幼女の街の幼女と怪人
｢そ、そんな……！！｣
｢ひどい、誰がこんな事を……！？｣
｢くそっ、こんな事が許されてよいのか……！？｣
人々が一日の仕事を終え、大勢が買い出しの為に市場に足を延ばす時間。本来ならば、笑顔と心温まる会話で満たされているはずのその空間は、今や悲鳴と嗚咽の声に満ちていた。
｢仕方ないでしょう、今日はピーマンとほうれん草が凄く安いんだから。好き嫌いする子は素敵なお兄ちゃんを見つけられないわよ？｣
｢サバトにも予算というものがあるんです。 いい加減人参ぐらいは食べられるようになって下さい｣
――主に、幼い魔物達。そしてフェアリーにゴブリンなど、いわゆるサバトに縁のありそうな魔物達の。
そう、市場のどの店もピーマン、ほうれん草ににんじんといった……いわゆる幼女が苦手とするような食品ばかりが、価格破壊とも言えるような値段で売られているのだ。
逆に、どういった訳なのか。それ以外の食品はいつもよりも割高になってしまっている。
となれば、家計を預かる者達が選択する行動は一つ。
｢今晩はこれで炒め物にしましょう｣
｢いやぁぁぁ……っ！！？｣
｢せめて、せめてシチューに……！！｣
それらを使った料理を、夕食のメインディッシュにすること。
幼女達の至福の時間である晩ごはんが、自分の苦手な食材で埋め尽くされるのだ。彼女が絶望するには、それだけで十分過ぎたと言えるだろう。
だが、悪夢はそれだけでは終わらなかった。
｢ねぇママ何でそんなにいっぱい買うの！？また使いきる前に腐らせてパパに呆れられちゃうよ！？｣
｢えー、だって安いし……｣
そう、買い溜めである。
店頭価格とは、基本的に需要と供給のラインがクロスした場所によって決められるもの。しかし、野菜の需要量が何のイベントもなく数日で激変したとは考えにくい。即ち、商品の在庫はそれこそ腐る程あるのだろう。
自分たちとは別の家庭が、全ての嫌いなお野菜を買い占めてくれないかと祈るものの。商品は棚が薄くなるたびに、次から次へと補充されてゆく。
せっせと店の奥から商品を補充する、いつも飴をくれる優しい店員のお姉さん達が、今日ばかりは反サバト派の手先にすら見えてしまうのだった。
ともかく、もはやこれは一日や二日で消費しきれる量ではない。
幼女達は明日からの食卓を想像し、もはや声を上げる気力さえ奪われ……方々で滂沱の涙を流しながら地面に倒れ伏していた。
｢ふはっ、フハハハハハッ……！！｣
そんな幼女達の頭上に、胡散臭い哄笑が響き渡った。
その声に聞き覚えのある幼女達が、ハッと顔を上げる。
――まさか、また『ヤツ』が……！？
｢いた！あそこよ！｣
とあるサキュバス(幼女)が指差したのは、市場中央の時計台、その頂点。
そこにいたのは。
｢怪人、ロリコーン……っ！｣
月光に輝く金髪。背にはマントをなびかせ、目元を白いマスクで隠した正装の男。
ステッキを手に持ち、背筋を伸ばした姿はさながら舞踏会に向かう貴族のようだが……幼女達から向けられる視線は憧れのそれではなく、敵意の籠った涙目のものである。
男は芝居がかった動作でマントを翻し、よく通る声で幼女達に語りかける。
｢やあやあ、ご機嫌如何かな我が愛しの幼女達よ！喜ぶといい、君達は一週間もしないうちに、好き嫌いのない模範的健康幼女になることができるのだ……！｣
｢やっぱりお前の仕業だったのか……！｣
｢どうしていっつもあたしたちにいじわるするの！？｣
アマゾネス(幼女)やミノタウロス(幼女)といった、血気盛んな幼女達が怪人に喰ってかかる。
自らを怪人ロリコーンと名乗る彼は、遡る事数か月前に突如としてこの町に現れ、今回のような幼女たちへの許しがたい行為を繰り返しているのだった。
｢どうして、だと……？私は君達幼女を愛している。好きな相手には意地悪をしたくなるものだという事を知らないのかね！？｣
｢っ、なんて、はた迷惑な……！｣
そのような理由で、私たちはこれ程までに酷い仕打ちを受けなければならないのか。幼女達は怪人が覗かせたあまりの狂気に、その未成熟な身体を震え上がらせる。
さらに、この怪人が真に恐ろしいのは。
｢あら、怪人ロリコーンさん。どうやってかは知りませんが、いつもお野菜を安くして頂いてありがとうございます｣
｢うむ、お前という仮想敵のお蔭で、わが娘も立派な戦士に育っている。礼を言うぞ｣
｢フハハ、礼には及ばん！幼女達が健やかに、かつ元気でいる事こそが、私の幸せなのだから……！｣
何故か母親や家計を預かる立場の者からは、非常に好印象を持たれているのだ……！
幼女達が頼るべき最後の砦が、既に敵に懐柔されている。これに勝る絶望があるだろうか？
ロリコーンは勝利の哄笑を響かせながら、絶望に打ちひしがれた幼女達の顔を眺める。
笑っている幼女達はもちろんの事美しいが、涙目でぷるぷるしている幼女達もまた乙なものだ。お、ケリーさんの家のマリちゃんはまだ此方を睨み付けている。逞しくなったな。カルネさんの家のドルチェちゃんは、少し背が伸びたか――
｢そこまでです！｣
そんなロリコーンの思考は、鈴の鳴るような美しい幼女の声によって遮られた。
｢ぬぅ、何奴！？｣
ロリコーンが、背後から聞こえた声に誰何の声を上げると。そこには月の光を背に受け、建物の屋根に立つ幼女の影一つ。
｢皆さん、お待たせしました！｣
諦める事を知らない、その溌剌とした声が。
ぴしっ！と決めた、その可愛らしいポーズが。
ふりふりのフリルに彩られた、可愛らしい衣装と杖が。
ダメージヘアという単語とは無縁であろう腰まで伸びたサラサラの金髪と、そのルビーのような瞳が――
彼女という存在が、絶望に沈んでいた幼女達の五感ひとつひとつに認識されるたび、その顔ににわかに光が戻ってゆく。
｢愛と魔法で悪を討つ――｣
そんな幼女達の視線を一身に受けながら、くるくると回り、名乗りを上げる。
そう。
彼女こそは、この街に住む幼女達の最後の希望。
｢魔法幼女ラブリー☆ウィッチ、ただいま参上！｣
魔法幼女ラブリー☆ウィッチなのである――！！
｢おのれ我が宿敵ラブリー☆ウィッチ……っ！またしても私の邪魔をしようというのか！？｣
｢当然です！幼女達への非道行為、今日という今日こそは終止符を打たせて貰います！｣
びしぃっ！と愛用の杖――銘『ラブリー☆ステッキ』を突きつけるラブリー☆ウイッチ。その気迫が顕現したかのように。眩い閃光、そしてバチバチという激しい音を立て、彼女の周囲に雷が集まり始める。
やがてその雷は束となり、更に収束し――まるで神話の巨人が扱うようなサイズの、巨大な槍の姿を形作った。
｢『束なれ、幾千もの雷――貫け、サンダースピア』っ！！｣
ラブリー☆ウイッチの詠唱が終わると共に、雷の槍は放たれた。目標はもちろん、怪人ロリコーン。
だが、彼はあろうことか時計台の頂上からふわりと身を虚空に投げ――そして、空中に静止した。
目標を失った雷の槍は時計台そのものへと衝突し、霧散した。雷系統の魔法は、生物に対して非常に有効なダメージを与える一方で、無機物に対してはその効力が半減してしまう。
｢フハッ、フハハハハ……！そんな距離からの直線的な魔法に、この私がみすみす当たると思っているのかね！？｣
彼の背になびくマントには幾何学的な紋章がいくつも刻まれており、見る者が見れば、それが風を操る魔導具である事が分かるだろう。そのマントの力で風を操り、怪人ロリコーンは宙に静止しているのだ。
『にしし、勿論そんな甘い事考えてないよ？』
｢――何？｣
その不敵な言葉は、ラブリー☆ウィッチの首元。人形台の大きさに変化している使い魔から発せられた。
その台詞に疑問と同時、背後に魔力の気配を感じ、ハッと背後を振り返る怪人ロリコーン。その目に飛び込んできたものは。
彼の背後から迫り来る、幾つもの、幾つもの――『ファイヤーボール』。高密度かつ広範囲なそれは、さながらそびえ立つ炎の壁のよう。
――二人が同時に、別々の呪文を詠唱していたのか……！
雷の槍は囮。
彼女は、大火力かつ派手な魔法で彼の注意をそちらに集め。使い魔のファミリアが同時に密かに放っていた大量の炎弾を軌道操作し、彼の背後から襲わせたのだ。
ロリコーンは慌てて回避行動に移る。自らの体に風を纏い、加速、軌道変更、急停止。宙を描く自らの軌道を出鱈目に変化させ、追尾してくる炎の弾を躱し、避け、掻い潜り。それでも振り切れないいくつかは、自らのステッキから発生させた水流で相殺させてゆく。
そして。
｢……ふぅ、今のはかなり肝を冷やしたぞ｣
あの弾幕を、防ぎきった。
｢相変わらず、びっくりするぐらいしぶといですね……｣
｢フハハ、そう言う貴様達はまた腕を上げたようだな……！｣
杖に跨ったラブリー☆ウイッチがふわりと夜空へと浮かびあがり、怪人ロリコーンと対峙する。
一体彼は何者なのか。彼のマントやステッキが、見るだけで分かる程の上級魔導具である事を差し引いても……並の術者に防げるような攻撃では、ないはずなのだが。
｢だが、未だ我が目的は達成されていない……故に捕まる訳にはいかないのでな。今回も逃げ切らせて貰うぞ……！｣
｢待ちなさい！今日という今日は、絶対捕まえてみせますっ！｣
怪人ロリコーンは身を翻し、一瞬でトップスピードに。それを追うラブリー☆ウイッチも逃がすまいと速度を上げる。
そして繰り広げられる魔法合戦。
炎の赤色、水の青色、雷の白色、風の緑色。
夜空というキャンパスに、魔法という名の絵の具をばら撒きながら。
怪人と魔法幼女は、空を駆ける。
――――――――――――――――――――
『幼女の街』キュレポップ。住民の実に7割が幼女で構成されているこの街は、魔灯花の国章を持つ魔界国家『フラヴァリエ』の主要都市の一つです。
そんなこの街には、一つの大きな特徴があります。住民の過半数が幼女であるが故に、その公務のほとんどをこの街のサバト支部が請け負っているのです。
｢はぁぁ……｣
そんなサバトの本部で、私――リュガミエル・ガトーショコラは、大きなため息をついていました。
昨日こそは宿敵、怪人ロリコーンに一泡吹かせられると思ったのに。まさか、あのタイミングから、あの数の火球を全て避けきられるなんて。
脳内で行われる昨晩の反省会。私達も実力は上がっているはずのに、なぜ毎度毎度こうもあと一歩のところで逃げられてしまうのでしょう。机に突っ伏し、肩まである栗色の髪の毛をくるくると弄りながら、思わず溜息を零してしまいます。
｢あれ、リュガお腹いたいの？お菓子全部たべちゃうよ？｣
そう私に話しかけてきたのは、我らがサバトを率いるバフォメットのミリア様。すなわち、この街で一番偉いお方です。
ぷにぷにすべすべのお肌、肉球で掴んだお菓子を幸せそうに頬張るその笑顔。全ての幼女が見習うべき愛くるしい姿ですね。
｢……お腹は大丈夫です。ミリア様みたいにお腹丸出しで寝たりしませんから」
｢マスターったら昨日もあの怪人に逃げられて、それからずっと落ち込んでるんですよー｣
｢ウィルも一緒に戦ってたんですから、貴女も少しは落ち込んで下さいっ！｣
ばんばんっ!と机を叩く私の言葉を聞いてもどこ吹く風なのは、ミリア様と一緒にお菓子をパクついている私の使い魔、ファミリアのウィルマ。
そうです、昨晩は私の首元あたりに人形サイズでしがみついていたあの娘です。
｢あはは、相変わらずリュガはあの人に夢中だねー｣
｢べ、別に夢中とかそういうのじゃないです！私はあくまで街を守る活動の一環として――！｣
｢ぱくっ。んー……でも、お兄ちゃん達からは、あの人無理して捕まえなくていいって言われてるよ？｣
｢……それは、わかってるんですけど……｣
机の上に広げられたお菓子の中からチョコチップクッキーを一つ拝借し、口の中に放り込みます。はぁ、美味しい。
目の前でお菓子を口いっぱいに頬張っているミリア様。彼女はこう見えて、かつては魔王軍の突撃部隊として最前線で教団の魔界遠征部隊と戦ってきた猛者でもあるのです。
そのミリア様が率いるサバトの、治安維持実働部隊においては一番の実力を持つ私とウィルのコンビが、幾度となく取り逃がす相手。
彼の話はこの街どころか、ミリア様のお兄さま方……国の中枢にいる方々の耳にも及んでいるというのに、あの怪人に対して本格的な対策を取ろうとしません。
なぜならば――
｢あの人、別に犯罪とかしてる訳じゃないしねー｣
そうなんです。
もう見た目から口調から、明らかに不審者ではあるのですが、彼が何か罪を犯したという証拠は出てきていません。今回のお野菜の価格低下に関しても、何者かが違法な介入を行なった形跡は見られなかったといいます。昨日の資料を見る限りでは、『正常な市場効果の結果、たまたまお野菜がお安くなった日に怪人がそれっぽい口上で出現しただけ』にしか見えないのだとか。
正直なところ、彼の存在は住民達からも一種のイベントのような形で受け入れられつつあり……驚いた事に、ごく一部では彼のファンまで存在しているのです。自分にはあんな変質者のどこがいいのか、さっぱり理解できませんが。
｢……それでもやっぱり、一度捕まえて話を聞くべきだと思います。もし何かの拍子に彼の気が変わって、本気で街を混乱に陥れようとするような事になったら……｣
｢うんうん、やっぱり気になっちゃうよねー♪ミリアもお兄ちゃんと出会ったころは――｣
｢だーかーらー！そういうんじゃないですって！｣
机をばんばんっ！と叩いて抗議するのですが、ミリア様は腕を組んでしたり顔で頷くのみ。駄目です、ぜんぜんこっちの話を聞いてくれていません……。
もし彼が現時点で犯罪を犯していないとしても、幼女が嫌がる出来事を事前に察知するその情報網と、私達から逃げおおせるその実力は警戒すべきものであるはずです。それを悪用されれば、どんな悲劇が起こるか分かった物ではないのですから。
つまり自分があの怪人を気にしているのは、あくまでも街の平穏を守るという使命の為であり、決してあのような変質者を意識しているからではないのです！
そう、私が本当にお兄様になって頂きたいのは――
幸せそうな顔で口いっぱいにお菓子を頬張り、さながらハムスターのように頬を膨らませているミリア様を眺めながらそんな事を考えていると、部屋のドアがコンコン、とノックされました。
｢失礼するよ。今、大丈夫かい？｣
｢あっ、はい！おはようございますハーメル様！｣
｢おふぁよーふぁーめる。こんなふぁははやふからほうひたの？｣
ドアを開けて入って来たのは、ぴしっと整えられた正装に身を包んだ一人の男性。
まだ二十台も半ばだというのに、金の髪をオールバックに整え、縁なしの眼鏡が実に似合うその姿は、人の上に立つ者としての威厳に満ち溢れています。
彼の名前はハーメル・ウェーバー。若くしてこのキュレポップの物流の実に四割以上を手掛ける『ウェーバー商会』の代表であり、その人脈、影響力、そして情報網には私達もたびたびお世話になっています。
｢おはよう、リュガ君にウィルマ君も。そしてミリア君はとりあえずお菓子をごっくんしてから話しなさい｣
｢んぐ、んぐ……ごっくん。おはよーハーメル。こんな朝早くからどうしたの？｣
｢昨晩、またあの怪人をリュガ君達が追い払ってくれたと聞いてね。怪我などしていないかと……｣
｢わ、私なら全然大丈夫ですっ！｣
そして、見た目に違わず心配りの出来る素敵な方なのです！
私がお兄様になって欲しいのは、このハーメル様のようなお方……というか、まさにハーメル様ご自身にお兄様になって欲しいのです！きゃーっ、言っちゃったっ！！
だってアレですよ、ハーメル様ってばそのうえ魔法の腕前まで凄いんですよ！？ズルくないですか！？
｢にししっ、逃げられて今までずーっと落ち込んでたけどねー｣
｢もうウィルっ！余計な事を言わないでくださいっ！｣
｢はは、要らぬ心配だったみたいだね。……ともかく、いつも街を守ってくれてありがとう｣
そう言って、ハーメル様は私の頭を優しく撫でて下さいます。
｢えへへ……♪｣
ああ、とっても幸せです。治安維持部隊やってて良かった……っ！
｢そのお礼といっては何だけれども……今日のお昼、空いているようなら一緒にご飯でもどうかな？ご馳走するよ｣
｢え、え……！？｣
こ、これはアレでしょうか。デートのお誘いと受け取らせて頂いてもよろしいのでしょうか！？
｢……すまない、先約があったかな？｣
動揺する事活火山の如しな私の態度を、ハーメル様は誘いを断ろうとしていると勘違いされているご様子。急いで訂正しなければ……！
｢い、いえ！喜んでご一緒させていただきます！｣
｢本当かい？それじゃあ、またお昼頃迎えに来るよ｣
｢はい、お待ちしていますっ！｣
そう言って、最後まで穏やかな笑みを崩さないままハーメル様は部屋から出て行かれました。なんて幼女キラーなお方なのでしょう。
……はっ、こうしてはいられません！ハーメル様とのデート、即ち是一世一代の大勝負。となれば、服もそれ相応のものを用意しなければなりません……！
｢ほらウィル、お菓子はその辺にして今からハーメル様とのデートに着る服を選びに行きますよ！｣
｢えー、何で私までー？｣
｢ウィルは私の使い魔なんですから、ハーメル様がお兄様になってくれるかどうかはウィルも一蓮托生の問題なんです！当然でしょう？｣
｢んー……まぁ、私もハーメルがお兄ちゃんなら文句ないけどさー｣
いかにもめんどくさそうな言葉とは裏腹に、ウィルの貌にはにんまりとした笑みが浮かんでいます。それはそうでしょう、なぜならば彼女の想い人もまた、私と同じ――すなわち、ハーメル様なのですから。
どんな服を着ていきましょうか。私の変身衣装はほとんどウィルの趣味なので、彼女はフリフリの甘ロリ系コーディネートにするのでしょう。が、私もそれに合わせてしまうと普段の変身衣装と変わり映えしなくなってしまいます。ならば彼女とのコントラストを意識して――
｢ふふ、青春だねー｣
ああだこうだとデートの話で盛り上がる私達を見ながら。我らがサバトの主は、縁側に座るおばあちゃんのように目を細めて、湯呑の緑茶を啜っているのでした。
｢ひどい、誰がこんな事を……！？｣
｢くそっ、こんな事が許されてよいのか……！？｣
人々が一日の仕事を終え、大勢が買い出しの為に市場に足を延ばす時間。本来ならば、笑顔と心温まる会話で満たされているはずのその空間は、今や悲鳴と嗚咽の声に満ちていた。
｢仕方ないでしょう、今日はピーマンとほうれん草が凄く安いんだから。好き嫌いする子は素敵なお兄ちゃんを見つけられないわよ？｣
｢サバトにも予算というものがあるんです。 いい加減人参ぐらいは食べられるようになって下さい｣
――主に、幼い魔物達。そしてフェアリーにゴブリンなど、いわゆるサバトに縁のありそうな魔物達の。
そう、市場のどの店もピーマン、ほうれん草ににんじんといった……いわゆる幼女が苦手とするような食品ばかりが、価格破壊とも言えるような値段で売られているのだ。
逆に、どういった訳なのか。それ以外の食品はいつもよりも割高になってしまっている。
となれば、家計を預かる者達が選択する行動は一つ。
｢今晩はこれで炒め物にしましょう｣
｢いやぁぁぁ……っ！！？｣
｢せめて、せめてシチューに……！！｣
それらを使った料理を、夕食のメインディッシュにすること。
幼女達の至福の時間である晩ごはんが、自分の苦手な食材で埋め尽くされるのだ。彼女が絶望するには、それだけで十分過ぎたと言えるだろう。
だが、悪夢はそれだけでは終わらなかった。
｢ねぇママ何でそんなにいっぱい買うの！？また使いきる前に腐らせてパパに呆れられちゃうよ！？｣
｢えー、だって安いし……｣
そう、買い溜めである。
店頭価格とは、基本的に需要と供給のラインがクロスした場所によって決められるもの。しかし、野菜の需要量が何のイベントもなく数日で激変したとは考えにくい。即ち、商品の在庫はそれこそ腐る程あるのだろう。
自分たちとは別の家庭が、全ての嫌いなお野菜を買い占めてくれないかと祈るものの。商品は棚が薄くなるたびに、次から次へと補充されてゆく。
せっせと店の奥から商品を補充する、いつも飴をくれる優しい店員のお姉さん達が、今日ばかりは反サバト派の手先にすら見えてしまうのだった。
ともかく、もはやこれは一日や二日で消費しきれる量ではない。
幼女達は明日からの食卓を想像し、もはや声を上げる気力さえ奪われ……方々で滂沱の涙を流しながら地面に倒れ伏していた。
｢ふはっ、フハハハハハッ……！！｣
そんな幼女達の頭上に、胡散臭い哄笑が響き渡った。
その声に聞き覚えのある幼女達が、ハッと顔を上げる。
――まさか、また『ヤツ』が……！？
｢いた！あそこよ！｣
とあるサキュバス(幼女)が指差したのは、市場中央の時計台、その頂点。
そこにいたのは。
｢怪人、ロリコーン……っ！｣
月光に輝く金髪。背にはマントをなびかせ、目元を白いマスクで隠した正装の男。
ステッキを手に持ち、背筋を伸ばした姿はさながら舞踏会に向かう貴族のようだが……幼女達から向けられる視線は憧れのそれではなく、敵意の籠った涙目のものである。
男は芝居がかった動作でマントを翻し、よく通る声で幼女達に語りかける。
｢やあやあ、ご機嫌如何かな我が愛しの幼女達よ！喜ぶといい、君達は一週間もしないうちに、好き嫌いのない模範的健康幼女になることができるのだ……！｣
｢やっぱりお前の仕業だったのか……！｣
｢どうしていっつもあたしたちにいじわるするの！？｣
アマゾネス(幼女)やミノタウロス(幼女)といった、血気盛んな幼女達が怪人に喰ってかかる。
自らを怪人ロリコーンと名乗る彼は、遡る事数か月前に突如としてこの町に現れ、今回のような幼女たちへの許しがたい行為を繰り返しているのだった。
｢どうして、だと……？私は君達幼女を愛している。好きな相手には意地悪をしたくなるものだという事を知らないのかね！？｣
｢っ、なんて、はた迷惑な……！｣
そのような理由で、私たちはこれ程までに酷い仕打ちを受けなければならないのか。幼女達は怪人が覗かせたあまりの狂気に、その未成熟な身体を震え上がらせる。
さらに、この怪人が真に恐ろしいのは。
｢あら、怪人ロリコーンさん。どうやってかは知りませんが、いつもお野菜を安くして頂いてありがとうございます｣
｢うむ、お前という仮想敵のお蔭で、わが娘も立派な戦士に育っている。礼を言うぞ｣
｢フハハ、礼には及ばん！幼女達が健やかに、かつ元気でいる事こそが、私の幸せなのだから……！｣
何故か母親や家計を預かる立場の者からは、非常に好印象を持たれているのだ……！
幼女達が頼るべき最後の砦が、既に敵に懐柔されている。これに勝る絶望があるだろうか？
ロリコーンは勝利の哄笑を響かせながら、絶望に打ちひしがれた幼女達の顔を眺める。
笑っている幼女達はもちろんの事美しいが、涙目でぷるぷるしている幼女達もまた乙なものだ。お、ケリーさんの家のマリちゃんはまだ此方を睨み付けている。逞しくなったな。カルネさんの家のドルチェちゃんは、少し背が伸びたか――
｢そこまでです！｣
そんなロリコーンの思考は、鈴の鳴るような美しい幼女の声によって遮られた。
｢ぬぅ、何奴！？｣
ロリコーンが、背後から聞こえた声に誰何の声を上げると。そこには月の光を背に受け、建物の屋根に立つ幼女の影一つ。
｢皆さん、お待たせしました！｣
諦める事を知らない、その溌剌とした声が。
ぴしっ！と決めた、その可愛らしいポーズが。
ふりふりのフリルに彩られた、可愛らしい衣装と杖が。
ダメージヘアという単語とは無縁であろう腰まで伸びたサラサラの金髪と、そのルビーのような瞳が――
彼女という存在が、絶望に沈んでいた幼女達の五感ひとつひとつに認識されるたび、その顔ににわかに光が戻ってゆく。
｢愛と魔法で悪を討つ――｣
そんな幼女達の視線を一身に受けながら、くるくると回り、名乗りを上げる。
そう。
彼女こそは、この街に住む幼女達の最後の希望。
｢魔法幼女ラブリー☆ウィッチ、ただいま参上！｣
魔法幼女ラブリー☆ウィッチなのである――！！
｢おのれ我が宿敵ラブリー☆ウィッチ……っ！またしても私の邪魔をしようというのか！？｣
｢当然です！幼女達への非道行為、今日という今日こそは終止符を打たせて貰います！｣
びしぃっ！と愛用の杖――銘『ラブリー☆ステッキ』を突きつけるラブリー☆ウイッチ。その気迫が顕現したかのように。眩い閃光、そしてバチバチという激しい音を立て、彼女の周囲に雷が集まり始める。
やがてその雷は束となり、更に収束し――まるで神話の巨人が扱うようなサイズの、巨大な槍の姿を形作った。
｢『束なれ、幾千もの雷――貫け、サンダースピア』っ！！｣
ラブリー☆ウイッチの詠唱が終わると共に、雷の槍は放たれた。目標はもちろん、怪人ロリコーン。
だが、彼はあろうことか時計台の頂上からふわりと身を虚空に投げ――そして、空中に静止した。
目標を失った雷の槍は時計台そのものへと衝突し、霧散した。雷系統の魔法は、生物に対して非常に有効なダメージを与える一方で、無機物に対してはその効力が半減してしまう。
｢フハッ、フハハハハ……！そんな距離からの直線的な魔法に、この私がみすみす当たると思っているのかね！？｣
彼の背になびくマントには幾何学的な紋章がいくつも刻まれており、見る者が見れば、それが風を操る魔導具である事が分かるだろう。そのマントの力で風を操り、怪人ロリコーンは宙に静止しているのだ。
『にしし、勿論そんな甘い事考えてないよ？』
｢――何？｣
その不敵な言葉は、ラブリー☆ウィッチの首元。人形台の大きさに変化している使い魔から発せられた。
その台詞に疑問と同時、背後に魔力の気配を感じ、ハッと背後を振り返る怪人ロリコーン。その目に飛び込んできたものは。
彼の背後から迫り来る、幾つもの、幾つもの――『ファイヤーボール』。高密度かつ広範囲なそれは、さながらそびえ立つ炎の壁のよう。
――二人が同時に、別々の呪文を詠唱していたのか……！
雷の槍は囮。
彼女は、大火力かつ派手な魔法で彼の注意をそちらに集め。使い魔のファミリアが同時に密かに放っていた大量の炎弾を軌道操作し、彼の背後から襲わせたのだ。
ロリコーンは慌てて回避行動に移る。自らの体に風を纏い、加速、軌道変更、急停止。宙を描く自らの軌道を出鱈目に変化させ、追尾してくる炎の弾を躱し、避け、掻い潜り。それでも振り切れないいくつかは、自らのステッキから発生させた水流で相殺させてゆく。
そして。
｢……ふぅ、今のはかなり肝を冷やしたぞ｣
あの弾幕を、防ぎきった。
｢相変わらず、びっくりするぐらいしぶといですね……｣
｢フハハ、そう言う貴様達はまた腕を上げたようだな……！｣
杖に跨ったラブリー☆ウイッチがふわりと夜空へと浮かびあがり、怪人ロリコーンと対峙する。
一体彼は何者なのか。彼のマントやステッキが、見るだけで分かる程の上級魔導具である事を差し引いても……並の術者に防げるような攻撃では、ないはずなのだが。
｢だが、未だ我が目的は達成されていない……故に捕まる訳にはいかないのでな。今回も逃げ切らせて貰うぞ……！｣
｢待ちなさい！今日という今日は、絶対捕まえてみせますっ！｣
怪人ロリコーンは身を翻し、一瞬でトップスピードに。それを追うラブリー☆ウイッチも逃がすまいと速度を上げる。
そして繰り広げられる魔法合戦。
炎の赤色、水の青色、雷の白色、風の緑色。
夜空というキャンパスに、魔法という名の絵の具をばら撒きながら。
怪人と魔法幼女は、空を駆ける。
――――――――――――――――――――
『幼女の街』キュレポップ。住民の実に7割が幼女で構成されているこの街は、魔灯花の国章を持つ魔界国家『フラヴァリエ』の主要都市の一つです。
そんなこの街には、一つの大きな特徴があります。住民の過半数が幼女であるが故に、その公務のほとんどをこの街のサバト支部が請け負っているのです。
｢はぁぁ……｣
そんなサバトの本部で、私――リュガミエル・ガトーショコラは、大きなため息をついていました。
昨日こそは宿敵、怪人ロリコーンに一泡吹かせられると思ったのに。まさか、あのタイミングから、あの数の火球を全て避けきられるなんて。
脳内で行われる昨晩の反省会。私達も実力は上がっているはずのに、なぜ毎度毎度こうもあと一歩のところで逃げられてしまうのでしょう。机に突っ伏し、肩まである栗色の髪の毛をくるくると弄りながら、思わず溜息を零してしまいます。
｢あれ、リュガお腹いたいの？お菓子全部たべちゃうよ？｣
そう私に話しかけてきたのは、我らがサバトを率いるバフォメットのミリア様。すなわち、この街で一番偉いお方です。
ぷにぷにすべすべのお肌、肉球で掴んだお菓子を幸せそうに頬張るその笑顔。全ての幼女が見習うべき愛くるしい姿ですね。
｢……お腹は大丈夫です。ミリア様みたいにお腹丸出しで寝たりしませんから」
｢マスターったら昨日もあの怪人に逃げられて、それからずっと落ち込んでるんですよー｣
｢ウィルも一緒に戦ってたんですから、貴女も少しは落ち込んで下さいっ！｣
ばんばんっ!と机を叩く私の言葉を聞いてもどこ吹く風なのは、ミリア様と一緒にお菓子をパクついている私の使い魔、ファミリアのウィルマ。
そうです、昨晩は私の首元あたりに人形サイズでしがみついていたあの娘です。
｢あはは、相変わらずリュガはあの人に夢中だねー｣
｢べ、別に夢中とかそういうのじゃないです！私はあくまで街を守る活動の一環として――！｣
｢ぱくっ。んー……でも、お兄ちゃん達からは、あの人無理して捕まえなくていいって言われてるよ？｣
｢……それは、わかってるんですけど……｣
机の上に広げられたお菓子の中からチョコチップクッキーを一つ拝借し、口の中に放り込みます。はぁ、美味しい。
目の前でお菓子を口いっぱいに頬張っているミリア様。彼女はこう見えて、かつては魔王軍の突撃部隊として最前線で教団の魔界遠征部隊と戦ってきた猛者でもあるのです。
そのミリア様が率いるサバトの、治安維持実働部隊においては一番の実力を持つ私とウィルのコンビが、幾度となく取り逃がす相手。
彼の話はこの街どころか、ミリア様のお兄さま方……国の中枢にいる方々の耳にも及んでいるというのに、あの怪人に対して本格的な対策を取ろうとしません。
なぜならば――
｢あの人、別に犯罪とかしてる訳じゃないしねー｣
そうなんです。
もう見た目から口調から、明らかに不審者ではあるのですが、彼が何か罪を犯したという証拠は出てきていません。今回のお野菜の価格低下に関しても、何者かが違法な介入を行なった形跡は見られなかったといいます。昨日の資料を見る限りでは、『正常な市場効果の結果、たまたまお野菜がお安くなった日に怪人がそれっぽい口上で出現しただけ』にしか見えないのだとか。
正直なところ、彼の存在は住民達からも一種のイベントのような形で受け入れられつつあり……驚いた事に、ごく一部では彼のファンまで存在しているのです。自分にはあんな変質者のどこがいいのか、さっぱり理解できませんが。
｢……それでもやっぱり、一度捕まえて話を聞くべきだと思います。もし何かの拍子に彼の気が変わって、本気で街を混乱に陥れようとするような事になったら……｣
｢うんうん、やっぱり気になっちゃうよねー♪ミリアもお兄ちゃんと出会ったころは――｣
｢だーかーらー！そういうんじゃないですって！｣
机をばんばんっ！と叩いて抗議するのですが、ミリア様は腕を組んでしたり顔で頷くのみ。駄目です、ぜんぜんこっちの話を聞いてくれていません……。
もし彼が現時点で犯罪を犯していないとしても、幼女が嫌がる出来事を事前に察知するその情報網と、私達から逃げおおせるその実力は警戒すべきものであるはずです。それを悪用されれば、どんな悲劇が起こるか分かった物ではないのですから。
つまり自分があの怪人を気にしているのは、あくまでも街の平穏を守るという使命の為であり、決してあのような変質者を意識しているからではないのです！
そう、私が本当にお兄様になって頂きたいのは――
幸せそうな顔で口いっぱいにお菓子を頬張り、さながらハムスターのように頬を膨らませているミリア様を眺めながらそんな事を考えていると、部屋のドアがコンコン、とノックされました。
｢失礼するよ。今、大丈夫かい？｣
｢あっ、はい！おはようございますハーメル様！｣
｢おふぁよーふぁーめる。こんなふぁははやふからほうひたの？｣
ドアを開けて入って来たのは、ぴしっと整えられた正装に身を包んだ一人の男性。
まだ二十台も半ばだというのに、金の髪をオールバックに整え、縁なしの眼鏡が実に似合うその姿は、人の上に立つ者としての威厳に満ち溢れています。
彼の名前はハーメル・ウェーバー。若くしてこのキュレポップの物流の実に四割以上を手掛ける『ウェーバー商会』の代表であり、その人脈、影響力、そして情報網には私達もたびたびお世話になっています。
｢おはよう、リュガ君にウィルマ君も。そしてミリア君はとりあえずお菓子をごっくんしてから話しなさい｣
｢んぐ、んぐ……ごっくん。おはよーハーメル。こんな朝早くからどうしたの？｣
｢昨晩、またあの怪人をリュガ君達が追い払ってくれたと聞いてね。怪我などしていないかと……｣
｢わ、私なら全然大丈夫ですっ！｣
そして、見た目に違わず心配りの出来る素敵な方なのです！
私がお兄様になって欲しいのは、このハーメル様のようなお方……というか、まさにハーメル様ご自身にお兄様になって欲しいのです！きゃーっ、言っちゃったっ！！
だってアレですよ、ハーメル様ってばそのうえ魔法の腕前まで凄いんですよ！？ズルくないですか！？
｢にししっ、逃げられて今までずーっと落ち込んでたけどねー｣
｢もうウィルっ！余計な事を言わないでくださいっ！｣
｢はは、要らぬ心配だったみたいだね。……ともかく、いつも街を守ってくれてありがとう｣
そう言って、ハーメル様は私の頭を優しく撫でて下さいます。
｢えへへ……♪｣
ああ、とっても幸せです。治安維持部隊やってて良かった……っ！
｢そのお礼といっては何だけれども……今日のお昼、空いているようなら一緒にご飯でもどうかな？ご馳走するよ｣
｢え、え……！？｣
こ、これはアレでしょうか。デートのお誘いと受け取らせて頂いてもよろしいのでしょうか！？
｢……すまない、先約があったかな？｣
動揺する事活火山の如しな私の態度を、ハーメル様は誘いを断ろうとしていると勘違いされているご様子。急いで訂正しなければ……！
｢い、いえ！喜んでご一緒させていただきます！｣
｢本当かい？それじゃあ、またお昼頃迎えに来るよ｣
｢はい、お待ちしていますっ！｣
そう言って、最後まで穏やかな笑みを崩さないままハーメル様は部屋から出て行かれました。なんて幼女キラーなお方なのでしょう。
……はっ、こうしてはいられません！ハーメル様とのデート、即ち是一世一代の大勝負。となれば、服もそれ相応のものを用意しなければなりません……！
｢ほらウィル、お菓子はその辺にして今からハーメル様とのデートに着る服を選びに行きますよ！｣
｢えー、何で私までー？｣
｢ウィルは私の使い魔なんですから、ハーメル様がお兄様になってくれるかどうかはウィルも一蓮托生の問題なんです！当然でしょう？｣
｢んー……まぁ、私もハーメルがお兄ちゃんなら文句ないけどさー｣
いかにもめんどくさそうな言葉とは裏腹に、ウィルの貌にはにんまりとした笑みが浮かんでいます。それはそうでしょう、なぜならば彼女の想い人もまた、私と同じ――すなわち、ハーメル様なのですから。
どんな服を着ていきましょうか。私の変身衣装はほとんどウィルの趣味なので、彼女はフリフリの甘ロリ系コーディネートにするのでしょう。が、私もそれに合わせてしまうと普段の変身衣装と変わり映えしなくなってしまいます。ならば彼女とのコントラストを意識して――
｢ふふ、青春だねー｣
ああだこうだとデートの話で盛り上がる私達を見ながら。我らがサバトの主は、縁側に座るおばあちゃんのように目を細めて、湯呑の緑茶を啜っているのでした。
17/09/24 23:21更新 / オレンジ
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