98 人間と魔物娘の発明者
デメトリオが下の階に移動した時…僕は心の中でいろいろなことを考えていた
今までの戦いで負け…どうなったのか分からない兵士たちやミカルドのメンバーのことや、僕の発明品のこともだ…
デメトリオが逃げ始めた時…僕は彼には内緒だが、少しだけ逃げてしまおうかとも思っていた…
僕だって人間だ…命は助かったほうがいいって思うのは当然だからね?
だったら、僕はなぜ逃げるって事をしなかったのか…
その理由の一つに、僕の作り上げた技術が彼女達に渡るのが怖かった…というのがある。
僕の作った兵器や武器は、使い方を間違えれば大きな争いを生む物なんだ…
それを使って、もし悪い人物が悪用したら…そう考えると、僕は…
僕がメガロス帝国に来た理由…それは、主にそれが理由でもある
僕は…自分の作った兵器や武器が人を殺しあう争いに発展するのを見たくない
だからこそ…僕は依存するかのように非殺傷武器や兵器を作るんだ
そして…僕がここでデメトリオが言ったように逃げて…その技術が彼女達の手に渡り、悪用されたらどうする?
今回、初めて機工障壁を抜けた彼女達は、僕が思っていたほどには戦いを好んでしてはいないように見えた…
だが、人と同じように魔物娘である彼女達も、いつその技術を悪用しないとも限らない…
僕が戦って…敗れるまではこの研究成果を破棄しないつもりだけど…もし、彼女達が争いを好むと戦いで判断したら…僕は容赦なくフォードコーポレーションを爆破するつもりでいるんだ
僕は…絶対に人を殺す武器を使わせたくないからね?
昔、この僕の本音を当時…開発担当だった友達に打ち明けたことがあった…
その時は、その友達に甘いって言われたよ…
『俺達武器開発に携わっているメンバーは、単純に言えば人を殺して儲けているんだぜ?大勢人を殺す武器を作れば、それだけ給料が増えるんじゃないか』
ってね?
だけど…僕は、人の命を奪ってまで…本当にお金が欲しいのかって自分で思った時期があったんだ…
そして、今は自分のその思いにしたがって生きているつもりだ
僕は人を殺す武器を作るんじゃない…一時的に争いを止める武器を作るんだ
決して人を殺すことなく…相手を無力化できる武器を作るんだ!
だから…僕はここから逃げる訳にはいかないんだ!!
さて…僕もそろそろ出るとしようか…?
彼女達がこのフォードコーポレーションに突っ込んでくるのも残り2分…それなら、時間的には十分だし…初めての出撃だけどやるしかない!!
デモ飛行は…無しだ!!【セレナーデ】で出る!!
「っと、その前に…電力の配分は今のまま【フォルクランデシステム】を起動するかな…」
フォルクランデシステム…別名を魔法遮断機…これを発動しておいて…僕のフォードコーポレーションの周り2kmに魔法を確実に遮断できる電磁波を発生させておくんだ…
この電磁波は、確実に魔法を発生させる原理となるものを遮断する…
これを発動しておいて、彼女達が使うことが出来る魔法を完全に無力化しておかないと危険だからね…
魔法攻撃は僕のセレナーデの通常モード時に、ショートを起こす可能性がある原因となりえるから、絶対に使わせるわけにはいかない…
まぁ、これは戦場に保険をかけたようなものだと思ってほしい
さて…これでいいか…
今度こそ…セレナーデで出る!!
僕がそう思っていると、上の階に何かが激突する音が聞こえてきたんだよ…
うーん…フォルクランデシステムの発動にちょっと時間がかかりすぎたかな…
急がないと…この地下格納庫から地上に直接出る事はできないからなぁ…
フォードコーポレーションからちょっとだけ離れたところに出るからさ
まぁ、すぐに戻る事はできるんだけど…
僕はそう思いながら、セレナーデの操縦桿を握ったんだ…
さすがは僕専用に作った起動兵器…握り具合も完璧だね…
さて…武装は多数…いける!!
カッ…ヒュッ…
ガァンッ!!
「無事に外に出ることが出来たからよかったけど、問題は僕の操縦技術がどのくらい彼女達と張り合うことが出来るか…コレだね…さて、フォードコーポレーションに行くまでにいる彼女達を…眠らせつつ感覚を掴むとしようかな?」
僕はそう呟くと、セレナーデの後ろに搭載してあったバズーカを両手に持つと、一気に操縦桿を前に倒したんだ…
さて…セレナーデの速度と性能はどのくらいまでデータ上の性能にすることが出来たのかな?
そう思いながら速度メーターを見ると…今は時速200kmか…
この3倍の速度は出すことが出来るけど…どうかな?
計算上では、それ以上の速度を出した場合、機工障壁の簡易版のような装甲でも空中で分解してしまう可能性があるからね…
まぁ、この世界中でこのセレナーデの装甲にかなうのは・・・機工障壁を砕いた人物くらいかな?
さて…彼女達と交戦開始だ!!僕は…彼女達を眠らせる!!
「ねぇ…?あの白色の浮いているものって何かしら?」
「えっ…?何処?」
「あれ?さっき確かに…」
キィーンッ…
「さて…覚悟して貰いますよ!!僕の発明品であるこのバズーカの威力を確かめさせて貰います!!」
セレナーデ専用バズーカ…このバズーカは物凄い広範囲に広がる催眠ガスを地面に打ち付けることが出来る武器なんだ…
しかも、使い捨てだから使い切るまで打ち放題ってね?
大きさもあるから、使い捨てた後は自動で分解されるシステムだし…
とにかく、まずはこのバズーカを使わせてもらう!!
ドドドドドドドドォ…
キィーンッ…ドドォッ…
ふぅっ…10秒か…悪くない!
じゃあ、そろそろフォードコーポレーションに移動を…
「けほっ…けほっ…な、何するのよ!!」
「おや…?あれをかわすなんて、凄いじゃないですか…ですが…」
キィンッ…
「えっ……?」
「それでも、僕の兵器にはかなわない…ってね?インフェルノを大量につなぎ合わせたこの爆弾…即発性ですが…これを爆発させますから、ゆっくりここで仲間と一緒に眠ってください…ちなみに…」
ドゴォーーーーーーンッ!!
「僕のセレナーデは爆発をさせると同時に離れた場所に移動できますけどね?」
僕は遠くの方でインフェルノマインが爆発した時に発生する催眠ガスの煙を遠くで眺めるとそういいながら、フォードコーポレーションに急いだのだった…
まぁ…582人の魔物娘を合計で20秒で眠らせることが出来たんだから、中々だと思いますよ?
僕がその後すぐ、フォードコーポレーションに向かうと…やっぱり、カキサトレインは僕のフォードコーポレーションに突っ込んだようだね…
グランマーグが速度調整を行っていたから、グランマーグが倒れた時に僕はこうなる事は予測出来ていたんだよね…
一つ、グランマーグが弾薬を持って来ることが出来なかったことによって、僕のセレナーデの火力が10分の1カットされた…この事実は正直つらいけど…
「それにしても…数が少ないですね?精鋭部隊何でしょうか?っと、早速仕掛けます!!」
僕は一人でそういいながら、自分のバズーカの残り弾薬数をモニターで確かめたんだけど…
やっぱり、初めに出撃したこともあって、あまりバズーカを搭載していなかったから、それが響いたかな…
でもまぁ…それでもセレナーデには多くの武装が搭載してある…
僕の発明がどこまで通用するのかは微妙なところだけどね?
キィーンッ…
「あいたたたた…こんなところに建物があるなんて聞いていません…」
「でもー…おもしろかったよねーー?あははっ!!」
「きーちゃんはちょっと、危機感が足りませんよぉ…」
「建物を少し壊された僕としては、面白くないんですけどね?」
「だ、誰なの!?それに…どこですか!?」
「あははーっ!!凄い風だねーー!!」
「きーちゃん!!そんなにのんきに言っている場合では…」
「僕は君達の真上だ…そして、君達にはここで…眠ってもらう!!君達の活躍は見させてもらった…だから、ここで眠って疲れを癒して欲しい…」
ヒュンッ…ヒュンッ…ガシッ…!!
「勝利は…常に僕と共にある…!」
ドドドドドドォッ!!
正直、僕は幼女二人に武装を使いすぎているように他の人から見たら見えるかもしれない…
だけど、僕はどんな相手も見た目で判断する事はしない…
いや、一歩間違えれば、幼女は幼女で危険な存在ともなりえる…
だから、僕は彼女達を眠らせるのにも最大限の力を使うよ?
…おかげで、僕はバズーカという武装を使い切ったからね…
まぁ、彼女達は眠ったと計算して…この考えが外れた場合はフェイズ2に移項だな…
カキサトレインに乗っていた人物は彼女達二人じゃないはずだ…
とにかく、今はフォードコーポレーションの近くにいる彼女達を眠らせることが先だね…
っと、そう思っていると、少々大破したカキサトレインの中からグランマーグを倒した魔女の女性が降りてきたんだ…
……まずは、空中に移動して様子を見ようか
キィーンッ…
「メアリー?きーちゃん?どうしたの…って、このガスは…!?目的地に着いたと思った瞬間にこのお出迎え…メガロス帝国の方も必死ね…さすがは、私の夫がいた国…といっておきましょう…はぁぁっ…グランマーグのあのぷよぷよのおなかを撫でに戻りたいけど…まずは、メアリーちゃんときーちゃんを眠りから覚まさせてあげないとね…」
なるほど…彼女はせっかく眠らせた魔物娘達を起こすことが出来る魔法を覚えているんですね…?
どうりで、ここまで攻め込まれるわけだ…
ですが…フォルクランドシステムの効果で魔法は使えないんです…
さて、そろそろ眠らせてあげましょうか…?
武装は…【スリーピングウォー】で良いでしょうし…
そうと決まれば、早速起動させていただきますよ?
スリーピングウォー…別名を催眠ガス高圧縮具現式ナイフ…
このナイフは僕が作った発明品の中では、まだ試作段階なのですが…
これは、メガロス鉱石の中では催眠ガス濃度が低い鉱石部分を使用し、それをこの持ち手の部分から発する電気でつなぎとめてナイフ状の形を保っているのですが、このナイフは対象を切ることができませんから…使い方が難しいのですよね…
でも、このナイフの煙にさらに高電圧を流せば…煙の中に含まれているメガロス粒子が少々結合し、ある程度の硬度を生むんです!
そして、当たった時に対象者にある程度の打撃ダメージを与えつつ、催眠ガスは辺りに拡散する…
そして、僕がここで操作してスリーピングウォーを起動するたび、そのガスが刀身となって、いつまでも尽きることなく敵にまとわりつくんです!!
無限の攻撃手段ですから、敵に回避することが出来る可能性は皆無…
そして、魔法が使えない状況である今、僕が圧倒的に有利な状況下にいるということに、代わりは無いはずです!!
「起動終了…眠らせます!!」
「あれ…?魔法が…使えない?そんな事が…」
「起こり得るんですよ…僕の発明品の効果でね?そして、安らかに眠ってください…」
「えっ…?な…に?これ…?ねむい…くぅーっ…」
ふぅっ…いくら速度が出るといっても、少々さっきの速度の移動は危ないかと思ってしまいました…
ですが、おかげで彼女のいる102m下まで2秒で行くことが出来ましたけど…
さて、これで…終わりですか?案外、あっけないものだな…
「あわわわわわっ!!てぇーいっ!!」
ガァンッ!!
くっ!?後ろから…僕の機体を少々ひるませるほどの衝撃を感知…!?
なるほど…まだまだ僕の戦いは終わりではないって事ですか?
それにしても…レーダーによるこの熱源反応…僕のセレナーデと同じ大きさの魔物娘がいるのか…?
そんな馬鹿なことが…本当にありえるのか?その場合、僕はここに来るまで…それを感知できなかったことになる…
とにかく、後ろを取っているこの謎の敵を離れさせなくては…なっと!!
「きゃぁっ!?あわわわ…」
「落ち着きなミリエラ!!あたいがついているんだから!!それに、あたいがカスタムしたその超幼女機工バフォメットリオンZ(リターン)が負けるわけが無いだろ?あたいを信じな!」
……なっ!?僕のセレナーデと…同じようなつくりの機体を…魔物娘達も作成していたっていうのか!?
そんな事は報告にはなかったけど…そうだとしたら…メガロス帝国の兵士は勝てないはずだよ…
しかも、さっきまでここに無かったことを考えると、あの機体は無人でここまで飛んでくることが出来たって事にもなるから、無人で動くことが出来たって事になるよね…
中々、難しい技術だよ?無人機は…
だけど、無人機にはある弱点がある…その弱点を補うために、無人機にあえて魔物娘を乗せることが出来る機能もつけてあるのか…
オートとマニュアルを自由に切り替えることが出来る…彼女達の中にも優秀な発明家はいるようだ…
でも、僕の技術が負けたって訳じゃない…だろ?
「さぁ…僕の技術と魔物娘である彼女の乗っている機体の技術と…どちらが上か…勝負と行きましょうか!」
さて…相手が僕と同じような機体に乗っているということを仮定すると、スリーピングウォーが通用しない…かぁ…
相手が機械だって事も考えると、コックピットは破壊しないまでも…動力源をシャットダウンさせる必要がありそうだな…
ウォルトクローを起動して…機体を部分的に破壊するとしよう!!
ウォルトクロー…僕のセレナーデに搭載されている唯一の近距離電磁クロー…
これを起動すると、金属をも高電圧で貫くことが出来るようになるんだよ!!
セレナーデは遠距離と近距離を両方こなすことが出来るように僕がカスタムして作り上げた機体だ…
そして、セレナーデの両腕がウォルトクローを起動すると物凄い凶器になるんだよ…
でも、僕はこの武器で彼女の機体を行動不能にするためだけに使うけどね?
そして…セレナーデの手のひらからはエネルギー弾を撃つことが出来るし…
とにかく…戦ってみないとな…
キィーンッ…
「あわわわっ!!は、早いっ!?」
「落ち着きなっ!右から二つ目の黄色のボタンと左のボタンを押すんだ!レーダーに相手の熱源が表示されるから…それを利用して戦いな!」
「えぇっ…!?う、うえっ!?」
「勘が良いな…だが…」
ギキィッ…ドゴォッ!!ジジジッ…
「僕のウォルトクローの電圧の前では…その装甲はまるで紙のように脆いね」
「きゃっ!?あうぅっ…」
「大丈夫かいミリエラ?まだ外部装甲…服が切られただけだけど…あの機械も、あの機械に乗っている敵も強いようだね…」
「どうするんですかぁっ!?このままじゃ…」
「落ち着きなっ!!天才であるスカニ様がついているんだ…右のレバーを降ろして左の武器を使いな!!」
「やってみる!!」
さて…この機体…魔物のバフォメット…って種族にそっくりの見た目をしているが、この装甲は二重装甲になっているようだね…
無人機でも行動可能で…二重装甲…本当にいい技術だ…
だが、その分速度が遅いね…それでは…
僕がそう思っていると、いきなり僕のセレナーデのバランスが崩されたんだよ!
足払いか…中々、攻撃を受けている状況でその行動をとる事は難しいと思うよ?でも…良い判断だ…
だが、僕のセレナーデはバランサー制御計算プログラムが内蔵されてある…
だから、隙を作る事が出来たとは思わないことだ…
僕がそう思い、空中でバランスを取り直して彼女の機体の方を見ると…
なんだ?あの武器は…?
そう…僕が彼女の方に向き直ると、彼女の機体はまるで鎌のような形状の武器を持っていたんだよ!!
しかも…切っ先がレーザー技術を応用しているのか、紫色の光を発している…
あの武器は一体……?
「これは…?一体何ですか?鎌…に見えますけど…」
「それはあたいが装備させた新武装…バフォサイスだ!!近距離攻撃はもちろんだけど、一度振るとバフォサイスから真空波状の風が放たれ…遠くにも攻撃できる優れものの武器さ!!」
「……よぉしっ!!やってみます!!」
ブォンッ…ブォンッ…
なんだっ!?これは…真空波か!?
くっ…僕のセレナーデに直撃した…か…?こんなダメージを受けるなんて事は設計段階では計算していなかったからな…
どれほどのダメージを受けた…?
僕がそう思いながら慌ててモニターを見ると…0.3%のダメージだと!?
くっ…なんて攻撃力だ…しかも、モニター表記には切断系ダメージを受けたと表示されている…か…
一見すれば、たかが0.3%のダメージだろうと思うかも知れないが…小さな攻撃だって何度も受ければ立派な攻撃だ…
厄介ですね…ですが、攻撃の速度がセレナーデの移動スラスター出力の20%とほぼ同じなので、25%の速度にスラスター制御を行えば…
攻撃を目で判断した後、回避することが出来る!!
「当たったっ!?やったぁっ!!」
「ふふっ…さすがにあたいの発明品でもあるバフォサイスを受けて…無事なはずは…」
「中々の攻撃ですが…まだまだですね?」
バシュッ…バシュッ…
「きゃっ!?ま、まだ動くんですか!?それに…これは遠距離攻撃ですよぉっ!」
「なっ…!?あ、あたいの発明品の攻撃力を耐えた…!?鋼鉄を6枚重ねても切断することが出来る攻撃力なのに…?くぅっ…認めたくないけど、凄い技術だね…あたい、あんたに惚れたぜ!!」
「惚れてる場合じゃないですよぉっ!!きゃっ!?」
「その射撃は…おとりですよ?その射撃を行うと同時に、僕のセレナーデは射撃の速度をはるかに越えた速度で移動できますからね…この距離なら、確実に装甲を破れる!!行きますよ!!」
僕はそう言いながら、彼女の機体のすぐ後ろに移動したんですよ…
さすがに、後ろにまで装甲をつけているはずはありませんし…ね?
後ろからスラスターを攻撃すれば、全体の電力配分に支障が起こる…
強制シャットダウンを誘発できるんですよ!!
僕はその予想を早速行動に移したんだけど…
「ミリアナ!!スラスターを最高出力!!そして、2秒後に右スラスターのみを放射してあの機体に攻撃を仕掛けるんだ!!」
なっ…!?スラスターの急激なエネルギー放出を攻撃に転換した!?
そして…スラスターを一定量放出することによって軌道を修正だと…!?
くっ…攻撃がくるようだね…だけどっ!!
ジジジジッ…ガキィンッ!!
「バフォサイスを止めた!?ど、どうしよう…」
「くっ…ウォルトクローの電圧でもあの鎌を切断できない…?それに…スラスター装置の作成は雑だが…僕が知らないほどの火力だ…新しい技術なのか…?」
くっ…仕方がない!!ここは、秘密の手段としてこれを使おうかな…?
正直、このシステムは最後のほうまで隠しておきたかったんだけど…それでも、あの機体はセレナーデの全ての性能を発揮して戦ってもよさそうだ!!
僕は即座にそう思うと、片手で鎌を受け止め、彼女の乗っている機体の方に左手を向けたんだ
実は…セレナーデの手は左手のみ、飛ぶんだよ!!
いわゆる…有線式って奴だね?
さぁ…覚悟するんだな!!
バシュッ…
「えっ!?左手が飛んだ!?きゃっ!?」
「まさかっ!?有線式だって!?そのシステムは理論上は出来るけど…実際に導入できたって情報は聞いたことが…あたいの知らない技術…やっぱり、あの機体に乗っている奴は凄い!!あたいの夫にふさわしい知能と強さだよ!!」
「だから、そんな事を言っている場合じゃないんですよぉっ!!あぁっ!!機体のバフォメットリオンZ(リターン)の服がギリギリまで破れて…」
「……あたいも、技術を出し惜しみしてはいけないようだね…右の帽子のマークを押しな!!あたいの最高技術…マジックテトラポットが搭載されてあるから!!」
「これですか…?うわぁっ!?よ、妖精…?それにしては大きな…」
「それがあたいの最高傑作だ…あたいの魔法銃の技術をさらに応用して作り出した無人型支援武器…そして、その妖精はミリエラ!!あんたの脳波を読み取って攻撃をしかけるんだ!!あんたはただ…攻撃をどうやってして欲しいか思うだけで良い!!」
「や、やってみます!!」
「(これが…あたいの最高の開発武器だ…これを突破できたなら、あたいは素直にあんたを認めてやっても良いよ…?あたいの結婚相手にふさわしいか…見極めさせて貰うからね!!)」
…なんですか?これは…?
見たところ、無人機のようだけど…この無駄のない動きは一体…?
それに…僕のセレナーデと同じ速度…いや、それ以上だと!?
僕の動きは確実に鎌のおかげで封じられている…その状態で攻撃する手段が彼女にもあったというのか!?
くっ…でも、僕はまだ負けたわけじゃない…
今は初期段階だったから、武装は少ないため、今のような状況になっているが…それでも、僕はこの状況を打破してみせる!!
バババッ…
「くっ…!?動きを確実に封じた状態で攻撃…やりますね…ですが!!」
僕はそう言いながら、左手を元に戻し…右腕をひいて彼女の機体の鎌の攻撃をまともに受けると、即座にスリーピングウォーの持ち手を無人機に向かって投げたんですよ!!
当たればいいんですけど…当たらないのは分かっていますから…
ここはこの手です!!
僕は投げたスリーピングウォーが回避されると同時にそのスリーピングウォーに向かって射撃攻撃をおこなったんですよ…
そして、射撃攻撃を受けたことにより、スリーピングウォーの軌道は変更される…そして、無人機に刺さる!!
まずは一機…
残りは4機だ!!
ヒュンッ…ギィィィィンッ!!
なっ!?これは…ドリルだと!?くっ…セレナーデの装甲に2%のダメージ…
だが、近づいてきてくれたのは好都合だ!!
僕はそう思いながら、背中に攻撃を仕掛けてきた無人機を右手で貫く…
この調子で行くことが出来れば…まだいけそうだね…
「まだだっ!!僕の技術は…まだ屈していない!!」
ドゴォンッ!!
僕はそう言いながら左手を飛ばし、もう一機無人機を貫いたんだ…
残りは2機…倒す!!
僕がそう思い、その2機がどこにいるのかをレーダーで探していると…
な、なんだ…?レーダーが…壊れた…?
まさか…あのドリル攻撃で電気の供給が少し弱くなったか!?
くっ…こんなところで…仕方がない、直接肉眼で探すしか…
僕がそう思った瞬間、僕の両腕が何かにつかまれたんだよ!!
なっ…!?む、無人機!?くっ…な、何をするつもりなんだ!?
僕がそう思っていると、彼女の機体が目の前に飛んできたんだよ!!
まさか…これが目的で!?
くっ…でも、僕の装甲技術は最高クラスのはずだ!!
来るなら来い!!
「よし…ミリエラ!!マモテックレーザーだ!!あたいの強化したレーザーで…攻撃を仕掛ける以外にあの機体を破壊する事はできなさそうだ…」
「わ、わかった!!マモテック…レーザーーーーっ!!」
な、なんだ!?あの攻撃は…!?
7色の光線だとぉっ!?くっ…耐えられるか!?
だが…僕の読みはこの瞬間、綺麗に外れたんだ…
バァァァァァーーー…
「うぐっ…!?な、なんだ!?この反動は…!?」
僕は慌ててモニターをチェックしてみて…そして驚愕したんだ…
ダメージが…95%だとぉっ!?
馬鹿な…!?こんな…馬鹿なことが…!?
僕の装甲技術が…敗れた…!?
しかも…各部位に信号も送る事ができないから…攻撃を仕掛けることはもちろん、動くことすらできない…
終わったな…僕の発明者としての人生も…何もかも…
そう思いながら、かろうじて無事な状態のメインカメラを見ると…彼女の機体も物凄いダメージを受けているように見えたんだ…
あの技は…自分にもダメージがある諸刃の技だったわけか…
いまさら…知っても遅いけど…ね?
「その機体に乗っている奴!!聞こえるか?」
ん…?この声は…コックピットの真上からか…?
戦いに負けた僕に…何か言うつもりか?
…そうだ、この会話を通して、僕の研究成果をどう使うのか…その心理を聞いてみようか…?
もし、悪用するようなら…フォードコーポレーションと僕の命を引き換えにして、それを阻止するつもりだ…
「……なんだい?」
「ふぅっ…よかった…あまりに威力を高めに作ってしまったから心配だったんだ…無事でよかったよ」
「敵である僕にその発言…甘いんじゃないかい?」
「いやいや…あれほどの技術を持っている男だからさ…敵であると同時に尊敬もしているんだ…あたいはスカニ…スカニ・ニークって言うんだ…あんたは?」
尊敬…かぁ…
それを言うなら、僕だってあれほどの機体を作ることが出来た彼女たちを尊敬するよ?でも…スカニって言った彼女はあまり悪い人じゃ…無さそうなんだよね…
いや…最後まで油断するわけにはいかないけどさ?
「僕はケイ…ケイ=ラングスフォードだ…尊敬するって言ってくれてうれしいけど…それだったら、あの機体を作った君達の仲間の方が…」
「あの機体を作ったのはあたいさ!!褒めてくれてありがとう…なんだか照れるね…」
……そうか…彼女だったのか…
「凄いじゃないか…僕のまだ知らないシステムが採用されていたし…完璧な技術だったよ?」
「あんたこそ…あの有線式システムを実用化した人物は…あんたが初めてだよ!ゾーネだってまだやったことがないって言っていたのに!!それで…あんたに相談があるんだ…」
敵である僕に相談事…?そうか…ここで僕の技術の話になるんだな…?
彼女だったら僕の技術を有意義に活用してくれるかもしれない…だが、彼女は戦闘を好んで行う人物である可能性がある…
それを見極めないと…それが、僕の今するべきことだ…
「あの…そのだな…あ、あたいの伴侶になってくれ!!」
………
な、なんて言った…!?
あたいの伴侶になってくれ…?それは、僕に言ったのか!?
どうしてだ…?彼女からしたら、僕よりも僕が残した設計図の方が重要じゃないのか!?僕の存在は彼女にとって…発明の妨げになるはずだ!!
なのに…伴侶になれ…だって?
そんな事…言われたことが無かった…
僕の人生27年間…僕は常に発明一筋に生きてきたつもりだが、そんな事を言われる日が来るなんて思ってもいなかったんだ…
正直に言おう…僕は今…思いもよらない告白に戸惑っている…
目の前にいるゴブリンの彼女は自分の赤い髪を触りながら、顔を少し赤らめ、モジモジしているが…
正直に言えば…可愛いしぐさだと思う…
だが…まさか、敵だった彼女に告白されるなんて事が…どうして彼女は僕を伴侶にしたいと思ったんだ!?
僕はリアリストだ…何事にも現実性を求めないと気がすまない性質だから…それをまずは聞いてみないと…
「どうして…僕を伴侶にしようなんて思ったんだ?」
「相手を好きになる…そのことに理由が必要なのかい?あたいは…あんたがすきなんだよ!!あんたのその頭の良さも、操縦技術も…ガラス越しに見えているその顔も…全部が好きなんだ!!だから…もう一度言わせて欲しい!!あたいの伴侶に…あたいと結婚して欲しい!!」
……ここまで、まっすぐに自分の思いを伝えられるなんて…
僕にはとても出来そうに無い行為だ…そして、羨ましい…
彼女の意志は本物だと僕は思う…
どうしてだろうか…?うれしさで心境は複雑な気分だし…何より涙が止まらない…
これほどまで僕のことを思ってくれた人物は…メガロス帝国関係以外ではいなかった…だからうれしいのかな…?
決めた……彼女が本当に後悔しないなら…僕は…
「……僕は…」
ピーッ…ピーッ…
…なんだ…!?このサイレン音は…セレナーデの機爆音!?
一定のダメージを越えた状態で放置していたからか…!?
くっ…このままではセレナーデは爆発する…!?
僕はどうなってもいいが…僕と結婚してくれるといった彼女を爆発に巻き込むわけにはいけない!!
僕はそう判断すると、緊急コックピット開閉ボタンを押して、彼女を移動させると…彼女を掴んだんだ…
軽いんだな…女性って…さぁっ…行くぞ!!
「てりゃあぁぁぁぁっ!!」
「えっ…!?な、何を…!?うわあぁぁっ!!」
そう…僕はスカニを遠くで眠っているあの幼女達の近くまで放り投げたんだ…
あそこなら爆風は届かないだろうし…僕の力でも投げることが出来る距離だろう…
セレナーデの爆風範囲を狭くしておいてよかったな…
スカニ…僕の発明結果…君に託した!!
僕のことを好きだといってくれて…ありがとう!!
さよならは言わない…だから、せめて僕の分も生きてくれ…
そして…メガロス帝国の兵士達のことをスカニのリーダーに相談して…酷い目にあわせないであげて欲しい…
あえて…よかった!!
ドゴォォォォォォッ!!
そして…僕は自分の体が爆風によって吹き飛ばされ…地面にたたきつけられるのを感じた…
あまり…痛くないな…でも…怖いな…
は…ははっ…
「おい!!起きろ!!まだ返事を聞いていないんだぞ!?起きてくれよ!!あたいの伴侶になってくれるって…言ってくれよ!!あたいと一緒に人生を楽しもうよ!!子供とか作ってさ…なんとかいいなよ!!ねぇっ!!」
「僕の…研究…か…君に…託し…」
「なんだって?聞こえないよ!!しっかりしてくれよ…頼むよぉっ!!」
「スカニ…退いてくれるかしら?治癒魔法で助けられるかも知れない…」
「ほ、本当かいジュンコ!?」
「えぇ…でも、魔法が今…なぜか使えないのよ…だから、今は回復薬でかろうじて命を引き伸ばすしか出来ないわね…魔法が使えたら…大丈夫だとは思うけど…」
「……多分、ケイが作った発明品の一つだと思う…あたい、あの建物に行ってその発明品を止めてくるよ!!」
〜〜〜スカニの視点に移ります!!〜〜〜
ケイ…きっと、助けるからな!
あたいが始めて認めることが出来た異性なんだ…そして、あたいが惚れた男なんだ…絶対…絶対助けるからな!!
あたいはそう思いながら、一人でケイのいたと思われる建物の中を走っていた…
すると、エレベーターのすぐ近くにそれと思わしき装置があったんだ…
これは…【フォルクランデシステム】?
…あたいの勘が正しければ、これが魔力遮断機だと思うんだけど…
そう思い、あたいは電源をOFFにしたんだけど…ある場所に対する電力の供給が停止しないんだ!!
おそらく、この電力の供給を全て止めることができれば、魔法が使えるようになると思うけど…
えっと…地下3階か…?もう、時間が無い!!
あたいは迷うことなくエレベーターのボタンを押し…地下三階に移動したのだった…
電力を供給しているものを止めないと…
〜〜〜デメトリオの視点に移ります!!〜〜〜
さぁて…地上の戦闘はどうなってるのかな…?
ケイ、勝ってるといいけど…
それにしても、いちいち脱出用の乗り物に電力が供給されるのに時間がかかるなんて…ケイもうっかりしてるよなぁ…
まぁ、その充電もそろそろ終わりだし…俺はこの場所から安全に逃げることが出来るって奴だな!!
俺がそう思いながら、充電がほとんど完了したこの乗り物に乗ったんだよ…
今のままでも出発できるらしいけど、やっぱり逃げるなら確実に逃げ切れる方法を取るのがセオリーだよなぁ…
えっと…このボタンをまわせばいいのかぁ…丁寧に説明まで書いてくれて…
良い奴だなぁ…
ピンポーン…
んっ?エレベーターが下りてきた…?あぁ…ケイだな?
戦いに勝ったから、俺にそのことを伝えに来たって所だろう…
よかった…これでしばらくは俺の安全も確保されたって奴だな…
どんなことが起こっても、俺はメリィたちから逃げないと…今の状況、確実に捕まったら酷い目に会うのは分かりきっているからな…?
人間、いくら綺麗事を言おうと…自分の身が危険にさらされた時…逃げるって方法をとるはずだからね…?
だって、人間だからさ…
「はぁっ…はぁっ…で、電力供給先の装置は…あれか!?」
……えぇっ!?
す、す、す、スカニじゃないかっ!!
どう、どうしてここにスカニがいる!?まてまて、落ち着け俺…落ち着いて考えよう…
落ち着け…落ち着け…そういえば、久しぶりにジパングの料理であったお茶漬けが食べたいな…って、そんな事を考えている場合じゃない!!
しかも…スカニはまっすぐ俺の乗っている乗り物のところに向かってくるじゃないか!!
これは…非常にまずいな…ヤバイ予感がする…
「この乗り物か…って、あれっ!?あんた…デメトリオじゃないか!!」
「は…ハロー?デメトリオ?ソレは誰の事ですカー?私はデメトリオじゃありませんよー?」
「……今はそんな馬鹿げた話に付き合っている暇は無い!!今すぐその乗り物を降りな!!」
「いやいや…それは出来ないって!!この乗り物を降りるという事は俺にメリィに捕まって酷い目に会えといっているようなものだぜ?」
「だったら、捕まれっ!!いいから、早く降りるんだ!!あんたの事は今…どうでもいい!!」
「だったら、俺の事は無視してくれって!!俺の貴重な逃亡手段を奪わないでくれよ!!せっかく、あのコードから送られてくる電気で車を充電していたのに…」
俺がそういうと、スカニは何かに気がついたかのような表情をうかべ、容赦なく持っていたペンチでそのコードを切断したんだよ!!
な、何を考えているんだ!?言わなければよかった…充電の供給が止まったじゃないか…
べ、別にこれを使って逃げる事はできるんですけどね?
「ふぅ…これで、あの装置は止まったかな…?」
よし…スカニは今、何か別のことで頭がいっぱいのようだから…今のうちに…
僕はそう思うと、即座にこの乗り物の電源を入れ、この場所から逃げたんだよ!
す、凄い速度だ…これだったら、僕は誰にも追いつかれる事は無いはずだな…
本当に良い乗り物じゃないか!!ケイ…凄いよお前の発明品はさ…
何かとりえはあるかも知れない、臆病者の俺とは大違いだ!!嫉妬しそうだぜ…
「ひゃっほーい!!今の俺は…物凄い速度で移動している…最高だぜ!!」
ガンッ…
「ぐはっ!?」
な、なんだ…!?いきなり通路が狭くなりやがった…おかげで頭を天井に打ち付けてしまった…
物凄い摩擦を感じたが…俺の髪の毛は大丈夫だろうか?
…うん、大丈夫そうだ
って、あら?あらぁっ!?
しまった…さっきの衝撃で乗り物が傾いてしまった…や、やばい…壁に激突しちまう!!
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
ドコォッ!!プシュー…
あいたたたた…こ、ここからは徒歩で逃げることになりそうだな…
でも、おかげで結構距離は稼げたし…このまま、メガロス城まで特攻だぜ!!
俺はそう思いなおすと、薄暗い通路を歩き始めたのだった…
〜〜〜メリィ視点に変更します!!〜〜〜
「リーダー!!メガロス帝国はあの城を残し、全ての拠点を陥落させることに成功しました!!みんな、夫を手に入れることが出来て大喜びです!!」
「そうなの…よかったわね…じゃあ、私に報告する作業が終わったのだから、夫と楽しんで来たら?まだ未婚のメンバーを私のところに集めておきなさい…もうすぐ、メガロス帝国を陥落させるわよ?サリィ…待っていなさいよ?」
私はそういうと、遠くの方に見えるメガロス城を改めてみたのよ…
あそこに…あそこにサリィがいるのね…
長い旅だったわ…さぁ…行きましょうか!!
「リーダー!!モンスターラグーンのメンバーではない女性を捕らえました!」
「何するのよ!!話なさいって…あれ?メリィ…?」
「……どうして海賊のあなたが陸で捕まるのかしらね?」
「そ、それは…あたしの家族が食事がないから、この国で起こっているいざこざに乗じて食糧をいただこうと…べ、別に、そんなに沢山盗るつもりは無いんだ…あたしたち海賊の仲間…家族が一ヶ月くらい満足できるくらいの食糧をもらうだけだからさ…」
「……まぁ、いいわ、でも…この国の食糧だって無限じゃないんだから、それは考えるのよ?私の国じゃ…ないけどね?」
……この事は、あとでメガロス帝国の王様に謝罪しておかないといけないわね…
さて、今度こそ…行くわよ!!
今までの戦いで負け…どうなったのか分からない兵士たちやミカルドのメンバーのことや、僕の発明品のこともだ…
デメトリオが逃げ始めた時…僕は彼には内緒だが、少しだけ逃げてしまおうかとも思っていた…
僕だって人間だ…命は助かったほうがいいって思うのは当然だからね?
だったら、僕はなぜ逃げるって事をしなかったのか…
その理由の一つに、僕の作り上げた技術が彼女達に渡るのが怖かった…というのがある。
僕の作った兵器や武器は、使い方を間違えれば大きな争いを生む物なんだ…
それを使って、もし悪い人物が悪用したら…そう考えると、僕は…
僕がメガロス帝国に来た理由…それは、主にそれが理由でもある
僕は…自分の作った兵器や武器が人を殺しあう争いに発展するのを見たくない
だからこそ…僕は依存するかのように非殺傷武器や兵器を作るんだ
そして…僕がここでデメトリオが言ったように逃げて…その技術が彼女達の手に渡り、悪用されたらどうする?
今回、初めて機工障壁を抜けた彼女達は、僕が思っていたほどには戦いを好んでしてはいないように見えた…
だが、人と同じように魔物娘である彼女達も、いつその技術を悪用しないとも限らない…
僕が戦って…敗れるまではこの研究成果を破棄しないつもりだけど…もし、彼女達が争いを好むと戦いで判断したら…僕は容赦なくフォードコーポレーションを爆破するつもりでいるんだ
僕は…絶対に人を殺す武器を使わせたくないからね?
昔、この僕の本音を当時…開発担当だった友達に打ち明けたことがあった…
その時は、その友達に甘いって言われたよ…
『俺達武器開発に携わっているメンバーは、単純に言えば人を殺して儲けているんだぜ?大勢人を殺す武器を作れば、それだけ給料が増えるんじゃないか』
ってね?
だけど…僕は、人の命を奪ってまで…本当にお金が欲しいのかって自分で思った時期があったんだ…
そして、今は自分のその思いにしたがって生きているつもりだ
僕は人を殺す武器を作るんじゃない…一時的に争いを止める武器を作るんだ
決して人を殺すことなく…相手を無力化できる武器を作るんだ!
だから…僕はここから逃げる訳にはいかないんだ!!
さて…僕もそろそろ出るとしようか…?
彼女達がこのフォードコーポレーションに突っ込んでくるのも残り2分…それなら、時間的には十分だし…初めての出撃だけどやるしかない!!
デモ飛行は…無しだ!!【セレナーデ】で出る!!
「っと、その前に…電力の配分は今のまま【フォルクランデシステム】を起動するかな…」
フォルクランデシステム…別名を魔法遮断機…これを発動しておいて…僕のフォードコーポレーションの周り2kmに魔法を確実に遮断できる電磁波を発生させておくんだ…
この電磁波は、確実に魔法を発生させる原理となるものを遮断する…
これを発動しておいて、彼女達が使うことが出来る魔法を完全に無力化しておかないと危険だからね…
魔法攻撃は僕のセレナーデの通常モード時に、ショートを起こす可能性がある原因となりえるから、絶対に使わせるわけにはいかない…
まぁ、これは戦場に保険をかけたようなものだと思ってほしい
さて…これでいいか…
今度こそ…セレナーデで出る!!
僕がそう思っていると、上の階に何かが激突する音が聞こえてきたんだよ…
うーん…フォルクランデシステムの発動にちょっと時間がかかりすぎたかな…
急がないと…この地下格納庫から地上に直接出る事はできないからなぁ…
フォードコーポレーションからちょっとだけ離れたところに出るからさ
まぁ、すぐに戻る事はできるんだけど…
僕はそう思いながら、セレナーデの操縦桿を握ったんだ…
さすがは僕専用に作った起動兵器…握り具合も完璧だね…
さて…武装は多数…いける!!
カッ…ヒュッ…
ガァンッ!!
「無事に外に出ることが出来たからよかったけど、問題は僕の操縦技術がどのくらい彼女達と張り合うことが出来るか…コレだね…さて、フォードコーポレーションに行くまでにいる彼女達を…眠らせつつ感覚を掴むとしようかな?」
僕はそう呟くと、セレナーデの後ろに搭載してあったバズーカを両手に持つと、一気に操縦桿を前に倒したんだ…
さて…セレナーデの速度と性能はどのくらいまでデータ上の性能にすることが出来たのかな?
そう思いながら速度メーターを見ると…今は時速200kmか…
この3倍の速度は出すことが出来るけど…どうかな?
計算上では、それ以上の速度を出した場合、機工障壁の簡易版のような装甲でも空中で分解してしまう可能性があるからね…
まぁ、この世界中でこのセレナーデの装甲にかなうのは・・・機工障壁を砕いた人物くらいかな?
さて…彼女達と交戦開始だ!!僕は…彼女達を眠らせる!!
「ねぇ…?あの白色の浮いているものって何かしら?」
「えっ…?何処?」
「あれ?さっき確かに…」
キィーンッ…
「さて…覚悟して貰いますよ!!僕の発明品であるこのバズーカの威力を確かめさせて貰います!!」
セレナーデ専用バズーカ…このバズーカは物凄い広範囲に広がる催眠ガスを地面に打ち付けることが出来る武器なんだ…
しかも、使い捨てだから使い切るまで打ち放題ってね?
大きさもあるから、使い捨てた後は自動で分解されるシステムだし…
とにかく、まずはこのバズーカを使わせてもらう!!
ドドドドドドドドォ…
キィーンッ…ドドォッ…
ふぅっ…10秒か…悪くない!
じゃあ、そろそろフォードコーポレーションに移動を…
「けほっ…けほっ…な、何するのよ!!」
「おや…?あれをかわすなんて、凄いじゃないですか…ですが…」
キィンッ…
「えっ……?」
「それでも、僕の兵器にはかなわない…ってね?インフェルノを大量につなぎ合わせたこの爆弾…即発性ですが…これを爆発させますから、ゆっくりここで仲間と一緒に眠ってください…ちなみに…」
ドゴォーーーーーーンッ!!
「僕のセレナーデは爆発をさせると同時に離れた場所に移動できますけどね?」
僕は遠くの方でインフェルノマインが爆発した時に発生する催眠ガスの煙を遠くで眺めるとそういいながら、フォードコーポレーションに急いだのだった…
まぁ…582人の魔物娘を合計で20秒で眠らせることが出来たんだから、中々だと思いますよ?
僕がその後すぐ、フォードコーポレーションに向かうと…やっぱり、カキサトレインは僕のフォードコーポレーションに突っ込んだようだね…
グランマーグが速度調整を行っていたから、グランマーグが倒れた時に僕はこうなる事は予測出来ていたんだよね…
一つ、グランマーグが弾薬を持って来ることが出来なかったことによって、僕のセレナーデの火力が10分の1カットされた…この事実は正直つらいけど…
「それにしても…数が少ないですね?精鋭部隊何でしょうか?っと、早速仕掛けます!!」
僕は一人でそういいながら、自分のバズーカの残り弾薬数をモニターで確かめたんだけど…
やっぱり、初めに出撃したこともあって、あまりバズーカを搭載していなかったから、それが響いたかな…
でもまぁ…それでもセレナーデには多くの武装が搭載してある…
僕の発明がどこまで通用するのかは微妙なところだけどね?
キィーンッ…
「あいたたたた…こんなところに建物があるなんて聞いていません…」
「でもー…おもしろかったよねーー?あははっ!!」
「きーちゃんはちょっと、危機感が足りませんよぉ…」
「建物を少し壊された僕としては、面白くないんですけどね?」
「だ、誰なの!?それに…どこですか!?」
「あははーっ!!凄い風だねーー!!」
「きーちゃん!!そんなにのんきに言っている場合では…」
「僕は君達の真上だ…そして、君達にはここで…眠ってもらう!!君達の活躍は見させてもらった…だから、ここで眠って疲れを癒して欲しい…」
ヒュンッ…ヒュンッ…ガシッ…!!
「勝利は…常に僕と共にある…!」
ドドドドドドォッ!!
正直、僕は幼女二人に武装を使いすぎているように他の人から見たら見えるかもしれない…
だけど、僕はどんな相手も見た目で判断する事はしない…
いや、一歩間違えれば、幼女は幼女で危険な存在ともなりえる…
だから、僕は彼女達を眠らせるのにも最大限の力を使うよ?
…おかげで、僕はバズーカという武装を使い切ったからね…
まぁ、彼女達は眠ったと計算して…この考えが外れた場合はフェイズ2に移項だな…
カキサトレインに乗っていた人物は彼女達二人じゃないはずだ…
とにかく、今はフォードコーポレーションの近くにいる彼女達を眠らせることが先だね…
っと、そう思っていると、少々大破したカキサトレインの中からグランマーグを倒した魔女の女性が降りてきたんだ…
……まずは、空中に移動して様子を見ようか
キィーンッ…
「メアリー?きーちゃん?どうしたの…って、このガスは…!?目的地に着いたと思った瞬間にこのお出迎え…メガロス帝国の方も必死ね…さすがは、私の夫がいた国…といっておきましょう…はぁぁっ…グランマーグのあのぷよぷよのおなかを撫でに戻りたいけど…まずは、メアリーちゃんときーちゃんを眠りから覚まさせてあげないとね…」
なるほど…彼女はせっかく眠らせた魔物娘達を起こすことが出来る魔法を覚えているんですね…?
どうりで、ここまで攻め込まれるわけだ…
ですが…フォルクランドシステムの効果で魔法は使えないんです…
さて、そろそろ眠らせてあげましょうか…?
武装は…【スリーピングウォー】で良いでしょうし…
そうと決まれば、早速起動させていただきますよ?
スリーピングウォー…別名を催眠ガス高圧縮具現式ナイフ…
このナイフは僕が作った発明品の中では、まだ試作段階なのですが…
これは、メガロス鉱石の中では催眠ガス濃度が低い鉱石部分を使用し、それをこの持ち手の部分から発する電気でつなぎとめてナイフ状の形を保っているのですが、このナイフは対象を切ることができませんから…使い方が難しいのですよね…
でも、このナイフの煙にさらに高電圧を流せば…煙の中に含まれているメガロス粒子が少々結合し、ある程度の硬度を生むんです!
そして、当たった時に対象者にある程度の打撃ダメージを与えつつ、催眠ガスは辺りに拡散する…
そして、僕がここで操作してスリーピングウォーを起動するたび、そのガスが刀身となって、いつまでも尽きることなく敵にまとわりつくんです!!
無限の攻撃手段ですから、敵に回避することが出来る可能性は皆無…
そして、魔法が使えない状況である今、僕が圧倒的に有利な状況下にいるということに、代わりは無いはずです!!
「起動終了…眠らせます!!」
「あれ…?魔法が…使えない?そんな事が…」
「起こり得るんですよ…僕の発明品の効果でね?そして、安らかに眠ってください…」
「えっ…?な…に?これ…?ねむい…くぅーっ…」
ふぅっ…いくら速度が出るといっても、少々さっきの速度の移動は危ないかと思ってしまいました…
ですが、おかげで彼女のいる102m下まで2秒で行くことが出来ましたけど…
さて、これで…終わりですか?案外、あっけないものだな…
「あわわわわわっ!!てぇーいっ!!」
ガァンッ!!
くっ!?後ろから…僕の機体を少々ひるませるほどの衝撃を感知…!?
なるほど…まだまだ僕の戦いは終わりではないって事ですか?
それにしても…レーダーによるこの熱源反応…僕のセレナーデと同じ大きさの魔物娘がいるのか…?
そんな馬鹿なことが…本当にありえるのか?その場合、僕はここに来るまで…それを感知できなかったことになる…
とにかく、後ろを取っているこの謎の敵を離れさせなくては…なっと!!
「きゃぁっ!?あわわわ…」
「落ち着きなミリエラ!!あたいがついているんだから!!それに、あたいがカスタムしたその超幼女機工バフォメットリオンZ(リターン)が負けるわけが無いだろ?あたいを信じな!」
……なっ!?僕のセレナーデと…同じようなつくりの機体を…魔物娘達も作成していたっていうのか!?
そんな事は報告にはなかったけど…そうだとしたら…メガロス帝国の兵士は勝てないはずだよ…
しかも、さっきまでここに無かったことを考えると、あの機体は無人でここまで飛んでくることが出来たって事にもなるから、無人で動くことが出来たって事になるよね…
中々、難しい技術だよ?無人機は…
だけど、無人機にはある弱点がある…その弱点を補うために、無人機にあえて魔物娘を乗せることが出来る機能もつけてあるのか…
オートとマニュアルを自由に切り替えることが出来る…彼女達の中にも優秀な発明家はいるようだ…
でも、僕の技術が負けたって訳じゃない…だろ?
「さぁ…僕の技術と魔物娘である彼女の乗っている機体の技術と…どちらが上か…勝負と行きましょうか!」
さて…相手が僕と同じような機体に乗っているということを仮定すると、スリーピングウォーが通用しない…かぁ…
相手が機械だって事も考えると、コックピットは破壊しないまでも…動力源をシャットダウンさせる必要がありそうだな…
ウォルトクローを起動して…機体を部分的に破壊するとしよう!!
ウォルトクロー…僕のセレナーデに搭載されている唯一の近距離電磁クロー…
これを起動すると、金属をも高電圧で貫くことが出来るようになるんだよ!!
セレナーデは遠距離と近距離を両方こなすことが出来るように僕がカスタムして作り上げた機体だ…
そして、セレナーデの両腕がウォルトクローを起動すると物凄い凶器になるんだよ…
でも、僕はこの武器で彼女の機体を行動不能にするためだけに使うけどね?
そして…セレナーデの手のひらからはエネルギー弾を撃つことが出来るし…
とにかく…戦ってみないとな…
キィーンッ…
「あわわわっ!!は、早いっ!?」
「落ち着きなっ!右から二つ目の黄色のボタンと左のボタンを押すんだ!レーダーに相手の熱源が表示されるから…それを利用して戦いな!」
「えぇっ…!?う、うえっ!?」
「勘が良いな…だが…」
ギキィッ…ドゴォッ!!ジジジッ…
「僕のウォルトクローの電圧の前では…その装甲はまるで紙のように脆いね」
「きゃっ!?あうぅっ…」
「大丈夫かいミリエラ?まだ外部装甲…服が切られただけだけど…あの機械も、あの機械に乗っている敵も強いようだね…」
「どうするんですかぁっ!?このままじゃ…」
「落ち着きなっ!!天才であるスカニ様がついているんだ…右のレバーを降ろして左の武器を使いな!!」
「やってみる!!」
さて…この機体…魔物のバフォメット…って種族にそっくりの見た目をしているが、この装甲は二重装甲になっているようだね…
無人機でも行動可能で…二重装甲…本当にいい技術だ…
だが、その分速度が遅いね…それでは…
僕がそう思っていると、いきなり僕のセレナーデのバランスが崩されたんだよ!
足払いか…中々、攻撃を受けている状況でその行動をとる事は難しいと思うよ?でも…良い判断だ…
だが、僕のセレナーデはバランサー制御計算プログラムが内蔵されてある…
だから、隙を作る事が出来たとは思わないことだ…
僕がそう思い、空中でバランスを取り直して彼女の機体の方を見ると…
なんだ?あの武器は…?
そう…僕が彼女の方に向き直ると、彼女の機体はまるで鎌のような形状の武器を持っていたんだよ!!
しかも…切っ先がレーザー技術を応用しているのか、紫色の光を発している…
あの武器は一体……?
「これは…?一体何ですか?鎌…に見えますけど…」
「それはあたいが装備させた新武装…バフォサイスだ!!近距離攻撃はもちろんだけど、一度振るとバフォサイスから真空波状の風が放たれ…遠くにも攻撃できる優れものの武器さ!!」
「……よぉしっ!!やってみます!!」
ブォンッ…ブォンッ…
なんだっ!?これは…真空波か!?
くっ…僕のセレナーデに直撃した…か…?こんなダメージを受けるなんて事は設計段階では計算していなかったからな…
どれほどのダメージを受けた…?
僕がそう思いながら慌ててモニターを見ると…0.3%のダメージだと!?
くっ…なんて攻撃力だ…しかも、モニター表記には切断系ダメージを受けたと表示されている…か…
一見すれば、たかが0.3%のダメージだろうと思うかも知れないが…小さな攻撃だって何度も受ければ立派な攻撃だ…
厄介ですね…ですが、攻撃の速度がセレナーデの移動スラスター出力の20%とほぼ同じなので、25%の速度にスラスター制御を行えば…
攻撃を目で判断した後、回避することが出来る!!
「当たったっ!?やったぁっ!!」
「ふふっ…さすがにあたいの発明品でもあるバフォサイスを受けて…無事なはずは…」
「中々の攻撃ですが…まだまだですね?」
バシュッ…バシュッ…
「きゃっ!?ま、まだ動くんですか!?それに…これは遠距離攻撃ですよぉっ!」
「なっ…!?あ、あたいの発明品の攻撃力を耐えた…!?鋼鉄を6枚重ねても切断することが出来る攻撃力なのに…?くぅっ…認めたくないけど、凄い技術だね…あたい、あんたに惚れたぜ!!」
「惚れてる場合じゃないですよぉっ!!きゃっ!?」
「その射撃は…おとりですよ?その射撃を行うと同時に、僕のセレナーデは射撃の速度をはるかに越えた速度で移動できますからね…この距離なら、確実に装甲を破れる!!行きますよ!!」
僕はそう言いながら、彼女の機体のすぐ後ろに移動したんですよ…
さすがに、後ろにまで装甲をつけているはずはありませんし…ね?
後ろからスラスターを攻撃すれば、全体の電力配分に支障が起こる…
強制シャットダウンを誘発できるんですよ!!
僕はその予想を早速行動に移したんだけど…
「ミリアナ!!スラスターを最高出力!!そして、2秒後に右スラスターのみを放射してあの機体に攻撃を仕掛けるんだ!!」
なっ…!?スラスターの急激なエネルギー放出を攻撃に転換した!?
そして…スラスターを一定量放出することによって軌道を修正だと…!?
くっ…攻撃がくるようだね…だけどっ!!
ジジジジッ…ガキィンッ!!
「バフォサイスを止めた!?ど、どうしよう…」
「くっ…ウォルトクローの電圧でもあの鎌を切断できない…?それに…スラスター装置の作成は雑だが…僕が知らないほどの火力だ…新しい技術なのか…?」
くっ…仕方がない!!ここは、秘密の手段としてこれを使おうかな…?
正直、このシステムは最後のほうまで隠しておきたかったんだけど…それでも、あの機体はセレナーデの全ての性能を発揮して戦ってもよさそうだ!!
僕は即座にそう思うと、片手で鎌を受け止め、彼女の乗っている機体の方に左手を向けたんだ
実は…セレナーデの手は左手のみ、飛ぶんだよ!!
いわゆる…有線式って奴だね?
さぁ…覚悟するんだな!!
バシュッ…
「えっ!?左手が飛んだ!?きゃっ!?」
「まさかっ!?有線式だって!?そのシステムは理論上は出来るけど…実際に導入できたって情報は聞いたことが…あたいの知らない技術…やっぱり、あの機体に乗っている奴は凄い!!あたいの夫にふさわしい知能と強さだよ!!」
「だから、そんな事を言っている場合じゃないんですよぉっ!!あぁっ!!機体のバフォメットリオンZ(リターン)の服がギリギリまで破れて…」
「……あたいも、技術を出し惜しみしてはいけないようだね…右の帽子のマークを押しな!!あたいの最高技術…マジックテトラポットが搭載されてあるから!!」
「これですか…?うわぁっ!?よ、妖精…?それにしては大きな…」
「それがあたいの最高傑作だ…あたいの魔法銃の技術をさらに応用して作り出した無人型支援武器…そして、その妖精はミリエラ!!あんたの脳波を読み取って攻撃をしかけるんだ!!あんたはただ…攻撃をどうやってして欲しいか思うだけで良い!!」
「や、やってみます!!」
「(これが…あたいの最高の開発武器だ…これを突破できたなら、あたいは素直にあんたを認めてやっても良いよ…?あたいの結婚相手にふさわしいか…見極めさせて貰うからね!!)」
…なんですか?これは…?
見たところ、無人機のようだけど…この無駄のない動きは一体…?
それに…僕のセレナーデと同じ速度…いや、それ以上だと!?
僕の動きは確実に鎌のおかげで封じられている…その状態で攻撃する手段が彼女にもあったというのか!?
くっ…でも、僕はまだ負けたわけじゃない…
今は初期段階だったから、武装は少ないため、今のような状況になっているが…それでも、僕はこの状況を打破してみせる!!
バババッ…
「くっ…!?動きを確実に封じた状態で攻撃…やりますね…ですが!!」
僕はそう言いながら、左手を元に戻し…右腕をひいて彼女の機体の鎌の攻撃をまともに受けると、即座にスリーピングウォーの持ち手を無人機に向かって投げたんですよ!!
当たればいいんですけど…当たらないのは分かっていますから…
ここはこの手です!!
僕は投げたスリーピングウォーが回避されると同時にそのスリーピングウォーに向かって射撃攻撃をおこなったんですよ…
そして、射撃攻撃を受けたことにより、スリーピングウォーの軌道は変更される…そして、無人機に刺さる!!
まずは一機…
残りは4機だ!!
ヒュンッ…ギィィィィンッ!!
なっ!?これは…ドリルだと!?くっ…セレナーデの装甲に2%のダメージ…
だが、近づいてきてくれたのは好都合だ!!
僕はそう思いながら、背中に攻撃を仕掛けてきた無人機を右手で貫く…
この調子で行くことが出来れば…まだいけそうだね…
「まだだっ!!僕の技術は…まだ屈していない!!」
ドゴォンッ!!
僕はそう言いながら左手を飛ばし、もう一機無人機を貫いたんだ…
残りは2機…倒す!!
僕がそう思い、その2機がどこにいるのかをレーダーで探していると…
な、なんだ…?レーダーが…壊れた…?
まさか…あのドリル攻撃で電気の供給が少し弱くなったか!?
くっ…こんなところで…仕方がない、直接肉眼で探すしか…
僕がそう思った瞬間、僕の両腕が何かにつかまれたんだよ!!
なっ…!?む、無人機!?くっ…な、何をするつもりなんだ!?
僕がそう思っていると、彼女の機体が目の前に飛んできたんだよ!!
まさか…これが目的で!?
くっ…でも、僕の装甲技術は最高クラスのはずだ!!
来るなら来い!!
「よし…ミリエラ!!マモテックレーザーだ!!あたいの強化したレーザーで…攻撃を仕掛ける以外にあの機体を破壊する事はできなさそうだ…」
「わ、わかった!!マモテック…レーザーーーーっ!!」
な、なんだ!?あの攻撃は…!?
7色の光線だとぉっ!?くっ…耐えられるか!?
だが…僕の読みはこの瞬間、綺麗に外れたんだ…
バァァァァァーーー…
「うぐっ…!?な、なんだ!?この反動は…!?」
僕は慌ててモニターをチェックしてみて…そして驚愕したんだ…
ダメージが…95%だとぉっ!?
馬鹿な…!?こんな…馬鹿なことが…!?
僕の装甲技術が…敗れた…!?
しかも…各部位に信号も送る事ができないから…攻撃を仕掛けることはもちろん、動くことすらできない…
終わったな…僕の発明者としての人生も…何もかも…
そう思いながら、かろうじて無事な状態のメインカメラを見ると…彼女の機体も物凄いダメージを受けているように見えたんだ…
あの技は…自分にもダメージがある諸刃の技だったわけか…
いまさら…知っても遅いけど…ね?
「その機体に乗っている奴!!聞こえるか?」
ん…?この声は…コックピットの真上からか…?
戦いに負けた僕に…何か言うつもりか?
…そうだ、この会話を通して、僕の研究成果をどう使うのか…その心理を聞いてみようか…?
もし、悪用するようなら…フォードコーポレーションと僕の命を引き換えにして、それを阻止するつもりだ…
「……なんだい?」
「ふぅっ…よかった…あまりに威力を高めに作ってしまったから心配だったんだ…無事でよかったよ」
「敵である僕にその発言…甘いんじゃないかい?」
「いやいや…あれほどの技術を持っている男だからさ…敵であると同時に尊敬もしているんだ…あたいはスカニ…スカニ・ニークって言うんだ…あんたは?」
尊敬…かぁ…
それを言うなら、僕だってあれほどの機体を作ることが出来た彼女たちを尊敬するよ?でも…スカニって言った彼女はあまり悪い人じゃ…無さそうなんだよね…
いや…最後まで油断するわけにはいかないけどさ?
「僕はケイ…ケイ=ラングスフォードだ…尊敬するって言ってくれてうれしいけど…それだったら、あの機体を作った君達の仲間の方が…」
「あの機体を作ったのはあたいさ!!褒めてくれてありがとう…なんだか照れるね…」
……そうか…彼女だったのか…
「凄いじゃないか…僕のまだ知らないシステムが採用されていたし…完璧な技術だったよ?」
「あんたこそ…あの有線式システムを実用化した人物は…あんたが初めてだよ!ゾーネだってまだやったことがないって言っていたのに!!それで…あんたに相談があるんだ…」
敵である僕に相談事…?そうか…ここで僕の技術の話になるんだな…?
彼女だったら僕の技術を有意義に活用してくれるかもしれない…だが、彼女は戦闘を好んで行う人物である可能性がある…
それを見極めないと…それが、僕の今するべきことだ…
「あの…そのだな…あ、あたいの伴侶になってくれ!!」
………
な、なんて言った…!?
あたいの伴侶になってくれ…?それは、僕に言ったのか!?
どうしてだ…?彼女からしたら、僕よりも僕が残した設計図の方が重要じゃないのか!?僕の存在は彼女にとって…発明の妨げになるはずだ!!
なのに…伴侶になれ…だって?
そんな事…言われたことが無かった…
僕の人生27年間…僕は常に発明一筋に生きてきたつもりだが、そんな事を言われる日が来るなんて思ってもいなかったんだ…
正直に言おう…僕は今…思いもよらない告白に戸惑っている…
目の前にいるゴブリンの彼女は自分の赤い髪を触りながら、顔を少し赤らめ、モジモジしているが…
正直に言えば…可愛いしぐさだと思う…
だが…まさか、敵だった彼女に告白されるなんて事が…どうして彼女は僕を伴侶にしたいと思ったんだ!?
僕はリアリストだ…何事にも現実性を求めないと気がすまない性質だから…それをまずは聞いてみないと…
「どうして…僕を伴侶にしようなんて思ったんだ?」
「相手を好きになる…そのことに理由が必要なのかい?あたいは…あんたがすきなんだよ!!あんたのその頭の良さも、操縦技術も…ガラス越しに見えているその顔も…全部が好きなんだ!!だから…もう一度言わせて欲しい!!あたいの伴侶に…あたいと結婚して欲しい!!」
……ここまで、まっすぐに自分の思いを伝えられるなんて…
僕にはとても出来そうに無い行為だ…そして、羨ましい…
彼女の意志は本物だと僕は思う…
どうしてだろうか…?うれしさで心境は複雑な気分だし…何より涙が止まらない…
これほどまで僕のことを思ってくれた人物は…メガロス帝国関係以外ではいなかった…だからうれしいのかな…?
決めた……彼女が本当に後悔しないなら…僕は…
「……僕は…」
ピーッ…ピーッ…
…なんだ…!?このサイレン音は…セレナーデの機爆音!?
一定のダメージを越えた状態で放置していたからか…!?
くっ…このままではセレナーデは爆発する…!?
僕はどうなってもいいが…僕と結婚してくれるといった彼女を爆発に巻き込むわけにはいけない!!
僕はそう判断すると、緊急コックピット開閉ボタンを押して、彼女を移動させると…彼女を掴んだんだ…
軽いんだな…女性って…さぁっ…行くぞ!!
「てりゃあぁぁぁぁっ!!」
「えっ…!?な、何を…!?うわあぁぁっ!!」
そう…僕はスカニを遠くで眠っているあの幼女達の近くまで放り投げたんだ…
あそこなら爆風は届かないだろうし…僕の力でも投げることが出来る距離だろう…
セレナーデの爆風範囲を狭くしておいてよかったな…
スカニ…僕の発明結果…君に託した!!
僕のことを好きだといってくれて…ありがとう!!
さよならは言わない…だから、せめて僕の分も生きてくれ…
そして…メガロス帝国の兵士達のことをスカニのリーダーに相談して…酷い目にあわせないであげて欲しい…
あえて…よかった!!
ドゴォォォォォォッ!!
そして…僕は自分の体が爆風によって吹き飛ばされ…地面にたたきつけられるのを感じた…
あまり…痛くないな…でも…怖いな…
は…ははっ…
「おい!!起きろ!!まだ返事を聞いていないんだぞ!?起きてくれよ!!あたいの伴侶になってくれるって…言ってくれよ!!あたいと一緒に人生を楽しもうよ!!子供とか作ってさ…なんとかいいなよ!!ねぇっ!!」
「僕の…研究…か…君に…託し…」
「なんだって?聞こえないよ!!しっかりしてくれよ…頼むよぉっ!!」
「スカニ…退いてくれるかしら?治癒魔法で助けられるかも知れない…」
「ほ、本当かいジュンコ!?」
「えぇ…でも、魔法が今…なぜか使えないのよ…だから、今は回復薬でかろうじて命を引き伸ばすしか出来ないわね…魔法が使えたら…大丈夫だとは思うけど…」
「……多分、ケイが作った発明品の一つだと思う…あたい、あの建物に行ってその発明品を止めてくるよ!!」
〜〜〜スカニの視点に移ります!!〜〜〜
ケイ…きっと、助けるからな!
あたいが始めて認めることが出来た異性なんだ…そして、あたいが惚れた男なんだ…絶対…絶対助けるからな!!
あたいはそう思いながら、一人でケイのいたと思われる建物の中を走っていた…
すると、エレベーターのすぐ近くにそれと思わしき装置があったんだ…
これは…【フォルクランデシステム】?
…あたいの勘が正しければ、これが魔力遮断機だと思うんだけど…
そう思い、あたいは電源をOFFにしたんだけど…ある場所に対する電力の供給が停止しないんだ!!
おそらく、この電力の供給を全て止めることができれば、魔法が使えるようになると思うけど…
えっと…地下3階か…?もう、時間が無い!!
あたいは迷うことなくエレベーターのボタンを押し…地下三階に移動したのだった…
電力を供給しているものを止めないと…
〜〜〜デメトリオの視点に移ります!!〜〜〜
さぁて…地上の戦闘はどうなってるのかな…?
ケイ、勝ってるといいけど…
それにしても、いちいち脱出用の乗り物に電力が供給されるのに時間がかかるなんて…ケイもうっかりしてるよなぁ…
まぁ、その充電もそろそろ終わりだし…俺はこの場所から安全に逃げることが出来るって奴だな!!
俺がそう思いながら、充電がほとんど完了したこの乗り物に乗ったんだよ…
今のままでも出発できるらしいけど、やっぱり逃げるなら確実に逃げ切れる方法を取るのがセオリーだよなぁ…
えっと…このボタンをまわせばいいのかぁ…丁寧に説明まで書いてくれて…
良い奴だなぁ…
ピンポーン…
んっ?エレベーターが下りてきた…?あぁ…ケイだな?
戦いに勝ったから、俺にそのことを伝えに来たって所だろう…
よかった…これでしばらくは俺の安全も確保されたって奴だな…
どんなことが起こっても、俺はメリィたちから逃げないと…今の状況、確実に捕まったら酷い目に会うのは分かりきっているからな…?
人間、いくら綺麗事を言おうと…自分の身が危険にさらされた時…逃げるって方法をとるはずだからね…?
だって、人間だからさ…
「はぁっ…はぁっ…で、電力供給先の装置は…あれか!?」
……えぇっ!?
す、す、す、スカニじゃないかっ!!
どう、どうしてここにスカニがいる!?まてまて、落ち着け俺…落ち着いて考えよう…
落ち着け…落ち着け…そういえば、久しぶりにジパングの料理であったお茶漬けが食べたいな…って、そんな事を考えている場合じゃない!!
しかも…スカニはまっすぐ俺の乗っている乗り物のところに向かってくるじゃないか!!
これは…非常にまずいな…ヤバイ予感がする…
「この乗り物か…って、あれっ!?あんた…デメトリオじゃないか!!」
「は…ハロー?デメトリオ?ソレは誰の事ですカー?私はデメトリオじゃありませんよー?」
「……今はそんな馬鹿げた話に付き合っている暇は無い!!今すぐその乗り物を降りな!!」
「いやいや…それは出来ないって!!この乗り物を降りるという事は俺にメリィに捕まって酷い目に会えといっているようなものだぜ?」
「だったら、捕まれっ!!いいから、早く降りるんだ!!あんたの事は今…どうでもいい!!」
「だったら、俺の事は無視してくれって!!俺の貴重な逃亡手段を奪わないでくれよ!!せっかく、あのコードから送られてくる電気で車を充電していたのに…」
俺がそういうと、スカニは何かに気がついたかのような表情をうかべ、容赦なく持っていたペンチでそのコードを切断したんだよ!!
な、何を考えているんだ!?言わなければよかった…充電の供給が止まったじゃないか…
べ、別にこれを使って逃げる事はできるんですけどね?
「ふぅ…これで、あの装置は止まったかな…?」
よし…スカニは今、何か別のことで頭がいっぱいのようだから…今のうちに…
僕はそう思うと、即座にこの乗り物の電源を入れ、この場所から逃げたんだよ!
す、凄い速度だ…これだったら、僕は誰にも追いつかれる事は無いはずだな…
本当に良い乗り物じゃないか!!ケイ…凄いよお前の発明品はさ…
何かとりえはあるかも知れない、臆病者の俺とは大違いだ!!嫉妬しそうだぜ…
「ひゃっほーい!!今の俺は…物凄い速度で移動している…最高だぜ!!」
ガンッ…
「ぐはっ!?」
な、なんだ…!?いきなり通路が狭くなりやがった…おかげで頭を天井に打ち付けてしまった…
物凄い摩擦を感じたが…俺の髪の毛は大丈夫だろうか?
…うん、大丈夫そうだ
って、あら?あらぁっ!?
しまった…さっきの衝撃で乗り物が傾いてしまった…や、やばい…壁に激突しちまう!!
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
ドコォッ!!プシュー…
あいたたたた…こ、ここからは徒歩で逃げることになりそうだな…
でも、おかげで結構距離は稼げたし…このまま、メガロス城まで特攻だぜ!!
俺はそう思いなおすと、薄暗い通路を歩き始めたのだった…
〜〜〜メリィ視点に変更します!!〜〜〜
「リーダー!!メガロス帝国はあの城を残し、全ての拠点を陥落させることに成功しました!!みんな、夫を手に入れることが出来て大喜びです!!」
「そうなの…よかったわね…じゃあ、私に報告する作業が終わったのだから、夫と楽しんで来たら?まだ未婚のメンバーを私のところに集めておきなさい…もうすぐ、メガロス帝国を陥落させるわよ?サリィ…待っていなさいよ?」
私はそういうと、遠くの方に見えるメガロス城を改めてみたのよ…
あそこに…あそこにサリィがいるのね…
長い旅だったわ…さぁ…行きましょうか!!
「リーダー!!モンスターラグーンのメンバーではない女性を捕らえました!」
「何するのよ!!話なさいって…あれ?メリィ…?」
「……どうして海賊のあなたが陸で捕まるのかしらね?」
「そ、それは…あたしの家族が食事がないから、この国で起こっているいざこざに乗じて食糧をいただこうと…べ、別に、そんなに沢山盗るつもりは無いんだ…あたしたち海賊の仲間…家族が一ヶ月くらい満足できるくらいの食糧をもらうだけだからさ…」
「……まぁ、いいわ、でも…この国の食糧だって無限じゃないんだから、それは考えるのよ?私の国じゃ…ないけどね?」
……この事は、あとでメガロス帝国の王様に謝罪しておかないといけないわね…
さて、今度こそ…行くわよ!!
12/10/28 21:04更新 / デメトリオン
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