連載小説
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異形と銀のマシン
都心からやや外れたビル街、そこに住む広瀬翔一はしがない探偵である、今日も今日とて仕事が来ない彼は街を何時も通りだと平和を謳歌していた。

一方その頃、魔物娘たちは観測できた異世界に渡る手段を整え、新たな出会いに心を躍らせていた――自分たち以外に異世界に狙いを定める輩を警戒しながら



零話『始動』

「明日……いよいよ決行の日ね」

薄ら暗い部屋、怪しさを備えた部屋に置かれた丸型のテーブルを挟んで複数人の女たちが中央の水晶玉を見据えていた。

「いくら事前にある程度の準備を進めているとは言え、『彼ら』からすればワシらは異形の怪物であることには変わりないからのう」

やや心配そうにそう呟くのは山羊の角、足を持ち、風変わりな髑髏の髪飾りを両端に留めた口調に似合わぬ幼き少女であった。
その落ち着かない心持ちを表すかのように手に持った鎌の柄の底をグリグリと磨きぬかれた床に擦り合わせている

「未だ教団の不穏な噂も絶えませんからね……行動は早いほうがいいでしょう」

横から鎧を着込み、首筋に鉄製のチョーカーを着けた騎士が相槌をうつ、凛とした雰囲気を纏いながらも、今は眉をハの字に歪めて疲労の色を滲ませている

「一応、何か罠が仕掛けられていないかも調べてみたけど、今のところは何も見つからないわ」

次に、人ほどの大きさもある赤い蛇を側に控えた豪奢な民族衣装を纏った褐色肌の女性が首を振って答える、圧倒的な風格を持つ彼女には、その何気ない動作一つにも息を飲ませるようなものを持っていた。

「でも……本当にいいのでしょうか〜? いくら時間が無いといっても、もし失敗したら……」

やや間延びした声で不安げに口ごもる女性は、ひと目で美しいとわかる青々とした羽根を持っており、花飾りなど、自然物の衣服、装飾品を身に付け、森の女神の如き神聖さを保っていた。

「何はともあれ、この最初の接触が、私たちの今後を大きく左右するわ……気を引き締めて行きましょう?」

締めくくるようにそう言ったのは髪、肌が雪よりも白く染まり、光を発しているのかと錯覚するほどの燃え盛るルビー色の瞳が特徴的な、ともすれば同性ですら虜にしてしまいかねない程の魔性の魅力を放つ少女だった。

「私たち『魔物』の……何より、より淫らで大きな愛のために♪」

楽しげに呟く少女の視線の先の水晶玉、そこには天を突くほどに高くそびえ立つ直方体の建物の群れ――ビルの乱立する街があった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


『ククク……馬鹿な奴らだ。『異世界』の存在に目をつけている者はキサマらだけだと思っているのか?』

そんな彼女らの様子を、また別の遠くの場所から見ているものもいた。
誰もいない空間の中、一人の男の声が厳かに響く

『見ているが良い……異世界に復活し、再び恐怖の権現として返り咲く余の姿を!!』

意気揚々とした調子で、男の笑い声は誰にも聞かれることなく一晩中続いた。

一話『復活』16/06/13 01:49
ニ話『初陣』16/06/16 00:50
三話『接触』16/06/19 21:20
四話『登場』16/09/24 17:56

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