連載小説
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3.砦での出来事
「第1部隊、ただいま戻りました」

司令室ではアヌビスが地図を広げ、戦況の整理を行っていた。

「オリビア、お疲れ様。」
「報告ですが…」

オリビアが報告しようとすると、アヌビスは顔をしかめて言った。

「…その話し方はやめてって言ってるじゃない…」
「む……了解だ、アネット」
オリビアとこのアヌビスは昔からの友人で、名前はアネットと言った。
オリビアは「司令官だから」と敬語で話そうとするのだが、アネットは敬語を使われるのが苦手なようで、部下がいないなら敬語はやめてくれと言っていたのだった。

「それで、報告は?」
「村人は全員無事だった。偵察部隊も怪我こそしていたが、まあ大丈夫だろう」

アネットはオリビアからの報告をレポートにまとめだした。

「無事だったのね。それで?」
「教会に追われていた人物を一人保護した」
「追われていた人物って?」
「ああ、救護部隊が手当をしている」
「教会の奴らじゃないのね?」
「奴らに追われていたし傷も負っていた形跡がある。その可能性は低いだろう」
「そう…まぁ、しばらくは様子を…」


ガシャーン…


遠くで大きな物音が聞こえた。
 
「見た方が…」
「……まさか」

しばらくすると、司令室に魔女の一人が入ってきた。

「た、た、大変です!」
「何があった?」
「つれてきた一人が、目を覚ましたとたんに暴れだして…!」
「それって…オリビアが見つけた?」
「はい、怪我で運び込まれた、あの青年です!」
「ちっ…!何て事だ…」

オリビアが連れてきたあの男に違いなかった。

「すまない、私の失態だ。私がなんとかしよう」
「ええ、くれぐれも気をつけて…」

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「被害状況は?」
「今のところ被害者はいません!」

被害者はいない…それが少し気になった。教会の手先ならば魔物達をそのままにする訳が無い。やはり教会とは関係ないのだろうか?

「どこに行ったかわかるか?」
「わかりませんが…出口は全て封鎖したので、外に出た事はまず無いと思われます」

とりあえずはあの青年を捜し出さなければならない。


しばらく砦の中を歩き回ったが、足取りが全くつかめない。物が壊れたりしている訳でもない。
もう逃げてしまったと言う訳ではなさそうだが…

「…む?」
「どうしました?」
「ちょっと…静かに…」

何か物音がする…これは…

「ここか…」

食料庫…その扉の中から、わずかに物音が聞こえた。
オリビアは剣を抜くと、ゆっくりと扉を開いて中を覗き込んだ。
男が部屋の隅でしゃがんでいた。オリビアに気がつくと、ふらつきながらも慌てて立ち上がり、食料庫に落ちていた棒を拾うと彼女に向かって構えた。
しかし、その手は小さく震えており、目には怯えの色が浮かんでいる。

「このっ…」
「待て」

魔女が青年に攻撃をしようと杖を構えるするのをオリビアは手で制した。

「やはり、敵意があるわけではないようだ。おそらく怯えているだけだろう」

そう言うと、オリビアは剣を納め、鎧を脱ぎだした。
鎧を脱ぎインナーだけになると、オリビアは最後に剣を床においた。

「ちょっ、危ないですよ!」
「……?……!?」

青年も戸惑っているようで、動揺の色が浮かんでいた。
オリビアは青年に近づくと、穏やかに言った。

「お前もとりあえず落ち着け」

「……▲☆※&#;&#;£?」

しかし、青年の返した言葉は、この国のものではない、聞いた事の無い言葉だった。

「異国の人…?」
「言葉は通じない、か…」

オリビアは食料庫にあったパンを2つ取り出し、1つを青年の足下に放り投げた。

「食え」

そう言うと、もう一つのパンをむしゃむしゃと食べ始め、青年に食べ物だと見せた。
青年は最初は戸惑っていたが、よほど空腹だったのか勢い良く食べ始めた。

「…やはり、敵と言う訳ではなさそうだな」
「…じゃあ、私アネット様に知らせてきます」
「ああ、頼む。こいつが落ち着いたら連れて行く絡まっているように言っておいてくれ」
「はい」

魔女はそう言うと司令室へと走って行った。
11/02/27 19:12更新 / ホフク
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■作者メッセージ
うん。駄文。

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