第五章 エリエールの日記 散策編その二 (微ほのぼの、シリアス、バトル、微グロ、街紹介)
あたしは今南居住区の南関所に向かって歩いている。
目的はギルドの依頼で散策をしているんですけど、正直に言ってこの地区って散策ポイント少ないんですよね〜。
それに一人で散策してもつまらないし、というわけでグランさんの所に行ってこの地区を案内してもらおうかな〜と思ってるです♪
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「着いた〜っと♪グランさんいるかな?
お〜いグランさーん!!」
「うん?おお、お前か。どうしたんだこんなところで?
たしか冒険者ギルドにいったんじゃなかったかな?」
「ええ、ギルドで冒険者登録を済ませてきたんですよ、そして今はギルドの依頼で街の散策をしているんです」
「ほぉーさっそく依頼を受けたのか。もうすぐあたりが暗くなるというのに随分働き者だな」
「まあお金があまり無いですからね、依頼料を早く貰いたいと思ってるんじゃないですかね」
などと話している途中でコリンは本来の目的を思い出した。
「それよりもグランさんにこれをお返ししますね」
そう言って取り出したのは街に入るときに渡された「客」と書かれたコインだった。
「もういらないのか?」
「ええ、一応身分を証明できるものが手に入りましたから依頼のついでに返してきてくれってフレイヤさんが」
「わかった。ならば受け取っておこう」
「はい、確かに返しましたよ。それとお願いがあるんですけど」
「なんだ?」
「もし手が空いているようならこの地区の案内をしてほしいんですけどいいですか?」
「ああいいぞ、もうすぐ夜勤の者と交代の時間だからな」
「ありがとうございます!」
コリンはグランの仕事が終わるまで待つことにした。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
時刻は6時、ようやく交代の時間がきたようだ。
「待たせたな、では案内をするからついて来い」
「よろしくお願いします」
「そうだなまずは・・・学校に行くか」
「学校ですか?」
「そうだ」
「あの学校って、何ですか?」
「・・・学校を知らんとは、まあいい歩きながら説明してやろう」
グランは学校について、説明を始めた。
学校というのは字の読み書きや計算などといった勉強をする場所であると。
一般常識はもちろん歴史から戦闘技術までいろんなものを学ぶことができる。
基本的に月謝料を払ってくれれば何歳でもどんな種族でも入学ができる。
入学をしたらまずは希望学科を決めること、学科は多種多様にあり例えば字の読み書きや計算ができない場合は初等学科とか、商売人になりたいけどやり方がわからないという場合は商い学科とか、エッチなことを知りたいという方にはエロ教養学科といったものもある。ちなみにエロ教養は保護者が認めれば子供でも入れる。
「・・・といった感じかな」
「へぇー学校ってなんか面白そうなところですね」
「面白いかどうかはわからんが街には必要な場所だな、と話しているうちにほら見えてきたぞ」
そこに見えたのはとても大きい建物だった。
正直領主の城より大きいのではと思えるほどに大きかった。
「大きいですねー」
「まあな、最初は字の読み書きくらいしか教えていなかったんだが、次第に住民からあれもこれも教えてほしいってお願いがあったらしくてな学科が増えるたびに増築していったらこれほどの大きさになったらしい」
と話しながら学校を眺めていたら正面玄関付近を掃き掃除をしているおじいさんが見えた。
「グランさんあの人先生って人ですか?」
「うん?・・・ああ、あれはこの学校の校長先生だよ」
「校長先生?」
「ああ、この学校で一番偉い人さ」
「何で偉い人が掃除なんてしてるんですか?」
「さあてね、私にもわからんよ、それよりもせっかくだから話でもしてみるか?」
「そうですね、これからお世話になるかもしれないですし、挨拶でもしておきましょう」
そういって二人は校長のもとに向かった。
「アレク校長。お久しぶりです」
「おお、グランではないか何年振りかな?」
「私が卒業したのは1年前ですよ、まだボケるには早いんじゃないんですかね」
「なあに軽い冗談だよ、ファファファファ・・・それはさておきそちらの可愛いお嬢さんはどちらさまかね?」
「ああ、こちらはコリンといって、現在ギルドの依頼で街の散策をしているそうです」
「ほお、あのギルドについに冒険者がやってきたのか、ならばこれからはまた依頼を出せるわけだな」
「はい、初めましてあたしコリンといいます。まだ冒険者になり立てですが頑張りますので依頼があればぜひお願いします」
「うむうむ、なかなか礼儀正しい娘じゃないか、そうだな依頼を頼みたくなったらすぐにでも行こうじゃないか」
「ありがとうございます!!」
「それではアレク校長、私たちは散策をしなければならないのでこのへんで」
「うむ、頑張りなさい」
「はい!!」
あたしたちは学校をあとにした。
学校かなんだか楽しそうだったな、でもあたしたちは冒険者なんだから学校に言っている暇は無いわけだし、はあ〜ちょっと残念。
「さて次の目的地は診療所だ」
「診療所ということは要するに小さい病院ですよね?」
「そうだ。学校は知らないのになぜ診療所は知っているんだ?」
「そ、それは・・・」
「まあ言いたくないならいいよ」
そういってグランは深く聞くのはやめた。
その後はグランの仕事のことなどの話で盛り上がりつつ診療所に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「着いた。ここが南居住区の診療所だ」
「ここが・・・思ってたよりは小さいんですね」
さっきの学校のイメージが抜けてないからなのかな?
もっと大きい建物だと思ってたんだけどな。
「それはそうだろう、たった六人しか働いていないのに、そんなに大きくするわけにも行かないだろう」
グランと話をしていると玄関から女性が三人も出てきた。
「やあお三方、仕事はもうあがりかい」
「あら、グランさんじゃないですか」
「オーッス、グラン」
「どうも」
診療所から出てきたのはダークプリーストにダークエンジェルにダークエルフの三人組だった。
「もうお仕事は終わりなんですか、グランさん?」
「いやいや、その質問は私が先にしたんだが」
「うん!!今終わったとこだよ、今日も一日ごくろうさんってね」
「それであなたは?」
「私も先ほど終わったところだ。今はこの娘の手伝いをしているんだ」
「どうも初めまして、あたしコリンです」
「あらあら、これはご丁寧にどうも。私はダークプリーストのハーフニスです。以後お見知りおきを」
「あたしはダークエンジェルのミシェルっていうんだ。よろしくね」
「ダークエルフのレティシア・・・よろしく」
各自が自己紹介を終えたところでコリンは今の自分の状況を話した。
「そうなの、ギルドの依頼で散策しているのね」
「ふーん、あのギルド潰れてなかったんだね」
「奇跡」
言いたい放題である。
「そういうわけなのでもし依頼があればすぐにギルドにお願いします」
「わかりました。もし手助けが必要な場合はすぐに頼むことにしましょう」
「ありがとうございます!!」
「そういえば、のこりの男どもはどうしたんだ?」
「ああ、あの三人なら多分しばらくは動けないよ♪」
「・・・なるほどな」
グランがまたかといった顔をした。
「どうしたのグランさん、あきれた顔をして?」
「いやなんでもないよ、とりあえず彼らには同情するといっておこうかな」
いったい何のことを話しているのかあたしには理解できなかった。
「子供は理解しなくていいんだ。余計なことに首を突っ込むと後で後悔するぞ」
その言葉を聞き、なんとなくグランが言いたいことが理解できたのかそれ以上は考えまい頭をぶんぶん振った。
「さて、そろそろ次に行くか」
「はい」
「あらもう言ってしまうのですか、もう少し話がしたかったのですが残念です」
「怪我したらいつでもおいで、大型病院にも負けないくらいの医術で治してあげるからさ」
「医療費は、まけられないけど」
「はい、怪我をしたときはよろしくお願いします」
そういってあたしたちは次の目的地に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
さすがにあたりが暗くなってきたなー。
早く終わらせて帰ろう。
「次は地図を見てみると公園ですか?」
「そうだ。あと案内できる場所はそのくらいだろう」
「そうですよね住宅地は散策しても特に意味はなさそうですからね。この公園は何か面白そうな情報とかってありませんか?」
「そうだな、基本的な公園の情報ととっておきの裏情報の二つがあるがどっちから聞きたい?」
「基本的なほうからお願いします」
「ほう、好きなものは最後までとっておくタイプだな」
「な、なぜ、それを・・・」
「ふっ、冗談はさておきこの公園の情報は・・・」
グランが公園の説明をし始めた。
公園は基本的に子供たちの遊び場所として設計されているが、学校の運動場も兼ねている場所である。
この公園の利用者は学校と子供と主婦連合会の三組に絞られるらしい。
ちなみに主婦連合会とはその名のとおり人間と魔物の主婦のあつまりである。
あるときは旦那自慢、またあるときは情報交換会などといった雑談会議が行われる。
凄いときは南居住区の主婦が一同に集まるときもあるくらいなのだ。
その様子はまるでこれから緊急国際会議でも開くつもりなのかと思えるくらいだそうだ。
おそらくこの連合会が何かの事情で反旗を翻せばあっという間に国が傾いてしまうくらいの規模だというのだから怖い話だ。
「今話したのが基本的な情報だな」
「今ので基本的なんですか・・・」
「そうだ。ある意味領主といえど逆らえばどうなるかわからないくらいだからな」
「なんか公園の情報というよりは連合会の説明だったような?」
「公園=連合会っていう共通認識があるからな、仕方が無いだろう」
「それよりもその公園の裏情報ってなんですか?」
「やはりこれが一番聞きたかったのだな、目の輝きがさっきまでとはぜんぜん違うぞ」
コリンの目はこれでもかというくらいに輝いていた。
「実はそのこう「隊長!!!!!!!」」
いよいよ本題に入ろうとしたところで、兵士風の男が大声を出しながら駆け寄ってきていた。
「どうしたのだ。そんなに慌てて?」
「大変なんです!!南関所に大勢の盗賊団が!!」
「な、なんだと!?」
「現在待機中の警備兵が応戦しています。がしかしこのままでは突破されてしまいます。早く応援をお願いします!!」
「分かった、至急そちらに向かう。お前はこのままエリエール軍まで行き援軍を呼んでくるんだ!!」
「はっ!!」
敬礼をして男は足早に駆けていった。
「さて、そういうわけだからもう案内ができなくなった。お前はギルドにもどれ」
「いいえ、アーニーさんからの依頼では困っている人がいたら助けてやってくれといわれています。今ここで逃げたら依頼を破棄することになります。だからあたしも連れて行ってください」
「・・・わかった、ただしあまり無茶はしないでくれそれだけは守ってくれ」
「はい!!」
「よし、いくぞ!!」
ダッ!! タッタッタッタッタ・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「なんとしてもここは死守しろ!!!!」
おおおおおおおお!!!!!!
「野郎どもこんな死に底無いの警備兵なんざさっさとひねりつぶせ!!!!!」
うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
そこはまさに戦場と化していた。
警備兵はおよそ10人、それに対して盗賊団は30人。
圧倒的に盗賊団の方が数が上だった。
「くそ!!ここは絶対に通さん!!!!」
「野郎ども!!!一人に対して必ず3人で当たれ、どんな強いやつでも数で押せばどうとでもなる、やれ!!!!!!」
「ヒャッハー!!!!!!死ねー!!!!!」
うわーーーーーーーー!!!!
助けてくれーーーーー!!!!
ぎゃああああああああ!!!!
次々と警備兵は切られていく。
「くっこのままでは・・・だが隊長が必ず来てくれるはずだ、全員死んでもここを守れ!!!!隊長が来るまでなんとしても持ちこたえろ!!!!」
おおおおお!!!!!
「お頭!!やつらまだ歯向かってきますぜ!!!」
「遠慮することはねえ、とっととぶっ殺しちまえ!!!!」
カン!キン!キン!ガッキン!!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
タッタッタッタッタ・・・・
「ハァハァハァ・・・副隊長!!!!!」
「隊長!!!!」
その戦場に姿を現したのは南関所の守備警備部隊隊長ケーニッヒ=グランとコリンだった。
「副隊長、戦況はどうなってる!!」
「はっ、現在7名で進路を塞いでいます。敵はおよそ25名になったと推測されます」
「よし副隊長、私はこの者といっしょに盗賊撃退に入る。お前は負傷者を回収しろ!!」
「了解!!」
「いくぞ、コリン!!」
「はい!!」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「もう駄目だー!!!!これ以上は持たない!!!!」
「それ、隙ありだー!!!」
兵士の顔面に剣が当たる。
ザシュザシュザン!!
はずだった。
「「「ぐわああああああ!!!!!」」」
ドサッ ドサッ ドサッ
「えっ?」
そこにいたのは待ちに待った隊長の姿がそこにいた。
「た、た、隊長!!!」
「遅れてすまない、現在を持って私が参戦する皆あとに続け!!!」
おおおおおおおおおおお!!!!!!
生き残った警備兵の士気がマックスになった。
「お頭!!てえへんだ!!警備隊長のグランがやってきやがったぜ!!!」
「なーにー!!!・・・はん、だがこっちは数が多いんだ、それに俺たちには神の加護がついてるんだぜー!!!気にすることはねえ殺っちまえー!!!」
ヒャッハーーーーー!!!!!
近くにいた手下が下品な声を出しながら切りかかってきた。
その数はざっと五人。
「はあああああああ!!!!」
気合と共に手下共に向かって一撃を放った。
ザン!!ビシャアアアアアアアア!!!! ドサドサドサドサドサ
放たれた一撃は5人の手下の腹部を一斉に両断し、その返り血をグランは受け止めた。
5人分の返り血を一気に浴びてもなおその顔は笑っていた。
「なんだ、この程度なのか?この程度で、この街を襲うとはいい度胸だ。
褒美に私がお前らを地獄に送ってやる」
ぺロッ
顔に掛かった返り血を舐めて再び構えを取るグラン。
その光景を見て盗賊共は恐怖に怯えていた。
いや、盗賊だけではなく味方の警備兵もコリンですら恐怖を覚えていた。
これがさっきまで一緒にいたグランさん?なんだか別人に見える。とても怖い。
コリンはいつのまにか体を震わせていた。自分がとても場違いな所にいる気がして、怖くなってしまったのだ。
「・・・くっ、や、野郎ども!!何ぼさっとしてやがる!!!さっさと殺らねえか!!!」
お、お、おおおおおおおおおお!!!!!!
自分を奮い立たせるために再び雄たけびを上げる手下共。
こんどはバラバラになってグランに切りかかる。
その数は10人。
グランは相手の攻撃をかわしてはどんどん切り殺していった。
ある者は胴体を切断され、ある者は首を切断され、ある者は心臓を一突きにされた。
グランの攻撃に迷いはなかった。
襲い掛かった10人は自分が殺されたことも気づいていないのか、いかつい形相をしたまま死んでいる。
「さあー、次は、誰だ?」
グランは何事も無かったかのように剣を構える。
「く、くっそー!!!!仕方がねえ、野郎ども撤退だ!!!」
うわああああああああ!!!!!!
盗賊団は一目散に逃げていった。
「・・・ふうー何とか撃退できたな。皆無事か?」
・・・・・・・・・・
「どうしたんだ皆そんな暗い顔をして、うん?コリンなんで震えているんだ」
「・・・・た・・」
「よく聞こえないんだが?」
「こ、怖かった」
「え?」
「あたし初めて人が怖いと思った。あんな惨殺されるところ初めて見たから、あたし何を思い上がっていたんだろう。多少は戦闘の経験もあるから、役に立てるって思ってきたのに、全然役に立たなかったし、グランさんのことが怖くて仕方なくて、でもそんなことを考える自分はもっといやなのに・・・もうどうしたらいいのかわからない」
気がつくとあたしは泣いていた。
初めて恐怖したのもあるが、街を守るために戦っていたグランのことが心のそこから怖くて、でもグランに恐怖を抱く自分も許せなくて、いろいろな感情が巻き起こり、自分でも制御できなくなってしまったためだからだ。
「泣くな、これから冒険者として一旗あげようっていうんだから、このくらいで泣いちゃ駄目だぞ、だがいい経験にはなっただろう。次にこういう事態になった時は今よりは動けるんじゃないか?
それにお前があの時私のことを手伝ってくれるといったとき、とても嬉しかったよ、ありがとう」
「あ、ありがとうひっく、ございます、ひっくうぅぅぅぅぅ」
「コラッ、泣くなといったんだぞ私は、にっこりと笑いな」
ゴシゴシ
「はい」
あたしは気がつくと心のモヤモヤが晴れていた。
そしてにっこりと笑っていた。
その光景を見ていた警備兵たちも自然と笑っていた。
「さあ死体を処理しよう、いつまでも放置するわけには行かないからな」
はっ!!了解!!!!!
警備兵たちが作業を開始したところで援軍の軍隊がやってきたがすでに終わった後だったため死体処理を手伝ってもらった。
幸い味方に死傷者は出なかったようだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
とこんな感じですかね、物凄く怖かったけどいい経験になったと思う。
だけどこの騒動の間にまさかフレイヤさんにあんなことが起きているなんて、思っても見なかった。
まあそれでもちゃんと怪我を治すんですから、大した生命力ですよ本当に。
実はあたしもフレイヤさんに内緒で書いているんです。
バレたら怒られるかな、でもフレイヤさんが書けなかった分もあたしも書きたかったのかもしれない。
ゴブリン三姉妹 次女 コリン ○月×日
目的はギルドの依頼で散策をしているんですけど、正直に言ってこの地区って散策ポイント少ないんですよね〜。
それに一人で散策してもつまらないし、というわけでグランさんの所に行ってこの地区を案内してもらおうかな〜と思ってるです♪
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「着いた〜っと♪グランさんいるかな?
お〜いグランさーん!!」
「うん?おお、お前か。どうしたんだこんなところで?
たしか冒険者ギルドにいったんじゃなかったかな?」
「ええ、ギルドで冒険者登録を済ませてきたんですよ、そして今はギルドの依頼で街の散策をしているんです」
「ほぉーさっそく依頼を受けたのか。もうすぐあたりが暗くなるというのに随分働き者だな」
「まあお金があまり無いですからね、依頼料を早く貰いたいと思ってるんじゃないですかね」
などと話している途中でコリンは本来の目的を思い出した。
「それよりもグランさんにこれをお返ししますね」
そう言って取り出したのは街に入るときに渡された「客」と書かれたコインだった。
「もういらないのか?」
「ええ、一応身分を証明できるものが手に入りましたから依頼のついでに返してきてくれってフレイヤさんが」
「わかった。ならば受け取っておこう」
「はい、確かに返しましたよ。それとお願いがあるんですけど」
「なんだ?」
「もし手が空いているようならこの地区の案内をしてほしいんですけどいいですか?」
「ああいいぞ、もうすぐ夜勤の者と交代の時間だからな」
「ありがとうございます!」
コリンはグランの仕事が終わるまで待つことにした。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
時刻は6時、ようやく交代の時間がきたようだ。
「待たせたな、では案内をするからついて来い」
「よろしくお願いします」
「そうだなまずは・・・学校に行くか」
「学校ですか?」
「そうだ」
「あの学校って、何ですか?」
「・・・学校を知らんとは、まあいい歩きながら説明してやろう」
グランは学校について、説明を始めた。
学校というのは字の読み書きや計算などといった勉強をする場所であると。
一般常識はもちろん歴史から戦闘技術までいろんなものを学ぶことができる。
基本的に月謝料を払ってくれれば何歳でもどんな種族でも入学ができる。
入学をしたらまずは希望学科を決めること、学科は多種多様にあり例えば字の読み書きや計算ができない場合は初等学科とか、商売人になりたいけどやり方がわからないという場合は商い学科とか、エッチなことを知りたいという方にはエロ教養学科といったものもある。ちなみにエロ教養は保護者が認めれば子供でも入れる。
「・・・といった感じかな」
「へぇー学校ってなんか面白そうなところですね」
「面白いかどうかはわからんが街には必要な場所だな、と話しているうちにほら見えてきたぞ」
そこに見えたのはとても大きい建物だった。
正直領主の城より大きいのではと思えるほどに大きかった。
「大きいですねー」
「まあな、最初は字の読み書きくらいしか教えていなかったんだが、次第に住民からあれもこれも教えてほしいってお願いがあったらしくてな学科が増えるたびに増築していったらこれほどの大きさになったらしい」
と話しながら学校を眺めていたら正面玄関付近を掃き掃除をしているおじいさんが見えた。
「グランさんあの人先生って人ですか?」
「うん?・・・ああ、あれはこの学校の校長先生だよ」
「校長先生?」
「ああ、この学校で一番偉い人さ」
「何で偉い人が掃除なんてしてるんですか?」
「さあてね、私にもわからんよ、それよりもせっかくだから話でもしてみるか?」
「そうですね、これからお世話になるかもしれないですし、挨拶でもしておきましょう」
そういって二人は校長のもとに向かった。
「アレク校長。お久しぶりです」
「おお、グランではないか何年振りかな?」
「私が卒業したのは1年前ですよ、まだボケるには早いんじゃないんですかね」
「なあに軽い冗談だよ、ファファファファ・・・それはさておきそちらの可愛いお嬢さんはどちらさまかね?」
「ああ、こちらはコリンといって、現在ギルドの依頼で街の散策をしているそうです」
「ほお、あのギルドについに冒険者がやってきたのか、ならばこれからはまた依頼を出せるわけだな」
「はい、初めましてあたしコリンといいます。まだ冒険者になり立てですが頑張りますので依頼があればぜひお願いします」
「うむうむ、なかなか礼儀正しい娘じゃないか、そうだな依頼を頼みたくなったらすぐにでも行こうじゃないか」
「ありがとうございます!!」
「それではアレク校長、私たちは散策をしなければならないのでこのへんで」
「うむ、頑張りなさい」
「はい!!」
あたしたちは学校をあとにした。
学校かなんだか楽しそうだったな、でもあたしたちは冒険者なんだから学校に言っている暇は無いわけだし、はあ〜ちょっと残念。
「さて次の目的地は診療所だ」
「診療所ということは要するに小さい病院ですよね?」
「そうだ。学校は知らないのになぜ診療所は知っているんだ?」
「そ、それは・・・」
「まあ言いたくないならいいよ」
そういってグランは深く聞くのはやめた。
その後はグランの仕事のことなどの話で盛り上がりつつ診療所に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「着いた。ここが南居住区の診療所だ」
「ここが・・・思ってたよりは小さいんですね」
さっきの学校のイメージが抜けてないからなのかな?
もっと大きい建物だと思ってたんだけどな。
「それはそうだろう、たった六人しか働いていないのに、そんなに大きくするわけにも行かないだろう」
グランと話をしていると玄関から女性が三人も出てきた。
「やあお三方、仕事はもうあがりかい」
「あら、グランさんじゃないですか」
「オーッス、グラン」
「どうも」
診療所から出てきたのはダークプリーストにダークエンジェルにダークエルフの三人組だった。
「もうお仕事は終わりなんですか、グランさん?」
「いやいや、その質問は私が先にしたんだが」
「うん!!今終わったとこだよ、今日も一日ごくろうさんってね」
「それであなたは?」
「私も先ほど終わったところだ。今はこの娘の手伝いをしているんだ」
「どうも初めまして、あたしコリンです」
「あらあら、これはご丁寧にどうも。私はダークプリーストのハーフニスです。以後お見知りおきを」
「あたしはダークエンジェルのミシェルっていうんだ。よろしくね」
「ダークエルフのレティシア・・・よろしく」
各自が自己紹介を終えたところでコリンは今の自分の状況を話した。
「そうなの、ギルドの依頼で散策しているのね」
「ふーん、あのギルド潰れてなかったんだね」
「奇跡」
言いたい放題である。
「そういうわけなのでもし依頼があればすぐにギルドにお願いします」
「わかりました。もし手助けが必要な場合はすぐに頼むことにしましょう」
「ありがとうございます!!」
「そういえば、のこりの男どもはどうしたんだ?」
「ああ、あの三人なら多分しばらくは動けないよ♪」
「・・・なるほどな」
グランがまたかといった顔をした。
「どうしたのグランさん、あきれた顔をして?」
「いやなんでもないよ、とりあえず彼らには同情するといっておこうかな」
いったい何のことを話しているのかあたしには理解できなかった。
「子供は理解しなくていいんだ。余計なことに首を突っ込むと後で後悔するぞ」
その言葉を聞き、なんとなくグランが言いたいことが理解できたのかそれ以上は考えまい頭をぶんぶん振った。
「さて、そろそろ次に行くか」
「はい」
「あらもう言ってしまうのですか、もう少し話がしたかったのですが残念です」
「怪我したらいつでもおいで、大型病院にも負けないくらいの医術で治してあげるからさ」
「医療費は、まけられないけど」
「はい、怪我をしたときはよろしくお願いします」
そういってあたしたちは次の目的地に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
さすがにあたりが暗くなってきたなー。
早く終わらせて帰ろう。
「次は地図を見てみると公園ですか?」
「そうだ。あと案内できる場所はそのくらいだろう」
「そうですよね住宅地は散策しても特に意味はなさそうですからね。この公園は何か面白そうな情報とかってありませんか?」
「そうだな、基本的な公園の情報ととっておきの裏情報の二つがあるがどっちから聞きたい?」
「基本的なほうからお願いします」
「ほう、好きなものは最後までとっておくタイプだな」
「な、なぜ、それを・・・」
「ふっ、冗談はさておきこの公園の情報は・・・」
グランが公園の説明をし始めた。
公園は基本的に子供たちの遊び場所として設計されているが、学校の運動場も兼ねている場所である。
この公園の利用者は学校と子供と主婦連合会の三組に絞られるらしい。
ちなみに主婦連合会とはその名のとおり人間と魔物の主婦のあつまりである。
あるときは旦那自慢、またあるときは情報交換会などといった雑談会議が行われる。
凄いときは南居住区の主婦が一同に集まるときもあるくらいなのだ。
その様子はまるでこれから緊急国際会議でも開くつもりなのかと思えるくらいだそうだ。
おそらくこの連合会が何かの事情で反旗を翻せばあっという間に国が傾いてしまうくらいの規模だというのだから怖い話だ。
「今話したのが基本的な情報だな」
「今ので基本的なんですか・・・」
「そうだ。ある意味領主といえど逆らえばどうなるかわからないくらいだからな」
「なんか公園の情報というよりは連合会の説明だったような?」
「公園=連合会っていう共通認識があるからな、仕方が無いだろう」
「それよりもその公園の裏情報ってなんですか?」
「やはりこれが一番聞きたかったのだな、目の輝きがさっきまでとはぜんぜん違うぞ」
コリンの目はこれでもかというくらいに輝いていた。
「実はそのこう「隊長!!!!!!!」」
いよいよ本題に入ろうとしたところで、兵士風の男が大声を出しながら駆け寄ってきていた。
「どうしたのだ。そんなに慌てて?」
「大変なんです!!南関所に大勢の盗賊団が!!」
「な、なんだと!?」
「現在待機中の警備兵が応戦しています。がしかしこのままでは突破されてしまいます。早く応援をお願いします!!」
「分かった、至急そちらに向かう。お前はこのままエリエール軍まで行き援軍を呼んでくるんだ!!」
「はっ!!」
敬礼をして男は足早に駆けていった。
「さて、そういうわけだからもう案内ができなくなった。お前はギルドにもどれ」
「いいえ、アーニーさんからの依頼では困っている人がいたら助けてやってくれといわれています。今ここで逃げたら依頼を破棄することになります。だからあたしも連れて行ってください」
「・・・わかった、ただしあまり無茶はしないでくれそれだけは守ってくれ」
「はい!!」
「よし、いくぞ!!」
ダッ!! タッタッタッタッタ・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「なんとしてもここは死守しろ!!!!」
おおおおおおおお!!!!!!
「野郎どもこんな死に底無いの警備兵なんざさっさとひねりつぶせ!!!!!」
うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
そこはまさに戦場と化していた。
警備兵はおよそ10人、それに対して盗賊団は30人。
圧倒的に盗賊団の方が数が上だった。
「くそ!!ここは絶対に通さん!!!!」
「野郎ども!!!一人に対して必ず3人で当たれ、どんな強いやつでも数で押せばどうとでもなる、やれ!!!!!!」
「ヒャッハー!!!!!!死ねー!!!!!」
うわーーーーーーーー!!!!
助けてくれーーーーー!!!!
ぎゃああああああああ!!!!
次々と警備兵は切られていく。
「くっこのままでは・・・だが隊長が必ず来てくれるはずだ、全員死んでもここを守れ!!!!隊長が来るまでなんとしても持ちこたえろ!!!!」
おおおおお!!!!!
「お頭!!やつらまだ歯向かってきますぜ!!!」
「遠慮することはねえ、とっととぶっ殺しちまえ!!!!」
カン!キン!キン!ガッキン!!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
タッタッタッタッタ・・・・
「ハァハァハァ・・・副隊長!!!!!」
「隊長!!!!」
その戦場に姿を現したのは南関所の守備警備部隊隊長ケーニッヒ=グランとコリンだった。
「副隊長、戦況はどうなってる!!」
「はっ、現在7名で進路を塞いでいます。敵はおよそ25名になったと推測されます」
「よし副隊長、私はこの者といっしょに盗賊撃退に入る。お前は負傷者を回収しろ!!」
「了解!!」
「いくぞ、コリン!!」
「はい!!」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「もう駄目だー!!!!これ以上は持たない!!!!」
「それ、隙ありだー!!!」
兵士の顔面に剣が当たる。
ザシュザシュザン!!
はずだった。
「「「ぐわああああああ!!!!!」」」
ドサッ ドサッ ドサッ
「えっ?」
そこにいたのは待ちに待った隊長の姿がそこにいた。
「た、た、隊長!!!」
「遅れてすまない、現在を持って私が参戦する皆あとに続け!!!」
おおおおおおおおおおお!!!!!!
生き残った警備兵の士気がマックスになった。
「お頭!!てえへんだ!!警備隊長のグランがやってきやがったぜ!!!」
「なーにー!!!・・・はん、だがこっちは数が多いんだ、それに俺たちには神の加護がついてるんだぜー!!!気にすることはねえ殺っちまえー!!!」
ヒャッハーーーーー!!!!!
近くにいた手下が下品な声を出しながら切りかかってきた。
その数はざっと五人。
「はあああああああ!!!!」
気合と共に手下共に向かって一撃を放った。
ザン!!ビシャアアアアアアアア!!!! ドサドサドサドサドサ
放たれた一撃は5人の手下の腹部を一斉に両断し、その返り血をグランは受け止めた。
5人分の返り血を一気に浴びてもなおその顔は笑っていた。
「なんだ、この程度なのか?この程度で、この街を襲うとはいい度胸だ。
褒美に私がお前らを地獄に送ってやる」
ぺロッ
顔に掛かった返り血を舐めて再び構えを取るグラン。
その光景を見て盗賊共は恐怖に怯えていた。
いや、盗賊だけではなく味方の警備兵もコリンですら恐怖を覚えていた。
これがさっきまで一緒にいたグランさん?なんだか別人に見える。とても怖い。
コリンはいつのまにか体を震わせていた。自分がとても場違いな所にいる気がして、怖くなってしまったのだ。
「・・・くっ、や、野郎ども!!何ぼさっとしてやがる!!!さっさと殺らねえか!!!」
お、お、おおおおおおおおおお!!!!!!
自分を奮い立たせるために再び雄たけびを上げる手下共。
こんどはバラバラになってグランに切りかかる。
その数は10人。
グランは相手の攻撃をかわしてはどんどん切り殺していった。
ある者は胴体を切断され、ある者は首を切断され、ある者は心臓を一突きにされた。
グランの攻撃に迷いはなかった。
襲い掛かった10人は自分が殺されたことも気づいていないのか、いかつい形相をしたまま死んでいる。
「さあー、次は、誰だ?」
グランは何事も無かったかのように剣を構える。
「く、くっそー!!!!仕方がねえ、野郎ども撤退だ!!!」
うわああああああああ!!!!!!
盗賊団は一目散に逃げていった。
「・・・ふうー何とか撃退できたな。皆無事か?」
・・・・・・・・・・
「どうしたんだ皆そんな暗い顔をして、うん?コリンなんで震えているんだ」
「・・・・た・・」
「よく聞こえないんだが?」
「こ、怖かった」
「え?」
「あたし初めて人が怖いと思った。あんな惨殺されるところ初めて見たから、あたし何を思い上がっていたんだろう。多少は戦闘の経験もあるから、役に立てるって思ってきたのに、全然役に立たなかったし、グランさんのことが怖くて仕方なくて、でもそんなことを考える自分はもっといやなのに・・・もうどうしたらいいのかわからない」
気がつくとあたしは泣いていた。
初めて恐怖したのもあるが、街を守るために戦っていたグランのことが心のそこから怖くて、でもグランに恐怖を抱く自分も許せなくて、いろいろな感情が巻き起こり、自分でも制御できなくなってしまったためだからだ。
「泣くな、これから冒険者として一旗あげようっていうんだから、このくらいで泣いちゃ駄目だぞ、だがいい経験にはなっただろう。次にこういう事態になった時は今よりは動けるんじゃないか?
それにお前があの時私のことを手伝ってくれるといったとき、とても嬉しかったよ、ありがとう」
「あ、ありがとうひっく、ございます、ひっくうぅぅぅぅぅ」
「コラッ、泣くなといったんだぞ私は、にっこりと笑いな」
ゴシゴシ
「はい」
あたしは気がつくと心のモヤモヤが晴れていた。
そしてにっこりと笑っていた。
その光景を見ていた警備兵たちも自然と笑っていた。
「さあ死体を処理しよう、いつまでも放置するわけには行かないからな」
はっ!!了解!!!!!
警備兵たちが作業を開始したところで援軍の軍隊がやってきたがすでに終わった後だったため死体処理を手伝ってもらった。
幸い味方に死傷者は出なかったようだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
とこんな感じですかね、物凄く怖かったけどいい経験になったと思う。
だけどこの騒動の間にまさかフレイヤさんにあんなことが起きているなんて、思っても見なかった。
まあそれでもちゃんと怪我を治すんですから、大した生命力ですよ本当に。
実はあたしもフレイヤさんに内緒で書いているんです。
バレたら怒られるかな、でもフレイヤさんが書けなかった分もあたしも書きたかったのかもしれない。
ゴブリン三姉妹 次女 コリン ○月×日
11/01/06 10:15更新 / ミズチェチェ
戻る
次へ