第六章 陰謀と祝いの日記(シリアス、ほのぼの、微ギャグ)
コツコツコツコツ・・・・・
大きな通路に響きわたる靴の音。
一人の男がその大きな通路歩いていた。
男の姿は黒いローブを身にまとい、手には青い宝玉を付けた杖を持っている。
しばらく歩き、男は大きな扉の前に立った。
コンコン
2回ほどノックをした。
「・・・入りたまえ」
「失礼します」
ガチャ ギィイイイ バタン
「教団魔導師グレッグル、ただいま帰還いたしました」
グレッグルと名乗った男は片膝をつき頭を下げた。
その先には白髪の頭に白い髭をたくわえた老人が座っていた。
「うむ、良くぞ戻った・・・と言いたいところだがお主が戻ってきたということはエリエール奪還は失敗したのじゃな」
「はっ、申し訳ございません」
「まあよい、元々成功する見込みが少ない作戦だったのだ。少なくともまた一つ魔物を恨む口実ができただけ良しとしようではないか」
「はっ、大主教様」
大主教、それは全世界にある教団の長に当たる人物の事。
大主教は神の教えを広める長であるのと同時に神の声を聞ける唯一の人物でもある。
「さてグレッグルよ、今回の作戦で遭遇した人物で危険と思われる人物はいたか?」
「はっ、やはりエリエールの領主にしてギルドマスター、そしてかつては世界に名を馳せた勇者の子孫でもある。ターキン=レオン、エリエールにおいてもっとも危険な人物と思われます」
「やはりか、かつては勇者と崇められていたというのに、まったく厄介な子孫を残してくれたものだ、なあアルフォンスよ」
大主教は昔の友人思い出すような表情でつぶやいた。
勇者アルフォンス、かつては教団と共に戦い魔物を殲滅せんと戦った男だった。
当時はまだ親魔物派も少なく、魔物は絶対悪と信じられていた時代でもあった。
アルフォンスの実力はすさまじく幾多の聖戦で魔物を葬ってきた。
当時の魔王軍の記録に一番危険な人物として残っているくらいだ。
しかし突然、アルフォンスは勇者をやめると言い出し、エリエールの初代領主として街づくりに没頭していったそうだ。
そういった経緯から教団からは裏切り者のアルフォンスとして記録に残してあり現在でも教団の危険人物指定とされている。
「あの頃のアルフォンスはまさに希望の星といっていいほどだったのだが、今では裏切り者扱い。まったく人生とはわからんものだ」
「大主教様、実は後一人ほど気になる人物がおります」
「ほう、レオン以外に気になる人物がおるのかグレッグルよ」
「はっ、この者は今回の作戦潰した主犯と言ってもいい人物です。まだ駆け出しの冒険者のようですが、いずれは我々教団にとって厄介な人物になるかもしれません」
「その者の名は?」
「ヴァル=フレイヤ」
「!?ヴァル=フレイヤか・・・まさかその名を聞こうとは思いもしなかったよ」
「大主教様?」
「グレッグルよ、お主に新しい命令を与える。お主はヴァル=フレイヤを見張るのじゃ、そして逐一私に報告しておくれ」
「はっ、大主教様のご命令とあらば、しかしなぜ見張るのですか?」
「お主の知るところではない、これは神のお言葉だ」
「・・・はっ、それでは行ってまいります」
グレッグルは何かブツブツとつぶやいた、同時にグレッグルが持つ杖が輝きだしグレッグル自身を包み込んだ。
フッ
グレッグルはその場から消えた。残ったのは机に向かう大主教のみとなった。
「果たして、お主はどちらに味方をするのかな、戦の女神の名を継ぎし者よ」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
エリエールギルド前
「やっと帰ってこれたか」
ギルドの前に姿を現したのは一週間前の依頼で怪我をしたフレイヤだった。
彼女の怪我は本来なら全治一ヶ月なのだが、医者の予想をはるかに上回る回復力でたった一週間で完治させてしまったのだ。
この回復力に担当の医者は驚愕の表情を見せていた。
「思ったより退院が遅れてしまったが、やっと今日から正式な依頼が受けられるんだな」
ガチャ ギィイイイイイ
そう言いつつフレイヤはギルドの扉をゆっくりと開けた。
パン! パパン! パパパパン!
開けたのと同時に中から一斉に破裂音が響き渡った。
フレイヤは何事だと言った顔で驚いていた。
退院おめでとう!!!!!
中には見知った顔と見知らぬ顔の人物達がいた。
「「「退院おめでとう姉貴(フレイヤさん)(フレイヤお姉ちゃん)」」」
まず最初に駆け寄ってきたのはゴブリン三姉妹のカリンとコリンとマリンだった。
三人ともとても嬉しそうな表情をしている。
「退院おめでとさん」
「おめでとうなのじゃ」
次に来たのはレオンとアーニーだった。
「レオン殿、それにアーニー殿これはいったい・・・」
「なあに、単純にフレイヤの退院祝いさ」
「うむ、それにお主が怪我をしたのは元はといえばワシが散策を頼んだせいでこんなことになったのじゃ、せめてもの罪滅ぼしじゃよ」
「そんな、アーニー殿は悪くありません。悪いのは、私です。あの時判断を間違っていなければ、こんなことには・・・」
「まあまあ、とりあえず無事だったんだし、そんなしみったれた話は抜きにしてさ、退院祝いなんだからもっと明るく行こうぜ」
暗くなりかけた雰囲気をレオンは持ち前のいいかげんさで払拭した。
「そうじゃな、とりあえずはパアーっと明るくいこうかのぉ!」
「・・・そうですね」
フレイヤも切り替えることができたのか表情に笑みが戻った。
「よーし第一回!フレイヤの退院祝い&依頼達成パーティを開催するぜ!!!」
イェーイ!!!!!!
「だ、第一回・・・」
「依頼達成はついでだが、今後も怪我をしたりして入院するたびに開いてやるから覚悟しておけよフレイヤ」
ビシッと指を刺しつつ決め込むレオン。
その表情はまさに生き生きした少年の目をしていた。
「さてレオン様、お約束どおり開催を宣言なされたのですからお仕事に戻ってもらいますよ」
「イ、イカロス、な、なあに言ってんだよパーティがこれから始まるんだぜ」
「それで」
「いや、だからさ」
「・・・・・・」(じーーーーー)
「・・・・・・わかった」
がっくりとうな垂れて了承するレオンであった。
「それでは皆様我らは失礼いたします・・・・フレイヤ様、退院おめでとうございます」
そう言ってイカロスはレオンを引きずりながらギルドから出て行った。
「さあて皆の衆、兄様は行ってしまったがワシらだけでも盛り上がっていこうぞ」
イェーイ!!!!!!!
パーティはレオンとイカロスが不在のなか楽しく行われた。
料理はカリンが知り合ったという青年が作ってくれたものでオニギリというものらしい。
ジパング人がよく食べるコメというものを使って作る料理らしい。
一見すると同じ形のものしかないが、食べてみるとそれぞれにいろんな味の具材が入っていてとてもおいしかった。
料理(オニギリ)を食べている最中、見知らぬ人物達が話をかけてきた。
彼らはカリン達が依頼のときにあった人物らしく、その節はお世話になったやら、これからよろしくやらとにこやかに話しかけてきたのである。
パーティもそろそろお開きといった感じの時間になった頃。
「それじゃ最後にフレイヤにプレゼントを渡してしまいにするかのぉ!」
イェーイ!!!!!!!
「プレゼントって、そこまでしていただかなくても」
「いいのじゃ、パーティにプレゼントは付き物なのじゃ」
そうして最後の催し物であるプレゼント贈呈がはじまった。
「まずは、あたしだよ姉貴・・・ハイこれ!!!」
カリンが出してきたのは一枚の紙切れだった。
「・・・まさーじけん?」
「うん!」
そう言って腰に手を当てて満足そうな顔を見せるカリン。
「・・・たぶんマッサージ券と書きたかったんだろうけど、小さい「っ」が抜けてるよカリン」
「・・・ええっ!!!!?」
満足そうな表情から一変して驚愕の表情になる。
その出来事にみんなもどっと笑う。
「笑うなー!!!」
「ふっ、カリンはあわてんぼうだな。でもありがとう」
「・・・うん!!」
ふたたび満足そうな顔に戻ったカリンであった。
「次はあたし、フレイヤさんにこれをプレゼント」
そう言ってコリンが取り出したのは真紅に輝く宝石のついた杖だった。
「これは、ファイヤーロッド?」
「そうです。さすがフレイヤさん物知りですね」
「でも私が知っているファイヤーロッドの宝石はここまで赤くて大きくはなかった」
「そこまでわかるなんてすごいです。実はアーニーさんにお願いして、フレイヤさんにマジックロッドをプレゼントしたいと相談したときに」
ワシがとっておきのマジックロッドを作ってやろう。
「って言って作ってくれたんです」
「ワシもこのパーティを開くだけでは心もとなくてのぉ、ワシで役に立てるならと思って最高のマジックロッドを用意したのじゃ」
「それがこれなんですね」
「うむ、そのファイヤーロッドは特別でな普通のファイヤーロッドと違い宝石が砕けるということはない、さらに威力もファイヤクラスからメガファイヤクラスまで上げることに成功したのじゃ、今回は売り物ではないしあくまでプレゼントじゃ、採算を度外視して作った最強のファイヤーロッドじゃ、恐らくは世界でお主だけが持つ唯一の物になるじゃろう」
「えっ!?そんなすごい物をもらうわけには」
「いいんじゃ、ワシが好きでやったのじゃ気にしないでもらうのじゃ」
「しかし」
「どうしても納得がいかないのなら今後の依頼で活躍してもらえればいいのじゃ。それで手を打ってもらえんかのぉ」
「・・・わかりました」
「ちなみにそのファイヤーロッドの名前はメテオロッドじゃ、大事にしておくれ」
「ありがとうございます」
「フレイヤさん、一応提案したのはあたしですからね」
「うん、ありがとうコリン」
「えへへー」
満足そうな笑みを浮かべたコリンであった。
「最後は、あたしだよ、フレイヤお姉ちゃん」
控えめに出てきたのはマリンだった。
そしてその隣にはサイクロプスの少女もいた。
「マリン、その隣の子は?」
「その、あたしの友達でね、アレシアっていうの」
「・・・はじめまして・・・」
ぺこりと頭を下げるアレシア。
「こちらこそ」
つられてぺこりと頭を下げるフレイヤ。
「その、あたし達からフレイヤお姉ちゃんに、これをプレゼントします」
そう言って、二人で後ろ手に隠して持っていた剣を出してきた。
フレイヤは剣を手に取り鞘から取り出した。
「これはロングソード」
「うん、でもね、ただのロングソードじゃないんだよ。ねっ、アレシア」
こくり
たしかに以前市販で売っていたロングソードを握ったことがあったが、こんなに軽くはなかった。
それに少し長めに作られているみたいだ。
「それはね、アレシアにお願いして作ってもらった剣なんだ。フレイヤお姉ちゃんの剣が折れたって聞いたから、だからお願いして作ってもらったの」
「・・・そのけん、かるくてながめにつくってる・・・きれあじもよくした・・・ちょっとじゃおれない・・・」
えっへん
そういうポーズで胸を張るアレシア。
「・・・ちょっと試しに使ってみてもいいかな?」
こくり
「それではみなさん、少し下がってください」
みんながフレイヤから距離を取る。
フレイヤは剣を構える。
精神を集中して、攻撃の態勢を整えていく。
剣の攻撃で基本的な技、けさ斬りを放つ。
ひゅん
心地よい風切り音がなる。
フレイヤは続けざまに返し斬り、突き、横薙ぎなど様々な角度から剣撃を放つ、様々な攻撃を終えた後静かに鞘におさめた。
パチパチパチパチ・・・
フレイヤが剣を収めた後、見ていた人たちから拍手をもらった。
「とてもいい剣だ。こんなに扱いやすい剣は初めて使ったよ。でもこんなにいい剣を本当にもらっていいのか?」
こくり
「・・・うめあわせは、いらいで・・・」
「わかった。大事に使わせてもらうよ」
「・・・ふぁるこんぶれーど・・・」
「えっ?」
「・・・なまえ・・ふぁるこんぶれーど・・・」
「ファルコンブレード、いい名だ。ありがとうアレシア、マリン」
えっへん
二人同時に胸を張る。
「さあ、これでプレゼント贈呈は終わりじゃ。最後の閉めに皆で乾杯じゃー」
「でもアーニー殿、何に対して乾杯するんですか?」
「もちろん、お主の冒険者生活のスタートに対してじゃ、よし皆グラスを持ったかのぉ?・・・うむ持ったな。それでは乾杯なのじゃ」
乾杯!!!!!!!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こうして私の退院祝い&依頼達成パーティは終わった。
これだけのことをしてもらったのだから、恩返しをしなくては罰が当たってしまいそうだ。
早く皆の期待に応えられるような冒険者になりたい。
それが今一番私が求めているものかもしれない。
○月×日 ヴァル=フレイヤ
大きな通路に響きわたる靴の音。
一人の男がその大きな通路歩いていた。
男の姿は黒いローブを身にまとい、手には青い宝玉を付けた杖を持っている。
しばらく歩き、男は大きな扉の前に立った。
コンコン
2回ほどノックをした。
「・・・入りたまえ」
「失礼します」
ガチャ ギィイイイ バタン
「教団魔導師グレッグル、ただいま帰還いたしました」
グレッグルと名乗った男は片膝をつき頭を下げた。
その先には白髪の頭に白い髭をたくわえた老人が座っていた。
「うむ、良くぞ戻った・・・と言いたいところだがお主が戻ってきたということはエリエール奪還は失敗したのじゃな」
「はっ、申し訳ございません」
「まあよい、元々成功する見込みが少ない作戦だったのだ。少なくともまた一つ魔物を恨む口実ができただけ良しとしようではないか」
「はっ、大主教様」
大主教、それは全世界にある教団の長に当たる人物の事。
大主教は神の教えを広める長であるのと同時に神の声を聞ける唯一の人物でもある。
「さてグレッグルよ、今回の作戦で遭遇した人物で危険と思われる人物はいたか?」
「はっ、やはりエリエールの領主にしてギルドマスター、そしてかつては世界に名を馳せた勇者の子孫でもある。ターキン=レオン、エリエールにおいてもっとも危険な人物と思われます」
「やはりか、かつては勇者と崇められていたというのに、まったく厄介な子孫を残してくれたものだ、なあアルフォンスよ」
大主教は昔の友人思い出すような表情でつぶやいた。
勇者アルフォンス、かつては教団と共に戦い魔物を殲滅せんと戦った男だった。
当時はまだ親魔物派も少なく、魔物は絶対悪と信じられていた時代でもあった。
アルフォンスの実力はすさまじく幾多の聖戦で魔物を葬ってきた。
当時の魔王軍の記録に一番危険な人物として残っているくらいだ。
しかし突然、アルフォンスは勇者をやめると言い出し、エリエールの初代領主として街づくりに没頭していったそうだ。
そういった経緯から教団からは裏切り者のアルフォンスとして記録に残してあり現在でも教団の危険人物指定とされている。
「あの頃のアルフォンスはまさに希望の星といっていいほどだったのだが、今では裏切り者扱い。まったく人生とはわからんものだ」
「大主教様、実は後一人ほど気になる人物がおります」
「ほう、レオン以外に気になる人物がおるのかグレッグルよ」
「はっ、この者は今回の作戦潰した主犯と言ってもいい人物です。まだ駆け出しの冒険者のようですが、いずれは我々教団にとって厄介な人物になるかもしれません」
「その者の名は?」
「ヴァル=フレイヤ」
「!?ヴァル=フレイヤか・・・まさかその名を聞こうとは思いもしなかったよ」
「大主教様?」
「グレッグルよ、お主に新しい命令を与える。お主はヴァル=フレイヤを見張るのじゃ、そして逐一私に報告しておくれ」
「はっ、大主教様のご命令とあらば、しかしなぜ見張るのですか?」
「お主の知るところではない、これは神のお言葉だ」
「・・・はっ、それでは行ってまいります」
グレッグルは何かブツブツとつぶやいた、同時にグレッグルが持つ杖が輝きだしグレッグル自身を包み込んだ。
フッ
グレッグルはその場から消えた。残ったのは机に向かう大主教のみとなった。
「果たして、お主はどちらに味方をするのかな、戦の女神の名を継ぎし者よ」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
エリエールギルド前
「やっと帰ってこれたか」
ギルドの前に姿を現したのは一週間前の依頼で怪我をしたフレイヤだった。
彼女の怪我は本来なら全治一ヶ月なのだが、医者の予想をはるかに上回る回復力でたった一週間で完治させてしまったのだ。
この回復力に担当の医者は驚愕の表情を見せていた。
「思ったより退院が遅れてしまったが、やっと今日から正式な依頼が受けられるんだな」
ガチャ ギィイイイイイ
そう言いつつフレイヤはギルドの扉をゆっくりと開けた。
パン! パパン! パパパパン!
開けたのと同時に中から一斉に破裂音が響き渡った。
フレイヤは何事だと言った顔で驚いていた。
退院おめでとう!!!!!
中には見知った顔と見知らぬ顔の人物達がいた。
「「「退院おめでとう姉貴(フレイヤさん)(フレイヤお姉ちゃん)」」」
まず最初に駆け寄ってきたのはゴブリン三姉妹のカリンとコリンとマリンだった。
三人ともとても嬉しそうな表情をしている。
「退院おめでとさん」
「おめでとうなのじゃ」
次に来たのはレオンとアーニーだった。
「レオン殿、それにアーニー殿これはいったい・・・」
「なあに、単純にフレイヤの退院祝いさ」
「うむ、それにお主が怪我をしたのは元はといえばワシが散策を頼んだせいでこんなことになったのじゃ、せめてもの罪滅ぼしじゃよ」
「そんな、アーニー殿は悪くありません。悪いのは、私です。あの時判断を間違っていなければ、こんなことには・・・」
「まあまあ、とりあえず無事だったんだし、そんなしみったれた話は抜きにしてさ、退院祝いなんだからもっと明るく行こうぜ」
暗くなりかけた雰囲気をレオンは持ち前のいいかげんさで払拭した。
「そうじゃな、とりあえずはパアーっと明るくいこうかのぉ!」
「・・・そうですね」
フレイヤも切り替えることができたのか表情に笑みが戻った。
「よーし第一回!フレイヤの退院祝い&依頼達成パーティを開催するぜ!!!」
イェーイ!!!!!!
「だ、第一回・・・」
「依頼達成はついでだが、今後も怪我をしたりして入院するたびに開いてやるから覚悟しておけよフレイヤ」
ビシッと指を刺しつつ決め込むレオン。
その表情はまさに生き生きした少年の目をしていた。
「さてレオン様、お約束どおり開催を宣言なされたのですからお仕事に戻ってもらいますよ」
「イ、イカロス、な、なあに言ってんだよパーティがこれから始まるんだぜ」
「それで」
「いや、だからさ」
「・・・・・・」(じーーーーー)
「・・・・・・わかった」
がっくりとうな垂れて了承するレオンであった。
「それでは皆様我らは失礼いたします・・・・フレイヤ様、退院おめでとうございます」
そう言ってイカロスはレオンを引きずりながらギルドから出て行った。
「さあて皆の衆、兄様は行ってしまったがワシらだけでも盛り上がっていこうぞ」
イェーイ!!!!!!!
パーティはレオンとイカロスが不在のなか楽しく行われた。
料理はカリンが知り合ったという青年が作ってくれたものでオニギリというものらしい。
ジパング人がよく食べるコメというものを使って作る料理らしい。
一見すると同じ形のものしかないが、食べてみるとそれぞれにいろんな味の具材が入っていてとてもおいしかった。
料理(オニギリ)を食べている最中、見知らぬ人物達が話をかけてきた。
彼らはカリン達が依頼のときにあった人物らしく、その節はお世話になったやら、これからよろしくやらとにこやかに話しかけてきたのである。
パーティもそろそろお開きといった感じの時間になった頃。
「それじゃ最後にフレイヤにプレゼントを渡してしまいにするかのぉ!」
イェーイ!!!!!!!
「プレゼントって、そこまでしていただかなくても」
「いいのじゃ、パーティにプレゼントは付き物なのじゃ」
そうして最後の催し物であるプレゼント贈呈がはじまった。
「まずは、あたしだよ姉貴・・・ハイこれ!!!」
カリンが出してきたのは一枚の紙切れだった。
「・・・まさーじけん?」
「うん!」
そう言って腰に手を当てて満足そうな顔を見せるカリン。
「・・・たぶんマッサージ券と書きたかったんだろうけど、小さい「っ」が抜けてるよカリン」
「・・・ええっ!!!!?」
満足そうな表情から一変して驚愕の表情になる。
その出来事にみんなもどっと笑う。
「笑うなー!!!」
「ふっ、カリンはあわてんぼうだな。でもありがとう」
「・・・うん!!」
ふたたび満足そうな顔に戻ったカリンであった。
「次はあたし、フレイヤさんにこれをプレゼント」
そう言ってコリンが取り出したのは真紅に輝く宝石のついた杖だった。
「これは、ファイヤーロッド?」
「そうです。さすがフレイヤさん物知りですね」
「でも私が知っているファイヤーロッドの宝石はここまで赤くて大きくはなかった」
「そこまでわかるなんてすごいです。実はアーニーさんにお願いして、フレイヤさんにマジックロッドをプレゼントしたいと相談したときに」
ワシがとっておきのマジックロッドを作ってやろう。
「って言って作ってくれたんです」
「ワシもこのパーティを開くだけでは心もとなくてのぉ、ワシで役に立てるならと思って最高のマジックロッドを用意したのじゃ」
「それがこれなんですね」
「うむ、そのファイヤーロッドは特別でな普通のファイヤーロッドと違い宝石が砕けるということはない、さらに威力もファイヤクラスからメガファイヤクラスまで上げることに成功したのじゃ、今回は売り物ではないしあくまでプレゼントじゃ、採算を度外視して作った最強のファイヤーロッドじゃ、恐らくは世界でお主だけが持つ唯一の物になるじゃろう」
「えっ!?そんなすごい物をもらうわけには」
「いいんじゃ、ワシが好きでやったのじゃ気にしないでもらうのじゃ」
「しかし」
「どうしても納得がいかないのなら今後の依頼で活躍してもらえればいいのじゃ。それで手を打ってもらえんかのぉ」
「・・・わかりました」
「ちなみにそのファイヤーロッドの名前はメテオロッドじゃ、大事にしておくれ」
「ありがとうございます」
「フレイヤさん、一応提案したのはあたしですからね」
「うん、ありがとうコリン」
「えへへー」
満足そうな笑みを浮かべたコリンであった。
「最後は、あたしだよ、フレイヤお姉ちゃん」
控えめに出てきたのはマリンだった。
そしてその隣にはサイクロプスの少女もいた。
「マリン、その隣の子は?」
「その、あたしの友達でね、アレシアっていうの」
「・・・はじめまして・・・」
ぺこりと頭を下げるアレシア。
「こちらこそ」
つられてぺこりと頭を下げるフレイヤ。
「その、あたし達からフレイヤお姉ちゃんに、これをプレゼントします」
そう言って、二人で後ろ手に隠して持っていた剣を出してきた。
フレイヤは剣を手に取り鞘から取り出した。
「これはロングソード」
「うん、でもね、ただのロングソードじゃないんだよ。ねっ、アレシア」
こくり
たしかに以前市販で売っていたロングソードを握ったことがあったが、こんなに軽くはなかった。
それに少し長めに作られているみたいだ。
「それはね、アレシアにお願いして作ってもらった剣なんだ。フレイヤお姉ちゃんの剣が折れたって聞いたから、だからお願いして作ってもらったの」
「・・・そのけん、かるくてながめにつくってる・・・きれあじもよくした・・・ちょっとじゃおれない・・・」
えっへん
そういうポーズで胸を張るアレシア。
「・・・ちょっと試しに使ってみてもいいかな?」
こくり
「それではみなさん、少し下がってください」
みんながフレイヤから距離を取る。
フレイヤは剣を構える。
精神を集中して、攻撃の態勢を整えていく。
剣の攻撃で基本的な技、けさ斬りを放つ。
ひゅん
心地よい風切り音がなる。
フレイヤは続けざまに返し斬り、突き、横薙ぎなど様々な角度から剣撃を放つ、様々な攻撃を終えた後静かに鞘におさめた。
パチパチパチパチ・・・
フレイヤが剣を収めた後、見ていた人たちから拍手をもらった。
「とてもいい剣だ。こんなに扱いやすい剣は初めて使ったよ。でもこんなにいい剣を本当にもらっていいのか?」
こくり
「・・・うめあわせは、いらいで・・・」
「わかった。大事に使わせてもらうよ」
「・・・ふぁるこんぶれーど・・・」
「えっ?」
「・・・なまえ・・ふぁるこんぶれーど・・・」
「ファルコンブレード、いい名だ。ありがとうアレシア、マリン」
えっへん
二人同時に胸を張る。
「さあ、これでプレゼント贈呈は終わりじゃ。最後の閉めに皆で乾杯じゃー」
「でもアーニー殿、何に対して乾杯するんですか?」
「もちろん、お主の冒険者生活のスタートに対してじゃ、よし皆グラスを持ったかのぉ?・・・うむ持ったな。それでは乾杯なのじゃ」
乾杯!!!!!!!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こうして私の退院祝い&依頼達成パーティは終わった。
これだけのことをしてもらったのだから、恩返しをしなくては罰が当たってしまいそうだ。
早く皆の期待に応えられるような冒険者になりたい。
それが今一番私が求めているものかもしれない。
○月×日 ヴァル=フレイヤ
11/01/27 18:00更新 / ミズチェチェ
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