14 幼女の癖に強すぎだ
「うぅ…こ、ここは…洞窟の最深部か？いてて…」
俺は、野生のウシオニに洞窟の奥まで引きづられて、わらのたくさん敷かれた所に放り投げられた。若干暖かいな…このわら…
やけに冷静に物事を判断している俺がいたが、決して落ち着いているわけじゃないぞ！？むしろ、すごく焦ってるんだぜ俺…
「はぁー…はぁー…お、オトコ…はぁー…」
……変に刺激しないほうがよさそうだなぁ今は…
隙を突いて逃げることが出来ればいいのに、今あの野生のウシオニのいる場所はあきらかに駄目だろ！？なんで出口付近のところで食料をあさっているんだよ！？
あれじゃあ脇をすり抜けてこっそり逃げようとしたときにはもうつかまってるよなぁ…どうしようか？
「……本当に俺、ついてないよなぁ…そうだ！こっそり空き箱の中に忍び込んでしまえばうまく撒けるんじゃないか？」
相変わらず…俺って結構いいアイデア出すよな！？
「成功したことはないけど…今回なら上手くいく気がするぜ…」
「何が上手くいくのぉ？そろそろ…久しぶりのオトコの味を味わいたいなぁ…」
し、しまった！まさか、声が漏れていたのか！？
やばいぜ…俺、今年最大の危機！？
あたふたしている俺を尻目にウシオニは着々と距離を縮めてくる…
たぶん、今回は助けになんて誰も来てくれないだろうなと思った俺は、自分の剣を抜き、臨戦態勢に入った！
こうなったら敵のウシオニを幼女化させて戦闘能力をカットするしかない！
問題はウシオニの体力がどれほどあるかなんだが…
「うおぉ！！俺の心の中に秘められた力の存在を信じて！！」
そういいながら、ウシオニの足の端っこを剣で叩いてみた。
来い！俺の隠されたパワー！
俺は剣を構えている状態でウシオニの体が幼女化するのを待っていたが…
ぜんぜん変わる気配がねぇ！！なるほど…タフだってことかな？
俺の攻撃が弱すぎたって可能性も無くは無いけど…
「くそ…やっぱり少し踏み込んで固有技を繰り出して仕留めるのが得策か！？いくぞ！嫉妬ストリームアタック！！」
よし！！クリーンヒットだぜ！
俺の嫉妬ストリームアタックの威力はすごいんだぜ！？これでウシオニの体は幼女化するに違いないな…もしならなかったとしても、少しひるむだろ？
そう…そのタイミングを狙う以外に方法は無い！
「うぐぅ！？痛いなぁ！！」
「え！？な、何でひるまないんだ！？ちょ…マジで！？」
目の前のウシオニはひるむこともなければ幼女化することもなかった…
もう本当に、少し髪が短くなったくらいの違いしかない…
まだ攻撃する必要があるのか！？
そう思いながらも攻撃を躊躇していた俺に、ウシオニは全ての手を伸ばしてきた！
甘いぜ！俺がそう簡単に捕まると…ん？なにかズボンに引っかかったのかな？
「ハハハ…つ・か・ま・え・たっと…」
つ、捕まっただと！？や、やばい！なんて怪力なんだ！？
俺はなすすべもなくわらの方へと放り投げられ、動きを拘束された…
嫌だ！俺は始めての人は自分の決めた人がいいんだ！無理やりなんて…
俺は必死で剣を振りウシオニを近づけないようにする…のに、一切気にしないのってなぜなんだ！？
しかも…もう２０回は攻撃を当てたというのにまだ幼女化しないなんて…
拘束の力も強くなっている気がするぞ！？
「うぅ〜…服邪魔だなぁ…」
そういうと、服の継ぎ目の部分に爪を引っ掛けようとしてきた！まさか、服を裂く気なのか！？やめろ！それは絶対に駄目だ！
「ちょ！？や、やめ…いやぁああ！！」
と情け無い声を上げながら必死に抵抗している俺がそこにいた。
こうなったら…俺の全力で攻撃を叩き込んでやる！！
「くらぇ！これが俺の全力だ！！」
「ん？なんかしたか？それにしてもこの服…繊維が本当に強いなぁ〜…」
き、効いていないだと！？俺の全力も通用しないなんて…
こうなったら…もう俺にすさまじくあるといわれる運補正に頼るしか無いじゃないか！神様！どうか俺に生存する可能性を！！
《その願い…聞き届けたり…》
ん！？誰かさっき何か言ったか！？
「デメトリオ！！まだ無事！？」
か、神様！！ありがとうございます！いや、本当に！
俺はもう、今回も無事に危険を潜り抜けることができたという事実に感動しなくてはいられなくなった。
本当に俺の人生…運だけで成り立ってるよなぁ〜…
アレか？結婚フラグが立たない代わりに命の危険のフラグを緊急回避することが出来るとか！？
それだったら…そんな能力いらないからとっとと結婚させろっての！！
まあいいや…こんな事言うのもなんだけど、俺ってザコだからな…
仲間に戦闘を任せて後ろで援護に回ろうっと…
「てい！！デメトリオからはなれなさい！【ハーピーの空中戦闘武術２式 空牙定昇（首折）！！】」
決まったーーー！！さすがメリィ…狙いがもう本当に的確すぎて怖いぜ…
さすがに後頭部にはるか上空からかかと落としを食らわされたら平然とはしていられないだろうな…
だって、あの威力だったら…俺が食らったら確実に首の骨折れてるって！
あ…だから（首折）なんだな！？
変に納得しているが、ウシオニにダメージが与えられた様子が見えない…
普通にこっちに歩いてきているぜ！？え？どういうことなのあれ！？
「え！？あんなにあのウシオニ強かった？私たちがこの洞窟に閉じ込めていた時期よりもあきらかに強くなってない！？」
「…ちっ、少し…いや、すごく厄介なことになってるじゃねえか…こんなことならはじめから事情を説明して回り道してもらっておくんだったぜ…」
「後悔しても仕方ないよ！？行くよ！」
……は、話が見えねぇ…えっと？山賊たちは今、こっちの仲間なのか？
てことは？このウシオニ…そんなに危険？ま、マジ？
俺が困惑しながらもウシオニと仲間達の戦闘を見ていることで気がついたことが一つあるんだ。
いや…本当に強くないか？あのウシオニ…というか、ウシオニ自体は攻撃の行動をとっていないから、スタミナがすごいのか！？
「…つ、強いのぅあやつ…デメトリオ、お主何回あいつを切ったのじゃ？」
「え？何回って…そりゃあ何回も…って！？ゾーネか？いやぁ最近目立った出番が無くて驚いたよ…」
「わしの出番が無いのはきっと作者の陰謀じゃ…まったく、爆発すればよいのだ！それより、何回斬ったのじゃ？あのウシオニはすでに幼女化しているようじゃが…」
えぇーーー！？違いって髪の毛の長さだけだろ！？それに、あんなに胸が大きいなんて明らかに幼女のステータスじゃないぞ！？
でも…もしも幼女化していたとしたらどれほどの力が身についているんだ？
「う〜ん…そうだな…２２回くらいだったと思うけど…」
「そうか…一回幼女化してから約２０回敵強化をしてしまったとすると…一回の強化が敵のステータス×４倍として…」
ちょっと待てよ…？少し頭の中で計算してみるぜ…
敵の基礎能力を５０としての計算だと…５０×４×２０は…
「４０００じゃな…」
あぁ！？俺が答えようと思ったのに…
「じゃが、わしの考えではあやつの基礎能力は５００程度…強化結果は４００００じゃな…」
は…半端じゃないな…俺の基礎能力がどれくらいなのかによってどれくらいの基準なのかがわかる分、途方も無い数字にびっくりだぜ…
「ゾーネ…少し聞きたいんだけど俺の基礎能力ってどれくらいなの？」
「２じゃな…５にも満たないほどの弱さじゃ。はっきり言うと１３歳の基礎能力と同じじゃ…メリィでさえ基礎能力８０程度じゃからどれほどの強さかはわかるはずじゃ…」
お、俺が２…２だと…
それに、メリィで基礎能力８０！？あのウシオニ…もともとスペックがおかしいだろ！？それなのに、４００００って…絶対に勝てないじゃないか！
俺は心の中でなんてインフレだよと真剣に思ったりもしながら、戦いの行方を見守っていた…
や、やばいぞ！？遂にウシオニが攻撃の構えを…
「ちょこちょこうるさいなぁ…折角の楽しみの邪魔をしないでよ！オトコが逃げちゃうじゃないの！」
「ジャンヌ危ないぞ！ガードだ！」
俺は即座にジャンヌに攻撃が向かっていることを伝えた！後ろで攻撃が来たかどうかを伝えるのが今の俺の仕事だ！
「わかってるから後ろで見てなさいよ！うぐぅ！？な、なんて重い攻撃…」
ジャンヌはしっかりと持っている武器でガードの構えを取ったが、ウシオニの前足が少しかすっただけで物凄く後ろに押しやられた！
「アイネ！お願いだ！一緒に家に伝わるあの技を出そうぜ！」
「姉さまが自分から嫌いだった家の奥義を協力してだそうなんていうとは…どうやら、少々姉さまを誤解していたようです…喜んで！」
お！？まさか…手に汗握る協力技か？
「行くぞアイネ！ハルムーン家奥義！！【死してなお続くストーリー ヴァルハラ】！！」
「奥義合わせ…【今は亡き皇女の残したプライド カースクイーン】！！」
「「そして、二つの技を合わせながら時の流れを操作する…【シィナ・ハルムーンの残した剣技 ファインダー】！！」
さ…３大の大技の予感がするだと！？どんな技が飛び出すんだ！？
俺がすごい技が来ると身構えた次の瞬間…二人の剣から青白い光が飛び出した！あ…あれは…
「す…すげぇ…」
俺の目線には、青白い光で構成されたまるで戦乙女のような幻影が映っていた！しかも…顔がキリっとしておりまさに端正な顔立ちと呼ぶにふさわしい姿だ。
幻影は空気を切り裂くような速さでウシオニに向かって行き、一撃だけウシオニを斬った！
え？大技っぽいのに表現がしょぼいって？しょうがないだろ！？上手く表現できないんだから！
「！？…痛いなぁ〜…大体…世の中は強いものが手に入れた物を自由にする権利を与えられるため、その邪魔をするなんていけないんだ〜…キレるよ？」
ま、まさか…あのウシオニが少し体制を崩すほどの大技だったとは、でも…あきらかにウシオニ怒っちゃったぜ！？
「絶対にあんたら皆殺しだぁーーー！！」
ほらな？怒ってるぜ…だから俺は怒らせないほうがいいと…え？お前はただ犯されかけてただけだろうって？
いや…あれは…そう！罠だよ！
俺が心で何かを言っていると、ウシオニの体毛がふわりと浮遊した！そして…
あれ？あれって…髪の毛！？まさか、全身が髪の毛で覆われていたなんて…
しかも、半端じゃないほどロリってやがるだとぉ！？しかも胸が大きい…
まさか…ロリ巨乳ってやつなのか！？まさか…現実で目にすることがあろうとはなぁ…
「デメトリオ…お主、何胸を見ておるのじゃ？」
「え！？は？な、な、何を言ってるのかさっぱりだぜ！？や、やだなぁ…ははっ…」
……隣にゾーネがいたのを忘れていたな、危ないところだった…
あ！？決して大きい胸＝慈愛とか思っていたわけじゃないんだからね！？
「……いろいろ突っ込みたいが、まぁ放っておいてやるとするかのぅ…」
「胸が大きくなっちゃったから動きにくいなぁ…でも、早く片付けるよーー！」
…俺の剣のせいですごめんなさい…まぁ、大きくなったんだからいいじゃないですか？え？全ての人が大きければ喜ぶって訳じゃないって？
…すいません本当に。
「…胸が大きくなったから？……大きくなったから動きにくい！？…あんなガキまで私の胸が小さいことを馬鹿にするの！？……絶対殺す！」
約１名、変に食いついているリーダーがここにいるけど気にしないでくれよ？
本人結構気にしてるからさ？
「デメトリオ…何？その目は…その哀れみの目…決めた、あなたも戦いなさい…さもなければここに置いて帰っちゃうから…」
ま、また飛び火してきやがったーー！！まさに…視線は災いの元だな…
て…、悠長に構えている場合じゃない！すぐに反論しないと！
「め、メリィ！俺が弱いの知ってるんだろ！？ひ、酷いじゃないか！」
「で？戦わないなら私達ラグーンメンバーは帰っちゃうわよ？ここでウシオニと結婚でもする？あ…子作りも頑張らないとね？いっぱい出してあげるんでしょ？子供は何人作るつもり？パーティには呼んでね？奥さんは大切にね？廃人にはならないでね？」
……こんなに噛まずによく言えたな！？
そして、一瞬だけもしそうなったらのことを考えてみた。
頭の中で廃人になってる俺の姿が変にリアルに展開されていく…
「…喜んで戦わせていただきます…うぅ…」
結局俺は逆らうことも出来ずに戦いに向かうことにした。
もう…本当に泣きたい気分だよ俺…
といっても、泣いて状況が変わるわけじゃない…
俺はきれいにあきらめて戦いのほうに集中することにした…
「邪魔だって言ってるのにちょこまかと動いて…」
「おっと！？本当に危ないなぁ…気をつけないと負けてしまう…」
…すごく威力と勢いがある戦いが展開されており、タイミング悪く入ると酷い目に会いそうだぜ…
巻き込まれたらどうしようと真剣に心配している俺など目もくれず、真面目に戦闘しているウシオニとサラマンダー…
「てりゃあ！オラオラオラオラ〜！！」
「ふっ…力任せに来るなんてね…無駄無駄無駄無駄無駄！！」
ふ、二人の背中に謎の幻影が見えた気がしたが…気のせいなのか？
「お兄さん！宇宙の意思が協力技を出せと…」
「え！？あ…はぁ…」
う、宇宙の意思ってなんだよ…まぁ、適度に戦いに参加できるタイミングをつかめたからいいけどさ…
「タイミングをつかんで宇宙の意思を体に宿すのよおにいちゃん！」
「や、宿すってセムちゃん…どうやって？」
いつもよりもテンションが高いぞセムちゃん？まさか、戦闘になると性格が変わるタイプなのか！？
「私の真似をしてね？変身！！」
「えっと…へ、変身！！」
なんだこのパワーは！？なんだか凄い力を得た気がする！
「……ふん、無事に変身できたみたいね」
「うぉおおお！！こ、この謎のアーマーは一体…」
セムちゃんは長身になりゴスロリ服を身にまとう剣士に…俺はやけに大きな大砲を持った機械になっていた…
こ、コレが宇宙の力か！？なんか、まぐれで変身できた感がして半端じゃないんだが…
「よし！一回きりじゃが、変身光線が当たったようじゃな…正式の発明ではないのじゃが…まあ、いい」
ゾーネの発明品だったのか！？まぁいい…とにかく強くなれたんだろ？
「この力は一回しか使えない…だが、一回あれば十分！咲き乱れよ…黒薔薇乱舞！！」
「え！？この技は強い！？くぅ…」
か、かっこいいエフェクトじゃないか！しかも、ウシオニをひるませてガードまでさせるなんて…やべぇ…
セムちゃんは一回大技をしたら元の姿に戻ったけど…それでも半端じゃないほどのかっこよさだったぜ！？
よぉし！俺も決めてやるぜ！！
「俺の青春時代よ…俺は結婚フラグが立つのを２１年待ったのだ…」
そういいながら、持っているバズーカを構え狙いを定めた…
勝負は一回…決めてやる！俺のかっこいいシーンはこの一回きりだ！！
「嫉妬ミックバズーカの威力を見せてやる…えっと…ここに剣をセットしてっと…世界中のやつらよ…私は帰ってきたぁーーーーーー！！」
「え！？きゃああああああ！！」
俺の放った剣はウシオニの腹に命中し、回転攻撃が加わったことで物凄いヒット数を生み出していた。
俺の姿は元の姿に戻ったが、これで物凄いダメージを与えることに成功したはずだ…悔いはないぜ！
「馬鹿もの！！なぜあやつにあんな技を当てたのじゃ！？ただでさえ強化されていたのに、これ以上強化してどうするのじゃ！？２００HITはやばいぞ…」
「あは…あははははははははっ！力…力ぁ！！体が火照ってきたぁ…もう…オトコを我慢できなぃ！！」
やばい！もうこれ以上は持たないぞ！？
「逃げるのじゃ！みんな、この荷車に乗るのじゃ！」
その荷車どこから出した？なんて俺は聞かないぜ！
「私達は行けない…ここで食い止めないと…」
この山賊たち…こいつを食い止めていたんだな？だからあんな無理やりに俺をぼこぼこに殴りつけて追い返そうとしていたんだな…
結構いいやつじゃないか…とても置いていけないぜ…
「あんた達も来ないと…このままだとやばいだろ！？」
「……相手は子供だよ？あんたのようなザコに心配されなくても無事に決まっているでしょ？」
「アイネ…俺の剣だ、もってけ…」
「姉さま…しかしそれではあなたの武器が…」
「大丈夫だ…拳がある！」
……感動の別れシーンだが…悠々と見ているわけには行かない！助けないと！
「お、俺も手伝うよ！…いてっ！！」
俺は、勢いよく立ったおかげで後頭部を天井に強くぶつけてしまった…
でも、痛がっている場合では…
「待てーーー！！」
「…もう仕方がないよ！ファイヤーボール！！」
山賊の一人…ナスカが荷車に魔法を当てると、荷車は一気に加速した！
「姉さまーーー！！」
アイネの叫びが響き、荷車が無常にも坂を下っていった。
「神様ーーー！！助けてーー！！」
荷車はどんどん速度を増して行き、俺はまるで重力に逆らって落ちている感覚を味わっていた。あれだな…もう、半泣きの状態だぜ…
「ね…姉さま…」
「アイネ…あなたの姉さまなら大丈夫よ…あんな胸が大きいだけのガキに負けるわけないじゃない…」
「り、リーダー…」
……なんか俺の後ろのほうで結束が高まりそうな会話をしているけど、俺はそれどころじゃねぇ！！
「ぞ、ゾーネ！この荷車…どうやって止まるんだ！？」
「そこはスカニが設計したはずじゃからスカニに聞いて欲しいのじゃ！あと、むやみに話すと舌を噛むぞ？」
「スカニ！どうやって止まるの！？」
「あ……悪い、車輪の速度アップに夢中でブレーキつけてなかったわ…すまねぇ…」
「嘘だろーーーー！？」
これから俺達はどうなってしまうんだ！？誰か…
俺をこの運がいいのか悪いのかわからない世界から救ってくれーーー！！
俺は、野生のウシオニに洞窟の奥まで引きづられて、わらのたくさん敷かれた所に放り投げられた。若干暖かいな…このわら…
やけに冷静に物事を判断している俺がいたが、決して落ち着いているわけじゃないぞ！？むしろ、すごく焦ってるんだぜ俺…
「はぁー…はぁー…お、オトコ…はぁー…」
……変に刺激しないほうがよさそうだなぁ今は…
隙を突いて逃げることが出来ればいいのに、今あの野生のウシオニのいる場所はあきらかに駄目だろ！？なんで出口付近のところで食料をあさっているんだよ！？
あれじゃあ脇をすり抜けてこっそり逃げようとしたときにはもうつかまってるよなぁ…どうしようか？
「……本当に俺、ついてないよなぁ…そうだ！こっそり空き箱の中に忍び込んでしまえばうまく撒けるんじゃないか？」
相変わらず…俺って結構いいアイデア出すよな！？
「成功したことはないけど…今回なら上手くいく気がするぜ…」
「何が上手くいくのぉ？そろそろ…久しぶりのオトコの味を味わいたいなぁ…」
し、しまった！まさか、声が漏れていたのか！？
やばいぜ…俺、今年最大の危機！？
あたふたしている俺を尻目にウシオニは着々と距離を縮めてくる…
たぶん、今回は助けになんて誰も来てくれないだろうなと思った俺は、自分の剣を抜き、臨戦態勢に入った！
こうなったら敵のウシオニを幼女化させて戦闘能力をカットするしかない！
問題はウシオニの体力がどれほどあるかなんだが…
「うおぉ！！俺の心の中に秘められた力の存在を信じて！！」
そういいながら、ウシオニの足の端っこを剣で叩いてみた。
来い！俺の隠されたパワー！
俺は剣を構えている状態でウシオニの体が幼女化するのを待っていたが…
ぜんぜん変わる気配がねぇ！！なるほど…タフだってことかな？
俺の攻撃が弱すぎたって可能性も無くは無いけど…
「くそ…やっぱり少し踏み込んで固有技を繰り出して仕留めるのが得策か！？いくぞ！嫉妬ストリームアタック！！」
よし！！クリーンヒットだぜ！
俺の嫉妬ストリームアタックの威力はすごいんだぜ！？これでウシオニの体は幼女化するに違いないな…もしならなかったとしても、少しひるむだろ？
そう…そのタイミングを狙う以外に方法は無い！
「うぐぅ！？痛いなぁ！！」
「え！？な、何でひるまないんだ！？ちょ…マジで！？」
目の前のウシオニはひるむこともなければ幼女化することもなかった…
もう本当に、少し髪が短くなったくらいの違いしかない…
まだ攻撃する必要があるのか！？
そう思いながらも攻撃を躊躇していた俺に、ウシオニは全ての手を伸ばしてきた！
甘いぜ！俺がそう簡単に捕まると…ん？なにかズボンに引っかかったのかな？
「ハハハ…つ・か・ま・え・たっと…」
つ、捕まっただと！？や、やばい！なんて怪力なんだ！？
俺はなすすべもなくわらの方へと放り投げられ、動きを拘束された…
嫌だ！俺は始めての人は自分の決めた人がいいんだ！無理やりなんて…
俺は必死で剣を振りウシオニを近づけないようにする…のに、一切気にしないのってなぜなんだ！？
しかも…もう２０回は攻撃を当てたというのにまだ幼女化しないなんて…
拘束の力も強くなっている気がするぞ！？
「うぅ〜…服邪魔だなぁ…」
そういうと、服の継ぎ目の部分に爪を引っ掛けようとしてきた！まさか、服を裂く気なのか！？やめろ！それは絶対に駄目だ！
「ちょ！？や、やめ…いやぁああ！！」
と情け無い声を上げながら必死に抵抗している俺がそこにいた。
こうなったら…俺の全力で攻撃を叩き込んでやる！！
「くらぇ！これが俺の全力だ！！」
「ん？なんかしたか？それにしてもこの服…繊維が本当に強いなぁ〜…」
き、効いていないだと！？俺の全力も通用しないなんて…
こうなったら…もう俺にすさまじくあるといわれる運補正に頼るしか無いじゃないか！神様！どうか俺に生存する可能性を！！
《その願い…聞き届けたり…》
ん！？誰かさっき何か言ったか！？
「デメトリオ！！まだ無事！？」
か、神様！！ありがとうございます！いや、本当に！
俺はもう、今回も無事に危険を潜り抜けることができたという事実に感動しなくてはいられなくなった。
本当に俺の人生…運だけで成り立ってるよなぁ〜…
アレか？結婚フラグが立たない代わりに命の危険のフラグを緊急回避することが出来るとか！？
それだったら…そんな能力いらないからとっとと結婚させろっての！！
まあいいや…こんな事言うのもなんだけど、俺ってザコだからな…
仲間に戦闘を任せて後ろで援護に回ろうっと…
「てい！！デメトリオからはなれなさい！【ハーピーの空中戦闘武術２式 空牙定昇（首折）！！】」
決まったーーー！！さすがメリィ…狙いがもう本当に的確すぎて怖いぜ…
さすがに後頭部にはるか上空からかかと落としを食らわされたら平然とはしていられないだろうな…
だって、あの威力だったら…俺が食らったら確実に首の骨折れてるって！
あ…だから（首折）なんだな！？
変に納得しているが、ウシオニにダメージが与えられた様子が見えない…
普通にこっちに歩いてきているぜ！？え？どういうことなのあれ！？
「え！？あんなにあのウシオニ強かった？私たちがこの洞窟に閉じ込めていた時期よりもあきらかに強くなってない！？」
「…ちっ、少し…いや、すごく厄介なことになってるじゃねえか…こんなことならはじめから事情を説明して回り道してもらっておくんだったぜ…」
「後悔しても仕方ないよ！？行くよ！」
……は、話が見えねぇ…えっと？山賊たちは今、こっちの仲間なのか？
てことは？このウシオニ…そんなに危険？ま、マジ？
俺が困惑しながらもウシオニと仲間達の戦闘を見ていることで気がついたことが一つあるんだ。
いや…本当に強くないか？あのウシオニ…というか、ウシオニ自体は攻撃の行動をとっていないから、スタミナがすごいのか！？
「…つ、強いのぅあやつ…デメトリオ、お主何回あいつを切ったのじゃ？」
「え？何回って…そりゃあ何回も…って！？ゾーネか？いやぁ最近目立った出番が無くて驚いたよ…」
「わしの出番が無いのはきっと作者の陰謀じゃ…まったく、爆発すればよいのだ！それより、何回斬ったのじゃ？あのウシオニはすでに幼女化しているようじゃが…」
えぇーーー！？違いって髪の毛の長さだけだろ！？それに、あんなに胸が大きいなんて明らかに幼女のステータスじゃないぞ！？
でも…もしも幼女化していたとしたらどれほどの力が身についているんだ？
「う〜ん…そうだな…２２回くらいだったと思うけど…」
「そうか…一回幼女化してから約２０回敵強化をしてしまったとすると…一回の強化が敵のステータス×４倍として…」
ちょっと待てよ…？少し頭の中で計算してみるぜ…
敵の基礎能力を５０としての計算だと…５０×４×２０は…
「４０００じゃな…」
あぁ！？俺が答えようと思ったのに…
「じゃが、わしの考えではあやつの基礎能力は５００程度…強化結果は４００００じゃな…」
は…半端じゃないな…俺の基礎能力がどれくらいなのかによってどれくらいの基準なのかがわかる分、途方も無い数字にびっくりだぜ…
「ゾーネ…少し聞きたいんだけど俺の基礎能力ってどれくらいなの？」
「２じゃな…５にも満たないほどの弱さじゃ。はっきり言うと１３歳の基礎能力と同じじゃ…メリィでさえ基礎能力８０程度じゃからどれほどの強さかはわかるはずじゃ…」
お、俺が２…２だと…
それに、メリィで基礎能力８０！？あのウシオニ…もともとスペックがおかしいだろ！？それなのに、４００００って…絶対に勝てないじゃないか！
俺は心の中でなんてインフレだよと真剣に思ったりもしながら、戦いの行方を見守っていた…
や、やばいぞ！？遂にウシオニが攻撃の構えを…
「ちょこちょこうるさいなぁ…折角の楽しみの邪魔をしないでよ！オトコが逃げちゃうじゃないの！」
「ジャンヌ危ないぞ！ガードだ！」
俺は即座にジャンヌに攻撃が向かっていることを伝えた！後ろで攻撃が来たかどうかを伝えるのが今の俺の仕事だ！
「わかってるから後ろで見てなさいよ！うぐぅ！？な、なんて重い攻撃…」
ジャンヌはしっかりと持っている武器でガードの構えを取ったが、ウシオニの前足が少しかすっただけで物凄く後ろに押しやられた！
「アイネ！お願いだ！一緒に家に伝わるあの技を出そうぜ！」
「姉さまが自分から嫌いだった家の奥義を協力してだそうなんていうとは…どうやら、少々姉さまを誤解していたようです…喜んで！」
お！？まさか…手に汗握る協力技か？
「行くぞアイネ！ハルムーン家奥義！！【死してなお続くストーリー ヴァルハラ】！！」
「奥義合わせ…【今は亡き皇女の残したプライド カースクイーン】！！」
「「そして、二つの技を合わせながら時の流れを操作する…【シィナ・ハルムーンの残した剣技 ファインダー】！！」
さ…３大の大技の予感がするだと！？どんな技が飛び出すんだ！？
俺がすごい技が来ると身構えた次の瞬間…二人の剣から青白い光が飛び出した！あ…あれは…
「す…すげぇ…」
俺の目線には、青白い光で構成されたまるで戦乙女のような幻影が映っていた！しかも…顔がキリっとしておりまさに端正な顔立ちと呼ぶにふさわしい姿だ。
幻影は空気を切り裂くような速さでウシオニに向かって行き、一撃だけウシオニを斬った！
え？大技っぽいのに表現がしょぼいって？しょうがないだろ！？上手く表現できないんだから！
「！？…痛いなぁ〜…大体…世の中は強いものが手に入れた物を自由にする権利を与えられるため、その邪魔をするなんていけないんだ〜…キレるよ？」
ま、まさか…あのウシオニが少し体制を崩すほどの大技だったとは、でも…あきらかにウシオニ怒っちゃったぜ！？
「絶対にあんたら皆殺しだぁーーー！！」
ほらな？怒ってるぜ…だから俺は怒らせないほうがいいと…え？お前はただ犯されかけてただけだろうって？
いや…あれは…そう！罠だよ！
俺が心で何かを言っていると、ウシオニの体毛がふわりと浮遊した！そして…
あれ？あれって…髪の毛！？まさか、全身が髪の毛で覆われていたなんて…
しかも、半端じゃないほどロリってやがるだとぉ！？しかも胸が大きい…
まさか…ロリ巨乳ってやつなのか！？まさか…現実で目にすることがあろうとはなぁ…
「デメトリオ…お主、何胸を見ておるのじゃ？」
「え！？は？な、な、何を言ってるのかさっぱりだぜ！？や、やだなぁ…ははっ…」
……隣にゾーネがいたのを忘れていたな、危ないところだった…
あ！？決して大きい胸＝慈愛とか思っていたわけじゃないんだからね！？
「……いろいろ突っ込みたいが、まぁ放っておいてやるとするかのぅ…」
「胸が大きくなっちゃったから動きにくいなぁ…でも、早く片付けるよーー！」
…俺の剣のせいですごめんなさい…まぁ、大きくなったんだからいいじゃないですか？え？全ての人が大きければ喜ぶって訳じゃないって？
…すいません本当に。
「…胸が大きくなったから？……大きくなったから動きにくい！？…あんなガキまで私の胸が小さいことを馬鹿にするの！？……絶対殺す！」
約１名、変に食いついているリーダーがここにいるけど気にしないでくれよ？
本人結構気にしてるからさ？
「デメトリオ…何？その目は…その哀れみの目…決めた、あなたも戦いなさい…さもなければここに置いて帰っちゃうから…」
ま、また飛び火してきやがったーー！！まさに…視線は災いの元だな…
て…、悠長に構えている場合じゃない！すぐに反論しないと！
「め、メリィ！俺が弱いの知ってるんだろ！？ひ、酷いじゃないか！」
「で？戦わないなら私達ラグーンメンバーは帰っちゃうわよ？ここでウシオニと結婚でもする？あ…子作りも頑張らないとね？いっぱい出してあげるんでしょ？子供は何人作るつもり？パーティには呼んでね？奥さんは大切にね？廃人にはならないでね？」
……こんなに噛まずによく言えたな！？
そして、一瞬だけもしそうなったらのことを考えてみた。
頭の中で廃人になってる俺の姿が変にリアルに展開されていく…
「…喜んで戦わせていただきます…うぅ…」
結局俺は逆らうことも出来ずに戦いに向かうことにした。
もう…本当に泣きたい気分だよ俺…
といっても、泣いて状況が変わるわけじゃない…
俺はきれいにあきらめて戦いのほうに集中することにした…
「邪魔だって言ってるのにちょこまかと動いて…」
「おっと！？本当に危ないなぁ…気をつけないと負けてしまう…」
…すごく威力と勢いがある戦いが展開されており、タイミング悪く入ると酷い目に会いそうだぜ…
巻き込まれたらどうしようと真剣に心配している俺など目もくれず、真面目に戦闘しているウシオニとサラマンダー…
「てりゃあ！オラオラオラオラ〜！！」
「ふっ…力任せに来るなんてね…無駄無駄無駄無駄無駄！！」
ふ、二人の背中に謎の幻影が見えた気がしたが…気のせいなのか？
「お兄さん！宇宙の意思が協力技を出せと…」
「え！？あ…はぁ…」
う、宇宙の意思ってなんだよ…まぁ、適度に戦いに参加できるタイミングをつかめたからいいけどさ…
「タイミングをつかんで宇宙の意思を体に宿すのよおにいちゃん！」
「や、宿すってセムちゃん…どうやって？」
いつもよりもテンションが高いぞセムちゃん？まさか、戦闘になると性格が変わるタイプなのか！？
「私の真似をしてね？変身！！」
「えっと…へ、変身！！」
なんだこのパワーは！？なんだか凄い力を得た気がする！
「……ふん、無事に変身できたみたいね」
「うぉおおお！！こ、この謎のアーマーは一体…」
セムちゃんは長身になりゴスロリ服を身にまとう剣士に…俺はやけに大きな大砲を持った機械になっていた…
こ、コレが宇宙の力か！？なんか、まぐれで変身できた感がして半端じゃないんだが…
「よし！一回きりじゃが、変身光線が当たったようじゃな…正式の発明ではないのじゃが…まあ、いい」
ゾーネの発明品だったのか！？まぁいい…とにかく強くなれたんだろ？
「この力は一回しか使えない…だが、一回あれば十分！咲き乱れよ…黒薔薇乱舞！！」
「え！？この技は強い！？くぅ…」
か、かっこいいエフェクトじゃないか！しかも、ウシオニをひるませてガードまでさせるなんて…やべぇ…
セムちゃんは一回大技をしたら元の姿に戻ったけど…それでも半端じゃないほどのかっこよさだったぜ！？
よぉし！俺も決めてやるぜ！！
「俺の青春時代よ…俺は結婚フラグが立つのを２１年待ったのだ…」
そういいながら、持っているバズーカを構え狙いを定めた…
勝負は一回…決めてやる！俺のかっこいいシーンはこの一回きりだ！！
「嫉妬ミックバズーカの威力を見せてやる…えっと…ここに剣をセットしてっと…世界中のやつらよ…私は帰ってきたぁーーーーーー！！」
「え！？きゃああああああ！！」
俺の放った剣はウシオニの腹に命中し、回転攻撃が加わったことで物凄いヒット数を生み出していた。
俺の姿は元の姿に戻ったが、これで物凄いダメージを与えることに成功したはずだ…悔いはないぜ！
「馬鹿もの！！なぜあやつにあんな技を当てたのじゃ！？ただでさえ強化されていたのに、これ以上強化してどうするのじゃ！？２００HITはやばいぞ…」
「あは…あははははははははっ！力…力ぁ！！体が火照ってきたぁ…もう…オトコを我慢できなぃ！！」
やばい！もうこれ以上は持たないぞ！？
「逃げるのじゃ！みんな、この荷車に乗るのじゃ！」
その荷車どこから出した？なんて俺は聞かないぜ！
「私達は行けない…ここで食い止めないと…」
この山賊たち…こいつを食い止めていたんだな？だからあんな無理やりに俺をぼこぼこに殴りつけて追い返そうとしていたんだな…
結構いいやつじゃないか…とても置いていけないぜ…
「あんた達も来ないと…このままだとやばいだろ！？」
「……相手は子供だよ？あんたのようなザコに心配されなくても無事に決まっているでしょ？」
「アイネ…俺の剣だ、もってけ…」
「姉さま…しかしそれではあなたの武器が…」
「大丈夫だ…拳がある！」
……感動の別れシーンだが…悠々と見ているわけには行かない！助けないと！
「お、俺も手伝うよ！…いてっ！！」
俺は、勢いよく立ったおかげで後頭部を天井に強くぶつけてしまった…
でも、痛がっている場合では…
「待てーーー！！」
「…もう仕方がないよ！ファイヤーボール！！」
山賊の一人…ナスカが荷車に魔法を当てると、荷車は一気に加速した！
「姉さまーーー！！」
アイネの叫びが響き、荷車が無常にも坂を下っていった。
「神様ーーー！！助けてーー！！」
荷車はどんどん速度を増して行き、俺はまるで重力に逆らって落ちている感覚を味わっていた。あれだな…もう、半泣きの状態だぜ…
「ね…姉さま…」
「アイネ…あなたの姉さまなら大丈夫よ…あんな胸が大きいだけのガキに負けるわけないじゃない…」
「り、リーダー…」
……なんか俺の後ろのほうで結束が高まりそうな会話をしているけど、俺はそれどころじゃねぇ！！
「ぞ、ゾーネ！この荷車…どうやって止まるんだ！？」
「そこはスカニが設計したはずじゃからスカニに聞いて欲しいのじゃ！あと、むやみに話すと舌を噛むぞ？」
「スカニ！どうやって止まるの！？」
「あ……悪い、車輪の速度アップに夢中でブレーキつけてなかったわ…すまねぇ…」
「嘘だろーーーー！？」
これから俺達はどうなってしまうんだ！？誰か…
俺をこの運がいいのか悪いのかわからない世界から救ってくれーーー！！
12/02/03 23:46更新 / デメトリオン
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