最終話 魔界にもっとも近い宿屋で(ry
あの長かった旅が終わり、俺の宿屋も元々あった場所にふたたび建ってから早1ヶ月…
俺は今、非常にあることについて悩んでいたんだが…って、どうした?
えっ…?前回の話で出てきた脱出ゲームもどきの答えの数字を教えろって…?
しょうがないなぁ…答えは32591182だ…
おそらく、迷うとしたら5と9のところかな…
…そう、俺がヒントで言ったかどうかは覚えてないけれど、鏡が重要なアイテムだったんだよ!!
そして、本棚に大きく出てきた2の数字と鏡の裏に刻まれた6の数字…あれが騙しだったのさ!!
ヒントの中に、本棚の答えと鏡は二度信じるなってあっただろ?それは、こういう意味だったんだよね…
実は本棚の数字は鏡で反射させると2じゃなく、5に見えるんだよ!!そして、6も裏に彫られていた…
実はあの鏡は鏡面と裏面が回るようになっており、まわすと6が9に変わるんだよ!!
これが鏡を二度信じてはいけないってヒントの答えさ…簡単だったろ?
で、俺の悩みのことなんだけど…
俺がそう言おうとしたとき、2階からナッカーサーが布団を持って降りてきたんだ
まったく…どうしてこうもいいタイミングで現れるか…理解に苦しむぜ…あれか?狙っていたのか!?
「デメトリオー?この布団なんだけどさ…嫁たちの布団は干せたんだが、各部屋夫陣の布団を干すスペース無いんだけど…」
「えぇっ!?仕方が無いな…部屋干しでいいだろ今日はっ!!……今度、ゾーネに頼んで部屋増やしてもらわねぇと…」
……えっ?どうして一ヶ月たっているはずなのに、お前の宿屋にナッカーサーがいるのかって?
それは…とある事情があってさぁ…
あれは、俺がフェルス興国に戻って数日したときだったんだ…それまで、宿屋業を少々休んで、メガロス帝国の連中のうち、泊めてあげることが出来そうな数泊めてあげたんだが、ついに5日前に王様が別の王国再建できそうな場所を見つけたらしくてさ…
そこが…森の中だったんだよね、それで…メガロス帝国の方々は別にそんなのを気にせずに向かったんだけど、ナッカーサーには奥さんが出来たろ?
あの人が虫…駄目みたいなんだよ…それで、困ったことになったとかで…それで、ナッカーサーの奥さんであるミーシャがデメトリオの宿屋に住ませて貰おうって言い始めてさ…
いや、そりゃあ初めは少し抵抗したよ?さすがに何日もは厳しいってさぁ…そしたら、だったら私たちも手伝って生活に支障が無いようにするわって…
それで、居候したって訳さ…いや、別に迷惑って訳じゃないよ?もう、この宿屋も昔に比べて内装も人数も大きく変わっているし…
しいて言うなら、妻陣が食料をハントしにいって、夫陣が家の仕事をするところだろうか?逆じゃないかと…思うんだけどな…
居候といえば…他にも何人か増えてさ…
俺がそうつぶやくと、タイミングよく居候軍団がそろって同じ部屋に集まったんだよ!!
「デメトリオー?野菜、これでよかったよな?」
「あぁ…また数間違えて無いだろうな?ヤマト…肝心なところがぬけているから…」
ヤマト…あいつは、帰り際に一回だけ俺の宿屋で泊まってみたかったようで、俺の宿屋に泊めてやったとき、風呂のところにある装置に感動してさ…
あいつの奥さんが…で、あいつは谷に残りたかったみたいなんだけど、奥さんに連れられて来ちゃったんだよな…
どうでもいいけど、結構料理が美味かったりするんだよな…認めたくねぇけど…
「戻ったぞ?今回は…まぁまぁの収穫だったな…」
ユーマン…彼は本来、海賊だったはずなんだが…どうも海賊って商売は中々にリスクが高いらしくてさ…
それだったら、安定した職について家族を養っていきたいと思っていたみたいなんだ…
で、彼の奥さんとメリィが帰りの旅の時に仲良くなったみたいで…俺の宿屋にメリィの宅配屋が組み込まれるから、それの遠距離宅配サービス兼漁師って立ち居地で俺の宿屋に居候したんだ…
物凄くまじめな男だよ彼は…無口すぎるけど…
あと、俺の宿屋は昔、ある新聞の記事で見た魔女さまがパン屋の二階を借りて宅配サービスを始めました…的な出来事には対応してなかったはずなんだけどな…
世の中って本当に分からないもんだぜ…
「はぁっ…疲れたぜ…っと、ただいま…」
「お疲れ、どこに行っていたんだ?」
「仕事だ仕事、護衛も中々楽じゃないぜ?ほら金だ…」
ドラグーン…こいつは珍しく、俺が宿屋に来ればいいじゃないかって誘ったんだ…
いや、そのときにはすでにナッカーサーとユーマンが来ることが決まっていたからさぁ…
ドラグーンは嫁も一緒の傭兵って奴だから、元々決まった場所に住んでいなかったみたいなんだよ…
それでさ?それだったらこの宿屋を拠点に活動を始めたらいいじゃないかって聞いてみたんだよ…
で、夫婦間で相談した結果、この宿屋に居候し始めたって訳だな…
ドラグーンには、生活するのに必要な木材を森から稀に採取してきてもらっているから、文句も無いしな?
「デメトリオ、電気直しておいたから…」
「あぁ…ケイ、ありがとよ」
ケイがこの宿屋にいる理由は…実は俺もよくわかっていないんだ…
ケイ本人曰く『僕は勉強をさせてもらっている』とのことだが…さっぱり意味が分からない…
あいつほどの知能があれば、勉強なんていまさらしなくてもいいと思うんだけどなぁ…
宿屋に来てからも、一日に2時間弱、ゾーネのところに行って勉強しているよ…
そういやあ…メガロス帝国のミカルドの連中は半分以上、フェルス興国に留まったんだぜ?
王様と一緒について行ったのは…ディルグとグランマーグくらいか…?
テスタロスとメビウスは何の因果か…一緒に銭湯を始めたし、ザボルグは町の電気配線を修理している…
ライザーとガイウスは町の修理活動をしながら、ジャンクショップを始めたし…
いや…一番衝撃的だったのはクラウィスだったけどな…?
あいつ…今、男の娘喫茶で働いているよ?
しかも…結構人気が高いらしいんだ…
これをメリィの口から聞いたとき、本当の話かと俺は思わず自分の耳を疑ったね…
さぁて…それじゃあ、あの時途中で言うのをやめてしまった話を…
真剣な話なんだが、俺は今現在…この宿屋内での自分の居場所が分からないんだ…
帰りの旅の時は…まさかこんなに大人数が居候するなんて思ってもいなかった…
いや、サリィとの結婚式をこっそりと行ったときでさえ、俺は今の状況になるなんて思ってもいなかった…
お客さんへの応対や家計簿系統はすべて旅の途中でなぜか養子になってしまった形部狸の狸巳がやってくれるし…
俺よりなんか上手だから、ここで俺はまず必要ない…
食事やその他の家事はナナ1人でOK…いないときは俺以外の夫陣がこなしてくれるし…
子供の世話はなぜか地下室にいるはずのゾーネがやってくれる…
掃除だって俺が手を付ける暇も無い…なぜだ?どうしてこうなった?
余りに自分が虚しく感じるからと1人で家庭菜園を楽しもうとしても…そもそも家庭菜園ってのは長時間かけて行うものだからすぐに変化が出てくれない…
雑用さえも俺に回ってこないんだよ!!本当に…ここは俺の宿屋なのかって思ったね
いや、確かに…確かに従業員が少しは欲しいって思ったし言ったよ?でも、まさかこれほどまで俺が何も出来なくなるとは思わなかった…
正直…俺は最近、自分の部屋で誰とも会うことなく靴下編んでるかこうやってリビングに来てコーヒーの飲みながらお客様名簿見てるかのどっちかだぜ!?
そりゃあ、数日間は楽できるって思うかもしれない…でも、考えてみてくれ…
それが毎日…続くんだぞ!?他の趣味に走ろうにも急になんて無理だしさぁ…!?
耐えられるか!?この現実に耐えられるか!?俺は…少々きついかな…
結局、毎日今日みたいに暇な日を過ごして寝て終わりなんだ
ついには…趣味を身につけることが出来る本って名前の本まで買ってしまった…俺はどうしたらいい!?
誰でもいいから、一ヶ月間何もせずに過ごしてきた俺に仕事をくれっ!!
今なら、シーツについた染みとか染み抜きでキュポってしても何も文句は言わないからっ!!
……これじゃあ、駄目な大人ってレッテルが…そして世間体が…
うわぁっ…うわぁぁぁぁぁっ…
なんてことを言いつつ、俺は他の連中にお休みというと…普段より若干早い眠りに入ったんだよ…
えっ?何時に寝ているかって?7時だよ…で、毎日5時に起きてる…けど、ナナのほうが先に起きてて俺はやることが無い…
いや…今日は5時に寝るんだ…明日はきっとナナより早く起きることが出来るはずだ…だろ?
俺はそう思うと、布団の中に入って一人で眠り始めたんだ…
物凄くどうでもいいことなんだが、俺はこの1ヵ月…サリィの顔を見ていないんだ…寝顔しか…
だって、サリィが宅配サービスの仕事から帰ってくるの8時だし…ね?
結婚して早々だが、こんなので本当に上手くやっていくことが出来るのか…非常に心配で仕方が無いよ
……なんだかなぁ…俺、捨てられそうで…嫌だなぁ…
どうでもいいけど…本当に…俺は…これから先も…こんな…せ…かつを…
Zzzzz…
こうして俺は、また一日を終えたのだった…
〜〜〜サリィの視点に変更します!!!〜〜〜
今日もいつもどおり…すっかり遅くなってしまったなぁ…
そう思いながら、私は配達物をすべて運び終わり、すっかり軽くなってしまった鞄を持ってそうつぶやいていた…
宿に戻ると、ちょうどみんなが食事をしているところだったけど…やっぱり、デメさんの姿が見えない…
今日も、先に寝たのかなぁ…?
結婚してから一ヶ月とちょっと経つけど、働き始めてからデメさんの姿を一度も見てないなぁ…
私が仕事から帰ってくると、デメさんはいつも先に眠ってしまっているから…
当然、デメさんと夜の営みを楽しむ事はもちろん…会話すら交わしてないの…
やっぱり、デメさんは姉さんに強引に言い寄られて私と結婚したから、私のことなんて余り思ってないのかなぁ…?
なんて事ばかりが最近頭の中に浮かんでくる…
他の宿屋に居候している人たちや養子としている娘たちは私に話しかけてくれるけど…なんだろう?
私は、デメさんとお話がしたいの!!結婚しているのに、まだ夫のことをさん付けして呼んでる私…まぁ、いいけど…
……仕事時間を短くしたほうがいいのかな?でも、短くしたら生活が大変になるし…
最近、家に帰ってもあまり家が楽しくないように感じるんだ…
「はぁっ…」
「どうしたのサリィ?」
「あっ…姉さん…そのね?デメさんと結婚したのに、なんだか実感が無くて…デメさん、私が帰ったらいつも眠っちゃってるから…」
「なるほど…確かにデメトリオはここに戻ってきてから寝るのが本当に早くなったわね…それで、落ち込んでいるって訳ね?」
「うん…新婚夫婦のはずなのに、もう終わりかけの夫婦みたいで…それで、何か夫婦の証となるようなものを残せたらなぁって…でも、今はデメさんも私もフェルスに帰ってきたばかりだから旅行とか仕事を削るような事はとても…」
「だったら、やっぱり子供よ!!あなたに子供が出来たら少しはデメトリオにも夫としての自覚が出るんじゃないかしら?」
子供…子供かぁ…確かに、私にデメさんとの間に出来た子供が産めたらデメさんも私と会話してくれるかも知れないし、家族で楽しく暮らせるよね…
でも、やっぱり無理かな…だって、デメさんは私よりも明らかに早く寝るのに、一度寝たら中々起きないから…
それに、わざわざ起こしてHな事をしたいって私から言うのにはちょっとだけ抵抗が…
だって、私は女の子だし…結婚しているとはいえ…恥ずかしいもん…
「でも…デメさんは中々起きないし…」
「大丈夫よ…ゾーネの発明品の1つで卑猥な夢でも見させたら下は固くなるでしょ…そうなったら、あなたがデメトリオに夜這いを仕掛ければいいのよ…ね?」
「えっ…!?えぇっ…!?」
「大丈夫…姉さんにすべて任せておきなさい?ふふっ…楽しくなってきたわね…」
私は姉さんが非常に乗り気になっているのに少し不安を覚えたけど、一応姉さんに任せてみた…
それで…姉さんが用意してくれた飲み物を飲むと急に身体が火照ってきて…その後は…
ちょっと、乱れすぎたかな?ちょっとデメさんの…皮被ってたけど、大きさはベストだったし…
とにかく、しばらく時期が経過したら上手く孕む事が出来たか調べてみようかなって思うんだ
デメさんとの子供が…出来ていたらいいなぁ…
〜〜〜デメトリオの視点に戻ります!!〜〜〜
普段よりも早い時間に寝たからだろうか?俺は変な夢を見てしまったと同時に目が覚めると、物凄い身体の疲労を感じたんだ…
何がおかしいって聞かれたら、迷わずに自分の心境って答えることが出来るな…
なんて言ったらいいだろうか?物凄く俺は…大事なものを気づかないうちに失ったような…そんな気分に陥ったんだよ!!
いや…まぁ、部屋の中を見回しても変わった事はないし……ん?サリィ、昨晩お酒飲んだのか?
そう、微妙にサリィの方から漂ってくるアルコールの匂い…これは、相当強い酒を飲んだに違いないな…
いやまぁ…サリィが酒に酔ったらどうなってしまうのかなんて俺にはわからないんだけどな?
っと、せっかく早く寝たんだ…さすがに朝の4時はナナも起きていないだろ…?
俺はそう思って下の部屋に下りていったんだが…
「…あれ?デメトリオさん…?今日は早いですね…?掃除は終わったのでそこの机でくつろいでいてくださいね?」
「ええっ!?ど、どうして…こんな時間にも起きているんだ!?」
「そりゃあ…私はパーフェクトメイドですから?まぁ、一応昼間に仮眠を取らせていただいているってのもありますけど…」
「くっ……それじゃあ、俺が早く寝たのも意味ないじゃねぇかよ…」
「何かいいましたか?」
「いや?はぁっ…」
そんな出来事があって早数時間…サリィはなんだか変に機嫌よく仕事にいったってナッカーサーに聞いたが…
今日も俺はすることが無く、椅子に座って悩みこんでいたんだ…
もしだ、もしもこれから先もずっとこんなことが続いたら…俺の精神面はどうにかしてしまいそうだよ!!
今日も…いや、今日こそは何かする事は無いかと思っていたが…相変わらず何も無い…
そうっ!!本当に何も無いんだよ!!
今日も綺麗に仕事が無い!!つまり、やる事が無い!!
くそっ…無職案内所にでもいって仕事をもらいに行くか…?いや、無理だな…
だって、この町の人はほとんどの人が俺が宿屋を経営しているって知っているからさ!!
もう…そんなところにいって仕事を紹介してくれなんていった瞬間から、俺は生きるために本気で職を探している人たちに袋叩きにされるっての!!
………なんだかな、こう…1人で愚痴ばっか言っていると、小さい奴に見えるな…俺って…
そう思って気持ちがブルーになっていた時だった…
いきなり扉が勢いよく開いたかと思うと、そこにはあの…俺を一時的に監禁していた幼女の姿がっ!!
ど、どうして彼女が…しかも今頃になって現れたんだ!?ってか、どうして俺の宿屋をしっているんだっ!?
「ふむっ…ここがあんたの住んでいるところか…確かに、庶民の暮らしってのはこんなものね…」
「エヴァリン様…お着替えと専用のティーセット、運び終わりました…」
「お疲れさま…さぁ…私を部屋に案内しなさい!!」
……はぁっ?ちょっと待ってくれ…
いきなり来て、いったい彼女は何を言っているんだ?
「言っている意味がよくわからないんだけど…?」
「鈍いわね…ペロル?説明してあげるのよ!!」
「はい…エヴァリン様はお金持ちの生活…何でも手に入る生活に飽きてしまいました…それなので、エヴァリンさまがいきなり庶民の生活をしたいと…」
「それで、庶民といえばって考えたら、私の知人はお金持ちばかりだったし…あんたしかいなかったって訳、光栄に思うのだな…」
………それと俺に何の関係が…?
いや…何はともあれ…1つあることが分かった…彼女はこの宿屋に住むつもりなんじゃないのか!?
ちょっと待ってくれっ!!ただでさえ居候で部屋の数が少なくて、本当に宿屋かと思い始めているのに、これ以上居候が増えたら…
「待ってくれよっ!!そもそもこの宿屋にはもう部屋が…」
「ペロル?確か…この宿屋にはまだ空き部屋があるっていっていたな?」
「はいエヴァリン様…ナナの話だと二階の右から3番目の部屋が…朝の日当たりは弱めに抑えつつも通気性もよく、夜は月明かりがよいとか…部屋を総合的に考えても、内装を除けばエヴァリン様のお気に入りに間違いなく入るLVかと…」
「ほら…あるじゃないか…いいよな?デメトリオ…?そうだ、タダで居座るのも悪いから…私の機嫌がいいときは何か買ってやってもいいぞ?では…私は長旅で疲れたから寝るぞ…?」
………ちょっと、えっ…えぇっーー…?
お、俺の言い分も何も聞かずに…メリィとか他の連中に聞いてみて抗議されたら俺はどうすればいいんだよ?
だが…全員何も文句は無かったみたいなんだよなぁ…
なんでだ?どうしてみんな簡単に受け入れることが出来ているんだ!?
あれかっ…?他の連中も居候だから何もいえないのか…?それとも、楽しくなりそうだからいいって思っているのか!?
……両方の気がしてならない…
それから数日間がいつもどおり過ぎていたが…俺には確実に今までの生活とは違う出来事が訪れていたんだよ!!
以前のように何もしない生活じゃなくなったんだよ!!
そう、エヴァリンと俺は両者ともこの宿屋の中では暇人だったんだよ!!
認めたくは無いけどな?それで、エヴァリンが暇つぶしにと始めたチェスの対戦相手として時間をつぶせるようになったんだよ!!
もう、はたから見たらただチェスで遊んでいるだけのように見えるが…それでもやる事が出来たってだけで俺は十分うれしい!!
それに…出来ない奴なりにチェスのルールを覚えたり、戦略を考えたりすることも出来るから、暇な時間だってこれで削ることが出来るじゃないか!!
……久しぶりに、サリィとご飯でも食べようかな…
〜〜〜サリィの視点に移ります!!〜〜〜
あの出来事から数日が経った今日…私は今、フェルス興国にある病院の一室の前で待機していた…
本来なら、私は病院の雰囲気が余り好きじゃないから病院なんて来ないんだけど、今回は別!!
そう、今回はデメさんとの子供を孕む事が出来ているのかを魔素分析器で調べてもらうために来たの!!
で…注射が怖くて散々暴れたりもしたけれど、一応するべき事はすべて終わって、今は結果待ちってわけだけど…
今日は久しぶりに仕事が昼ちょっと過ぎに終わったから、帰った頃にデメさんと会えるかも…そう思うと、待ちきれない気分になるなぁ…
「サリィ・ウェイネスさーん?」
「あっ…はい!!」
来た…ついに私の名前が呼ばれた…!!
私は緊張で物凄いドキドキしながらも、さっきお呼びがかかった部屋に入っていったんだけど…
部屋の中に入ると、中で二人組みのナースさんが私のほうを見ながら手招きしているのが見えたの…
あぁっ…緊張するなぁ…
「サリィさん…」
「は、はい…」
「………」
あぁぁっ!!そ、その変な間は何なんですかぁっ!?
も、もしかして…今回は駄目だったとか…!?もしそうだとしたら…
「おめでとうございます…確実に血液の中に少量だけ、魔素が新たに検出されたので、子供はいますよ!!分析結果を右のナースから受け取ってください…」
そう聞いたとたん、私はなんともいえないうれしさに包まれた…やった…やったぁっ!!
そして私はナースさんから書類を受け取ると、一気に宿屋に向かって飛んでいったのだった…
デメさん…どんな反応するかなぁ?
〜〜〜デメトリオの視点に変更します!!!〜〜〜
あの後、エヴァリンに完膚なきまでにボコボコにされた俺は、次こそは勝ってやると自分の部屋の中で計画を立てていたんだが…
「ただいま〜〜!!ちょっと、お風呂借りるね!!」
んっ…?サリィか?今日はずいぶんと仕事が終わるのが早かったんだなぁ…
お風呂借りるも何も、自分の家なんだから自由に使えばいいのに…っと、のどが渇いたな…
後でサリィにはお帰りって言ってあげるかな…
そう思いながら自分の部屋を見ると、俺は机の上に何かが置いてあるのに気がついたんだ…
これは…一体なんだ?紙ってのは聞かなくても分かるけど、俺がちょっと前までここにいたときは無かったぞ…
そう思い、手にとって俺はその紙を見てみたんだが…
【妊娠判断書 サリィ・ウェイネス様 おめでとうございます!!妊娠しておりますよ!!】
こ、これはっ!?妊娠判断書だとっ!?待て…待ってくれ…
妊娠…?妊娠だと…?妊娠って、子供が出来ましたよっで事だよな…?
……俺の記憶の中に、サリィとキャッキャッうふふな出来事を行った記憶が無いんだが?
いや、だってさ?もし行っていたなら俺の初めての経験…もとい体験になるんだぞ?さすがにそんな事は覚えているだろうし…
はっ…ま、まさか…
俺の頭の中に嫌な予感が駆け巡った…
サリィに限ってそんな事は無いって信じたい…だが、目の前のこの紙が俺の嫌な予感を肯定している…
他の男との子供じゃないのか?
あぁっ…そうだよ!!きっとそうに違いない…
俺がサリィと結婚してから、サリィのことを相手にもしてなかったから…他の男に気持ちが移ってしまったに違いない!!
まさか、新婚生活一ヶ月でこんな出来事が起こってしまうなんて思ってもいなかった…
俺が言えるべき台詞でもないけど、まさかサリィが俺を見捨てるなんて…そんな事は微塵も考えていなかったんだ…
いや…そもそも俺との間に愛があったと思い込んでいる俺に問題があったんじゃないのか…?
俺とサリィの間に愛があるなんて誰が言ったよ?俺が思い込んでいただけだったんじゃないのか!?
そうだ…もしかしたら、俺はサリィが本当に好きな相手ではないのかもしれない…この間柄も、俺を利用しているだけの隠れ蓑だったとしたら…?
俺が紙を目の前にしてそんなことを思っていると、風呂の扉が開く音がしたんだ…
俺は慌てて自分の部屋に戻っていったが…こ、これは由々しき事態だぞ?
部屋に戻ってからもそのことを必死に考えていたが、どんな考え方をしても…俺はサリィに対しての恨みの感情がわいてこなかったんだ…
一ヶ月間相手にしていなかった罪悪感ってのもあるかもしれないけど…そもそも俺はサリィから本当に気持ちを聞いていないってのもある…
あの時メリィから聴いた言葉は、実はメリィの作り話だったとしたら…?サリィは本当は別の男のことを愛していたんじゃないのか…?
話が上手くできすぎている気はしていたんだ……やっぱり、やっぱりか…
それからしばらく考えてみた結果、俺はある結論に至ったんだ…
俺がサリィの夫でいると、サリィの本当の幸せを邪魔しているて事になるだろ?
…俺がサリィと別れてしまえばいい…そうすれば、俺はサリィの邪魔にならなくてすむ…
どうしてサリィを自分の夫として引き止めるために戦おうとしないのか…それは、単純に怖いからだろうな…
まず、勝てないって事は自分が一番よくわかっている、次に…サリィの本当の幸せを砕いてまで俺は…サリィを引き止めてもいいのかって事さ…
まぁ、逃げの選択肢を取るのは昔から変わらなかったし、俺にそんな価値が無いって事も…認めたくないけどわかっているからな…
離婚届…もらってくるか…
俺はそう思って、誰にも気づかれること無くそっと宿屋を出たのだった…
離婚届を受け取ってから宿屋の扉をあけると、サリィが俺を見てこっちに走ってきたんだ…
おかえりって言ってくれる…本当にうれしいんだが…
それでも俺の心境は決しておだやかじゃない…
そう思いながら辺りを見てみると、今の時間帯は宿屋のメンバーがあらかた宿屋に集まっている時間帯だったんだよ…
後伸ばしにしても、いいことなんて絶対に無いからな…この機会に乗じていってしまうしか…それしかない!!
「デメさんっ!!実は…実はねっ!!」
「サリィ…大事な話があるんだけど…これにサインしてくれないか?」
そういって、俺はサリィが見せてこようとしたものをあえて見ず、サリィに離婚届を渡したんだ…
どんな反応が返ってくるんだろうか?これを待っていたって反応をしてくれると…少しは俺も気が楽なんだけど…
だが、その後でサリィがとった行動は俺が予想していたのとは大分違っていた…
「えっ…で、デメさん…これって…」
そう言いながら、サリィはぺたんと腰を地面につけてしまった…
変に肩が震えているのを見ると…なんだか悪いことをしてしまったような気分になる…
でも、本当はこれでよかったんだろ?サリィは…別の男との間に生まれた子供とその後の人生を過ごせばいい…
俺はこれから先、なんどもこんな体験を経験したら精神が崩壊してしまいそうだから…一人で生きていくつもりだが…
「そう、離婚届だ…」
「な、な…なんで…?まさかデメさん…不倫…してたの?」
「いや?そうじゃないけど…俺がサリィの幸せの妨害をしているって分かってから、サリィの邪魔をしているのが嫌でさ…」
「ど、どうしてそれじゃあ…こんなものを…」
サリィがちょっとだけ涙を浮かべ始めたとき、メリィが憤慨しながら俺のところに走ってきたんだよ!!
どうしてサリィはうれしいはずなのに…泣くんだ?
はっ…そうか…嬉し涙だなっ!?
そんなに…俺のこと嫌だったんだな…
「デメトリオ!!あなた…サリィになにをしたのよ!!」
「ね、姉さん…これ…」
「これは…!?デメトリオ…あなた、サリィのどこが不満だったのよ!?どうしてサリィにこんな恐ろしいものを…」
「いや…だって…サリィは…」
「問答無用っ!!こうなったら…宿屋会議を行うわよ!!みんなをロビーに集めてくれるかしら?ナナ…」
「は…はいぃっ!!」
こうして、なぜか急遽宿屋会議が始まったのだった…
サリィが心の底でのぞんでいるはずの出来事なのに、会議なんて開かなくてもいいと思うんだが…
〜〜〜宿屋会議〜〜〜
「さて…そもそも宿屋会議とはどんなものなのかとか、そんなことは置いておいて…早速本題に行くわよ!!」
そう言いながら俺のほうを指差すメリィ…
妻陣が向こう側、夫陣がこっち側でありながらおこなわれる宿屋会議と呼ばれる謎の会議…
俺の考えが正しいなら…たぶん家族会議みたいなものなんだろうけど…
「待ってくれメリィ…そもそも、急に集められたんだから、説明はしてくれないか?」
「デメトリオに聞きなさい!!」
「だってよ、どうして急にこんなことになったんだ?」
「いや…サリィにあのテーブルの真ん中に置いてある物を渡したら、急遽こんなことに…」
そう言いながら、俺は貰ってきた離婚届を指差したんだが…
それを見たとたんに場の空気が急に険悪なものに変わっていくのを俺はなぜか感じ取れたが…サリィがきっとこうして欲しいと思っているだろうから貰ってきたまででだな…
「デメトリオ、お前…結婚して一ヶ月でそれは無いんじゃねぇか?何があったんだ?」
「えっ…いや、それはだな…サリィが実はこうして欲しかったんじゃないかと思ってだな…」
「どうしてそんなことを思ったのよ?何が根拠で…サリィの気持ちを傷つけたのよ!?」
うぉぉっ…め、メリィが物凄く本気で怒っていて怖いな…
まるで自分のことのように怒ってくるじゃないか…
「うぅっ…デメさん…デメさぁんっ!!ひどい…ひどいよぉっ!!」
「確かに、新婚生活でこの仕打ちはあんまりだと思うわね…」
なんだ…?他の嫁陣の方の敵意に満ちた視線は!?
それに…サリィっ!どうして泣くんだよ!?お前は俺と別れて他の男と人生を過ごしたいんだろ!?
じゃないと…あの妊娠診断書の存在がだな…
「だってっ…サリィは俺と違う男と本当は一緒になりたかったんだろ!?じゃないと、妊娠診断書の存在が嘘になるじゃないか!!」
「どうして…?どうしてそんなことを…喜んでくれるって思ったのに…」
「いやいや、まず喜ぶなんて無理だろ!!だって…俺はサリィとキャッキャッうふふな事をした覚えは無いんだから!!つまり…俺の子供じゃないって事じゃないか!!」
「えっ…?いや…その…」
「つまり、俺は結婚したとついうかれていたが…そんな馬鹿は俺だけだったって事だろ!?確かに、サリィの事を相手しなかったって事が原因である事もあるかもしれない…だから俺から離婚届をサリィに渡して…お前の幸せをつかんでもらいたいって俺が思ったんだろう!?」
………その事に気がつかずに知らない間にその男とサリィの恋仲を保つためにお金を渡し続ける生活とか…俺には耐えられそうにないし…
いや、気づいていない間はずっとお金は払っているんだろうが…と、とにかくっ!!邪魔者は消えればいいんだろ!?
「いや、デメトリオはサリィとヤったじゃないの…」
「そんなわけ無いだろう!!俺は初めてする事を覚えていないほど馬鹿じゃない!!そんな事をしたら俺が分かるだろ!!」
「……もしかして、デメトリオは本当に気がついていないのではないかのぅ?わしの発明品はLV高いものじゃし…本格的に寝てたのではないかのぅ?」
「そ、そうかも知れないわね…」
なんだ…?メリィとゾーネがなんだかヒソヒソ話をしているんだが…?
いや…そんな事より今はこの問題をだな…
俺がそう思っていた時だった…
「本当にあの紙はデメトリオとサリィの子供だって証の紙なのよ?もしかして勘違いしているかも知れないからいっておくけど…」
「だから…そんなわけないだろっ!!俺はやってないんだから!!もし本当に俺の子供だったら…お詫びとしてサリィの言う事はこれから先何度でもきいてやるよ!!」
「……デメさん?それ…本当?本当だよね!?」
あぁ…だって、俺の子供のはずが無いじゃないか…
でも、なんだろうか?サリィが急にうれしそうな顔をしたのと、メリィがやれやれって顔をしたことに少しだけ引っかかりを感じるんだが…
「だったら、明日この結果を出した病院にデメトリオも行くわよ?そこではっきりとさせようじゃない…」
「わかった…もし、もしもサリィの子供が俺の子供じゃなかったら…俺は明日…離婚するからな?」
「ふふんっ…臨むところよ…じゃあみんな、話はすんだから…解散してもいいわよ?]
メリィがそういうと、全員が一体なんだったんだって顔を浮かべて自分の部屋に戻っていったんだよ…
まぁ…確かに当事者じゃなければ…そんな反応をしても仕方が無いとは俺も思うけど…
いや…明日が俺にとっても運命の日なんだ…荷物、今晩中に纏めておかないとな…
そして俺が荷物をまとめ、次の日の昼前…俺はメリィとサリィにはさまれ、病院の前に立っていたんだ…
俺はもう分かりきっている事なのに、どうして二人ともあんなに必死なんだ?
あれか…?俺に最後まで希望を与えて置いて…一気に奈落の底に叩き落すつもりなのか!?
くそぉっ…恐ろしい…もしそうだとしたら、俺が思っている以上に恐ろしい姉妹だな…
それから数分の時間が経過し、ついに俺たちの結果が発表されるときが来た…
医者の方が物凄く深刻そうな顔をしている…って事は、やっぱり違っていたのか!?
……やっぱりかぁ…これから先、また独り身生活の始まりか…
短い新婚生活だったぜ…荷物も纏めたし、俺もメガロス帝国の後でも…追いかけようかな…
「結果を診ましたが…100%デメトリオさんとサリィさんの間の子ですね…では、お子さんを大切にしてあげてください…次の方どうぞ?」
な…にぃっ!?そ、そんな馬鹿なっ!!
まさか、医者まで結託して俺を陥れようとか…そうなのか!?
「ほら…やっぱりじゃないの…それに、私がデメトリオに夜這いを仕掛けたらってサリィに言ったんだから、当然の話じゃない」
「よ…夜這いっ!?」
「そう…ゾーネにも協力してもらったし…三日くらい前かしら?」
三日前…?それって、俺が沼にどぷりと沈んでいく夢を見た日じゃないのか!?
まさか…あの沈んでいくような感じがそうだったとでもいうのか…!?
それ以前に、それってつまり…サリィは俺と…
「サリィ…まさか…やったのか?」
「…うん、恥ずかしくて言えなかったけど…デメさんの皮被っていたアレもちゃんと確認できたし…それに…よかったよ?」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
お、俺のコンプレックスが寝ている間にばれていたなんて…そんな事が…
いや、さすがに真性では無いけど…それでも俺が他人に余り知られたくない秘密をサリィがしっているなんて…
間違いない…見られたんだ…うわぁぁぁっ…
俺はサリィが俺を裏切っていなかったってことにほっとしたが、それと同時に恥ずかしさで顔が真っ赤にほてるのを感じたんだ…
そして…俺は自分が気づいていない間に大切なものを失っていたって事実も…知ってしまったし…
「サリィ…その、ごめんな?こんな紙、破り捨てるからさっ!!許してくれよ!!」
ビリィッ!!
俺はそう言いながら、一気に離婚届を破り捨てたんだ…
…サリィは許してくれるかな…?はぁっ…
「別にいいよデメさん?それに、デメさん昨日の約束…覚えていてくれているよね?」
「約束…?あぁっ!?な、なんでも言う事を聞くってあれか…?」
「うんっ!!私、今の宿屋にいる人たちも含めて、記念写真が撮りたいなっ!!宿屋をバックにして…それで、生まれてくる子供にその写真を見せてあげたいの!!」
「え…あぁ…それだったら別にいいけど…」
「そして!!デメさん…」
「ま、まだあるのかっ!?」
「私とこれから先…何があっても夫婦でいてください!!絶対だよ?」
「あ…あぁっ…」
俺はサリィにそう答えると、サリィの後を追いかけて自分の宿屋に向かって歩き始めたんだ…
誰かに頼んで写真機を貸して貰わないといけないし…って…なんだ?
俺は誰かに見られている気がして振り向いたんだが…後ろには慌しく病院を行き来している人達だけ…気のせいだったのか?
俺はそう思うと、一瞬だけセムちゃんとグロリアさんが病院から出てきたのを確認すると、後を追いかけていったのだった…
「………別れれば良かったのに……」
「セム…何か言った?」
「えっ?何も言っていませんよ?お母様…私、ちょっと最近カマを砥ぐのに使っていた布が破けてしまって…」
「そうなの…?だったら、買ってあげるわ…行きましょうか?」
「はいっ!!……ふふふ…デメさん…あはっ…あははっ…待っていてください…ね?」
そしてしばらくして…俺は近所の人から写真機を借りると、宿屋にいた全員に無理言って正面に集まってもらったんだ…
さぁて…どうせ撮るなら、上手く撮りたいよな…?
でも…俺は撮り方なんてわからないんだが…
「デメトリオー?早くしろよっ!!」
「待ってくれよヤマトっ!!やり方がわからねぇんだよ…」
「その上のボタンを押したら5秒いないにこっちに走ってくればいいはずだ…」
「これでいいのかユーマン?」
俺はユーマンが言われたとおりボタンを押すと…慌ててみんながいるところに走っていったんだ…
みんな、それぞれ好きな格好で写真に写ろうとしているし…俺もギリギリ定位置につけたか…?
そう思っていると、いきなり目の前の写真機から物凄い光が出てきたんだ…
これで終わりか?案外…あっけないもんなんだな…
さぁて…これから先、俺たちにどんな運命が待っているかは分からない…
でも、この写真に写っているみんな…そして、未来の俺たちの子供たちとのんびりと過ごせたらいいな…
そのためには、まずは子供の名前を考えないとな…
俺はそう思うと、写真機を返しに行って宿屋の中に入っていったのだった…
〜〜〜END〜〜〜
俺は今、非常にあることについて悩んでいたんだが…って、どうした?
えっ…?前回の話で出てきた脱出ゲームもどきの答えの数字を教えろって…?
しょうがないなぁ…答えは32591182だ…
おそらく、迷うとしたら5と9のところかな…
…そう、俺がヒントで言ったかどうかは覚えてないけれど、鏡が重要なアイテムだったんだよ!!
そして、本棚に大きく出てきた2の数字と鏡の裏に刻まれた6の数字…あれが騙しだったのさ!!
ヒントの中に、本棚の答えと鏡は二度信じるなってあっただろ?それは、こういう意味だったんだよね…
実は本棚の数字は鏡で反射させると2じゃなく、5に見えるんだよ!!そして、6も裏に彫られていた…
実はあの鏡は鏡面と裏面が回るようになっており、まわすと6が9に変わるんだよ!!
これが鏡を二度信じてはいけないってヒントの答えさ…簡単だったろ?
で、俺の悩みのことなんだけど…
俺がそう言おうとしたとき、2階からナッカーサーが布団を持って降りてきたんだ
まったく…どうしてこうもいいタイミングで現れるか…理解に苦しむぜ…あれか?狙っていたのか!?
「デメトリオー?この布団なんだけどさ…嫁たちの布団は干せたんだが、各部屋夫陣の布団を干すスペース無いんだけど…」
「えぇっ!?仕方が無いな…部屋干しでいいだろ今日はっ!!……今度、ゾーネに頼んで部屋増やしてもらわねぇと…」
……えっ?どうして一ヶ月たっているはずなのに、お前の宿屋にナッカーサーがいるのかって?
それは…とある事情があってさぁ…
あれは、俺がフェルス興国に戻って数日したときだったんだ…それまで、宿屋業を少々休んで、メガロス帝国の連中のうち、泊めてあげることが出来そうな数泊めてあげたんだが、ついに5日前に王様が別の王国再建できそうな場所を見つけたらしくてさ…
そこが…森の中だったんだよね、それで…メガロス帝国の方々は別にそんなのを気にせずに向かったんだけど、ナッカーサーには奥さんが出来たろ?
あの人が虫…駄目みたいなんだよ…それで、困ったことになったとかで…それで、ナッカーサーの奥さんであるミーシャがデメトリオの宿屋に住ませて貰おうって言い始めてさ…
いや、そりゃあ初めは少し抵抗したよ?さすがに何日もは厳しいってさぁ…そしたら、だったら私たちも手伝って生活に支障が無いようにするわって…
それで、居候したって訳さ…いや、別に迷惑って訳じゃないよ?もう、この宿屋も昔に比べて内装も人数も大きく変わっているし…
しいて言うなら、妻陣が食料をハントしにいって、夫陣が家の仕事をするところだろうか?逆じゃないかと…思うんだけどな…
居候といえば…他にも何人か増えてさ…
俺がそうつぶやくと、タイミングよく居候軍団がそろって同じ部屋に集まったんだよ!!
「デメトリオー?野菜、これでよかったよな?」
「あぁ…また数間違えて無いだろうな?ヤマト…肝心なところがぬけているから…」
ヤマト…あいつは、帰り際に一回だけ俺の宿屋で泊まってみたかったようで、俺の宿屋に泊めてやったとき、風呂のところにある装置に感動してさ…
あいつの奥さんが…で、あいつは谷に残りたかったみたいなんだけど、奥さんに連れられて来ちゃったんだよな…
どうでもいいけど、結構料理が美味かったりするんだよな…認めたくねぇけど…
「戻ったぞ?今回は…まぁまぁの収穫だったな…」
ユーマン…彼は本来、海賊だったはずなんだが…どうも海賊って商売は中々にリスクが高いらしくてさ…
それだったら、安定した職について家族を養っていきたいと思っていたみたいなんだ…
で、彼の奥さんとメリィが帰りの旅の時に仲良くなったみたいで…俺の宿屋にメリィの宅配屋が組み込まれるから、それの遠距離宅配サービス兼漁師って立ち居地で俺の宿屋に居候したんだ…
物凄くまじめな男だよ彼は…無口すぎるけど…
あと、俺の宿屋は昔、ある新聞の記事で見た魔女さまがパン屋の二階を借りて宅配サービスを始めました…的な出来事には対応してなかったはずなんだけどな…
世の中って本当に分からないもんだぜ…
「はぁっ…疲れたぜ…っと、ただいま…」
「お疲れ、どこに行っていたんだ?」
「仕事だ仕事、護衛も中々楽じゃないぜ?ほら金だ…」
ドラグーン…こいつは珍しく、俺が宿屋に来ればいいじゃないかって誘ったんだ…
いや、そのときにはすでにナッカーサーとユーマンが来ることが決まっていたからさぁ…
ドラグーンは嫁も一緒の傭兵って奴だから、元々決まった場所に住んでいなかったみたいなんだよ…
それでさ?それだったらこの宿屋を拠点に活動を始めたらいいじゃないかって聞いてみたんだよ…
で、夫婦間で相談した結果、この宿屋に居候し始めたって訳だな…
ドラグーンには、生活するのに必要な木材を森から稀に採取してきてもらっているから、文句も無いしな?
「デメトリオ、電気直しておいたから…」
「あぁ…ケイ、ありがとよ」
ケイがこの宿屋にいる理由は…実は俺もよくわかっていないんだ…
ケイ本人曰く『僕は勉強をさせてもらっている』とのことだが…さっぱり意味が分からない…
あいつほどの知能があれば、勉強なんていまさらしなくてもいいと思うんだけどなぁ…
宿屋に来てからも、一日に2時間弱、ゾーネのところに行って勉強しているよ…
そういやあ…メガロス帝国のミカルドの連中は半分以上、フェルス興国に留まったんだぜ?
王様と一緒について行ったのは…ディルグとグランマーグくらいか…?
テスタロスとメビウスは何の因果か…一緒に銭湯を始めたし、ザボルグは町の電気配線を修理している…
ライザーとガイウスは町の修理活動をしながら、ジャンクショップを始めたし…
いや…一番衝撃的だったのはクラウィスだったけどな…?
あいつ…今、男の娘喫茶で働いているよ?
しかも…結構人気が高いらしいんだ…
これをメリィの口から聞いたとき、本当の話かと俺は思わず自分の耳を疑ったね…
さぁて…それじゃあ、あの時途中で言うのをやめてしまった話を…
真剣な話なんだが、俺は今現在…この宿屋内での自分の居場所が分からないんだ…
帰りの旅の時は…まさかこんなに大人数が居候するなんて思ってもいなかった…
いや、サリィとの結婚式をこっそりと行ったときでさえ、俺は今の状況になるなんて思ってもいなかった…
お客さんへの応対や家計簿系統はすべて旅の途中でなぜか養子になってしまった形部狸の狸巳がやってくれるし…
俺よりなんか上手だから、ここで俺はまず必要ない…
食事やその他の家事はナナ1人でOK…いないときは俺以外の夫陣がこなしてくれるし…
子供の世話はなぜか地下室にいるはずのゾーネがやってくれる…
掃除だって俺が手を付ける暇も無い…なぜだ?どうしてこうなった?
余りに自分が虚しく感じるからと1人で家庭菜園を楽しもうとしても…そもそも家庭菜園ってのは長時間かけて行うものだからすぐに変化が出てくれない…
雑用さえも俺に回ってこないんだよ!!本当に…ここは俺の宿屋なのかって思ったね
いや、確かに…確かに従業員が少しは欲しいって思ったし言ったよ?でも、まさかこれほどまで俺が何も出来なくなるとは思わなかった…
正直…俺は最近、自分の部屋で誰とも会うことなく靴下編んでるかこうやってリビングに来てコーヒーの飲みながらお客様名簿見てるかのどっちかだぜ!?
そりゃあ、数日間は楽できるって思うかもしれない…でも、考えてみてくれ…
それが毎日…続くんだぞ!?他の趣味に走ろうにも急になんて無理だしさぁ…!?
耐えられるか!?この現実に耐えられるか!?俺は…少々きついかな…
結局、毎日今日みたいに暇な日を過ごして寝て終わりなんだ
ついには…趣味を身につけることが出来る本って名前の本まで買ってしまった…俺はどうしたらいい!?
誰でもいいから、一ヶ月間何もせずに過ごしてきた俺に仕事をくれっ!!
今なら、シーツについた染みとか染み抜きでキュポってしても何も文句は言わないからっ!!
……これじゃあ、駄目な大人ってレッテルが…そして世間体が…
うわぁっ…うわぁぁぁぁぁっ…
なんてことを言いつつ、俺は他の連中にお休みというと…普段より若干早い眠りに入ったんだよ…
えっ?何時に寝ているかって?7時だよ…で、毎日5時に起きてる…けど、ナナのほうが先に起きてて俺はやることが無い…
いや…今日は5時に寝るんだ…明日はきっとナナより早く起きることが出来るはずだ…だろ?
俺はそう思うと、布団の中に入って一人で眠り始めたんだ…
物凄くどうでもいいことなんだが、俺はこの1ヵ月…サリィの顔を見ていないんだ…寝顔しか…
だって、サリィが宅配サービスの仕事から帰ってくるの8時だし…ね?
結婚して早々だが、こんなので本当に上手くやっていくことが出来るのか…非常に心配で仕方が無いよ
……なんだかなぁ…俺、捨てられそうで…嫌だなぁ…
どうでもいいけど…本当に…俺は…これから先も…こんな…せ…かつを…
Zzzzz…
こうして俺は、また一日を終えたのだった…
〜〜〜サリィの視点に変更します!!!〜〜〜
今日もいつもどおり…すっかり遅くなってしまったなぁ…
そう思いながら、私は配達物をすべて運び終わり、すっかり軽くなってしまった鞄を持ってそうつぶやいていた…
宿に戻ると、ちょうどみんなが食事をしているところだったけど…やっぱり、デメさんの姿が見えない…
今日も、先に寝たのかなぁ…?
結婚してから一ヶ月とちょっと経つけど、働き始めてからデメさんの姿を一度も見てないなぁ…
私が仕事から帰ってくると、デメさんはいつも先に眠ってしまっているから…
当然、デメさんと夜の営みを楽しむ事はもちろん…会話すら交わしてないの…
やっぱり、デメさんは姉さんに強引に言い寄られて私と結婚したから、私のことなんて余り思ってないのかなぁ…?
なんて事ばかりが最近頭の中に浮かんでくる…
他の宿屋に居候している人たちや養子としている娘たちは私に話しかけてくれるけど…なんだろう?
私は、デメさんとお話がしたいの!!結婚しているのに、まだ夫のことをさん付けして呼んでる私…まぁ、いいけど…
……仕事時間を短くしたほうがいいのかな?でも、短くしたら生活が大変になるし…
最近、家に帰ってもあまり家が楽しくないように感じるんだ…
「はぁっ…」
「どうしたのサリィ?」
「あっ…姉さん…そのね?デメさんと結婚したのに、なんだか実感が無くて…デメさん、私が帰ったらいつも眠っちゃってるから…」
「なるほど…確かにデメトリオはここに戻ってきてから寝るのが本当に早くなったわね…それで、落ち込んでいるって訳ね?」
「うん…新婚夫婦のはずなのに、もう終わりかけの夫婦みたいで…それで、何か夫婦の証となるようなものを残せたらなぁって…でも、今はデメさんも私もフェルスに帰ってきたばかりだから旅行とか仕事を削るような事はとても…」
「だったら、やっぱり子供よ!!あなたに子供が出来たら少しはデメトリオにも夫としての自覚が出るんじゃないかしら?」
子供…子供かぁ…確かに、私にデメさんとの間に出来た子供が産めたらデメさんも私と会話してくれるかも知れないし、家族で楽しく暮らせるよね…
でも、やっぱり無理かな…だって、デメさんは私よりも明らかに早く寝るのに、一度寝たら中々起きないから…
それに、わざわざ起こしてHな事をしたいって私から言うのにはちょっとだけ抵抗が…
だって、私は女の子だし…結婚しているとはいえ…恥ずかしいもん…
「でも…デメさんは中々起きないし…」
「大丈夫よ…ゾーネの発明品の1つで卑猥な夢でも見させたら下は固くなるでしょ…そうなったら、あなたがデメトリオに夜這いを仕掛ければいいのよ…ね?」
「えっ…!?えぇっ…!?」
「大丈夫…姉さんにすべて任せておきなさい?ふふっ…楽しくなってきたわね…」
私は姉さんが非常に乗り気になっているのに少し不安を覚えたけど、一応姉さんに任せてみた…
それで…姉さんが用意してくれた飲み物を飲むと急に身体が火照ってきて…その後は…
ちょっと、乱れすぎたかな?ちょっとデメさんの…皮被ってたけど、大きさはベストだったし…
とにかく、しばらく時期が経過したら上手く孕む事が出来たか調べてみようかなって思うんだ
デメさんとの子供が…出来ていたらいいなぁ…
〜〜〜デメトリオの視点に戻ります!!〜〜〜
普段よりも早い時間に寝たからだろうか?俺は変な夢を見てしまったと同時に目が覚めると、物凄い身体の疲労を感じたんだ…
何がおかしいって聞かれたら、迷わずに自分の心境って答えることが出来るな…
なんて言ったらいいだろうか?物凄く俺は…大事なものを気づかないうちに失ったような…そんな気分に陥ったんだよ!!
いや…まぁ、部屋の中を見回しても変わった事はないし……ん?サリィ、昨晩お酒飲んだのか?
そう、微妙にサリィの方から漂ってくるアルコールの匂い…これは、相当強い酒を飲んだに違いないな…
いやまぁ…サリィが酒に酔ったらどうなってしまうのかなんて俺にはわからないんだけどな?
っと、せっかく早く寝たんだ…さすがに朝の4時はナナも起きていないだろ…?
俺はそう思って下の部屋に下りていったんだが…
「…あれ?デメトリオさん…?今日は早いですね…?掃除は終わったのでそこの机でくつろいでいてくださいね?」
「ええっ!?ど、どうして…こんな時間にも起きているんだ!?」
「そりゃあ…私はパーフェクトメイドですから?まぁ、一応昼間に仮眠を取らせていただいているってのもありますけど…」
「くっ……それじゃあ、俺が早く寝たのも意味ないじゃねぇかよ…」
「何かいいましたか?」
「いや?はぁっ…」
そんな出来事があって早数時間…サリィはなんだか変に機嫌よく仕事にいったってナッカーサーに聞いたが…
今日も俺はすることが無く、椅子に座って悩みこんでいたんだ…
もしだ、もしもこれから先もずっとこんなことが続いたら…俺の精神面はどうにかしてしまいそうだよ!!
今日も…いや、今日こそは何かする事は無いかと思っていたが…相変わらず何も無い…
そうっ!!本当に何も無いんだよ!!
今日も綺麗に仕事が無い!!つまり、やる事が無い!!
くそっ…無職案内所にでもいって仕事をもらいに行くか…?いや、無理だな…
だって、この町の人はほとんどの人が俺が宿屋を経営しているって知っているからさ!!
もう…そんなところにいって仕事を紹介してくれなんていった瞬間から、俺は生きるために本気で職を探している人たちに袋叩きにされるっての!!
………なんだかな、こう…1人で愚痴ばっか言っていると、小さい奴に見えるな…俺って…
そう思って気持ちがブルーになっていた時だった…
いきなり扉が勢いよく開いたかと思うと、そこにはあの…俺を一時的に監禁していた幼女の姿がっ!!
ど、どうして彼女が…しかも今頃になって現れたんだ!?ってか、どうして俺の宿屋をしっているんだっ!?
「ふむっ…ここがあんたの住んでいるところか…確かに、庶民の暮らしってのはこんなものね…」
「エヴァリン様…お着替えと専用のティーセット、運び終わりました…」
「お疲れさま…さぁ…私を部屋に案内しなさい!!」
……はぁっ?ちょっと待ってくれ…
いきなり来て、いったい彼女は何を言っているんだ?
「言っている意味がよくわからないんだけど…?」
「鈍いわね…ペロル?説明してあげるのよ!!」
「はい…エヴァリン様はお金持ちの生活…何でも手に入る生活に飽きてしまいました…それなので、エヴァリンさまがいきなり庶民の生活をしたいと…」
「それで、庶民といえばって考えたら、私の知人はお金持ちばかりだったし…あんたしかいなかったって訳、光栄に思うのだな…」
………それと俺に何の関係が…?
いや…何はともあれ…1つあることが分かった…彼女はこの宿屋に住むつもりなんじゃないのか!?
ちょっと待ってくれっ!!ただでさえ居候で部屋の数が少なくて、本当に宿屋かと思い始めているのに、これ以上居候が増えたら…
「待ってくれよっ!!そもそもこの宿屋にはもう部屋が…」
「ペロル?確か…この宿屋にはまだ空き部屋があるっていっていたな?」
「はいエヴァリン様…ナナの話だと二階の右から3番目の部屋が…朝の日当たりは弱めに抑えつつも通気性もよく、夜は月明かりがよいとか…部屋を総合的に考えても、内装を除けばエヴァリン様のお気に入りに間違いなく入るLVかと…」
「ほら…あるじゃないか…いいよな?デメトリオ…?そうだ、タダで居座るのも悪いから…私の機嫌がいいときは何か買ってやってもいいぞ?では…私は長旅で疲れたから寝るぞ…?」
………ちょっと、えっ…えぇっーー…?
お、俺の言い分も何も聞かずに…メリィとか他の連中に聞いてみて抗議されたら俺はどうすればいいんだよ?
だが…全員何も文句は無かったみたいなんだよなぁ…
なんでだ?どうしてみんな簡単に受け入れることが出来ているんだ!?
あれかっ…?他の連中も居候だから何もいえないのか…?それとも、楽しくなりそうだからいいって思っているのか!?
……両方の気がしてならない…
それから数日間がいつもどおり過ぎていたが…俺には確実に今までの生活とは違う出来事が訪れていたんだよ!!
以前のように何もしない生活じゃなくなったんだよ!!
そう、エヴァリンと俺は両者ともこの宿屋の中では暇人だったんだよ!!
認めたくは無いけどな?それで、エヴァリンが暇つぶしにと始めたチェスの対戦相手として時間をつぶせるようになったんだよ!!
もう、はたから見たらただチェスで遊んでいるだけのように見えるが…それでもやる事が出来たってだけで俺は十分うれしい!!
それに…出来ない奴なりにチェスのルールを覚えたり、戦略を考えたりすることも出来るから、暇な時間だってこれで削ることが出来るじゃないか!!
……久しぶりに、サリィとご飯でも食べようかな…
〜〜〜サリィの視点に移ります!!〜〜〜
あの出来事から数日が経った今日…私は今、フェルス興国にある病院の一室の前で待機していた…
本来なら、私は病院の雰囲気が余り好きじゃないから病院なんて来ないんだけど、今回は別!!
そう、今回はデメさんとの子供を孕む事が出来ているのかを魔素分析器で調べてもらうために来たの!!
で…注射が怖くて散々暴れたりもしたけれど、一応するべき事はすべて終わって、今は結果待ちってわけだけど…
今日は久しぶりに仕事が昼ちょっと過ぎに終わったから、帰った頃にデメさんと会えるかも…そう思うと、待ちきれない気分になるなぁ…
「サリィ・ウェイネスさーん?」
「あっ…はい!!」
来た…ついに私の名前が呼ばれた…!!
私は緊張で物凄いドキドキしながらも、さっきお呼びがかかった部屋に入っていったんだけど…
部屋の中に入ると、中で二人組みのナースさんが私のほうを見ながら手招きしているのが見えたの…
あぁっ…緊張するなぁ…
「サリィさん…」
「は、はい…」
「………」
あぁぁっ!!そ、その変な間は何なんですかぁっ!?
も、もしかして…今回は駄目だったとか…!?もしそうだとしたら…
「おめでとうございます…確実に血液の中に少量だけ、魔素が新たに検出されたので、子供はいますよ!!分析結果を右のナースから受け取ってください…」
そう聞いたとたん、私はなんともいえないうれしさに包まれた…やった…やったぁっ!!
そして私はナースさんから書類を受け取ると、一気に宿屋に向かって飛んでいったのだった…
デメさん…どんな反応するかなぁ?
〜〜〜デメトリオの視点に変更します!!!〜〜〜
あの後、エヴァリンに完膚なきまでにボコボコにされた俺は、次こそは勝ってやると自分の部屋の中で計画を立てていたんだが…
「ただいま〜〜!!ちょっと、お風呂借りるね!!」
んっ…?サリィか?今日はずいぶんと仕事が終わるのが早かったんだなぁ…
お風呂借りるも何も、自分の家なんだから自由に使えばいいのに…っと、のどが渇いたな…
後でサリィにはお帰りって言ってあげるかな…
そう思いながら自分の部屋を見ると、俺は机の上に何かが置いてあるのに気がついたんだ…
これは…一体なんだ?紙ってのは聞かなくても分かるけど、俺がちょっと前までここにいたときは無かったぞ…
そう思い、手にとって俺はその紙を見てみたんだが…
【妊娠判断書 サリィ・ウェイネス様 おめでとうございます!!妊娠しておりますよ!!】
こ、これはっ!?妊娠判断書だとっ!?待て…待ってくれ…
妊娠…?妊娠だと…?妊娠って、子供が出来ましたよっで事だよな…?
……俺の記憶の中に、サリィとキャッキャッうふふな出来事を行った記憶が無いんだが?
いや、だってさ?もし行っていたなら俺の初めての経験…もとい体験になるんだぞ?さすがにそんな事は覚えているだろうし…
はっ…ま、まさか…
俺の頭の中に嫌な予感が駆け巡った…
サリィに限ってそんな事は無いって信じたい…だが、目の前のこの紙が俺の嫌な予感を肯定している…
他の男との子供じゃないのか?
あぁっ…そうだよ!!きっとそうに違いない…
俺がサリィと結婚してから、サリィのことを相手にもしてなかったから…他の男に気持ちが移ってしまったに違いない!!
まさか、新婚生活一ヶ月でこんな出来事が起こってしまうなんて思ってもいなかった…
俺が言えるべき台詞でもないけど、まさかサリィが俺を見捨てるなんて…そんな事は微塵も考えていなかったんだ…
いや…そもそも俺との間に愛があったと思い込んでいる俺に問題があったんじゃないのか…?
俺とサリィの間に愛があるなんて誰が言ったよ?俺が思い込んでいただけだったんじゃないのか!?
そうだ…もしかしたら、俺はサリィが本当に好きな相手ではないのかもしれない…この間柄も、俺を利用しているだけの隠れ蓑だったとしたら…?
俺が紙を目の前にしてそんなことを思っていると、風呂の扉が開く音がしたんだ…
俺は慌てて自分の部屋に戻っていったが…こ、これは由々しき事態だぞ?
部屋に戻ってからもそのことを必死に考えていたが、どんな考え方をしても…俺はサリィに対しての恨みの感情がわいてこなかったんだ…
一ヶ月間相手にしていなかった罪悪感ってのもあるかもしれないけど…そもそも俺はサリィから本当に気持ちを聞いていないってのもある…
あの時メリィから聴いた言葉は、実はメリィの作り話だったとしたら…?サリィは本当は別の男のことを愛していたんじゃないのか…?
話が上手くできすぎている気はしていたんだ……やっぱり、やっぱりか…
それからしばらく考えてみた結果、俺はある結論に至ったんだ…
俺がサリィの夫でいると、サリィの本当の幸せを邪魔しているて事になるだろ?
…俺がサリィと別れてしまえばいい…そうすれば、俺はサリィの邪魔にならなくてすむ…
どうしてサリィを自分の夫として引き止めるために戦おうとしないのか…それは、単純に怖いからだろうな…
まず、勝てないって事は自分が一番よくわかっている、次に…サリィの本当の幸せを砕いてまで俺は…サリィを引き止めてもいいのかって事さ…
まぁ、逃げの選択肢を取るのは昔から変わらなかったし、俺にそんな価値が無いって事も…認めたくないけどわかっているからな…
離婚届…もらってくるか…
俺はそう思って、誰にも気づかれること無くそっと宿屋を出たのだった…
離婚届を受け取ってから宿屋の扉をあけると、サリィが俺を見てこっちに走ってきたんだ…
おかえりって言ってくれる…本当にうれしいんだが…
それでも俺の心境は決しておだやかじゃない…
そう思いながら辺りを見てみると、今の時間帯は宿屋のメンバーがあらかた宿屋に集まっている時間帯だったんだよ…
後伸ばしにしても、いいことなんて絶対に無いからな…この機会に乗じていってしまうしか…それしかない!!
「デメさんっ!!実は…実はねっ!!」
「サリィ…大事な話があるんだけど…これにサインしてくれないか?」
そういって、俺はサリィが見せてこようとしたものをあえて見ず、サリィに離婚届を渡したんだ…
どんな反応が返ってくるんだろうか?これを待っていたって反応をしてくれると…少しは俺も気が楽なんだけど…
だが、その後でサリィがとった行動は俺が予想していたのとは大分違っていた…
「えっ…で、デメさん…これって…」
そう言いながら、サリィはぺたんと腰を地面につけてしまった…
変に肩が震えているのを見ると…なんだか悪いことをしてしまったような気分になる…
でも、本当はこれでよかったんだろ?サリィは…別の男との間に生まれた子供とその後の人生を過ごせばいい…
俺はこれから先、なんどもこんな体験を経験したら精神が崩壊してしまいそうだから…一人で生きていくつもりだが…
「そう、離婚届だ…」
「な、な…なんで…?まさかデメさん…不倫…してたの?」
「いや?そうじゃないけど…俺がサリィの幸せの妨害をしているって分かってから、サリィの邪魔をしているのが嫌でさ…」
「ど、どうしてそれじゃあ…こんなものを…」
サリィがちょっとだけ涙を浮かべ始めたとき、メリィが憤慨しながら俺のところに走ってきたんだよ!!
どうしてサリィはうれしいはずなのに…泣くんだ?
はっ…そうか…嬉し涙だなっ!?
そんなに…俺のこと嫌だったんだな…
「デメトリオ!!あなた…サリィになにをしたのよ!!」
「ね、姉さん…これ…」
「これは…!?デメトリオ…あなた、サリィのどこが不満だったのよ!?どうしてサリィにこんな恐ろしいものを…」
「いや…だって…サリィは…」
「問答無用っ!!こうなったら…宿屋会議を行うわよ!!みんなをロビーに集めてくれるかしら?ナナ…」
「は…はいぃっ!!」
こうして、なぜか急遽宿屋会議が始まったのだった…
サリィが心の底でのぞんでいるはずの出来事なのに、会議なんて開かなくてもいいと思うんだが…
〜〜〜宿屋会議〜〜〜
「さて…そもそも宿屋会議とはどんなものなのかとか、そんなことは置いておいて…早速本題に行くわよ!!」
そう言いながら俺のほうを指差すメリィ…
妻陣が向こう側、夫陣がこっち側でありながらおこなわれる宿屋会議と呼ばれる謎の会議…
俺の考えが正しいなら…たぶん家族会議みたいなものなんだろうけど…
「待ってくれメリィ…そもそも、急に集められたんだから、説明はしてくれないか?」
「デメトリオに聞きなさい!!」
「だってよ、どうして急にこんなことになったんだ?」
「いや…サリィにあのテーブルの真ん中に置いてある物を渡したら、急遽こんなことに…」
そう言いながら、俺は貰ってきた離婚届を指差したんだが…
それを見たとたんに場の空気が急に険悪なものに変わっていくのを俺はなぜか感じ取れたが…サリィがきっとこうして欲しいと思っているだろうから貰ってきたまででだな…
「デメトリオ、お前…結婚して一ヶ月でそれは無いんじゃねぇか?何があったんだ?」
「えっ…いや、それはだな…サリィが実はこうして欲しかったんじゃないかと思ってだな…」
「どうしてそんなことを思ったのよ?何が根拠で…サリィの気持ちを傷つけたのよ!?」
うぉぉっ…め、メリィが物凄く本気で怒っていて怖いな…
まるで自分のことのように怒ってくるじゃないか…
「うぅっ…デメさん…デメさぁんっ!!ひどい…ひどいよぉっ!!」
「確かに、新婚生活でこの仕打ちはあんまりだと思うわね…」
なんだ…?他の嫁陣の方の敵意に満ちた視線は!?
それに…サリィっ!どうして泣くんだよ!?お前は俺と別れて他の男と人生を過ごしたいんだろ!?
じゃないと…あの妊娠診断書の存在がだな…
「だってっ…サリィは俺と違う男と本当は一緒になりたかったんだろ!?じゃないと、妊娠診断書の存在が嘘になるじゃないか!!」
「どうして…?どうしてそんなことを…喜んでくれるって思ったのに…」
「いやいや、まず喜ぶなんて無理だろ!!だって…俺はサリィとキャッキャッうふふな事をした覚えは無いんだから!!つまり…俺の子供じゃないって事じゃないか!!」
「えっ…?いや…その…」
「つまり、俺は結婚したとついうかれていたが…そんな馬鹿は俺だけだったって事だろ!?確かに、サリィの事を相手しなかったって事が原因である事もあるかもしれない…だから俺から離婚届をサリィに渡して…お前の幸せをつかんでもらいたいって俺が思ったんだろう!?」
………その事に気がつかずに知らない間にその男とサリィの恋仲を保つためにお金を渡し続ける生活とか…俺には耐えられそうにないし…
いや、気づいていない間はずっとお金は払っているんだろうが…と、とにかくっ!!邪魔者は消えればいいんだろ!?
「いや、デメトリオはサリィとヤったじゃないの…」
「そんなわけ無いだろう!!俺は初めてする事を覚えていないほど馬鹿じゃない!!そんな事をしたら俺が分かるだろ!!」
「……もしかして、デメトリオは本当に気がついていないのではないかのぅ?わしの発明品はLV高いものじゃし…本格的に寝てたのではないかのぅ?」
「そ、そうかも知れないわね…」
なんだ…?メリィとゾーネがなんだかヒソヒソ話をしているんだが…?
いや…そんな事より今はこの問題をだな…
俺がそう思っていた時だった…
「本当にあの紙はデメトリオとサリィの子供だって証の紙なのよ?もしかして勘違いしているかも知れないからいっておくけど…」
「だから…そんなわけないだろっ!!俺はやってないんだから!!もし本当に俺の子供だったら…お詫びとしてサリィの言う事はこれから先何度でもきいてやるよ!!」
「……デメさん?それ…本当?本当だよね!?」
あぁ…だって、俺の子供のはずが無いじゃないか…
でも、なんだろうか?サリィが急にうれしそうな顔をしたのと、メリィがやれやれって顔をしたことに少しだけ引っかかりを感じるんだが…
「だったら、明日この結果を出した病院にデメトリオも行くわよ?そこではっきりとさせようじゃない…」
「わかった…もし、もしもサリィの子供が俺の子供じゃなかったら…俺は明日…離婚するからな?」
「ふふんっ…臨むところよ…じゃあみんな、話はすんだから…解散してもいいわよ?]
メリィがそういうと、全員が一体なんだったんだって顔を浮かべて自分の部屋に戻っていったんだよ…
まぁ…確かに当事者じゃなければ…そんな反応をしても仕方が無いとは俺も思うけど…
いや…明日が俺にとっても運命の日なんだ…荷物、今晩中に纏めておかないとな…
そして俺が荷物をまとめ、次の日の昼前…俺はメリィとサリィにはさまれ、病院の前に立っていたんだ…
俺はもう分かりきっている事なのに、どうして二人ともあんなに必死なんだ?
あれか…?俺に最後まで希望を与えて置いて…一気に奈落の底に叩き落すつもりなのか!?
くそぉっ…恐ろしい…もしそうだとしたら、俺が思っている以上に恐ろしい姉妹だな…
それから数分の時間が経過し、ついに俺たちの結果が発表されるときが来た…
医者の方が物凄く深刻そうな顔をしている…って事は、やっぱり違っていたのか!?
……やっぱりかぁ…これから先、また独り身生活の始まりか…
短い新婚生活だったぜ…荷物も纏めたし、俺もメガロス帝国の後でも…追いかけようかな…
「結果を診ましたが…100%デメトリオさんとサリィさんの間の子ですね…では、お子さんを大切にしてあげてください…次の方どうぞ?」
な…にぃっ!?そ、そんな馬鹿なっ!!
まさか、医者まで結託して俺を陥れようとか…そうなのか!?
「ほら…やっぱりじゃないの…それに、私がデメトリオに夜這いを仕掛けたらってサリィに言ったんだから、当然の話じゃない」
「よ…夜這いっ!?」
「そう…ゾーネにも協力してもらったし…三日くらい前かしら?」
三日前…?それって、俺が沼にどぷりと沈んでいく夢を見た日じゃないのか!?
まさか…あの沈んでいくような感じがそうだったとでもいうのか…!?
それ以前に、それってつまり…サリィは俺と…
「サリィ…まさか…やったのか?」
「…うん、恥ずかしくて言えなかったけど…デメさんの皮被っていたアレもちゃんと確認できたし…それに…よかったよ?」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
お、俺のコンプレックスが寝ている間にばれていたなんて…そんな事が…
いや、さすがに真性では無いけど…それでも俺が他人に余り知られたくない秘密をサリィがしっているなんて…
間違いない…見られたんだ…うわぁぁぁっ…
俺はサリィが俺を裏切っていなかったってことにほっとしたが、それと同時に恥ずかしさで顔が真っ赤にほてるのを感じたんだ…
そして…俺は自分が気づいていない間に大切なものを失っていたって事実も…知ってしまったし…
「サリィ…その、ごめんな?こんな紙、破り捨てるからさっ!!許してくれよ!!」
ビリィッ!!
俺はそう言いながら、一気に離婚届を破り捨てたんだ…
…サリィは許してくれるかな…?はぁっ…
「別にいいよデメさん?それに、デメさん昨日の約束…覚えていてくれているよね?」
「約束…?あぁっ!?な、なんでも言う事を聞くってあれか…?」
「うんっ!!私、今の宿屋にいる人たちも含めて、記念写真が撮りたいなっ!!宿屋をバックにして…それで、生まれてくる子供にその写真を見せてあげたいの!!」
「え…あぁ…それだったら別にいいけど…」
「そして!!デメさん…」
「ま、まだあるのかっ!?」
「私とこれから先…何があっても夫婦でいてください!!絶対だよ?」
「あ…あぁっ…」
俺はサリィにそう答えると、サリィの後を追いかけて自分の宿屋に向かって歩き始めたんだ…
誰かに頼んで写真機を貸して貰わないといけないし…って…なんだ?
俺は誰かに見られている気がして振り向いたんだが…後ろには慌しく病院を行き来している人達だけ…気のせいだったのか?
俺はそう思うと、一瞬だけセムちゃんとグロリアさんが病院から出てきたのを確認すると、後を追いかけていったのだった…
「………別れれば良かったのに……」
「セム…何か言った?」
「えっ?何も言っていませんよ?お母様…私、ちょっと最近カマを砥ぐのに使っていた布が破けてしまって…」
「そうなの…?だったら、買ってあげるわ…行きましょうか?」
「はいっ!!……ふふふ…デメさん…あはっ…あははっ…待っていてください…ね?」
そしてしばらくして…俺は近所の人から写真機を借りると、宿屋にいた全員に無理言って正面に集まってもらったんだ…
さぁて…どうせ撮るなら、上手く撮りたいよな…?
でも…俺は撮り方なんてわからないんだが…
「デメトリオー?早くしろよっ!!」
「待ってくれよヤマトっ!!やり方がわからねぇんだよ…」
「その上のボタンを押したら5秒いないにこっちに走ってくればいいはずだ…」
「これでいいのかユーマン?」
俺はユーマンが言われたとおりボタンを押すと…慌ててみんながいるところに走っていったんだ…
みんな、それぞれ好きな格好で写真に写ろうとしているし…俺もギリギリ定位置につけたか…?
そう思っていると、いきなり目の前の写真機から物凄い光が出てきたんだ…
これで終わりか?案外…あっけないもんなんだな…
さぁて…これから先、俺たちにどんな運命が待っているかは分からない…
でも、この写真に写っているみんな…そして、未来の俺たちの子供たちとのんびりと過ごせたらいいな…
そのためには、まずは子供の名前を考えないとな…
俺はそう思うと、写真機を返しに行って宿屋の中に入っていったのだった…
〜〜〜END〜〜〜
13/01/01 19:17更新 / デメトリオン
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