連載小説
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竜の秘宝 3
ドラゴニア大闘技大会当日。国中は二つの話題で持ち切りだった。
一つは今日行われる大闘技大会。どのような猛者達が集い見事な闘いと交わりを見せてくれるのかと期待が上がり続けている。
もう一つは城での一件。城に泥棒が侵入したというある意味で勇者な所業と撃退した事実、そして犯人は今も逃走中であることで話題には最適だった。

「聞いてくださいヌパンさん!実は昨日の夜女王様の城に泥棒が入ったらしいんですよ!」
「へーそらまた大変なこって」
「幸い狙われた宝は無事だったそうですが泥棒さんたちは捕まらずに逃げ切ったそうで、まだ国内に潜んでいるらしいです。だからヌパンさんたちも戸締りに気をつけてくださいね!なんなら今夜私の部屋にでも泊まりますか!」
「ありがとね〜リティアちゃ〜ん♪でもおじさんたちは大丈夫だから心配しなくていいぜ〜♪」
(なんつったって本人だしな)

犯人が自分自身を襲うなんてどうやったらできるのか教えて欲しいくらいであった。

「しかし女王陛下の城に忍び込むとは恐れを知らないバカもいたものね。あんたもそう思うでしょ二元?」
「……そうだな」
「で、でもあんたがどうしても怖いって言うなら…こ、今夜私の部屋にでも来させてあげなくも…ない…わよ?」
「生憎と間に合ってる。それと男を誘うならもう少し素直になった方がいい」
「な!ち、違うわよ!そんなんじゃないったら!っていうかそれどういうことよ!」
「あららら〜?大胆なことじゃありませんかシルティアちゃ〜ん?」
「ヌパンは黙ってなさい!」
「あでっ!」
(元気なこったな)

ヌパンは尻に強烈な蹴りを食らった。

「しかし捕まらず逃げ果せたとは泥棒の方もやるな。それ程の勇者ならば私の婿に相応しいかもな!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないのレイアちゃん♪」
「? なんでヌパンが喜ぶのだ?」
「!? え、えーと、そりゃアレだ!レイアちゃんに夫ができるのなら俺様も嬉しいな〜って!」
「そ、そうか……私にも夫ができるだろうか?」
「できるできる〜!レイアちゃんってばそりゃあもう可愛いし美人だしこんな優良物件見逃すなんざ見る目ないぜ〜!」
「そ、そうだな!でも私理想高いからな〜!私より強いオスが最低限の条件だしな〜!」
「大丈夫大丈夫〜!なんってたって女王の城から逃げ出せる程だからきっと眼鏡に叶うよ〜!」
「そうだな!そうだと良いな!」
(果たして真実を知った時どんな反応をするのやら……)

そういう意味でもあまり希望は抱かせない方が良いんじゃないかと二元は思った。

「噂ではまだ宝を諦めてないらしくてまた狙いに来るかもしれないらしいわよ」
「だからくれぐれも気をつけてくださいね!」
「怪しい奴を見つけたらすぐに報告するんだぞ?」
「はぁ〜い!ボクちゃん約束しま〜す!」
(目の前にいるんだがなぁ……)

などとは口が裂けても言えない二元だった。

(おいヌパン、この様子じゃあまだ俺たちの手配書もまだ出回ってねえみてえだな)
(それはそれで好都合だぜ二元。出回る前に手早く済ませようぜ)
(それは良いがなんで観光ガイドなんて頼むんだよ?)
(なぁに国中回るんだだったら詳しい人に頼んだ方が効率が良いだろう?それに道中男2人が歩ってたら野生の魔物娘に狙わなかねないぜ)
(それはそうだけどよ……むしろガイドにアプローチかけられてる気がするだが?)
(なになに〜そんときゃ華麗に躱せばいいのさ)
(はぁ……土ェ門の奴は上手くやってかな)
(土ェ門なら1人でも大丈夫だろ。さ、俺らは俺らで必要なモン掻き集めようぜ)
「さて、次の観光スポットですが──」

と、なぜヌパンと二元が呑気に観光ガイドをされているかといえば当然理由がある。

数時間前。
3人はあの後なんとか歩きで宿に着いて交代で外の見張りをしていた。外は時々竜騎士の警備隊が巡回しており、恐らく自分たちを探しているのだろう。その光景を見下ろしながらヌパンと二元は愚痴る。

「あーやだやだ。肩身が狭いったらありゃあしねえ」
「昨日あんだけ交わってた奴らとは思えねえ規律さだ」
「オンとオフがはっきりしてやがるぜ。……っと、行ったみたいだな」

一先ず安全を確保した3人は作戦会議に移る。

「して、これからどうする?拙者としては早く終わらせて大会に出場したいのだが」
「慌てんなって土ェ門〜。大丈夫だよ出場させてやっから。だがすぐに動くわけには行かねえ。臨機応変に無策で突っ込めるほど相手は安くねえ」
「ああ。一度やりあったが竜騎士の練度は相当だった。周到に準備しねえと今度こそ食われるだろうな」
「そういうこと♪夜の侵入が失敗したから次の作戦は失敗時のBプランだ。難易度は昨夜の比じゃねえがこうなった以上こいつを利用するしかねえ」

そう言ってヌパンが出したのは大闘技大会のチラシだった。

「大闘技大会か」
「闘技場という構造上逃走ルートは限られる。だが上手く人混みに紛れれば逃げ切れるかもしれねえ」
「問題はどう盗むかだな」
「あの様子だと竜の秘宝は女王がいつも肌身離さず持ち歩いてるみたいだな」
「まあ昨日の一件もあればいくら警備を強化しても城に置いとくことは俺だったらしねえな」
「だが女王という立場上大会に出席せず城に引き篭もることはしないはずだ」
「そこが狙い目ってわけか。デカい大会だから今更中止、なんてこともできねえんだろうな」
「加えて、竜は誇り高い種族。盗人ごときに臆しては種族の恥、というのもござろう」
「ま、そういうわけで大会が開催中の八日間。その間に片をつけるぜ」

その後大会の花火が打ち上げられるまで綿密な計画立ては続いた。

「よし。一先ず流れは完成、っと」
「問題は相手側の不安要素だな」
「ああ。なんてったてデカい大会だからな。当日は女王を含め大陸中の各親魔物国家のトップの面々が来賓として多数来日するからな。見ろよこのゲストの欄、レスカティエ陥落の主犯にして過激派の最先鋒の魔界第四女王 デルエラが来るってよ」
「レスカティエ最強の魔界勇者 ウィルマリナ・ノースクリムも夫連れてご来日、か。ま、当然一番腕の立つ護衛を連れて来るだろうな。だから大会前に片付けたかったわけだ」
「さらにさらに全魔物にとって至高たる存在の魔王夫妻もご登場ときた!あーっはっはっ俺ら全方位四面楚歌でやんの!」

ヌパンはパンっと自分の頭を叩いて呵々大笑する。

「その他魔界のビッグも次々来日……まさに悪の大盤振る舞いだな」
「世も末でござる」
「そんなの新魔王になってからとっくに来てんだよ」
「こんな壮々たる面子の中で失敗でもしたら世界中どころか後世の歴史にまで晒し者だぜ」
「だが成功すれば後の世までに名を残すうつけ者となろう。まさに博打でござるな」

普通の者ならばこの時点で身を退くのが最善策。それ程まで状況は最悪の一途を辿っている。
だがこの男たちは違う。違ったのだ。

「へへっ、燃えるじゃねえか。快盗ヌパン三世、世界の頂点を前に一世一代の大立ち回りをかましてやるぜ……!」
「ハードボイルドには危険が付き物ってな」
「当たるも八卦当たらぬも八卦。ならば我が剣心ゆくまで振るうのみ!」

「話は纏まった?それでいつ動くのかしら?」

そこで突然3人とは違う女性の声が部屋に響く。声がする方向に顔を向けるとそこには浴衣を着崩して扇情的に横たわるサキュバスが居た。

「あら〜❤不魅子ちゃ〜ん❤」
「ハァイ❤ヌパン。ご・ぶ・さ・た❤邪魔してるわよ」

ヌパンは不魅子と呼ばれるサキュバスの隣にすぐさま移動してゴマを擦り始めた。

「ご無沙汰もご無沙汰〜最近会えなくて寂しかったぜ〜❤いつ来たの?浴衣ちょ〜似合ってるよ〜グフフ❤」
「うふ、ありがと❤宿には昨日の夜着いたのよ。それで朝のお風呂上がったらなんだか懐かしい気配がするじゃない?そ・れ・で❤」
「な・る・ほ・ど〜❤だからこんな、スゥー、いい匂いが、スゥー、するのね〜❤」

不魅子はまるでペットを愛でるようにその手で背後から顔近付けるヌパンの頬を撫でる。その動作だけでもヌパンは骨抜きになるがさらに風呂上がりという不魅子の乾き切ってない髪、仄かに香るシャンプーの匂い、そして茹だった肌が魅せる艶めかしき肢体。着崩した浴衣による扇情さがそれらをさらにブーストさせる。
ヌパンはそれらの視覚的性攻撃に一瞬にしてノックアウトされた。そんな状態の彼を見て二元と土ェ門は額を押さえた。

「……おい不魅子。今度は何を企んでやがる」
「ただ観光に来たわけではあるまい」
「半分正解で半分間違いね。観光はついでで私はお宝を受け取りに来たのよ」
「なっ!? おいヌパン!まさか今回のお宝を盗む目的はまたこいつか!?」
「まさかとは思っていたが……不埒な」
「……俺は降りる」

二元はポケットに手を突っ込んで出口に行こうとした。

「まあまあ待てよ二元。良いじゃねえかいつものことだろ〜?」
「毎度毎度こいつのためにひでぇ目に会う俺の身にもなりやがれ!」

そう言って不魅子に向かって指を指して怒鳴る。

「それでヌパン?お宝はどうなったのか・し・ら?」

不魅子はヌパンの近づいた顔をどけて座り直す。それを受けたヌパンは名残惜しそうにして答える。

「あぁん、それがね〜不魅子ちゃん。あともうちょっとだったんだけどドジっちゃったの〜」
「あれは全部お前のせいだろうが!」
「そう。だからここで次の作戦を練ってるわけね」
「そうそうそゆこと〜❤ ん〜でもよ〜?俺様この作戦完璧だとは思ってるんだけど昨日のこともあるからな〜。不安で不安で仕方ねえの〜。だ・か・ら」

ヌパンそこまで区切ると一瞬でパンイチになって不魅子に飛び掛かった。

「俺の傷心を癒してくださ〜〜〜〜〜い!」

最早コンマゼロ以下の早業だがもう少しで不魅子の胸にダイブできたところで二元と土ェ門にそれぞれ足首を掴まれ畳にキスをする羽目になる。

「あだ〜〜〜っ!?」
「お前と不魅子がやりだしたら八日なんてあっという間に過ぎちまうだろうが!時間がねえんだからとっとと行くぞ!」
「そんな〜〜〜!」
「不魅子、我らの邪魔だけはするなよ」
「するわけないじゃない。がんばってね〜❤」
「ふん」

そう言って二元と土ェ門はヌパンを引き摺って部屋から出て行く。

「わーわー!ちょっと待てお前らその前に服着さして!俺このままだと道中魔物娘ちゃんにたちに襲われちゃうっつの!」
「がんばってね〜ヌパン。お宝楽しみにしてるわ〜❤」
「不魅子ちゅわ〜ん❤帰ったらいい子いい子してえええぇぇぇ………」

という経緯があり、手を振る不魅子に見送られてヌパンたちは準備に取り掛かったのであった。
18/09/07 18:39更新 / ウルトラ自爆マン
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■作者メッセージ
不魅子は他にリリムかぬらりひょんかで迷いましたが色々考えてとりあえずエロいからサキュバスにしました。
ジパング生まれってしときゃええねん!(力技)

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