効果しか発揮しなかったのだ。
しかし、はっきりと表情が視認できる距離まで近づき、アポピスが手駒を必要とする今は違う。彼女の中に染みた毒は本来の効果を発揮し、ファラオへの忠義などあっさりと書き換えてしまったのだ。
「んぐぎぬ(雌犬)」
「………………………………はっ」
猿轡を噛まされてまともに喋れないが、アポピスが倒れるメティトに呼びかける。すると、しばらくの沈黙の後でメティトは起き上がり、蛇女が主であるかのように跪いた。
「んっ」
何をして欲しいか示すかのように、アポピスは全身に繋がれた鎖をジャラジャラ鳴らす。
「………………はっ」
それは絆でなく洗脳であるが、以心伝心の関係には違いない。操られたアヌビスは非常に分かりにくいやり取りを新たな主と交わした後、すぐさま牢獄を出て階段を上がっていった。
「それって本当なの?」
「はい」
それから一時間ばかりして、メティトは元来た道をトーヴと共に引き返していた。
「奴が言うには、毒そのものを取り除く方法があるようです。
ただし、『女王の前では絶対に話さない』、『王子だけに教える』という条件を突きつけてきましたが……」
「そうなんだ……」
アヌビスの言葉がにわかには信じ難いため不安そうな王子だが、一方でその目には期待もあった。
「試す価値はあると思います。何もせぬよりは良いかと思い、女王様の許可をいただきました」
「………うん」
メシェネトがアポピスの毒を和らげるという名目でトーヴを無理矢理犯してきてから既に半月以上経った。それから毎日二人は狂ったように愛し合ったが、それでも打ち込まれた毒の影響が段々と増しつつあった。
王子も認めざるを得なかったーー母の重すぎる愛と淫らな性交をもってしても、アポピスの毒には抗しきれなかったと。特にここ数日は母にあれだけ搾られても毒の影響は和らぐどころか増すばかり。そのせいか毎夜うなされて苦しんでいたのである。
「ここです」
「………………」
そうして、牢獄の扉の前に辿り着いた二人。トーヴは王子という身分から、こんな陰惨な場所に来たことはないが、意を決しその先へと踏み込んだ。
「灯りを」
「はい」
トーヴはメティトに渡された魔法石の灯りで牢屋内を照らす。
「あれ………いないよ!?」
しかし王子は明るくなった牢屋を見るなり仰天する。壁から伸びた鎖が繋ぐ者はなく、中にいるはずのアポピスの姿が影も形もないのである。
「どういうことなの、メティト!?」
「御苦労だったわね、雌犬」
「ひぃッ!?」
聞いていた話と違うため、アヌビスに食ってかかる王子。しかし、背後から響く聞き覚えのある声を聞いた途端、悲鳴を上げて体をビクリと震わせる。
「ふふ………」
王子がゆっくりと振り返ると、自分の運命を狂わせた、あの忌々しい闇色の蛇がいた。
「あ……あ…なんで………………」
アポピスからの陵辱を思い出し、恐怖で震える少年。その様を、アヌビスは虚ろな目で見つめている。
「怖がらないで♥」
怖がらせるつもりはないのか、笑みを浮かべて甘ったるい声で呼びかけるアポピス。
「助けてッ! メティトッ!!」
「………………」
しかし当然信じるはずもなく、王子はアヌビスに助けを求めるも、彼女は何故か無反応だった。
「二人きりにしてちょうだい。私がいいと言うまで扉の向こうで待機してなさい」
「………………………………はっ」
まるでアポピスの手下のようにメティトは返事すると、そのまま緩慢な動作で部屋から出て行ってしまったのだった。
「さて、これでようやく二人きりになれたわね♥」
「い……イヤだ……」
蛇体を引きずりにじり寄るアポピスに恐怖し、引きつった顔で後ずさるトーヴ少年。
「ハァイ♥ もう逃げ道はありませぇん♥」
しかし、牢獄自体は元々広くなく、すぐに壁際へと追い詰められる。地面に置かれた魔法石に照らされる中、男女逆ではあるが、いわゆる壁ドンの体勢となった。
「………!」
「坊や、そんな怯えないでよ。おねえさんエッチな気持ちになっちゃうわぁ♥」
飲まず食わずで半月も放置された上、種族的に元々嗜虐的な性質である。それ故、震える華奢な夫の姿を見れば否が応でも発情してしまう。その証拠に、夫の精を求める性器から滴る蜜の匂いが急速に充満しつつある。密着している少年には尚更それが分かってしまう。
「あぁん、もうガマンできないっ!!」
「うわぁっ!?ーーむぐっ!?」
凄まじい空腹の今、アポピスは堪えるということを知らない。紫色の蛇体を王子の足元から巻きつけ下半身を拘束し、さらには豊満な胸で彼の頭を挟み込みながら抱きつく。
「ねぇ、さっさとエッチしましょう♥♥」
アポピスは生臭い口から長い舌を伸ばし、王子の左耳を舐める。さらには顔に首に胸にと上半身を隈なく舐めしゃぶる。冷や汗が舐め取られる代わりに臭い唾液を塗りたくられ、両乳房でパイサンドされ視界と呼吸まで封じられた王子の恐怖はさらに増していく。
「……〜〜………〜〜……」
「ん? なぁに?」
そんな中、恐怖のあまり小声で何かを呟くトーヴ。その動作がむず痒いのか、アポピスは一旦愛撫を止めて耳を傾けるがーー
「こわ…いよ………母様……」
「………!!」
王子が母に助けを求める声を聞いた途端、アポピスはそれまでの上機嫌から一転激昂する。
「お黙りっ!!!!」
「ヒィッッ!!??」
王子を胸から引き剥がすと、アポピスは邪悪な双眸を見開き睨みつける。態度の豹変に王子は頭が追いつかず、ただ怯えて蛇女を見上げるばかりであった。
「………気に入らないわね。私の前で他の女のことを考えるなんて………!!」
忌々しいあの女。この一帯を治める女王だというが、実際は自らの養子を犯して悦ぶ恥知らずの変態女、最低の淫売である。
そして何より腹立たしいのはそのすました顔の下に隠された悪女ぶり。女王らしからぬ奸計を用いて自分を捕らえたばかりか、王子の童貞を奪われて浅ましく嫉妬し、なんと自らも王子を犯してしまう。さらにはその様子をリアルタイムで牢に繋がれ身動きの取れぬ自分に見せつけてきたのだ。
恐らくは、自分が死ぬまでそうし続けるつもりだったに違いない。なにせ、この半月一切食事は与えられず、ただ暗闇の中でひたすら交わる映像を見せつけられていたのだから。
「本当に困った坊やね。まだ乳離れも出来ていないなんて」
絶望的な状況の中、ひたすら母に助けを求め祈る少年。けれども、その様はただアポピスの怒りを煽るだけであった。
「………そーだ♥」
しかし、何かを思いついたのかアポピスはにっこりと微笑み、眼下の少年を見つめる。
「私が乳離れをさせてあげればいいのよ♥」
そう、自分が王子の母に対する依存心を断ち切ればいいのだ。あんな腐った性根の女より、自分の方が余程抱き心地が良いと王子の身も心にも刻み込めばいいのだ。
「ねっ♥」
そう得心したアポピスは大きく口を開けーー
「ぎっ!?」
出会った時と同じく、毒牙で噛みついた。
「う…あ…あ…ぁ……」
頭ではこの生臭い蛇女を拒んではいても、体は違った。再び打ち込まれた毒に体は、下半身は悦んでしまっている。
「うふ♥ な〜んだ、貴方も乗り気じゃない♥」
年齢と体格にはあまりに不釣り合いな物。母の淫らな肉体と狂気じみた愛でさえ、治めきれなかった物。
それがアポピスの毒に反応し、痛々しいほどに勃起し、先端からは汁を垂れ流している。まるでこの時を待ちわびたとでもいうように。
「じゃ、早速始めましょう♥ 好きなだけ私を犯していいのよ? お互い気が済むまで愉しみましょう♥」
我慢しきれず、両者は互いに股を擦りつけあっていた。しかし、やがて少年は腰を引きーー
「!! うぁあぁあぁぁ!!!!」
「あぁぁああああんん♥♥♥♥」
前戯もなしにほぐれきっていた蛇女の雌穴に怒張を突き挿したのである。
「アァン♥ これよ、これが欲しかったのおぉ♥♥」
床に倒れ込んで両手を突き、狂ったように腰を動かすトーヴ王子。一方、蛇女は蛇体の拘束をやや緩め、されるがままに犯されている。
「もっと♥ もっと突いてっ♥ 私のおまんこをめちゃくちゃにしてぇぇ♥♥♥♥」
乾いていたはずの口から涎と毒を垂れ流し、両手で子どもを抱き締めながら雌蛇は絶叫する。異臭を放つ上半身はさらに汗にまみれ、下半身は愛液を撒き散らしながら、突き入れられる硬くて大きい肉竿に撹拌される。
「んぶっ!?」
アポピスは上半身を起き上がらせると、少年に口づけをする。
「んぷぅ♥ んむむぅぅ♥」
そして自分の愛の証とばかりに長い舌を口内にねじ込み、多量の毒を嚥下させる。
「!………っ!!………………!!!!」
すると興奮していた王子の心臓がさらに早打ち、不釣り合いな肉竿はさらに硬さを増す。
「うぁぁぁぁぁぁ!!!!」
もうどうでもいいーー恐れ、嫌っていたはずのアポピスへ、王子はやり場のない怒りにも似た性欲を叩きつけた。時に乱暴に両乳房を揉みしだき、時に首筋に噛みついた。体格に見合わぬ乱暴さで腰を動かし、女の膣内を乱暴に引っ掻いた。
女も言葉にならぬ嬌声を上げて狂喜していた。何度も激しく口づけを交わし舌を絡めて互いの唾液を交換し、唯一元のままの両乳房を乱暴に吸われ、夫への愛と執着を示すかのように蛇体を彼に巻き付かせていた。
「お゛っ♥ お゛ぉ゛ぉ゛♥♥」
激しくも短い時間で、失笑もののだらしないアヘ顔を晒しながら、雌蛇は最初の絶頂を迎える。しかし、若い雄はそんな雌の状態などお構いなしに腰を叩きつけ、その肉を無我夢中で堪能するばかりだった。
「でなひいぃ♥ おっぱい出ないからぁぁ♥♥」
王子は雌蛇の右の乳房に噛みつき、そのまま吸い上げる。若さ故か、犯し方は乱暴の一言に尽きる。風情も趣も何もなく、ただ相手のことなど考えない、自分が快楽を感じればいいというだけの犯し方だった。
しかし、飢えた女にはかえってそれが良いのか。前回とはうって変わって、女は少年に主導権を握られていた。痩せた体を好きなように犯され蹂躙され、単なる性処理用の玩具とされていながら悦んでいた。
「うっ…!!」
「あ゛ぁ゛〜〜♥♥ あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜っっ♥♥♥♥」
くぐもった声を上げ、王子も絶頂に達する。腰を雌蛇の穴に密着させ、子宮口目がけて遠慮なしに精液を撃ち放ったのだ。女の愛液と同じく、信じ難い量の子種を女の子宮に注ぎ込んでいく。
「ふーっ!!!! フ〜〜ッ!!!!」
「え゛っ!? うぞっ!?」
ところが、これも若さ故か少年の一物は全く萎える気配がないどころか、射精しながらも尚ピストンを止めない。二度目の絶頂の最中、さらに快感を与えてくる王子にアポピスは驚愕するも、脳が焼ききれそうな快楽にそれも一瞬で吹き飛ぶ。
「んぶぅぅぅぅ♥♥♥♥」
そうしてトーヴは射精後に竿を引き抜くと、アポピスの口に乱暴に突っ込む。精液と愛液、さらには2週間余り溜まった様々な排泄物で汚れたそれを長い舌で掃除しろと言わんばかりであった。
しかし、そんな無理矢理な奉仕を求められたにもかかわらず、アポピスは恍惚の表情でそれを躊躇いなく実行し、上目遣いで嬉しそうに舐めしゃぶる。
(あぁ………♥)
陶酔しながらお掃除フェラを行うアポピス。その様はまさにインキュバスと魔物娘の新婚らしい、初々しくも愛情を感じられるものであった。
「うぅっ!」
「んぶっ!!!!」
呻き声を上げてまた射精し、体を震わせるトーヴ。一方、濃厚で甘いそれをアポピスは美味しそうに嚥下する。
そう、これで終わりではない。アポピスはフェラの際、毒牙で甘噛みし、陰茎に毒を打ち込んでいた。まだ、この雌蛇は満足していないのだ。
「まだ終わりじゃないでしょう? “旦那様”♥♥」
濃厚な精を取り込み血色良くなった上半身、そして蛇体をいやらしくくねらせながら、膣より大量の精液をボタボタと垂らして若い雄を誘う雌蛇。その様はたまらなく淫靡であり、不快な生臭さを掻き消すほどの淫臭を放っていた。
「さぁ、今こそ乳離れの時よ♥ 私が貴方を一人前の男にしてあげる♥」
この男は自分だけの物。誰にも渡さない。例えそれが彼の母であってもだ。
「………………」
毒の熱に頭がぼうっとしながらも、王子はやるべきことをやる。夢遊病、無意識に近いながらも、その未来の王に相応しき凶々しき一物は目の前の雌を蹂躙し屈服させんと力強く勃起している。
「んんんんっっ♥♥♥♥」
再び突き挿れられたそれにアポピスは悦び、潮を吹く。乱暴に押し倒されながらも少年に蛇体を巻き付かせ、時に毒牙を、時に肛門に尻尾を突き挿し前立腺を弄るなどして肉体も性欲も刺激した。少年も沸き上がる肉欲のまま、雌蛇の肉体を味わい、嬲り続けたのだった。
「………………ッッ!!」
メシェネトが宮殿に漂う魔力の異常に気づき、地下牢に駆けつけたのはそれから数時間後のこと。何故か主である自分に逆らい行く手を阻むアヌビスを容赦なく蹴り飛ばし、地下牢に入ったメシェネトは自らの目を疑った。
「あぁ……トーヴ………」
ファラオは目から大粒の涙をこぼした。愛液と精液にまみれ、悪臭を放ちながら、息子は静かに寝息を立てている。愛おしそうにアポピスに抱かれ、蛇体に支えられながらだ。
「あら、ごきげんよう♥」
ふてぶてしくそう言い放つアポピスの顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。しかし、ファラオが悲しみ、憤ったのはそこではない。
「許さない……!! 許さないわァァッッ!!!!」
アポピスの腹はやや膨らんでいた。そう、彼女は新しい命を宿していたのだ。
そうトーヴのーーファラオの愛しい息子の子を孕んでいた。
どれだけ時が経ったのだろう。今のアポピスにはそれすら分からない。
延々と繰り返される“生き地獄”の中で泣き喚き、呪詛の言葉を吐くもやがてそれらの行為にも疲れ果てたアポピスは、いつしか全ての感覚が麻痺してしまった。
(………………)
毒々しく、禍々しく、冷酷で我儘。それでいてこの世のものとは思えぬほどに妖艶で淫らな冥界の蛇だが、今や心ここにあらず。ファラオの治める国、さらには彼女の愛する王子を奪わんとする覇気も尽きてしまった。
そう、今の彼女は文字通り『蛇の脱け殻』である。
「ぅ………ぁ………」
時折呻き声を上げて身じろぎするが、それ以外は無言で涎を垂らしながら、アンデッドよりも虚ろな目で虚空を見つめるのみである。
以前は人外の美しさ、滾る肉欲、溢れる生命力の象徴のような、豊満で瑞々しく、血色良い肉体も今や過去のもの。見ていて哀れなほどに衰弱しきっている。
「ぅ………………」
このように美貌は色褪せ、身はやつれ、心もへし折れかけた彼女。だがそれでも、彼女の肉体はまだ死を望まなかった。
何故だかは分からない。しかし、何故か死ぬ気にはならなかった。何故かまだ生きなければならぬ気がした。
(………………)
それは自分に残った最後の誇り、ファラオに対するせめてもの意地なのだろうか。あるいは魔物娘の本能が、夫を奪われたままで死ぬのを拒んだか。
「ぼ……ぅ………ゃ………………」
不憫なことに、その愛する夫の名前さえ知らぬ冥界の蛇。しかし、その名前さえ知らぬ少年が、彼女の心の最後の拠り所の一つであるのは間違いなかった。
「っ………………」
だが、その心の拠り所は、同時に彼女をさらなる絶望に追いやってもいた。
「………………」
今またシアタークリスタルが作動し、映像を中継する。途端、女王と王子の背徳の交わりが映し出され、物音一つしない暗い牢獄に破廉恥な音声が響き渡る。
「………………」
これでもまだ死を望まないが、かといってもう放送を止めるよう懇願する気力もない。けれども、愛しい男にいつも跨がり、娼婦の如く腰を振る女王を見つめるその瞳には、まだ憎しみがあったのも確かである。
同刻、親子の寝室ーー捕らえられた冥界の蛇が拷問を受けているなどつゆ知らず、今日も王子は養母と淫らな愉しみに浸っている。
「あぁっ、母様!」
二人は血の繋がりはないとはいえ親子でありながら、今日もお互いの肉体を求め合う。ましてや脂の乗った美女と年若い少年の交わりともなれば、その激しさは否応でも増すというものだ。
「んっ……♥ そうよ、もっと奥を突いて……っ♥」
正常位で腰を打ちつける息子に優しく微笑む母は、両脚を愛おしそうに彼の腰に絡める。相変わらず技術も何もない、若さに任せた拙いトーヴのピストンであるが、寛大な女王のほぐれた膣肉にはむしろ好ましい刺激を与え、快感を齎していた。
「でも、ただ腰を打ちつけるだけではダメよ? 正常位ではーー」
しかしただ甘やかすばかりでなく、時には息子に性技について教え諭し、導くのも忘れない。
「うん」
トーヴは素直な子だから、母の教えを真摯に聞いてくれる。
それに夫の性技が拙いというのも悪いことばかりではない。今みたいに教える楽しみがあるし、腕前の上達の過程を見るのもまた楽しい。
「イイ子ね♥」
にっこり微笑んだ女王は、御褒美とばかりに息子と濃厚な口づけを交わす。
「次は母様の番♥」
性交時、最初は息子の好きにさせるが、後半はメシェネト自らが好きなように動くようにしている。
正常位自体は息子の顔を見て交われるので好きだが、彼女が一番好む体位は騎乗位である。女王らしく主導権を握るのが好きというのもあるが、何より激しい腰の動きになんとか耐えようと歯を食いしばるトーヴの顔を見下ろすのが愉しかったのだ。
「んっ♥ ふっ♥ んぅっ♥」
甘い声を漏らしながら、息子に跨がり激しく腰を上下させる女王。大きな尻が弾み、爆乳が跳ねるその様はたまらなく淫靡である。そして、それは一物を呑み込まれ、多量の愛液で湿った極上の蜜壺で扱かれるトーヴにもそう見えた。
「ふあぁ……っ!」
白い肌の華奢な少年はクネクネと蠢く搾り取ろうとする養母の肉厚の膣の名器ぶりにたまらず声を上げる。
「ウフフ♥」
それも当然とばかりに媚笑を浮かべる母。彼女の体は最早息子専用に仕上がっており、彼が性交において最も快楽を感じるように出来ているからだ。
(………………)
そう、他の誰よりも。断じて、あの蛇にこの体が負けるはずがない。
「トーヴ、私をもっと感じて……」
メシェネトは騎乗位のまま倒れ込み、快感に翻弄されるトーヴにどこか切なく、そして懇願するように囁いた。
アポピスに息子の童貞を奪われたのは一生の不覚、痛恨の極みだが、今となっては大した問題ではない。何故ならトーヴの反応からして、もう彼はメシェネトの体の完全に虜になっている。
仮にアポピスにもう一度襲われ、淫毒を打ち込まれたとしても、もうトーヴの体はファラオの媚肉の味を忘れることは出来ないだろう。それほどにメシェネトは自らの肉体の仕上がり方に自信を持っていた。
「あっぁ……母様ぁぁ!!」
無理矢理襲いかかり、淫毒を打ち込んで強引に犯したのと、愛に満ちた正当な性交では、後者の方が気持ち良いに決まっている。それは快楽のあまり息を荒くする息子の表情からも明らかだ。
「………………」
しかし、まだ油断は出来ない。アポピスは自身と並ぶ強大な魔物娘には違いなく、その毒はそこらの蛇の毒とは一線を画する代物であって、強力な呪いを帯びている。
そしてトーヴはあの忌々しい闇色の蛇に見初められたため、多量の毒を打ち込まれてしまった。故に、最早ファラオやその優秀な配下達の尽力をもってしても解毒は不可能であろう。
(トーヴ、貴方は何も心配しなくていいのよ……)
息子の将来を案じたメシェネトは今まで以上にトーヴを公私共に支え、彼か自らの生涯が終わるまで全ての面倒を見続けることを決意していた。
……しかし、それも結局は息子と交わり、男と女として愛し合う方便の一つでしかないのかもしれないが。
「あっ………あぁぁ!!!!」
「イキそうなのね? イイわよトーヴ、母様を満たして頂戴♥」
大きな尻と愛液で濡れた蜜壺が下品な水音を響かせ、荒々しく上下する。そのさなか、ファラオはとても息子に向けるべきでない、発情しきった淫らで下劣な顔で射精をねだった。
「出るよ母様!! もうっ……もう出……!!」
「んぐぅぅぅぅ♥」
ファラオが腰を一番深くまで沈め、子宮口と亀頭を密着させる。同時に、我慢の限界が来た若き精と白濁液がミックスされた奔流が容赦なく彼女の子袋へと注がれる。
「うんんんん♥♥」
くぐもった嬌声と共に、女王の汗でぬめる茶褐色の艷やかな肢体が歓びのあまり痙攣し、たわわに実ったメロンの如き乳房が何度も跳ねる。
「ハァ……ハァ……」
「………♥」
肩で息をするトーヴ。一方、そんな息子を味わい足りぬのか、母は快感に酔いつつも、さらなる交わりを求めた淫靡な表情で息子を見下ろしている。
「まだまだ出来るでしょう?」
母の問いかけに息子は無言で頷く。
「射精の量と勢いは合格ね。ただ射精までの時間が早いけれど、今はまだ仕方ないわ」
息子をそう評するが、そんなものは性交を重ねていく内に改善されていく程度のもの。メシェネトも気にしてはいない。
「それに慣れるまでの鍛錬が今だものね♥」
女王とはいえ、夫を得た淫らな魔物娘である以上、ファラオの性欲はそれこそ“底なし”である。如何に射精量が多かろうと一回で満足するはずもない。
そして今のトーヴの犯し方は、ただ若さと勢いに任せただけで技術も何もない。だが、そんな青臭く拙いセックスもまた“教育中”の今しか味わえないのは確かであり、その拙さも醍醐味の内だとメシェネトは考え、むしろ愉しんでいる。
「さぁトーヴ、また愛し合いましょう♥」
息子の愛と肉体に餓える養母の膣はさらに圧を増し、彼のまだ衰えぬ肉竿を放さそうとしない。それでいて別の生き物の如く蠕動し、トーヴに再び快感を齎していく。
「母様……」
「んっ♥ もっと強く揉んでぇ♥」
仰向けになって母を見上げながら、王子の両手は母の乳房を揉みしだき、固くなった乳首を摘む。息子の愛撫にファラオは甘い声を漏らし、快感によって結合部から淫らな蜜を多量に滴らせると、水音と共に再び激しく尻を上下させたのだった。
「うぅ……ん」
母は自らが満足するまで息子を犯した後、彼を抱きながらベッドで眠りについた。
「うぅぅ……」
息子との背徳の関係を結んだことで、二人の間に垣根がなくなった。故に、今のメシェネトは満たされていた。
アポピスの毒は一生息子を苛むだろうが、その都度自らが犯し、その肉体で惑わせばいい。そうすれば、息子はあの忌々しい毒蛇のことなど忘れていくだろう。
「ぅぅぅぅ………」
だが、それはファラオの思い上がりというものだった。“今の”アポピスの毒は女ならば堕落させ下僕とし、夫ならば快楽をもたらし、常に魔物、それも未婚であればアポピス本人と交わることのみを身体に刻み込む。
確かに最初は母の肉体が極上のあまり、誤魔化せていた。しかし、なまじ時が空いたため、その影響は段々と強くなっていく。
「うぐぐ………」
眠りについた王子の身体は異常に汗ばみ、微睡みの中苦しそうに呻き声を上げる。全裸なので尚はっきりと分かるのは、あれだけ交わりをしたにもかかわらず、満足していないように、痛々しく勃起する肉棒だった。
「はぁはぁ………」
先ほどの交わりにおいて、快楽を感じていなかったわけではない。事実、トーヴは母親の最奥の子袋に溢れ出るほどの子種を放ち、子どもらしい若々しい精は貪欲な母親を満足させるものであった。にもかかわらずトーヴの肉棒は尚疼き、段々と母親の身体では“代用”が利かなくなりつつあった。
「王子……具合が良くないようですね」
「そんなこと……ないよ」
それから数日経ったある日のこと。前と同じようにメティトと午前の剣の稽古をつけていたトーヴだが、いまいち元気のない王子を見たアヌビスは一旦稽古を打ち切った。
「いいえ、見るからに元気がありません。匂いで分かります」
アヌビスは両目を閉じ、鼻を鳴らす。理知的だがウルフ属だけあり、王子の体調不良をすぐに嗅ぎ取っていた。
「今日の稽古はここでやめておきましょう。無理をすれば、鍛錬どころかかえってお身体を壊します」
王子の体調を慮り、アヌビスは神妙な顔でそう告げる。
「ごめん……」
せっかくの鍛錬の時間を潰してしまったことを申し訳無さそうに詫びる王子。
「お気になさいますな。まだアポピスの毒の影響があるのでしょう」
気に病ませないよう、トーヴに微笑むアヌビス。それを見た王子も安心し、やや表情が和らいだのだった。
「………………」
しかし、その目が一瞬だが淫蕩な色を帯びていたことには、やや注意力が散漫な少年は気づかなかった。
その夜。自室のベッドに寝転ぶアヌビス。だが、その様子は穏やかではなかった。
「うぅ………………はぁあ………」
アポピスに噛まれた者は二人。トーヴと、そしてメティトである。当然、このアヌビスもあの蛇女の毒の影響下にあり、噛まれた日から毎夜うなされていた。
「あぁぁうぅ………」
昼間は自律心の強い種族らしく影響を抑え込んで冷静に振る舞えるのだが、毒の影響の強まる夜になるとそうもいかなかった。
苦しげな表情でうめくアヌビスは全身が汗にまみれ、悶え苦しんでいた。
「くぅ………………」
煮え滾る淫猥なる欲望。まだおらぬ伴侶を求め、下腹部が甘く疼く。
(王子………っ)
抑え込まれていた魔物娘の本能が、最も身近な牡を彼女に求めさせる。まだ青い果実だが、それでも彼女に極上の美味を齎すであろう。
(ダメ……ッ)
しかし、彼女は最後の一線を越えないでいた。将来の王であるあの少年を自らの浅ましい衝動のために汚したくはない。
その自制心の強さこそが女王に見いだされた理由の一つであり、そこを買われたからこそ王子の警護役兼守り役を仰せつかっている。
(………………)
だが、その我慢強さも一体いつまで保つか。この毒は呪いであり、一生解けることはない。さらにはトーヴ王子を犯せば治るわけでもない。
だがそれを頭では理解していても体は、そして性器と子宮は彼のことを求めてしまう。
「くぅっ……」
結局今日も我慢しきれなかった。女陰に右手を伸ばし、弄り始めたのだ。けれども、所詮は一時凌ぎにしかならない。日に日に強くなる衝動を少しばかり弱くする程度だった。
(トーヴ王子……)
メティトは赤ん坊の頃から彼を知っている。自身の立場を弁えていたため、そう振る舞うことこそなかったが、内心では弟のように思っていた。だからこそ、己の浅ましく淫らな肉欲のために穢したくはなかった。
だが、それも時間の問題だった。姉としての想いが、妻になりたいという想いに変わるまで、そう長くは保たないだろう。
「………………」
それから一週間ばかり経ったある日の夕暮れ時。メティトは宮殿の地下牢に繋がれたアポピスを訪ねようと地下の階段を下っていた。
(臭うな……)
ウルフ属らしく鼻が利くアヌビスは、漂う臭いに不快感を覚える。石造りの宮殿の地下にある故仕方のないことだが、非常にカビ臭い。さらには砂漠地方らしからぬ湿気の高さも不快だった。
(恐らくは無駄だろう。だが、それでも何もせず耐えるよりは……)
メティトがアポピスに会う理由は一つ。それは彼女と王子を苦しめる毒の影響を少しでも和らげる方法を聞き出すためだった。
もっとも、あの毒蛇が彼女の申し出に応じるはずもない。だがそれでも、何もせず毒の苦しみに悶々とするよりはいい。
「ふっ……」
魔物娘が沸き上がる肉欲に耐えきれず、それを抑える方法を他者に聞きに行く。その矛盾にアヌビスは目を瞑って自嘲した。
「ここか」
やや錆びた鉄扉を開け、牢獄の中に入る。
「っ!」
魔物娘は夜目が利く。だから灯なしでも暗闇の中アポピスの姿が見えたのだが、途端目に入ったその有様に思わず驚いた。
(大分痩せた上薄汚れたな……)
これが主人であるファラオの宿敵たる冥界の蛇の姿か。水さえ飲まされていないのかその体躯はかなり痩せ細っていた。その上、メシェネトの罠にはめられた際に付いた上半身の多数の電撃傷も治癒しておらず、蛇体の鱗も多数が焼け焦げたままである。そのせいで退廃的だが妖しい美貌も色褪せている。
何より、水が貴重な砂漠地方とはいえ、十日も放置されたまま故全身から悪臭を放っている。爬虫類系の魔物娘は独特の生臭さがあるのだが、それがさらに増していた。
「チッ」
鼻が曲がりそうだったが、我慢して檻に近づくメティト。
「おい」
檻の前に立ち、メティトはアポピスに呼びかけるが反応はない。
「起きているか」
反応はない。しかし別に死んでいるわけでなく、単に意識がないだけであろう。
「おい!」
今度はもっと大声で呼びかける。
「う…ぅ〜………ん」
そこでようやくアポピスは反応する。
「んぐぐ……」
「起きたか。早速だが、お前に聞きたいことがある」
「……うふ」
微睡みから目覚めたアポピスだが、格子の外側に立つアヌビスを目にした途端、折れかけていた心が一瞬で立ち直った。その時浮かべた邪悪な笑みをアヌビスは一生忘れることは出来ないだろう。
「うっ!?」
立ちくらみと共にアヌビスの意識が遠のき、そのまま意識を失って崩れ落ちる。アポピスの毒がどのようなものか、メティトは、いやこの国の誰もが完全には理解していなかった。
(自分から戻ってくるなんて………おバカさぁん♥)
やつれた姿ながら、アポピスは愉快げにクスクスと笑う。
アポピスの毒は噛んだ者をただ発情させるだけではない。その者を洗脳し、自らの忠実な手駒へと変えてしまうのだ。
出会った当初こそアポピスにとって、この雌犬は王子を犯すのを邪魔してくる障害物程度の認識でしかなかった。王子を守ろうと鬱陶しく立ち塞がってきたため、噛みついて毒を注入して黙らせたのだが、それが思わぬ所で役に立った。
(私から離れていたからこそ、単なる発情程度で済んでいたのにねぇ)
当初、アポピスはメティトを従える気は全くなかった。それに加え、自身の目的を優先してアヌビスを捨て置いて遠くへ行ってしまったので毒の呪力が弱まり、メティトには催淫程度の効果しか発揮しなかったのだ。
しかし、はっきりと表情が視認できる距離まで近づき、アポピスが手駒を必要とする今は違う。彼女の中に染みた毒は本来の効果を発揮し、ファラオへの忠義などあっさりと書き換えてしまったのだ。
「んぐぎぬ(雌犬)」
「………………………………はっ」
猿轡を噛まされてまともに喋れないが、アポピスが倒れるメティトに呼びかける。すると、しばらくの沈黙の後でメティトは起き上がり、蛇女が主であるかのように跪いた。
「んっ」
何をして欲しいか示すかのように、アポピスは全身に繋がれた鎖をジャラジャラ鳴らす。
「………………はっ」
それは絆でなく洗脳であるが、以心伝心の関係には違いない。操られたアヌビスは非常に分かりにくいやり取りを新たな主と交わした後、すぐさま牢獄を出て階段を上がっていった。
「それって本当なの?」
「はい」
それから一時間ばかりして、メティトは元来た道をトーヴと共に引き返していた。
「奴が言うには、毒そのものを取り除く方法があるようです。
ただし、『女王の前では絶対に話さない』、『王子だけに教える』という条件を突きつけてきましたが……」
「そうなんだ……」
アヌビスの言葉がにわかには信じ難いため不安そうな王子だが、一方でその目には期待もあった。
「試す価値はあると思います。何もせぬよりは良いかと思い、女王様の許可をいただきました」
「………うん」
メシェネトがアポピスの毒を和らげるという名目でトーヴを無理矢理犯してきてから既に半月以上経った。それから毎日二人は狂ったように愛し合ったが、それでも打ち込まれた毒の影響が段々と増しつつあった。
王子も認めざるを得なかったーー母の重すぎる愛と淫らな性交をもってしても、アポピスの毒には抗しきれなかったと。特にここ数日は母にあれだけ搾られても毒の影響は和らぐどころか増すばかり。そのせいか毎夜うなされて苦しんでいたのである。
「ここです」
「………………」
そうして、牢獄の扉の前に辿り着いた二人。トーヴは王子という身分から、こんな陰惨な場所に来たことはないが、意を決しその先へと踏み込んだ。
「灯りを」
「はい」
トーヴはメティトに渡された魔法石の灯りで牢屋内を照らす。
「あれ………いないよ!?」
しかし王子は明るくなった牢屋を見るなり仰天する。壁から伸びた鎖が繋ぐ者はなく、中にいるはずのアポピスの姿が影も形もないのである。
「どういうことなの、メティト!?」
「御苦労だったわね、雌犬」
「ひぃッ!?」
聞いていた話と違うため、アヌビスに食ってかかる王子。しかし、背後から響く聞き覚えのある声を聞いた途端、悲鳴を上げて体をビクリと震わせる。
「ふふ………」
王子がゆっくりと振り返ると、自分の運命を狂わせた、あの忌々しい闇色の蛇がいた。
「あ……あ…なんで………………」
アポピスからの陵辱を思い出し、恐怖で震える少年。その様を、アヌビスは虚ろな目で見つめている。
「怖がらないで♥」
怖がらせるつもりはないのか、笑みを浮かべて甘ったるい声で呼びかけるアポピス。
「助けてッ! メティトッ!!」
「………………」
しかし当然信じるはずもなく、王子はアヌビスに助けを求めるも、彼女は何故か無反応だった。
「二人きりにしてちょうだい。私がいいと言うまで扉の向こうで待機してなさい」
「………………………………はっ」
まるでアポピスの手下のようにメティトは返事すると、そのまま緩慢な動作で部屋から出て行ってしまったのだった。
「さて、これでようやく二人きりになれたわね♥」
「い……イヤだ……」
蛇体を引きずりにじり寄るアポピスに恐怖し、引きつった顔で後ずさるトーヴ少年。
「ハァイ♥ もう逃げ道はありませぇん♥」
しかし、牢獄自体は元々広くなく、すぐに壁際へと追い詰められる。地面に置かれた魔法石に照らされる中、男女逆ではあるが、いわゆる壁ドンの体勢となった。
「………!」
「坊や、そんな怯えないでよ。おねえさんエッチな気持ちになっちゃうわぁ♥」
飲まず食わずで半月も放置された上、種族的に元々嗜虐的な性質である。それ故、震える華奢な夫の姿を見れば否が応でも発情してしまう。その証拠に、夫の精を求める性器から滴る蜜の匂いが急速に充満しつつある。密着している少年には尚更それが分かってしまう。
「あぁん、もうガマンできないっ!!」
「うわぁっ!?ーーむぐっ!?」
凄まじい空腹の今、アポピスは堪えるということを知らない。紫色の蛇体を王子の足元から巻きつけ下半身を拘束し、さらには豊満な胸で彼の頭を挟み込みながら抱きつく。
「ねぇ、さっさとエッチしましょう♥♥」
アポピスは生臭い口から長い舌を伸ばし、王子の左耳を舐める。さらには顔に首に胸にと上半身を隈なく舐めしゃぶる。冷や汗が舐め取られる代わりに臭い唾液を塗りたくられ、両乳房でパイサンドされ視界と呼吸まで封じられた王子の恐怖はさらに増していく。
「……〜〜………〜〜……」
「ん? なぁに?」
そんな中、恐怖のあまり小声で何かを呟くトーヴ。その動作がむず痒いのか、アポピスは一旦愛撫を止めて耳を傾けるがーー
「こわ…いよ………母様……」
「………!!」
王子が母に助けを求める声を聞いた途端、アポピスはそれまでの上機嫌から一転激昂する。
「お黙りっ!!!!」
「ヒィッッ!!??」
王子を胸から引き剥がすと、アポピスは邪悪な双眸を見開き睨みつける。態度の豹変に王子は頭が追いつかず、ただ怯えて蛇女を見上げるばかりであった。
「………気に入らないわね。私の前で他の女のことを考えるなんて………!!」
忌々しいあの女。この一帯を治める女王だというが、実際は自らの養子を犯して悦ぶ恥知らずの変態女、最低の淫売である。
そして何より腹立たしいのはそのすました顔の下に隠された悪女ぶり。女王らしからぬ奸計を用いて自分を捕らえたばかりか、王子の童貞を奪われて浅ましく嫉妬し、なんと自らも王子を犯してしまう。さらにはその様子をリアルタイムで牢に繋がれ身動きの取れぬ自分に見せつけてきたのだ。
恐らくは、自分が死ぬまでそうし続けるつもりだったに違いない。なにせ、この半月一切食事は与えられず、ただ暗闇の中でひたすら交わる映像を見せつけられていたのだから。
「本当に困った坊やね。まだ乳離れも出来ていないなんて」
絶望的な状況の中、ひたすら母に助けを求め祈る少年。けれども、その様はただアポピスの怒りを煽るだけであった。
「………そーだ♥」
しかし、何かを思いついたのかアポピスはにっこりと微笑み、眼下の少年を見つめる。
「私が乳離れをさせてあげればいいのよ♥」
そう、自分が王子の母に対する依存心を断ち切ればいいのだ。あんな腐った性根の女より、自分の方が余程抱き心地が良いと王子の身も心にも刻み込めばいいのだ。
「ねっ♥」
そう得心したアポピスは大きく口を開けーー
「ぎっ!?」
出会った時と同じく、毒牙で噛みついた。
「う…あ…あ…ぁ……」
頭ではこの生臭い蛇女を拒んではいても、体は違った。再び打ち込まれた毒に体は、下半身は悦んでしまっている。
「うふ♥ な〜んだ、貴方も乗り気じゃない♥」
年齢と体格にはあまりに不釣り合いな物。母の淫らな肉体と狂気じみた愛でさえ、治めきれなかった物。
それがアポピスの毒に反応し、痛々しいほどに勃起し、先端からは汁を垂れ流している。まるでこの時を待ちわびたとでもいうように。
「じゃ、早速始めましょう♥ 好きなだけ私を犯していいのよ? お互い気が済むまで愉しみましょう♥」
我慢しきれず、両者は互いに股を擦りつけあっていた。しかし、やがて少年は腰を引きーー
「!! うぁあぁあぁぁ!!!!」
「あぁぁああああんん♥♥♥♥」
前戯もなしにほぐれきっていた蛇女の雌穴に怒張を突き挿したのである。
「アァン♥ これよ、これが欲しかったのおぉ♥♥」
床に倒れ込んで両手を突き、狂ったように腰を動かすトーヴ王子。一方、蛇女は蛇体の拘束をやや緩め、されるがままに犯されている。
「もっと♥ もっと突いてっ♥ 私のおまんこをめちゃくちゃにしてぇぇ♥♥♥♥」
乾いていたはずの口から涎と毒を垂れ流し、両手で子どもを抱き締めながら雌蛇は絶叫する。異臭を放つ上半身はさらに汗にまみれ、下半身は愛液を撒き散らしながら、突き入れられる硬くて大きい肉竿に撹拌される。
「んぶっ!?」
アポピスは上半身を起き上がらせると、少年に口づけをする。
「んぷぅ♥ んむむぅぅ♥」
そして自分の愛の証とばかりに長い舌を口内にねじ込み、多量の毒を嚥下させる。
「!………っ!!………………!!!!」
すると興奮していた王子の心臓がさらに早打ち、不釣り合いな肉竿はさらに硬さを増す。
「うぁぁぁぁぁぁ!!!!」
もうどうでもいいーー恐れ、嫌っていたはずのアポピスへ、王子はやり場のない怒りにも似た性欲を叩きつけた。時に乱暴に両乳房を揉みしだき、時に首筋に噛みついた。体格に見合わぬ乱暴さで腰を動かし、女の膣内を乱暴に引っ掻いた。
女も言葉にならぬ嬌声を上げて狂喜していた。何度も激しく口づけを交わし舌を絡めて互いの唾液を交換し、唯一元のままの両乳房を乱暴に吸われ、夫への愛と執着を示すかのように蛇体を彼に巻き付かせていた。
「お゛っ♥ お゛ぉ゛ぉ゛♥♥」
激しくも短い時間で、失笑もののだらしないアヘ顔を晒しながら、雌蛇は最初の絶頂を迎える。しかし、若い雄はそんな雌の状態などお構いなしに腰を叩きつけ、その肉を無我夢中で堪能するばかりだった。
「でなひいぃ♥ おっぱい出ないからぁぁ♥♥」
王子は雌蛇の右の乳房に噛みつき、そのまま吸い上げる。若さ故か、犯し方は乱暴の一言に尽きる。風情も趣も何もなく、ただ相手のことなど考えない、自分が快楽を感じればいいというだけの犯し方だった。
しかし、飢えた女にはかえってそれが良いのか。前回とはうって変わって、女は少年に主導権を握られていた。痩せた体を好きなように犯され蹂躙され、単なる性処理用の玩具とされていながら悦んでいた。
「うっ…!!」
「あ゛ぁ゛〜〜♥♥ あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜っっ♥♥♥♥」
くぐもった声を上げ、王子も絶頂に達する。腰を雌蛇の穴に密着させ、子宮口目がけて遠慮なしに精液を撃ち放ったのだ。女の愛液と同じく、信じ難い量の子種を女の子宮に注ぎ込んでいく。
「ふーっ!!!! フ〜〜ッ!!!!」
「え゛っ!? うぞっ!?」
ところが、これも若さ故か少年の一物は全く萎える気配がないどころか、射精しながらも尚ピストンを止めない。二度目の絶頂の最中、さらに快感を与えてくる王子にアポピスは驚愕するも、脳が焼ききれそうな快楽にそれも一瞬で吹き飛ぶ。
「んぶぅぅぅぅ♥♥♥♥」
そうしてトーヴは射精後に竿を引き抜くと、アポピスの口に乱暴に突っ込む。精液と愛液、さらには2週間余り溜まった様々な排泄物で汚れたそれを長い舌で掃除しろと言わんばかりであった。
しかし、そんな無理矢理な奉仕を求められたにもかかわらず、アポピスは恍惚の表情でそれを躊躇いなく実行し、上目遣いで嬉しそうに舐めしゃぶる。
(あぁ………♥)
陶酔しながらお掃除フェラを行うアポピス。その様はまさにインキュバスと魔物娘の新婚らしい、初々しくも愛情を感じられるものであった。
「うぅっ!」
「んぶっ!!!!」
呻き声を上げてまた射精し、体を震わせるトーヴ。一方、濃厚で甘いそれをアポピスは美味しそうに嚥下する。
そう、これで終わりではない。アポピスはフェラの際、毒牙で甘噛みし、陰茎に毒を打ち込んでいた。まだ、この雌蛇は満足していないのだ。
「まだ終わりじゃないでしょう? “旦那様”♥♥」
濃厚な精を取り込み血色良くなった上半身、そして蛇体をいやらしくくねらせながら、膣より大量の精液をボタボタと垂らして若い雄を誘う雌蛇。その様はたまらなく淫靡であり、不快な生臭さを掻き消すほどの淫臭を放っていた。
「さぁ、今こそ乳離れの時よ♥ 私が貴方を一人前の男にしてあげる♥」
この男は自分だけの物。誰にも渡さない。例えそれが彼の母であってもだ。
「………………」
毒の熱に頭がぼうっとしながらも、王子はやるべきことをやる。夢遊病、無意識に近いながらも、その未来の王に相応しき凶々しき一物は目の前の雌を蹂躙し屈服させんと力強く勃起している。
「んんんんっっ♥♥♥♥」
再び突き挿れられたそれにアポピスは悦び、潮を吹く。乱暴に押し倒されながらも少年に蛇体を巻き付かせ、時に毒牙を、時に肛門に尻尾を突き挿し前立腺を弄るなどして肉体も性欲も刺激した。少年も沸き上がる肉欲のまま、雌蛇の肉体を味わい、嬲り続けたのだった。
「………………ッッ!!」
メシェネトが宮殿に漂う魔力の異常に気づき、地下牢に駆けつけたのはそれから数時間後のこと。何故か主である自分に逆らい行く手を阻むアヌビスを容赦なく蹴り飛ばし、地下牢に入ったメシェネトは自らの目を疑った。
「あぁ……トーヴ………」
ファラオは目から大粒の涙をこぼした。愛液と精液にまみれ、悪臭を放ちながら、息子は静かに寝息を立てている。愛おしそうにアポピスに抱かれ、蛇体に支えられながらだ。
「あら、ごきげんよう♥」
ふてぶてしくそう言い放つアポピスの顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。しかし、ファラオが悲しみ、憤ったのはそこではない。
「許さない……!! 許さないわァァッッ!!!!」
アポピスの腹はやや膨らんでいた。そう、彼女は新しい命を宿していたのだ。
そうトーヴのーーファラオの愛しい息子の子を孕んでいた。
20/04/13 00:16更新 / フルメタル・ミサイル
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