29 寒いなら麻袋を着れば良いよな?
………うぅ…?こ、ここはどこだ?
気がつくと、俺は当たり一面真っ暗なところにいた…
俺は…死んだのか…?
そう思っていると、すぐ近くで人の声が聞こえてくる……
ん!?人の声が聞こえてくるってことは…俺、目をつぶっているだけじゃないのか!?
そして、思いっ切り目を開けると…俺は天井からぶら下がっている小さな灯りを目にし…生きていることを実感した。
いやぁ…我ながら…樽での移動だけで良く生きてたと思うよ…
そして俺は、寒いと思いながら体を起こして周りの状況を確認した…
「…なんだ?ここは…」
辺りをよく見渡して判ったこと…それは…
ここは何かしらの木造造りの建物の中だということ!!
俺は服を着ていないということ!!
そして、周りにいて眠っている状態のモンスターラグーンの皆…
運よく同じところに着いたんだな…と思うと同時に、彼女達が衣服を着ていないという事実!!この三つだ!!
こ、この状況…久しぶりに俺が悪者として扱われる状況じゃないのか!?
こ、こんなとてつもない状況に置かれて…俺はどのような反応を示せばいい!?
待て…落ち着け…
そして、10分後、落ち着いたと同時にナナが目を覚ましたので俺は一目散に逃げた!あの時の俺の俊敏性はたとえるとしたらまるで…坂道を転がり落ちるどんぐりのようだったぜ…
そしてそのときに…部屋の中に俺は自分の衣服を置きっぱなしで出てきてしまった訳だ…冬にな?
外には少々だが雪が積もっており、俺はその中にダイブしたいという感情と、絶対に冷たいからやめておいたほうがいいという感情の二つを俺に感じさせた。
雪を見ること自体がかなり珍しいことだったのに…ダイブ出来ないと思うと若干だが虚しいものがあるぜ…
そう思いながら震えていると、俺はいいものを見つけることが出来た…
あそこにある麻袋…アレなら中々に暖かそうじゃないか!
俺は麻袋の方に向かって…うぉっ!?
そして俺は今…予想以上に深かったこの雪がある場所で顔だけ残し…埋まっているのだった…
なんだろうなこの状況…表すとしたら…シュールって奴なのか…?
それに…若干だが凄く寒いし…って、若干じゃねえじゃねえか!
「……寒い…ね、眠い…」
何だろう…この体温が全身から優しく抜けていくこの感情は…なんとも言えない気持ちよさだぜ…
「おい!!あんた!大丈夫か!?仕方がない…」
「……だ…誰だ…?」
眠ろうとしているのに…不意に俺が目をつぶっていたときの声が聞こえてきて俺は夢の世界に旅立つことが出来なかったんだ。
そしてその後…その人の手によって俺…雪の中から発掘される…
すでに下半身も上半身も動かせる様子じゃなく、俺が動かせるのは顔だけという状態で、俺はパンツ一枚のまま初めにいた小屋に戻されていった…
「ほら…気付け薬だ…これを飲めば少々なら体の冷えが収まってくるはずだからちゃんと飲めよ…?」
俺は気付け薬とやらを飲まされ、布団の中で横になっている…
どうやら他のメンバー達はすでに服も着て俺のことを馬鹿だとかいろいろ言っちゃってくれているようだが…俺がこうなった原因はあんた達なんだぞ!?
…いや、性格には服を着ないで外に出た俺が根本的に悪いのだが…そこは突っ込まないでくれ?
そうしてしばらく時間が経過し、俺の手足に若干だが感覚が戻ってくるのを感じ取ると、俺は奥からやって来た奥さんと話し込んでいるあの男性に対して…いろいろなことを考えていたのだった…
すると、あの人がこっちに向かって歩いてくるのが見え、若干だが警戒する俺…
「おいおい…浜辺で助けてやったのにそんなに敵意を向けないでくれないか?甘いものでも食べるか?」
「……あんた、誰なんだ?いや…助けてくれたことは感謝してるけど…」
俺がそういうと…その人は謎の黒いものを出しながら俺の方に近づいてきた。
何だ!?あの黒いものは!?
「俺は大地っていうんだ、旅をしながら薬を妻と一緒になって売りまわっているしがない男さ…」
「はぁ…そうなんですか…」
「今はちょっと故郷に戻るついでに偶然通りさかった海岸であんた達が倒れているのを見てな?妻が見覚えがある人がいるって言ったこともあり…傷ついた人を見過ごすことも出来なかった俺は放置されていたこのボロ家を借りているというわけだ…」
……なるほど、いい人もいるんだな…この人は心を許してもOK…そんな気がするぜ…
そう思うと、その人が渡してきた皿の上に乗っている黒い…いや、茶色いのか?とにかく、謎の物を改めて見た…
周りを見ると…モンスターラグーンの皆…特にルタは物凄い速度で食べているし…大丈夫なのか?
俺は恐る恐るだが微妙にちぎって口の中に放り込んでみた…
こ、コレは!?甘い!?
なんなんだこの甘いものは!?
「これは…おいしいな…よしっ!!食うぜ!」
俺がこの茶色の何かの味を知り、喜んで食い始める構えを取ったときだった…
一瞬後ろからぬめぬめしたものが首筋をなで…身をすくめた瞬間俺の食べていた甘いものは明らかに何者かの手によって食べられていた…
こんなことをするのは一人しかいない…そうだろルタぁ!!
そう思いながら振り返った俺が見たのは…
ルタとミリアナが物凄い勢いで俺の皿に群がっているところだった…
互いに独り占めしようと躍起になっており、その横でクールに茶を飲んでいるジャンヌとメリィの姿がなんとも言えない絶妙感をかもし出しているようにも見える…
でもさ…その黒くて甘いものは…俺のだぞ!?
どうしてそこまで普通に食べることが出来るんだお前ら!?
「おい!それは俺の…」
「あむっ…ぷはぁっ…絶対にあげないもんね〜!」
「あたいが全部食べるんだから!はむっ!」
「だから…話聞けよ!!」
……結局、俺は無視されたわけだな…
いや、いいさ…初めからわかってたことだし…文句はないさ…
最近、若干だが諦めが早くなった俺がそこにいた…
でも…もう少しあの甘いものを食べておきたかったぜ…
そう思いながら、俺は名残惜しそうにあの黒いものがあった皿を見ていると…
大地が後ろからまたあの黒いものが入った皿を今度はこっそりと渡してきたんだ!
「あの二人にばれないように食べな?その餡子ならまだまだたくさんあるからさ?」
「あ…ありがとう…」
俺は本音、もう餡子とやらを食べることは出来ないだろうと半ばあきらめていた…本気であきらめムードに入っていたんだ!
でも…まさかもう一回口にする機会が訪れるなんて…これは奇跡としか表しようがないぜ…!
この人…本気でいい人じゃないか!
思えば、船が壊れて海に落ちたときはどうなることかと思ったが…
あ…そういえばここはどこなんだ?
今まで疑問にすら思わなかったことだが…俺たちは海に落ちてここにいるんだから、ここが陸地なのは間違いない…
じゃあ、ここはどの大陸なんだろうか…?
「あの…ここってどの大陸なんですか?俺たち…流されてきたから…」
「ここはジパング…いろいろな人が住み、愛を育んで来た場所さ、最近は他の大陸の人たちとも交流してるから名前は良く耳にするんじゃないか?多分、ジパングの上の方を流れていた海流に流されてここに来たんだろうな…」
ここがジパングだったのか…あ、それじゃあここにアルフォンスはいるって事か…
などと思いながらしばらくして…メリィがあることを言い出した。
「私達はこの方達に恩があるけど…早くメガロス帝国に行かなければならない…そのためには、どうにかしても船が必要よ?みんなはどう思う?」
船…?あぁ…確かに船が半壊しているから船がないとメガロス帝国がある大陸にはたどり着くことが出来ないのか…
「でもリーダー…恩を受けて返さないのは私の騎士の誇りに反します!」
……確かに、アイネが言ったとおり恩は返さないといけない物だよ…
でも、メリィは明らかにメガロス帝国に何を急ぐことがあるのか慌てて行こうとしているし…
俺はどっちを選んだらいいんだぁーーーー!?
そうして、俺は一人悩み続け…結局答えを出すことが出来ずにそこにいた。
まぁ…適当にその場を流しておけば、ラグーンメンバーのみんなが何かしら結論を出してくれるんだろ?
だったら…いちいち俺が頭を使って考えなくても良いじゃないか!
「……わかったわ、みんなの意見を尊重して…ここはこの人に恩返しをしつつ町を目指し…そこで船の材料を各自で集めて船を造りメガロス帝国のある大陸に向けて出発…それでいいわね?」
「まぁ…それなら…」
……決まったようだな…いやぁ、他人に任せてそれに応じて動くのって楽だよなぁ!
さすが俺…相変わらずのこのスタイルは大陸が変わっても健在だぜ!!
それからババッと飛ばして次の日…
え!?飛ばしすぎだろって…?そんな事言ったって…
イベントがなかったんだよ!!モンスターラグーンの皆も俺も布団に入った後すぐに寝たからな今回…イベントなんて起こりようがないわけで…
そして…今日も淫らな夢を見たんだ…最近多いんだよなぁ…しかも、次の日変な脱力感があるのがたちが悪いよなぁ…
そう思いながら旅の準備をする俺…
まぁ、用意するものって大切なものを入れるポーチと服と剣しかないんだけどな?
「じゃあ…僕達が行くつもりの町まで頼むよ」
「…わかったわ、まぁ、船も要るから…よろしくお願いしますね?」
…どうやらメリィと大地さんの間で話し合いも終わったようだし、そろそろ行くのか…?
俺的には大地さんはいい人だったから別に文句はないんだけどな?
俺は対して嫌がるそぶりも見せずに的確に準備を終わらせた…干し肉が一切無いというこの現実があまりにも大きすぎるのでその事実さえどうにかすることが出来たのなら多分俺はかなり乗り気だっただろうな…
あと…個人的に一つ言いたんだが、俺最近肉と乾パンとか干されているものばかりを食べているような気がするので、野菜が久しぶりに食べたい…
ま、俺がここで内心ぼやいていても仕方が無いことだといえばそれで終わりなんだけどな?
ここら辺は…結構雪が激しい地域なんだな…まぁ、道との違いが判りやすいからそこまで文句は言わないことにしておこう…
それにしても…雪か…いいよな雪…
フェルス興国にはそんなに雪が降っても積もらないからな…雪を見るという事自体が物凄く珍しいんだ…それに加えてこの落ち着く感じの街道…
ジパングって…結構面白い場所かも知れないな…
で、俺雪が積もっている場所で一回…真面目にやってみたいことがあったんだ!
今からそれをやるぜ俺は…見てろよー!
俺はそう心で言いながら雪が少々だが積もっていたところに走って行った…
速度は申し分なし…角度も軌道も完璧…これなら出来る!!
「行くぜーー!!アイスライディングヘヴンジャンプだ!!」
説明しよう!!
アイスライディングヘヴンジャンプとは、氷の上をスライディングした後、勢いを殺さずにジャンプして気分を気持ちよくさせる技なのだ!
というわけで、俺はかっこよくこの技を決め…れない訳だよなぁ…
いや、こういった軽いノリの出来事って毎回こんな結果に終わっている訳だから俺は文句を言うことはしない…だけどな?
結構腰を打ち付けると痛いんだぞ!!解っているのかぁーーー!?
俺は腰をさすりながら心でそう強く訴えるが…シーマちゃんがちらりと無機質な目線を俺に向けてきただけだった…
みんな…足早すぎだぜ…
そうこうしながら街道を歩いていると…向こうの方から旅の人らしき人が歩いてくる…俺はそれに挨拶を返すと普通にその場を去ったのだが…
ジパングの人たちは男でもスカートを掃くんだな…いや、まぁ国ごとにいろいろあると思うから何も文句とかは言わないけどね?
それにしても…生えている植物も旅の人がしている装備も俺たちとは全然違うものなんだな…これがジパング特有の文化という奴なのか…
と言う事は…なるほどな…特産品も多いというわけか…
俺はそう若干思うと、頭の端っこで珍しい酒があったら買おうと決めたのだった…
数時間して、大地さんの目的地の町についたんだが…ここに来る途中の岩場の一箇所がとてつもなく危険だったぜ…さすがジパング、若干危険ながらも自然を残し、自然と調和した道を残していることには尊敬の意を考えずにはいられないぜ…
などと思いながら俺は大地さんに近づいた。
まぁ、ここに大地さんが来た理由が個人的に聞きたかったってのが本音かな…
「大地さんはこの町に何をするために来たんですか?」
「いや…僕も緑もJAXAという施設に用事があってね…ほら、あそこにある機械仕掛けの施設だよ」
そういいながら大地さんが指差した場所には街の雰囲気とは若干違う感じの…機械的な建物が一つあった…
あの不釣合いな建物に用があった…?一体大地さんは何者なんだろうか…
ただの医者じゃない気がするぜ!
まぁ、そこから先は俺は大地さんに余計な詮索をすることも無く、大地さんと別れて行動し始めたのだった…
よし…気が向いたら一回だけ寄ってみるか…?
などと心に決めながら、俺はメリィの後を追いかけていった。
「……泊まりたいと思えるほどいい宿屋が無いわね…」
「リーダー…ジパングの宿屋がそんなに得意じゃなかったですしね…」
などとメリィとリーネが言っているのを聞きながらも、俺は泊まってみたいと思っていた…
文化の違いがどれほど宿屋の内装に違いを及ぼすのか…非常に気になるところなんだよ!
でも…これじゃあ宿屋には泊まることが出来なさそうだな…
「デメトリオ、今回はあなたの宿屋を拠点に行動するから…いいわね?」
ほら来た…やっぱりな?俺の考えは間違ってなかったんだ…
俺はゆっくりと空き地の場所に宿屋を展開した…
土地の地主にはちゃんと許可を取っているし…多分何もいざこざは起こらないだろ?まぁ、ジパングって俺たちの国とは何か違うかもしれないから…わからないんだけどさ…
中に入ってしばらくの間自分の部屋を掃除していたとき…メリィから呼び出しがかかった…
掃除は終わった後だったのでタイミングがいいのはまだ良いんだけど…もうすぐ夜になるし、何の用なんだ?
などと思いながらゆっくり行っていると、すでにラグーンメンバーのみんなはそこで待っていたわけだ…ゾーネが焼酎…俺の酒をわきに抱えながら…
とてとてとのんびり歩いてきたとき、いつ俺の焼酎を盗った!?と思わず口に出しかけたが…言い留まった俺は中々に凄いと思うぜ…
「みんな集まったわね…?今回はこの町…染木町で航海の基盤となる船を造るための材料を集めようと思うわ……なので、昼間はここを休憩場所に使って、夜は旅の軍資金を集めるために宿屋としてデメトリオにでも頑張ってもらいましょう…この染木町は結構広いから多分…材料も集まるでしょ?まぁ、ひとまずは奉行所って場所…私達の町でいう所のクエスト看板みたいな場所で依頼でも受け持って木材や他の大雑把なものを集めてきて…」
他の大雑把な物って…船の素材で言う所のマスト系統の素材か…?
そこのところははっきりして欲しいと思いながら、俺は話をじっと聞いていたわけだが…
「あと、具体的に必要な素材は後でゾーネ…」
「わしが作った設計図上必要な道具を集めてくるのじゃ…」
「……」
さっきゾーネに台詞を盗られたのが若干気に入らなかったのか…メリィは顔をしかめたが…ま、とにかく素材を集めればいいんだろ…?
任せておけって!!
そして俺たちは今日は旅の疲れや状況整理の為…宿屋を開かずに寝ることになったのだった…
で…寝ようとしたとき、俺の部屋の中にルタとセムちゃんがいることに気がつく俺…いや、ふよふよときーちゃんも浮いていたし、布団の中からぴょこんと飛び出しているキュラスの衣服の一部…
これから俺はどのような反応を示せばいいんだ!?
いや…そもそもなんで彼女達…幼女組の半数以上が俺の部屋に集結している!?どうしてこんな状況になったのかを説明プリーズ!
「あれ…ゾーネちゃんは…?」
「ゾーネ?この部屋にはいないけどどうしたんだ?」
ゾーネがなぜここにいると思ったんだこいつら…?
「おかしいな…ゾーネちゃんがここに来たと思ったのに…」
「あはー…ここに来たよー!」
「あたいも見たけど…気のせいだったのかな?」
……何か引っかかるな…こんなに大勢が俺の部屋にゾーネが入っていくのを見たというのか…
ま、まさか!?
俺はここであることを考えた…ゾーネが俺の部屋にこっそり潜んでいるという半ば嘘とは言い切れない可能性だ…
もしもそれが事実だとしたら…俺はこの事実を無視することが出来ないぜ!
そして俺がタンスを良く調べるとそこに明らかに誰か通ることが出来そうな穴が…これ、明らかに怪しいぜ…?
小さな穴はとても俺が通れるような大きさではなかったため…どうすれば良いのか真剣に悩んだが、俺は良い事を考えたんだ!
こいつらに行って確かめてもらえば良いじゃないか!
「なぁ、この奥を確かめてきてもらってもいいか?」
「えぇ〜…あたい、めんどくさい事したくないなぁ…」
「ルタちゃん…お兄さんが言っている事だし行ってみようよ…」
セムちゃん…やっぱり君は良い家の身分のはずなのに本当にいい人だ!
そしてその後、少ししてから彼女達が帰ってきたが別にコレといったことは無かったようだ…
少し、気にしすぎなのかな…?
「くぅ…そろそろ寝るかな…明日からめんどくさいことになっていきそうだし…」
俺はそこで疲れたので眠りに着くことにした…明日からは船の素材を集めていかないといけないしな?
そしてデメトリオが寝た後…
タンスのところにあいた穴からこっそり忍び寄る影が数個あった…
「ゾーネちゃん…まさかこんなところに抜け穴を作っていたなんて…
「賢いじゃろ?ここを利用してそっとこやつの部屋に忍び込んで実験で精を絞り取って毎日飲んでいるのじゃ!おぬしらも飲むか?」
「……やっぱり、お兄さんが寝ている間にこんな事するなんてよくないと思います!」
「…眠いよー、寝るー…」
「あ…ルタもきーちゃんも意気地なしだな…あれじゃあ悪い女にはなれないぞ?あたいは飲む!」
「私も…調教のために勉強するー!!」
「くっふっふっふ……では…搾取するとするかのぉ…」
そしてデメトリオが今日も変な夢を見たのは言うまでも無い…
あっ!どうやってその機械を壊れた船から海を渡って無事に持ってきたのか…
それは聞かない方向で…は、ははっ…
気がつくと、俺は当たり一面真っ暗なところにいた…
俺は…死んだのか…?
そう思っていると、すぐ近くで人の声が聞こえてくる……
ん!?人の声が聞こえてくるってことは…俺、目をつぶっているだけじゃないのか!?
そして、思いっ切り目を開けると…俺は天井からぶら下がっている小さな灯りを目にし…生きていることを実感した。
いやぁ…我ながら…樽での移動だけで良く生きてたと思うよ…
そして俺は、寒いと思いながら体を起こして周りの状況を確認した…
「…なんだ?ここは…」
辺りをよく見渡して判ったこと…それは…
ここは何かしらの木造造りの建物の中だということ!!
俺は服を着ていないということ!!
そして、周りにいて眠っている状態のモンスターラグーンの皆…
運よく同じところに着いたんだな…と思うと同時に、彼女達が衣服を着ていないという事実!!この三つだ!!
こ、この状況…久しぶりに俺が悪者として扱われる状況じゃないのか!?
こ、こんなとてつもない状況に置かれて…俺はどのような反応を示せばいい!?
待て…落ち着け…
そして、10分後、落ち着いたと同時にナナが目を覚ましたので俺は一目散に逃げた!あの時の俺の俊敏性はたとえるとしたらまるで…坂道を転がり落ちるどんぐりのようだったぜ…
そしてそのときに…部屋の中に俺は自分の衣服を置きっぱなしで出てきてしまった訳だ…冬にな?
外には少々だが雪が積もっており、俺はその中にダイブしたいという感情と、絶対に冷たいからやめておいたほうがいいという感情の二つを俺に感じさせた。
雪を見ること自体がかなり珍しいことだったのに…ダイブ出来ないと思うと若干だが虚しいものがあるぜ…
そう思いながら震えていると、俺はいいものを見つけることが出来た…
あそこにある麻袋…アレなら中々に暖かそうじゃないか!
俺は麻袋の方に向かって…うぉっ!?
そして俺は今…予想以上に深かったこの雪がある場所で顔だけ残し…埋まっているのだった…
なんだろうなこの状況…表すとしたら…シュールって奴なのか…?
それに…若干だが凄く寒いし…って、若干じゃねえじゃねえか!
「……寒い…ね、眠い…」
何だろう…この体温が全身から優しく抜けていくこの感情は…なんとも言えない気持ちよさだぜ…
「おい!!あんた!大丈夫か!?仕方がない…」
「……だ…誰だ…?」
眠ろうとしているのに…不意に俺が目をつぶっていたときの声が聞こえてきて俺は夢の世界に旅立つことが出来なかったんだ。
そしてその後…その人の手によって俺…雪の中から発掘される…
すでに下半身も上半身も動かせる様子じゃなく、俺が動かせるのは顔だけという状態で、俺はパンツ一枚のまま初めにいた小屋に戻されていった…
「ほら…気付け薬だ…これを飲めば少々なら体の冷えが収まってくるはずだからちゃんと飲めよ…?」
俺は気付け薬とやらを飲まされ、布団の中で横になっている…
どうやら他のメンバー達はすでに服も着て俺のことを馬鹿だとかいろいろ言っちゃってくれているようだが…俺がこうなった原因はあんた達なんだぞ!?
…いや、性格には服を着ないで外に出た俺が根本的に悪いのだが…そこは突っ込まないでくれ?
そうしてしばらく時間が経過し、俺の手足に若干だが感覚が戻ってくるのを感じ取ると、俺は奥からやって来た奥さんと話し込んでいるあの男性に対して…いろいろなことを考えていたのだった…
すると、あの人がこっちに向かって歩いてくるのが見え、若干だが警戒する俺…
「おいおい…浜辺で助けてやったのにそんなに敵意を向けないでくれないか?甘いものでも食べるか?」
「……あんた、誰なんだ?いや…助けてくれたことは感謝してるけど…」
俺がそういうと…その人は謎の黒いものを出しながら俺の方に近づいてきた。
何だ!?あの黒いものは!?
「俺は大地っていうんだ、旅をしながら薬を妻と一緒になって売りまわっているしがない男さ…」
「はぁ…そうなんですか…」
「今はちょっと故郷に戻るついでに偶然通りさかった海岸であんた達が倒れているのを見てな?妻が見覚えがある人がいるって言ったこともあり…傷ついた人を見過ごすことも出来なかった俺は放置されていたこのボロ家を借りているというわけだ…」
……なるほど、いい人もいるんだな…この人は心を許してもOK…そんな気がするぜ…
そう思うと、その人が渡してきた皿の上に乗っている黒い…いや、茶色いのか?とにかく、謎の物を改めて見た…
周りを見ると…モンスターラグーンの皆…特にルタは物凄い速度で食べているし…大丈夫なのか?
俺は恐る恐るだが微妙にちぎって口の中に放り込んでみた…
こ、コレは!?甘い!?
なんなんだこの甘いものは!?
「これは…おいしいな…よしっ!!食うぜ!」
俺がこの茶色の何かの味を知り、喜んで食い始める構えを取ったときだった…
一瞬後ろからぬめぬめしたものが首筋をなで…身をすくめた瞬間俺の食べていた甘いものは明らかに何者かの手によって食べられていた…
こんなことをするのは一人しかいない…そうだろルタぁ!!
そう思いながら振り返った俺が見たのは…
ルタとミリアナが物凄い勢いで俺の皿に群がっているところだった…
互いに独り占めしようと躍起になっており、その横でクールに茶を飲んでいるジャンヌとメリィの姿がなんとも言えない絶妙感をかもし出しているようにも見える…
でもさ…その黒くて甘いものは…俺のだぞ!?
どうしてそこまで普通に食べることが出来るんだお前ら!?
「おい!それは俺の…」
「あむっ…ぷはぁっ…絶対にあげないもんね〜!」
「あたいが全部食べるんだから!はむっ!」
「だから…話聞けよ!!」
……結局、俺は無視されたわけだな…
いや、いいさ…初めからわかってたことだし…文句はないさ…
最近、若干だが諦めが早くなった俺がそこにいた…
でも…もう少しあの甘いものを食べておきたかったぜ…
そう思いながら、俺は名残惜しそうにあの黒いものがあった皿を見ていると…
大地が後ろからまたあの黒いものが入った皿を今度はこっそりと渡してきたんだ!
「あの二人にばれないように食べな?その餡子ならまだまだたくさんあるからさ?」
「あ…ありがとう…」
俺は本音、もう餡子とやらを食べることは出来ないだろうと半ばあきらめていた…本気であきらめムードに入っていたんだ!
でも…まさかもう一回口にする機会が訪れるなんて…これは奇跡としか表しようがないぜ…!
この人…本気でいい人じゃないか!
思えば、船が壊れて海に落ちたときはどうなることかと思ったが…
あ…そういえばここはどこなんだ?
今まで疑問にすら思わなかったことだが…俺たちは海に落ちてここにいるんだから、ここが陸地なのは間違いない…
じゃあ、ここはどの大陸なんだろうか…?
「あの…ここってどの大陸なんですか?俺たち…流されてきたから…」
「ここはジパング…いろいろな人が住み、愛を育んで来た場所さ、最近は他の大陸の人たちとも交流してるから名前は良く耳にするんじゃないか?多分、ジパングの上の方を流れていた海流に流されてここに来たんだろうな…」
ここがジパングだったのか…あ、それじゃあここにアルフォンスはいるって事か…
などと思いながらしばらくして…メリィがあることを言い出した。
「私達はこの方達に恩があるけど…早くメガロス帝国に行かなければならない…そのためには、どうにかしても船が必要よ?みんなはどう思う?」
船…?あぁ…確かに船が半壊しているから船がないとメガロス帝国がある大陸にはたどり着くことが出来ないのか…
「でもリーダー…恩を受けて返さないのは私の騎士の誇りに反します!」
……確かに、アイネが言ったとおり恩は返さないといけない物だよ…
でも、メリィは明らかにメガロス帝国に何を急ぐことがあるのか慌てて行こうとしているし…
俺はどっちを選んだらいいんだぁーーーー!?
そうして、俺は一人悩み続け…結局答えを出すことが出来ずにそこにいた。
まぁ…適当にその場を流しておけば、ラグーンメンバーのみんなが何かしら結論を出してくれるんだろ?
だったら…いちいち俺が頭を使って考えなくても良いじゃないか!
「……わかったわ、みんなの意見を尊重して…ここはこの人に恩返しをしつつ町を目指し…そこで船の材料を各自で集めて船を造りメガロス帝国のある大陸に向けて出発…それでいいわね?」
「まぁ…それなら…」
……決まったようだな…いやぁ、他人に任せてそれに応じて動くのって楽だよなぁ!
さすが俺…相変わらずのこのスタイルは大陸が変わっても健在だぜ!!
それからババッと飛ばして次の日…
え!?飛ばしすぎだろって…?そんな事言ったって…
イベントがなかったんだよ!!モンスターラグーンの皆も俺も布団に入った後すぐに寝たからな今回…イベントなんて起こりようがないわけで…
そして…今日も淫らな夢を見たんだ…最近多いんだよなぁ…しかも、次の日変な脱力感があるのがたちが悪いよなぁ…
そう思いながら旅の準備をする俺…
まぁ、用意するものって大切なものを入れるポーチと服と剣しかないんだけどな?
「じゃあ…僕達が行くつもりの町まで頼むよ」
「…わかったわ、まぁ、船も要るから…よろしくお願いしますね?」
…どうやらメリィと大地さんの間で話し合いも終わったようだし、そろそろ行くのか…?
俺的には大地さんはいい人だったから別に文句はないんだけどな?
俺は対して嫌がるそぶりも見せずに的確に準備を終わらせた…干し肉が一切無いというこの現実があまりにも大きすぎるのでその事実さえどうにかすることが出来たのなら多分俺はかなり乗り気だっただろうな…
あと…個人的に一つ言いたんだが、俺最近肉と乾パンとか干されているものばかりを食べているような気がするので、野菜が久しぶりに食べたい…
ま、俺がここで内心ぼやいていても仕方が無いことだといえばそれで終わりなんだけどな?
ここら辺は…結構雪が激しい地域なんだな…まぁ、道との違いが判りやすいからそこまで文句は言わないことにしておこう…
それにしても…雪か…いいよな雪…
フェルス興国にはそんなに雪が降っても積もらないからな…雪を見るという事自体が物凄く珍しいんだ…それに加えてこの落ち着く感じの街道…
ジパングって…結構面白い場所かも知れないな…
で、俺雪が積もっている場所で一回…真面目にやってみたいことがあったんだ!
今からそれをやるぜ俺は…見てろよー!
俺はそう心で言いながら雪が少々だが積もっていたところに走って行った…
速度は申し分なし…角度も軌道も完璧…これなら出来る!!
「行くぜーー!!アイスライディングヘヴンジャンプだ!!」
説明しよう!!
アイスライディングヘヴンジャンプとは、氷の上をスライディングした後、勢いを殺さずにジャンプして気分を気持ちよくさせる技なのだ!
というわけで、俺はかっこよくこの技を決め…れない訳だよなぁ…
いや、こういった軽いノリの出来事って毎回こんな結果に終わっている訳だから俺は文句を言うことはしない…だけどな?
結構腰を打ち付けると痛いんだぞ!!解っているのかぁーーー!?
俺は腰をさすりながら心でそう強く訴えるが…シーマちゃんがちらりと無機質な目線を俺に向けてきただけだった…
みんな…足早すぎだぜ…
そうこうしながら街道を歩いていると…向こうの方から旅の人らしき人が歩いてくる…俺はそれに挨拶を返すと普通にその場を去ったのだが…
ジパングの人たちは男でもスカートを掃くんだな…いや、まぁ国ごとにいろいろあると思うから何も文句とかは言わないけどね?
それにしても…生えている植物も旅の人がしている装備も俺たちとは全然違うものなんだな…これがジパング特有の文化という奴なのか…
と言う事は…なるほどな…特産品も多いというわけか…
俺はそう若干思うと、頭の端っこで珍しい酒があったら買おうと決めたのだった…
数時間して、大地さんの目的地の町についたんだが…ここに来る途中の岩場の一箇所がとてつもなく危険だったぜ…さすがジパング、若干危険ながらも自然を残し、自然と調和した道を残していることには尊敬の意を考えずにはいられないぜ…
などと思いながら俺は大地さんに近づいた。
まぁ、ここに大地さんが来た理由が個人的に聞きたかったってのが本音かな…
「大地さんはこの町に何をするために来たんですか?」
「いや…僕も緑もJAXAという施設に用事があってね…ほら、あそこにある機械仕掛けの施設だよ」
そういいながら大地さんが指差した場所には街の雰囲気とは若干違う感じの…機械的な建物が一つあった…
あの不釣合いな建物に用があった…?一体大地さんは何者なんだろうか…
ただの医者じゃない気がするぜ!
まぁ、そこから先は俺は大地さんに余計な詮索をすることも無く、大地さんと別れて行動し始めたのだった…
よし…気が向いたら一回だけ寄ってみるか…?
などと心に決めながら、俺はメリィの後を追いかけていった。
「……泊まりたいと思えるほどいい宿屋が無いわね…」
「リーダー…ジパングの宿屋がそんなに得意じゃなかったですしね…」
などとメリィとリーネが言っているのを聞きながらも、俺は泊まってみたいと思っていた…
文化の違いがどれほど宿屋の内装に違いを及ぼすのか…非常に気になるところなんだよ!
でも…これじゃあ宿屋には泊まることが出来なさそうだな…
「デメトリオ、今回はあなたの宿屋を拠点に行動するから…いいわね?」
ほら来た…やっぱりな?俺の考えは間違ってなかったんだ…
俺はゆっくりと空き地の場所に宿屋を展開した…
土地の地主にはちゃんと許可を取っているし…多分何もいざこざは起こらないだろ?まぁ、ジパングって俺たちの国とは何か違うかもしれないから…わからないんだけどさ…
中に入ってしばらくの間自分の部屋を掃除していたとき…メリィから呼び出しがかかった…
掃除は終わった後だったのでタイミングがいいのはまだ良いんだけど…もうすぐ夜になるし、何の用なんだ?
などと思いながらゆっくり行っていると、すでにラグーンメンバーのみんなはそこで待っていたわけだ…ゾーネが焼酎…俺の酒をわきに抱えながら…
とてとてとのんびり歩いてきたとき、いつ俺の焼酎を盗った!?と思わず口に出しかけたが…言い留まった俺は中々に凄いと思うぜ…
「みんな集まったわね…?今回はこの町…染木町で航海の基盤となる船を造るための材料を集めようと思うわ……なので、昼間はここを休憩場所に使って、夜は旅の軍資金を集めるために宿屋としてデメトリオにでも頑張ってもらいましょう…この染木町は結構広いから多分…材料も集まるでしょ?まぁ、ひとまずは奉行所って場所…私達の町でいう所のクエスト看板みたいな場所で依頼でも受け持って木材や他の大雑把なものを集めてきて…」
他の大雑把な物って…船の素材で言う所のマスト系統の素材か…?
そこのところははっきりして欲しいと思いながら、俺は話をじっと聞いていたわけだが…
「あと、具体的に必要な素材は後でゾーネ…」
「わしが作った設計図上必要な道具を集めてくるのじゃ…」
「……」
さっきゾーネに台詞を盗られたのが若干気に入らなかったのか…メリィは顔をしかめたが…ま、とにかく素材を集めればいいんだろ…?
任せておけって!!
そして俺たちは今日は旅の疲れや状況整理の為…宿屋を開かずに寝ることになったのだった…
で…寝ようとしたとき、俺の部屋の中にルタとセムちゃんがいることに気がつく俺…いや、ふよふよときーちゃんも浮いていたし、布団の中からぴょこんと飛び出しているキュラスの衣服の一部…
これから俺はどのような反応を示せばいいんだ!?
いや…そもそもなんで彼女達…幼女組の半数以上が俺の部屋に集結している!?どうしてこんな状況になったのかを説明プリーズ!
「あれ…ゾーネちゃんは…?」
「ゾーネ?この部屋にはいないけどどうしたんだ?」
ゾーネがなぜここにいると思ったんだこいつら…?
「おかしいな…ゾーネちゃんがここに来たと思ったのに…」
「あはー…ここに来たよー!」
「あたいも見たけど…気のせいだったのかな?」
……何か引っかかるな…こんなに大勢が俺の部屋にゾーネが入っていくのを見たというのか…
ま、まさか!?
俺はここであることを考えた…ゾーネが俺の部屋にこっそり潜んでいるという半ば嘘とは言い切れない可能性だ…
もしもそれが事実だとしたら…俺はこの事実を無視することが出来ないぜ!
そして俺がタンスを良く調べるとそこに明らかに誰か通ることが出来そうな穴が…これ、明らかに怪しいぜ…?
小さな穴はとても俺が通れるような大きさではなかったため…どうすれば良いのか真剣に悩んだが、俺は良い事を考えたんだ!
こいつらに行って確かめてもらえば良いじゃないか!
「なぁ、この奥を確かめてきてもらってもいいか?」
「えぇ〜…あたい、めんどくさい事したくないなぁ…」
「ルタちゃん…お兄さんが言っている事だし行ってみようよ…」
セムちゃん…やっぱり君は良い家の身分のはずなのに本当にいい人だ!
そしてその後、少ししてから彼女達が帰ってきたが別にコレといったことは無かったようだ…
少し、気にしすぎなのかな…?
「くぅ…そろそろ寝るかな…明日からめんどくさいことになっていきそうだし…」
俺はそこで疲れたので眠りに着くことにした…明日からは船の素材を集めていかないといけないしな?
そしてデメトリオが寝た後…
タンスのところにあいた穴からこっそり忍び寄る影が数個あった…
「ゾーネちゃん…まさかこんなところに抜け穴を作っていたなんて…
「賢いじゃろ?ここを利用してそっとこやつの部屋に忍び込んで実験で精を絞り取って毎日飲んでいるのじゃ!おぬしらも飲むか?」
「……やっぱり、お兄さんが寝ている間にこんな事するなんてよくないと思います!」
「…眠いよー、寝るー…」
「あ…ルタもきーちゃんも意気地なしだな…あれじゃあ悪い女にはなれないぞ?あたいは飲む!」
「私も…調教のために勉強するー!!」
「くっふっふっふ……では…搾取するとするかのぉ…」
そしてデメトリオが今日も変な夢を見たのは言うまでも無い…
あっ!どうやってその機械を壊れた船から海を渡って無事に持ってきたのか…
それは聞かない方向で…は、ははっ…
12/03/24 02:37更新 / デメトリオン
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