厳しくも優しいドラゴンさん
現代は日本の北海道にある札幌。
ここは僕が暮らしている場所だ。
僕の名前は北国雪人(キタグニ ユキト)
とくに、何の取り柄もない平凡なサラリーマンだ。
そんな平凡な僕だけど一つだけ自慢できることがあるんだ。
それは僕には妻がいるんだ。
北国刹那(キタグニ セツナ)っていう名前で一生自慢できるようなすばらしい人が僕の妻なんだ!
まあ、ちょっと厳しいのがたまに傷なんだけど・・・
「ユキト、またネクタイが曲がっているぞ!まったく、お前は我の夫なのだぞ!もう少し身だしなみにも気を配ったらどうなんだ!?」
「ごめん、こういうのやっぱり苦手でさ・・・」
「まったく仕方のないやつだ・・・・・・ほら、これで直った。次はしっかり頼むぞ。だらしのない格好では我の夫だと自慢できないではないか」
「ありがとう、行ってくるよセツナ」
「うむ、行ってくるがいい。そうだ、ついでにこのゴミも捨ててきてくれ」
「うん、わかったよ。行ってきます!」
「ああ、行って来い!」
このように僕の毎日は始まる。
気がついたかもしれないけど、僕の奥さんはドラゴンさんなんだ。
なんで、僕と結婚してくれたのかは今でもわからないんだ。
僕は本当に何の取り柄もないから、常々疑問に思っていた。
もちろん僕はセツナのことは好きだし、不満は特にないから問題はないんだけど・・・
何度か理由も聞いてみたけど、毎回「秘密だ」とはぐらかされるし。
ちなみに結婚の申し込みもセツナの方からだったりする。
というか半ば強引に婚姻届に判を押され、結婚式場に拉致されたんだけどね。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ユキト君!何をやってるんだね!この書類の文字が間違っているぞ!」
「すいません!」
「ちょっとユキトさん、この間頼んだ仕事まだ終わっていないの?」
「すいません!なんとか今日中に仕上げます!」
「ユキト、ちょっとなんか買出しに行ってきてくれないか」
「すいません、僕ちょっと忙しくて・・・」
「いいのかな?あのときの失敗を部長に告げ口してもいいんだぜ?」
「!?・・・すぐに買ってきます・・・」
「頼んだぜ、もちろんお前のおごりだよな?」
「・・・・・・はい」
「誰だ!!この失敗をしたのは!?」
「すいません!!!」
「またお前か!ユキト!!!」
「ユキトさん、またやったみたいよ・・・」
「またなの〜?はぁ〜本当にどうにかならないのかしら?」
「本当に駄目な人よね〜」
駄目なやつ、使えないやつ、才能のかけらもないやつ、人間のクズ、どうしてお前なんかが働いているんだ、早くやめてくれないかな、ボソボソ・・・、ヒソヒソ・・・ボソボソ・・・ヒソヒソ・・・ボソボソ・・・ヒソヒソ・・・
どうして僕は・・・こんなに怒られているのだろう・・・こんなに嫌われているのだろう・・・こんなに・・・悔しいんだろう・・・・・・どうして・・・こんなに・・・悲しいんだろう・・・僕が何をしたっていうんだ・・・一生懸命やっているのに・・・誰も認めてくれない・・・もう嫌だ・・・こんなのたくさんだ・・・・・・
誰か・・・僕を・・・助けてよ・・・
「ユキト!」
「・・・セツナ・・・」
「帰りが遅いから心配したのだぞ・・・駄目ではないかしっかり決めた門限に帰らなくては、せっかくの料理が冷めてしまうではないか」
「・・・・・・・・・」
「・・・何かあったのか?」
「・・・・・・・・・」
「黙っていてはわからん。妻である我に隠し事をする気なのか?」
「・・・・・・てよ」
「なんと言ったのだ?」
「ほっといてくれよ!今は誰とも話したくないんだ!」
「あっ!?待てどこに行くのだ!」
最悪だ!一番関係のないセツナに当たってしまった!
僕はなんて馬鹿なんだ!
もう嫌だ!
やっぱり僕なんか生まれてこなければ良かったんだ!
もう十分だよね、こんな僕にセツナっていう一時の幸せをくれた人が出来ただけでも・・・それだけでも十分に幸せになれたんだから。
だから、これで人生に幕を下ろそう。
さよなら、セツナ。
僕がいなくなっても、幸せにね。
「この馬鹿者!どこに行ったかと思えば、何故こんなところから飛び降りようとしているのだ!」
「・・・セツナ、どうしてここが・・・」
「・・・昔からユキトは、何か嫌なことがあったときは高いところにいたからな・・・だから空を飛んで探していたら見つけただけの話だ」
「・・・そう・・・」
「ユキト、何故死のうとした?」
「・・・・・・」
「答えろ」
「・・・僕は・・・僕は・・・やっぱり生きていちゃいけない人間なんだよ!何をやっても失敗ばかりで!どんなに努力をしても成果はあがらないし!影で悪口を言われているのも知ってる!必要とされていない人間だって、毎日聞いていたら、もう生きているのが辛くて、悔しくて、嫌なんだ・・・だから・・・死のうって・・・」
パシーン
「・・・セツナ・・・」
「この馬鹿者が・・・生きていちゃいけない人間だと誰が決めたのだ。たしかにユキトは昔から失敗が絶えない未熟者であるのは我も知っている。だが、ユキトにはユキトにしかないとんでもない才能があるのだ」
「・・・才能・・・そんなものあるわけが」
「あるさ。何せ、その才能で我はユキトに惚れたのだからな」
「・・・・・・」
「ユキトの才能・・・それは優しいことだ」
「優しい・・・」
「ああ、これは元から備わっていなければ出来ないモノだからな。才能と言っても間違いでは無いだろう」
「・・・・・・」
「覚えているか?ユキトがまだ幼い時のことだ。我はその当時、外からやってきたよそ者ということで、毛嫌いされて馴染めずにいたのだ。何度も仲良くなろうと試みたが、どれも失敗に終わり、よく泣いていたものだった。そんな時だったユキトに出会ったのは・・・ユキトは泣いている我を見てこう言った。『飴あげるから、泣かないで』とな。子供ゆえの優しさだったのだろうが、その優しさで我は救われた。それから、何度もユキトを見ているうちに気づいてしまったのだ。ユキトは優しすぎるのだと。同時にこの優しいユキトを守ってあげたいとな。ユキト、お前はたしかに優しすぎる、それが元で失敗も繰り返しているのだろう。それでも我はそんな優しいユキトが大好きだ。だから・・・勝手に死のうだなんてしないでくれ。ユキトを失ったら、我は生きていく自身が無くなる」
「・・・セツナ・・・僕は・・・そんなに思われていたなんて知らなかったから・・・・・・」
「何のために妻になったと思っているのだ?いつでも、ユキトの思いを受け止めて和らげてやるためだぞ。たまには思いのたけをぶつけたらどうだ?楽になるぞ」
「セツナ・・・ごめん・・・今だけは泣いてもいいかな」
「かまわん」
「ありがとう・・・セツナ」
この日、僕は今まで貯めた分の涙をセツナの胸の中で流し続けた。
そんなただ涙を流し続ける僕をセツナは優しく頭をなで続けてくれていた。
初めて僕は救われたと、そう感じた。
同時にセツナがもっと愛おしい存在だと感じる一日になった。
ここは僕が暮らしている場所だ。
僕の名前は北国雪人(キタグニ ユキト)
とくに、何の取り柄もない平凡なサラリーマンだ。
そんな平凡な僕だけど一つだけ自慢できることがあるんだ。
それは僕には妻がいるんだ。
北国刹那(キタグニ セツナ)っていう名前で一生自慢できるようなすばらしい人が僕の妻なんだ!
まあ、ちょっと厳しいのがたまに傷なんだけど・・・
「ユキト、またネクタイが曲がっているぞ!まったく、お前は我の夫なのだぞ!もう少し身だしなみにも気を配ったらどうなんだ!?」
「ごめん、こういうのやっぱり苦手でさ・・・」
「まったく仕方のないやつだ・・・・・・ほら、これで直った。次はしっかり頼むぞ。だらしのない格好では我の夫だと自慢できないではないか」
「ありがとう、行ってくるよセツナ」
「うむ、行ってくるがいい。そうだ、ついでにこのゴミも捨ててきてくれ」
「うん、わかったよ。行ってきます!」
「ああ、行って来い!」
このように僕の毎日は始まる。
気がついたかもしれないけど、僕の奥さんはドラゴンさんなんだ。
なんで、僕と結婚してくれたのかは今でもわからないんだ。
僕は本当に何の取り柄もないから、常々疑問に思っていた。
もちろん僕はセツナのことは好きだし、不満は特にないから問題はないんだけど・・・
何度か理由も聞いてみたけど、毎回「秘密だ」とはぐらかされるし。
ちなみに結婚の申し込みもセツナの方からだったりする。
というか半ば強引に婚姻届に判を押され、結婚式場に拉致されたんだけどね。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ユキト君!何をやってるんだね!この書類の文字が間違っているぞ!」
「すいません!」
「ちょっとユキトさん、この間頼んだ仕事まだ終わっていないの?」
「すいません!なんとか今日中に仕上げます!」
「ユキト、ちょっとなんか買出しに行ってきてくれないか」
「すいません、僕ちょっと忙しくて・・・」
「いいのかな?あのときの失敗を部長に告げ口してもいいんだぜ?」
「!?・・・すぐに買ってきます・・・」
「頼んだぜ、もちろんお前のおごりだよな?」
「・・・・・・はい」
「誰だ!!この失敗をしたのは!?」
「すいません!!!」
「またお前か!ユキト!!!」
「ユキトさん、またやったみたいよ・・・」
「またなの〜?はぁ〜本当にどうにかならないのかしら?」
「本当に駄目な人よね〜」
駄目なやつ、使えないやつ、才能のかけらもないやつ、人間のクズ、どうしてお前なんかが働いているんだ、早くやめてくれないかな、ボソボソ・・・、ヒソヒソ・・・ボソボソ・・・ヒソヒソ・・・ボソボソ・・・ヒソヒソ・・・
どうして僕は・・・こんなに怒られているのだろう・・・こんなに嫌われているのだろう・・・こんなに・・・悔しいんだろう・・・・・・どうして・・・こんなに・・・悲しいんだろう・・・僕が何をしたっていうんだ・・・一生懸命やっているのに・・・誰も認めてくれない・・・もう嫌だ・・・こんなのたくさんだ・・・・・・
誰か・・・僕を・・・助けてよ・・・
「ユキト!」
「・・・セツナ・・・」
「帰りが遅いから心配したのだぞ・・・駄目ではないかしっかり決めた門限に帰らなくては、せっかくの料理が冷めてしまうではないか」
「・・・・・・・・・」
「・・・何かあったのか?」
「・・・・・・・・・」
「黙っていてはわからん。妻である我に隠し事をする気なのか?」
「・・・・・・てよ」
「なんと言ったのだ?」
「ほっといてくれよ!今は誰とも話したくないんだ!」
「あっ!?待てどこに行くのだ!」
最悪だ!一番関係のないセツナに当たってしまった!
僕はなんて馬鹿なんだ!
もう嫌だ!
やっぱり僕なんか生まれてこなければ良かったんだ!
もう十分だよね、こんな僕にセツナっていう一時の幸せをくれた人が出来ただけでも・・・それだけでも十分に幸せになれたんだから。
だから、これで人生に幕を下ろそう。
さよなら、セツナ。
僕がいなくなっても、幸せにね。
「この馬鹿者!どこに行ったかと思えば、何故こんなところから飛び降りようとしているのだ!」
「・・・セツナ、どうしてここが・・・」
「・・・昔からユキトは、何か嫌なことがあったときは高いところにいたからな・・・だから空を飛んで探していたら見つけただけの話だ」
「・・・そう・・・」
「ユキト、何故死のうとした?」
「・・・・・・」
「答えろ」
「・・・僕は・・・僕は・・・やっぱり生きていちゃいけない人間なんだよ!何をやっても失敗ばかりで!どんなに努力をしても成果はあがらないし!影で悪口を言われているのも知ってる!必要とされていない人間だって、毎日聞いていたら、もう生きているのが辛くて、悔しくて、嫌なんだ・・・だから・・・死のうって・・・」
パシーン
「・・・セツナ・・・」
「この馬鹿者が・・・生きていちゃいけない人間だと誰が決めたのだ。たしかにユキトは昔から失敗が絶えない未熟者であるのは我も知っている。だが、ユキトにはユキトにしかないとんでもない才能があるのだ」
「・・・才能・・・そんなものあるわけが」
「あるさ。何せ、その才能で我はユキトに惚れたのだからな」
「・・・・・・」
「ユキトの才能・・・それは優しいことだ」
「優しい・・・」
「ああ、これは元から備わっていなければ出来ないモノだからな。才能と言っても間違いでは無いだろう」
「・・・・・・」
「覚えているか?ユキトがまだ幼い時のことだ。我はその当時、外からやってきたよそ者ということで、毛嫌いされて馴染めずにいたのだ。何度も仲良くなろうと試みたが、どれも失敗に終わり、よく泣いていたものだった。そんな時だったユキトに出会ったのは・・・ユキトは泣いている我を見てこう言った。『飴あげるから、泣かないで』とな。子供ゆえの優しさだったのだろうが、その優しさで我は救われた。それから、何度もユキトを見ているうちに気づいてしまったのだ。ユキトは優しすぎるのだと。同時にこの優しいユキトを守ってあげたいとな。ユキト、お前はたしかに優しすぎる、それが元で失敗も繰り返しているのだろう。それでも我はそんな優しいユキトが大好きだ。だから・・・勝手に死のうだなんてしないでくれ。ユキトを失ったら、我は生きていく自身が無くなる」
「・・・セツナ・・・僕は・・・そんなに思われていたなんて知らなかったから・・・・・・」
「何のために妻になったと思っているのだ?いつでも、ユキトの思いを受け止めて和らげてやるためだぞ。たまには思いのたけをぶつけたらどうだ?楽になるぞ」
「セツナ・・・ごめん・・・今だけは泣いてもいいかな」
「かまわん」
「ありがとう・・・セツナ」
この日、僕は今まで貯めた分の涙をセツナの胸の中で流し続けた。
そんなただ涙を流し続ける僕をセツナは優しく頭をなで続けてくれていた。
初めて僕は救われたと、そう感じた。
同時にセツナがもっと愛おしい存在だと感じる一日になった。
14/06/11 10:07更新 / ミズチェチェ