囁く声にどこまでも
「ほ〜ら、気持ちいい……気持ちいい……ふわふわ……とろとろ……」
あぁ……気持ちいい……声が気持ちいい……
でも……戦わなきゃ……俺は……俺は……
「もう気持ち良くて何も考えられない……気持ち良すぎて何も考えたくない……私の声を聞いていたい……私の声だけ聞けばいい」
俺は……なん……だっけ……大事な事……だったような……
声が……響く……頭が……とろける……気持ち……いい……
「何も気にしないで……安心して、体の力を抜いて……そのまま私に身をゆだねて」
柔らかくて……あったかくて……気持ちいい……力が……抜ける……
このままで……いい……このまま……あぁ……気持ち……いい……
「私の声が気持ちいい……私の言う通りにすると気持ちいい……心配いらない……大丈夫、私にすべてを任せて……私の言う通りにすれば気持ち良くなれる」
気持ちいい……言う通りにすると……気持ちいい……
心配……ない……気持ちいいまま……全部……任せて……
「そう、そのまま何も考えないで……体がふわふわ……心はとろとろ……気持ちいい……気持ちいい……気持ちいい……」
ふわふわ……力が……抜けて……ふわふわ……
とろとろ……心が……とろけて……とろとろ……
気持ちいい……
気持ち……いい…………
きも……ち…………い……い…………
「……あら？ 寝ちゃった？ やりすぎちゃったわね……いいわ、続きはお家でゆっくりしましょうね……うふふ……」
「……あ……れ……？」
まどろみから目覚め、天井を見上げて呟く。
気が付くと、見知らぬ部屋の、見知らぬベッドで寝ていた。
ここはどこだろう、俺はたしか……俺は……ッ！？
「あら？ 目が覚めた？」
「……お前ッ！？ 俺に何をした！」
そうだ、俺は、最近魔物に支配されたと噂される都市の偵察を命じられていたんだ。
その途中でこいつが、まるで蛇のような下半身を持つこの女が、岩陰から現れて、
それから……それから……どうなった！？
「変なことは、まだしてないわよ？ お話をしている途中で貴方が寝ちゃったから、私の家に連れてきてあげたのよ」
「話だと！？ 魔物風情が！ ふざけるなぁ！」
俺の剣は、無い、取られたか、なら倒すのはさすがに無理か、
となれば、とにかく脱出を、本隊に魔物の存在を報告しなくては……
「ふざけてなんかないわ、あの時のこと、ほら、思い出して」
「何のことだ！ あの時のことって、あの……時……の……？」
あの時、こいつが岩陰から現れて、それで……それで……
挨拶された、「こんにちは」って言われただけだ。
それが、すごく綺麗な声で、頭に響いて……
「うふふ、そうよね、貴方ったら、声をかけただけなのにほわんとした顔しちゃって、ほら、思い出して、その時の気持ち、その時の感覚」
「思い……出す……あぁ……」
声が、すごく心地良くて、気が付いたら、ぼんやりしてて、
蛇の体で巻き付かれて、耳のそばで、声が……声が……
「思い出す……思い出す……あの時の気持ちいい感覚、ふわふわで、とろとろな、あの時の気持ち良さ……」
「あぁ……うぁ……ぁ……」
気持ちいい声……あの時と同じ……ふわふわで……とろとろな……
何も考えないで……安心して……気持ちいい……ままで……
「うふふ、またぼんやりしちゃったわね、ほら、しっかりして！」
「……うわ！？ ……あれ？？？ あ……な、なんなんだよ、あれ」
何を考えていたんだ俺は、こんな、魔物の声に聞き入るなんて、
こいつの声が、痺れるようにじんじんと頭に響いて、
聞いてるだけで何も考えられなくなって……気持ち良くなって……
ああくそ、だめだ、考えるな、いったい何をされたんだ、俺は。
「言っているじゃない、お話しをしただけだって、ラミアの声、でね」
「ラミアの、声？」
「そう、私たち、ラミアって種族はね、声に魅了の魔力を込めることができるの」
ラミアの声、魅了の魔力、あの感覚はやっぱりこいつの所為で……
気をしっかり持て、相手は邪悪な魔物なんだ。
「この声で囁かれると、男の人は気持ち良くなって、誘われるがままになっちゃうの、あの時みたいに、ね」
「あ……う、うるさい、黙れぇ！」
あの時、といわれると、思い出しそうになってしまう。
まずい、こいつの声を聞いてはいけない。
何とかしないと、何とか……
「特にね、耳元で囁いてあげると効果抜群、あの時もしてあげたよね、声で耳をくすぐるように囁くの、ねえ、気持ち良かったでしょ？」
「だ……黙れと言って……くぅっ……ぁ……」
あぁ……気持ち良かった……吐息で耳がゾクゾクして……
綺麗な声が……とても近くて……すごく……心地良くて……
気持ちいい……頭が痺れて……気持ち……いい……
「ふふ……ほら！ 起きて！」
「……わ！？ ……ぁ……畜生！」
だめだ、どうしても耐えられない。
こいつの声が耳に入るだけで、すぐに何も考えられなくなってしまう。
「嬉しいわ、そんなに私の声、気に入ってくれたのね」
「違う！ くそ！ 何なんだよ、何が目的なんだお前は！」
そうだ、こいつは何が目的だ。
殺しも食らいもせずに、こんなところに連れ込んで……
まさか、洗脳でもして、教団を内側から滅ぼす気が！？
「目的？ あ〜、え〜っと、その、ね……」
「……な、なんだよ？」
急に歯切れ悪く、身をよじりながら言いよどみ始める。
何だというのだろうか、何やら顔を赤くして、もじもじと蛇の身をくねらせている。
なんというか、なまじ顔が綺麗なだけに可愛い……って、何考えてんだ俺は！
「え〜、コホン、目的、そう、目的はね、私の、その……お、夫になってほしいの！」
「…………は？？？」
え？ 何それこいつなんて言った？
おっと？ 夫？ それって夫婦の男側の夫か？
いやまてこいつ魔物だぞ？ 魔物と夫婦とかあり得ないだろ、
まあ、こいつは確かに美人だけれどって、そうじゃない、そうじゃなくって。
ああ、そうだ、たぶんきっと魔物の言い回しに『おっと』って言う何か別の言葉があるんだ、そうに違いない、そうに決まっている。
「ちょ、ちょっと何よその顔！ 私をお嫁にしてって言っているのよ！」
「いやいやいやいや、まてまてまてまて、すまん、言葉の意味が分からない、その、『おっと』とか『およめ』ってのには、どんな意味があるんだ？」
「だ〜か〜ら〜、私と結婚してくださいって言ってんのよ！ 告白！ プロポーズなのよこの馬鹿！」
…………！？！？！？
ま、魔物が……？ 結婚……？
邪悪な魔物が？ 人を食らう恐ろしい魔物が？
「あ〜〜〜もう、まあ、教団の人だものね、ちょっと、窓から外を見てみなさいな」
「……窓？」
窓の外？ 外に何があるというのか、
だが、脱出するために外の様子も見ておくべきか、どれどれ……ッ！？
「嘘……だろ……？」
「ふふ……みんな幸せそうでしょう？」
窓越しに見えた光景は、
整然と整った街並みと、通りを乱雑に行き交う人々と、それに寄り添う、魔物。
魔物たちは人外の要素を備えているが、みんな女性としての美貌にあふれている。
そして、そばにいる男性と共に歩き、お互いに笑顔を浮かべている。
それこそ、夫婦のように。
「分かったかしら、魔物はね、人を食べたり、殺したりはしないのよ、私たちは、あなたたちと仲良くしたいだけなのよ」
「……嘘だ……こんなこと……あるわけ……」
教団の、主神様のお教えが、嘘だなんて信じられない。
しかし、外を行き交う人たちの笑顔にも嘘は全く感じられない。
「……あれは……ック、嘘だッ！」
「キャッ！？ ちょ、ちょっとどこ行くのよ？」
居ても立っても居られず、外に飛び出す。
外を歩いている男の一人が身に着けていた物を見た瞬間、体が勝手に動いていた。
「おい！ アンタ！」
「うわ！？ な、何ですか？」
「ちょ、ちょっと、何よこの人！？」
奇しくも、あいつと同じ蛇女を連れていた男の肩に掴みかかり、声を荒げる。
恰好こそ普段着だが、こいつが腰にさげている剣、こいつは……
「アンタ、その剣は教団の、それもお偉い騎士様が頂けるものだろう、なんでアンタが、騎士様ともあろう人が魔物と一緒にいるんだ！？」
そうだ、この剣は教団の騎士様のものだ。
俺みたいな雑兵などとは格が違う、ご立派な騎士様のものなのだ。
そんな人が……なんで魔物と……
「ああ、なるほど、落ち着いてください」
男は、すべてを察したように微笑むと、
興奮する俺を諭すように語りかけてくる。
「信じられないかもしれませんが、魔物はもう、かつて語られたような恐ろしい存在ではありません、こうして人と共に歩むべき隣人となったのです」
まるで教えを説くかのような男の表情には、絶対の自信が見て取れた。
周りの人間を見ても、すぐに分かるさと言わんばかりの顔つきばかり。
「そ……んな……そんなこと……ムグゥ！？！？！？」
信じ切っていたものが崩れ去りそうになり、茫然としている俺に、
突然、蛇の体が巻き付き、顔まで含めた全身を拘束する。
「ごめんなさいねお二人とも、この人、昨日来たばっかりなの」
「いえいえ、彼もきっと理解してくれますよ」
「まったくもう、しっかり教えてあげなさいよね」
謝罪もそこそこに、全身グルグル巻きのまま家へと引っ張られる。
本当に、本当に、魔物が人間と仲良くなんて、できるのか……？
「……なんだか、昔の貴方みたいね」
「あはは、あの頃の話は勘弁してよ」
「……なあ、そろそろ離してくれよ」
「ダメよ、いきなり飛び出したりしたんだから離すわけないでしょ」
再び魔物の家に戻された後、顔こそは解放されたものの、
体は蛇体に拘束されたまま動かすことができない。
「ねえ、そんなに私たち魔物が信じられない？ こうして、みんなが平和に暮らしているところを見ても？」
「……分からねえ……分からねえよ……ずっと魔物は邪悪で怖いものだって教えられてきたんだ……」
確かに、道行く人たちはみんな幸せそうに見えた。
でも、みんな、騙されているだけなのかもしれない。
油断したところを利用されて、用済みになれば食われてしまうんじゃないかと、
どうしてもそう考えてしまうのだ。
「そう……いいわ、怖くなくなるまで、こうしてあげる、ぎゅう〜〜〜〜〜」
「うわ！？ お、おい？」
体に絡む蛇体だけでなく、いきなり全身で引っ付かれてしまう。
上半身で、女の人の体の部分で、思いっきり抱きしめられる。
「ま、待て待て、うわ！？ 離せ、離せって！」
「ん〜、や〜だ、離さな〜い、むぎゅ〜〜〜〜〜」
密着した体に幸せな柔らかさを持つ二つのふくらみがむにゅむにゅ押し付けられて、
嬉しいんだけれど恥ずかしすぎる。
「……ねえ、暴れないで、大丈夫、絶対大丈夫だから、魔物は怖くなんかないって、私が教えてあげるから」
「そ、そうじゃなくって……ッ！？」
恥ずかしいからやめろ、と言おうとして、自分の思考に気付き、驚く。
今、俺は魔物への恐怖ではなく、女性に抱き付かれた恥ずかしさで暴れていた……？
こいつは魔物なんだ、今も絡みつく蛇の下半身がそれを証明している。
「いい子……お願い、そのままでいて、大丈夫……大丈夫……」
……それでも、魔物と分かっていても、
気恥ずかしさに顔が熱くなるのを止めることができない。
ドキドキと必要以上に脈打つ鼓動を止めることができない。
俺は、こいつを女として見てしまっているんだ。
「ほら、また耳元で囁いてあげる、また、気持ち良くしてあげるからね……」
「あ……ぁ……」
また、声に魅了される。
自分の気持ちに戸惑っているところに囁かれた声は、
するりと抵抗も無く頭の中に入り込んできて、意識を甘くとろけさせてくる。
「力を抜いて、私に身を任せる、私が抱いててあげるから……」
力が入らない、全身に絡みつく蛇の体になされるがままになっている。
決してきつくは縛られない、意外と柔らかく、触り心地の良い蛇体に包まれて、
それに全てをゆだねる様に、気持ちの良い声をただ聞くだけになっていく。
「ほら、ぎゅ〜〜〜、気持ち良くしてあげる、気持ち良く、気持ち良〜く、ね」
上半身でも抱きしめられて、女の人の匂いと柔らかさと暖かさでいっぱいになる。
女の人……こんな、気持ちいいのが……魔物……？
「力が抜けて気持ちいい……ぎゅっと抱かれて気持ちいい……どんどん、どんどん気持ち良くなる……ほら、頭もなでなでしてあげる……」
完全に脱力した体を、柔らかく、暖かく、抱きしめられ、
囁きに酔った頭を、優しく慈しむように撫でられる。
あぁ……すごい……気持ちいい……
「ねえ、なんで魔物が怖いの……？ こんなに気持ちいいんだよ……？」
「……魔物……邪悪で……人を食べるって……気持ちいいのは……堕落だって……」
魔物……怖くて、邪悪で、人間の敵だと言われてきた。
気持ちいいのは、人を堕落させることだと、小さなころから教わってきた。
「ふふ……それは違うわ、私の声で可愛くとろけてくれる貴方を食べるわけないじゃない……だから安心していいの……大丈夫……大丈夫……」
大丈夫……安心していい……
怖いと思う気持ちが消えていく……
ゆっくり、気持ち良さで舐めとかされるようにとろけて無くなっていく……
「それに、気持ちいいだけなら堕落してもいいんじゃない？ そのために悪いことをするのはいけないことだけど、そうじゃなければ、いいんじゃない？」
堕落しても……いい？ 悪いことを……しなければ……？
「そう……気持ちいいだけなら大丈夫……悪いことなんて何もない……だから堕落してもいい……ふふ……堕ちてもいいの……」
あぁ……いいんだ……気持ちいいだけなら……
堕落しても……この気持ち良さに……堕ちても……
「怖いことなんて何もない……こんなに気持ちいいことが悪いわけない……だから、安心して気持ち良くなっていく……気持ち良く……堕ちていく……」
恐怖が消えて、枷が無くなって、安心して、
気持ち良さを邪魔するものがどんどん消されて無くなって、
どんどん気持ち良くなっていく……どんどん気持ち良く堕ちていく……
「そう、堕ちるのは気持ちいい、意識がスーっと沈んでいく、ふんわり柔らかく、体が深いところに降りていく……」
堕ちていく、余計な物が遠ざかっていく、気持ち良さに沈んでいく、
深く、深く、深く、堕ちて、沈んで、気持ち良くなっていく。
「ほら、すごく気持ちいい、気持ちいいことは怖くない、気持ちいいことはとっても良いこと、どう？ もっと気持ち良く……なりたい？」
「……なり……たい……」
自然と口から答えがこぼれる。
理性も恐怖も消え去って、陶酔のままに心が漏れる。
「それじゃあ……ふふ……気持ち良くしてあげるからね……」
するりと、衣服の中に手が差し込まれる。
ズボンの中に、その中の、気持ち良くなれるところに。
「あぁ……これが男の人の……だ、大丈夫、本能のままに……気持ち良くしてあげれば魔物娘は大丈夫……」
ふにふにもにゅもにゅと、手が中のモノを弄び始める。
自分のとは違うすべすべの指の感覚が快感を生み出し、その肥大化を促していく。
「おっきくなってきた……気持ちいいんだよね、ふふ……うふふふふふ……ほら、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……」
「あぁ……あぁぁぁぁ……」
こねくり回される、気持ち良くなる器官が嬉しそうに仕事の準備を進めていく。
何の力も入っていない体、何も考えていない心、
一切の抵抗が無い状態で与えられる快楽が、
ただただ、溜まるまま、溢れるままに吹き出しそうになる。
「気持ちいい……出るぅ……」
「……え？ ……あッ！？ ダメッ！！！！！」
寸前で、その放出の寸前で、刺激が止まり、快楽が消え、
手も引き抜かれて、可愛がられていた器官に寂しさを疼かせる。
「危なかった……まだ駄目なの……ごめんね」
どうしてやめてしまうのだろう、あんなに気持ち良かったのに。
「ねえ、さっきも言ったけれど、私はね、貴方と結婚……したいの」
結婚……こいつと結婚……
でも……こいつは……こいつは魔物で……
「結婚してくれたら、もっと気持ち良く、幸せにしてあげるから」
あぁ……もっと気持ち良くしてくれる……幸せになれる……
でも……でも……
「いきなり結婚からじゃなくてもいい、恋人からでも、友達からでもいいから、だから、まずは私を、信じてほしいの、信じるって、言ってほしいの」
「……信……じる……？」
信じる……嘘は、感じられない。
町のみんなも、騎士だった人も、幸せそうだった。
「ね、おねがい、少しだけでもいい、私を信じて……」
また強く、体を抱きしめられる。
そうだ、こうして抱きしめられて、気持ち良くて温かいのも嘘じゃない……だから。
「あぁ……信じる……よ」
「ッ〜〜〜〜〜……ふ、うふふ、嬉しいわ、ありがと！」
一瞬見せてくれた、感極まったその表情は本当に嬉しそうで、
やっぱりそれも、嘘だとは思えなかった。
「どんどん、どんどん、気持ち良くなる、どんどん、どんどん、深く、気持ち良く落ちていく」
気持ちいい、ずっと、気持ち良くなる声で囁かれ続けて、
頭の中に気持ちいい声が響きっぱなしで、もうそれ以外がわからなくなっている。
「私を信じてくれたから、貴方はどこまでも落ちることができる、どこまでも気持ち良くなることができる」
止まらない、止まれるところがない。
無意識に気持ち良さを止めていた不安や枷が完全に消えて、
際限なく意識が落ちていく、気持ちいいところに落ちていく。
「私の声が気持ちいい、私の言うとおりにすると気持ちいい、気持ちいいから言うとおりになる、ほら、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい」
声が気持ち良くて、
気持ちいい声に気持ち良くなると言われたからもっと気持ち良くなって、
気持ち良くなると、ちゃんと言うことを聞けたからもっともっと気持ち良くなって、
気持ち良くなると、気持ちいい声がさらに好きになって、もっともっともっと、
気持ち良さが気持ち良さを呼んで、気持ち良さがどんどん深まっていく。
「ふふ……さあ、続きをしましょう……最高に、これ以上ないくらいに、気持ち良くしてあげるからね」
もう、頭が呆けて何も考えていない。
気持ちのいい声に陶酔しきっていて、ズボンを脱がされてもなされるがまま、
その意味も分からずに、声を聞いてとろけているだけ。
「ああ……ほんとに大きい……さ、さあ……気持ち良くなって、ね！ ……んぅ〜〜〜〜〜！！！」
「うぁぁ……ぁぁぁぁ……」
とても暖かく、とろけるような何かに飲み込まれる感覚にうめき声を漏らす。
「あ……あは、入っちゃったぁ……ふ、ふふ……どう？ 気持ち、いい？」
「あぁぁ……気持ちいい……」
とろける、とろける、気持ちいいところがとても気持ちいい。
そのぐらいのことしか考えられない。
「そうよね、き、気持ちいいよね、あ、あは、そのまま、気持ち良くなっていれば、いいの、き、気持ち良さに浸っていればいいのぉ」
「あ……あ……気持ちいい……このままぁ……」
この気持ち良さにされるがままでいい、この気持ち良さに浸っていればいい。
一切の力が入らない脱力した体を、蛇体に包まれ、抱きしめられて、
頭の中は響き渡る気持ちいい声でいっぱいで気持ちいいこと以外は何もわからない。
すべてを任せきって、与えられる気持ち良さにとろけているだけでいい……。
「そ、そうよ、気持ちいい、あ、貴方はもっと気持ち良くなるの、も、もっと……もっともっともっとぉ！」
気持ち良さが加速していく。
飲み込まれたところから伝わってくる気持ち良さがどんどんたまって、
気持ち良さが抑えられなくなってくる。
「あ、あは、す、すごく気持ち良くなる！ 何にも、わからにゃ……わからなくなるくらいぃ、気持ちいぃ、気持ひ良くなるぅ！」
「……ぁ……ぁ……」
もうとんでもなく、とてつもなく気持ちいいのに、
ふにゃふにゃにとろけた体は力が入らずに身じろぐことすらできない。
ふわふわに陶酔した頭は言葉も紡げない。
「き、気持ち良くなる！ 気持ちいい！ き、気持ち、気持ちいい！ いいのぉ！」
……本当に……すごく……すごく……
どうにかなってしまいそうなくらいに……気持ち良くて……
なんだかすごいのが……すごく気持ちいいのが爆発しそうで……
こんなのが爆発したら……なんだかすごいところに……
「ぁ……いく……」
「え？ ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！？！？！？」
……気持ち……いい…………ところ…………に……………………
「ん……ふ……気持ち……良かった……ね」
……ぁ……気持ちいい……声が……聞こえる……
……ここ……どこだろ……ふわふわして……すごく高いような……？
「これでずっと一緒……もう離さないからね……」
ぁ……ぁ……声が……気持ちいい……
俺……なにしてたん……だっけ……？
気持ち良くて……なにも……わからない……
「これからはいつでも、今日よりももっと、気持ち良くしてあげるからね」
今日よりも……そっか……あの気持ちいい爆発で……
こんな……きもちのいいところに……飛ばされたんだ……
「本当に、心の底から私を信じられるようになるまで、何度でも気持ち良くしてあげる、気持ち良く堕としてあげる」
ああ……今日よりももっと気持ち良くなる……今日よりも気持ち良く……堕ちる……
……そういえば……こんなふわふわした……高いところから堕ちたら……
一気に……堕ちてしまったら……
「そう、気持ち良くなる……気持ち良く堕ちる……気持ちいい……気持ちいい……」
ふっと、重力が消えたように堕ちていく。
気持ち良くなる声に囁かれて、
意識が深いところに、気持ちいいところに堕ちていく
どこまでも、どこまでも……
気持ちいい……
気持ち……いい…………
きも……ち…………い……い…………
「ふふ……おやすみなさい」
おしまい
あぁ……気持ちいい……声が気持ちいい……
でも……戦わなきゃ……俺は……俺は……
「もう気持ち良くて何も考えられない……気持ち良すぎて何も考えたくない……私の声を聞いていたい……私の声だけ聞けばいい」
俺は……なん……だっけ……大事な事……だったような……
声が……響く……頭が……とろける……気持ち……いい……
「何も気にしないで……安心して、体の力を抜いて……そのまま私に身をゆだねて」
柔らかくて……あったかくて……気持ちいい……力が……抜ける……
このままで……いい……このまま……あぁ……気持ち……いい……
「私の声が気持ちいい……私の言う通りにすると気持ちいい……心配いらない……大丈夫、私にすべてを任せて……私の言う通りにすれば気持ち良くなれる」
気持ちいい……言う通りにすると……気持ちいい……
心配……ない……気持ちいいまま……全部……任せて……
「そう、そのまま何も考えないで……体がふわふわ……心はとろとろ……気持ちいい……気持ちいい……気持ちいい……」
ふわふわ……力が……抜けて……ふわふわ……
とろとろ……心が……とろけて……とろとろ……
気持ちいい……
気持ち……いい…………
きも……ち…………い……い…………
「……あら？ 寝ちゃった？ やりすぎちゃったわね……いいわ、続きはお家でゆっくりしましょうね……うふふ……」
「……あ……れ……？」
まどろみから目覚め、天井を見上げて呟く。
気が付くと、見知らぬ部屋の、見知らぬベッドで寝ていた。
ここはどこだろう、俺はたしか……俺は……ッ！？
「あら？ 目が覚めた？」
「……お前ッ！？ 俺に何をした！」
そうだ、俺は、最近魔物に支配されたと噂される都市の偵察を命じられていたんだ。
その途中でこいつが、まるで蛇のような下半身を持つこの女が、岩陰から現れて、
それから……それから……どうなった！？
「変なことは、まだしてないわよ？ お話をしている途中で貴方が寝ちゃったから、私の家に連れてきてあげたのよ」
「話だと！？ 魔物風情が！ ふざけるなぁ！」
俺の剣は、無い、取られたか、なら倒すのはさすがに無理か、
となれば、とにかく脱出を、本隊に魔物の存在を報告しなくては……
「ふざけてなんかないわ、あの時のこと、ほら、思い出して」
「何のことだ！ あの時のことって、あの……時……の……？」
あの時、こいつが岩陰から現れて、それで……それで……
挨拶された、「こんにちは」って言われただけだ。
それが、すごく綺麗な声で、頭に響いて……
「うふふ、そうよね、貴方ったら、声をかけただけなのにほわんとした顔しちゃって、ほら、思い出して、その時の気持ち、その時の感覚」
「思い……出す……あぁ……」
声が、すごく心地良くて、気が付いたら、ぼんやりしてて、
蛇の体で巻き付かれて、耳のそばで、声が……声が……
「思い出す……思い出す……あの時の気持ちいい感覚、ふわふわで、とろとろな、あの時の気持ち良さ……」
「あぁ……うぁ……ぁ……」
気持ちいい声……あの時と同じ……ふわふわで……とろとろな……
何も考えないで……安心して……気持ちいい……ままで……
「うふふ、またぼんやりしちゃったわね、ほら、しっかりして！」
「……うわ！？ ……あれ？？？ あ……な、なんなんだよ、あれ」
何を考えていたんだ俺は、こんな、魔物の声に聞き入るなんて、
こいつの声が、痺れるようにじんじんと頭に響いて、
聞いてるだけで何も考えられなくなって……気持ち良くなって……
ああくそ、だめだ、考えるな、いったい何をされたんだ、俺は。
「言っているじゃない、お話しをしただけだって、ラミアの声、でね」
「ラミアの、声？」
「そう、私たち、ラミアって種族はね、声に魅了の魔力を込めることができるの」
ラミアの声、魅了の魔力、あの感覚はやっぱりこいつの所為で……
気をしっかり持て、相手は邪悪な魔物なんだ。
「この声で囁かれると、男の人は気持ち良くなって、誘われるがままになっちゃうの、あの時みたいに、ね」
「あ……う、うるさい、黙れぇ！」
あの時、といわれると、思い出しそうになってしまう。
まずい、こいつの声を聞いてはいけない。
何とかしないと、何とか……
「特にね、耳元で囁いてあげると効果抜群、あの時もしてあげたよね、声で耳をくすぐるように囁くの、ねえ、気持ち良かったでしょ？」
「だ……黙れと言って……くぅっ……ぁ……」
あぁ……気持ち良かった……吐息で耳がゾクゾクして……
綺麗な声が……とても近くて……すごく……心地良くて……
気持ちいい……頭が痺れて……気持ち……いい……
「ふふ……ほら！ 起きて！」
「……わ！？ ……ぁ……畜生！」
だめだ、どうしても耐えられない。
こいつの声が耳に入るだけで、すぐに何も考えられなくなってしまう。
「嬉しいわ、そんなに私の声、気に入ってくれたのね」
「違う！ くそ！ 何なんだよ、何が目的なんだお前は！」
そうだ、こいつは何が目的だ。
殺しも食らいもせずに、こんなところに連れ込んで……
まさか、洗脳でもして、教団を内側から滅ぼす気が！？
「目的？ あ〜、え〜っと、その、ね……」
「……な、なんだよ？」
急に歯切れ悪く、身をよじりながら言いよどみ始める。
何だというのだろうか、何やら顔を赤くして、もじもじと蛇の身をくねらせている。
なんというか、なまじ顔が綺麗なだけに可愛い……って、何考えてんだ俺は！
「え〜、コホン、目的、そう、目的はね、私の、その……お、夫になってほしいの！」
「…………は？？？」
え？ 何それこいつなんて言った？
おっと？ 夫？ それって夫婦の男側の夫か？
いやまてこいつ魔物だぞ？ 魔物と夫婦とかあり得ないだろ、
まあ、こいつは確かに美人だけれどって、そうじゃない、そうじゃなくって。
ああ、そうだ、たぶんきっと魔物の言い回しに『おっと』って言う何か別の言葉があるんだ、そうに違いない、そうに決まっている。
「ちょ、ちょっと何よその顔！ 私をお嫁にしてって言っているのよ！」
「いやいやいやいや、まてまてまてまて、すまん、言葉の意味が分からない、その、『おっと』とか『およめ』ってのには、どんな意味があるんだ？」
「だ〜か〜ら〜、私と結婚してくださいって言ってんのよ！ 告白！ プロポーズなのよこの馬鹿！」
…………！？！？！？
ま、魔物が……？ 結婚……？
邪悪な魔物が？ 人を食らう恐ろしい魔物が？
「あ〜〜〜もう、まあ、教団の人だものね、ちょっと、窓から外を見てみなさいな」
「……窓？」
窓の外？ 外に何があるというのか、
だが、脱出するために外の様子も見ておくべきか、どれどれ……ッ！？
「嘘……だろ……？」
「ふふ……みんな幸せそうでしょう？」
窓越しに見えた光景は、
整然と整った街並みと、通りを乱雑に行き交う人々と、それに寄り添う、魔物。
魔物たちは人外の要素を備えているが、みんな女性としての美貌にあふれている。
そして、そばにいる男性と共に歩き、お互いに笑顔を浮かべている。
それこそ、夫婦のように。
「分かったかしら、魔物はね、人を食べたり、殺したりはしないのよ、私たちは、あなたたちと仲良くしたいだけなのよ」
「……嘘だ……こんなこと……あるわけ……」
教団の、主神様のお教えが、嘘だなんて信じられない。
しかし、外を行き交う人たちの笑顔にも嘘は全く感じられない。
「……あれは……ック、嘘だッ！」
「キャッ！？ ちょ、ちょっとどこ行くのよ？」
居ても立っても居られず、外に飛び出す。
外を歩いている男の一人が身に着けていた物を見た瞬間、体が勝手に動いていた。
「おい！ アンタ！」
「うわ！？ な、何ですか？」
「ちょ、ちょっと、何よこの人！？」
奇しくも、あいつと同じ蛇女を連れていた男の肩に掴みかかり、声を荒げる。
恰好こそ普段着だが、こいつが腰にさげている剣、こいつは……
「アンタ、その剣は教団の、それもお偉い騎士様が頂けるものだろう、なんでアンタが、騎士様ともあろう人が魔物と一緒にいるんだ！？」
そうだ、この剣は教団の騎士様のものだ。
俺みたいな雑兵などとは格が違う、ご立派な騎士様のものなのだ。
そんな人が……なんで魔物と……
「ああ、なるほど、落ち着いてください」
男は、すべてを察したように微笑むと、
興奮する俺を諭すように語りかけてくる。
「信じられないかもしれませんが、魔物はもう、かつて語られたような恐ろしい存在ではありません、こうして人と共に歩むべき隣人となったのです」
まるで教えを説くかのような男の表情には、絶対の自信が見て取れた。
周りの人間を見ても、すぐに分かるさと言わんばかりの顔つきばかり。
「そ……んな……そんなこと……ムグゥ！？！？！？」
信じ切っていたものが崩れ去りそうになり、茫然としている俺に、
突然、蛇の体が巻き付き、顔まで含めた全身を拘束する。
「ごめんなさいねお二人とも、この人、昨日来たばっかりなの」
「いえいえ、彼もきっと理解してくれますよ」
「まったくもう、しっかり教えてあげなさいよね」
謝罪もそこそこに、全身グルグル巻きのまま家へと引っ張られる。
本当に、本当に、魔物が人間と仲良くなんて、できるのか……？
「……なんだか、昔の貴方みたいね」
「あはは、あの頃の話は勘弁してよ」
「……なあ、そろそろ離してくれよ」
「ダメよ、いきなり飛び出したりしたんだから離すわけないでしょ」
再び魔物の家に戻された後、顔こそは解放されたものの、
体は蛇体に拘束されたまま動かすことができない。
「ねえ、そんなに私たち魔物が信じられない？ こうして、みんなが平和に暮らしているところを見ても？」
「……分からねえ……分からねえよ……ずっと魔物は邪悪で怖いものだって教えられてきたんだ……」
確かに、道行く人たちはみんな幸せそうに見えた。
でも、みんな、騙されているだけなのかもしれない。
油断したところを利用されて、用済みになれば食われてしまうんじゃないかと、
どうしてもそう考えてしまうのだ。
「そう……いいわ、怖くなくなるまで、こうしてあげる、ぎゅう〜〜〜〜〜」
「うわ！？ お、おい？」
体に絡む蛇体だけでなく、いきなり全身で引っ付かれてしまう。
上半身で、女の人の体の部分で、思いっきり抱きしめられる。
「ま、待て待て、うわ！？ 離せ、離せって！」
「ん〜、や〜だ、離さな〜い、むぎゅ〜〜〜〜〜」
密着した体に幸せな柔らかさを持つ二つのふくらみがむにゅむにゅ押し付けられて、
嬉しいんだけれど恥ずかしすぎる。
「……ねえ、暴れないで、大丈夫、絶対大丈夫だから、魔物は怖くなんかないって、私が教えてあげるから」
「そ、そうじゃなくって……ッ！？」
恥ずかしいからやめろ、と言おうとして、自分の思考に気付き、驚く。
今、俺は魔物への恐怖ではなく、女性に抱き付かれた恥ずかしさで暴れていた……？
こいつは魔物なんだ、今も絡みつく蛇の下半身がそれを証明している。
「いい子……お願い、そのままでいて、大丈夫……大丈夫……」
……それでも、魔物と分かっていても、
気恥ずかしさに顔が熱くなるのを止めることができない。
ドキドキと必要以上に脈打つ鼓動を止めることができない。
俺は、こいつを女として見てしまっているんだ。
「ほら、また耳元で囁いてあげる、また、気持ち良くしてあげるからね……」
「あ……ぁ……」
また、声に魅了される。
自分の気持ちに戸惑っているところに囁かれた声は、
するりと抵抗も無く頭の中に入り込んできて、意識を甘くとろけさせてくる。
「力を抜いて、私に身を任せる、私が抱いててあげるから……」
力が入らない、全身に絡みつく蛇の体になされるがままになっている。
決してきつくは縛られない、意外と柔らかく、触り心地の良い蛇体に包まれて、
それに全てをゆだねる様に、気持ちの良い声をただ聞くだけになっていく。
「ほら、ぎゅ〜〜〜、気持ち良くしてあげる、気持ち良く、気持ち良〜く、ね」
上半身でも抱きしめられて、女の人の匂いと柔らかさと暖かさでいっぱいになる。
女の人……こんな、気持ちいいのが……魔物……？
「力が抜けて気持ちいい……ぎゅっと抱かれて気持ちいい……どんどん、どんどん気持ち良くなる……ほら、頭もなでなでしてあげる……」
完全に脱力した体を、柔らかく、暖かく、抱きしめられ、
囁きに酔った頭を、優しく慈しむように撫でられる。
あぁ……すごい……気持ちいい……
「ねえ、なんで魔物が怖いの……？ こんなに気持ちいいんだよ……？」
「……魔物……邪悪で……人を食べるって……気持ちいいのは……堕落だって……」
魔物……怖くて、邪悪で、人間の敵だと言われてきた。
気持ちいいのは、人を堕落させることだと、小さなころから教わってきた。
「ふふ……それは違うわ、私の声で可愛くとろけてくれる貴方を食べるわけないじゃない……だから安心していいの……大丈夫……大丈夫……」
大丈夫……安心していい……
怖いと思う気持ちが消えていく……
ゆっくり、気持ち良さで舐めとかされるようにとろけて無くなっていく……
「それに、気持ちいいだけなら堕落してもいいんじゃない？ そのために悪いことをするのはいけないことだけど、そうじゃなければ、いいんじゃない？」
堕落しても……いい？ 悪いことを……しなければ……？
「そう……気持ちいいだけなら大丈夫……悪いことなんて何もない……だから堕落してもいい……ふふ……堕ちてもいいの……」
あぁ……いいんだ……気持ちいいだけなら……
堕落しても……この気持ち良さに……堕ちても……
「怖いことなんて何もない……こんなに気持ちいいことが悪いわけない……だから、安心して気持ち良くなっていく……気持ち良く……堕ちていく……」
恐怖が消えて、枷が無くなって、安心して、
気持ち良さを邪魔するものがどんどん消されて無くなって、
どんどん気持ち良くなっていく……どんどん気持ち良く堕ちていく……
「そう、堕ちるのは気持ちいい、意識がスーっと沈んでいく、ふんわり柔らかく、体が深いところに降りていく……」
堕ちていく、余計な物が遠ざかっていく、気持ち良さに沈んでいく、
深く、深く、深く、堕ちて、沈んで、気持ち良くなっていく。
「ほら、すごく気持ちいい、気持ちいいことは怖くない、気持ちいいことはとっても良いこと、どう？ もっと気持ち良く……なりたい？」
「……なり……たい……」
自然と口から答えがこぼれる。
理性も恐怖も消え去って、陶酔のままに心が漏れる。
「それじゃあ……ふふ……気持ち良くしてあげるからね……」
するりと、衣服の中に手が差し込まれる。
ズボンの中に、その中の、気持ち良くなれるところに。
「あぁ……これが男の人の……だ、大丈夫、本能のままに……気持ち良くしてあげれば魔物娘は大丈夫……」
ふにふにもにゅもにゅと、手が中のモノを弄び始める。
自分のとは違うすべすべの指の感覚が快感を生み出し、その肥大化を促していく。
「おっきくなってきた……気持ちいいんだよね、ふふ……うふふふふふ……ほら、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……」
「あぁ……あぁぁぁぁ……」
こねくり回される、気持ち良くなる器官が嬉しそうに仕事の準備を進めていく。
何の力も入っていない体、何も考えていない心、
一切の抵抗が無い状態で与えられる快楽が、
ただただ、溜まるまま、溢れるままに吹き出しそうになる。
「気持ちいい……出るぅ……」
「……え？ ……あッ！？ ダメッ！！！！！」
寸前で、その放出の寸前で、刺激が止まり、快楽が消え、
手も引き抜かれて、可愛がられていた器官に寂しさを疼かせる。
「危なかった……まだ駄目なの……ごめんね」
どうしてやめてしまうのだろう、あんなに気持ち良かったのに。
「ねえ、さっきも言ったけれど、私はね、貴方と結婚……したいの」
結婚……こいつと結婚……
でも……こいつは……こいつは魔物で……
「結婚してくれたら、もっと気持ち良く、幸せにしてあげるから」
あぁ……もっと気持ち良くしてくれる……幸せになれる……
でも……でも……
「いきなり結婚からじゃなくてもいい、恋人からでも、友達からでもいいから、だから、まずは私を、信じてほしいの、信じるって、言ってほしいの」
「……信……じる……？」
信じる……嘘は、感じられない。
町のみんなも、騎士だった人も、幸せそうだった。
「ね、おねがい、少しだけでもいい、私を信じて……」
また強く、体を抱きしめられる。
そうだ、こうして抱きしめられて、気持ち良くて温かいのも嘘じゃない……だから。
「あぁ……信じる……よ」
「ッ〜〜〜〜〜……ふ、うふふ、嬉しいわ、ありがと！」
一瞬見せてくれた、感極まったその表情は本当に嬉しそうで、
やっぱりそれも、嘘だとは思えなかった。
「どんどん、どんどん、気持ち良くなる、どんどん、どんどん、深く、気持ち良く落ちていく」
気持ちいい、ずっと、気持ち良くなる声で囁かれ続けて、
頭の中に気持ちいい声が響きっぱなしで、もうそれ以外がわからなくなっている。
「私を信じてくれたから、貴方はどこまでも落ちることができる、どこまでも気持ち良くなることができる」
止まらない、止まれるところがない。
無意識に気持ち良さを止めていた不安や枷が完全に消えて、
際限なく意識が落ちていく、気持ちいいところに落ちていく。
「私の声が気持ちいい、私の言うとおりにすると気持ちいい、気持ちいいから言うとおりになる、ほら、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい」
声が気持ち良くて、
気持ちいい声に気持ち良くなると言われたからもっと気持ち良くなって、
気持ち良くなると、ちゃんと言うことを聞けたからもっともっと気持ち良くなって、
気持ち良くなると、気持ちいい声がさらに好きになって、もっともっともっと、
気持ち良さが気持ち良さを呼んで、気持ち良さがどんどん深まっていく。
「ふふ……さあ、続きをしましょう……最高に、これ以上ないくらいに、気持ち良くしてあげるからね」
もう、頭が呆けて何も考えていない。
気持ちのいい声に陶酔しきっていて、ズボンを脱がされてもなされるがまま、
その意味も分からずに、声を聞いてとろけているだけ。
「ああ……ほんとに大きい……さ、さあ……気持ち良くなって、ね！ ……んぅ〜〜〜〜〜！！！」
「うぁぁ……ぁぁぁぁ……」
とても暖かく、とろけるような何かに飲み込まれる感覚にうめき声を漏らす。
「あ……あは、入っちゃったぁ……ふ、ふふ……どう？ 気持ち、いい？」
「あぁぁ……気持ちいい……」
とろける、とろける、気持ちいいところがとても気持ちいい。
そのぐらいのことしか考えられない。
「そうよね、き、気持ちいいよね、あ、あは、そのまま、気持ち良くなっていれば、いいの、き、気持ち良さに浸っていればいいのぉ」
「あ……あ……気持ちいい……このままぁ……」
この気持ち良さにされるがままでいい、この気持ち良さに浸っていればいい。
一切の力が入らない脱力した体を、蛇体に包まれ、抱きしめられて、
頭の中は響き渡る気持ちいい声でいっぱいで気持ちいいこと以外は何もわからない。
すべてを任せきって、与えられる気持ち良さにとろけているだけでいい……。
「そ、そうよ、気持ちいい、あ、貴方はもっと気持ち良くなるの、も、もっと……もっともっともっとぉ！」
気持ち良さが加速していく。
飲み込まれたところから伝わってくる気持ち良さがどんどんたまって、
気持ち良さが抑えられなくなってくる。
「あ、あは、す、すごく気持ち良くなる！ 何にも、わからにゃ……わからなくなるくらいぃ、気持ちいぃ、気持ひ良くなるぅ！」
「……ぁ……ぁ……」
もうとんでもなく、とてつもなく気持ちいいのに、
ふにゃふにゃにとろけた体は力が入らずに身じろぐことすらできない。
ふわふわに陶酔した頭は言葉も紡げない。
「き、気持ち良くなる！ 気持ちいい！ き、気持ち、気持ちいい！ いいのぉ！」
……本当に……すごく……すごく……
どうにかなってしまいそうなくらいに……気持ち良くて……
なんだかすごいのが……すごく気持ちいいのが爆発しそうで……
こんなのが爆発したら……なんだかすごいところに……
「ぁ……いく……」
「え？ ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！？！？！？」
……気持ち……いい…………ところ…………に……………………
「ん……ふ……気持ち……良かった……ね」
……ぁ……気持ちいい……声が……聞こえる……
……ここ……どこだろ……ふわふわして……すごく高いような……？
「これでずっと一緒……もう離さないからね……」
ぁ……ぁ……声が……気持ちいい……
俺……なにしてたん……だっけ……？
気持ち良くて……なにも……わからない……
「これからはいつでも、今日よりももっと、気持ち良くしてあげるからね」
今日よりも……そっか……あの気持ちいい爆発で……
こんな……きもちのいいところに……飛ばされたんだ……
「本当に、心の底から私を信じられるようになるまで、何度でも気持ち良くしてあげる、気持ち良く堕としてあげる」
ああ……今日よりももっと気持ち良くなる……今日よりも気持ち良く……堕ちる……
……そういえば……こんなふわふわした……高いところから堕ちたら……
一気に……堕ちてしまったら……
「そう、気持ち良くなる……気持ち良く堕ちる……気持ちいい……気持ちいい……」
ふっと、重力が消えたように堕ちていく。
気持ち良くなる声に囁かれて、
意識が深いところに、気持ちいいところに堕ちていく
どこまでも、どこまでも……
気持ちいい……
気持ち……いい…………
きも……ち…………い……い…………
「ふふ……おやすみなさい」
おしまい
16/02/23 15:52更新 / びずだむ