15歳 砂漠
メリルの死からまた一年。未だに彼女の姉には会えずにいた。俺のいた地方は全て周り、次は砂漠を越える事にした。
とにかくあっついのなんのって、もぉーたまったもんじゃねぇっすよ。ほんと。
最悪なのが泣きっ面に蜂というか何というか。水が切れてきた。干涸らびる、ほんとに干涸らびる。水を探さないと。でもその前にどっかで休みたいし。
この砂漠に入って早三日。魔物にも出会わなければ、水にも出会わない。昼は暑いし、夜は寒いし。なんなんだここっ!
と、向こうの方に影を見つけた。やった。休めるっ!
俺は小走りでその影のある場所まで行ってみた。が、近づくと消えてしまった。
(蜃気楼…か…)
俺は半ば諦めつつもその場所に辿り着いた。すると今立っている場所から砂の山を下ったところに遺跡が見えた。
「はぁ…やった…」
俺は砂の山を滑り降り、遺跡の入り口に立った。中からひんやりとした空気が流れてくる。俺はその中に入って身体を休めた。中の床にも砂がつもり、風に吹かれさらさらと動いている。
(…やっぱり喉が渇くな…)
身体の火照りは無くなったが、喉の渇きは潤されない。俺はどうするべきか困っていた。
ポチャン…
(…っ!)
まるで癒しの鐘の音の様に聞こえた。水だ、水がある。
俺は明かりを付けてがむしゃらに置くまで走ると、階段を下りて辿り着いた先には水がたまっていた。
「水だ…」
俺は溜まっていた水を無我夢中で飲んだ。
「ぷはっ…はぁ…はぁ…助かった…」
ガラッ―
物音に振り向くと階段の上からマミーが押し寄せた。よく見れば辺りには水がしたたり落ちているような場所はない。つまり、俺はハマったんだ。
「やっべ…」
俺は幾つかある通路の一つに逃げ込んだ。
通路は人が一人余裕で通れるが、それほど幅が広いわけではなかった。後ろからマミーの声がする。ゆっくりだが追ってきてる。
暫くすると分かれ道があった。左右中央に通路が続き、どの道を選ぶかで命運が決まる。しかし、ゆっくり選んでいる暇はなかった。
後ろからはマミーが追ってきている。そして今見えた。俺の見間違いでなければ、中央と左の通路からマミーが迫ってきている。道は選ばれた。
マミーには気絶させる技はさほど効かないだろう。戦うとなると数が多い分かなり不利だ。
俺は広い部屋に辿り着いた。そこに通路は無く、行き止まりだった。マミーはもうすぐそこまで来ている。俺は何とか時間稼ぎしようと入り口付近で、マミーを迎え撃つことにした。
(マミーはたしか包帯を取ってしまえば無力化できたはずだ…)
通路が狭く、前の何人かを動かなくしてしまえばしばらくは障害になってくれるはずだ。俺は明かりの松明を床に立て、カタールを抜き左手には砂を握りしめた。
マミーが俺の間合いに入った。俺は近づいてきたマミーの包帯を切り裂き、その敏感な肌を露わにさせた。
身体には傷は付いてないので、包帯だけを旨く切り裂けたようだ。その露わになった上半身、主に胸に砂を投げ掛けた。
「ひゃあんっ!」
喘ぎ声を上げて彼女はそこに蹲った。ブルブルと震えている。作戦は成功のようだ。
俺はもう数体に同じ事をした。予想通り動けないようだ。
その間に部屋から抜けられる場所はないものかと探すことにした。部屋の広さ、奥行きは20メートル、横は30メートルで天井はかなり高い。
俺は壁際を一周歩いてみることにした。亀裂はあるものの、どれも浅く表面的なものだと分かる。
俺は考え込んでしまった。この部屋に出口が一つだとすれば、これは困ったことになる。
俺の長い髪が風になびいた。
…ん、ちょっと待てよ、何で風が吹いてるんだ? ここは遺跡の奥の方だ。外から風が入ってくるわけがない、第一大勢のマミーが入り口を塞いでいるのに。
風の吹いてくる方向を確かめた。
(入り口からじゃない…)
部屋に入って左側の壁、今俺が風を感じたところの近くだ。その内の亀裂の一つから吹いてくる。
(こいつは、よく見れば砂がつもって壁の亀裂を塞いでいるんじゃないか…)
俺はその壁にカタールを突き立てた。三回突けば貫通する厚さの壁、その向こうから風が吹いてくる。俺は急いで俺が通れるように高めの場所に穴をあけた。
振り向くと動けずにいたマミーが立ち上がり、俺に少し怒った様にふくれた顔を向けた。
入ってくる入ってくる、可愛い顔したこわーい姉ちゃんたちがぞろぞろ。
俺は明かりを穴の中に投げ入れ、壁を駆け上がって穴に手を掛けてその向こうに降り立った。
壁の向こうは人が通れるほどの通路がある。奥に進むと左右に道が分かれていた。火が右へ揺れる。俺は左の道へ進んだ。
その先もまた分かれ道が続き、俺は風が吹いてくる方向に向かい続けた。
どーも変だ、今俺はココで確信した。暗い中で何度も曲がり角を曲がり続けて、方向感覚は狂った。
俺は俺の考えを証明するためにある実験を行うことにした。一枚の紙とペンを取り出し、歩いた歩数と壁の角度をそのままに紙に書いてみることにした。
今いる場所を始点にしてまず35歩で分かれ道に辿り着いた。そして左に曲がり46歩。次は右に40歩…
やっぱりだ…、俺の考えは正しかったらしい。俺はいつからか同じところをぐるぐる回っているらしい、それも遠回りをしながら。
風は外から吹き込むはずだ。なので同じところをぐるぐる回ると言うことはあり得ない。
だがもし風を操ることが出来たら…。それに俺はさっきから誰かに見られている気がする。
俺は荷物の中の魔物図鑑を開き、砂漠地帯にいる魔物を見直した。すると、強い魔力を有し、尚かつ遺跡に住む、マミーを統治する魔物がいた。
俺は一度松明の火を消した。辺りは一瞬で闇に戻り、目に頼ることは無理になる。俺は耳と触覚に感覚をゆだねる。
ジャリ…ヒタヒタ…ダサダサ…
何かが砂を踏み、足下の石の床が露わになったところを踏み、そして衣服が擦れる音。何者かがいる。だが、マミーではない。声が聞こえないからだ。
俺は音のする方に再び火を付けた松明を投げた。
「うわっ…!」
予想外の出来事に彼女を匿っていた魔法が解け、俺にはその姿が分かる。松明の炎も揺らぎをやめた。
「俺はお前の策にまんまとハマったわけだ、アヌビス」
「ちっ、バレてしまったか…」
突如現れたかのようにその姿を徐々に視認できるようになった彼女は黒い髪と大きめの狼のような手と足の体毛、頭には耳が立っていて尻尾が延びている。金色の装飾品と剣、そして杖を持った若い娘。
「この暗く、狭く、いつまで続くか分からない局所に迷い込ませることで精神的に弱くし、体力も削った後で襲いかかる…まぁ〜よく考えてくれちゃって」
「いつから気付いた?」
「さぁ、何となくって感じだけどな」
「何となく、か。バカにしてくれるな…」
「うわっ、ってな、何とも可愛い声だったぜ?」
「…、このほんとにバカにしてっ―!」
彼女は怒った表情で杖を手放し、剣に持ち替えた。杖は直立不動でその場に留まっている。
カタールを抜いた俺は、狭い通路の中で戦いをものにしていた。カタールは斬るよりも突くことに特化しているらしい。
狭い通路では剣を振り回すより、小回りの利く剣を突きだした方がいいに決まっている。
俺は上手く通路の上の角に切っ先を通らせて振り下ろす彼女の攻撃の軌道を読み切り、空いたところからカタールで突いた。
彼女は剣を指先で回しカタールに当てて切っ先を反らせた。まあ俺は当てる気など無かったのだが。
この通路で戦う上では剣の振り方が一定の軌道を描く。故に、軌道を読み回避することは安易だった。
そして彼女が剣を振り切った時だった。普通ならその軌道を戻し、一度前に持ってこなければ方向を変えることは出来ない。ハズだった。
彼女は体ギリギリから小さい軌道で剣を振った。俺はそれをとっさに右カタールで防ぎ、後ろに飛び退いた。そして間髪入れずに前に飛んでカタールで牽制した。
彼女は俺の牽制攻撃を全て防ぎ、剣は前に、体は後ろに振り、剣で突きながらも体は間合いを空けていた。
彼女は驚いているようだった。この通路で戦い慣れた自分と互角に戦える人間など今までいなかったのだろう。
「ちぃっ、貴様…戦い慣れているな?…だがっ!」
彼女は左手を横に突きだし、左掌を後ろに向けた。すると杖は彼女の元に飛んできた。
そして杖を両手で持ち、俺の方に向けた。俺は何かが来ると思い、後ろに退こうとしたが飛び退く寸前で体が動かなくなった。いや、正確には周りの空気ごと下半身が固まったと言った方がいいかもしれない。
俺の体勢は右足を後ろ、左足を前にし、体は完全に右足より後ろにあって本当ならずっこける体勢だ。
腕も肘から先しか動かず、可動範囲も制限がある。両腕はほぼ同じ形で止まっている。上げても自分の腰より上には行かず、下げる場合は上腕の向いている真下を向けられる。
なんとも変な格好で固まったもんだな…何とか出来ないもんかねぇ。
「ンッフフフフ…どうだ?私の『呪い』の力は」
「そうだな…あんまり好きじゃないかな、こういうのは」
彼女は俺に詰め寄った。
「減らず口だなぁ」
(あ、そう言えば気が違うところへ向けば解けるかも…さっきもそうだったし)
さぁて、どうやって気を反らせるか。動けるのは口と腕だけだしな…
「ま、いいだろう。どうせもう私の夫になるんだから…」
「遠慮したいな…」
「この状況で貴様が逃れられるとでも言うのか?無理だな、貴様は今その憎たらしい口と、その武器を持った腕を少ししか動かせないんだろう?」
まるでキスするように顔を近づけ、肩に手を掛けてその胸を俺に押しつけた。
「さあ、もう諦めなさい」
彼女は上半身を反らせた。そして胸が離れ、その先の光景に俺は勝機を見た。
「お前は俺がこの口と腕が少ししか動かないって言ったな?」
「ああ。異論があるか?」
「逆に言えば、腕を少しは動かせるんだろ?こんな風にっ…!」
俺は限界まで上げていた前腕を下げた。カタールの切っ先はどこにあったかというと、アヌビスの大事なところを隠している布を固定している金色の金具の少し上。
何とも運に恵まれたようだ。アヌビスは違和感に気付いて下を向いた。
「え?なあぁっ!」
彼女は悲鳴を上げて、俺は拘束から解放された。
俺は体勢を立て直すと、手で前を隠した彼女がお尻を突き出したまま動けないのをいいことに、後ろに回り込み後ろの布も切った。
「可愛いお尻が丸見えだなぁ」
「なっ、見るなぁっ!」
彼女はへたり込んで前後を手で覆い隠し、完全に戦える状況ではなくなった。アヌビスは予想外のことが起こるとパニックを起こす。まさにさっきの展開はラッキーだったのだ。
「さて、形勢逆転だがどうする?まだやるか?」
「馬鹿者ぉ…」
彼女は思わず涙を流している。俺は荷物の中からロープを取りだした。
「何をっ―」
「これには魔法がかかっててなぁ。魔物が三人掛かりでないと切れない丈夫な紐だ」
「何っ…」
「これでお前を拘束すれば俺はゆっくりと帰り道を探せるわけだ」
「うっ…」
彼女は身じろぎした。だがパニックで思うように体をコントロールできていないようだ。
「これはお前を縛ることも出来るが…何かを繋ぐことも出来るなぁ」
「何っ?………あっ」
彼女は俺の言った意味に少しして気付いたようだ。
「頼む、その紐を渡せっ」
俺は彼女と目線を会わせるように屈むと
「出る道を教えてくれたらね」
と告げた。彼女は「え?でも…それ…うぅ…」とまた泣きそうになった。
「分かった、教えるからそれを渡せっ」
「渡せぇ〜?」
「わ、渡してくださいぃ…」
勝った。俺は今完全に勝利した。こうなってしまえばこっちのものだ。俺は彼女の秘部を隠していた布を紐で金具や切れたもう一端と紐で結んだ。
彼女はすっかり大人しくなってしまった。
「お前…いったい何なんだよぉ。ほんとならあの呪いも口や目以外は完全に動かなくなるはずなのに…」
「多分お前らの言う『精』と『魔力』を両方持ってるからじゃないか?」
「何ぃ…両方?…そんなの反則だ…」
アヌビスは頭を掻きむしった。そして涙をぬぐった。
「んなこと言ったってな…しょうがねぇだろ、こればっかりは。で、出口はどっちなんだ?」
「…こっちだ…」
彼女は立ち上がると歩き出した。
俺は久しぶりに日の目を拝んだ。アヌビスに案内されてちゃんと出られたようだ。生真面目な正確が良くも悪くも働いてくれた。
「助かったよ、ありがとな」
「うるさいっ、どっかに言ってしまえ!」
彼女はまた泣きそうだ。アヌビスって言うのはみんなこんなに泣き虫なのか?
「そうか?お礼でもしようかと思ってたんだけどな」
彼女の耳がピクリと動いた。
「本当か?」
「ん…?ああ…」
「なら…その…わ、私と一度交われ…」
「何?」
「お、夫にはならなくていいから…一度交われ…」
これは…なんつー展開だか。
「ほんとだな?」
「ほんとだっ!私は嘘など付かないっ!」
俺は「それなら…」と泣かせてしまったお詫びに彼女のお願いを聞くことにした。
俺たちは少し戻ると松明を地面に刺して、彼女も俺もズボンと下着を脱いだ。彼女はその場に四つん這いになって、「早くしろ…」と言った。
俺は後ろから覆い被さると、左手で彼女の秘部を、右手で胸を刺激した。
「ひゃあんっ…」
なんとも可愛らしい喘ぎ声を出す、俺はそのまま刺激を続けた。そして左手の方からクチュクチュといやらしい音がし始めた。
「あっ…んっ…お、音を立てるなぁ…」
「勝手にするんだ、仕方ないだろ?」
「手…は…もういいからぁ…早く…」
彼女は尻尾を左右に振りながら言った。出会った時の態度とは大違いだ。
俺はモノをゆっくりと挿入した。
「くひゃぁ…すごいっ…」
俺はゆっくりと腰を動かした。彼女の喘ぎ声が闇の中にこだまする。
俺が腰を前に突くたびに彼女の喘ぎは大きくなり、腕は振るえて曲がっていった。そしてとうとう腕は力無く折れ、そろえた両腕に頭を乗せている。
「あっ…ダメェ…もうっ…!」
彼女の体が発した声と共に激しく痙攣した。
とにかくあっついのなんのって、もぉーたまったもんじゃねぇっすよ。ほんと。
最悪なのが泣きっ面に蜂というか何というか。水が切れてきた。干涸らびる、ほんとに干涸らびる。水を探さないと。でもその前にどっかで休みたいし。
この砂漠に入って早三日。魔物にも出会わなければ、水にも出会わない。昼は暑いし、夜は寒いし。なんなんだここっ!
と、向こうの方に影を見つけた。やった。休めるっ!
俺は小走りでその影のある場所まで行ってみた。が、近づくと消えてしまった。
(蜃気楼…か…)
俺は半ば諦めつつもその場所に辿り着いた。すると今立っている場所から砂の山を下ったところに遺跡が見えた。
「はぁ…やった…」
俺は砂の山を滑り降り、遺跡の入り口に立った。中からひんやりとした空気が流れてくる。俺はその中に入って身体を休めた。中の床にも砂がつもり、風に吹かれさらさらと動いている。
(…やっぱり喉が渇くな…)
身体の火照りは無くなったが、喉の渇きは潤されない。俺はどうするべきか困っていた。
ポチャン…
(…っ!)
まるで癒しの鐘の音の様に聞こえた。水だ、水がある。
俺は明かりを付けてがむしゃらに置くまで走ると、階段を下りて辿り着いた先には水がたまっていた。
「水だ…」
俺は溜まっていた水を無我夢中で飲んだ。
「ぷはっ…はぁ…はぁ…助かった…」
ガラッ―
物音に振り向くと階段の上からマミーが押し寄せた。よく見れば辺りには水がしたたり落ちているような場所はない。つまり、俺はハマったんだ。
「やっべ…」
俺は幾つかある通路の一つに逃げ込んだ。
通路は人が一人余裕で通れるが、それほど幅が広いわけではなかった。後ろからマミーの声がする。ゆっくりだが追ってきてる。
暫くすると分かれ道があった。左右中央に通路が続き、どの道を選ぶかで命運が決まる。しかし、ゆっくり選んでいる暇はなかった。
後ろからはマミーが追ってきている。そして今見えた。俺の見間違いでなければ、中央と左の通路からマミーが迫ってきている。道は選ばれた。
マミーには気絶させる技はさほど効かないだろう。戦うとなると数が多い分かなり不利だ。
俺は広い部屋に辿り着いた。そこに通路は無く、行き止まりだった。マミーはもうすぐそこまで来ている。俺は何とか時間稼ぎしようと入り口付近で、マミーを迎え撃つことにした。
(マミーはたしか包帯を取ってしまえば無力化できたはずだ…)
通路が狭く、前の何人かを動かなくしてしまえばしばらくは障害になってくれるはずだ。俺は明かりの松明を床に立て、カタールを抜き左手には砂を握りしめた。
マミーが俺の間合いに入った。俺は近づいてきたマミーの包帯を切り裂き、その敏感な肌を露わにさせた。
身体には傷は付いてないので、包帯だけを旨く切り裂けたようだ。その露わになった上半身、主に胸に砂を投げ掛けた。
「ひゃあんっ!」
喘ぎ声を上げて彼女はそこに蹲った。ブルブルと震えている。作戦は成功のようだ。
俺はもう数体に同じ事をした。予想通り動けないようだ。
その間に部屋から抜けられる場所はないものかと探すことにした。部屋の広さ、奥行きは20メートル、横は30メートルで天井はかなり高い。
俺は壁際を一周歩いてみることにした。亀裂はあるものの、どれも浅く表面的なものだと分かる。
俺は考え込んでしまった。この部屋に出口が一つだとすれば、これは困ったことになる。
俺の長い髪が風になびいた。
…ん、ちょっと待てよ、何で風が吹いてるんだ? ここは遺跡の奥の方だ。外から風が入ってくるわけがない、第一大勢のマミーが入り口を塞いでいるのに。
風の吹いてくる方向を確かめた。
(入り口からじゃない…)
部屋に入って左側の壁、今俺が風を感じたところの近くだ。その内の亀裂の一つから吹いてくる。
(こいつは、よく見れば砂がつもって壁の亀裂を塞いでいるんじゃないか…)
俺はその壁にカタールを突き立てた。三回突けば貫通する厚さの壁、その向こうから風が吹いてくる。俺は急いで俺が通れるように高めの場所に穴をあけた。
振り向くと動けずにいたマミーが立ち上がり、俺に少し怒った様にふくれた顔を向けた。
入ってくる入ってくる、可愛い顔したこわーい姉ちゃんたちがぞろぞろ。
俺は明かりを穴の中に投げ入れ、壁を駆け上がって穴に手を掛けてその向こうに降り立った。
壁の向こうは人が通れるほどの通路がある。奥に進むと左右に道が分かれていた。火が右へ揺れる。俺は左の道へ進んだ。
その先もまた分かれ道が続き、俺は風が吹いてくる方向に向かい続けた。
どーも変だ、今俺はココで確信した。暗い中で何度も曲がり角を曲がり続けて、方向感覚は狂った。
俺は俺の考えを証明するためにある実験を行うことにした。一枚の紙とペンを取り出し、歩いた歩数と壁の角度をそのままに紙に書いてみることにした。
今いる場所を始点にしてまず35歩で分かれ道に辿り着いた。そして左に曲がり46歩。次は右に40歩…
やっぱりだ…、俺の考えは正しかったらしい。俺はいつからか同じところをぐるぐる回っているらしい、それも遠回りをしながら。
風は外から吹き込むはずだ。なので同じところをぐるぐる回ると言うことはあり得ない。
だがもし風を操ることが出来たら…。それに俺はさっきから誰かに見られている気がする。
俺は荷物の中の魔物図鑑を開き、砂漠地帯にいる魔物を見直した。すると、強い魔力を有し、尚かつ遺跡に住む、マミーを統治する魔物がいた。
俺は一度松明の火を消した。辺りは一瞬で闇に戻り、目に頼ることは無理になる。俺は耳と触覚に感覚をゆだねる。
ジャリ…ヒタヒタ…ダサダサ…
何かが砂を踏み、足下の石の床が露わになったところを踏み、そして衣服が擦れる音。何者かがいる。だが、マミーではない。声が聞こえないからだ。
俺は音のする方に再び火を付けた松明を投げた。
「うわっ…!」
予想外の出来事に彼女を匿っていた魔法が解け、俺にはその姿が分かる。松明の炎も揺らぎをやめた。
「俺はお前の策にまんまとハマったわけだ、アヌビス」
「ちっ、バレてしまったか…」
突如現れたかのようにその姿を徐々に視認できるようになった彼女は黒い髪と大きめの狼のような手と足の体毛、頭には耳が立っていて尻尾が延びている。金色の装飾品と剣、そして杖を持った若い娘。
「この暗く、狭く、いつまで続くか分からない局所に迷い込ませることで精神的に弱くし、体力も削った後で襲いかかる…まぁ〜よく考えてくれちゃって」
「いつから気付いた?」
「さぁ、何となくって感じだけどな」
「何となく、か。バカにしてくれるな…」
「うわっ、ってな、何とも可愛い声だったぜ?」
「…、このほんとにバカにしてっ―!」
彼女は怒った表情で杖を手放し、剣に持ち替えた。杖は直立不動でその場に留まっている。
カタールを抜いた俺は、狭い通路の中で戦いをものにしていた。カタールは斬るよりも突くことに特化しているらしい。
狭い通路では剣を振り回すより、小回りの利く剣を突きだした方がいいに決まっている。
俺は上手く通路の上の角に切っ先を通らせて振り下ろす彼女の攻撃の軌道を読み切り、空いたところからカタールで突いた。
彼女は剣を指先で回しカタールに当てて切っ先を反らせた。まあ俺は当てる気など無かったのだが。
この通路で戦う上では剣の振り方が一定の軌道を描く。故に、軌道を読み回避することは安易だった。
そして彼女が剣を振り切った時だった。普通ならその軌道を戻し、一度前に持ってこなければ方向を変えることは出来ない。ハズだった。
彼女は体ギリギリから小さい軌道で剣を振った。俺はそれをとっさに右カタールで防ぎ、後ろに飛び退いた。そして間髪入れずに前に飛んでカタールで牽制した。
彼女は俺の牽制攻撃を全て防ぎ、剣は前に、体は後ろに振り、剣で突きながらも体は間合いを空けていた。
彼女は驚いているようだった。この通路で戦い慣れた自分と互角に戦える人間など今までいなかったのだろう。
「ちぃっ、貴様…戦い慣れているな?…だがっ!」
彼女は左手を横に突きだし、左掌を後ろに向けた。すると杖は彼女の元に飛んできた。
そして杖を両手で持ち、俺の方に向けた。俺は何かが来ると思い、後ろに退こうとしたが飛び退く寸前で体が動かなくなった。いや、正確には周りの空気ごと下半身が固まったと言った方がいいかもしれない。
俺の体勢は右足を後ろ、左足を前にし、体は完全に右足より後ろにあって本当ならずっこける体勢だ。
腕も肘から先しか動かず、可動範囲も制限がある。両腕はほぼ同じ形で止まっている。上げても自分の腰より上には行かず、下げる場合は上腕の向いている真下を向けられる。
なんとも変な格好で固まったもんだな…何とか出来ないもんかねぇ。
「ンッフフフフ…どうだ?私の『呪い』の力は」
「そうだな…あんまり好きじゃないかな、こういうのは」
彼女は俺に詰め寄った。
「減らず口だなぁ」
(あ、そう言えば気が違うところへ向けば解けるかも…さっきもそうだったし)
さぁて、どうやって気を反らせるか。動けるのは口と腕だけだしな…
「ま、いいだろう。どうせもう私の夫になるんだから…」
「遠慮したいな…」
「この状況で貴様が逃れられるとでも言うのか?無理だな、貴様は今その憎たらしい口と、その武器を持った腕を少ししか動かせないんだろう?」
まるでキスするように顔を近づけ、肩に手を掛けてその胸を俺に押しつけた。
「さあ、もう諦めなさい」
彼女は上半身を反らせた。そして胸が離れ、その先の光景に俺は勝機を見た。
「お前は俺がこの口と腕が少ししか動かないって言ったな?」
「ああ。異論があるか?」
「逆に言えば、腕を少しは動かせるんだろ?こんな風にっ…!」
俺は限界まで上げていた前腕を下げた。カタールの切っ先はどこにあったかというと、アヌビスの大事なところを隠している布を固定している金色の金具の少し上。
何とも運に恵まれたようだ。アヌビスは違和感に気付いて下を向いた。
「え?なあぁっ!」
彼女は悲鳴を上げて、俺は拘束から解放された。
俺は体勢を立て直すと、手で前を隠した彼女がお尻を突き出したまま動けないのをいいことに、後ろに回り込み後ろの布も切った。
「可愛いお尻が丸見えだなぁ」
「なっ、見るなぁっ!」
彼女はへたり込んで前後を手で覆い隠し、完全に戦える状況ではなくなった。アヌビスは予想外のことが起こるとパニックを起こす。まさにさっきの展開はラッキーだったのだ。
「さて、形勢逆転だがどうする?まだやるか?」
「馬鹿者ぉ…」
彼女は思わず涙を流している。俺は荷物の中からロープを取りだした。
「何をっ―」
「これには魔法がかかっててなぁ。魔物が三人掛かりでないと切れない丈夫な紐だ」
「何っ…」
「これでお前を拘束すれば俺はゆっくりと帰り道を探せるわけだ」
「うっ…」
彼女は身じろぎした。だがパニックで思うように体をコントロールできていないようだ。
「これはお前を縛ることも出来るが…何かを繋ぐことも出来るなぁ」
「何っ?………あっ」
彼女は俺の言った意味に少しして気付いたようだ。
「頼む、その紐を渡せっ」
俺は彼女と目線を会わせるように屈むと
「出る道を教えてくれたらね」
と告げた。彼女は「え?でも…それ…うぅ…」とまた泣きそうになった。
「分かった、教えるからそれを渡せっ」
「渡せぇ〜?」
「わ、渡してくださいぃ…」
勝った。俺は今完全に勝利した。こうなってしまえばこっちのものだ。俺は彼女の秘部を隠していた布を紐で金具や切れたもう一端と紐で結んだ。
彼女はすっかり大人しくなってしまった。
「お前…いったい何なんだよぉ。ほんとならあの呪いも口や目以外は完全に動かなくなるはずなのに…」
「多分お前らの言う『精』と『魔力』を両方持ってるからじゃないか?」
「何ぃ…両方?…そんなの反則だ…」
アヌビスは頭を掻きむしった。そして涙をぬぐった。
「んなこと言ったってな…しょうがねぇだろ、こればっかりは。で、出口はどっちなんだ?」
「…こっちだ…」
彼女は立ち上がると歩き出した。
俺は久しぶりに日の目を拝んだ。アヌビスに案内されてちゃんと出られたようだ。生真面目な正確が良くも悪くも働いてくれた。
「助かったよ、ありがとな」
「うるさいっ、どっかに言ってしまえ!」
彼女はまた泣きそうだ。アヌビスって言うのはみんなこんなに泣き虫なのか?
「そうか?お礼でもしようかと思ってたんだけどな」
彼女の耳がピクリと動いた。
「本当か?」
「ん…?ああ…」
「なら…その…わ、私と一度交われ…」
「何?」
「お、夫にはならなくていいから…一度交われ…」
これは…なんつー展開だか。
「ほんとだな?」
「ほんとだっ!私は嘘など付かないっ!」
俺は「それなら…」と泣かせてしまったお詫びに彼女のお願いを聞くことにした。
俺たちは少し戻ると松明を地面に刺して、彼女も俺もズボンと下着を脱いだ。彼女はその場に四つん這いになって、「早くしろ…」と言った。
俺は後ろから覆い被さると、左手で彼女の秘部を、右手で胸を刺激した。
「ひゃあんっ…」
なんとも可愛らしい喘ぎ声を出す、俺はそのまま刺激を続けた。そして左手の方からクチュクチュといやらしい音がし始めた。
「あっ…んっ…お、音を立てるなぁ…」
「勝手にするんだ、仕方ないだろ?」
「手…は…もういいからぁ…早く…」
彼女は尻尾を左右に振りながら言った。出会った時の態度とは大違いだ。
俺はモノをゆっくりと挿入した。
「くひゃぁ…すごいっ…」
俺はゆっくりと腰を動かした。彼女の喘ぎ声が闇の中にこだまする。
俺が腰を前に突くたびに彼女の喘ぎは大きくなり、腕は振るえて曲がっていった。そしてとうとう腕は力無く折れ、そろえた両腕に頭を乗せている。
「あっ…ダメェ…もうっ…!」
彼女の体が発した声と共に激しく痙攣した。
10/01/11 00:41更新 / アバロン
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