92 熱い男と冷たい男の協力戦
俺の放送がモンスターラグーンのメンバー達に聞かれてしまってから、早10分…今、モニターの前の俺は驚愕を隠しきれなかったんだ…
な、なんでモンスターラグーンのメンバーのほかに、見たことのない奴らも混じっているんだ…!?
ま、まさか…モンスターラグーンのメンバーを総動員したとでも言うのか…!?それとも、援軍か何かか…!?
み、見たこともないような方々がいるのに…俺にどうやってテスタロスとメビウスの援護をしろって言うんだよ!?まぁ…援護もなにも…俺はただ、ちょっとだけ助言したら後は見守るだけだけどさぁ…
見たこともないような彼女たち相手だったら…助言すら出来ないじゃないかよ!
…そういえば、テスタロスとメビウスが組んでいるのって初めてみるなぁ…
あいつら…仲が悪かったんじゃないのか…?
そう思いながら、右にあったお菓子を食べつつ、モニターを見ている俺だが…
『おうっ…メビウスじゃねぇか…今回は状況が状況だからな…仕方なく手を組んでやるよ…』
『お願いですから、話さないでくれます?戦闘の前に話すなんて、空気読めないんですねぇ?馬鹿ですか?馬鹿なのですか?あぁ…馬鹿でしたねぇ…』
『てめぇっ!!さっきから馬鹿馬鹿言いやがって…大体、何なんだよ!!毎回毎回、俺を目の敵にしやがって…』
『別に…?学生時代に私を散々馬鹿にし続け、苛め続けた屑にそっくりだってそれだけですよ…?私が根暗だとか…散々に言ってきた奴に…ねぇ?』
『なっ…!?て、てめぇっ!!少なくとも、俺は見た目が似ているからって人を決め付けないぞ!!他人は他人で…皆同じわけじゃねぇだろうが!!大体…俺は自分で気付かないうちに相手を傷つけていることはあるかもしれないけど、自分ではわざと相手を傷つけることは絶対にしないし言わない!!』
『……っ!?ふ、ふんっ…口ではいくらでも言うことが出来ますからね…その言葉が本当かどうかは行動で示してください』
『…わかったよ』
……やっぱりこいつら…なんだかんだ言いながらも仲がいいな…
って…あれっ!?も、モンスターラグーンのメンバー達が…別々に行動を始めただと…!?そこは、全員で一緒に行動するんじゃないのかよ!?
別々に移動して、不意打ちを狙うなんて…卑怯だぞ!!
すぐに物事から逃げる俺からしたら…挟み撃ちされてしまうようなあんな行動…絶対に認められるものじゃないね…
いや…どんな状況から逃げるにしても、逃げていた先に更に脅威が待っていたら嫌だろ…!?
ふぅっ…久しぶりに…いい事を言った気がするぜ…
まぁ…今はテスタロスとメビウスの二人の方に向かっている敵が一番早く接触してきそうだからな…二人には頑張って貰わないと…
おっと…お菓子がなくなってきたな…ちょっと取ってくるかな?
そして俺は、下の階にお菓子を取りに行ったのだった…
〜〜〜テスタロスの視点に変更します!!〜〜〜
さぁて…デメトリオの話だと、そろそろらしいんだが…
まさか、デメトリオの監視をかいくぐって敵が攻めてくるなんて思ってもいなかったが…それでも、来ちまったもんはしょうがねぇ…
俺はそう思うと、すぐに愛用の武器兼防具を深く着なおしたんだ…
俺のこの武器…及び防具は強いんだぜ?なんせ…異常なほどにリーチが長いからな…それに変則的だ…
俺の攻撃がどこから来るのかを見切ることが出来たのは…ナッカーサーぐらいか?
…それにしても、さっきのメビウスの表情…あの冷ややかな目で見られると、俺の元から去っていった嫁と娘を思い出すんだよな…
今…なにしているのか…さっぱりではあるんだが…
顎鬚を剃れとか、だらしない格好をするなとか…家事手伝えとか散々に言ってくれたが…あの時の俺が人生の中で一番幸せだったかもしれないな…
まぁ、結局は別れちまってすぐ、嫁は他の男と結婚したようだし、娘もその男のことを気に入っているようだったから…俺はすぐに故郷を出て旅に出て…今現在ここにすんでいるってわけだけどな?
人生で二番目に楽しかったことって聞かれたら、メガロス帝国の仲間達と過ごしたことって俺は心のそこから言えるね!!
まぁ…年甲斐も無く、ダサいことを言うなんて思われてしまうだろうけどさ?
ちなみに…すごくどうでもいいことだが、俺の年齢はナッカーサーよりも上なんだぜ?ナッカーサーはあのルックスで25だが、俺はもうバリバリの33歳でおっさんだからな…
年長者って面でも、ミカルドの他の連中はもちろん、兵士達も守ってやらねぇといけねぇよな?
……おや…?どうやら敵さんのお出ましのようだな…
いっちょ…派手に行きますかぁっ!!
「おっ…!?敵発見…行くぜぇっ!!」
「だから…テスタロス…馬鹿みたいに突進するのはやめてくださいよ…」
「ま、また馬鹿って言ったか…?ってか、敵がこっちに攻め入ってくるよりも先に攻撃をしかけねぇと…」
「……つまり、テスタロスは不意打ちを仕掛けてでも勝利したいって事ですか…?私はそんな勝利、嫌ですね…」
「なっ…ふ、不意打ち…!?でも、正面からやりあうのは別に不意打ちってわけじゃ…」
「そういう意味で言ったんじゃないですよ…とにかく、彼女達が来るまでは何もしないことです…」
「わ…わかったけどよ…」
なんて俺はメビウスに言いながらも、内心は全然分かっていなかった…
大体、そういう意味で言ったんじゃないってメビウスは言ったけど、だったらどういう意味で言ったのかをメビウスは教えてくれないからな…
あぁっ…き、気になってきたぜ…
でもまっ…戦いが終わってから聞くのでもいいか…確かに、無謀に突撃するよりも相手の出方をみるっていう、メビウスらしい戦いかた…苦手ではあるけど無しではないと思うしな…?
そしてじっと待っていると、なんだか物凄い強者のオーラを漂わせている魔物娘達が俺たちのところに悠々と歩いてきたんだよ…
えっと…数は…たったの七人…?へっ…よほど敵さんは俺たちのことを甘く見ているようだな…
だが、その油断は足元をすくわれる原因にもなりえるってことを…今回の戦いで教えてやるさ…
俺がそう思いながら、鎧の中に仕込んだ武器の調子を確認していると、彼女達の中でも特に地位の高そうなダークスライムの女性が俺達に話しかけてきたんだよ
「あなた達が、この世の中で女性と交流することを捨てた愚かな者たちですね?まったく…あなた達はその選択をして、人生の半分を失ったと言うことを…わからないようですね?まぁ…安心してください…すぐにあなた達にも結婚というすばらしい出来事を経験させてあげますから」
……この、変に露出の高めな服をきているダークスライムの女性は一体なにがいいてぇんだ?もうちょっと分かりやすく言って欲しいんだが…
というか、人生の半分を失っただと…?わかってねぇな…
人生ってのは自分で作るから、面白いんじゃねぇか?
少なくとも、俺はそう思うね
「つまんねぇ御託は並べなくていいから…さっさとかかって来いよ!!人生ってのは強制されるものじゃなく、自分で決める物だって教えてやるぜ!」
「おや…珍しくテスタロスと意見が合いましたね…私も同意見です」
「……まったく…自分の実力を把握して戦いを挑むべきですよ?普通の人間が私達に勝てるわけないのに…ですが、いいでしょう…その勇気は賞賛に値しますし、私もあなたの事を自信を持って他の魔物娘たちに紹介出来るって物です…」
「へっ…出来るものなら…」
「やってみてくださいよ!!」
「あぁっ…!?め、メビウス…それ、俺の台詞なのに…」
「何のことです…?それより、彼女たちが来ますよ?早くしてくださいね?」
俺達がそう言っていると、いきなり彼女たちの中から三人がこっちに向かってきて、一人がどこかに消えたんだよ…
消えた一人も、奇襲を仕掛けてくるかもしれねぇから…一応注意しておくとして…まさか三人だと…?
俺達を甘く見すぎているようだな…
確かに、俺たちは武器の力に頼らなくては実力が到底及ばない連中の集まりかもしれねぇが…それでも、俺たちには結束力と団結力…そして数があるからな…
何人倒されるかはわからねぇ…でも、俺たちは絶対ただでは終わらねぇ!!
いや…終われねぇんだよ!!他の仲間の為にもな!!
「さて…倒させてもらいますよ…?」
そう言いながら、誰よりも素早く俺たちのほうに突進してきたのはホーネットの女性だったんだ…
ふっ…一番初めに攻撃を仕掛けてくるって根性は気に入ったが…ちょっと感情を隠しているような無表情が気にいらねぇな…
世の中ってのは、もっと感情を豊かに出しても…いいと思うぜ?
「来たぞお前ら!!全力で相手…してやろうぜ!!」
「「おぉーーーっ!!」」
「ふっ…では、私は少しだけ準備でもさせてもらいましょうか…」
そして、俺たちはまず、一番初めに最も近くにきたホーネットの彼女に対して総攻撃を仕掛けたんだが…
彼女は華麗なステップと異常な槍さばきで全ての弾をはじいて来るんだよ…
なるほど…これほどか…ガイウスが自殺剤…飲んだのも分かる気がするぜ…
だが…それでも俺や他の兵士の連中は仲間を守るために…退けないんだ!!
彼女一人にももしかしたら能力が劣ってしまうかもしれない…だが、それでも俺たちは戦い続けてみせる!!
って事で、こいつはどうだ!?
「行くぜぇっ!!【紅蓮弾】!!」
「テスタロスさんに続くぞ!!突撃だぁっーーー!!」
そして、俺が紅蓮弾を投げるのとほとんど同時くらいに、仲間である兵士達が俺の攻撃のフォローをするために突撃してくれたんだ!
これだけ攻めて…無駄だったなんてそんな事はありえないだろ?
なんて…俺はそう思っていたんだが…
ありえてしまったんだよな…
まぁ…非殺傷武器だからしかたねぇけど…まさかひるまずに来るなんてな…
って!?待て待て…仲間があぶねぇじゃねぇかっ!!
ちっ…この距離だと、救助仕切れねぇ…
俺は頭の中ではそう冷静に判断できていたが…心が仲間を助けるって選択肢を取ったので、無駄だと分かっていても、仲間を助けるために動いたんだ!
俺は…めんどくさがりで甲斐性なかったけど…ここに来て変わったんだ!!
絶対…自分の心に嘘はつかねぇっ!!
「う、うわぁっ!!やられるっ!!」
「させねぇっ!!」
「……遅いですよ?はぁっ!!」
「……えっ…?な、なんだこれ…?鎧を…すり抜けた…?」
「畜生っ…間に合わなかったか…でもなぁっ…まだ、まだだぁっ!!おらぁっ!」
俺はそういうと、俺の仲間を貫いている状態の彼女に向かって、思いっきり右手で殴りかかったんだ!
「仲間を…放して貰うっ!!」
「……甘いですよ?」
「なんだとっ!?俺の…拳を止めた…!?」
「あなたも…貫いてあげましょうか?この槍で…」
「くっ…!?握力で…俺が負けている…!?(…やられる!!)」
俺がそう思ったときだった…
まさか、俺がこんなお約束な展開で助けられることになろうとは思ってもいなかったが…なんと、メビウスがいいタイミングで遠距離攻撃を仕掛けてくれたんだよ!!
メビウスのショットガンは以上にリーチが長いからな…
あまり弾は拡散しねぇけど…それでも、十分強い武器だと思うぜ?
まぁ…そこらへんのザコだったら攻撃一発で眠る…はずなんだが、普通に食らったのに目の前の彼女はひるまない…
つまり、普通じゃないって事だな…?
だが、おかげであの不気味な槍に貫かれることが無く、彼女から距離を取れたから…結果は十分ついてきたと思うぜ?
まずは…彼女の槍の不思議をとかないと、話にもならねぇよな…
あの槍の効果は一体…何なのかをどうにかしてしらねぇとな…
後、ホーネットの彼女だけに集中しておくってわけにもいかねぇんだ…
なんせ、敵は他にも今現在、二人はいるからな…
そっちの方にも目を向けておかねぇと…いきなり横から攻撃を食らうなんて事になったら、面白くもねぇ…
俺がそう思いながら戦況が動くのをじっと待っていると、いきなりさっき槍で貫かれた仲間が変な動きを始めたんだよ…
なんか…モジモジしているっていったらわかりやすいか…?
一体、あいつは何をしているんだろうか?まぁ…あいつのあの行動を見て分かったことは、あの槍に殺傷能力は見受けられないといったところか?
「うぅ……うわあぁぁぁぁぁっ!!」
「おい!!どうしたんだ!?」
俺は遠くからそいつに話しかけるが、そいつに俺の声は届いていないみたいだったんだ!
まさか…精神攻撃系の武器だったのか…!?俺の聞いた話だと、世界に数個しかないんじゃなかったか?それにこうも簡単に遭遇するなんて…
運がいいのか悪いのか…よく、わからねぇな…
いや…むしろ悪いな…
「さぁ…あなたのそのもやもやを救ってくれる娘はすぐ近くにいますよ?」
「はぁっ…はぁっ…」
「私が、あなたに未来への選択肢を差し上げましょう…」
そう言って、ダークスライムの彼女の元にふらふらと歩いていった兵士は次の瞬間…紫色の穴に吸い込まれていったんだ…
あの穴…テレポーテーションシステムと仕組みが似てるな…
つまり、転送されたって事か…
くそっ…俺がもう少し早く動いていれば、こんな結果にはならなかったかも知れねぇのに…
そう思うと、複雑な気分になってしまうんだが、今は落ち込んでいる時じゃねぇ!!
落ち込むのは何時でも出来るからな…今は気をつけながら戦う時だ!!
行くぞぉっ!!
「次はこれだ…【大型火炎睡眠手投げ弾】!!」
「おぉっ!!テスタロスさんの大技だ!!これはさすがに、勝ったよな!」
「………これは、避けられないかな」
「シャロン!!そこは諦めずに動くところでしょ!!」
「リサリサ…いいタイミング」
「行くぞぉっ!!斬るっ!!」
こ、このタイミングで、敵にも一人加勢したか…
正直、もうちょっと後でもよかったが…仕方がねぇ!!
俺がケイに頼んで作ってもらったこの大型催眠手投げ弾…どう避けるか見せて貰おうか!!
そう俺が思って、身構えた時だった…まさか、このタイミングで手投げ弾を切るなんて…そんな馬鹿なことを敵が行うなんて思ってもいなかったんだ…
辺りに爆音が響き渡り、容赦なくあたりに催眠ガスが撒き散らされ…無かっただと…?
確かに爆音は響き渡ったはずだ…それなのに、催眠ガスが撒き散らされないのは…一体どういうことだ?
ケイの作った武器が不発だったなんて、そんな事が起こるはずがねぇし…
そう思っていると、明らかにさっきまで手投げ弾が爆発してたって場所に、サラマンダーの女性が立っていたんだよ…
しかも、全長2mはありそうな大剣を持ってな?
なるほど…彼女が俺のとっておきを無力化したのか…
だが、まだまだ…俺は負けたなんて思ってないぜ?
だが…次の作戦を考える余裕なんて、俺には残ってなかったんだ…
俺が何かを考えるよりも先に、ホーネットとサラマンダーの二人が飛び掛って来たからな…
これは…下がっていたら時間的に間に合わねぇな…
こんなに早く出すつもりじゃなかったんだが…俺の隠し武器を出すか?
俺がそう思って、腰の部分にある排気ボタンを押そうとしたときだった…
「テスタロス!!少々、しゃがんでいただけます?」
「えっ…?うぉわぁっ!?」
メビウスはよく分からない装置を展開しており、その装置が大量の催眠弾を撃ち出していたんだよ…
こ、これは…ケイがメビウスに試験用として前に渡していた武器か?
中々…攻撃的でイカス武器じゃねぇかよ!!
ははっ…メビウスが攻撃をしてくれている間に、俺は少し後退してっと…
「よしっ!!メビウスが攻撃を仕掛けている間に、俺たちは支援として取って置きの火力でサポートだ!!行くぜぇっ!!」
「「おぉぉぉぉっ!!」」
「オラオラオラオラオラオラァッ!!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」
そして、ノンストップで手投げ弾を投げる俺達…
それを後押しするかのように、威力の高い弾を打ち出す…ケイが作った試験用の固定装置…えっと、名前は…【ドーパント】だったか?
技術の説明をしていた時に、ケイが真空管がどうとか言っていたけど…俺には何をいっているのかさっぱりだったな…
そしてしばらくした時だった…俺たちの攻撃を避けようと移動したホーネットの彼女に、物凄い勢いでドーパントの打ち出した弾が命中したんだよ!!
容赦なく当たったからなぁ…あれでは、さすがに無事じゃねぇんじゃねぇか?
俺がそう思って悠長に立っていたときだ…
いきなり、後ろからメビウスの叫ぶ声が聞こえてきたんだよな…
ったく、そんなに慌ててどうしたってんだ?
「テスタロス!!フォード現象が発生するから、今すぐ…そこから離れてください!」
「フォード現象って何だよ…?」
「説明している時間もないんですよ!!テスタロス、馬鹿じゃないなら私の言うことを聞いてくれませんか?」
「なっ…てめぇっ!?また馬鹿って言ったな!?」
だが、俺はそれ以上何も言うことが出来なかったんだよ…
そう、メビウスが言っていたフォード現象とやらが本当に発生したんだ…
まさか、相手に当たった時に生じる衝撃波が関係しているとはな…
彼女の近くにいなくてよかったぜ…
普通の人間である俺達がまともに食らったら、常識的に考えると左手くらいは吹き飛んでいるからなぁ…
さぁて…彼女はどうなった…?
俺がそう思ってホーネットの彼女を見ていると、彼女は空中で体制を立て直したんだよ!!
おいおい…ドーパントでもダメなのか!?
でもまぁ、あそこで体制を立て直している間に二発、三発とメビウスの野郎は彼女に攻撃を打ち込んでいるからなぁ…
さすがに、容赦ねぇが…これも戦いだ…殺しはしないから、早めに戦意を喪失して貰いたいもんだ
だが…俺が次に彼女達の方を見たとき、俺は思わず自分の目を疑ったぜ…
ドーパントの弾を避けるだと…!?確かに一発を撃つ度に少しはタイムラグが発生してはいるだろうが…それでも、速度はザボルグのライフルの5000分の1だぞ!?
秒速2kmって話は嘘だったのかよ!?
「さっきのは…痛かった…」
「やったわねぇーーーっ!!お返しに…てやぁっ!!」
「シズカ…奇襲をお願い…潰す」
「なっ…!?こ、ここで…来るだって!?テスタロスさん!!やばいですよ!」
「ひぃぃっ!?うわぁっーー!!」
「あれだけ大きな剣を持っていれば、攻撃をするのは遅いはずって…早い!?」
「テスタロスさんのところまで退くんだーー!!」
「う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「くっ…お前ら!!今、助けに行くからな!!」
「待ってください!!テスタロス!!」
「なんだ!?早くしないと…仲間が全員やられてしまうじゃねぇか!!」
「非常に言いにくいんですが…ここは後退しましょう」
……なんだと…?
今、メビウスの奴、なんて言った…?後退するだと…?
ふざけるな!!仲間が凄くピンチなんだぞ…!!
それを…見捨てるっていうのかよ!!
「てめぇ…それを本気で言っているのか…?仲間が今現在、彼女達の猛攻を受けて倒れている中で、本当に本気で言っているのか!?」
「そうですよ!!今…この場所で戦っては確実に負ける!!私は少しでも勝つ確立を上げようと…」
「そうかよ…俺は、いくらお前が俺のことを嫌っていようと、仲間のことを見捨てる奴だとは思っていなかった…だが、見捨てるってんなら、お前一人が逃げろ!俺は…絶対に仲間を見捨てねぇっ!!」
「テスタロスは勝てない戦いであっても、仲間を見捨てないといっているが…それは綺麗事だ!!私は…そんな綺麗事で戦って勝てた戦いはないから、退けといっているんだ!!仲間を大切にする気持ちは大事だと思うが、それでも、状況を見ろ!!戦況を見ろ!!今のこの状態で…私たちに勝ち目があると思うのか!?頭を冷やせ!!」
「頭を冷やすのはてめぇだよメビウス!!俺はな…人間である以上、逃げたいという甘い気持ちも確かにある!!だがな…それでも…それでも一緒に昼夜を共にした仲間を見捨てられねぇんだよ!!綺麗事でもいい!!俺は…一人でも仲間を連れて行く!!逃げるなら…その仲間も一緒になぁっ!!」
俺はそういうと、即座に振り向き仲間を助けに行ったんだ…
振り向きざまに大型火炎催眠手投げ弾を落としてしまったが…そんな事はどうでもいい!!
とにかく…無様でもいいから、一人でも仲間を助けてみせる!!
「おいっ!!俺の仲間に…手を出すな!!」
「て、テスタロスさんだ…まさか、この状況で助けに来るなんて…」
「う…うぅっ…」
「おい…泣くなよ…まだ、確実に助かったわけじゃねえんだから…」
「そ、それでもさぁ?俺…もうダメかと思ってたから…うれしくて…」
「……馬鹿が来た」
「いや…仲間を助けるために自分を犠牲にするその精神…気に入ったねぇ…まさか、この国の男の中に、そんな男がいるなんて…こりゃあ、いい男を紹介できそうでいい気分だよ」
「でも、それでも私達にかなわない戦闘能力だね…」
「おや…?シズカ、もう終わったのかい?」
「余裕…全員転送したよ?」
「だったら…彼も速攻で倒すとするかい?」
そう彼女達は話し合っているが…そう簡単にやられるものかよ!!
絶対に…仲間を助け出してやる!!
だが…下手に動くと、彼女達の攻撃を受けてしまうというのも分かるからな…
注意しねぇと…
まずは、広範囲の爆弾だな…
「おらぁっ!!これでもくらいな!!」
ドドドドドドドドッ…
だが、これで彼女達が行動不能になるなんて思っちゃいねぇ…
おそらく、彼女達はこの催眠ガスを逆手にとって攻撃を仕掛けてくるだろうから…そこを突く!!
「何度も同じ手を使ってるんじゃないよ!正面から正々堂々戦いな!!」
「……やはり、ザコ」
「へっ…出てきたな…?それを待っていたんだ…辺りに爆弾警報が発令されましたので、とっととお眠りくださいってな?【Ωボム】!!」
キィンッ…
ドゴーーーーーンッ!!
正直…この技で眠ってくれなかったらきついな…
だが、これだけの爆発音と催眠ガスなら、俺の居場所を特定するのは難しいだろ…その間に、俺は仲間の元に近づいてっと…
「ふっふっふ…あんたが仲間を救出する為に動くって事は、分かっていたんだ!」
なにっ…!?さっきのΩボムで気絶したか、眠ってくれたと思っていたのに…
まさか…ダメージをあまり受けずに、俺の行動を見切っただと…!?
くぅっ…すまねぇ…俺はここで、終わる…
そう…俺はさっきまでの威勢が一瞬で折れてしまうほど、この出来事にショックを受けていたんだ…
「どうした?さっきまでの威勢が折れちゃったのかい?じゃあ…そろそろ終わりにしてあげるよ!!」
「私も手伝おうかな…?」
「くそっ…ちくしょぉぉぉぉぉっーー!!」
「テスタロス!!しゃがめっ!!」
こ、この声は…メビウス…!?あいつ…逃げたんじゃ無かったのか…?
と、とにかく、言われたとおりにしゃがんでみるか…
そして俺がしゃがんだ次の瞬間だった…
俺の後ろの方から、物凄い左回転をしながら飛んでいる俺の大型火炎催眠手投げ弾が見えたんだよ!!
あ…あれは…あの時落とした奴じゃねぇか…それが、どうして…?
そう思いながら俺はメビウスがいたところを見てみる…
なるほど…ドーパントを砲台として使ったって事かよ…
メビウスの奴…なんだかんだでいい奴じゃねぇか…
でも…ちょっと待てよ…?あれが敵である彼女に当たったら…爆風で俺もただじゃすまねぇんじゃ…
ドゴォォォォォォォォォォォンッ!!
「うおぉぉぉっ…!?」
お、俺のΩボムの…約20倍…かよ…
まさか、これほどまでの威力があるなんてな…
俺はそう思いながら、仲間を救出し、メビウスの方に走って行ったんだ!!
「メビウス!!てめぇ…憎い演出しやがって!!凄いじゃねぇかよ!!」
「別に…仲間を無駄に助けたがる馬鹿ごと消し去ってやろうかと思っただけですよ…まぁ、結果オーライって奴でしょうかね?一応、さっきまで攻撃を仕掛けてきた三人は気絶させれたようですし…」
「あぁ…仲間も残った連中は助けられたしな?」
「ですけど、まだ後三人のこっていますからね?ここは…仲間も助けたんですから…一時的に退きましょう…いいですね?」
「あぁ…今度はお前の言うことを聞いてやるよ」
そうして、俺たちはこの場所を後にし、少し後退したんだよ…
といっても、彼女達がすぐに追いかけてくるのは分かっていることなんだがな?
どうにかしねぇと…逃げてばかりじゃ戦いには勝てねぇしな…
「ところで、メビウスの作戦プランは今のところ、どうなっているんだ?」
「私の作戦では、メガロス中央大橋の先に、カキサトレインの資材置き場があるので、そこに罠を張って待ち伏せようかと…」
「……だったら、時間を稼ぐ必要があるんだな?で、その作戦で彼女達を止められる可能性は…?」
「おそらく、80%かと…」
80%…かぁ…
仕方がねぇな…ここは、100%にしてもらわねぇと…
「だったら、100%にしろ…俺がここ…メガロス中央大橋で連中を食い止めてやるからよ!」
「なっ…!?ば、馬鹿なことを言わないで下さい!!」
「いや、俺はまけねぇよ…仲間のためにも、俺がここで食い止めてやる!!」
「だから…そんな根拠のない自信は…」
「根拠ならある…メビウス、これをもっていてくれ…俺の宝物だからよ!それを返して貰うために絶対勝ってお前のところに行く!!だから…お前は罠をしっかりと確実にセットするんだ!!いいなっ!?」
「……絶対に私のところにきてくださいよ!!来なかったら、これは廃棄処分しますからね!!」
「……わかってるよ…」
俺はそういうと、一人でメガロス中央大橋の真ん中で彼女達を迎え撃つことにしたんだが…
俺の横に、さっき俺が助けたばかりの兵士達…仲間が身構えているんだ…
こいつら…どういうつもりだ?
「お前ら…一体どういう…」
「俺たちは…テスタロスさんを援護します!!」
「助けられた恩返しって奴ですね…まぁ、適度に期待してくださいよ」
………こ、こいつら…いきなりの俺の判断で、俺一人がここを食い止めるはずだったのに……これが、仲間って奴か…
よしっ!!メビウスのためにも…散っていった仲間の為にも…
そして…俺たちの未来のためにも…ここで勝つ!!
「行くぞ…お前らっ!!」
「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっーーーーーーーー!!」」」」」」
な、なんでモンスターラグーンのメンバーのほかに、見たことのない奴らも混じっているんだ…!?
ま、まさか…モンスターラグーンのメンバーを総動員したとでも言うのか…!?それとも、援軍か何かか…!?
み、見たこともないような方々がいるのに…俺にどうやってテスタロスとメビウスの援護をしろって言うんだよ!?まぁ…援護もなにも…俺はただ、ちょっとだけ助言したら後は見守るだけだけどさぁ…
見たこともないような彼女たち相手だったら…助言すら出来ないじゃないかよ!
…そういえば、テスタロスとメビウスが組んでいるのって初めてみるなぁ…
あいつら…仲が悪かったんじゃないのか…?
そう思いながら、右にあったお菓子を食べつつ、モニターを見ている俺だが…
『おうっ…メビウスじゃねぇか…今回は状況が状況だからな…仕方なく手を組んでやるよ…』
『お願いですから、話さないでくれます?戦闘の前に話すなんて、空気読めないんですねぇ?馬鹿ですか?馬鹿なのですか?あぁ…馬鹿でしたねぇ…』
『てめぇっ!!さっきから馬鹿馬鹿言いやがって…大体、何なんだよ!!毎回毎回、俺を目の敵にしやがって…』
『別に…?学生時代に私を散々馬鹿にし続け、苛め続けた屑にそっくりだってそれだけですよ…?私が根暗だとか…散々に言ってきた奴に…ねぇ?』
『なっ…!?て、てめぇっ!!少なくとも、俺は見た目が似ているからって人を決め付けないぞ!!他人は他人で…皆同じわけじゃねぇだろうが!!大体…俺は自分で気付かないうちに相手を傷つけていることはあるかもしれないけど、自分ではわざと相手を傷つけることは絶対にしないし言わない!!』
『……っ!?ふ、ふんっ…口ではいくらでも言うことが出来ますからね…その言葉が本当かどうかは行動で示してください』
『…わかったよ』
……やっぱりこいつら…なんだかんだ言いながらも仲がいいな…
って…あれっ!?も、モンスターラグーンのメンバー達が…別々に行動を始めただと…!?そこは、全員で一緒に行動するんじゃないのかよ!?
別々に移動して、不意打ちを狙うなんて…卑怯だぞ!!
すぐに物事から逃げる俺からしたら…挟み撃ちされてしまうようなあんな行動…絶対に認められるものじゃないね…
いや…どんな状況から逃げるにしても、逃げていた先に更に脅威が待っていたら嫌だろ…!?
ふぅっ…久しぶりに…いい事を言った気がするぜ…
まぁ…今はテスタロスとメビウスの二人の方に向かっている敵が一番早く接触してきそうだからな…二人には頑張って貰わないと…
おっと…お菓子がなくなってきたな…ちょっと取ってくるかな?
そして俺は、下の階にお菓子を取りに行ったのだった…
〜〜〜テスタロスの視点に変更します!!〜〜〜
さぁて…デメトリオの話だと、そろそろらしいんだが…
まさか、デメトリオの監視をかいくぐって敵が攻めてくるなんて思ってもいなかったが…それでも、来ちまったもんはしょうがねぇ…
俺はそう思うと、すぐに愛用の武器兼防具を深く着なおしたんだ…
俺のこの武器…及び防具は強いんだぜ?なんせ…異常なほどにリーチが長いからな…それに変則的だ…
俺の攻撃がどこから来るのかを見切ることが出来たのは…ナッカーサーぐらいか?
…それにしても、さっきのメビウスの表情…あの冷ややかな目で見られると、俺の元から去っていった嫁と娘を思い出すんだよな…
今…なにしているのか…さっぱりではあるんだが…
顎鬚を剃れとか、だらしない格好をするなとか…家事手伝えとか散々に言ってくれたが…あの時の俺が人生の中で一番幸せだったかもしれないな…
まぁ、結局は別れちまってすぐ、嫁は他の男と結婚したようだし、娘もその男のことを気に入っているようだったから…俺はすぐに故郷を出て旅に出て…今現在ここにすんでいるってわけだけどな?
人生で二番目に楽しかったことって聞かれたら、メガロス帝国の仲間達と過ごしたことって俺は心のそこから言えるね!!
まぁ…年甲斐も無く、ダサいことを言うなんて思われてしまうだろうけどさ?
ちなみに…すごくどうでもいいことだが、俺の年齢はナッカーサーよりも上なんだぜ?ナッカーサーはあのルックスで25だが、俺はもうバリバリの33歳でおっさんだからな…
年長者って面でも、ミカルドの他の連中はもちろん、兵士達も守ってやらねぇといけねぇよな?
……おや…?どうやら敵さんのお出ましのようだな…
いっちょ…派手に行きますかぁっ!!
「おっ…!?敵発見…行くぜぇっ!!」
「だから…テスタロス…馬鹿みたいに突進するのはやめてくださいよ…」
「ま、また馬鹿って言ったか…?ってか、敵がこっちに攻め入ってくるよりも先に攻撃をしかけねぇと…」
「……つまり、テスタロスは不意打ちを仕掛けてでも勝利したいって事ですか…?私はそんな勝利、嫌ですね…」
「なっ…ふ、不意打ち…!?でも、正面からやりあうのは別に不意打ちってわけじゃ…」
「そういう意味で言ったんじゃないですよ…とにかく、彼女達が来るまでは何もしないことです…」
「わ…わかったけどよ…」
なんて俺はメビウスに言いながらも、内心は全然分かっていなかった…
大体、そういう意味で言ったんじゃないってメビウスは言ったけど、だったらどういう意味で言ったのかをメビウスは教えてくれないからな…
あぁっ…き、気になってきたぜ…
でもまっ…戦いが終わってから聞くのでもいいか…確かに、無謀に突撃するよりも相手の出方をみるっていう、メビウスらしい戦いかた…苦手ではあるけど無しではないと思うしな…?
そしてじっと待っていると、なんだか物凄い強者のオーラを漂わせている魔物娘達が俺たちのところに悠々と歩いてきたんだよ…
えっと…数は…たったの七人…?へっ…よほど敵さんは俺たちのことを甘く見ているようだな…
だが、その油断は足元をすくわれる原因にもなりえるってことを…今回の戦いで教えてやるさ…
俺がそう思いながら、鎧の中に仕込んだ武器の調子を確認していると、彼女達の中でも特に地位の高そうなダークスライムの女性が俺達に話しかけてきたんだよ
「あなた達が、この世の中で女性と交流することを捨てた愚かな者たちですね?まったく…あなた達はその選択をして、人生の半分を失ったと言うことを…わからないようですね?まぁ…安心してください…すぐにあなた達にも結婚というすばらしい出来事を経験させてあげますから」
……この、変に露出の高めな服をきているダークスライムの女性は一体なにがいいてぇんだ?もうちょっと分かりやすく言って欲しいんだが…
というか、人生の半分を失っただと…?わかってねぇな…
人生ってのは自分で作るから、面白いんじゃねぇか?
少なくとも、俺はそう思うね
「つまんねぇ御託は並べなくていいから…さっさとかかって来いよ!!人生ってのは強制されるものじゃなく、自分で決める物だって教えてやるぜ!」
「おや…珍しくテスタロスと意見が合いましたね…私も同意見です」
「……まったく…自分の実力を把握して戦いを挑むべきですよ?普通の人間が私達に勝てるわけないのに…ですが、いいでしょう…その勇気は賞賛に値しますし、私もあなたの事を自信を持って他の魔物娘たちに紹介出来るって物です…」
「へっ…出来るものなら…」
「やってみてくださいよ!!」
「あぁっ…!?め、メビウス…それ、俺の台詞なのに…」
「何のことです…?それより、彼女たちが来ますよ?早くしてくださいね?」
俺達がそう言っていると、いきなり彼女たちの中から三人がこっちに向かってきて、一人がどこかに消えたんだよ…
消えた一人も、奇襲を仕掛けてくるかもしれねぇから…一応注意しておくとして…まさか三人だと…?
俺達を甘く見すぎているようだな…
確かに、俺たちは武器の力に頼らなくては実力が到底及ばない連中の集まりかもしれねぇが…それでも、俺たちには結束力と団結力…そして数があるからな…
何人倒されるかはわからねぇ…でも、俺たちは絶対ただでは終わらねぇ!!
いや…終われねぇんだよ!!他の仲間の為にもな!!
「さて…倒させてもらいますよ…?」
そう言いながら、誰よりも素早く俺たちのほうに突進してきたのはホーネットの女性だったんだ…
ふっ…一番初めに攻撃を仕掛けてくるって根性は気に入ったが…ちょっと感情を隠しているような無表情が気にいらねぇな…
世の中ってのは、もっと感情を豊かに出しても…いいと思うぜ?
「来たぞお前ら!!全力で相手…してやろうぜ!!」
「「おぉーーーっ!!」」
「ふっ…では、私は少しだけ準備でもさせてもらいましょうか…」
そして、俺たちはまず、一番初めに最も近くにきたホーネットの彼女に対して総攻撃を仕掛けたんだが…
彼女は華麗なステップと異常な槍さばきで全ての弾をはじいて来るんだよ…
なるほど…これほどか…ガイウスが自殺剤…飲んだのも分かる気がするぜ…
だが…それでも俺や他の兵士の連中は仲間を守るために…退けないんだ!!
彼女一人にももしかしたら能力が劣ってしまうかもしれない…だが、それでも俺たちは戦い続けてみせる!!
って事で、こいつはどうだ!?
「行くぜぇっ!!【紅蓮弾】!!」
「テスタロスさんに続くぞ!!突撃だぁっーーー!!」
そして、俺が紅蓮弾を投げるのとほとんど同時くらいに、仲間である兵士達が俺の攻撃のフォローをするために突撃してくれたんだ!
これだけ攻めて…無駄だったなんてそんな事はありえないだろ?
なんて…俺はそう思っていたんだが…
ありえてしまったんだよな…
まぁ…非殺傷武器だからしかたねぇけど…まさかひるまずに来るなんてな…
って!?待て待て…仲間があぶねぇじゃねぇかっ!!
ちっ…この距離だと、救助仕切れねぇ…
俺は頭の中ではそう冷静に判断できていたが…心が仲間を助けるって選択肢を取ったので、無駄だと分かっていても、仲間を助けるために動いたんだ!
俺は…めんどくさがりで甲斐性なかったけど…ここに来て変わったんだ!!
絶対…自分の心に嘘はつかねぇっ!!
「う、うわぁっ!!やられるっ!!」
「させねぇっ!!」
「……遅いですよ?はぁっ!!」
「……えっ…?な、なんだこれ…?鎧を…すり抜けた…?」
「畜生っ…間に合わなかったか…でもなぁっ…まだ、まだだぁっ!!おらぁっ!」
俺はそういうと、俺の仲間を貫いている状態の彼女に向かって、思いっきり右手で殴りかかったんだ!
「仲間を…放して貰うっ!!」
「……甘いですよ?」
「なんだとっ!?俺の…拳を止めた…!?」
「あなたも…貫いてあげましょうか?この槍で…」
「くっ…!?握力で…俺が負けている…!?(…やられる!!)」
俺がそう思ったときだった…
まさか、俺がこんなお約束な展開で助けられることになろうとは思ってもいなかったが…なんと、メビウスがいいタイミングで遠距離攻撃を仕掛けてくれたんだよ!!
メビウスのショットガンは以上にリーチが長いからな…
あまり弾は拡散しねぇけど…それでも、十分強い武器だと思うぜ?
まぁ…そこらへんのザコだったら攻撃一発で眠る…はずなんだが、普通に食らったのに目の前の彼女はひるまない…
つまり、普通じゃないって事だな…?
だが、おかげであの不気味な槍に貫かれることが無く、彼女から距離を取れたから…結果は十分ついてきたと思うぜ?
まずは…彼女の槍の不思議をとかないと、話にもならねぇよな…
あの槍の効果は一体…何なのかをどうにかしてしらねぇとな…
後、ホーネットの彼女だけに集中しておくってわけにもいかねぇんだ…
なんせ、敵は他にも今現在、二人はいるからな…
そっちの方にも目を向けておかねぇと…いきなり横から攻撃を食らうなんて事になったら、面白くもねぇ…
俺がそう思いながら戦況が動くのをじっと待っていると、いきなりさっき槍で貫かれた仲間が変な動きを始めたんだよ…
なんか…モジモジしているっていったらわかりやすいか…?
一体、あいつは何をしているんだろうか?まぁ…あいつのあの行動を見て分かったことは、あの槍に殺傷能力は見受けられないといったところか?
「うぅ……うわあぁぁぁぁぁっ!!」
「おい!!どうしたんだ!?」
俺は遠くからそいつに話しかけるが、そいつに俺の声は届いていないみたいだったんだ!
まさか…精神攻撃系の武器だったのか…!?俺の聞いた話だと、世界に数個しかないんじゃなかったか?それにこうも簡単に遭遇するなんて…
運がいいのか悪いのか…よく、わからねぇな…
いや…むしろ悪いな…
「さぁ…あなたのそのもやもやを救ってくれる娘はすぐ近くにいますよ?」
「はぁっ…はぁっ…」
「私が、あなたに未来への選択肢を差し上げましょう…」
そう言って、ダークスライムの彼女の元にふらふらと歩いていった兵士は次の瞬間…紫色の穴に吸い込まれていったんだ…
あの穴…テレポーテーションシステムと仕組みが似てるな…
つまり、転送されたって事か…
くそっ…俺がもう少し早く動いていれば、こんな結果にはならなかったかも知れねぇのに…
そう思うと、複雑な気分になってしまうんだが、今は落ち込んでいる時じゃねぇ!!
落ち込むのは何時でも出来るからな…今は気をつけながら戦う時だ!!
行くぞぉっ!!
「次はこれだ…【大型火炎睡眠手投げ弾】!!」
「おぉっ!!テスタロスさんの大技だ!!これはさすがに、勝ったよな!」
「………これは、避けられないかな」
「シャロン!!そこは諦めずに動くところでしょ!!」
「リサリサ…いいタイミング」
「行くぞぉっ!!斬るっ!!」
こ、このタイミングで、敵にも一人加勢したか…
正直、もうちょっと後でもよかったが…仕方がねぇ!!
俺がケイに頼んで作ってもらったこの大型催眠手投げ弾…どう避けるか見せて貰おうか!!
そう俺が思って、身構えた時だった…まさか、このタイミングで手投げ弾を切るなんて…そんな馬鹿なことを敵が行うなんて思ってもいなかったんだ…
辺りに爆音が響き渡り、容赦なくあたりに催眠ガスが撒き散らされ…無かっただと…?
確かに爆音は響き渡ったはずだ…それなのに、催眠ガスが撒き散らされないのは…一体どういうことだ?
ケイの作った武器が不発だったなんて、そんな事が起こるはずがねぇし…
そう思っていると、明らかにさっきまで手投げ弾が爆発してたって場所に、サラマンダーの女性が立っていたんだよ…
しかも、全長2mはありそうな大剣を持ってな?
なるほど…彼女が俺のとっておきを無力化したのか…
だが、まだまだ…俺は負けたなんて思ってないぜ?
だが…次の作戦を考える余裕なんて、俺には残ってなかったんだ…
俺が何かを考えるよりも先に、ホーネットとサラマンダーの二人が飛び掛って来たからな…
これは…下がっていたら時間的に間に合わねぇな…
こんなに早く出すつもりじゃなかったんだが…俺の隠し武器を出すか?
俺がそう思って、腰の部分にある排気ボタンを押そうとしたときだった…
「テスタロス!!少々、しゃがんでいただけます?」
「えっ…?うぉわぁっ!?」
メビウスはよく分からない装置を展開しており、その装置が大量の催眠弾を撃ち出していたんだよ…
こ、これは…ケイがメビウスに試験用として前に渡していた武器か?
中々…攻撃的でイカス武器じゃねぇかよ!!
ははっ…メビウスが攻撃をしてくれている間に、俺は少し後退してっと…
「よしっ!!メビウスが攻撃を仕掛けている間に、俺たちは支援として取って置きの火力でサポートだ!!行くぜぇっ!!」
「「おぉぉぉぉっ!!」」
「オラオラオラオラオラオラァッ!!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」
そして、ノンストップで手投げ弾を投げる俺達…
それを後押しするかのように、威力の高い弾を打ち出す…ケイが作った試験用の固定装置…えっと、名前は…【ドーパント】だったか?
技術の説明をしていた時に、ケイが真空管がどうとか言っていたけど…俺には何をいっているのかさっぱりだったな…
そしてしばらくした時だった…俺たちの攻撃を避けようと移動したホーネットの彼女に、物凄い勢いでドーパントの打ち出した弾が命中したんだよ!!
容赦なく当たったからなぁ…あれでは、さすがに無事じゃねぇんじゃねぇか?
俺がそう思って悠長に立っていたときだ…
いきなり、後ろからメビウスの叫ぶ声が聞こえてきたんだよな…
ったく、そんなに慌ててどうしたってんだ?
「テスタロス!!フォード現象が発生するから、今すぐ…そこから離れてください!」
「フォード現象って何だよ…?」
「説明している時間もないんですよ!!テスタロス、馬鹿じゃないなら私の言うことを聞いてくれませんか?」
「なっ…てめぇっ!?また馬鹿って言ったな!?」
だが、俺はそれ以上何も言うことが出来なかったんだよ…
そう、メビウスが言っていたフォード現象とやらが本当に発生したんだ…
まさか、相手に当たった時に生じる衝撃波が関係しているとはな…
彼女の近くにいなくてよかったぜ…
普通の人間である俺達がまともに食らったら、常識的に考えると左手くらいは吹き飛んでいるからなぁ…
さぁて…彼女はどうなった…?
俺がそう思ってホーネットの彼女を見ていると、彼女は空中で体制を立て直したんだよ!!
おいおい…ドーパントでもダメなのか!?
でもまぁ、あそこで体制を立て直している間に二発、三発とメビウスの野郎は彼女に攻撃を打ち込んでいるからなぁ…
さすがに、容赦ねぇが…これも戦いだ…殺しはしないから、早めに戦意を喪失して貰いたいもんだ
だが…俺が次に彼女達の方を見たとき、俺は思わず自分の目を疑ったぜ…
ドーパントの弾を避けるだと…!?確かに一発を撃つ度に少しはタイムラグが発生してはいるだろうが…それでも、速度はザボルグのライフルの5000分の1だぞ!?
秒速2kmって話は嘘だったのかよ!?
「さっきのは…痛かった…」
「やったわねぇーーーっ!!お返しに…てやぁっ!!」
「シズカ…奇襲をお願い…潰す」
「なっ…!?こ、ここで…来るだって!?テスタロスさん!!やばいですよ!」
「ひぃぃっ!?うわぁっーー!!」
「あれだけ大きな剣を持っていれば、攻撃をするのは遅いはずって…早い!?」
「テスタロスさんのところまで退くんだーー!!」
「う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「くっ…お前ら!!今、助けに行くからな!!」
「待ってください!!テスタロス!!」
「なんだ!?早くしないと…仲間が全員やられてしまうじゃねぇか!!」
「非常に言いにくいんですが…ここは後退しましょう」
……なんだと…?
今、メビウスの奴、なんて言った…?後退するだと…?
ふざけるな!!仲間が凄くピンチなんだぞ…!!
それを…見捨てるっていうのかよ!!
「てめぇ…それを本気で言っているのか…?仲間が今現在、彼女達の猛攻を受けて倒れている中で、本当に本気で言っているのか!?」
「そうですよ!!今…この場所で戦っては確実に負ける!!私は少しでも勝つ確立を上げようと…」
「そうかよ…俺は、いくらお前が俺のことを嫌っていようと、仲間のことを見捨てる奴だとは思っていなかった…だが、見捨てるってんなら、お前一人が逃げろ!俺は…絶対に仲間を見捨てねぇっ!!」
「テスタロスは勝てない戦いであっても、仲間を見捨てないといっているが…それは綺麗事だ!!私は…そんな綺麗事で戦って勝てた戦いはないから、退けといっているんだ!!仲間を大切にする気持ちは大事だと思うが、それでも、状況を見ろ!!戦況を見ろ!!今のこの状態で…私たちに勝ち目があると思うのか!?頭を冷やせ!!」
「頭を冷やすのはてめぇだよメビウス!!俺はな…人間である以上、逃げたいという甘い気持ちも確かにある!!だがな…それでも…それでも一緒に昼夜を共にした仲間を見捨てられねぇんだよ!!綺麗事でもいい!!俺は…一人でも仲間を連れて行く!!逃げるなら…その仲間も一緒になぁっ!!」
俺はそういうと、即座に振り向き仲間を助けに行ったんだ…
振り向きざまに大型火炎催眠手投げ弾を落としてしまったが…そんな事はどうでもいい!!
とにかく…無様でもいいから、一人でも仲間を助けてみせる!!
「おいっ!!俺の仲間に…手を出すな!!」
「て、テスタロスさんだ…まさか、この状況で助けに来るなんて…」
「う…うぅっ…」
「おい…泣くなよ…まだ、確実に助かったわけじゃねえんだから…」
「そ、それでもさぁ?俺…もうダメかと思ってたから…うれしくて…」
「……馬鹿が来た」
「いや…仲間を助けるために自分を犠牲にするその精神…気に入ったねぇ…まさか、この国の男の中に、そんな男がいるなんて…こりゃあ、いい男を紹介できそうでいい気分だよ」
「でも、それでも私達にかなわない戦闘能力だね…」
「おや…?シズカ、もう終わったのかい?」
「余裕…全員転送したよ?」
「だったら…彼も速攻で倒すとするかい?」
そう彼女達は話し合っているが…そう簡単にやられるものかよ!!
絶対に…仲間を助け出してやる!!
だが…下手に動くと、彼女達の攻撃を受けてしまうというのも分かるからな…
注意しねぇと…
まずは、広範囲の爆弾だな…
「おらぁっ!!これでもくらいな!!」
ドドドドドドドドッ…
だが、これで彼女達が行動不能になるなんて思っちゃいねぇ…
おそらく、彼女達はこの催眠ガスを逆手にとって攻撃を仕掛けてくるだろうから…そこを突く!!
「何度も同じ手を使ってるんじゃないよ!正面から正々堂々戦いな!!」
「……やはり、ザコ」
「へっ…出てきたな…?それを待っていたんだ…辺りに爆弾警報が発令されましたので、とっととお眠りくださいってな?【Ωボム】!!」
キィンッ…
ドゴーーーーーンッ!!
正直…この技で眠ってくれなかったらきついな…
だが、これだけの爆発音と催眠ガスなら、俺の居場所を特定するのは難しいだろ…その間に、俺は仲間の元に近づいてっと…
「ふっふっふ…あんたが仲間を救出する為に動くって事は、分かっていたんだ!」
なにっ…!?さっきのΩボムで気絶したか、眠ってくれたと思っていたのに…
まさか…ダメージをあまり受けずに、俺の行動を見切っただと…!?
くぅっ…すまねぇ…俺はここで、終わる…
そう…俺はさっきまでの威勢が一瞬で折れてしまうほど、この出来事にショックを受けていたんだ…
「どうした?さっきまでの威勢が折れちゃったのかい?じゃあ…そろそろ終わりにしてあげるよ!!」
「私も手伝おうかな…?」
「くそっ…ちくしょぉぉぉぉぉっーー!!」
「テスタロス!!しゃがめっ!!」
こ、この声は…メビウス…!?あいつ…逃げたんじゃ無かったのか…?
と、とにかく、言われたとおりにしゃがんでみるか…
そして俺がしゃがんだ次の瞬間だった…
俺の後ろの方から、物凄い左回転をしながら飛んでいる俺の大型火炎催眠手投げ弾が見えたんだよ!!
あ…あれは…あの時落とした奴じゃねぇか…それが、どうして…?
そう思いながら俺はメビウスがいたところを見てみる…
なるほど…ドーパントを砲台として使ったって事かよ…
メビウスの奴…なんだかんだでいい奴じゃねぇか…
でも…ちょっと待てよ…?あれが敵である彼女に当たったら…爆風で俺もただじゃすまねぇんじゃ…
ドゴォォォォォォォォォォォンッ!!
「うおぉぉぉっ…!?」
お、俺のΩボムの…約20倍…かよ…
まさか、これほどまでの威力があるなんてな…
俺はそう思いながら、仲間を救出し、メビウスの方に走って行ったんだ!!
「メビウス!!てめぇ…憎い演出しやがって!!凄いじゃねぇかよ!!」
「別に…仲間を無駄に助けたがる馬鹿ごと消し去ってやろうかと思っただけですよ…まぁ、結果オーライって奴でしょうかね?一応、さっきまで攻撃を仕掛けてきた三人は気絶させれたようですし…」
「あぁ…仲間も残った連中は助けられたしな?」
「ですけど、まだ後三人のこっていますからね?ここは…仲間も助けたんですから…一時的に退きましょう…いいですね?」
「あぁ…今度はお前の言うことを聞いてやるよ」
そうして、俺たちはこの場所を後にし、少し後退したんだよ…
といっても、彼女達がすぐに追いかけてくるのは分かっていることなんだがな?
どうにかしねぇと…逃げてばかりじゃ戦いには勝てねぇしな…
「ところで、メビウスの作戦プランは今のところ、どうなっているんだ?」
「私の作戦では、メガロス中央大橋の先に、カキサトレインの資材置き場があるので、そこに罠を張って待ち伏せようかと…」
「……だったら、時間を稼ぐ必要があるんだな?で、その作戦で彼女達を止められる可能性は…?」
「おそらく、80%かと…」
80%…かぁ…
仕方がねぇな…ここは、100%にしてもらわねぇと…
「だったら、100%にしろ…俺がここ…メガロス中央大橋で連中を食い止めてやるからよ!」
「なっ…!?ば、馬鹿なことを言わないで下さい!!」
「いや、俺はまけねぇよ…仲間のためにも、俺がここで食い止めてやる!!」
「だから…そんな根拠のない自信は…」
「根拠ならある…メビウス、これをもっていてくれ…俺の宝物だからよ!それを返して貰うために絶対勝ってお前のところに行く!!だから…お前は罠をしっかりと確実にセットするんだ!!いいなっ!?」
「……絶対に私のところにきてくださいよ!!来なかったら、これは廃棄処分しますからね!!」
「……わかってるよ…」
俺はそういうと、一人でメガロス中央大橋の真ん中で彼女達を迎え撃つことにしたんだが…
俺の横に、さっき俺が助けたばかりの兵士達…仲間が身構えているんだ…
こいつら…どういうつもりだ?
「お前ら…一体どういう…」
「俺たちは…テスタロスさんを援護します!!」
「助けられた恩返しって奴ですね…まぁ、適度に期待してくださいよ」
………こ、こいつら…いきなりの俺の判断で、俺一人がここを食い止めるはずだったのに……これが、仲間って奴か…
よしっ!!メビウスのためにも…散っていった仲間の為にも…
そして…俺たちの未来のためにも…ここで勝つ!!
「行くぞ…お前らっ!!」
「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっーーーーーーーー!!」」」」」」
12/10/04 20:05更新 / デメトリオン
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