オカマ超人VSふぇんりるマスク
バトルクラブの入り口に当たる洞窟の前に一人の男と二人の魔物が立っていた。
男の姿は真っ赤な着物に丸の中に蝶の家紋をデカデカとあしらった紺の羽織を羽織っており、顔にはどこで仕入れたのか狼を表した覆面マスクをつけている。
そしてその男の後ろに立っている魔物は一人はリザードマン、一人はアヌビスだった。
「アヌビス、例のバトルクラブとか言うやつはこの洞窟の先でいいのか?」
「はい、ろ「ふぇんりるマスクな」・・・フェンリルマスクさん」
「は〜。本当にそんなダサい名前で出る気なのか・・・フェン」
「そんなにダサいか?」
「「ダサい(です)」」
「・・・・・・我ながら良い名前を思いついたと思ったんだがな、ちぇっ」
フェンリルマスクは二人の言葉にいじけて地面に「の」の字を書き始めた。
「そんなとこでいじけてないで、参加するなら早く行きましょうフェンリルマスクさん」
「・・・ああ、そうだな」
三人は洞窟の中に入っていったのだった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
所変わってここは闘技場。
ワァアアアアアアアア!!!!!!!
観客は大いに盛り上がっていた。
一人の人物が、猛烈な勢いで相手を倒していくのだ。
しかも素手で武器を持った相手に特殊な方法を用いて降参を迫るのだ。
それは・・・
「あなた素敵ね〜。できればあなたのような素敵な人は殺したくないのよね〜。でもルールはルール、せめてあなたの大事な穴をゆっくりと掘った後に・・・」
「ギャアアアアアア!!!!!止めてくれ!!!!降参する!降参するから!それだけは勘弁してくれ!!!!!!!」
このように相手の男はこの人物の一言により、全員悲鳴をあげながら降参するのだった。
この人物、一見すると美しい女性に見えるのだが、先程言った台詞から想像できると思うが・・・この人物はオカマである。
髪型はロングヘアーで金髪。
服装は赤い皮で作られたベストを着ており大きさは肩から腹部まででへそが見えてしまっている。
胸元がよく見えるよう、縦に切れ目が入っているが、肝心の胸元は悲しいことに男の胸をアピールするかのごとくまっ平らであった。
下半身は黒い長めのズボンとハイヒールを履いていた。
この男の肌は手入れがしっかりされており、男のように毛深い肌はそこにはなく美しいレディーの肌がそこにはあった。
知らない奴が見れば十中八九女性として見てしまう程の美貌がソコにあったのだった。
そんな彼の名前はルーズメルト。
武器は使わず、己の肉体のみを使い相手を屈服させてきた強豪である。
「あら〜残念。もう少しでオカマの良さをわかってもらえたのに、ホントザ〜ンネ〜ン」
・・・・・・強豪の・・・はず・・・・・・
「ね〜。そこのダンディーな審判のオジサマ、次の対戦相手はどなたかしら?」
「まだ続けるんですか?」
「ええ、私はまだ疲れていないし〜、良い男にばっか会って興奮が収まらないのよ。オ〜ホッホッホ」
「わかりました。続いてのチャレンジャーの入場です!!!」
ドッカーン!!!!!
審判の声が響き渡り、入場を演出するための小規模な爆発が起こる。
爆煙で見えにくくなってるゲートの奥から人影が見えはじめた。
やがて徐々に煙が晴れ、姿を現したのは一人の女性だった。
「続いてのチャレンジャーはジパングからやってきた女性剣客のトモカ=ミカナギ!!!!!!」
現れた女性は青い着物に身を包み、腰に獲物である日本刀を差しており、表情はどこかのほほんとしておりあまり覇気は感じられなかった。
「どうも、お待たせしました。わてが対戦相手になるトモカいいます。よろしゅうに」
「あなたが次の対戦相手なの?」
「ええ、なんやお金が手に入るゆうからきたんやがここはおっかねえとこですわ、でも最初の相手があんさんみたいに美人な人でよかったですわ」
「あら、褒めても手加減しなくてよ」
「・・・なんやか、あんさん不機嫌みたいやけど、どないしたんですか?」
「不機嫌な理由?・・・それはね」
カーン!!
「あんたが女だからよ!!」
ダッ ガシッ ズダダダダダダダダダダ ドッカーン!!!!!
ゴングがなった直後、ルーズベルトは地を蹴り、油断していたであろうトモカの顔を鷲掴みにし、その勢いのまま闘技場の壁まで行き叩きつけた。
そしてそのまま顔を掴んだまま壁から引きずり出して、さらに力を込める。
「あっ!がぁ!ぁあああああ!!!!!」
トモカは自分の顔を掴んでいるルーズメルトの手に手をかけ、何とか引き離そうとするがまるで万力に挟まれたようにびくともしない。
徐々に叫ぶ力も抵抗する力も無くなったのを確認したルーズメルトはぱっと手を離したその直後。
ヒュン ズガン!!
地面に落下するトモカの腹部に対しておもいっきりひざ蹴りを入れたのだ。
トモカの口から血が飛び出した。
そのまま地面に落ち、膝から倒れて、おなかを押さえて蹲る。
ガシッ グイ
「どうしたの?ちょっと叩きつけて、アイアンクローをして、おなかにひざ蹴りを入れただけじゃない、こんなんでくたばるわけ無いわよね?」
地面に蹲るトモカの頭を掴み言葉を投げかけるルーズメルト。
「・・・ます・・」
「なんて言ったのかしら?」
「ごほっごほっ、こ、こう、さん、し、しま、す・・・ゆ、ゆるして」
その時ルーズメルトはニヤリと笑った。
「あら、あなたまだやる気なのね根性あるじゃない。審判のオジサマー!この子がたとえ死んでも降参はしないって言ってるわよ!殺しても問題ないわよね?」
「!?わ、わては、そないな、ことい・・・」
「ええ、降参宣言されなければ問題ありません」
無常にもトモカの降参宣言はルーズメルトによって消されてしまった。
「それじゃ〜続けましょうか、死んででも勝ちたいなんてすごい気合ね〜とても真似できないわ〜、でもその決意に水を差すわけにはいかないし私も本気で相手をしてあ・げ・る☆」
明るい声で喋っているはずなのにトモカには死刑を宣告された気分だった。
「さすがに私も鬼じゃないわ、だからあなたにも攻撃のチャンスをあげるからかかってきなさい」
トモカは降参宣言をしたかったがルーズメルトの攻撃によりほぼ虫の息に近い状態のため大声を上げることもかなわず、ならばこいつを倒して生き残ろうと力を入れても、体がまったくいうことを利かない状態だった。
「あら〜どうしたのせっかく攻撃のチャンスを与えているのに、そんなとこで寝てたら攻撃できないわよ?」
トモカとて攻撃したいのは山々だがいかんせん体がいうことを利かないためどうしようもできなかった。
あまりの悔しさに歯を食いしばることしかできなかった。
「まったく、このままじゃお客さんが退屈で眠ってしまうは・・・そうだ!、普段はあまりしないけど、お客さんを盛り上げるためにはたまにはいいかしら」
その時のルーズメルトの顔はトモカにとって悪魔の顔にしか見えなかった。
「まずはあなたの服がちょっと邪魔ね、剣はあまり使ったことが無いからこのまま破いてしまいましょう」
その言葉はトモカにとって、まさに最悪の一言だった。この後の展開が想像できてしまったのだ。
「い・いや・・・いや」
今すぐ逃げ出したいが体は依然としていうことを利かない状態。
すぐそばには笑顔で近寄ってくるルーズメルト。
ガシッ ビリビリビリビリビリ!!!
トモカが着ている着物を上半身部分だけ破かれてしまった。
着物の中には胸を隠すためかさらしが巻かれていたがその豊満な果実のせいでぜんぜん隠しきれていなかった。
「あら、あなたなかなか良いものをぶら下げているじゃないこんな包帯で縛るなんてもったいないじゃない私が取ってあげる」
「・・や・やめ・て・・おね・がい・やから」
「ダーメ☆」
ビリビリビリビリ
無常にもトモカのさらしは破かれてしまった。
その豊満な果実はぶるんという音が聞こえそうな勢いで姿を現した。
ごくり
会場全体から生唾を飲み込む音が聞こえた。
「お・・ねがい・や・もう・・ころし・て」
トモカはこれ以上の屈辱に耐えられなかった。
このまま生き恥をさらすくらいなら死んだほうがマシと判断したためだ。
ルーズメルトはそんなトモカの耳元で。
「何いってるのよ、楽に死なせるわけ無いじゃない、あなたにはたくさん恥をかいてもらって、女として生まれたことを、後悔させてやるんだから」
それを聞いたトモカは衝撃を受けていた。
この人は女性を憎んでいる。
何故かはわからないが現在その矛先は確実に自分に向かっているんだと理解した。
同時に恐怖感がこみ上げてきた、自分はいったいどうなるのか、怖い、怖い!
その恐怖感が現在トモカの心を支配し、トモカの瞳からは涙が溢れた。
「さあ紳士の皆様、いまからこの子が淫らに喘ぐ姿をご覧に入れます!」
もう駄目だ。
トモカがあきらめたその時。
ドッカーン!!!!!
突然闘技場の壁が破壊された。
何事だと、観客もルーズメルトも闘技場にいた者全員がその音に反応した。
ガラガラガラ ザッ ザッ ザッ
破壊された壁から現れたのは狼のマスクをつけた男にリザードマンとアヌビスだった。
「いやーやっと出れたぜ、意外に洞窟の中が複雑で参っちまうぜ」
「何言ってんですか!!ろ、じゃなくて、フェンリルマスクさんが勝手に進むから迷子になったんですよ!!」
「まったくだ、アヌビスの力で方向がわからなければ私たちは確実に死んでいただろうな」
「そう細かいことは気にするなよ、最終的には俺の力で着いたんだからよ・・・ってここどこだアヌビス」
「どこって、闘技場に決まって・・・」
「どうやら試合の途中らしいな」
そう壁から現れたのは冒頭で紹介したフェンリルマスク達だったのだ。
彼らはフェンリルマスクのおかげで迷子になり、強引に壁を破壊して、闘技場に姿を現したのだ。
「何なんですか!!あなたたちは!!」
審判が声を荒げる。
当然といえば当然だ一方的とはいえ試合の途中に乱入してきたのだ。
「あーすまんバトルクラブに参加しようと思ったんだが、道に迷ってな、仕方がないから壁を破壊してきたらここに着いちまったんだ」
「参加したいなら受付を済ませてからきなさい!!」
「なに?申し込まなきゃならんのか?・・・・・・面倒くさいからこのまま乱入させてくれないか?」
「何を馬鹿なこといってるんですか!」
「良いじゃねえか、乱入は男のロマンでもあるんだぜけちけちするなよ」
「くっ!け「良いじゃない!」・・えっ!?」
「こんなに素敵なオジサマは私見たことが無いわ、すぐに戦いましょう。そして勝ったらオジサマを私の物にしてあ・げ・る」
「いやしかし、まだこの試合も終わってないですし」
「あらそう、じゃあちょっと待っててねすぐ終わらせるから」
そういうとルーズメルトはトモカの腰に差してある日本刀を抜き放ち、殺そうと振りぬいた。
ヒュン ガシッ
しかしその腕をフェンリルマスクは掴んでいた。
「あらオジサマどうして止めるの?」
「俺は目の前で人が死ぬのが嫌いなんだよ。それに相手は女で虫の息、殺す意味がどこにある?」
「オジサマ、ルールを知らないの?ここでは降参するか、殺すまで戦いは続くのよ」
「だったら降参を勧めれば良いじゃないか」
「だってその子は降参はしないって言うんですもの」
「・・・本当か?」
フェンリルマスクはトモカに対して聞いた。
しかし、すでに限界まで恐怖心で犯されており、トモカは反応することができなかった。
「ねえ、うんともすんともしないでしょう、これは彼女がまだ戦いをあきらめて無い証拠なのよ、だから手を離して、オジサマと戦えなくなってしまぶぅ!?」
突然、ルーズメルトの顔面に蹴りが入った。
「何言ってやがんだ、俺にはわかるこの子は恐怖心とダメージで体がいうことを利かない状態なだけだ。それなのにおまえさんは殺そうとしたんだ戦意のかけらもねえこの子をだ。戦意がねえ時点で降参してるようなものじゃねえかふざけるのも大概にしやがれ!!」
闘技場全体がシーンとなる。
「おい!そこのくそ審判!この子の代わりに俺が出る文句はねえな!」
「い、いや、しかし」
「いいな!!!」
「良かろう!!特別に交代を認めてやろう」
突然バトルクラブの主でもあるドラゴンのデルフィニアが姿を現し、交代を認めた。
「あんたがこのクラブ親玉かい?」
「ふふふ、そのようなものだ」
「なかなか趣味が悪いな」
「褒め言葉として受け取っておこう」
「・・・アヌビス、この子を頼む」
「は、はい!」
「ひどく衰弱している、いったい何をされたんだ」
「さあ、お望みどおり戦ってやるからさっさと起き上がったらどうだオカマ野郎!!」
その言葉に反応したのか、くびはねおきを使い飛び上がるルーズメルト。
「よくわかったわね、私がオカマだって」
「てめえの動きには女らしさが感じ取れなかったんだよ、後蹴ったときの感触が男を蹴ったときと同じだったからな」
その事実に驚いていたのがアヌビスとリザードマンだった。
「そんな、あんなに綺麗なのに男だなんて」
「私は男に女らしさで負けてしまったのか」
何故か落ち込む二人。
「まあ別にばれても関係ないんだけどね、オジサマに勝てば私はあなたを手に入れられるんですもの」
「そいつはごめんだな、俺にはりザードマンの妻とアヌビスの妻がいるんだ。男には興味は無いんでね、ほかを当たってくれ」
「何言ってるのよ、そんなリザードマンやアヌビスなんかより私のほうがあなぶぐぅろばあ!!」
「てめえ!今完全に俺を怒らせたな!妻を侮辱した罪は重いぞ!死んで後悔してもらおうか!!」
ルーズメルトの一言に完全にぶち切れたフェンリルマスクは再び顔面に蹴りを入れた。
「くう〜効いたは、こんな手ごたえはひさしぶりね、私も本気でいかないと殺られちゃうかも」
「何ごちゃごちゃ言ってんだよ」
フェンリルマスクが膝を着いているルーズメルトに対し回し蹴りを叩き込もうとした瞬間。
ガシッ
「な、なに!?」
「はああああああああああああ!!!!!!!!」
突然ルーズメルトが声をあげるのと同時に強い風が吹き始めた。
いや、風というよりは気合といったほうが良いのかともかく見えない何かがルーズメルトから発し始めたのだ。
ボゴン ボゴン ボゴン ボゴン ボゴン
ルーズメルトの体は先程の女らしい体ではなく、男らしいマッチョへと変貌を遂げた。
「な、なんだ、いったいどうなって」
「ふうううん、でやああああ!!!!」
「ぬうおおおおお!!!」
先程まで掴まれていたフェンリルマスクの足を強引に力強く投げ飛ばすルーズメルト。
投げ飛ばされたフェンリルマスクは何とか体制を整え着地する。
「この姿はあんまり好きじゃないんだけどそうも言ってらん無いのよね」
「くそ!化け物かこいつは、だが図体がでかけりゃ勝てるというもんでもねえぞ」
「やってみれば、わかるわよ」
「いくぞ!!」
フェンリルマスクは間合いを詰めて、渾身のとび蹴りを入れる。
続けざまに顔面にひざ蹴りを入れて、ついでに回し蹴りも入れる。
「どうだ!」
「いい攻撃ね」
「なっ、なに効いてないのか!?」
「今度は私の番ね」
ルーズメルトはフェンリルマスクを上回るスピードで間を詰め、フェンリルマスクを殴りつけた。
「ぐほぉ!!!!」
ヒューン ドッカーン
「ぐはっ」
軽々とフェンリルマスクは吹き飛ばされ壁にたたき付けられた。
「あらオジサマ、まさかこれで終わりじゃないわよね?」
「あ、あったりめえだ、まだこれからだぜ」
「よかった」
ヒュン
ルーズメルトが消えた。
バキッ!!
そして、横から突然現れフェンリルマスクを殴りつける。
「ぐおお!!!ぐっ、うおおおおお!!!」
何とか踏ん張り体制を整えて攻撃するフェンリルマスク。
バッ クルン ガツン!!
渾身のかかと落としルーズメルトにお見舞いした。
「・・・今のは少し効いたわ」
「化け物かてめえは、本当になんて耐久力してやがる」
「オジサマもすごいわよ、私のこの姿の攻撃を二回も受けて立っているんですもの、しかも反撃までするんだからすごいわ」
「たしかにいままで戦った中で一番きつい攻撃かもしれねえな」
「オジサマ降参してくれないかしら、私ここまで強いオジサマを殺したくはないのよ」
「馬鹿は休み休み言え、俺はてめえをぶっ殺すと決めたんだ。妻を侮辱されたんだからな」
「もういいやめろ、フェン、それ以上はフェンの命にかかわるんだぞ!!」
「そうですよ!!もう止めましょう!!」
「ふっ、何言ってやがんだどいつもこいつも、まあ見てろってんだ」
「それじゃ仕方が無いからとどめを差してあげるわ!!」
フェンリルマスクがボロボロな状態のためか警戒もせずに真っ直ぐに突っ込んでくるルーズメルト。
「さよならオジサマ!!」
左拳を突き出すルーズメルト。
拳が徐々にフェンリルマスクの顔面に近づいていく。
「見切った!!」
わずかな動作でギリギリのところをかわして前に出るフェンリルマスク。
そしてルーズメルトの心臓の位置に左の掌を押し当てる。
「食らえ!!鎧通し!!!!」
ドックン ドックン ドックン ドック ン ドッ ク ン
静寂が闘技場を包む。
まるで時間が止まってしまったようなそんな感覚だった。
「オジサマ、私の負けね・・ゴフッ!!!!!」
ルーズメルトは盛大に口から血を吐き、ゆっくりと地面に倒れていった。
再び静寂が戻る。
「おい、くそ審判!判定は」
「は、はい!」
審判がルーズメルトに駆け寄り生死を確かめる。
「ルーズメルトの心肺機能停止を確認、勝者フェンリルマスク!!!!!」
うおおおおおおおおおおおお!!!!!!
「へっへっへ、勝ったぜ」
「フェン」
ヒュン バチン!!
突如リザードマンがフェンリルマスクを引っ叩いた。
「・・・な、なにしやがんだよ」
「なにしやがんだよじゃない!なんであんな無理をしたんだ!!あそこでもし死んでいたらどうするつもりだったんだ!!」
「そ、それは」
「フェンを失ったら私はどうやって生きていけばいいんだ。たのむから無茶だけはしないでくれ」
「すまん」
「あのーお取り込み中何なんですが、次の対戦は?」
「無しだ。疲れたから帰る」
「そうですか、ではファイトマネーを受け取りください」
「いや、いらんその金はあの子にでもあげてくれ」
「しかし」
「くどい、俺はあの子の代わりに戦ったに過ぎないんだからいらん」
そういうとフェンリルマスクはふらふらした足取りで闘技場を後にしようとした。
「そうだ、フェンこの子どうするんだ!」
ぴたっと止まる。
「どうしようか?」
「何も考えていなかったのか!?」
「まあ、場の流れで助けちまったからな、まだなんの反応も無いのか?」
「ああ、だいぶ心に深い傷ができているようだ」
「仕方ねえ、助けちまったんだし、ついでに連れて行くか」
「そうだな」
「でしたら、良い精神病院がありますから手配しておきます」
「ああたのんだぜアヌビス」
「ああすまねえ、さっきの金預かっとくわ」
「はい、どうぞ」
こんどこそフェンリルマスクたちは闘技場を後にしたのだった。
「ふふふ、まさかここであの者と出会おうとはな、魔王とそっくりな行動まで取るとは、だが我には関係の無い話だ」
今回の戦いがよっぽど気に入ったのか尻尾をうれしそうに振りながら自室へと戻るデルフィニア。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ここはとある地下にある闘技場。
己のすべてをぶつけ合う場所。
一攫千金を狙える場所。
次なる挑戦者はいったい誰か。
TO BE CONTINUE
男の姿は真っ赤な着物に丸の中に蝶の家紋をデカデカとあしらった紺の羽織を羽織っており、顔にはどこで仕入れたのか狼を表した覆面マスクをつけている。
そしてその男の後ろに立っている魔物は一人はリザードマン、一人はアヌビスだった。
「アヌビス、例のバトルクラブとか言うやつはこの洞窟の先でいいのか?」
「はい、ろ「ふぇんりるマスクな」・・・フェンリルマスクさん」
「は〜。本当にそんなダサい名前で出る気なのか・・・フェン」
「そんなにダサいか?」
「「ダサい(です)」」
「・・・・・・我ながら良い名前を思いついたと思ったんだがな、ちぇっ」
フェンリルマスクは二人の言葉にいじけて地面に「の」の字を書き始めた。
「そんなとこでいじけてないで、参加するなら早く行きましょうフェンリルマスクさん」
「・・・ああ、そうだな」
三人は洞窟の中に入っていったのだった。
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所変わってここは闘技場。
ワァアアアアアアアア!!!!!!!
観客は大いに盛り上がっていた。
一人の人物が、猛烈な勢いで相手を倒していくのだ。
しかも素手で武器を持った相手に特殊な方法を用いて降参を迫るのだ。
それは・・・
「あなた素敵ね〜。できればあなたのような素敵な人は殺したくないのよね〜。でもルールはルール、せめてあなたの大事な穴をゆっくりと掘った後に・・・」
「ギャアアアアアア!!!!!止めてくれ!!!!降参する!降参するから!それだけは勘弁してくれ!!!!!!!」
このように相手の男はこの人物の一言により、全員悲鳴をあげながら降参するのだった。
この人物、一見すると美しい女性に見えるのだが、先程言った台詞から想像できると思うが・・・この人物はオカマである。
髪型はロングヘアーで金髪。
服装は赤い皮で作られたベストを着ており大きさは肩から腹部まででへそが見えてしまっている。
胸元がよく見えるよう、縦に切れ目が入っているが、肝心の胸元は悲しいことに男の胸をアピールするかのごとくまっ平らであった。
下半身は黒い長めのズボンとハイヒールを履いていた。
この男の肌は手入れがしっかりされており、男のように毛深い肌はそこにはなく美しいレディーの肌がそこにはあった。
知らない奴が見れば十中八九女性として見てしまう程の美貌がソコにあったのだった。
そんな彼の名前はルーズメルト。
武器は使わず、己の肉体のみを使い相手を屈服させてきた強豪である。
「あら〜残念。もう少しでオカマの良さをわかってもらえたのに、ホントザ〜ンネ〜ン」
・・・・・・強豪の・・・はず・・・・・・
「ね〜。そこのダンディーな審判のオジサマ、次の対戦相手はどなたかしら?」
「まだ続けるんですか?」
「ええ、私はまだ疲れていないし〜、良い男にばっか会って興奮が収まらないのよ。オ〜ホッホッホ」
「わかりました。続いてのチャレンジャーの入場です!!!」
ドッカーン!!!!!
審判の声が響き渡り、入場を演出するための小規模な爆発が起こる。
爆煙で見えにくくなってるゲートの奥から人影が見えはじめた。
やがて徐々に煙が晴れ、姿を現したのは一人の女性だった。
「続いてのチャレンジャーはジパングからやってきた女性剣客のトモカ=ミカナギ!!!!!!」
現れた女性は青い着物に身を包み、腰に獲物である日本刀を差しており、表情はどこかのほほんとしておりあまり覇気は感じられなかった。
「どうも、お待たせしました。わてが対戦相手になるトモカいいます。よろしゅうに」
「あなたが次の対戦相手なの?」
「ええ、なんやお金が手に入るゆうからきたんやがここはおっかねえとこですわ、でも最初の相手があんさんみたいに美人な人でよかったですわ」
「あら、褒めても手加減しなくてよ」
「・・・なんやか、あんさん不機嫌みたいやけど、どないしたんですか?」
「不機嫌な理由?・・・それはね」
カーン!!
「あんたが女だからよ!!」
ダッ ガシッ ズダダダダダダダダダダ ドッカーン!!!!!
ゴングがなった直後、ルーズベルトは地を蹴り、油断していたであろうトモカの顔を鷲掴みにし、その勢いのまま闘技場の壁まで行き叩きつけた。
そしてそのまま顔を掴んだまま壁から引きずり出して、さらに力を込める。
「あっ!がぁ!ぁあああああ!!!!!」
トモカは自分の顔を掴んでいるルーズメルトの手に手をかけ、何とか引き離そうとするがまるで万力に挟まれたようにびくともしない。
徐々に叫ぶ力も抵抗する力も無くなったのを確認したルーズメルトはぱっと手を離したその直後。
ヒュン ズガン!!
地面に落下するトモカの腹部に対しておもいっきりひざ蹴りを入れたのだ。
トモカの口から血が飛び出した。
そのまま地面に落ち、膝から倒れて、おなかを押さえて蹲る。
ガシッ グイ
「どうしたの?ちょっと叩きつけて、アイアンクローをして、おなかにひざ蹴りを入れただけじゃない、こんなんでくたばるわけ無いわよね?」
地面に蹲るトモカの頭を掴み言葉を投げかけるルーズメルト。
「・・・ます・・」
「なんて言ったのかしら?」
「ごほっごほっ、こ、こう、さん、し、しま、す・・・ゆ、ゆるして」
その時ルーズメルトはニヤリと笑った。
「あら、あなたまだやる気なのね根性あるじゃない。審判のオジサマー!この子がたとえ死んでも降参はしないって言ってるわよ!殺しても問題ないわよね?」
「!?わ、わては、そないな、ことい・・・」
「ええ、降参宣言されなければ問題ありません」
無常にもトモカの降参宣言はルーズメルトによって消されてしまった。
「それじゃ〜続けましょうか、死んででも勝ちたいなんてすごい気合ね〜とても真似できないわ〜、でもその決意に水を差すわけにはいかないし私も本気で相手をしてあ・げ・る☆」
明るい声で喋っているはずなのにトモカには死刑を宣告された気分だった。
「さすがに私も鬼じゃないわ、だからあなたにも攻撃のチャンスをあげるからかかってきなさい」
トモカは降参宣言をしたかったがルーズメルトの攻撃によりほぼ虫の息に近い状態のため大声を上げることもかなわず、ならばこいつを倒して生き残ろうと力を入れても、体がまったくいうことを利かない状態だった。
「あら〜どうしたのせっかく攻撃のチャンスを与えているのに、そんなとこで寝てたら攻撃できないわよ?」
トモカとて攻撃したいのは山々だがいかんせん体がいうことを利かないためどうしようもできなかった。
あまりの悔しさに歯を食いしばることしかできなかった。
「まったく、このままじゃお客さんが退屈で眠ってしまうは・・・そうだ!、普段はあまりしないけど、お客さんを盛り上げるためにはたまにはいいかしら」
その時のルーズメルトの顔はトモカにとって悪魔の顔にしか見えなかった。
「まずはあなたの服がちょっと邪魔ね、剣はあまり使ったことが無いからこのまま破いてしまいましょう」
その言葉はトモカにとって、まさに最悪の一言だった。この後の展開が想像できてしまったのだ。
「い・いや・・・いや」
今すぐ逃げ出したいが体は依然としていうことを利かない状態。
すぐそばには笑顔で近寄ってくるルーズメルト。
ガシッ ビリビリビリビリビリ!!!
トモカが着ている着物を上半身部分だけ破かれてしまった。
着物の中には胸を隠すためかさらしが巻かれていたがその豊満な果実のせいでぜんぜん隠しきれていなかった。
「あら、あなたなかなか良いものをぶら下げているじゃないこんな包帯で縛るなんてもったいないじゃない私が取ってあげる」
「・・や・やめ・て・・おね・がい・やから」
「ダーメ☆」
ビリビリビリビリ
無常にもトモカのさらしは破かれてしまった。
その豊満な果実はぶるんという音が聞こえそうな勢いで姿を現した。
ごくり
会場全体から生唾を飲み込む音が聞こえた。
「お・・ねがい・や・もう・・ころし・て」
トモカはこれ以上の屈辱に耐えられなかった。
このまま生き恥をさらすくらいなら死んだほうがマシと判断したためだ。
ルーズメルトはそんなトモカの耳元で。
「何いってるのよ、楽に死なせるわけ無いじゃない、あなたにはたくさん恥をかいてもらって、女として生まれたことを、後悔させてやるんだから」
それを聞いたトモカは衝撃を受けていた。
この人は女性を憎んでいる。
何故かはわからないが現在その矛先は確実に自分に向かっているんだと理解した。
同時に恐怖感がこみ上げてきた、自分はいったいどうなるのか、怖い、怖い!
その恐怖感が現在トモカの心を支配し、トモカの瞳からは涙が溢れた。
「さあ紳士の皆様、いまからこの子が淫らに喘ぐ姿をご覧に入れます!」
もう駄目だ。
トモカがあきらめたその時。
ドッカーン!!!!!
突然闘技場の壁が破壊された。
何事だと、観客もルーズメルトも闘技場にいた者全員がその音に反応した。
ガラガラガラ ザッ ザッ ザッ
破壊された壁から現れたのは狼のマスクをつけた男にリザードマンとアヌビスだった。
「いやーやっと出れたぜ、意外に洞窟の中が複雑で参っちまうぜ」
「何言ってんですか!!ろ、じゃなくて、フェンリルマスクさんが勝手に進むから迷子になったんですよ!!」
「まったくだ、アヌビスの力で方向がわからなければ私たちは確実に死んでいただろうな」
「そう細かいことは気にするなよ、最終的には俺の力で着いたんだからよ・・・ってここどこだアヌビス」
「どこって、闘技場に決まって・・・」
「どうやら試合の途中らしいな」
そう壁から現れたのは冒頭で紹介したフェンリルマスク達だったのだ。
彼らはフェンリルマスクのおかげで迷子になり、強引に壁を破壊して、闘技場に姿を現したのだ。
「何なんですか!!あなたたちは!!」
審判が声を荒げる。
当然といえば当然だ一方的とはいえ試合の途中に乱入してきたのだ。
「あーすまんバトルクラブに参加しようと思ったんだが、道に迷ってな、仕方がないから壁を破壊してきたらここに着いちまったんだ」
「参加したいなら受付を済ませてからきなさい!!」
「なに?申し込まなきゃならんのか?・・・・・・面倒くさいからこのまま乱入させてくれないか?」
「何を馬鹿なこといってるんですか!」
「良いじゃねえか、乱入は男のロマンでもあるんだぜけちけちするなよ」
「くっ!け「良いじゃない!」・・えっ!?」
「こんなに素敵なオジサマは私見たことが無いわ、すぐに戦いましょう。そして勝ったらオジサマを私の物にしてあ・げ・る」
「いやしかし、まだこの試合も終わってないですし」
「あらそう、じゃあちょっと待っててねすぐ終わらせるから」
そういうとルーズメルトはトモカの腰に差してある日本刀を抜き放ち、殺そうと振りぬいた。
ヒュン ガシッ
しかしその腕をフェンリルマスクは掴んでいた。
「あらオジサマどうして止めるの?」
「俺は目の前で人が死ぬのが嫌いなんだよ。それに相手は女で虫の息、殺す意味がどこにある?」
「オジサマ、ルールを知らないの?ここでは降参するか、殺すまで戦いは続くのよ」
「だったら降参を勧めれば良いじゃないか」
「だってその子は降参はしないって言うんですもの」
「・・・本当か?」
フェンリルマスクはトモカに対して聞いた。
しかし、すでに限界まで恐怖心で犯されており、トモカは反応することができなかった。
「ねえ、うんともすんともしないでしょう、これは彼女がまだ戦いをあきらめて無い証拠なのよ、だから手を離して、オジサマと戦えなくなってしまぶぅ!?」
突然、ルーズメルトの顔面に蹴りが入った。
「何言ってやがんだ、俺にはわかるこの子は恐怖心とダメージで体がいうことを利かない状態なだけだ。それなのにおまえさんは殺そうとしたんだ戦意のかけらもねえこの子をだ。戦意がねえ時点で降参してるようなものじゃねえかふざけるのも大概にしやがれ!!」
闘技場全体がシーンとなる。
「おい!そこのくそ審判!この子の代わりに俺が出る文句はねえな!」
「い、いや、しかし」
「いいな!!!」
「良かろう!!特別に交代を認めてやろう」
突然バトルクラブの主でもあるドラゴンのデルフィニアが姿を現し、交代を認めた。
「あんたがこのクラブ親玉かい?」
「ふふふ、そのようなものだ」
「なかなか趣味が悪いな」
「褒め言葉として受け取っておこう」
「・・・アヌビス、この子を頼む」
「は、はい!」
「ひどく衰弱している、いったい何をされたんだ」
「さあ、お望みどおり戦ってやるからさっさと起き上がったらどうだオカマ野郎!!」
その言葉に反応したのか、くびはねおきを使い飛び上がるルーズメルト。
「よくわかったわね、私がオカマだって」
「てめえの動きには女らしさが感じ取れなかったんだよ、後蹴ったときの感触が男を蹴ったときと同じだったからな」
その事実に驚いていたのがアヌビスとリザードマンだった。
「そんな、あんなに綺麗なのに男だなんて」
「私は男に女らしさで負けてしまったのか」
何故か落ち込む二人。
「まあ別にばれても関係ないんだけどね、オジサマに勝てば私はあなたを手に入れられるんですもの」
「そいつはごめんだな、俺にはりザードマンの妻とアヌビスの妻がいるんだ。男には興味は無いんでね、ほかを当たってくれ」
「何言ってるのよ、そんなリザードマンやアヌビスなんかより私のほうがあなぶぐぅろばあ!!」
「てめえ!今完全に俺を怒らせたな!妻を侮辱した罪は重いぞ!死んで後悔してもらおうか!!」
ルーズメルトの一言に完全にぶち切れたフェンリルマスクは再び顔面に蹴りを入れた。
「くう〜効いたは、こんな手ごたえはひさしぶりね、私も本気でいかないと殺られちゃうかも」
「何ごちゃごちゃ言ってんだよ」
フェンリルマスクが膝を着いているルーズメルトに対し回し蹴りを叩き込もうとした瞬間。
ガシッ
「な、なに!?」
「はああああああああああああ!!!!!!!!」
突然ルーズメルトが声をあげるのと同時に強い風が吹き始めた。
いや、風というよりは気合といったほうが良いのかともかく見えない何かがルーズメルトから発し始めたのだ。
ボゴン ボゴン ボゴン ボゴン ボゴン
ルーズメルトの体は先程の女らしい体ではなく、男らしいマッチョへと変貌を遂げた。
「な、なんだ、いったいどうなって」
「ふうううん、でやああああ!!!!」
「ぬうおおおおお!!!」
先程まで掴まれていたフェンリルマスクの足を強引に力強く投げ飛ばすルーズメルト。
投げ飛ばされたフェンリルマスクは何とか体制を整え着地する。
「この姿はあんまり好きじゃないんだけどそうも言ってらん無いのよね」
「くそ!化け物かこいつは、だが図体がでかけりゃ勝てるというもんでもねえぞ」
「やってみれば、わかるわよ」
「いくぞ!!」
フェンリルマスクは間合いを詰めて、渾身のとび蹴りを入れる。
続けざまに顔面にひざ蹴りを入れて、ついでに回し蹴りも入れる。
「どうだ!」
「いい攻撃ね」
「なっ、なに効いてないのか!?」
「今度は私の番ね」
ルーズメルトはフェンリルマスクを上回るスピードで間を詰め、フェンリルマスクを殴りつけた。
「ぐほぉ!!!!」
ヒューン ドッカーン
「ぐはっ」
軽々とフェンリルマスクは吹き飛ばされ壁にたたき付けられた。
「あらオジサマ、まさかこれで終わりじゃないわよね?」
「あ、あったりめえだ、まだこれからだぜ」
「よかった」
ヒュン
ルーズメルトが消えた。
バキッ!!
そして、横から突然現れフェンリルマスクを殴りつける。
「ぐおお!!!ぐっ、うおおおおお!!!」
何とか踏ん張り体制を整えて攻撃するフェンリルマスク。
バッ クルン ガツン!!
渾身のかかと落としルーズメルトにお見舞いした。
「・・・今のは少し効いたわ」
「化け物かてめえは、本当になんて耐久力してやがる」
「オジサマもすごいわよ、私のこの姿の攻撃を二回も受けて立っているんですもの、しかも反撃までするんだからすごいわ」
「たしかにいままで戦った中で一番きつい攻撃かもしれねえな」
「オジサマ降参してくれないかしら、私ここまで強いオジサマを殺したくはないのよ」
「馬鹿は休み休み言え、俺はてめえをぶっ殺すと決めたんだ。妻を侮辱されたんだからな」
「もういいやめろ、フェン、それ以上はフェンの命にかかわるんだぞ!!」
「そうですよ!!もう止めましょう!!」
「ふっ、何言ってやがんだどいつもこいつも、まあ見てろってんだ」
「それじゃ仕方が無いからとどめを差してあげるわ!!」
フェンリルマスクがボロボロな状態のためか警戒もせずに真っ直ぐに突っ込んでくるルーズメルト。
「さよならオジサマ!!」
左拳を突き出すルーズメルト。
拳が徐々にフェンリルマスクの顔面に近づいていく。
「見切った!!」
わずかな動作でギリギリのところをかわして前に出るフェンリルマスク。
そしてルーズメルトの心臓の位置に左の掌を押し当てる。
「食らえ!!鎧通し!!!!」
ドックン ドックン ドックン ドック ン ドッ ク ン
静寂が闘技場を包む。
まるで時間が止まってしまったようなそんな感覚だった。
「オジサマ、私の負けね・・ゴフッ!!!!!」
ルーズメルトは盛大に口から血を吐き、ゆっくりと地面に倒れていった。
再び静寂が戻る。
「おい、くそ審判!判定は」
「は、はい!」
審判がルーズメルトに駆け寄り生死を確かめる。
「ルーズメルトの心肺機能停止を確認、勝者フェンリルマスク!!!!!」
うおおおおおおおおおおおお!!!!!!
「へっへっへ、勝ったぜ」
「フェン」
ヒュン バチン!!
突如リザードマンがフェンリルマスクを引っ叩いた。
「・・・な、なにしやがんだよ」
「なにしやがんだよじゃない!なんであんな無理をしたんだ!!あそこでもし死んでいたらどうするつもりだったんだ!!」
「そ、それは」
「フェンを失ったら私はどうやって生きていけばいいんだ。たのむから無茶だけはしないでくれ」
「すまん」
「あのーお取り込み中何なんですが、次の対戦は?」
「無しだ。疲れたから帰る」
「そうですか、ではファイトマネーを受け取りください」
「いや、いらんその金はあの子にでもあげてくれ」
「しかし」
「くどい、俺はあの子の代わりに戦ったに過ぎないんだからいらん」
そういうとフェンリルマスクはふらふらした足取りで闘技場を後にしようとした。
「そうだ、フェンこの子どうするんだ!」
ぴたっと止まる。
「どうしようか?」
「何も考えていなかったのか!?」
「まあ、場の流れで助けちまったからな、まだなんの反応も無いのか?」
「ああ、だいぶ心に深い傷ができているようだ」
「仕方ねえ、助けちまったんだし、ついでに連れて行くか」
「そうだな」
「でしたら、良い精神病院がありますから手配しておきます」
「ああたのんだぜアヌビス」
「ああすまねえ、さっきの金預かっとくわ」
「はい、どうぞ」
こんどこそフェンリルマスクたちは闘技場を後にしたのだった。
「ふふふ、まさかここであの者と出会おうとはな、魔王とそっくりな行動まで取るとは、だが我には関係の無い話だ」
今回の戦いがよっぽど気に入ったのか尻尾をうれしそうに振りながら自室へと戻るデルフィニア。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ここはとある地下にある闘技場。
己のすべてをぶつけ合う場所。
一攫千金を狙える場所。
次なる挑戦者はいったい誰か。
TO BE CONTINUE
11/02/04 16:59更新 / ミズチェチェ
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