31 森のパンツと俺の受難
毎朝、変な夢を見るとか…さすがにもうしつこいだろうから俺は言わないぜ?
俺は寝起きざま、そう思いながらロビーに歩いて行った訳だが、すでにお客様のミーシャは起きていた…
え!?起きているのか!?まだ朝の5時なのに…
そう…俺の目の前には朝の5時なのにも関わらずすでに起きており、弓矢の手入れをしているミーシャの姿があったんだ。
は、早いんだな起きるの…
まぁ、朝起きたらあいさつするのが礼儀って物だ…まだ眠いけど、挨拶するとしようかな。
などと思いながら、俺がミーシャに近づくと…
「何か用?今忙しいんだけど…?」
「え…あ…おはようございます」
……台詞が少々…いや、だいぶきつくないか!?
寝起きだから言動がきついのか…それとも、俺がただ単に嫌いなのか…どっちなんだ!?
俺が反応に困り、無言になるとミーシャは少しだけイラついたような顔で俺の方を向いたんだ…
な、何であんなに不機嫌そうな表情で俺を見るんだ!?何か俺…悪いことでもしたのか…?
「……ねえ、朝食はまだなわけ?結構待ってるんだけど…」
「へ?あ…はい!!直ちに作ります!!」
なんだ…飯が食べたかっただけかよ…
俺はてっきり俺のこの何も考えていないような顔がミーシャのイラつきの部分に触れたのかと…
あ、イラつきの部分って何だよとか突っ込まないでくれよ?
それからしばらくして…ようやくモンスターラグーンのみんなも目を覚まし、俺はミーシャや他のメンバー達のためにシチューを作ったのだった…
どうでもいいことなんだが…肩を昨日木材を運んでいるときに痛めたのか…
今、凄く痛いんだよ……
そしてみんながシチューを食べ終わり、おいしかったとかすら言わずに各自、自分自身のことをやり始めたので、俺が食堂で皿を洗い始めたときだった…
「……相変わらず、のんきな男だな…あんたは」
「…え!?だ、誰だ!?」
いきなり変な声が聞こえてきただと…?
だ、誰か俺に気配を悟らせることも無く食堂の台所に侵入したというのか!?
俺が声がするほうを向くと、そこにいたのは…俺?
えっと…俺の目が少々おかしくなったのだろうか…?
俺は自分の目を疑ったわけだ…なぜって?
俺…のような、でも少し違うような…良くわからない人物がそこにたっていたんだ。
「え…お、お前…俺?」
「……僕をあんたのようなカスと一緒にして欲しくないな…」
そ、そんなに悪く言わなくてもいいじゃないか…
お、俺だって好きでこの立ち位置にいるというわけではないし…
……でも、このまま好き放題言われるのも気に入らない…
俺はこの部分で変なプライドを出したんだ。
「お…俺がカスだったらお前も…カスだぁーーーー!!」
………あれ?あいつ、どこに行きやがった!?
凄くスローペースで振り向いた俺の目の前には、さっきまで俺のことをクールに馬鹿にしてきた、俺に良く似たやつはすでに姿が無かったわけで…
俺は一人、食堂でただ一人叫んでいる危ない人になっていたわけだな。
そして、多分俺の見間違いだったのだろう出来事が終わった後、俺がロビーに行くとミーシャの姿はすでに無かったわけだが…
どこに行ったんだろう?まさか…もう旅に行ったのかなぁ…
少しくらい俺に話をつけてから行ってもいいと思うんだけどなぁ…
それから2時間くらいたって、他のラグーンメンバーのほとんどは船を造る素材を集めるために宿屋から出発したし…俺も残っているメンバーと一緒にまた奉行所にでも行って依頼でも受けて船の素材を集めるとするかな。
そう思って俺は部屋を見回すと…今回は前回のメンバーよりも頼りになりそうだな…
部屋に残っていたのはクレスタとセムちゃん…後はナナとメアリーの4人か…
いやぁ、今回は精神的にも楽だな…後は前回みたいに肉体労働が無ければ申し分ないんだけどなぁ…
いや…正確に言うと、前回と同じようにリバティーもいたけど…どうせあいつは働きに行かないだろうから数に入れなくてもいいだろうしな…
俺は残った4人を引き連れて…というか、4人の後をのんびりと追いかけているだけだが…ま、そんな事はいいじゃないか。
さて…今回は肉体労働じゃなければいいけどなぁ…本当に…
などと思いながらも、俺は奉行所に着くとすぐにクレスタの義姉さんやセムちゃんに全て任せて、近くにあった椅子の上で寝そべり、ぐうたらしていた。
「紅緒!!また仕事中にお酒飲んで…」
「そんなこと言っても蒼葉さん…飲まなきゃ仕事なんてやってられませんよ〜?もっと気楽に行きましょうって!」
「本当は私だって飲みたいのよ…」
ん…あれは昨日ここでドラグーンっていう男ともめていた人か…?
よく見るなぁ…ここで働いているのかな…?いや…肌が赤いとかは多分アカオニっていう種類だから仕方が無いことなんだろうけど…
動きが妙にふらついてないか?まさか昼間から…酔っているのか?
あの親密な様子から判断するに…あの二人はきっと特別な関係に違いない!
そう思い込んでから、俺はまた適当な姿勢で横になった。
「先輩!!また辻斬り事件が起きました!!」
「おっと…蒼葉さん…また事件ですよ?」
「…最近多いわねぇ、じゃあ行きましょうか…」
辻斬り…?なんだろうそれは…?
ま、そんなに危険な行為じゃないんだろうし、気にしないで置こうっと…
俺はその後もひたすらにぐーたらと椅子の上で寝そべり続け、最終的にネコマタの少女に泣かれるまで一人でその椅子を占領していたわけだな。
いやはや…まさか耳元でニャーニャー泣かれるなんて思わないだろ普通は?
他の人が俺をひややかな目線で見るしさ…本音結構堪えたよ…
俺が椅子の場所をあのネコマタの少女に取られてから一人、そこらへんをうろうろしているとクレスタの義姉さんが書類を持って俺の方に歩いてきた…
辺りの人が、昼間にグールが歩いているのを見て驚いており、ゾーネの発明品のおかげでそんな事気にしなくてもいいクレスタ姐さんは普通に歩いてきている…
さすがはゾーネの発明品だな…と、感心するべきか…?
でも、あいつ役にたつかわからないものも結構作るからなぁ…五分五分って感じかな?
で…クレスタ姐さんが選んだ依頼はどんな依頼だろう?
俺はクレスタ姐さんから依頼の書かれた紙を受け取ると内容を確認した。
〜〜〜依頼〜〜〜
依頼者:梅時雨 小町 (うめしぐれ こまち)
種族:稲荷
内容:木材提供
『今回お願いしたいことは、木材の提供です。今回、実家の壁を補修するのに急遽木材が必要になりました。
木材は自分達の土地で取ればいいのですが、私たちで木材を取るのは少々きついものがありますので、
だれか取りに行ってくれませんか?目的地の土地は私のところに来ていただけるとお連れいたしますので、
お願いします。』
報酬:銀貨70枚 余分に取れた木材など
備考:沢山とってあまった木材は提供します。ですが、あまり提供できないと思いますのでご了承ください。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
へぇ…また木材か…まぁ、昨日ほどの肉体労働じゃないだけよしとするかな…
で、俺たちは依頼書の裏に書かれた場所に行ってみたわけだが…
俺たちの目の前には物凄く大きな家が一つ立っていたわけだぜ。
なるほど…コレだけ大きな家に住んでいるということは、当然持っている土地も大きく、その中から木材を切って運ぶのはめんどくさい…そういうことか…
で…来たのは良いけどどうやって依頼者を呼べばいいんだ?
門のところに呼び鈴がついていないんだが…
俺たちは少しの間、依頼者の家の前でうろうろしていたんだが…
若干融通が聞かない雰囲気の見回りの男に捕まって屋敷に無事…入ることが出来たぜ!
……まぁ、両手縛られているんですけどね…
「おぬしら…何か用があるようじゃが…なんのようじゃ?」
今、俺たちの目の前にいるこの狐耳の女性…多分この人が依頼者の小町さんでは無いかと俺は思うんだけど…みんなはどう思う?
……ってか、この手首部分を縛ってある縄…荒いなぁ…しかし…
おっと…早くこの状態を何とかしてもらわないとな…
「あの…俺たち、木を切ってくれって依頼書を受け取って…」
「なんと…あの依頼書を…?それはすまないことをしたのぅ…では、伐採地に向かうための準備をするのでしばし…そこで待っておれ」
えぇー…この縄くらい解いていって欲しかったんだけどなぁ…
などと思っているのはどうやら俺だけのようだったので、俺はそれ以上小言を言うのをやめたわけだ。
俺は伐採地に向かうまでの道のりの間、目隠しをされていた…
しかも、妙に座っている場所がガタガタ動くから気になって仕方が無いんだよ!しかも…だんだん気持ちが悪くなってきたぜ…
はたして…俺をここまで行くまでに苦しめる伐採地とはどのような場所なのか!?
「ついたから目隠しをとってもよいぞ?」
来たか……もう少しこのガタガタ音に悩まされると本気で思っていたんだが…
中々どうして…俺の考えはこう毎回外れるんだろうな…?
そう思いながら俺はゆっくりと目隠しを取って辺りを確認したわけだが…
おぉ!!これは…
ただの森じゃねぇか!!
そう、俺たちが連れてこられたのは本当にただの森…辺りに特別珍しい建物があるわけでもなければ、珍しい動物がいるわけでも、ましてや伐採しすぎて木がなくなってきているということもない…本当にただの森だったわけだな?
で…このような何も特徴が無い森で木を切って来いと…そういうことか?
「おぬしらは5人いるから…5本ほど木を持ってきて欲しいのじゃ!その後、木をいくら切ろうともおぬしらの自由じゃから、好きなだけ切った後持って帰るが良かろう?」
「あの…何か運びやすくなるものありますか?」
……さすがはセムちゃん!!俺、そのことに気がつかなかったぜ…
今回は常識人のセムちゃんもいるし…頼りになるクレスタ姐さんもいるし…ナナもメアリーも真面目だし…凄く楽そうだぜ!!
俺たちは小町さんから藁を大量に積んだと思われる古びた車輪のついているやつを受け取るとのんびりと森の中に歩いて行った…
え…?入り口付近の木を切ればよかったんじゃとか思ったかい?
いやぁ…そんなに早く終わらしても後からやることないし…少しは森の中に行って久しぶりに自然界の空気を全身に取り込もうと思ってね?
森の中を適当にうろついて森林浴に適した場所を見つけることに成功した俺…
他のみんなもなんだかんだでまだ焦って作業している傾向は見えないし…
まぁ、作業は昼過ぎ辺りからでもいいだろ…ということで、俺は草のじゅうたんに飛び込んだのだった…
自然かぁ…なかなかに良いものだと思うぜ俺はな?
「デメトリオは木を取る作業…いつくらいに始めるつもりなんだ?」
クレスタ姐さんが口にゾーネの発明品…見方によってはたばこにしか見えない物を咥えながら俺に話しかけてきた。
「えっと…まぁ、昼飯後位にやろうかなって思ってます」
「飯…飯ねぇ…じゃあ、俺らは先にもう終わらせとくよ。ここで待っててくれ?」
「了解っす〜!」
俺はクレスタ姐さんが木を切るための道具を持ってどこかに行くのを確認すると、俺はその場に座り込んで近くにあった草をかき集め寒さ対策をした後、眠りについた。
草むら…ふわふわだな…この技法を俺の宿屋に取り入れれば…へ…へへっ…
しばらく寝て俺が起きたとき…まだクレスタ姐さんたちは俺の近くに戻ってきていなかったわけだ…
どこまで遠くに行ったんだろうなぁ…腹減ったぜ…
俺はそう思いながら乾パンのふたを開けた。
中から香ばしい匂いが…いやぁ、いいものだな乾パン…
味はそこまで良くないけど…
そう思いながら俺が乾パンに手を伸ばすと…
………!?あれ…?庭師の人かな…?
でも、こんな森の中に…庭師だと…?
俺が乾パンを食べる手を休め、歩いてきた庭師風の服装を着た女の人を見ていると…向こうもこっちに気がついたようだ…
でもな、この敵対心むき出しな雰囲気…どうすればいいんだ俺は…?
なぜ俺は敵対心を向けられているのかは判らないんだが…?
「ま…待ってくれ!!な、何か用なのか!?」
「………」
む、無言のプレッシャー…だと?せめて俺にその敵意を向けられる理由を教えて欲しいんだけど…
「お…俺が何かしたのかよ!!」
俺がそう訴えると、目の前の庭師は俺の手元を指差した…
ん?手元…草が腕に巻きついているだけじゃないか…ま、まさか、この草が原因だというのか!?
そう思って困惑している俺に、彼女はさらに俺を困惑させる台詞を言ってきた。
「………それ、私の下着……」
……えっと、これが?
俺はさっきの台詞を疑い、持っている草をよーく見てみたんだが…
!!こ、これは…!?
俺が草だと思っていた部分を払うと、中から黒い布地のパンツが顔を出したわけだな…
「えぇ…!?ってことは、今あの子はノーパン…」
「……殺…」
うわっと!!ど、どこからはさみ飛ばしてきたんだ!?
俺は飛んできたはさみを運よくかわすことが出来た…き、奇跡だ…
もうこうなったら俺が取れる手段は一つしかない…行くぜ!!
「これが…デメトリオスタイルだ!」
逃げる!!コレが一番効率的かつ有効的方法だ!
俺はちゃんと彼女の下着を地面に置いてから逃げた!!
下着に書いてあった名前は桔梗…本当に、桔梗さんにはすまなかったと思っている!!
でも…もう俺を追いかける意味はないし…大丈夫だろ…
走るのも本音疲れてきたし、もう十分だと判断した俺は、ゆっくりとペースを落としていったわけだな。
さぁて…後ろは安全…じゃねぇ!!
気を抜いて速度を落とした状態で後ろを向くと、普通に桔梗さんはこっちに走ってきていた…しかも、両手に片刃の剣を二つももってな!!
こ…これは危険だぜ…ど、どうすればいい…
俺が本気で困惑していると、なにやら草がガザガザを動く音がした訳だ…
今度は何だ!?一体これ以上俺に何が降りかかるというんだ!?
その場に一瞬だが沈黙という凍りついた空気が流れていく…
そしてその後、凄く癒し的な表情の大百足の女性が俺の目の前にあらわれたんだ!
「桔梗さ〜ん!!ここで何をしているんです?」
「………あいつ…私のパンツ…盗った」
「えぇっ!?それは許せません!!女の敵です!」
「……牡丹ちゃん…手伝ってくれる?」
「当然です!」
えぇーー!?俺、ちゃんとパンツ返したって!!
まさか…また逃げるのか…!?うはぁ…肺が破裂しそうだぜ全く…
そう思うと、俺はまた即座に逃げたのだが…
後ろから物凄い勢いで飛んでくるこの弓矢や剣…はたまた昔親父に教えてもらった武器のクナイってやつやら手裏剣って奴も…とにかくいろいろ飛んでくるんだよ!!
いや…当たったらやばいって!!本気でやばい!
くそ…この手段は使いたくなかったんだが…こうなったら奥の手だ!!
さぁ…今から画面上にいる君!!君に俺の運命を託したぜ!!
俺が心で叫んだら…その通りにボタンを入力してくれ!!
いや…本気でたのんだよ?
さて…じゃあ俺は必死に走るとするか…
うおおぉぉぉぉぉ!!○だ!!
俺は画面上にいるみんなを信じて右に動いた。
え?俺は○以外を押したって?
……いいんだ!!君は○を押した!押したんだよ!!
とにかく、俺が右に動いた後、俺の真横に大量の昆布が…
な…何と恐ろしい…
次は……LRLRLR○××だ!!
頼む…成功してくれ!!
願いながら俺は走り続けたわけだが…
「うおっ!?」
俺はその場で無様に倒れこんだんだよ…
ま、まさかボタンを押し間違えたのか…?やばいぜ…距離が縮まってしまった…
だが、俺はそこで悔やんでいるほどネガティブな男ではない!!と思う。
多分…LRを押すところで一回多く押してしまったんだろ?俺にはわかる!
そして逃げ続けると…なんだ!?あの木は!?
俺の目の前には、まるで俺の行く手を阻むように大きな木が置かれていたわけだ…
や…やばい!!い、行き止まりじゃないか!!
だが…無情にも後ろから桔梗さんたちはこっちに迫ってくるし…
さ、最後のお願いだ!!ボタンを入力して俺を助けてくれ!
俺がこう心で訴えていると、向こうから大量のナイフが!!
……1秒以内に○L□RR×△R○L×と入力を…
無理ですよねーやっぱり!!俺も初めから無茶を押し付けていると思っていたよ…本当にすまなかった…
俺は大量のナイフをよけることが出来ず、きれいに大きな木の下で貼り付けにされていた。
……まさか、こんなところにこんな落とし穴があろうとは…
俺は今…クレスタ姐さんと離れたことを悔やんでいた…
ぱ…パンツ一枚でこんなに酷い目に会うなんて…
「……捕らえた…」
「おぉ〜…さすが桔梗さんです!」
「や…やめろって!な?こんな事をしても何の意味も無いよ!?もっと平和的な解決を…」
「…牡丹…アレをお願い」
「はぁい♪毒液ですね〜?」
な…!?ど、どうしてこうなった!?
ど、毒!?そ、そんな物騒なものをここで持ち出すのはどうかと…
「最後に…言いたいことがあるんです?」
キターー!!このチャンスを俺はさっきからずっと待っていた!!
「あります!!俺は桔梗さんと会ったときにパンツをちゃんと桔梗さんに返してる!!それに…俺はあの時、偶然あの場にいただけなんだよ!!偶然だけどパンツを触ったこととノーパン発言したことは謝ります…これで許してくれませんか?」
ピンチになると口が上手くなる俺がそこにいた…
「どうします…桔梗さん?」
「……仕方がない……去る」
……こうして、俺の心を本気でひやひやさせたイベントは終わりを告げたのだった…
で…さっきの場所に戻るとクレスタ姐さんや他のみんなが怒ったような表情で待っていたわけだよ…
「あ!?デメトリオ、お前…ここで待ってろっていったろ!?」
「クレスタさん…す、すまねぇ…」
俺が心から悔やんでいるのを悟ってくれたのか…これ以上はクレスタ姐さんは俺を厳しく追及しなかった…
いやぁ…良い人だ…
で…クレスタ姐さん達が遅かったのは理由があって…もう依頼者に木を届けてきたらしいんだ…俺の分もね?
で…報酬も受け取ったし帰るだけっていう…
え?何これ…今回って…パンツ事件を起こすためだけの依頼だったのか!?
俺は内心煮え切らないままに宿屋に戻っていった…
でも…逃げ続けたけどちゃんと銀貨70枚くれたし…
なんか、30枚くらいルタのやつに盗られたけど…今日は走りすぎて足痛いし…
「デメトリオ…何か疲れているようね?」
「あ…メリィ…わかる?今日散々なことがあってさぁ…」
「へぇ…興味ないわ。で、材料は良い調子で集まってる?」
……興味ないって…酷い…
「あ…木材だけなら何とか…」
…ま、ほとんど俺、動いてないけどな?
「そう…じゃあ、そろそろ別のものも集め始める必要があるわね…」
「はぁ…あ、今日、宿屋休みでいいか?疲れてて…」
俺はちゃんとこのタイミングで宿屋を休むと言っておいたぜ…
明日、筋肉痛になっていなければいいけどなぁ…
「別に…いいわよ?あ、奉行所に話を通してこっちの宿に依頼書届けてもらえるようになったから…明日からは皆、ここで待機ね?お休み」
メリィはそういうとすぐに自分の部屋に戻っていき、俺は痛む足を引きずりながら自分の部屋に戻っていった…
今日は…変な夢を見なければいいけど…
そうして青年は眠りについた…
その頃、デメトリオの宿屋の地下で……
「むぅ…この機械は少々気にいらんのぅ…もうちょっと改良を加えんと…そうじゃ!もっと淫らな夢を見れるようにプログラムしておけば…効率が良いのぉ…」
相変わらず、青年が気付かないままにゾーネは発明品を造っているのでした。
俺は寝起きざま、そう思いながらロビーに歩いて行った訳だが、すでにお客様のミーシャは起きていた…
え!?起きているのか!?まだ朝の5時なのに…
そう…俺の目の前には朝の5時なのにも関わらずすでに起きており、弓矢の手入れをしているミーシャの姿があったんだ。
は、早いんだな起きるの…
まぁ、朝起きたらあいさつするのが礼儀って物だ…まだ眠いけど、挨拶するとしようかな。
などと思いながら、俺がミーシャに近づくと…
「何か用?今忙しいんだけど…?」
「え…あ…おはようございます」
……台詞が少々…いや、だいぶきつくないか!?
寝起きだから言動がきついのか…それとも、俺がただ単に嫌いなのか…どっちなんだ!?
俺が反応に困り、無言になるとミーシャは少しだけイラついたような顔で俺の方を向いたんだ…
な、何であんなに不機嫌そうな表情で俺を見るんだ!?何か俺…悪いことでもしたのか…?
「……ねえ、朝食はまだなわけ?結構待ってるんだけど…」
「へ?あ…はい!!直ちに作ります!!」
なんだ…飯が食べたかっただけかよ…
俺はてっきり俺のこの何も考えていないような顔がミーシャのイラつきの部分に触れたのかと…
あ、イラつきの部分って何だよとか突っ込まないでくれよ?
それからしばらくして…ようやくモンスターラグーンのみんなも目を覚まし、俺はミーシャや他のメンバー達のためにシチューを作ったのだった…
どうでもいいことなんだが…肩を昨日木材を運んでいるときに痛めたのか…
今、凄く痛いんだよ……
そしてみんながシチューを食べ終わり、おいしかったとかすら言わずに各自、自分自身のことをやり始めたので、俺が食堂で皿を洗い始めたときだった…
「……相変わらず、のんきな男だな…あんたは」
「…え!?だ、誰だ!?」
いきなり変な声が聞こえてきただと…?
だ、誰か俺に気配を悟らせることも無く食堂の台所に侵入したというのか!?
俺が声がするほうを向くと、そこにいたのは…俺?
えっと…俺の目が少々おかしくなったのだろうか…?
俺は自分の目を疑ったわけだ…なぜって?
俺…のような、でも少し違うような…良くわからない人物がそこにたっていたんだ。
「え…お、お前…俺?」
「……僕をあんたのようなカスと一緒にして欲しくないな…」
そ、そんなに悪く言わなくてもいいじゃないか…
お、俺だって好きでこの立ち位置にいるというわけではないし…
……でも、このまま好き放題言われるのも気に入らない…
俺はこの部分で変なプライドを出したんだ。
「お…俺がカスだったらお前も…カスだぁーーーー!!」
………あれ?あいつ、どこに行きやがった!?
凄くスローペースで振り向いた俺の目の前には、さっきまで俺のことをクールに馬鹿にしてきた、俺に良く似たやつはすでに姿が無かったわけで…
俺は一人、食堂でただ一人叫んでいる危ない人になっていたわけだな。
そして、多分俺の見間違いだったのだろう出来事が終わった後、俺がロビーに行くとミーシャの姿はすでに無かったわけだが…
どこに行ったんだろう?まさか…もう旅に行ったのかなぁ…
少しくらい俺に話をつけてから行ってもいいと思うんだけどなぁ…
それから2時間くらいたって、他のラグーンメンバーのほとんどは船を造る素材を集めるために宿屋から出発したし…俺も残っているメンバーと一緒にまた奉行所にでも行って依頼でも受けて船の素材を集めるとするかな。
そう思って俺は部屋を見回すと…今回は前回のメンバーよりも頼りになりそうだな…
部屋に残っていたのはクレスタとセムちゃん…後はナナとメアリーの4人か…
いやぁ、今回は精神的にも楽だな…後は前回みたいに肉体労働が無ければ申し分ないんだけどなぁ…
いや…正確に言うと、前回と同じようにリバティーもいたけど…どうせあいつは働きに行かないだろうから数に入れなくてもいいだろうしな…
俺は残った4人を引き連れて…というか、4人の後をのんびりと追いかけているだけだが…ま、そんな事はいいじゃないか。
さて…今回は肉体労働じゃなければいいけどなぁ…本当に…
などと思いながらも、俺は奉行所に着くとすぐにクレスタの義姉さんやセムちゃんに全て任せて、近くにあった椅子の上で寝そべり、ぐうたらしていた。
「紅緒!!また仕事中にお酒飲んで…」
「そんなこと言っても蒼葉さん…飲まなきゃ仕事なんてやってられませんよ〜?もっと気楽に行きましょうって!」
「本当は私だって飲みたいのよ…」
ん…あれは昨日ここでドラグーンっていう男ともめていた人か…?
よく見るなぁ…ここで働いているのかな…?いや…肌が赤いとかは多分アカオニっていう種類だから仕方が無いことなんだろうけど…
動きが妙にふらついてないか?まさか昼間から…酔っているのか?
あの親密な様子から判断するに…あの二人はきっと特別な関係に違いない!
そう思い込んでから、俺はまた適当な姿勢で横になった。
「先輩!!また辻斬り事件が起きました!!」
「おっと…蒼葉さん…また事件ですよ?」
「…最近多いわねぇ、じゃあ行きましょうか…」
辻斬り…?なんだろうそれは…?
ま、そんなに危険な行為じゃないんだろうし、気にしないで置こうっと…
俺はその後もひたすらにぐーたらと椅子の上で寝そべり続け、最終的にネコマタの少女に泣かれるまで一人でその椅子を占領していたわけだな。
いやはや…まさか耳元でニャーニャー泣かれるなんて思わないだろ普通は?
他の人が俺をひややかな目線で見るしさ…本音結構堪えたよ…
俺が椅子の場所をあのネコマタの少女に取られてから一人、そこらへんをうろうろしているとクレスタの義姉さんが書類を持って俺の方に歩いてきた…
辺りの人が、昼間にグールが歩いているのを見て驚いており、ゾーネの発明品のおかげでそんな事気にしなくてもいいクレスタ姐さんは普通に歩いてきている…
さすがはゾーネの発明品だな…と、感心するべきか…?
でも、あいつ役にたつかわからないものも結構作るからなぁ…五分五分って感じかな?
で…クレスタ姐さんが選んだ依頼はどんな依頼だろう?
俺はクレスタ姐さんから依頼の書かれた紙を受け取ると内容を確認した。
〜〜〜依頼〜〜〜
依頼者:梅時雨 小町 (うめしぐれ こまち)
種族:稲荷
内容:木材提供
『今回お願いしたいことは、木材の提供です。今回、実家の壁を補修するのに急遽木材が必要になりました。
木材は自分達の土地で取ればいいのですが、私たちで木材を取るのは少々きついものがありますので、
だれか取りに行ってくれませんか?目的地の土地は私のところに来ていただけるとお連れいたしますので、
お願いします。』
報酬:銀貨70枚 余分に取れた木材など
備考:沢山とってあまった木材は提供します。ですが、あまり提供できないと思いますのでご了承ください。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
へぇ…また木材か…まぁ、昨日ほどの肉体労働じゃないだけよしとするかな…
で、俺たちは依頼書の裏に書かれた場所に行ってみたわけだが…
俺たちの目の前には物凄く大きな家が一つ立っていたわけだぜ。
なるほど…コレだけ大きな家に住んでいるということは、当然持っている土地も大きく、その中から木材を切って運ぶのはめんどくさい…そういうことか…
で…来たのは良いけどどうやって依頼者を呼べばいいんだ?
門のところに呼び鈴がついていないんだが…
俺たちは少しの間、依頼者の家の前でうろうろしていたんだが…
若干融通が聞かない雰囲気の見回りの男に捕まって屋敷に無事…入ることが出来たぜ!
……まぁ、両手縛られているんですけどね…
「おぬしら…何か用があるようじゃが…なんのようじゃ?」
今、俺たちの目の前にいるこの狐耳の女性…多分この人が依頼者の小町さんでは無いかと俺は思うんだけど…みんなはどう思う?
……ってか、この手首部分を縛ってある縄…荒いなぁ…しかし…
おっと…早くこの状態を何とかしてもらわないとな…
「あの…俺たち、木を切ってくれって依頼書を受け取って…」
「なんと…あの依頼書を…?それはすまないことをしたのぅ…では、伐採地に向かうための準備をするのでしばし…そこで待っておれ」
えぇー…この縄くらい解いていって欲しかったんだけどなぁ…
などと思っているのはどうやら俺だけのようだったので、俺はそれ以上小言を言うのをやめたわけだ。
俺は伐採地に向かうまでの道のりの間、目隠しをされていた…
しかも、妙に座っている場所がガタガタ動くから気になって仕方が無いんだよ!しかも…だんだん気持ちが悪くなってきたぜ…
はたして…俺をここまで行くまでに苦しめる伐採地とはどのような場所なのか!?
「ついたから目隠しをとってもよいぞ?」
来たか……もう少しこのガタガタ音に悩まされると本気で思っていたんだが…
中々どうして…俺の考えはこう毎回外れるんだろうな…?
そう思いながら俺はゆっくりと目隠しを取って辺りを確認したわけだが…
おぉ!!これは…
ただの森じゃねぇか!!
そう、俺たちが連れてこられたのは本当にただの森…辺りに特別珍しい建物があるわけでもなければ、珍しい動物がいるわけでも、ましてや伐採しすぎて木がなくなってきているということもない…本当にただの森だったわけだな?
で…このような何も特徴が無い森で木を切って来いと…そういうことか?
「おぬしらは5人いるから…5本ほど木を持ってきて欲しいのじゃ!その後、木をいくら切ろうともおぬしらの自由じゃから、好きなだけ切った後持って帰るが良かろう?」
「あの…何か運びやすくなるものありますか?」
……さすがはセムちゃん!!俺、そのことに気がつかなかったぜ…
今回は常識人のセムちゃんもいるし…頼りになるクレスタ姐さんもいるし…ナナもメアリーも真面目だし…凄く楽そうだぜ!!
俺たちは小町さんから藁を大量に積んだと思われる古びた車輪のついているやつを受け取るとのんびりと森の中に歩いて行った…
え…?入り口付近の木を切ればよかったんじゃとか思ったかい?
いやぁ…そんなに早く終わらしても後からやることないし…少しは森の中に行って久しぶりに自然界の空気を全身に取り込もうと思ってね?
森の中を適当にうろついて森林浴に適した場所を見つけることに成功した俺…
他のみんなもなんだかんだでまだ焦って作業している傾向は見えないし…
まぁ、作業は昼過ぎ辺りからでもいいだろ…ということで、俺は草のじゅうたんに飛び込んだのだった…
自然かぁ…なかなかに良いものだと思うぜ俺はな?
「デメトリオは木を取る作業…いつくらいに始めるつもりなんだ?」
クレスタ姐さんが口にゾーネの発明品…見方によってはたばこにしか見えない物を咥えながら俺に話しかけてきた。
「えっと…まぁ、昼飯後位にやろうかなって思ってます」
「飯…飯ねぇ…じゃあ、俺らは先にもう終わらせとくよ。ここで待っててくれ?」
「了解っす〜!」
俺はクレスタ姐さんが木を切るための道具を持ってどこかに行くのを確認すると、俺はその場に座り込んで近くにあった草をかき集め寒さ対策をした後、眠りについた。
草むら…ふわふわだな…この技法を俺の宿屋に取り入れれば…へ…へへっ…
しばらく寝て俺が起きたとき…まだクレスタ姐さんたちは俺の近くに戻ってきていなかったわけだ…
どこまで遠くに行ったんだろうなぁ…腹減ったぜ…
俺はそう思いながら乾パンのふたを開けた。
中から香ばしい匂いが…いやぁ、いいものだな乾パン…
味はそこまで良くないけど…
そう思いながら俺が乾パンに手を伸ばすと…
………!?あれ…?庭師の人かな…?
でも、こんな森の中に…庭師だと…?
俺が乾パンを食べる手を休め、歩いてきた庭師風の服装を着た女の人を見ていると…向こうもこっちに気がついたようだ…
でもな、この敵対心むき出しな雰囲気…どうすればいいんだ俺は…?
なぜ俺は敵対心を向けられているのかは判らないんだが…?
「ま…待ってくれ!!な、何か用なのか!?」
「………」
む、無言のプレッシャー…だと?せめて俺にその敵意を向けられる理由を教えて欲しいんだけど…
「お…俺が何かしたのかよ!!」
俺がそう訴えると、目の前の庭師は俺の手元を指差した…
ん?手元…草が腕に巻きついているだけじゃないか…ま、まさか、この草が原因だというのか!?
そう思って困惑している俺に、彼女はさらに俺を困惑させる台詞を言ってきた。
「………それ、私の下着……」
……えっと、これが?
俺はさっきの台詞を疑い、持っている草をよーく見てみたんだが…
!!こ、これは…!?
俺が草だと思っていた部分を払うと、中から黒い布地のパンツが顔を出したわけだな…
「えぇ…!?ってことは、今あの子はノーパン…」
「……殺…」
うわっと!!ど、どこからはさみ飛ばしてきたんだ!?
俺は飛んできたはさみを運よくかわすことが出来た…き、奇跡だ…
もうこうなったら俺が取れる手段は一つしかない…行くぜ!!
「これが…デメトリオスタイルだ!」
逃げる!!コレが一番効率的かつ有効的方法だ!
俺はちゃんと彼女の下着を地面に置いてから逃げた!!
下着に書いてあった名前は桔梗…本当に、桔梗さんにはすまなかったと思っている!!
でも…もう俺を追いかける意味はないし…大丈夫だろ…
走るのも本音疲れてきたし、もう十分だと判断した俺は、ゆっくりとペースを落としていったわけだな。
さぁて…後ろは安全…じゃねぇ!!
気を抜いて速度を落とした状態で後ろを向くと、普通に桔梗さんはこっちに走ってきていた…しかも、両手に片刃の剣を二つももってな!!
こ…これは危険だぜ…ど、どうすればいい…
俺が本気で困惑していると、なにやら草がガザガザを動く音がした訳だ…
今度は何だ!?一体これ以上俺に何が降りかかるというんだ!?
その場に一瞬だが沈黙という凍りついた空気が流れていく…
そしてその後、凄く癒し的な表情の大百足の女性が俺の目の前にあらわれたんだ!
「桔梗さ〜ん!!ここで何をしているんです?」
「………あいつ…私のパンツ…盗った」
「えぇっ!?それは許せません!!女の敵です!」
「……牡丹ちゃん…手伝ってくれる?」
「当然です!」
えぇーー!?俺、ちゃんとパンツ返したって!!
まさか…また逃げるのか…!?うはぁ…肺が破裂しそうだぜ全く…
そう思うと、俺はまた即座に逃げたのだが…
後ろから物凄い勢いで飛んでくるこの弓矢や剣…はたまた昔親父に教えてもらった武器のクナイってやつやら手裏剣って奴も…とにかくいろいろ飛んでくるんだよ!!
いや…当たったらやばいって!!本気でやばい!
くそ…この手段は使いたくなかったんだが…こうなったら奥の手だ!!
さぁ…今から画面上にいる君!!君に俺の運命を託したぜ!!
俺が心で叫んだら…その通りにボタンを入力してくれ!!
いや…本気でたのんだよ?
さて…じゃあ俺は必死に走るとするか…
うおおぉぉぉぉぉ!!○だ!!
俺は画面上にいるみんなを信じて右に動いた。
え?俺は○以外を押したって?
……いいんだ!!君は○を押した!押したんだよ!!
とにかく、俺が右に動いた後、俺の真横に大量の昆布が…
な…何と恐ろしい…
次は……LRLRLR○××だ!!
頼む…成功してくれ!!
願いながら俺は走り続けたわけだが…
「うおっ!?」
俺はその場で無様に倒れこんだんだよ…
ま、まさかボタンを押し間違えたのか…?やばいぜ…距離が縮まってしまった…
だが、俺はそこで悔やんでいるほどネガティブな男ではない!!と思う。
多分…LRを押すところで一回多く押してしまったんだろ?俺にはわかる!
そして逃げ続けると…なんだ!?あの木は!?
俺の目の前には、まるで俺の行く手を阻むように大きな木が置かれていたわけだ…
や…やばい!!い、行き止まりじゃないか!!
だが…無情にも後ろから桔梗さんたちはこっちに迫ってくるし…
さ、最後のお願いだ!!ボタンを入力して俺を助けてくれ!
俺がこう心で訴えていると、向こうから大量のナイフが!!
……1秒以内に○L□RR×△R○L×と入力を…
無理ですよねーやっぱり!!俺も初めから無茶を押し付けていると思っていたよ…本当にすまなかった…
俺は大量のナイフをよけることが出来ず、きれいに大きな木の下で貼り付けにされていた。
……まさか、こんなところにこんな落とし穴があろうとは…
俺は今…クレスタ姐さんと離れたことを悔やんでいた…
ぱ…パンツ一枚でこんなに酷い目に会うなんて…
「……捕らえた…」
「おぉ〜…さすが桔梗さんです!」
「や…やめろって!な?こんな事をしても何の意味も無いよ!?もっと平和的な解決を…」
「…牡丹…アレをお願い」
「はぁい♪毒液ですね〜?」
な…!?ど、どうしてこうなった!?
ど、毒!?そ、そんな物騒なものをここで持ち出すのはどうかと…
「最後に…言いたいことがあるんです?」
キターー!!このチャンスを俺はさっきからずっと待っていた!!
「あります!!俺は桔梗さんと会ったときにパンツをちゃんと桔梗さんに返してる!!それに…俺はあの時、偶然あの場にいただけなんだよ!!偶然だけどパンツを触ったこととノーパン発言したことは謝ります…これで許してくれませんか?」
ピンチになると口が上手くなる俺がそこにいた…
「どうします…桔梗さん?」
「……仕方がない……去る」
……こうして、俺の心を本気でひやひやさせたイベントは終わりを告げたのだった…
で…さっきの場所に戻るとクレスタ姐さんや他のみんなが怒ったような表情で待っていたわけだよ…
「あ!?デメトリオ、お前…ここで待ってろっていったろ!?」
「クレスタさん…す、すまねぇ…」
俺が心から悔やんでいるのを悟ってくれたのか…これ以上はクレスタ姐さんは俺を厳しく追及しなかった…
いやぁ…良い人だ…
で…クレスタ姐さん達が遅かったのは理由があって…もう依頼者に木を届けてきたらしいんだ…俺の分もね?
で…報酬も受け取ったし帰るだけっていう…
え?何これ…今回って…パンツ事件を起こすためだけの依頼だったのか!?
俺は内心煮え切らないままに宿屋に戻っていった…
でも…逃げ続けたけどちゃんと銀貨70枚くれたし…
なんか、30枚くらいルタのやつに盗られたけど…今日は走りすぎて足痛いし…
「デメトリオ…何か疲れているようね?」
「あ…メリィ…わかる?今日散々なことがあってさぁ…」
「へぇ…興味ないわ。で、材料は良い調子で集まってる?」
……興味ないって…酷い…
「あ…木材だけなら何とか…」
…ま、ほとんど俺、動いてないけどな?
「そう…じゃあ、そろそろ別のものも集め始める必要があるわね…」
「はぁ…あ、今日、宿屋休みでいいか?疲れてて…」
俺はちゃんとこのタイミングで宿屋を休むと言っておいたぜ…
明日、筋肉痛になっていなければいいけどなぁ…
「別に…いいわよ?あ、奉行所に話を通してこっちの宿に依頼書届けてもらえるようになったから…明日からは皆、ここで待機ね?お休み」
メリィはそういうとすぐに自分の部屋に戻っていき、俺は痛む足を引きずりながら自分の部屋に戻っていった…
今日は…変な夢を見なければいいけど…
そうして青年は眠りについた…
その頃、デメトリオの宿屋の地下で……
「むぅ…この機械は少々気にいらんのぅ…もうちょっと改良を加えんと…そうじゃ!もっと淫らな夢を見れるようにプログラムしておけば…効率が良いのぉ…」
相変わらず、青年が気付かないままにゾーネは発明品を造っているのでした。
12/03/28 22:42更新 / デメトリオン
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