連載小説
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41 干しラーの同志との出会い
…朝を迎えて、俺がみんながいた場所に行くと、みんなはすでに起きていたんだよ。
いやぁ…複雑な心境だぜ…まったく…
みんなが寝ている間に俺がどれだけ酷い目に会ったかを考えると、納得いかないのは…なぜだろうな?

俺はみんなに夜あった出来事を忠実に報告したんだが…誰も信じてくれた様子はないのが凄く引っかかる…
それでもみんなは一応俺のことを信用してくれたようで、依頼人に依頼が終わったことを告げると俺たちは宿に戻ってきたんだ!!
今、俺のテンションはハイテンションってやつさ!!
きっと今日は依頼を受ける必要は無いから、楽に出来るんだろ!?

俺がそう思って宿の扉を開けようとしたときだった…
「あ!!メリィさん…外出してたんですか…これ、今日の依頼です」
…紅緒!!どうしてこのタイミングで来るんだ!?それに…
なんでメリィには丁寧に話しかけるんだ!?俺なんか呼び捨てにされているのに!!
こ、これが…扱いの差って奴なのか…?
世の中って、結構厳しいんだなぁ…納得いかないけど…

俺は凄く小さなことにこだわっていたが、良く考えると俺の考えていることはさほど重要では無いってことに気がついたんだ!!
今、一番大事なことは仕事があるのか無いのかだよ!!
もしもあったとしたら…俺は愛しの宿に戻ることも出来ずに依頼に行かなければ行けない気が…
いや、ここに断言しよう!!俺は依頼に行くことになるってなぁ!!

メリィは紅緒から依頼書を受け取ると、じっくりと読み始めたわけだな…?
いや、いいよ別にそこまで真剣に読まなくても!!
むしろ、読まないで…その依頼書を破って捨ててくれ!!
俺は本気でそう願い…オーラをメリィに送っていたわけだ…
届けぇ!!この思い!!

「……面白そうな依頼じゃない…いいわ、みんなで受けましょう…場所もこの染木町からそこまで遠いって事じゃないみたいだし…」
…お、俺の思いは届かなかったかぁ…
俺は凄く落ち込んだが…ずっと落ち込んでばかりもいられないって事で、俺はメリィから依頼書を受け取ったんだぜ…
それにしても…俺の思いが…って、え?もういいって…?
そ、そこまで言わなくても…なぁ?
俺は非常に自分がちっぽけな存在のような気がしたので、その気を紛らわすために依頼書に目を通してみたんだ。

〜〜〜依頼〜〜〜
依頼者:セイーダ・ヴィレッジアップ


内容:護衛
今回、今年も春が来たので、祭りの会場まで護衛してくれる人待ってます!
できれば強くて、役に立つ人材にお願いしますね。
大人数で来ていただいたら、依頼の成功率は上がるし、俺の商品の安全も確保できますしね?
で、万が一商品が盗まれたら護衛失敗って事で
、商品代は払ってくださいねー?
だって…護衛任務に失敗したんですから…ねぇ〜?
まぁ、とりあえずお願いします!!
祭り会場で掘り出し物も見つけることができるかも知れませんし…ねぇ?

報酬:ここはやっぱり交渉で決めるべきでしょう?

備考:交渉に失敗しても…金額は変更しませんからね?

〜〜〜〜〜〜〜〜

一つ…俺が第一印象で思ったことだけど…
この依頼を出した奴…性格がひねくれてるよなぁ…
しかも、なんか嫌な表現つかっているしなぁ…
はっきりというと、俺は苦手なタイプの人種かも知れないぜ…?
俺は今回の依頼は最大限注意しながら受けることをここに決めたのだった…

で、依頼人がいるっていう場所までみんなと一緒に来たわけだが…
ま、まさか…あそこにいる夫婦じゃないだろうな?
でも…荷物持ってるぞ…?
俺はしばらくの間、頭の中で討論を繰り返し、その結果あることに気がついたんだ!!
あの人が100%確実に依頼人だってことになぁ!!
え?決定打…?それは当然、メリィが何の疑いも無くその人たちの方に向かったから…だよなぁ…やっぱり…
ま、また夫婦かよ…お、俺、夫婦とかカップルなどの方々に会うと嫉妬してしまうってこれまでにも何度も言ってきているのに…なぁ?

などと思いながらも、俺もその人たちのところにいったわけだぜ…
「…ん?あんたらが今回の依頼人?」
「…そうですが、セイーダさんですか?」
「あぁ!こっちが妻のパンナコッタって言うんだ。今日はよろしく」
「今日は…よろしくお願いします〜!」
……早速夫婦間の仲がいいって事を自慢してこなくていいから!!
なんて思ってしまう俺は確かにそこにいた…
だ、だめだ…今日は眠ってないから余計に強くそう感じてしまうぜ…

…で、早速護衛任務が始まったわけだな?
まぁ、ここまでにも結構話があったりしたんだけど…
夫婦間のラブラブな感じが描写されている話も結構あって…
悔しいからスキップさせてもらおう!!
え?勝手なことをするなって言いたいのかい?
悔しいからいいんだよ!!
もはや、自分でもわけがわからないことを言っているのはわかっているが…
元からおかしいんだから別にいいじゃないか!!

で、平和な村と広場をつなぐ草原の道を俺たちはのんびりと歩いていたんだ。
護衛って言うけど…そう簡単に盗賊団的な存在が現れるか?
ありえないって俺は思うけどね?だって、世の中って広いからさ…
それにしても…毎回毎回、俺一人だけモンスターラグーンのみんなのガールズトークについていけず、孤立しているんだが…そろそろ俺も入れる話題に話が変わってくれないだろうか?
なんて本気で思っていたときだった…

「えっと…あんたデメトリオ…だっけ?」
「え?そうですけど…セイーダさん俺に何かようですか?」
「いや…あんたも俺と一緒で会話についていけていないように見えてさぁ…」
……確かにその通りだが…セイーダと話をしていると嫉妬心が沸き起こってくるって事は無いのか…?
す、凄い心配なんだが…

「デメトリオはさぁ…あの中に恋人とかいるの?」
「…いないよ?」
……いきなり聞くなぁ聞きにくいこと…
自分で言うのも虚しくなるんだからその点については出来る限り触れて欲しくなかったけど…なぁ…
なんだか、俺のテンションが下がってきたぜ…
だ、ダメだ俺!!何でここでテンションが下がっているんだよ!?
もっと熱くテンションを燃やせよ!!
もっと…熱くなれよぉ!!
よしっ!!テンション上がってきたぜ!!

「嘘付けって!!本当はいるんだろ?」
しつこいなぁ…いないって言っているだろ?
俺だって、そりゃあ恋人は欲しいけどさぁ…自分から恋人を探すのって…
なんだか違う気がするんだよなぁ…?
俺はそう思って、すぐにまたこう言い返したんだ。
「いないって言っているだろ?」
いや…この言葉以外思いつかなったからコレを使ったんだがな?

「またまたぁ…実はいるんだろ?言ってみろって?」
「いないって言っているでしょうが!!」
遂に俺は大きな声で叫んでしまったんだ…
だって、いないって言っているのにしつこいからつい…

そして流れてくるこの沈黙の空気…誰か…この空気を変えてくれぇ!!
俺がそう強く願うと、いきなり草原の中から女の子たちが飛び出してきたんだよ!!
しかも…見るからに盗賊って感じの服を着てさぁ!!
え?どんな感じかよくわからないとかは言わないでくれよ?
それにしても…今日俺が、『そう簡単に盗賊団なんて出るかよ…』って言ったのは振りだったって事なのか!?
お、俺は決して狙ったわけじゃないからな!?
自慢じゃないが…俺はこの依頼にも来たくは無かったんだ!!
そんな自分を追い込むような振りなんて自分でするかよ…?

「待て!!その荷物置いていってもらおうかぁ!!」
といいながらこの盗賊団の中では一番のリーダー格であろう女の子がこういってきたんだが…
どこからどう見ても子供っていうね?また…子供の遊びか何かだろ?
俺は女の子達の方に向き直り、思いっきりこう言い放ったんだ…

「…ふっ、子供の遊びは安全な家でやるものだよ?きっとお母さんとか心配しているから早く帰りなよ?」
「は〜い♪」
ほらな?やっぱり話し合ったら通じるんだって!!
このタイミングで心の中でガッツポーズ!!
「なんて言うと思ったかーーっ!!いまどきこんな手で帰る盗賊団がいるかっての!!」
……お、俺のガッツポーズを踏みにじるだと…?
さ、最近の子供は人の心を砕くタイミングまで完璧だというのか!?
俺はこの瞬間、また一つ大切なことを学んだのだった…

だが、俺も大人の男…ここで引き下がるのは余りにも情けなさ過ぎるって事で、ここは俺がみんなより先にこの子達を軽くあしらってあげることにしたんだ…
「仕方が無いなぁ…どれ、実力の差を見せてやるって!!かかって来い!!」
そう言って腰から干し肉バスターソードを取り出すと、攻撃の構えを取ったわけだ…この絶対的な防御の壁を砕き、俺に攻撃を加えることが出来たら…
大したものさ!!

「……あんた、私達をなめてるでしょ?香織!!」
リーダー格のその子がそういうと、後ろの方で大きな本を読んでいためがねのネコマタの女の子がチラッとこっちを見てきたんだ…
あの子が香織というのだろうが…あの子は一体どんな攻撃を仕掛けてくるんだ!?
俺はずっと身構えていたが、攻撃を仕掛けてくる様子はない…
何なんだ一体?

しばらくそのまま時間が流れたが、ようやく香織が口を開いたんだ。
え?この間に攻撃をしておけばよかったじゃないかって?
……こ、攻撃をしておけばよかった…
俺は今、その事実に気がつき物凄く落ち込んでいたのだった…
「清香…サーチした結果、あの男の武器は真ん中に右回転のストレートを20度回転させながら打ち込むと砕けて、本体まで攻撃が届くよ?」
ま、まさか…この時間の間ずっと俺のことをサーチしていたと言うのか!?

そして、俺が動揺している間に清香が俺の方に勢いをつけて走ってきたんだよ!
「ねっこぱぁーんち!!」
「くっ…耐え切れるか!?」
俺はそういった次の瞬間、無様にも後ろの方に殴り飛ばされていた…
ま、まさか…俺の干し肉バスターソードを砕くというのか…!?
そして、俺をこの勢いで吹き飛ばす…だと!?
俺は本音、驚愕していたんだ…
万が一干し肉と同じ防御力を誇るこの最強の干し肉バスターソードを砕くことが出来たとしても…その後威力を殺さないまま俺を…
だ、ダメだ…勝てない…

ここに、一人の大人の負けが確定したのだった…
「この干し肉の硬度と弾力は凄かったわ…」
…え?い、今、清香が俺の干し肉を…褒めた?
ま、まさか!!
「君は…ほ、干しラーなのか!?」
「…当然!!」
そう言って、清香は俺に手を指し伸ばしてくる…俺はその手を思いっきり握り返したのだった…
この瞬間、敵だった彼女と俺の中で若干変化があったのはいうまでも無いが、俺は彼女のことをモンスターラグーンのほかのメンバーと同じくらいいい人物だとわかったのだった。
あ、ちなみに干しラーというのはマヨラー的な感じで、干し肉を常に持ち歩く方々のことを指す言葉さ!!
この世界を探しても稀に見るほどの珍しさは…感動すら覚えるね!うん…

「干しラーの同士がいる人の馬車を襲うわけには行かないわね…綾乃!撤退準備をお願い!!」
清香はそういうと、じっと俺の方に向き合って来たんだ…
そして、無言で干し肉を渡してきたんだよ!!
こ、この干し肉は標高3000m以上の場所で燻製作業を行わなければ絶対に作ることの出来ない干し肉じゃないか!!
はっきり言うと、俺はこの物凄いレアな干し肉を受け取るとき、本気で手が震えてしまったぜ…
仕方が無い…俺の人生をかけても死守したかったこの干し肉を…あげよう!!
俺は…究極の決断を下したのさ!!

「俺は…この干し肉をあげるよ!!お礼って奴さ!!遠慮しないでくれ!」
俺が丁重に舗装していた布をそっと渡すと、清香は驚きの表情を隠すことが出来ないでいたようだった…
それは驚くことなんかじゃない…そう、この干し肉は!!
「こ、この干し肉は…!?究極干し肉メーカー【消しゴムキャンディー】の1258年代もの!?い、今では干しラーの中で金貨29枚に相当する…最高価格で取引されている干し肉…!?ほんのりと外側にまぶされた黒胡椒は食べた者に食の大切さを伝え、パリッと音のする食感は時の流れを知ることが出来るという…ラストスモーキングじゃ!?」
ふっ…さすがは俺が認めた干しラーだな…一句すら間違えずに俺の干し肉を見抜くとは…
この干し肉は俺の子供の代まで語り継いでいきたかったが……俺よりもこいつの方が…干し肉の意思を継いでくれるって…
俺はそう信じているからさ!!
そして、俺とこの盗賊団のリーダーの清香と心がつながったのだった…

…そして、俺たちはのんびりと歩いて、祭りがある会場に着いたんだよ!
……いやぁ、楽な依頼だったぜ…?今度の依頼もコレくらい楽だったらいいんだけどなぁ…なんて思いながら、みんなのところに戻っていったのだった…
「きーちゃん!!あちこちからおいしそうな匂いが漂って来てるよ!」
「あははー!!甘い匂いがするねー♪」
祭りと聞くと、子供達はなんだかうれしそうにしているなぁ…
といっても、俺はそこで和んだりは決してしなかったんだ!!
油断したらルタの奴が…俺に攻撃をしてくるからなぁ…!!
そう…俺は学んだんだよ!!凄いだろう!?

「…あぁ、ありがとうございます…ではコレで…」
「…待ちなさい、報酬は?」
「…(ちっ…)あぁ、すみません!!つい…では、銅貨30枚ほどでどうですか?」
「えぇっ!?普通は護衛任務は銀貨3枚が妥当じゃなかったですか!?」
「(い、言うなよ…ごまかせるかと思ったのに…)さ、最近は金の動きが悪くてさ…」

子供たちとは打って変わり、メリィたちは大人の汚い部分…金の交渉をしているところだった…
で、そんな中で俺は一人、みんなから離れてのんびりしていたんだ…
といっても、神社の前の石段に一人ぽつんと座っているだけなんだけどな?
この状況は外から見ると、待ち合わせをしている青年のように見えなくも無いが、別に誰も待っていないから勘違いしないでくれよ?

そして俺が一人←(コレ重要)で座っていると、隣にセムちゃんが座ったんだ…セムちゃんは他の子供メンバーのように食べ物を食べに行かないのかな…?
などと思いながら横目で見ている俺…どうでもいいが、のどが渇いたぜ…
俺は、腰にセットしていたボトルの中に入った水を飲んで、ある程度飲んだ後セムちゃんにも一応渡してみたんだ…
「これ…きっとセムちゃんも喉は渇いていると思うし…あっ!!飲み口拭いたほうがいいかな?」
危ない危ない…俺は別に気にしないけどセムちゃんは気にするかも知れないからな…
何せ、良家の家の四女だからなぁ…
俺はそう思って綺麗なハンカチで飲み口を拭こうとしたが…

「あっ…別にいいですよ?私、それは気にしないんで…」
そうかぁ……あと、どうでもいいことなんだけど、セムちゃんはなんだか旅に出てよく話すようになった…って、そんな気がするんだ。
まぁ、俺の意見だから本当にどうでもいいんだけどな?
それにしても…飲み口をハンカチで拭かなくても別に構わないってのは以外だったなぁ…
俺が子供の頃の良家の方々のしつけと、最近の良家のしつけは違うのかな?

俺がそう思いながら、セムちゃんがボトルの水を飲むのを見ていたときだ…
俺たちのすぐ真上から声が聞こえてきて、俺たちはそっとそっちを見たわけだな?
そこには、中々に融通の利かない性格のような感じの龍の女性が立っていたんだ…
この神社の巫女さんなのかな?まぁ、俺には関係の無いことなんだけどな?
そう思って俺がその場を去ろうとしたときだった…

「みなさん!!集まってください!!」
凜とした声が辺りに響き、準備していた人たちやモンスターラグーンのメンバー達も集まってきたんだ…
ここで去るのはなんだか、空気が読めていない男って感じがして仕方がないじゃないか!ただでさえ、お前はいろいろ鈍感すぎるっていろいろな奴に言われるのに、更に空気が読めないって事になったら…無様だろ?
そしてみんなが集まったとき、その人は相変わらず凜とした声で話し始めたんだ…
ど、どうでもいいけど良く響くいい声してるよなぁ…
変なところで感心してしまったが…気にしないでくれよ?

「今回も皆さん、春祭りに参加していただきありがとうございます!!私が今回の祭りの責任者をさせていただきます、時雨神社の代表の巫女…水仙 正邪と申します…みなさま、よろしくお願いいたします!今回も無事、春を迎えることが出来、喜ぶと共に、今年一年も楽しく元気に過ごせるように…今日は楽しみましょう!!」
そういうと、正邪さんはまた、神社の中に戻っていったんだ…

ま、祭りかぁ…回ってみるのもいいけど、まずはメリィたちに聞いてみないとなぁ…
俺はそう決断し、報酬の交渉が終わったメリィのところに歩いていったんだ。
…セイーダがメリィの近くで悔しそうに地面を叩いているって事は…多分交渉に負けたんだろうなぁ…
などと思ったりもしてしまったから…不思議なものだぜ…
さて、上手く祭りを楽しめるのか、それともすぐに帰ることになるのか…
まぁ、どっちでも俺はいいんだけどね…?
はたして…どっちになるのか…それは次回までのお楽しみさ!!
…だ、大体見当がつくとかは言わないでくれよ?
12/04/27 22:52更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
ど、どうも!!

そこまでいいアイデアが出ずに今回、折角おくっていただいたキャラを使い捨てのように使ってしまいました…
本当に申し訳ありません…
次からは絶対にこんな事は無いようにしないと…

でも、こんな使われ方をしても、構わないなど思ってくださったら…
うれしいです…
まぁ…なるべくないようには努力しますので…許してください。
これからも見ていただけるとうれしいです!!
ありがとうございましたー!!

っと、危ない危ない…
次回、今までに出会った店全てにデメトリオが訪れます!!
そこで、読者の皆様に商品を少々考えていただきたく…
気が向きましたら、【どの店で出すのか】【効果はどうか】などを感想欄で書いていただけるとたすかります!!
本当に気が向いたらでいいので、考えてやってください!!
ありがとうございましたーー!!

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