読切小説
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狼の恩返し






「うん、今日は結構取れたな」


山菜を取りに山へ来ていた青年“ジョン”は背中に背負っていた籠を一旦地面に下ろし、
収穫具合を確認する。

中には籠いっぱいに山菜や薬草等が入っており、彼の言うようになかなかの収穫のようである。


「さてと、そろそろ帰るかな・・・」


目的を達したジョンが家へ戻る為、山を降りようとしていた、その時・・・



“くぅ〜ん・・・・・・・”




「・・・ん?」


―どこからか、何かの鳴き声が聞こえたような気がした。


「気のせいかな・・・?」


そう思い、再び歩き始めるジョン。だが・・・・


“くぅ〜ん・・・くぅ〜ん・・・”


その鳴き声はだんだん近くで聞こえるようになっていた。


「近くに何か居るのかな・・・?」



どうやら気のせいではなかったらしい。


「ちょっと気になるな・・・行ってみるか・・・」


気になったジョンは、その声のもとへ向かう事にした。




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




「あっ・・・」


ジョンがしばらく歩いていると、罠に掛かった子供の狼を発見した。

狼の左の前足にはガッチリと罠が食い込んでおり、酷く出血していた。


「酷い・・・一体誰がこんな事・・・」


「くぅ〜ん・・・くぅ〜ん・・・」


どうする事も出来ず、足の激痛にただ鳴くだけの狼。このままでは、この子はいずれ衰弱して死んでしまう。

一刻も早く助けるべく、狼に近づいたジョンだったが・・・・



「グルルルルルルルルルル!!!!」


「うわっ!?」


かなり警戒しているようで、罠を外そうと手を伸ばした瞬間、全身の毛を逆立てて、威嚇されてしまった。


「大丈夫。僕は君を捕まえに来たんじゃないよ」


そう、これで怯んでいては手遅れになってしまう。ジョンは噛まれる事も覚悟の上で、再び罠に手を伸ばした。


「ガルルルルル!!!!」


―ガブリッ!!


「痛ッ!?待って!すぐに外してあげるから・・・ふんッ!」


ガキン!


腕を噛まれつつ、力を込めて罠を何とかこじ開け、外す事に成功した。


「よし!外れた!!」


「くぅ〜ん・・・・・・」


バタリ・・・・・・


罠が外れ、安心したのか、はたまた出血の為か、狼はそのまま気絶してしまったのであった・・・


「あっ!?君、大丈夫かい!?・・・大変だ!すぐに手当てしないと!!」


ジョンはそっと子共の狼を抱きかかえると、なるべく振動を与えないようにしながら、足早に麓の家まで戻ったのであった・・・




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




「くぅん・・・」



「あ、良かった・・・目が覚めたんだね?」


手当てが済んで、しばらくして狼が目を覚ました。生きていた事にホッとするジョン。


だが・・・



「グルルルルルルル!!」


子供の狼は壁際に後ずさりながら、再び毛を逆立てて、威嚇を始めた。自分の身に何かされるのではないかと思っているのだろう。



「まいったなぁ・・・僕は猟師じゃないから、何もしないんだけど・・・」


ジョンが頬を掻いて困り果てていた、その時・・・


ぐぅぅぅ・・・・


「ん?」

子供の狼からお腹の鳴る音が聞こえた。


「くぅ〜ん・・・」



「ん?お腹が空いたのかい?よしよし、それじゃあ、食事にしようか?僕もまだ何も食べてなかったから」


そう言ってジョンは、キッチンに向かっていった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「う〜ん・・・何がいいかな・・・?」


ジョン自身は簡単なもので良いのだが、問題なのはあの狼だ。何を食べるかが分からないので、迷っていた。


「牛肉は前に街で買った分があるんだけど・・・一応ミルクは用意するとして・・・」



色々迷ったが、結局スクランブルエッグとトースト2枚、それとホットミルクにする事とした。



「・・・って、これじゃあ朝食のメニューじゃないか。まぁ、いっか」


苦笑いするジョンだが、狼の世話は一度もした事が無いのだから、仕方が無いのであった。




「お待たせ、遅くなってごめんね。はい、どうぞ」


ジョンは暖めたミルクの入った器を狼の前に置いて、テーブルにトースト2枚とスクランブルエッグが乗った皿を置いた。



「くんくん・・・・・・」


早速ミルクの匂いを嗅ぎ始める狼。やはりまだ警戒しているのだろうか?


「大丈夫だよ。毒なんて入ってないから。さぁ、冷めない内にどうぞ」


ジョンのその言葉を理解したのか、それとも空腹に勝てなかったのか、狼はミルクを必死に飲み始めた。


相当お腹を空かせていたらしい。



「慌てないで、ゆっくり飲むんだよ」


暫らく様子を見ていたジョンだったが、やがて自分も食事を取る為、椅子に座った。



「それじゃあ、頂きます」


手を合わせて食事を始めようとフォークを手に取るジョン。すると・・・


「くぅ〜ん・・・」


狼が何故かこちらを向いて鳴いていた。よく見ると、ミルクの入っていた器はもう空っぽになっていた。


「・・・ん?足りなかったのかい?じゃあ、ちょっと待っててね・・・」


ジョンは狼の前の空になっていた器にスクランブルエッグを入れてあげた。


「食べられるかどうか分からないけど・・・ん?」


ジョンの心配は無用だった。狼は器に入れた瞬間に、ガツガツと食べ始めた。


「よかった・・・さて、僕も食べるかな!」


結局食事はトースト2枚だけになってしまったが、そんな事はどうでも良かった。


狼が元気を取り戻した事が何よりも嬉しかったから。







−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−






「そういえばさ・・・君の名前を決めて無かったね?」



「くぅん?」



あれから半年程たった頃、食事を済ませたジョンが唐突にこの話題を切り出した。


この日の食事もスクランブルエッグとホットミルクだった。






−−どうでもいいが、この狼はこの組み合わせが相当気に入ったらしく、ほぼ毎日食べていた。


というより、これを出さないと拗ねてしまうのだ。


一度、卵を切らしてしまった時は、ギャンギャン鳴き喚いてかなり大変だった。


慌てて買いに行ったので、何とか事なきを得たが。







「いつまでも“キミ”や“狼君”じゃあ何だか可哀想だし・・・って勝手に決められてもキミも困るよね・・・」


あはは、と笑うジョンだったが・・・


「がう!」


狼はなぜか嬉しそうに吠えた・・・・ような気がした。


「ん?僕が決めても良いのかい?え〜っと、それじゃあ・・・」


顎に手を当て、う〜んと言いながら考えるジョン。


「じゃあ、ポチはどう?」


ジョンは思いついた名前を早速言ってみるが・・・・・・


「グルルルル〜〜!!!」


・・・失敗。

どうやらお気に召さなかったようで、かなり怒っていた。


「ああ、ゴメンゴメン!さすがにそれは無いか・・・ん〜、それじゃあ・・・」


再び顎に手を当て、考え始めるジョン。


「コタローは?これなら良いでしょ?」


ジョンは再度、名前を言ってみるが・・・・・



「くぅ〜ん・・・」


狼は悲しそうに鳴くと、尻尾をシュンとさせて、部屋の隅っこにトボトボと歩いていって、そのまま丸くなって拗ねてしまった。



「ええ!?これもダメ!?・・・う〜ん・・・男の名前が嫌って事は、もしかしてあの子、雌なのかな・・・?それじゃあ・・・・」



またまた顎に手を当て、部屋をうろつきながら考えるジョン。そしてようやく思いついたのか、ポンと手を叩いて嬉しそうな表情をしながら、

丸くなっていた狼へと歩み寄っていった。


「よし!キミの名前はクリス!クリスでいいよね?」


とジョンが言うと、クリスと呼ばれた狼は嬉しそうに尻尾を振ってジョンに擦り寄ってきた。


「よしよし。それにしても、クリスは雌だったんだね?今まで気付いてあげられなくてゴメンね」


そう言いながら頭を撫でてあげると、クリスは尻尾をブンブンと振って嬉しそうに鳴くのであった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「クリス〜!こっちにおいで〜」


「がう!」


尻尾を振りながらやってくるクリス。


「じゃあ、包帯の交換しようか」


「がうがう!」


この包帯の交換も、始めの頃は塗り薬が沁みるのか、物凄く嫌がっていた。


足が痛むはずなのに、鳴きながら逃げ回るもんだから、それはもう大変だったわけだが、今はこうして大人しく交換に応じている。


「うん・・・大分良くなってきたね。この分だと、元気に走り回れる日も近いね」


「がう!」


クリスもまた、嬉しそうに鳴いた・・・ような気がした。



「あと・・・そうだ、クリス、ちょっと待っててね・・・」


ジョンはそう言うと、テーブルの上に置いていた木製の箱を取ると、蓋を開けた。


中には、赤い首輪が入っていた。中央にはプレートが付いていて、“クリス”と名前が彫られていた。


「クリスの名前が入った首輪だよ。これは前に街に行った時に、知り合いの職人さんに作って貰ったんだ。僕からクリスへのプレゼントだよ」


ジョンは首輪をクリスの首に付けてあげた。


「うん、よく似合ってる。良かったね、クリス」


「がう!がうがう!」


クリスは嬉しそうに鳴くと、そのままジョンに飛びついてペロペロとジョンの顔を舐め始めた。


「はは!くすぐったいよクリス、やめてやめて、あはははは!」



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



それから3ヶ月が経った頃・・・・


ついにその日がやってきた。


クリスの足もすっかり良くなったので、野性に返すことにしたのだ。


今、ジョンとクリスは、初めて出会ったあの山に来ていた。



「さあ、クリス。もう足も完治したし、これからはがんばって生きていくんだよ・・・・」


「くぅん・・・・」


離れたくないのか、鳴きながらジョンの足にずっと擦り寄っているクリス。


「僕だって、君と別れるのは辛いけど、このままじゃダメなんだ。だからね・・・ほら」


促してみるものの、一向に山へ帰ろうとしないクリス。


「・・・そうだ!じゃあ、約束だ!クリス、前足を出して?」


「くぅん・・・」


しぶしぶ前足を出すクリス。すると、ジョンはクリスの左の前足に自身が愛用していたバンダナを巻いてあげた。


「いつか、クリスが大きくなったら、また会おう?これは永遠のお別れじゃない、ほんの一時のお別れなんだ・・・・・・ん?」


クリスがふと奥の方を見ると、1匹の大人の狼がこちらの様子を伺っていた。多分、クリスの親なのだろう。



「クリス、キミの親が迎えに来たんじゃないかな?さあ、早く親の所に行くんだ」


「くぅん・・・」



クリスは何度もこちらを振り返りながら、ゆっくりと親の所へと歩いていった。


親はクリスの体を舐めると、こちらに一度振り向き、遠吠えすると、奥のほうへ歩いていった。



「元気に暮らすんだよ・・・クリス・・・・」


ジョンの頬を一筋の涙が伝った。彼は必ずまた会える事を願って、家へと帰ったのであった・・・






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



〜数年後〜






「ご、号外!号外だよ〜〜〜〜!!!ビッグニュースだよ〜〜〜!!!」





「・・・・ん?何だ?」


食材を切らしたジョンが街に買出しに来ていた時だった。


役人らしき人物が何やら慌てた様子で、街の人々に紙を配っていた。



ジョンは、ひらりと飛んできた紙を拾い上げて、読んでみた。



“勇気ある若者、遂に魔王を撃破!世界に平和再び!!”



「・・・・な、なんだ・・って・・・・・?」



街の人々が狂喜している中、たった一人ジョンは驚きとショックを隠せなかった。無理も無い話である。魔王が倒されれば、今生きている全ての魔物も死ぬ。という事は・・・・・



「ク・・・クリス・・・・そんな・・・嘘だろ・・・・・」



ジョンは手に持っていた食材の入った袋をドサリと地面に落としてしまった。食材があちらこちらに散乱したが、その事に全く気付かないほどに動揺していた・・・。

















―しかし、旧魔王が討たれた直後に、新たに魔王が即位していた事など、ジョンを含め、人々は誰も知る由も無かったのであった・・・






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



旧魔王が討たれて、数ヶ月が過ぎた。



ジョンは未だショックから立ち直れずに居た。クリスとの約束を守れなかった事を酷く後悔していたのだ。


「ああ・・・もう食材が無いや・・・・買いに行かないとな・・・・・」



ジョンは気が向かないながらも、仕方なく、街へ向かうのであった・・・・・。












「お、おい、お前知ってるか?」


「ああ、最近なんか妙な魔物が出始めたらしいな?何でも、全員女の姿をしてるらしいぜ・・・」



「・・・・・ん?」


買出しを終えたジョンが家に帰ろうとしていた時、通りかかった道で、男2人が何やら雑談していた話がふと耳に入ってきた。


気になったジョンはその2人に話を聞いてみることにした。


「あの・・・すいません。ちょっと良いですか?」


「ん?何だ兄ちゃん、どうした?」


「今の話・・・本当ですか?」


「ああ・・・つい最近なんだがな?何か妙な魔物があっちこっちでうろつきだしてるらしいんだよ。」


「え?でも、魔王は討たれたって・・・」


「ああ・・・俺っちも風の噂で聞いたんだが、どっかの商人が偶然、女の姿のなってる魔物を見かけたんだってよ?」


「そうだったんですか・・・」


「で、兄ちゃんよ、それがどうしたってんだ?」


「いえ・・・ちょっと気になったもので・・・」


「まぁ、いいけどな。とにかく、兄ちゃんも気ぃつけるんだぞ?」


「分かりました、ありがとうございます・・・」




ジョンは2人にお礼を言うと、その場を後にした。





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「魔物が女性の姿に・・・・・・か」



ジョンは街で聞いた話を信じられずにいた。



「はは・・・そんなまさか、だって、そんな都合の良い話、ある訳ないじゃないか・・・」


そうだ、きっとその商人が夢か幻で見た事を言っているだけなのだ。ジョンは自分にそう言い聞かせる事にした。



「さて、考えるのはやめよう・・・そろそろ食事にするか・・・」





とは言うものの、あまり食欲は無かったので、簡単に済ませる事にした。












「ふぅ・・・ごちそうさま」



軽めの食事を済ませ、洗い物を始めるジョン。ふと、ある器が目にとまった。


クリスの愛用していた、“クリス”と名前が彫られた器だ。


「ダメだダメだ、忘れよう・・・」


洗い物を済ませ、風呂に入ったジョンは、いつもより少し早い時間に寝る事にした。



「おやすみ・・・」


一人しか居ない空間、声は空しく消えていった。











−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




辺りも暗闇に包まれた頃、ジョンの家に来訪者がやってきた。






コンコン・・・・・・・・・・・・・・・・




コンコン・・・・・・・・・・・・・・・・








「・・・・ん?誰だ・・・こんな夜中に・・・」



照明を灯し、ジョンは玄関のドアを開けた。





「・・・はい、どちらさまですか?」


寝起きの掠れ気味の声で来訪者に尋ねるジョン。



「あの・・・夜遅くにすいません、申し訳ありませんが、道に迷ってしまって・・・」



そこには、フードを深く被り、体もマントで覆っている為、顔と姿は見えなかったものの、返ってきたのは間違いなく女性の声だった。



「・・・?こんな山奥に何か用事だったんですか?とにかく、外は冷えますから、どうぞ中に入ってください」



「失礼します・・・」



ジョンは女性を中に招き入れた。








「少し、待っていてくださいね。すぐに何か用意しますから」




「あ、ありがとうございます・・・」


ジョンはキッチンに向かい、何か無いか探ってみるが・・・


「あ、ミルクと卵しかないや・・・」


あいにく、ミルクと卵しか無かった。申し訳なく思いながらも、ジョンはスクランブルエッグとホットミルクを作る事にした。



「・・・・それにしても、あの人、何でフードとマントを外さないんだろう・・・?」



そう、女性は部屋に入っても、フードとマントを外していなかった。ジョンは気になっていた。姿を見られたくないのだろうか?



まぁ、いいか。と、考えるのをやめて、出来た軽食を運ぶ事にした。





「お待たせしました。すみません、ミルクと卵しか無くって・・・ホットミルクとスクランブルエッグでも良いですか?」



「すいません、いきなり押しかけたのに、わざわざ“食事”まで用意してもらって・・・」



「良いんですよ、気にしないで下さい。それより、冷めないうちにどうぞ」



「ありがとうございます・・・」



彼女はお礼を言って、まずはカップを手に取り、次にフォークでスクランブルエッグを掬って食べた。その時マントから出てきた手はフサフサの毛で覆われ、鋭い爪も伸びており、明らかに人間の手ではなかった。



(あの手・・・もしや魔物?じゃあやっぱり、あの人達の言っていた事は本当だったんだ・・・)




「はふぅ・・・“やっぱり、ジョンさんの作ってくれるホットミルクとスクランブルエッグはおいしいです・・・”」



彼女の言葉にジョンは驚いた。今、彼女は何て言った?



「え!?どうして、アナタが僕の名を!?それに料理の事も・・・」



そう聞き返すと、彼女はそっと立ち上がって、こう言った。




「ジョンさん・・・よく見てください。私の“コレ”に見覚えありますよね?」



彼女はそう言って、フードとマントを脱ぐと、そっと床に置いた。




「あっ!?そ、それは・・・・・」



彼女の首に付いている赤い首輪と左腕に巻かれたバンダナ。両方とも所々痛んで色褪せてしまっているものの、確かにジョンがあの狼にプレゼントしてあげたものに間違いは無かった。


その証拠に、首輪には“クリス”と名前が彫られていたのだから。




「キミは・・・まさか、クリスなのかい!?」



「はい・・・私は当時罠に掛かって怪我をしていたクリスです・・・。あの時は助けていただいてありがとうございました」



クリスは眩しいくらいの笑顔でお礼を言ってきた。



「あ・・・ああ・・・クリスッ!!」



ジョンは嬉しさのあまり、彼女を抱きしめた。



「きゃうん!?ジ、ジョンさん!?」



「良かった!!本当に良かった!!もう会えないかと思っていたから・・・」


ジョンは涙を流し、更にぎゅっと抱きしめた。



「だって、約束したじゃないですか。大きくなったらまた会おうって・・・って、ジョンさん、そんなにきつく抱きしめられたら痛いですよぅ〜!」



「あ・・・ご、ゴメン!」


ジョンは、彼女をそっと放すと、冷静になる為に、大きく深呼吸した。



「すー・・・はー・・・でも、魔王が倒されたって聞いたから、僕はてっきり・・・」



「私が死んじゃったと思ったんですか?ふふっ、流石にそれは無いですよ」



よしよしとジョンの頭を撫でるクリス。その手はとても暖かかった。




「でも、私も気が付いたらこの姿になってたんです。後でサキュバスさんから聞いて知った事なんですけど、前魔王様が討たれた後に、新たに魔王様が就かれたそうで、私達魔物が、女性の姿になったのはその魔王様のお力なんだって・・・」



「そうだったんだ・・・」



ようやく理由がはっきりした。街で聞いたときは半信半疑だったが、彼女本人がそう言うのだからもう間違いは無いのだろう。




「あの・・・ジョンさん・・・。私・・・いつか、あなたにお礼がしたかったの・・・。だから・・・その・・・私を、貰ってくれますか?」


顔を赤くしてモジモジしながら、クリスはそう言った。



「え?僕なんかで良いのかい?」




「なんかじゃないですよ。私は、お世話してくれたジョンさんが好きになったから、あなたじゃないと嫌なんです!」



「ありがとう、僕、凄く嬉しいよ」



「あ、そうだ・・・ジョンさん。私、ジョンさんに言わなくちゃいけない事があったんです」



「ん?何だい、クリス?」




彼女はまた顔を赤くすると、そっとジョンにキスをしてこう言った。






「ただいま、ジョンさん」



「ああ・・・お帰り、クリス。それと、これからもずっと一緒だよ」



「はい!」




―こうして、2人は奇跡の再会を果たした・・・



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




「はぁ・・・ジョンさん」



「クリス・・・」




現在、2人はベットの上。お互い生まれたままの姿で、クリスはジョンにお尻を向けて、秘所を指で開いてこう言った。



「私・・・もう、我慢できないんです・・・。ジョンさんのおっきいモノで、私のいやらしいアソコ、ズブズブってしてください」


クリスの言うように、もうソコはビショビショに濡れており、大陰唇がヒクヒクと蠢いて、はやく挿入れてくれと言いたげに愛液を垂らしていた。


「うん。それじゃあ、いくよ・・・。クリス・・・」



「あっ・・・」



ジョンはクリスの女性器にガチガチに硬直した自身をあてがった。


秘所が濡れそぼっていたお陰で、一気に最奥まで入っていった。


何か、膣内で破るような感覚があったが、強烈な快楽の前では、その事を気遣う余裕も消えてしまった。



「きゃうんッ!?痛っ、痛いですぅ・・・」



「あ・・・くうッ!?何だコレ!?締め付けが凄すぎて・・・あ・・・で、出るッ!!」


ビュクッ!!ビュルルルッ!!



「くぅううん!?あ、熱いです・・・私の処女マ○コに精液ッ、射精されてますぅ!きゃぅうううん!」



「うっ・・・くぅ・・・」



ビュクン・・・ビュクン・・・



1分以上出ていたんじゃないかと錯覚するくらい、長い射精を終えたジョン。だが、まだその自身は全く萎えていなかった。



「はぁ・・・はぁ・・・ジョンさんの、まだ固いですね・・・良いですよ・・・気が済むまで、何度でも私の膣内に出してください・・・」


「はぁ・・・はぁ・・・クリス・・・」


「ふふ・・・ジョンさん初めてで力が入らないんですね・・・じゃあ、私が上になりますから・・・ジョンさんはそのまま寝転がっててください」


クリスは仰向けになっているジョンの上に跨ると、そそり立ったジョンの剛直を再び秘所にあて、一気に腰を下ろした。


「あっ・・・くぅうううん!?これ、凄いッ!奥に当たってっ・・・私、イクッ!イッちゃうッ!!〜〜〜〜〜〜ッ!!」


クリスは入れただけでイッてしまったらしく、膣内が激しく痙攣して、ジョンの剛直を思い切り締め付けた。



「くっ・・・クリスっ!そんなに締め付けたら・・・くぅ!」


先ほど射精したばかりなので、暴発はしなかったが、また恐ろしいほどの快楽がジョンを襲った。



「あうぅ・・・気持ちよすぎて、腰、砕けちゃったぁ・・・」



「クリス・・・今度は僕の番だね・・・」


ある程度、回復したジョンが、今度はお返しといわんばかりに下から思い切りクリスの膣内を突き上げた。


「えっ・・・ちょっと待って!私、イッたばかりだから・・・・あっ・ああん!・・あひぃ!」



クリスの僅かな抵抗も空しく、これでもかと言わんばかりに突き上げるジョン。クリスは半ば白目を剥き、潮を吹きながら喘ぎ狂った。

既に結合部からは、粘度の高い、白くなった愛液が垂れ始めていた。



「きゅうん・・・ジョンさぁん・・・胸が切ないんですぅ・・・胸を揉んで下さい・・・」



「クリスッ!!」


ジョンはクリスの要望に応えるべく、少し強めに大きめの胸を揉み始めた。



「ふぁあ・・・気持ち良いの・・・もっと・・・もっと強く揉んでくだしゃいぃ!!」



胸を揉み続けていたジョンは、ふいに上体を起こすと、クリスの胸に吸い付き始めた。




「あっ・・・くぅうん!!そ、そんなぁ・・・あぅぅ・・・乳首舐めちゃらめぇ!!」



ジョンは乳首を舐めるのを止めると、ピンピンに勃っていた乳首を甘噛みした。


―コリッ



「〜〜〜〜〜〜ッ!!イクッ!またイッちゃううう!!」



甘噛みした直後、またクリスはイッてしまった。ジョンの剛直を思い切り締め付けながら。



「くっ・・・もう、出るッ!!」



「膣内にッ!膣内に射精してください!!アナタの赤ちゃん、孕ませてぇ〜!」



「くっ・・・うぁああ!!」


射精しそうになった瞬間、ジョンはクリスの子宮口に自身の鈴口を押し付けた。


―ビュルルッ!!ビュクン!ビュクン!




「ふぁああん!直接子宮にッ!ジョンさんの赤ちゃんの素が入ってくるぅ・・・熱い・・・くぅううん・・・」


2人は繋がったまま、ベットに倒れこんだ。


「はぁ・・・はぁ・・・クリス・・・」



「ジョンさん・・・愛してます・・・」



「僕もだよ、クリス・・・」




最後に、どちらからともなく、キスをして、笑い合うのであった・・・



こうして、かつての狼“クリス”の恩返しは成功したのであった・・・







END










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※おまけ※



〜数年後〜



喉かな風が吹く丘。


ここに、ある3人の親子がピクニックに来ていた。


「今日は絶好のピクニック日和になって良かったね、アリシア?」


「うん!」


ニコニコ笑いながら、ジョンと手を繋いで歩いている、小さなワーウルフのアリシア。


ジョンとクリスとの間に生まれた、2人にとっては、かけがえの無い存在だ。


「も〜!ママ〜!早く早く〜〜!」


アリシアはジョンから離れると、後をゆっくりと歩くクリスへと駆け寄った。



「ふう・・・もう、そんなに急がなくても、お山は逃げたりなんてしないわよ?」


少し辛そうにしているのは、お腹の中に2人目の子供がいるからだ。


「だって、楽しみにしてたんだもん!」


「ふふ、そうだったわね。さぁ、行こっか?」


「うん!」


アリシアは今度はクリスと手を繋ぐと、ゆっくりとジョンのもとへ歩いていった・・・





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13/01/14 00:55更新 / 四爺麓参

■作者メッセージ
覚えてる人いないかもですが、お久しぶりです。(爆)

書けない症候群発症中の四爺麓参です(汗)

今回は、無謀にも魔物娘になる前→なった後の話を書いてみたんですが・・・

ど、どうでしょうか?

それでは、またお会いしましょう ノシ

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