ど、どうも、こんにちは。ジョロウグモの鹿野琶(カノハ)です……
親魔物領の小さな街で呉服店をやっています。
元々、お裁縫が得意で、趣味でやっていたものの延長でお店を開いたのは楽しくていいのですが………………
やってくるのは、カップルさんばかり。
…………寂しいものですね。
いや、寂しいレベルではないかも知れません。
ーーカランコロン
「いらっしゃいませ。」
「少し雨に降られちまった……………。最近、此処に越してきた、彼澄(ひずみ)という。雨宿りついでに、洋服を頼みたいんだが、いいか?」
わわっ………これは、これは、まさか………独身の男性が………
「畏まりました。採寸させていただいても?」
タオルを差し出しながら言う。
さ、採寸するだけですよ……??け、決して疚しいことは………
「嗚呼、頼む」
雨に降られて少し濡れた黒髪、少し切れ長な黒目………とってもとっても好みです……
こく、と少し喉をならし、微かに震える手でメジャーを当てる。
まずは胸囲から。
鍛えられて、男性らしいです………強そうですね……
「えと、●●cmですね……」
カリカリと机に置いたノートに書いていく。
次は、ウエストですね………。
さ、ささっと手早く終わらせないと………!!
「っきゃ………」
手元が狂ってメジャーが落ちてしまいました。
は、早く拾わないと……!!
「だ、大丈夫ですか?」
「は、はい!大丈夫です……っ!」
拾ってくれようとしたのか、彼澄さんと私の指が当たる。
「さ、採寸を続けますね」
何事もなかったかのように採寸を再開します。
「●●cmです………。つ、次は……」
ヒップ………
こ、これは、やばいですね………
ちゃ、ちゃちゃっとやっちゃいますか!
「●●cmです……。ご希望の洋服のタイプはございますか?」
「そうだな……、動きやすくて毎日着られる服かな。デザインはアンタにお任せする。」
お、お任せ……!!
「はい。畏まりました!!二日ほど掛かりますので、しばらくしたら取りに来てください」
「金は?」
「後日で大丈夫です。あ、外雨降ってるんですよね?そこにお店の傘があるので、持ってって下さい。」
「ありがとう。また今度。」
ーーカランコロン
今日はもう、お客様来ないだろうし…………閉めちゃおうかな。お店。
〜〜・・・・〜〜
動きやすくて、毎日着られる服………やはり、シンプルにTシャツと、カーゴパンツでしょうか………
その晩は、お洋服のデザインを考えては破いた。
その次の日は、お店を休んで一日中彼の為の服を作った。
考えてる間、作ってる間、とっても楽しかった。
………少し遅めの開店。お店の前に彼がいました。
「服、出来てるかい?」
「はい!」
お店の中は、まだ薄ぐらい。
カウンターの奥に入り、出来上がったお洋服を取りに行く。
紺色のTシャツに、カーキ色のカーゴパンツだ。色々あって、最初に書いた案になった。
「おお、凄いな。いくらだ?」
「私をお嫁さんに貰うことです!」
|