連載小説
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86 傲慢と根拠の無い自信
〜〜〜リンケ視点でスタートします!!〜〜〜

「ナナ…ちょっといいかな?」
「…どうしたんですか?リンケさん?もうすぐ私達の相手もここを通ると思いますけど…」
「あぁ…分かってる、もしも…あたしが姉さんを越えるためにここで戦って、負けたとするだろ…?そうしたら…あたしはやっぱり姉さんと張り合う価値がなくなるんじゃないかって思うんだけど…どう思う?」
「えっと…別に、一度負けたくらいで張り合う価値がないって決め付けるのはダメだと、私は思いますけどね?姉さんを越えたいのなら、諦めないことですよ」
「だが…しかしだな…」
「リンケさん!!リンケさんは姉さんを越えたいんでしょう?だったら、とにかく何度も戦うことです!!」
「…でも、姉さんは一度負けたものには、再戦する価値がないと…」
「リンケさんは、姉さんの理論に反発して、ここに来たんじゃないですか?だったら、リンケさんは自分の理論を貫き通さないとダメですよ!!」
「しかし…」
「あぁっ!!リンケさんはこれから、『でも』とか『だが』とかそういった言葉は禁止です!!そんなネガティブよりの考え方で、戦いに勝てるわけないでしょう?もっと、自分に自信をもって行動したほうがいいです!!」

…確かに、ナナの言うことも正しいかも知れない…
あたしは、母さんが理想とした人物になりたいんだから…こんなことでマイナス思考になってしまっても仕方がないよな…

なんて思いながら、ナナと一緒にここで敵が来るのを待っていると、ヴァンパイアの子供が椅子に座ってこっちに飛んできたんだ
多分…あの子供と、一緒の速度で走っているメイド服を着た女性があたし達の相手じゃないかな…?

「むっ…?貴様達は、私の敵か?」
「…どうやら、そのようだな、あたしの名前はリンケ…ヴォン・リンケだ」
「私の名前はエヴァリンだ、貴様が私と戦うことがどれほど価値のあることか…教えてやろうじゃないか!!」
「戦いに勝ち負けはあっても、価値なんてない…それがわかっていないようだな?」
「…知ったような口をきくじゃないか小娘…」
「むっ…?少なくともあたしは、あなたよりは年齢は上だと思うが?」
「……貴様、私が子供のように見えるといいたいのか!?」
「当然…だって、どこからどう見ても、ヴァンパイアの幼女がピッチリとした下着を着用しているようにしか見えないぞ?普段着が下着って部分に生活のだらしなさを感じるよ」
「ふんっ…これだから凡人は人を見る目が無くて困る…私は貴様より歳が上なのだぞ?少し身体が成長していないとはいってもな?今に、貴様が羨ましがるような体型になるのだ!!」

彼女はそういうと、椅子から降りて空中に浮遊し始めたのよ…
どうやら…そろそろ戦いが始まる予感がするな…
あたしも、戦う準備をさせてもらおう…この戦いに勝って…姉さんを越える!

あたしが戦う準備をしようとすると、ナナさんがエヴァリンと一緒にここに来たメイドと話していたのが聞こえたんだが…一体何を話しているんだろうか?
あたしはそう思い、エヴァリンを目で捉えつつナナさんの話している言葉を聴いていたんだ

「……ペロル…また、あったね…」
「…また、わたくしの邪魔をするのなら…いくら同期とはいえ…容赦しませんよ…ナナ…」
「ふっ…今回は私には…秘策があるの!!だから…絶対に負けないわ!!」
「秘策…?それがもし、メイディングバトルのルール規約に反するものの場合…使った地点であなたの負けなのよ…?」
「…ふっふっふ、行くよ!!」

ナナさんはそういうと、物凄い速度で触手を発生させたんだ…
…で、どうでもいいことではないが…ナナさん、あたし達の方に触手を放ってきたんだよ!!
まさか…裏切り!?
あたしがそう思い、即座に身構えると、触手は私の真横を普通に通り過ぎ、エヴァリンの服に攻撃を仕掛け始めたんだ…
ま、まさか…そんな破廉恥な…!?

「うわぁっ!?な、なにをするやめ…あぁっ!!わ、私のパンツを…貴様ぁっ!」
「よしっ!!ふっふっふ…ペロル?これが何か…分かるよね?」
「そ、それは…!?エヴァリンお嬢様の崇高なる股の部分を隠していた…パンツ…!!(くっ…こ、これは…確かにルール違反じゃない…)」
「さぁっ…メイディングバトルを始めるよ!!」

………っ…

私は余りの出来事に、開いた口が塞がらなかったんだ…
ナナ…まさか秘策って…エヴァリンのパンツを強奪することか…?
でも、敵二人には致命的ダメージのようだし……
し、しかし…行った行為が少々強引すぎるというか…
仲間のはずのあたしにも、ダメージがだな…
えっ?なぜって…種族柄珍しいかも知れないが、私はあまり、そういった下の話が得意ではないんだ…
いや…まぁ…体には淫魔の血が流れているわけではあるから、いずれは耐性もできるんだろうけどさぁ…
とにかく、見ていて恥ずかしいなぁ…

「くぅっ…油断していた…私は完璧に油断していた…これでは恥ずかしくて、のんびり戦いも出来ないぞ…」
「エヴァリンお嬢様!!大丈夫ですか!?(くおぉっ!?キタァッ!!い、生きている間にお嬢様の裸体の中でもレアな…上着衣裸体を拝めるなんて…これが、いわばメイドとして頑張ってきた私に対する最高級の…褒美!?)」
「ペロル!!早く私のパンツを取り返すのだ!!早くしろ!!」
「……少々、時間がかかるかもしれません…お嬢様…」
「そこをどうにかするのが、メイドであるペロルの仕事だろう!!」
「…しばらく、これを履いてください!!」
「ふむ…これは…?」
「私のカチューシャです!!さて…ナナ…お嬢様のパンツを取り返すために…勝負よ!!後…サービスカット、ありがとう!!」
「なるほどな…このカチューシャを大切なところを隠すようにしてパンツの代わりをって、出来るかぁーーー!!」

……あれ?エヴァリン…結構ノリ突っ込み派なんだな…
って、あたしは思いながら、あのやり取りを見ていたんだけど…
なんだか、エヴァリンが見ていて可愛そうになってきたかな…仕方がない…
あたしはそう思うと、自分の着ていた服のスカート部分を引き千切り、エヴァリンに投げてあげたんだ…
まぁ、あたし…スカートの下にはジャージを履く派だしね?

「それ、使ってもいいよ?」
「……おぉっ!!はっ…き、貴様のスカートなど、誰が履くか!!」
「そう…じゃあ、あたしに返してくれる?」
「えっ!?い、いや…は、履きたくはないが、貴様がどうしても履いて欲しいと心のそこから言っているような表情を浮かべたからな…特別に履いてやらなくもないぞ?ありがたく思うのだな!!えっと…これをこうして…あれ?」
「そのスカート、後ろのホックを閉めるか、ちぎれた部分を結ばないと落ちるぞ?」
「そ、そのぐらい分かっておる!!し、庶民に言われなくても、そのくらい…出来た!!ふっはっはっはっ!!どうだ…?出来ただろうが!!貴様が言ったようなことなど…私の前では造作もないことなのだ!!」

……なんか、意味もないことなんだけど、ちょっとイラッときたなぁ…
でも、これであたしとエヴァリンとの戦闘の準備も…整ったな…
さぁ…あたしは姉さんを越えるため…エヴァリンは先へ進むため…勝負としましょうか!!

「エヴァリンは…武器を持たないの…?って事は、あたいと同じバトルスタイルなのか?」
「ふんっ…貴様のバトルスタイルをこちらが知らない以上、同じとは言えないだろうが!!」
「あたしのバトルスタイルは…近接格闘だ!!」

あたしはそう言うと、即座にエヴァリンのところに飛び…攻撃を仕掛けたんだ
だが、あたしが右手で攻撃しようとした瞬間、エヴァリンの後ろに見たことの無い魔法陣が展開され、そこから物凄い数の剣が飛び出してきたんだ!
ま、まさか…武器を持たなくても武器で攻撃するスタイルなんて…そんなスタイル、初めて聞いたな…

「ほぉ…?私の技をかわすとは…貴様、中々やるではないか…だが、私の攻撃はまだ、これで終わりではないのだぞ?もっと凄い技が残っているのだ…」
「もっと…凄い技…?」
「特別に見せてやろう…私だからこそ出来る技をなぁっ!!『もしもし…私だ、エヴァリンだ…今からメガロス帝国の近くにある、北緯29度、東経138度の場所に6000金貨分の武器を撃ってきてくれ……何っ?出来無いだと…貴様のような奴と話しても埒があかん!!貴様の上司を連れて来い!!貴様が上司か?エヴァリンだが、6000金貨分の砲撃や攻撃を、貴様の部下に伝えた場所に撃ってきてくれ…後で、その金貨の倍の金貨を払ってやる』」

エヴァリンは、一体何をしているんだ…?電話で何かを言っているのは…分かるんだけど…
ここで攻撃を仕掛けるのは簡単だけど…罠だったら困るしな…
あたしは今、非常に攻撃を仕掛けていいのか迷っていたんだ…
やはり、相手が行動を起こすのを待っているのがいいのか…それとも、今から攻めておいて、相手の勢いをくじくのがいいのか…
あたしがそう思っていると、空から何かが降ってきたんだ…
これは…爆弾!?
あたしは即座に爆弾をかわすと、エヴァリンに向かって走り始めたんだけど…

「ふははははっ!!逃げろ…逃げ惑え!!さて…私も攻撃をするとしようか?」
「くっ…遠距離攻撃ばかり、卑怯だ!」
「卑怯…?貴様は面白いことを言うのだな…私は一回の攻撃を行うたびに、金貨を失っているのだぞ?無駄使いといわれるのは納得がいくが、卑怯なんていわれる覚えはないな…?私はしっかりとリスクを背負っているのだからな!」
「ぐぅっ…そ、そういわれると確かに…」
「ふっはっはっはっはっ!!何も言えまい!!貴様にいい事を教えてやろう…私の金貨量は、53億だ!それだけの分の攻撃をよけることが出来れば、貴様が私に勝つチャンスも訪れるかも知れないなぁ…?」

……と、とにかく、今は攻撃を回避しながら、エヴァリンのところに行くことを考えなくてはならない…
あたしはそう思いながら、空から降って来た青白いレーザーを5本、ギリギリの所でかわすと、エヴァリンの放った剣の持ち手を蹴り、剣を地面などに刺してエヴァリンのところに走って行ったんだ…

「まだまだ…コレならどうだ…?【金の鉄檻】」
「…な、なんだ…!?この変にピカピカしている檻は!?しかも…このピカピカの檻…金の中に鉄が仕込まれていて、物凄い強度だ…」
「そして…檻に向かって剣を放つ!!中にいるものに…攻撃を防ぐすべはない!」
「くっ…何か、何か方法は無いのか…?」

あたしはそう思いながら檻を蹴ったり、色々してみたんだけど…だ、ダメだ…
やっぱり、檻本体の強度は凄く強い…檻を壊すより、別の方法を見つけないとダメだな…
でも…一体どうすればいいんだ…!?上から逃げようにも、上もしっかりと覆われているし下も地面にさえぎられて…って、ちょっと待てよ…?
あたしは少し考えたんだけど…地面を本気で殴れば、あたしのパンチ力だったら、少し地面を割ることが出来るかも知れない…
だが、もし割れなかったらあたしは終わりだ…どうする…?
あたしは真剣に悩んだんだけど、結果的にいえば、何もしないよりは行動したほうがいいって結論に行き着き、地面を割ることにしたんだ…

「行くぞ…てやあぁぁぁぁぁっ!!」

ズドォッ!!

よし…地面をあまり割ることは出来なかったけど、あたしの攻撃で地面に亀裂が入った!!檻がちょっと傾いている今しか…逃げるチャンスはない!!
あたしはそう思うと、即座に檻の下に少し空いた隙間を使い、檻から脱出したのだった…
で、その直後に檻に向かって大量の爆弾が投下され…剣が物凄い数、檻に突き刺さったのだった…
危なかったな…もう少し判断が遅ければ…あたしは消えていたかも…
エヴァリン…火力だけはどうやら、本物のようだな…
だが、攻撃する手段がないわけでは…ないって今さっき気がついたんだ!!
エヴァリンは攻撃する際、魔方陣を展開するが、彼女の攻撃は直線状にしか効果がないんだ!!
つまり…彼女が攻撃を行っている間に、あたしはスライドターンを繰り返しながら彼女の横に回り込めば…攻撃するチャンスがあるって事さ!!

「あれを回避するとは、貴様…中々やるじゃないか…だが、もう貴様の相手も飽いた…止めをさしてやる!!光栄に思うのだな!!この技を使ってやったのは…貴様が始めてだ!!【財力と愚民に捧ぐテラ・ブレイド】!!」
「……大げさに言うから、どんな技かと思ったが、対して変わりないじゃないか…拍子抜けだな…」
「そんな事を言えるのも、今のうちだがな…放て!!」

エヴァリンがそういうと、即座に物凄く大きな剣があたしに向かって放たれたんだけど…
大きければ、それだけ攻撃も避けやすい…!!これなら、スライドターンを使う必要も…
あたしがそう思ったときだった…

「くははははっ!!よりにもよって、真横に避けるとはな…あまりに無謀な考えに言葉もでんぞ?そんな貴様にこの私が、とてもいい技のプレゼントだ!えっと…意識を集中させてだな…爆散っ!!」
「…エヴァリンは一体何をいって…」

あたしがそういった瞬間だった…物凄い速度で剣が光を放ち始めたかと思うと、轟音をあげて爆発したんだよ!!
な、なぜ…なぜ爆発した!?いや、今はそんな事を考えているより、あの爆風と剣の破片をどう避けるかを考えないといけない…
爆風の速度は秒速200mくらいか?だが、その爆風に押されて速度が上がっているあの剣の破片の方が…やっかいだぞ…!?
だが、あたしが考えている時間はあまりないようで、どう避けるかを考えるよりも先に剣の破片が飛んできたんだ…
仕方が無い…考えるよりも先に、行動する!!

あたしはそう突発的に思うとすぐ、剣の破片の一つを左手ではじき、右手で破片の中でも、細くて長い持ち手の部分を選び、掴んだ!
そして、右手に持った持ち手の部分で剣の中でも一番危険な部位である刀身の部分をはじき、地面に突き刺すと剣の持ち手を思いっきり地面に刺さった刀身に食い込ませ、爆風に負けそうになりつつその持ち手部分を右斜め下31度の向きに思いっきり蹴った!!

あたしの考えは、成功したといえば成功したが、失敗したといえば失敗したんだ…
まず…剣の破片を簡単に砕くことが出来るほど、あたしの左手と、そこに装着している防刃グローブは防御力が高くなかったので、剣の破片を左手ではじいた瞬間に、左手を痛めてしまった
次に、地面に刺さった剣を蹴った時、あたしの思い通りに剣が地面を砕きながら、放物線上に飛んでいってくれたことはうれしいが、一つの危機を回避することが出来ただけで、安心したあたしはエヴァリンの放った剣二つに左右で挟まれている状況だ…

「見事なものだな…貴様、私の下について一緒に過ごす気はないか?私は才能があるものを大いに評価するのだ、貴様なら、この私が特別に屋敷の警備員として雇ってやってもいいぞ?給料だって、悪くしないでおいてやるし、毎日3食おやつ付きで、10時と13時と15時と18時と21時にはティータイムをも用意してやる…どうだ、十分すぎる条件だろ?」
「悪いけど…あたしには夢があるからね?そう簡単に捨てられる夢じゃないし…」
「夢…ねぇ…いつまでも夢を見続けているのもいいとは思うが、そんな子供のようなこと早くやめてしまえ…現実を受け入れて大人になるべきだな」
「エヴァリンさんには言われたくないですよ…それ…」
「……また、この私の外見を馬鹿にしただろう…?私だって、好きでこんな見た目になったわけではない!!人を見た目で判断するものではないと…教育されなかったのか…?いや…もういい…さっきの貴様の断りの台詞が間違いだということにしておいてやるから、もう一度聞こう…私の下につくつもりはないか?」
「だから…無いって言っているじゃないか…」
「私が聞きたいのはそのような答えではない!!爆散っ!!」

エヴァリンがそういうと、すぐにあたしの真横にあった剣二つが光り始めたんだ…
また爆発したら…この距離だ…今度は行動することも出来ずに吹き飛ばされてしまう…どうする…?
待て…さっきの爆風の威力…あれを逆に利用できれば…
あたしはそのことに気がつき、即座に剣を踏みつけて、剣の上の方に飛び上がったんだ…
そして、次の瞬間、物凄い爆風によって、あたしの体はエヴァリンの方に向かって吹き飛ばされる…
攻撃するチャンスがあるとしたら…ここしかない!!

「なっ…爆風を利用しただと…!?なんて、この私が言うと思ったのか…?私はいつでもこの技を停止して、無数の武器を召喚できる魔方陣を展開できるのだ!!貴様の判断が…裏目に出たようだな!!」

エヴァリンはそう言いながら、地面に爆風で吹き飛ばされた後、着地したあたしに向かって武器を沢山放ってきたんだけど…
判断が裏目に出た…?いえいえ、とんでもない…
その行動を狙っていたんだよ!!もし空中でその技を食らっていたら、あたしは負けているだろうけど、あたしが地面に接している時にその技をした場合…
あたしはスライドターンで攻撃を真横にかわすことが出来るんだ!!
あたしはどうやら、エヴァリンに対して相性がいいみたいだな…このあたしの攻撃方法…レヒテ姉さんには一切通用しないから…

「………来たっ!!」
「なっ…!?真横に避けた…!?ふっ…馬鹿なやつだ…もう一度魔方陣を展開すれば…」
「そんな暇…与えるわけがないだろっ!!」
「は、早い…!?」
「【狼連終】!!」

そしてあたしは、物凄い速度で蹴りとパンチをエヴァリンにたたきつけたんだ
この攻撃…姉さんに繰り出したら一発当たっただけで他、全部かわされるからなぁ…

「くっ…かはっ…!?ば、馬鹿な…このようなことが…起こり得るはずが…」
「結局、見た目だけじゃなくて体力的にも、子供だったみたいだな…」
「貴様ぁっ…また…見た目で…この高貴なる私を…馬鹿に……ふみゅぅ…」
「…でも、攻撃力だけなら十分すぎると思うよ?」

あたしはそういうと、地面に倒れているエヴァリンをそっと彼女が座っていた椅子に寝かせると、すぐにナナさんの手助けに行ったんだ…
まぁ、ナナさんだったら大丈夫だとは思うんだけどな?

「いくよペロル!!【八種の食神器】なべ!包丁!フライパン!ピューレ!やかん!炊飯器!電子レンジ!まな板!」
「くっ…お嬢様のパンツをナナが頭にかぶっている以上…うかつに攻撃が出来ない…もし、お嬢様のパンツに攻撃が当たって破れでもしたら…私が後で使用することが出来なくなる…なおかつ、メイディングバトル規約第136章によれば、『主人の私物であるものを相手のメイドが盗ったとしても、それはルール違反にはならず、盗られた側のメイドはそれを傷つけることなく取り返さなくてはならない』というルールがある…ナナ、秘策というのは、このことか…考えたな…だが、その攻撃技で私に飛んでくる物を攻撃することは出来る!」

ペロルと呼ばれていたメイドはそういうと、腰に構えた刀を物凄い速度で振りはじめたんだ…
…あの武器、刀と呼ばれるタイプの武器のはずだが、腰に8個も構えているなんて、彼女、重くないのか…?
あたしはとてもじゃないが、重いものを持って戦闘を行うのは嫌なんだけど、彼女は本当に凄いな…
しかも、かろうじて確認できる速度だが、ナナさんからしたらこの速度は…物凄く速く見えるかも知れないな…
え…?あたしがなぜ見えるかって?あたし、昔から目はよかったからね…
それにしても…あのペロルってメイド、相当のやり手だなぁ…
もしかしたら、あたしよりも強いかも…
それに、彼女の持っている刀、一本一本が違う種類だよ!?
大きさは決まって同じだけど…装飾や長さは全然違う…彼女の趣味なのか?

「ペロル!!助太刀に…」
「来ないで下さい!!リンケさん…メイディングバトルをしている最中に第三者の介入は禁止されているんです!!」
「…そうなのか…わかった…頑張れ!!」

あたしはそう言って、そっと遠くから見守ろうとしたんだけど…
その瞬間、試合中にも関わらずペロルが慌ててあたしに話しかけてきたんだ…

「あ、あなたがここにいるということは…お嬢様は…まさか…」
「大丈夫だよ…あたし、命は絶対にとらないからさ…今はすやすやとソファで寝てるよ?」
「……その話、信じていいんですね?」
「…まぁ、敵だから疑うのは無理ないけどさ?あたいは嘘を言っていないと言い切らせてもらうよ?」
「わかりました…ナナ、メイディングバトルの続きよ!」
「あっ…最後にちょっとナナに忠告を…彼女、もっている刀全て違う種類だぞ!」

あたしはそういうと、近くにあった椅子に腰掛けて戦いの行方を見守ることにしたんだ…
まぁ、他人の戦いに手出ししたくはないしさ?
忠告した地点で既に、手出ししているんじゃないのかって言われたら…まぁ、手出ししているんだけどな?

「ペロル、メイド育成学校時代の時より、刀の数が増えた…?」
「そうですよ?一本だけ…お嬢様からいただいた業物があるので」
「業物…?」
「ナナは趣味として刀を集めるということをしなかったから分からないかも知れませんけど…」
「まぁ、私は料理専門だからね…」
「刀という物は魂とも呼ばれており、主人を守り、生涯尽くすために作られた武器なのです!まさに…メイドを象徴したかのような武器…それが刀です!!私のこの刀達…一本目から、【影蜜】【炎塵】【雹我】【雷牙刀】【疾斬】【遠新刀】【片桐返・典彦】【冥土刀・極】には…それぞれ作った作成者の魂が込められた、至高の作品なのです!!」
「……これは、ペロルが刀紹介モードに入ったのかな…?あっ、でも、その場合私が投げた武器がペロルにあたるのか…」
「そして……こんな日用品など、刀の前ではあまりにも無力なのです!!」

ペロルは、無駄に長い自分の刀の説明を終えると、すぐに刀を凄い速度で振って鞘に戻したり、別の刀を取り出したりしているんだ…
えっ?あたしの説明は分かりにくい…?仕方ないだろ…本人じゃないんだし…
まぁ、あたしが確実にいえることは、ペロルは強い…その事実かな?

「刀の前では無力…かぁ…でも、それでも私は自分の戦い方を貫いて…ペロルに勝ってみせる!!」
「学校にいたときも、私には一度も勝てなかったし、確かこの間も私に破れたのに、私に勝つと…?まぁ、確実に勝つことは出来ない…などというつもりはございませんが、それはあまりに夢を見すぎでは?」
「ふっ…今回、私はこのエヴァリンのパンツがあるの!!これさえあれば…」
「隙あり!!ふっふっふ…お嬢様のパンツをあなたが体の触手で持った瞬間を私は待っていたのです!!お嬢様のパンツは取り返しました!!さぁ、これで条件はフェアですよ…?」
「くっ…ま、まさか…エヴァリンのパンツが盗られるなんて…」
「いや、盗ったのはナナでしょう?おかげで今晩のいいおかずが手に入ったかと思うと、口から涎が…お礼に、私の技を一つ…いや、二つ教えてあげます、まぁ、体で覚えてくださいね?触手部分で包丁が持てるナナなら、私の技を使えるだろうから…ね?」
「……丁重にお断りを…」
「いえいえ…それに、メイディングバトルはどちらかが倒れるまで行うのがルールでしょう?久しぶりに本気を出そうというのですから遠慮しないで下さい」

ペロルはそういうと、凄く隙のない姿勢になったんだ…
あの姿勢…どの方角から攻撃しても確実に反撃される隙のない構えだ…
本当に彼女は、ただのメイドなのかと疑いたくなるな…
そして、あたしがそう思った瞬間、彼女がいきなり刀を八本全て凄い速度で抜いたんだ!!
空中で浮遊しているあの刀を見ていると、子供の頃に見たジャグリングの光景を思い出すなぁ…

「まず、刃物を全て空中に投げ、一番低く上がった刃物を左手に、一番高く上がったものを右手に持つ…そして、左手で相手に攻撃を仕掛け、相手は当然それを防ごうと行動するんです!そして、右手からの攻撃に備えて動くんですが、その時、刃物はまだ空中を浮遊している状態なのよ…ナナ、ここまではいい?」
「う、うんっ…(ってか、どうして私今、敵であるはずのペロルに技を教えてもらっているんだろう?)」
「で、次に敵が反撃してくるのを…あえて受ける!!この行動には、命をかけても主人を守るという気迫を込めるのよ?そして、投げておいた武器を、一気に両手に持ち、流れるように相手を切り刻む!そして、切り刻んだ後に右手に持っていた刃物で一太刀いれれば…ほとんど勝ったようなものなんです!流れるように相手を切り刻む時、武器を6個上に投げておき行動することで、相手に読まれにくい攻撃を繰り出せるから…まぁ、口で説明するより、戦ったほうが早いか…来なさい!!ナナ!!」
「……(そういえば、ペロルって昔から体育系だったなぁ…普段はクールっぽく振舞っているけどメイド格闘術の授業の時はテンション高かったからなぁ)」
「何黙っているの…?お礼だっていっているんだから、早く来なさい!!」
「い、嫌なお礼ですね…じゃあ、技を受けないように早くしとめます!!この私の…【神斬り包丁】でね?」

ナナさんもなんだか、大変だなぁ…
あたしは戦いの流れをのんびりと傍観しながら、そんな事を考えていたんだけど、ペロルがいった攻撃方法って、凄く実用性高いと思うからなぁ…
ナナさんには気をつけながら、ペロルさんが教えてくれた技を打開して貰わないと…

「……来たっ!!」
「立ち居地がかませ犬なんて…言わせませんよ!!【三ツ星みじん切り】」
「そうそう…そうやって攻撃してきた相手の武器を…真上に打ち上げる!」

カァンッ…

「そして、一気に刃物を上に放り投げながら…ここが重要です…敵がひるんでいる間に刃物を二本両手に持つ!!そして…【冥土術秘儀・逝ってらっしゃいませご主人様】!!この固有技を発動した瞬間、私がさっきいったように行動してくれればいいの…でも、流れるように切るって言ったけど、切るのは衣服で体には当身…これを忘れないように…!!」
「うぐぅっ!?ペロル…容赦…ないよ…」
「そして、ここで敵が立っていた場合のみ、直後に派生させることが出来る技が…って、ナナ!?」
「………」

ペロル…そりゃあ、ナナだって鍛えていただろうけど、一分間に鉄で出来た武器を600回も体にたたきつければ倒れると思うよ…?
それに…その技は確かに実用性が高いけど…それは実力がその技に比例しているかそれ以上ないと使えないと思うよ?

「ナナっ!!しっかりして!!ダメかぁ…ふぅ、ナナも疲れていて眠かったのならメイディングバトルをする前に教えていただきたいものです…さて、私はお嬢様の看護をしたいと共に、お嬢様の寝顔を記録に残したいと思っているのですが、私と戦いますか?」
「えっと、あたしに言っているんだよな?あたし、無意味な争いはしたくないから、戦うのには賛成したくないんだけど…でも、あたし達と敵対して戦うつもりなんだろ?だったら、あたしがここで食い止めないと…」
「ふむっ…少なくとも、私はそのつもりはありませんが…?私はお嬢様におつかえするメイドですからね…お嬢様の決断によって、攻めるも守るも変わるのですよ?」

って事は、今ここで戦うって事はないのか…?
あたしはナナさんを看病してあげたいし…無益な戦いを避けることが出来るなら…今のところは彼女をジャルジィのところに行かせてもいいかもしれない
そう思ったあたしは、ペロルに戦いの意志がないことを伝えると、ナナを背負って姉さまがいるテントに向かって走り出したのだった…
今回の戦いを通して、少しだけ自分に自信が…持てた気がするなぁ…
しかし、面白い人といえば、面白い人だったな彼女たちは…
あたしが国を作るときは、国民も皆…そんな風に笑って過ごせる国を作りたいって、あたしは不意に、走りながらそう思ったのだった…
12/09/11 21:48更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
どうも!!

こ、今回は二人のバトル(?)を入れたので、少し文字数が…
ですが、ガデッド勢力の方々も、同士討ちや勝利…はたまた敗北を繰り返し、数が減ってきています!!
メガロス帝国との戦いまで…あと4人ですよ!!

し、しかし…自分でキャラの能力などを決めておいてあれですが…結構凄い能力を持っている娘が多い気が…
とにかく、次回ものんびりと見ていただけるとうれしいです!!
ありがとうございましたーー!!

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