あるリッチとその伴侶の研究記録〜開発コードTND=L03〜
ー始めに
以前より、この世界とは異なる世界=次元が存在することはバフォメット達の間で推測されていた。
しかし、それを実証する方法が発見できなかったことから、現在までそれに干渉するプロジェクトが発案されることはなかった。
ここに私は、私達の研究成果を発表し、全次元魔界化プロジェクトを発案するものである。
ー切っ掛け
数年前、偶然私は瀕死の状態で倒れていた一人の人間女性を保護した。
自らをナ▪▪▪▪と名乗っていたその女性は私と助手である私の夫の献身的な介抱によりドラゴンゾンビとして蘇生に成功し、
数週間後、心を寄せていた▪▪▪▪・▪▪ルを探すべく異なる次元へと旅立っていった。
なんという幸運だろうか。そう!彼女は異世界よりやって来た人間であり、次元の間を自在に行き来できる資質をもっていたのだ!
願わくば彼女が思い人と添い遂げ、彼らの故郷タ▪▪▪▪がドラゴニアのような愛に溢れる淫らで美しい楽園へと変わらんことを!
...失礼、興奮により話が逸れてしまった。
彼女がこの世界に滞在していた間、その身に宿す魔力を分析してみた結果、
先述の資質(彼女は"灯"と呼んでいた)の特定に成功したことが私達の研究の始まりだった。
―研究課題
私達が研究テーマとしたのは。
"灯"を持つ人間を反魔物勢力より先に確保し、魔界拡大に協力してもらえるよう、"灯"を持つ人間を探索することに長けた新たな魔物娘を創造することである。
この魔物娘が持つべき能力としては
@次元を越えて"灯"を持つ人間を探索し、決して逃がすことのない行動力。
A"灯"を持つ人間女性を同族に変える能力。
の二点になるだろうか。
検討を重ねた結果、ベースとするのはワーウルフに決定した。
嗅覚を始めとした鋭い感覚、人間女性を同族に変える能力、そして何より"灯"を持つ人間を 説 得 する上で大きな助けとなる一途さを持つことが決め手となった。
彼女達に人工的に再現した"灯"を移植することで上記の条件を満たす魔物娘を産み出せるだろう...。
―研究の推移
私達の研究は決して順調であるとは言えなかった。
"灯"をワーウルフに移植する前段階として、
様々な野性動物に移植して次元の狭間へ送り込んでみたところ、すべての個体の肉体と精神に異常が発生したのだ。
可能な限り本物に迫ったとはいえ、やはり私達の産み出した"灯"は模造品の域を出なかったということか。
それでも肉体の異常については我々アンデッドの魔力により崩壊と再構築のサイクルを生み出すことで
ある程度改善できた(肉体が一部腐敗したり触手が生えてはきたが)ものの、精神の変性についてはお手上げだった。
しかし、思わぬところから助け船が現れた。私達の研究内容を知ったナイトゴーント達が協力を申し出たのだ。
混沌の魔物娘のルーツは次元の狭間に存在する物質だと言われている。
すなわち、彼女らの魔力を利用すれば次元の狭間に存在するであろう無垢にして混沌の闇に晒されても自我と精神を保つことができると予想されたのだ。
実験の結果、改良した"灯"の効果により、予想通り精神への負荷は軽減された。
いよいよワーウルフへの"灯"の移植の目処がたったわけだが、ここで私はある葛藤に直面した。
私の夫が人体実験を行うことへの疑問を口にしたのだ。
いくら人間と魔物の未来のために必要不可欠な研究とはいえ、
研究の進展に心奪われるあまり、一部の非人道的反魔物組織と同じことをする処だったと思い至った私は愕然とした。
研究を進めるべきか止めるべきか、どうしても決心がつかなかった私は支援者であるデルエラ様の判断を仰ぐことにした。
私達同様、デルエラ様も葛藤なされたのだろう。デルエラ様からの返答が届いたのはそれから三日後だった。
その内容は
「実験は継続、ただし被験者に少しでも異常が発生した際は即座に実験を停止し研究を凍結すること。」
とのことだった。
デルエラ様は罪を背負う覚悟を決めた。ならば私達もまた覚悟を決めねばなるまい。
ルル・ハリル...リスクを承知で実験体に志願し、
「どんなに姿と心が変わっても、未来の伴侶となるべき男性への愛情を失うつもりはない。」
そういって私達に微笑んでくれたワーウルフの為にも、失敗は許されない。
ー結果
実験は成功した!
"灯"を移植されたルルは自発的に次元の狭間へと移動し、五時間後、伴侶となった男性を伴って帰ってきたのだ!
しかもその後の検査でその男性もまた"灯"を持っていることが確認できた!
人間女性の同族化について実証できなかったのは心残りだが、私達の研究は大成功と言ってもいい!
...その日から三日三晩の間、実験成功を祝して私は夫と交わった♥
ー今後の課題
@"灯"の改良を進め、次元の狭間からの負荷を更に減らす。
A今回得られたデータを利用して、実験に使用し、現在凍結保存中の野性動物の回復を試みる。
B他の次元に魔界ができた際、この世界とリアルタイムで通信できるネットワークを開発する。
そうそう、夫と交わるのに夢中で肝心なことを忘れていた。
私達が新たに産み出した魔物娘に種族名をつけなければ。
ルルに与えた開発コードは『TND=L03』、
ならば...
以前より、この世界とは異なる世界=次元が存在することはバフォメット達の間で推測されていた。
しかし、それを実証する方法が発見できなかったことから、現在までそれに干渉するプロジェクトが発案されることはなかった。
ここに私は、私達の研究成果を発表し、全次元魔界化プロジェクトを発案するものである。
ー切っ掛け
数年前、偶然私は瀕死の状態で倒れていた一人の人間女性を保護した。
自らをナ▪▪▪▪と名乗っていたその女性は私と助手である私の夫の献身的な介抱によりドラゴンゾンビとして蘇生に成功し、
数週間後、心を寄せていた▪▪▪▪・▪▪ルを探すべく異なる次元へと旅立っていった。
なんという幸運だろうか。そう!彼女は異世界よりやって来た人間であり、次元の間を自在に行き来できる資質をもっていたのだ!
願わくば彼女が思い人と添い遂げ、彼らの故郷タ▪▪▪▪がドラゴニアのような愛に溢れる淫らで美しい楽園へと変わらんことを!
...失礼、興奮により話が逸れてしまった。
彼女がこの世界に滞在していた間、その身に宿す魔力を分析してみた結果、
先述の資質(彼女は"灯"と呼んでいた)の特定に成功したことが私達の研究の始まりだった。
―研究課題
私達が研究テーマとしたのは。
"灯"を持つ人間を反魔物勢力より先に確保し、魔界拡大に協力してもらえるよう、"灯"を持つ人間を探索することに長けた新たな魔物娘を創造することである。
この魔物娘が持つべき能力としては
@次元を越えて"灯"を持つ人間を探索し、決して逃がすことのない行動力。
A"灯"を持つ人間女性を同族に変える能力。
の二点になるだろうか。
検討を重ねた結果、ベースとするのはワーウルフに決定した。
嗅覚を始めとした鋭い感覚、人間女性を同族に変える能力、そして何より"灯"を持つ人間を 説 得 する上で大きな助けとなる一途さを持つことが決め手となった。
彼女達に人工的に再現した"灯"を移植することで上記の条件を満たす魔物娘を産み出せるだろう...。
―研究の推移
私達の研究は決して順調であるとは言えなかった。
"灯"をワーウルフに移植する前段階として、
様々な野性動物に移植して次元の狭間へ送り込んでみたところ、すべての個体の肉体と精神に異常が発生したのだ。
可能な限り本物に迫ったとはいえ、やはり私達の産み出した"灯"は模造品の域を出なかったということか。
それでも肉体の異常については我々アンデッドの魔力により崩壊と再構築のサイクルを生み出すことで
ある程度改善できた(肉体が一部腐敗したり触手が生えてはきたが)ものの、精神の変性についてはお手上げだった。
しかし、思わぬところから助け船が現れた。私達の研究内容を知ったナイトゴーント達が協力を申し出たのだ。
混沌の魔物娘のルーツは次元の狭間に存在する物質だと言われている。
すなわち、彼女らの魔力を利用すれば次元の狭間に存在するであろう無垢にして混沌の闇に晒されても自我と精神を保つことができると予想されたのだ。
実験の結果、改良した"灯"の効果により、予想通り精神への負荷は軽減された。
いよいよワーウルフへの"灯"の移植の目処がたったわけだが、ここで私はある葛藤に直面した。
私の夫が人体実験を行うことへの疑問を口にしたのだ。
いくら人間と魔物の未来のために必要不可欠な研究とはいえ、
研究の進展に心奪われるあまり、一部の非人道的反魔物組織と同じことをする処だったと思い至った私は愕然とした。
研究を進めるべきか止めるべきか、どうしても決心がつかなかった私は支援者であるデルエラ様の判断を仰ぐことにした。
私達同様、デルエラ様も葛藤なされたのだろう。デルエラ様からの返答が届いたのはそれから三日後だった。
その内容は
「実験は継続、ただし被験者に少しでも異常が発生した際は即座に実験を停止し研究を凍結すること。」
とのことだった。
デルエラ様は罪を背負う覚悟を決めた。ならば私達もまた覚悟を決めねばなるまい。
ルル・ハリル...リスクを承知で実験体に志願し、
「どんなに姿と心が変わっても、未来の伴侶となるべき男性への愛情を失うつもりはない。」
そういって私達に微笑んでくれたワーウルフの為にも、失敗は許されない。
ー結果
実験は成功した!
"灯"を移植されたルルは自発的に次元の狭間へと移動し、五時間後、伴侶となった男性を伴って帰ってきたのだ!
しかもその後の検査でその男性もまた"灯"を持っていることが確認できた!
人間女性の同族化について実証できなかったのは心残りだが、私達の研究は大成功と言ってもいい!
...その日から三日三晩の間、実験成功を祝して私は夫と交わった♥
ー今後の課題
@"灯"の改良を進め、次元の狭間からの負荷を更に減らす。
A今回得られたデータを利用して、実験に使用し、現在凍結保存中の野性動物の回復を試みる。
B他の次元に魔界ができた際、この世界とリアルタイムで通信できるネットワークを開発する。
そうそう、夫と交わるのに夢中で肝心なことを忘れていた。
私達が新たに産み出した魔物娘に種族名をつけなければ。
ルルに与えた開発コードは『TND=L03』、
ならば...
18/07/08 12:00更新 / 未確認歩行物体