チェーンソー男VSプライドの高い魔物達(後編)
注意!!!!!!
この話は投稿者様の希望により魔物娘がガチで死んでいきます。
中にはうおおおおおお、俺の嫁がー!!!などといった方も出る可能性がございます。
こういう話が苦手な方は読まないことをお勧めします。
いや、バトルに死者は付き物だという強者はそのままお読みください。
覚悟はいいですか?・・・ではどうぞ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
血で赤く染まった地面、チェーンソーの刃には切り殺した魔物の血がべっとりとついており、刃の先から血がひたひたと滴り落ちてゆく。
現在闘技場は異様なほどの静けさに包まれていた。
先ほどまで盛り上がっていた闘技場は一人の男による惨殺ショーのおかげですっかり冷め切っていた。
たしかに観客は殺し合いを見に来ている。
しかし、これほど一方的な惨殺シーンが見たいわけではなかった。
あくまで魂を削りあうような、互いに一歩も退かないような、そんな戦いが目的だったのだ。
だが闘技場に立っているこの男はそんな観客の希望とは裏腹にあっさりと魔物を殺していく、しかも大半の観客は美しい魔物が好きな奴ばかり、ショックで静かになるのは当然といえば当然だった。
「さあ司会のおっさん、最後のバトルを始めようぜ!」
そんな沈黙を破るようにケイクスはにやりと不敵な笑みを浮かべつつ司会兼審判の男に向かって告げた。
「わかりました」
パチン
司会兼審判の男が指を鳴らした。
すると突然黒い霧が発生し、辺りを暗くし始めた。
バチ! バチバチ! ゴロゴロドッカン!!!
そして唐突に雷が落ちた。
落ちた瞬間に地面が爆発し、辺りに土煙が舞い上がる。
同時に辺りを覆っていた黒い霧も一気に吹き飛んだ。
だんだんと土煙が晴れてゆく、そしてその土煙の中から人の姿が見え始めた。
黒いマントに身を包んだ魔物が姿を現したのだ。
「先ほどはどうも、まさかゼナをこうもあっさりと殺すとは思いませんでした」
「お前はさっきの奴か」
魔物はマントに手を掛け一気にマントを脱いだ。
赤い髪に赤い瞳、すべては私の物といわんばかりのふてぶてしい表情、血のように真っ赤なドレスを着た魔物がその姿を現したのだ。
「改めて名乗らせていただきます。私はシルキィー。ヴァンパイアのシルキィーと申します。以後お見知りおきを」
そう言ってシルキィーはドレスの裾をつかみ軽く一礼する。
「はん、何がお見知りおきをだ。どうせ死ぬんだから知っておく必要はねえだろ」
そんなケイクスの挑発に、シルキィーは涼しい顔をして答えた。
「そうですわね。あなたのような下種に名前を覚えられても困りますし、どうせ殺してしまうんですもの、名乗る必要はなかったかもしれませんわ」
と挑発し返した。
「言ってろ、どうせすぐに喋れなくなるんだ。せいぜい最後の会話を楽しんでおくんだな」
「あら、あなたこそ喋れなくなるのですから、何か言い残すことがあるなら私が聞いてあげましてよ」
互いに涼しい顔をしながらの挑発合戦。
「さてそろそろ始めたいところですが、先にゼナの死体を預かりますわ」
「勝手にしな」
「おじさま、ゼナの体を引き取ってもらえるように係員に指示していただけますか?」
「わかりました」
パチン
指を鳴らすとどこからともなく係員が現れ、ゼナの死体を運んでゆく。
「それじゃ、障害物も無くなったしそろそろおっぱじめるとするか」
「そうですわね」
二人の雰囲気を悟った、司会兼審判の男が大声を発する。
「それではー!!!シングル1VS3最終戦を開始いたします!!!!」
オオオオオオオオオオオオオ!!!!!
『こうなったらやけだ、シルキィー!!!やっちまえー!!!』
『期待してるぜシルキィー!!!』
観客たちもほぼやけくそになっているせいか無理にテンションを上げていた。
「プライドの高い乙女達の最後の砦、恐らくはこの種族よりプライドの高い魔物はいないでしょう!!!大将!!!シーーールーーーキィーーー!!!!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
さらにボルテージを上げる観客達。
「人気あるじゃねえか、魅了の魔法かなんか使ってんじゃねえのか?」
「ふっ、そのようなもったいないことをするわけがありませんわ、でもこの中にはあなたへの応援がないのも事実そのように妬まれても仕方ありませんわね」
再び挑発合戦を繰り返す二人。
しかしその表情は余裕を持って会話をしている表情であり、どこにも怒りという表情はなかった。
「それでは、はじめ!!!」
カーン!!!
「かかって来なさい、二人の恨みと一緒に葬って差し上げますわ」
「ほう、あんたにそれができるのかね〜?」
「当然です、私は誇り高きヴァンパイア、一度決めたことは絶対にやり遂げて見せますわ」
「そうかい、それじゃあ・・・・・・あの世で敵が取れなかったと謝ってくるんだなー!!!!!」
そういうと同時にケイクスは地面を思い切り蹴り、ゼナ戦で見せた時のように凄まじい瞬発力でシルキィーの懐に飛び込んでゆく。
しかし。
バチッ!!!
「ぐあ!」
もうすぐ懐というところで突然何かに弾かれたケイクス。
「っ!?なんだってんだチクショー!!」
後ろに弾かれたケイクスは即座に体勢を立て直す。
「どうしたのかしら?飛び込んできたと思ったら自分から後ろに飛ぶだなんて」
にこりと余裕を浮かべた表情で挑発をするシルキィー。
「うるせえ!てめえ、何かしやがったな!!!」
「何のことかわかりませんわ」
あくまでとぼけるシルキィーにケイクスはキレていた。
「このやろう!!てめえがその気ならこっちだって考えがあるぜ!!!」
「あらさっきまでは私の挑発にも乗らなかったのにこれしきで冷静さを失っていたら、命がいくつあっても足りませんわよ」
「うるせえ!!!!」
ケイクスのチェーンソーが高速で回転を始め火花を散らし始めた。
「魔殺し!!!!!!」
ケイクスはゼナ戦で見せた魔殺しを放った。
その大きな斬撃は一直線にシルキィーの方へと向かっていった。
もう少しで当たる。
誰もがそう思ったとき。
バチッ!!! バチバチバチ!!!
斬撃がシルキィーの前で何かにぶつかり激しく火花を散らしている。
パチン ドッカン!!!
シルキィーが指を鳴らしたとたんに斬撃は跡形もなく吹き飛んでいた。
「・・・うそ・だろ・・・」
あまりの出来事に唖然とするケイクス。
「残念ながらこれが現実よ、あなたがどれだけ人や魔物を殺してきたか知らないですが、元魔王軍魔法攻撃部隊隊長という肩書きを持った魔物とは戦ったことはないでしょう」
「何!?てめえ元魔王軍か」
「そのとおり、ちなみに元魔王軍なのはここのドラゴンに強引に軍を除隊されたからなんですけど」
「どうりで、俺がてこずるわけだ、何度か軍に所属していたっていう魔物と戦ったことがあるがそいつらに限っていつも苦戦してたからな」
「さてお喋りはここまで、今度は私からいきますわ」
シルキィーは右手を広げ前方に出し、ブツブツと詠唱を始めた。
シルキィーは右手を前方から真上に掲げる。
するとシルキィーの上に黒い空間が発生した。
カッと目を見開き魔法を発動する。
「メテオレイン!!!!!」
さっと右手が振り下ろされ、黒い空間から何かが燃えるような音が聞こえ始めた。
その直後に赤く燃えさかる岩が大量に姿を現した。
燃えさかる岩はまっすぐケイクスに向かって飛んでゆく。
「ちっ!!!」
ケイクスは即座に走り出す。
ドッカーン!!!!
先ほどまでケイクスがいた場所が消し飛ぶ。
逃げるケイクスに向かってシルキィーはどんどん燃えさかる岩を雨のごとく降らせてゆく。
「どこまで逃げ切れるかしら?」
くすくす笑いながらメテオレインを放ち続けるシルキィー。
「くっそー!!!このままじゃ拉致があかねえぞ!!!」
「さすがにただの下種とは違いすばしっこいですわ。それなら」
シルキィーはメテオレインを放ちながら、また魔法の詠唱を始めた。
「な、なに!?こんな隕石の雨を降らせながらまだ魔法を放とうって言うのか!?」
詠唱を終えたのか、目を見開くシルキィー。
「フリーズボム!!!」
ケイクスの前方の空間に水色のエネルギー球を放つ。
ドッカーン ピキピキピキ
ケイクスの目の前に突如氷山が出来上がる。
突然の事態に思わず急ブレーキを掛けるケイクス。
「ふっ、これで終わり」
にやりと笑みを浮かべ勝利を確信するシルキィー。
「消し飛びなさい!!!」
シルキィーのメテオレインがケイクスに襲い掛かる。
ドカドカドカドカドカドカドッカーン!!!!!!
集中的に降らせたせいかこれ以上にない爆煙があがる。
「はっはっはっはっは、下種にしてはよく持ったほうですわ」
ケイクスのいた場所は火の勢いが強くとても人が生きているとは思えなかった。
「さあおじさま、判定を」
「・・・・・・続行!!!」
「!?なぜですの!?」
静かに炎の中を指差す司会兼審判の男。
その炎の中から人影が見え始めた。
「危なかったぜ・・・こいつがなければ俺は死んでたかもな」
炎の中から現れたのはケイクスだった。
ケイクスの手の中にはボロボロになったチェーンソーの姿があった。
「さすがにもう使えねえが・・・勝負はこれからだ!!!」
ケイクスは持っていたチェーンソーを投げ捨てて、拳を構える。
「な、なぜまだ生きてますの?・・・普通なら今の一撃で確実に消し炭になるはずですのに」
「それはな、あのチェーンソーのおかげさ、あれはおふくろがくれたものでな一度だけだが命の危険から守ってくれる効果があるらしい。 心配性なおふくろらしいがな」
「なるほど、それはいいお母様をお持ちで、ですがこれであなたは生き残る術を失いましたわ。 お覚悟なさいまし」
「へっ、そいつはどうかな? そう簡単に俺がくたばるように見えるか?」
「その答えは今出してご覧に入れますわ」
シルキィーは両手を前方に広げ詠唱を始める。
「させるか!!!」
ケイクスは地面を蹴り、シルキィーの懐まで一気に間合いを詰めようとする。
「ライトニングボルト!!!」
しかし、それよりも早く呪文の詠唱を終えたシルキィーは両手から雷を放つ。
放たれた雷はジグザグにすばやく動きケイクスに向かっていく。
突っ込んでいるケイクスはほぼ無防備に近かった。
避けられないと判断したのか両手を瞬時にクロスさせ雷に突っ込んでいった。
バチッ!バチバチ!!バチバチ!!
凄まじい轟音が響き渡る。
「グアーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
同時にケイクスも悲鳴をあげた。
「さあ、あなたの運命も終わりが近いようですわね、地獄に落ちて反省なさい!!!」
さらに威力をあげるシルキィー。
「ギャアーーーーーーーー!!!!!!!!!」
悲痛な叫びが闘技場に響き渡る。
くそ、こいつマジで・・・ツエー、このままじゃ、俺死ぬかもな。
だが俺はまだ奥の手が残っている、こいつを出すまでは・・・死ぬわけにはいかねえんだ!!
「アーーーーー!!!!! グ、オーーーーーーー!!!!!!」
「な、なんですって!?」
先ほどまで雷を受けて動けなかったケイクスが突如雷を受けながら走り始めたのだ。
「オーーーーーーーーー!!!!!! でやぁーーーーーー!!!!!!」
そしてジャンプをして、雷から抜け出たのだ。
「俺の右手よ!!!熱く燃えて爆発しやがれー!!!!!!」
体をひねり右手を構え、空中から重力に任せシルキィーに向かっていくケイクス。
「くっ、シールドパワー全開!!!!!!」
対するシルキィーは身の危険を感じ、雷を放つのをやめてシールドの威力を最大まで引き上げた。
「必殺!!!爆砕ナックルーーーーーー!!!!!!!!!」
体全体を使うようにしてケイクスは拳を繰り出した。
バリーン!!! ドカーン!!!!!!
拳はシルキィーのシールドをつき抜けシルキィーの顔面を捉えた。
当たった瞬間に拳を中心に爆発が起こる。
ヒューン ドサッ ドサッ ズザザザザザザーーー
拳をもろにもらったシルキィーは後方に弾けとび、一回転二回転と転がりようやく止まった。
「はあはあはあ、どうだ」
ゆっくりとシルキィーに近づいてゆくケイクス。
「!・・・・・・」
シルキィーは倒れながらも顔だけはケイクスに向けて、相手を殺しそうなほどの目つきで睨み付けていた。
「まだ生きてんのか、だったら止めさしてやるぜ!!!」
ゆっくりと拳を作り、拳を打ち下ろしで構えを取る。
「骨も残らず消し飛べ!!!爆砕!!!ナックーーーール!!!!!!」
ズドーーーーーーーーン!!!!!!
殴りつけた瞬間にまたもや爆発が起こり、激しい土煙をあげる。
しばらくして土煙が収まるとそこに居たのは全身にやけどをおったケイクスの姿のみがあり、シルキィーの居たであろう場所には彼女の着ていたドレスの一部があるだけで他には何もなかった。
「・・・・・・おっさん!判定は!?」
ケイクスが司会兼審判の男に判定を尋ねる。
「・・・・・・勝者、ケイクス!!!」
男は静かに勝ち名乗りをあげた。
「ふうーやっと終わったぜー・・・ちっときつかったがまあ久しぶりに楽しめたからいいや、おっさん早く賞金をくれよ!!!」
「賞金はあとで渡される予定だ。おとなしく控え室で待っていなさい」
「ちぇっ、わかったよ」
ケイクスはふらついた足取りで控え室に戻っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今回はなかなか骨のある殺人鬼だったな。 たまにはあのような者の戦いを見るのも良いものだな。 くっくっくっくっく」
ケイクスの戦いを一部始終を見ていたデルフィニアは満足したのか上機嫌で笑っていた。
「しかも、あの者の家系は我の記憶が正しければ一族そろって殺人鬼という珍しい家系でもあったな、当の昔に滅んだと聞いていたがまだ生き残りがいたようだな。 今宵は楽しいものが見れた・・・おい」
「はっ」
「あの者に例の物を」
「よろしいのですか?」
「かまわぬ、ここまで楽しませてもらったのは本当に久しぶりだからな」
「かしこまりました」
「さあ次は誰が我を楽しませてくれるのかな」
ここはとある地下にある闘技場。
己のすべてをぶつけ合う場所。
一攫千金を狙える場所。
次なる挑戦者はいったい誰か。
TO BE CONTINUE
この話は投稿者様の希望により魔物娘がガチで死んでいきます。
中にはうおおおおおお、俺の嫁がー!!!などといった方も出る可能性がございます。
こういう話が苦手な方は読まないことをお勧めします。
いや、バトルに死者は付き物だという強者はそのままお読みください。
覚悟はいいですか?・・・ではどうぞ。
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血で赤く染まった地面、チェーンソーの刃には切り殺した魔物の血がべっとりとついており、刃の先から血がひたひたと滴り落ちてゆく。
現在闘技場は異様なほどの静けさに包まれていた。
先ほどまで盛り上がっていた闘技場は一人の男による惨殺ショーのおかげですっかり冷め切っていた。
たしかに観客は殺し合いを見に来ている。
しかし、これほど一方的な惨殺シーンが見たいわけではなかった。
あくまで魂を削りあうような、互いに一歩も退かないような、そんな戦いが目的だったのだ。
だが闘技場に立っているこの男はそんな観客の希望とは裏腹にあっさりと魔物を殺していく、しかも大半の観客は美しい魔物が好きな奴ばかり、ショックで静かになるのは当然といえば当然だった。
「さあ司会のおっさん、最後のバトルを始めようぜ!」
そんな沈黙を破るようにケイクスはにやりと不敵な笑みを浮かべつつ司会兼審判の男に向かって告げた。
「わかりました」
パチン
司会兼審判の男が指を鳴らした。
すると突然黒い霧が発生し、辺りを暗くし始めた。
バチ! バチバチ! ゴロゴロドッカン!!!
そして唐突に雷が落ちた。
落ちた瞬間に地面が爆発し、辺りに土煙が舞い上がる。
同時に辺りを覆っていた黒い霧も一気に吹き飛んだ。
だんだんと土煙が晴れてゆく、そしてその土煙の中から人の姿が見え始めた。
黒いマントに身を包んだ魔物が姿を現したのだ。
「先ほどはどうも、まさかゼナをこうもあっさりと殺すとは思いませんでした」
「お前はさっきの奴か」
魔物はマントに手を掛け一気にマントを脱いだ。
赤い髪に赤い瞳、すべては私の物といわんばかりのふてぶてしい表情、血のように真っ赤なドレスを着た魔物がその姿を現したのだ。
「改めて名乗らせていただきます。私はシルキィー。ヴァンパイアのシルキィーと申します。以後お見知りおきを」
そう言ってシルキィーはドレスの裾をつかみ軽く一礼する。
「はん、何がお見知りおきをだ。どうせ死ぬんだから知っておく必要はねえだろ」
そんなケイクスの挑発に、シルキィーは涼しい顔をして答えた。
「そうですわね。あなたのような下種に名前を覚えられても困りますし、どうせ殺してしまうんですもの、名乗る必要はなかったかもしれませんわ」
と挑発し返した。
「言ってろ、どうせすぐに喋れなくなるんだ。せいぜい最後の会話を楽しんでおくんだな」
「あら、あなたこそ喋れなくなるのですから、何か言い残すことがあるなら私が聞いてあげましてよ」
互いに涼しい顔をしながらの挑発合戦。
「さてそろそろ始めたいところですが、先にゼナの死体を預かりますわ」
「勝手にしな」
「おじさま、ゼナの体を引き取ってもらえるように係員に指示していただけますか?」
「わかりました」
パチン
指を鳴らすとどこからともなく係員が現れ、ゼナの死体を運んでゆく。
「それじゃ、障害物も無くなったしそろそろおっぱじめるとするか」
「そうですわね」
二人の雰囲気を悟った、司会兼審判の男が大声を発する。
「それではー!!!シングル1VS3最終戦を開始いたします!!!!」
オオオオオオオオオオオオオ!!!!!
『こうなったらやけだ、シルキィー!!!やっちまえー!!!』
『期待してるぜシルキィー!!!』
観客たちもほぼやけくそになっているせいか無理にテンションを上げていた。
「プライドの高い乙女達の最後の砦、恐らくはこの種族よりプライドの高い魔物はいないでしょう!!!大将!!!シーーールーーーキィーーー!!!!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
さらにボルテージを上げる観客達。
「人気あるじゃねえか、魅了の魔法かなんか使ってんじゃねえのか?」
「ふっ、そのようなもったいないことをするわけがありませんわ、でもこの中にはあなたへの応援がないのも事実そのように妬まれても仕方ありませんわね」
再び挑発合戦を繰り返す二人。
しかしその表情は余裕を持って会話をしている表情であり、どこにも怒りという表情はなかった。
「それでは、はじめ!!!」
カーン!!!
「かかって来なさい、二人の恨みと一緒に葬って差し上げますわ」
「ほう、あんたにそれができるのかね〜?」
「当然です、私は誇り高きヴァンパイア、一度決めたことは絶対にやり遂げて見せますわ」
「そうかい、それじゃあ・・・・・・あの世で敵が取れなかったと謝ってくるんだなー!!!!!」
そういうと同時にケイクスは地面を思い切り蹴り、ゼナ戦で見せた時のように凄まじい瞬発力でシルキィーの懐に飛び込んでゆく。
しかし。
バチッ!!!
「ぐあ!」
もうすぐ懐というところで突然何かに弾かれたケイクス。
「っ!?なんだってんだチクショー!!」
後ろに弾かれたケイクスは即座に体勢を立て直す。
「どうしたのかしら?飛び込んできたと思ったら自分から後ろに飛ぶだなんて」
にこりと余裕を浮かべた表情で挑発をするシルキィー。
「うるせえ!てめえ、何かしやがったな!!!」
「何のことかわかりませんわ」
あくまでとぼけるシルキィーにケイクスはキレていた。
「このやろう!!てめえがその気ならこっちだって考えがあるぜ!!!」
「あらさっきまでは私の挑発にも乗らなかったのにこれしきで冷静さを失っていたら、命がいくつあっても足りませんわよ」
「うるせえ!!!!」
ケイクスのチェーンソーが高速で回転を始め火花を散らし始めた。
「魔殺し!!!!!!」
ケイクスはゼナ戦で見せた魔殺しを放った。
その大きな斬撃は一直線にシルキィーの方へと向かっていった。
もう少しで当たる。
誰もがそう思ったとき。
バチッ!!! バチバチバチ!!!
斬撃がシルキィーの前で何かにぶつかり激しく火花を散らしている。
パチン ドッカン!!!
シルキィーが指を鳴らしたとたんに斬撃は跡形もなく吹き飛んでいた。
「・・・うそ・だろ・・・」
あまりの出来事に唖然とするケイクス。
「残念ながらこれが現実よ、あなたがどれだけ人や魔物を殺してきたか知らないですが、元魔王軍魔法攻撃部隊隊長という肩書きを持った魔物とは戦ったことはないでしょう」
「何!?てめえ元魔王軍か」
「そのとおり、ちなみに元魔王軍なのはここのドラゴンに強引に軍を除隊されたからなんですけど」
「どうりで、俺がてこずるわけだ、何度か軍に所属していたっていう魔物と戦ったことがあるがそいつらに限っていつも苦戦してたからな」
「さてお喋りはここまで、今度は私からいきますわ」
シルキィーは右手を広げ前方に出し、ブツブツと詠唱を始めた。
シルキィーは右手を前方から真上に掲げる。
するとシルキィーの上に黒い空間が発生した。
カッと目を見開き魔法を発動する。
「メテオレイン!!!!!」
さっと右手が振り下ろされ、黒い空間から何かが燃えるような音が聞こえ始めた。
その直後に赤く燃えさかる岩が大量に姿を現した。
燃えさかる岩はまっすぐケイクスに向かって飛んでゆく。
「ちっ!!!」
ケイクスは即座に走り出す。
ドッカーン!!!!
先ほどまでケイクスがいた場所が消し飛ぶ。
逃げるケイクスに向かってシルキィーはどんどん燃えさかる岩を雨のごとく降らせてゆく。
「どこまで逃げ切れるかしら?」
くすくす笑いながらメテオレインを放ち続けるシルキィー。
「くっそー!!!このままじゃ拉致があかねえぞ!!!」
「さすがにただの下種とは違いすばしっこいですわ。それなら」
シルキィーはメテオレインを放ちながら、また魔法の詠唱を始めた。
「な、なに!?こんな隕石の雨を降らせながらまだ魔法を放とうって言うのか!?」
詠唱を終えたのか、目を見開くシルキィー。
「フリーズボム!!!」
ケイクスの前方の空間に水色のエネルギー球を放つ。
ドッカーン ピキピキピキ
ケイクスの目の前に突如氷山が出来上がる。
突然の事態に思わず急ブレーキを掛けるケイクス。
「ふっ、これで終わり」
にやりと笑みを浮かべ勝利を確信するシルキィー。
「消し飛びなさい!!!」
シルキィーのメテオレインがケイクスに襲い掛かる。
ドカドカドカドカドカドカドッカーン!!!!!!
集中的に降らせたせいかこれ以上にない爆煙があがる。
「はっはっはっはっは、下種にしてはよく持ったほうですわ」
ケイクスのいた場所は火の勢いが強くとても人が生きているとは思えなかった。
「さあおじさま、判定を」
「・・・・・・続行!!!」
「!?なぜですの!?」
静かに炎の中を指差す司会兼審判の男。
その炎の中から人影が見え始めた。
「危なかったぜ・・・こいつがなければ俺は死んでたかもな」
炎の中から現れたのはケイクスだった。
ケイクスの手の中にはボロボロになったチェーンソーの姿があった。
「さすがにもう使えねえが・・・勝負はこれからだ!!!」
ケイクスは持っていたチェーンソーを投げ捨てて、拳を構える。
「な、なぜまだ生きてますの?・・・普通なら今の一撃で確実に消し炭になるはずですのに」
「それはな、あのチェーンソーのおかげさ、あれはおふくろがくれたものでな一度だけだが命の危険から守ってくれる効果があるらしい。 心配性なおふくろらしいがな」
「なるほど、それはいいお母様をお持ちで、ですがこれであなたは生き残る術を失いましたわ。 お覚悟なさいまし」
「へっ、そいつはどうかな? そう簡単に俺がくたばるように見えるか?」
「その答えは今出してご覧に入れますわ」
シルキィーは両手を前方に広げ詠唱を始める。
「させるか!!!」
ケイクスは地面を蹴り、シルキィーの懐まで一気に間合いを詰めようとする。
「ライトニングボルト!!!」
しかし、それよりも早く呪文の詠唱を終えたシルキィーは両手から雷を放つ。
放たれた雷はジグザグにすばやく動きケイクスに向かっていく。
突っ込んでいるケイクスはほぼ無防備に近かった。
避けられないと判断したのか両手を瞬時にクロスさせ雷に突っ込んでいった。
バチッ!バチバチ!!バチバチ!!
凄まじい轟音が響き渡る。
「グアーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
同時にケイクスも悲鳴をあげた。
「さあ、あなたの運命も終わりが近いようですわね、地獄に落ちて反省なさい!!!」
さらに威力をあげるシルキィー。
「ギャアーーーーーーーー!!!!!!!!!」
悲痛な叫びが闘技場に響き渡る。
くそ、こいつマジで・・・ツエー、このままじゃ、俺死ぬかもな。
だが俺はまだ奥の手が残っている、こいつを出すまでは・・・死ぬわけにはいかねえんだ!!
「アーーーーー!!!!! グ、オーーーーーーー!!!!!!」
「な、なんですって!?」
先ほどまで雷を受けて動けなかったケイクスが突如雷を受けながら走り始めたのだ。
「オーーーーーーーーー!!!!!! でやぁーーーーーー!!!!!!」
そしてジャンプをして、雷から抜け出たのだ。
「俺の右手よ!!!熱く燃えて爆発しやがれー!!!!!!」
体をひねり右手を構え、空中から重力に任せシルキィーに向かっていくケイクス。
「くっ、シールドパワー全開!!!!!!」
対するシルキィーは身の危険を感じ、雷を放つのをやめてシールドの威力を最大まで引き上げた。
「必殺!!!爆砕ナックルーーーーーー!!!!!!!!!」
体全体を使うようにしてケイクスは拳を繰り出した。
バリーン!!! ドカーン!!!!!!
拳はシルキィーのシールドをつき抜けシルキィーの顔面を捉えた。
当たった瞬間に拳を中心に爆発が起こる。
ヒューン ドサッ ドサッ ズザザザザザザーーー
拳をもろにもらったシルキィーは後方に弾けとび、一回転二回転と転がりようやく止まった。
「はあはあはあ、どうだ」
ゆっくりとシルキィーに近づいてゆくケイクス。
「!・・・・・・」
シルキィーは倒れながらも顔だけはケイクスに向けて、相手を殺しそうなほどの目つきで睨み付けていた。
「まだ生きてんのか、だったら止めさしてやるぜ!!!」
ゆっくりと拳を作り、拳を打ち下ろしで構えを取る。
「骨も残らず消し飛べ!!!爆砕!!!ナックーーーール!!!!!!」
ズドーーーーーーーーン!!!!!!
殴りつけた瞬間にまたもや爆発が起こり、激しい土煙をあげる。
しばらくして土煙が収まるとそこに居たのは全身にやけどをおったケイクスの姿のみがあり、シルキィーの居たであろう場所には彼女の着ていたドレスの一部があるだけで他には何もなかった。
「・・・・・・おっさん!判定は!?」
ケイクスが司会兼審判の男に判定を尋ねる。
「・・・・・・勝者、ケイクス!!!」
男は静かに勝ち名乗りをあげた。
「ふうーやっと終わったぜー・・・ちっときつかったがまあ久しぶりに楽しめたからいいや、おっさん早く賞金をくれよ!!!」
「賞金はあとで渡される予定だ。おとなしく控え室で待っていなさい」
「ちぇっ、わかったよ」
ケイクスはふらついた足取りで控え室に戻っていった。
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「今回はなかなか骨のある殺人鬼だったな。 たまにはあのような者の戦いを見るのも良いものだな。 くっくっくっくっく」
ケイクスの戦いを一部始終を見ていたデルフィニアは満足したのか上機嫌で笑っていた。
「しかも、あの者の家系は我の記憶が正しければ一族そろって殺人鬼という珍しい家系でもあったな、当の昔に滅んだと聞いていたがまだ生き残りがいたようだな。 今宵は楽しいものが見れた・・・おい」
「はっ」
「あの者に例の物を」
「よろしいのですか?」
「かまわぬ、ここまで楽しませてもらったのは本当に久しぶりだからな」
「かしこまりました」
「さあ次は誰が我を楽しませてくれるのかな」
ここはとある地下にある闘技場。
己のすべてをぶつけ合う場所。
一攫千金を狙える場所。
次なる挑戦者はいったい誰か。
TO BE CONTINUE
11/03/01 00:31更新 / ミズチェチェ
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