連載小説
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09 俺、墓場に立つ…
次の日の朝……俺はベッドから体を起こすと体の異変に気がついた。
やけに首の骨の部分が痛いんだよなぁ…
そう思いながら、いつものように朝飯で食べるシチューを作りに行く。

俺がロビーに行くと、ロビーがとんでもないことになっていた!
あたりに、俺が前にステイ家の人たちからもらった酒のビンが転がっており、さらには、そこらへんで倒れているモンスターラグーンのメンバーたち…
こいつら…絶対昨晩飲み明かしやがったな…
「……仕方が無い、早めにこのビンは掃除しておくか。朝起きてすぐに掃除する羽目になるなんて…」
そう愚痴を言いながらも、俺は誰も起こさないようにそっとビンを掃除していく。

そして、ついに俺が残しているビンは3つ…
でも、あれは掃除するのには少し勇気がいるよなぁ…
一つ目のビンは、ジャンヌの太剣のすぐ真横で股の間…
二つ目は、なぜかまだ石化していないヘレンの胸の間…
最後の一本は…なんとセムちゃんが口に咥えたまま眠っているじゃないか!
本当に…どういった飲み方をしてこうなったのか…

早速、俺は一本目のビンを取り捨てる作業に入っていった。
「頼むから、起きないでくれよ…他のメンバーが来るって状況も無しって方向で…」
だってそうだろ?もしも俺がビンを取っていただけにせよ、男が安らかな寝息を立てている女性の股に手を伸ばしている状況だぜ!?
本人が見ても、第3者が見ても…俺が悪い扱いになるじゃないか!
……ふ〜っ、良かった…
無事にビンを取ることに成功した俺…股の部分をかすかに覆っているあの布の部分がいやらし…いや、なんでもない!
最近、雑念を抱くことが多くなっている気がする…

二本目…次は結構の強敵だ。
あの大きな胸の間に挟まっているビン…なんともエロ…いや、なんでもない。
本当にどうしたんだ俺…旅に出る前はこんな光景、見たことは無いけど大丈夫のはずなのに…
「大丈夫かなぁ…もう、コレは運要素を味方につけなきゃだめだよなぁ…」
どうするべきか…あの大きな胸を手で片方押さえ、もう片方の手でビンを抜き取るか、それとも押さえずに一気に行くか…
結局、女性の胸を触る勇気が無い俺は、一気にビンを抜き取った。
「うぅ…んっ…」
あ…あぶねぇ…良かったぜ…天は俺に味方した!
俺は、ぎりぎりのところで何とか耐える(?)ことが出来た。

最後のビン…次は第3者に見つかることをもっとも恐れなくてはいけないな…
多分、その状況で誰かが見たら、俺は幼女を襲うロリコン青年のレッテルが貼られてしまうだろうしな…
なぜか、セムちゃんの視線を強く感じるが、セムちゃんは俺の目の前でビンを口に咥えて眠り込んでいる。
「ここは、すばやく警戒しながらそっと引き抜く方法で行くか…毎回、こういった機会になると一番最後にばれたりするけど、本当にそんな要素いらないからな…」
そして、セムちゃんの口からチュポンっという音を立てながらビンを無事に引き抜いた俺、今日は運がいい気がする。それとも、これから嫌なことが起こるから少しはじめにいい思いをさせておこうって魂胆なのか?
俺は、とにかくこの状況を無事に切り抜けた。それで、いいじゃないか。

「あ!デメトリオさん、起きてたんですか?」
「ん?ナナちゃんか…こんなに早く起きてどうしたんだ?まだ5時だぞ?」
「いや…昨日この部屋で飲み会していたらしいから、掃除しとこうと思って…」
そうか…もう少し遅くこの部屋に来ておけば、俺はあんなにびくびくしながらビンを掃除する作業をしなくても良かったのか……
「掃除なら俺がやっといたから、もう少し寝ていなよ。まだ、外は暗いしね」
「でも…私はお手伝いさんとしてここに来た部分もありますし…」
本当にいい子だな〜ナナちゃんは…今の世の中に、こんなにいい子がいたなんて…
「う〜ん…でもなぁ、仕事という仕事は今のところないし…また今度頼むよ」

俺はナナちゃんに、もう一回寝ておくように促すと、食堂に向かっていった。
食堂では、レベッカがもうすでに料理を作っている。
「…旅は長いのに、そんなに多くの料理を作って持つのか?」
「仕方ないじゃない…人数がいるんだから!でも、あの食料の量だと、あと3日は持つわよ?」
……本当に、今回の旅だけで俺の宿の貯金と食料、全部消し飛んでしまいそうだ。

そして、俺は結局シチューを作ることをあきらめ、今現在風呂に入っている。
そういえば、この湯沸しシステム…どうなってるんだろ?
俺は、いつも使っている湯を沸かすボタンの他に上下のボタンがあったことに気がついた。
「ん?このボタンはなんだ?押してみよう」
俺は上のボタンを連打してみた。しかし、何も起こらなかった…
「なんだよ…ゾーネ、変なボタンを増やすなよな…まぎらわしぃ…」
さて…そろそろ浴槽につかるとするか…
そう言いながら、ゆっくりと浴槽につか…熱ぅ!?
なんだよこの熱さ!?どうなってるんだ!?
あまりの熱さに慌てて浴槽を飛び出し、俺は少しあせっていた。
まさか、あの装置…温度調整か?

俺は湯の温度を元に戻し、体を洗うと風呂を出て自分の部屋に戻り、靴下を編むことにした。もう少しで完成するぞ…
「デメトリオ、そろそろまた行くわよ?」
部屋の外からメリィがこういう声が聞こえてくる。
もう出発の時間か?結構外は暗いんだがなぁ…
「早くするのじゃ!まったく、何をのんびりしておったのか…」
「せめて寝癖くらい直したらどうだ?ゾーネ…まだ、暗いし、のんびりと明るくなるまでまとうよ」
「今日は明るくならないのじゃ!10年に1回くる宵闇の日じゃからのぅ…」
「えぇーー!?宵闇の日!?今日一日中夜じゃないか!」
「そうじゃ!聞けば、宵闇の日の今日…この土地の裁きの神門と呼ばれる場所に珍しい鉱石が出るらしいのじゃ!急ぐぞ!」
えぇ…そんな、めんどくさいことを…のんびり行きたいなぁ、個人的には。

そして、嫌々ながらも宿屋の扉を開けると…
「あぁ〜…出てきたぁ〜…」
「うわぁ!?」
俺は、目線でゾンビの姿を確認すると、慌てて宿の扉を閉める。
「どうしたの?デメトリオ…?」
「外に…外にゾンビたちが徘徊してたぞ!?」
「あ…そういえば、朝が来ないって事は、アンデッドたちが眠ることは無いわね」
「嘘だろーーー!?」
まさか、こんなとんでもない状況になるなんて…
なるほどな、ビンの掃除のときに来ていた奇跡は、後でコレが待っているために神が与えてくれた慈悲…といったところか?

「今日は本当にやめておきましょうよ〜…危険ですよ?」
「…一日でも時間を失うのは痛いわ、行きましょう!」
「無理ですって!命がいくつあっても足りませんよ!?」
「デメトリオよ…そんなに嫌がっても無駄じゃ!」
……冗談じゃないぞ!ゾーネの作ってくれた武器、そんなにダメージを与えれたようには見えないし、大体俺はもともと宿屋の店主だから戦闘には不向きだし…
「とにかく、俺は行きたくないからな!」
「仕方が無いのう…」
そう言って、ゾーネは玄関の扉の近くにあるボタンを押した。
というか、あんなところにボタンがあったんだな…
本当に、この宿の持ち主に内緒で変な機能を続々増やしていきやがって…
で、一体何の機能なんだ?

そして、怪訝に俺がゾーネを見つめていると…
いきなり床が跳ね上がり、俺と他のメンバーが宿から追い出される。
そして、俺は物凄い勢いで転がり、俺の宿はまたルービックキューブになった。
「ぐはぁっ!?痛いな…悪い」
俺は誰かに思いっきり当たったので、誤りざまに無様に起き上がった。
「うはぁ〜…やった〜、一番のり〜…」
起き上がると、どうやら俺はゾンビにローリングアタックをしてしまっていたらしい…、大勢のゾンビに囲まれている俺がそこにいた。
中には、昨晩俺が少女化させたゾンビもちらほら混じっている。
唯一の救いは、どうやらこの場所にいるアンデッドたちはゾンビのみ…他のアンデッドたちの姿が消えているのは、とても気がらくだ。
「うぅ〜…おなかすいたなぁ〜…」
「えへぇ〜…おいしそうだなぁ〜…」
「ふっふっふ、今回の俺は前回とは違うぜ!今回は俺が戦わなくても仲間がやってくれるからな!」
仲間がいるというのは、これほどまでに心強いものなんだな。

そう思いながら、のんびりと構えると、俺は早速後ろから押し倒された!
だが、慌てることは無い…俺には大勢の仲間が…
「誰か、俺を助けてくれーー!!」
「誰もデメトリオの心配をしている暇が無いのよ…自分で抜け出して!」
「デメトリオ!貴殿はこのようなところで終わる男ではないだろう?」
メリィ…アイネ…そんな仕打ちは無しだろーーー!?
まさか…誰も俺を助けてくれない!?
「嘘だろ!?くそっ…」
俺は、慌てて背中に抱きついてきているゾンビを慌てて引き剥がす。
「あぁ〜…逃げられちゃった〜…」
「あきらめないよ〜…」
「くそっ、このままだとやばいぞ…」
俺は、そう思いながら自分の剣を構えた。

周りを見回すと、物凄くかっこいい攻撃で敵をこかしていくジャンヌと、すばやい動きで敵を錯乱させているチェルシー…
そして、剣を振るたびに剣の刃の波動がゾンビを切り裂き、半分以上の数をその場で戦意喪失させて、泣かしているアイネ…
波動って…それは卑怯じゃないか!?
「甘いな!数が多くとも戦い方がなっちゃいない!行くぞ!【余り捨てる程のデュランダル】!!」
アイネが固有技を発動(なんども言うが、勝手に俺が判断しているだけ)し、アイネが首から魂状の何かを放出し、剣に宿らせた。
そして、剣を一回振ると、剣の波動が5発同時に放たれ、その波動と同じ速度で後を追いかけ、波動と一緒に攻撃を叩き込んでいる…
「か…かっこいいな…俺の固有技の5倍はかっこいいぞあれ…」
「余所見してる〜…チャンスだよ〜」
おっと…俺はまだ一体も戦意喪失させていないからなぁ…
ここでかっこよく切り抜けないとなぁ…
「悪いな…こんなところで俺は終われ…うぉ!?」

また俺は後ろから押し倒され、床に突っ伏してしまった。
慌てて俺は乗ってきたゾンビを振りほどこうとするが…
「みんな乗っかれ〜…」
「あはぁ…逃がさないよ〜…」
「うわぁ!!は、放せ!」
俺を取り囲んでいたゾンビたちがいっせいに俺に群がって来て、俺の動きを封じて来た。
ゾンビたちは普通の女性ほどの力しかないとはいえ、これほどの数がいたら俺でも振り払えない!つまり…チェックメイトって事なのか!?
「お兄さん!危ない!【宇宙エネルギー1式】!」
「きゃぁ!うわ〜ん…いたいよぉ〜!」
な、なんだ!?いきなり上にのしかかってきていたゾンビが蹴散らされていったぞ!?

俺は、すぐに上のゾンビを蹴散らした謎の人物の方向を見る。
そこには、セムちゃんが自分の腕でゾンビに体当たりしているところだ。
「セムちゃん!本当に助かったよ!」
もう油断しない!全力でこの墓場を通り抜けてやる!

「絶対にあきらめないんだからぁ〜…」
「ふっふっふ…俺はな…本気を出せばなかなかに強いんだぞ!?」
そして、俺は自分の剣を構える。
「うおぉ!せりゃあ!」
俺は思いっきり剣を振り下ろした。振り下ろす速度が遅いとか言うんじゃないぞ!?こう見えて頑張ってるんだからな?
そして、ゾンビたちがだんだん幼女化していく!
「はぁ…これで俺に対する戦意がなくなるわけじゃないからな…本音、この武器役に立たないじゃないか…」

そして、ついに俺の周りは幼女化したゾンビでいっぱいになった。
ここは幼女天国か?いいや、地獄だよ…
そういえば、幼女化した敵をさらに攻撃するとどうなるんだ?
「うぅ〜…負けないからね〜…」
「……試してみるか!【嫉妬ストリームアタック】!」
俺は、またも自分の過去の嫉妬シーンを思い出し横切りを繰り出す俺…

そして、幼女化したゾンビの体に変化が…
「え…変化なしだと?いや…そんな馬鹿な!」
「あは…あははははははっ!何これ〜…何か力がみなぎってくる気がする〜」
「はぁ…はぁ…もう、本当に我慢できないよぅ…」
攻撃が当たった二体…き、凶暴化しただと…?いや、違う…あれは…
あれは、世間一般的に言う、LVが上がったってやつじゃないのか!?
ゾーネめぇ…本当に余計な発明ばかりしやがって…
「デメトリオ!そろそろ数が減ってきたから、ここを離れるわよ!」

どうやら、ある程度の数が戦意を喪失したために、ここから離れるらしい。
ようやくか…助かった〜…
「OK!逃げよう!今すぐ逃げよう!とにかく逃げよう!」
「…デメトリオ、貴殿はもう少し力をつけてマッチョになったほうがよさそうだな…」
そして、俺達は走りながらこの場所を後にする。

「逃がさない〜…あは…あはははははははっ!!」
「この力…後は精力さえ補充できれば、私たちはさいきょーだねお姉ちゃん!」
俺達は物凄い速度でこの場所から逃げているはずなのだが…
「あれ?俺がさっき攻撃を当てたあいつら…早くないか?」
明らかに他のゾンビよりも早く俺たちのほうへと走ってくる!
「お願い〜…男のほうだけ置いていってよぉぉぉぉぉぉ!」
そういいながら、確実に俺たちとの間を狭めている彼女たち…
そう言えば、彼女たちの服装…見覚えがある。
確か…フェルス興国内で俺が生まれるよりもずっと前に話題になってた姉妹じゃないか?確か、町で必死に暮らしていた人たちをターゲットに追いはぎなどを繰り返してきたセルシー姉妹じゃないか?
30年前にフェルス興国自警団(当時)の手によって国外追放を食らったって博物館で見たぞ!?
本当に…どうしてこんなところにいるんだよ…
というか、足早!

「くっ…ちょっとデメトリオさん、私を背負ってて!」
「え!?み、ミリアナ…何をするつもりなんだ!?」
「私が魔法で食い止めるから…デメトリオさんは私を背負って走ってて!」
そんな…俺、力ぜんぜん無いのに…
「体重…重くないよな?」
「殴るよ、あんた…」
「デメトリオは頼りないから、あたしが背負うよ」
メリィが、即座にこう言い放った。
……背負わなくなってすんだので、少しは安堵したが…
素直に背負わなくてラッキーと喜べない状況だなこれ…

「よし!この星の摂理をゆがめる王の魂よ…我が呼び声に答えよ!【凶皇グラビディ・フェイロッド・シエスタ】!」
ミリアナが呪文…というか、固有技を発動すると、いきなりセルシー姉妹の頭上に時空をゆがめて大きな電磁球体が発生した。
……えぇーー…はじめのほうからこんな技ってありなのかよ…
まぁ、普段のときよりもキリッとしていたので、ミリアナには期待していたけど…ここまで反動が来そうだなアレ…
「……姉さん、何アレ?」
「さぁ〜…はぁっ…私たちのこの力の敵じゃないわよ?」
な…にぃ!?あの電磁球体を素手で止めただと!?
さらに、その状態でこっちに相変わらずの速度で走ってくる。

「やばいわよ!みんな!もっと急いで!」
「ぜぇ…ぜぇ…俺、もう無理…」
駄目だ…今までの人生で一番本気で走っている気がするなぁ…
こ、呼吸が苦しいぜ…
「あはぁ…そろそろ、男が手に入るよ〜…」
「この手に持っている電磁球体どうする?お姉ちゃん?」
「その辺に捨てておきなさいよ〜…」
こういったと思うと、俺たちのすぐ後ろのほうに思いっきり電磁球体を投げてくるセルシー妹…
俺達はその電磁球体が放った真空波にあおられて進行方向の方角に吹き飛ばされる!

この状況…まさに俺は今、空を飛んでいる!
「やった!俺、ついに空を飛んだぞ〜!」
まぁ、飛んだというよりは吹き飛んでいたのだが…
……え?ちょっと!なんだよあの大きな門!アレが裁きの神門か!?
いやいや、そんなところにあったら駄目じゃないか!
そう、きれいに俺の飛んでいる進行方向には門の壁が展開されており、このままではよけることは!
「ぐほぉっ!?」
出来なかった…コレ…かなり痛いぞ…
「デメトリオ〜!そこにおるのじゃ〜!」
「へ…?がはぁっ!?」
お次にゾーネのとび蹴りが腹に入り込んでくる…まさか、まさかのわき腹…
その後、吹き飛んでくるモンスターラグーンのメンバーたちは安全に受身を取り、全員無事(?)にここまで来ることが出来た…
よかった…セルシー姉妹は巻くことが出来たみたいだな…

「運が良かったわね…まさか、一日分もカットできるなんて…」
怪我の功名ってやつか?
でも、こんな危険を冒すぐらいなら…本気で旅になんか来なければ…
あ、でもこなかったらひどいことに…どうすればよかったんだよ。
「……ちょっとなぁ…お前ら、折角の祝宴の邪魔をしないでくれないか?」
「だ、誰だ!?」
いきなり聞き覚えの無い声がして、俺は慌ててあたりを見回した。
すると、門の向こう側からアンデッドの女性たちが3人歩いてきた!
俺達は即座に身構える。
「おぉ〜!!コレが、10年に1回しか採ることの出来ない鉱石か…わしの研究心をくすぐるには申し分の無い素材じゃ!」
……一名、例外もいるけどな。
「おいおい…そんなに身構えなくてもいいだろ?」
「あなたたちは、一体なんなの?他のアンデッドたちと同じなら、無理やりでも戦意を喪失させる必要があるけど」
メリィは、目の前のグールに対して敵意をむき出しにしながら小さな声で聞いていた。
俺は何をしていたかって?当然逃げようとしていたに決まっているじゃないか!ちょうど、あの門の隅っこに俺が隠れることが出来そうな空間があるし…

「俺達は他のアンデッドとは違うぜ?まぁ、個人ごとに種族の特性はまだ少し残っているけどな?」
「そうです…私たちはこの墓場でも変わり者といわれているので…」
「といっても、わたくし達も攻撃を受ければ反撃はしますわよ?」
……この3人組み、悪い魔物じゃなさそうだな。
いや、長い間宿屋でいろんな魔物娘達を見てきたから若干はわかるんだよ。
どうやらメリィも、そう考えているようだ。
「…どうやら、私達は誤解していたようね…ごめんなさい」
「いや、いいけど…あんたら、こんな場所をこんな大人数で歩いてわたるなんて自殺行為だぜ?」
わかってるさ…俺だって、本当はここには来たくも無かった!
でもなぁ、知らない間に言いくるめられて…というか、脅されてここに今たってるんだよなぁ…
今思うと、物凄く情けないな俺って…

そして、しばらくしてメリィが俺達の旅の目的を話し終わった後のことだった。
俺はゾーネが鉱石を採掘して、スカニと共にテンションをあげているのを横目で見ながら干し肉を食べていた。
…しまったな、この干し肉味が薄いじゃないか。
「なるほどな…わかったぜ!俺達も一緒に行ってやるよ!ちょうど暇だったしな…」
おいおい…勝手に話を進めないで欲しいんだが…
「いいわ、じゃあ、これからよろしく!」
「おいおい!いいのかそんなに早くに決断を出して!?もしも罠だったら…」
「大丈夫よ、デメトリオは私達についてくればいいの…仲間を増やすかは私が決断を下すの」
「……え?でも…はい」
結局俺はメリィに反抗することも無く門の下で干し肉を食い漁っていた。
「今日中にこの墓場を通過するわよ!みんな、ここらでご飯にしましょう」

……俺の飯がゾーネの口に飛び込んでいるように見えるんだが、俺の気のせいなのか?
「おいゾーネ!それは俺のから揚げじゃないのか!?自分のはもう食べたんだろう?」
「けちけちするでないのじゃ!お主ごときの男のご飯をこの天才が食べているのじゃぞ!?ありがたく思うが良いわ」
「……毎回思うけど、俺が宿の持ち主じゃ?ここらでどちらが上かをはっきりと…」
「ほれっ」
俺がゾーネのほうを向くと、ゾーネが俺に変なゲル状の何かを押さえつけてくる。
俺はそれを勢い良く顔からはがすと、ゾーネをにらみつける。
「本当に馬鹿じゃのう…ふっ」
「は…鼻で笑ったな…畜生…」
そう言いながらも、俺は内心思ってしまう。
駄目だ、これは勝てそうに無いなぁ…なんか。
「悔しかったらもう少し男らしくなるのじゃな!」
うぐぅっ!?正しいことを言っている分、余計にたちが悪いな…
このせりふは、結構の大ダメージで俺の心を削ったぞ…

「そうだ!デメトリオ!貴殿は明らかに筋肉量が足りてない!今から私と筋トレしよう!」
「えぇー!?ちょ…俺が運動できないって知って…嫌ーーーー!」
そして俺は、アイネに引きづられて行った。
12/02/29 20:33更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
どうも!今回の墓場の話は2話でENDだったはずなのですが…
なんと!ライバルが出てきたので、コレは対決させるべきだろうと思ったので、あと1話…墓場なうww

さて…主人公達が次に向かう場所は山脈…そう、山です!
ここでは主人公はどのような魔物に出会うのか…
後から追いかけてくるラグーンメンバーや、旅の途中で出会う魔物娘の子達の情報…待っていますね!
よろしくお願いします!

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