前編
――僕がここに閉じ込められてから、どれ程の時が流れたのだろうか。
――恐らく、僕を封印した人間たちもとっくに天寿を全うし、誰も僕のことを覚えていないだろう。
――きっと僕はこのまま外に出ることも死ぬこともできず、永遠の時間を孤独に過ごすことになる。
――そう、何の喜びも悲しみも、苦しみさえも感じられない凍りついた時の中で、まるで眠っているかのように永遠に――
ガキンッ!
「(うわっ、ビックリした!)」
「たいちょー! このでっかいクリスタル、中に人がいます!」
―――――――――――――――――
――レスカティエ古代遺跡研究所。
「まさか本当にあの伝説の勇者が発掘されるだなんて驚いたわナターシャ。」
研究所の廊下をバフォメットと共に歩くのは、落ち着いた雰囲気を醸し出す魔界軍師のサキュバスだった。
「ドワーフたちが儂らの調査団の発掘作業に協力してくれたおかげじゃよヴァレンティナ。今頃研究室では魔女たちがクリスタルの研究を進めているところじゃな」
ナターシャと呼ばれた栗色の髪のバフォメットが得意げに微笑む。
「おい、お主ら! 魔界軍師のお目見えじゃ――」
「ああんっ! 雄っぱいでかすぎだよぉ……たくましい……♥(クチュクチュ)」
「お尻も引き締まってセクシー……あたしのお兄ちゃんになってぇ……♥(クチュクチュ)」
「……って何をしておるのじゃこの馬鹿チンどもーー!!」
研究室の扉を勢いよく開けたナターシャが目にしたのは、巨大なクリスタルの中に閉じ込められた青年の肉体をオカズにして、自慰に励む魔女たちの姿だった。
おまけに、その近くではドワーフが巨大なつるはしを持って、精密装置にはめ込まれたクリスタルを容赦なく殴り続けている。
「えいえい! うーん割れないなあ」
「おいよさんか! 中に人がおるのじゃぞ!」
「だってー。こうやってぶち割るのが一番手っ取り早いじゃないのぉ?」
配下たちを叱りつけているナターシャを尻目にして、ヴァレンティナは装置の上に鎮座する巨大なクリスタル――その中に封印された青年の姿を仰ぎ見た。
「『アーノルド=クレイン』……かつて『白き竜』と呼ばれた貴方は、この新しい時代に何を見出し、何をもたらすのかしら……?」
その時研究室に、地震のような自然現象とは明らかに異なる、大きな揺れが襲い掛かった。
「……ナターシャ」
「分かっておる。主神教団もあの古代遺跡に目を付けていたからのう」
ナターシャはそう言うと、懐から2本の魔法陣が刻まれた柄のようなものを取り出した。
「来るわよ……みんな、下がって!」
ヴァレンティナの合図とほぼ同時に、研究室の壁が轟音を立てて切り崩される。その向こうから紺色を基調とした荘厳な鎧に身を包んだ、ダイヤモンドのように輝く長髪の女性が姿を現した。
「ヴァルキリーがたったの1人か……舐められたものじゃのう!」
ナターシャの体から青白い雷光が迸り、握りしめた2本の柄に雷の魔力で斧刃が形成されていく。好戦的な笑みを浮かべる彼女の栗色の髪の毛もまた、雷の魔力に反応して青白く染まっていった。
ヴァルキリーはナターシャの姿を捕らえると、常人の眼には捕らえられない速度で突進して躊躇なく聖剣を振り下ろす。ナターシャはその刃を2本の雷斧を交差して受け止めた。
「ふん!」
ナターシャは青白い火花と共にヴァルキリーの剣を押し切って相手の体勢を崩すと、右手の雷斧を振り払って聖剣を床に叩き落す。しかしヴァルキリーは少しも怯まずに主神の紋章が刻まれた盾を振りかぶり、その勢いでナターシャの体を壁に叩きつけた。
「伝説の『白き竜』よ……今こそ目を覚まし、世界を覆う闇を振り払う時が来た」
「みんな、伏せて!」
ヴァレンティナの指示通りに頭を抱えて床に伏せた魔女たちの頭上を、ヴァルキリーが投擲した聖剣が通り過ぎていく。そして聖剣は真っ直ぐに青年が閉じ込められたクリスタルに突き刺さり、白い光を放ち始めた。
「クリスタルが……崩壊する!」
ヴァレンティナが目にしたのは、聖剣が作り出したひび割れが光を放ちつつクリスタル全体に広がっていき、中にいた1人の男がゆっくりと瞼を空ける姿だった。
やがて聖剣が光を放つのを止めて床に落ちた時、研究室にいる全員が伝説の勇者の復活を目の当たりにした。
「ここは……?」
ぼろきれのような衣服をまとった伝説の勇者は、鍛え上げられた肉体に、黒髪と強い意志を秘めたヘーゼルの瞳が印象的な青年だった。
彼の足元で聖剣が独りでに動き出し、そのまま宙を進んでヴァルキリーの手の中に納まる。
「とうとう目覚めたか……白き竜よ」
ヴァルキリーはそう呟くと、先ほどよりも激しい魔力を迸らせて立ち上がったナターシャと対峙する。
「これ以上レスカティエを好きに出来ると思うな魔物よ。彼が我々主神教団の、新たなる希望となるのだ」
そう呟くと、ヴァルキリーは再びナターシャに向かって聖剣を振り上げる。しかし、その剣が振り下ろされることはなく、ヴァルキリーは驚愕の表情で目を見開いた。
「な……!?」
今しがた封印を解かれたばかりの青年が、いつのまにかヴァルキリーとナターシャの間に立ちはだかり、ヴァルキリーの腕を渾身の力で握りしめていた。
そのまま腕を振り払うと、完全に意表を突かれたヴァルキリーはあっけなく床に尻餅をついてしまう。
「どうして……」
その隙にヴァレンティナが黒い羽を広げて飛び出し、青年の体を抱き上げて、ヴァルキリーが作り出した壁の穴から屋外へと飛び出す。
それを追おうとしたヴァルキリーを、異変を感じて壁の穴からなだれ込んできた魔物娘たちが阻むのだった。
――――――――――――――――
「ここなら安全だわ。驚かせてしまってごめんなさいね」
ヴァレンティナはレスカティエの一角にある時計塔の上までアーノルドを運び上げると、彼の体をそっと床の上に下ろす。
「……あの部屋にいた女の子たちは……」
「ナターシャたちなら大丈夫よ。あれを見て」
ヴァレンティナが指差した先にあったのは、研究所を完全に包囲する魔物娘たちの姿だった。
「僕は……どれくらいの間封印されていたんだ?」
「200年よ」
ヴァレンティナはアーノルドの質問に答える。
「貴方が封印されている間に、世界は大きく変わったの。これから順を追って説明するわ――」
「あー! ヴァレンティナさんだ!」
時計塔の二人の元にやってきたのは、桃色の髪の毛が可愛らしい小さなハーピーの子供だった。
「もしかしてこの人がうわさの勇者さま? つよそうだねー」
「そうよ。彼が伝説の『白き竜』。今起きたばかりだから、あんまり質問攻めにするのはやめてあげてね」
「……君は――」
アーノルドは何かを言おうとして慌ててハーピーの子の体を抱き上げた。彼女がいきなりぴょんと飛び上がって彼に体を預けに来たからだ。
「えへへーおひめさま抱っこー♥」
アーノルドは自身の胸の中でいたずらっぽく笑う少女をぽかんとした表情で見つめると、彼女を抱えたまま時計塔からレスカティエを見渡した。
夜空に大きく輝く深紅の満月。その下では煌めく蛍のような幻想的な光の粒が辺りを漂い、その中を体の一部が異形と化した女性と人間の男性のつがいが仲睦まじそうに歩いている。
彼の目に映るレスカティエの景色に、200年前の記憶と同じものは何1つ残されていなかった。
―――――――――――――――――――
ガーディアンズ・オブ・レスカティエ
―――――――――――――――――――
2日後、古代遺跡研究所ーー。
「ねぇどう? 見える?」
「うーん、薄暗くて良くわかんない……」
ナターシャの魔女たちを初めとした魔物娘たちが、こぞって書物庫の鍵穴を覗こうとしていた。
「こらお前たち! アーノルドの邪魔をするでない!」
「だってー、気になるんですよー!」
ヴァレンティナを連れたナターシャの叱責に、悪びれもせずに文句を垂らす魔女たち。
「アーノルド! ヴァレンティナを連れてきたのじゃ! 今から入るぞ!」
「あっ! バフォ様ずるい! ヴァレンティナさんを使って抜け駆けする気でしょ!」
抗議する魔女たちを無視してナターシャは、ヴァレンティナと共に書物庫へと足を踏み入れた。
書物庫の中は薄暗く、アーノルドが持ち込んだランタンの灯りだけが光源として機能している。その中でアーノルドは質素な椅子に座って黙々と書物を読み込んでいた。
「あぁ……君たちか……」
顔を上げたアーノルドの目は疲れからか少し赤くなっており、その下には隈まで浮かんでいる。足元には読み終えたものであろう図鑑や歴史書の類いが山のように積み上げられていた。
「大丈夫か? 少し休んだ方がよいと思うぞ?」
「ああ、そうだね。ありがとう……」
アーノルドはそう言うと本を閉じ、心ここに在らずといった様子で書物庫の外へと歩いていく。
「あっ! アーノルドさん出てきた!」
足元にわちゃわちゃと取り付いてくる魔女たちには目もくれずに、廊下の窓からぼんやりと外を眺めるアーノルド。
「200年か……僕が眠っている間に、世界は大きく変わったみたいだ。魔物は人を傷つけなくなり、レスカティエは滅んでしまった」
「アーノルド……」
ヴァレンティナはアーノルドの心中を察した。
彼は魔物が容赦なく人を喰らい、その魔物と対立する主神教団が絶対的な正義とされた時代に勇者として活躍し、魔王の代替わりによる世界の変化を目撃せずに、今の時代に目覚めさせられた人間である。
ましてやかつての故郷であり、心の拠り所としていたレスカティエが勇者たちの翻心によってあっさりと陥落し、魔物たちの手に堕ちたという事実。数日で変化を受け入れろというのも無理な話だろう。
「……僕が目を覚ました時、あの場にはヴァルキリーがいた。彼女は今もこの近くに?」
「ええ。身柄を拘束しているわ」
「彼女と話がしたい」
「駄目よアーノルド。あのヴァルキリーは、貴方を使って、この国を攻撃するために派遣されたの。接触させることはできないわ」
アーノルドの目に一瞬戸惑いが現れたが、すぐにヴァレンティナの目を真っ直ぐに見据えて口を開いた。
「僕は誰も傷つけはしない。彼女がもし貴女たちに危害を加えるつもりなら、そうするべきじゃないと分からせるためにも、話す必要がある。お願いだ。彼女と会わせてくれ」
「良いじゃろう、ヴァレンティナ。儂とお主の立ち会いのもとで、あのヴァルキリーと話ぐらいさせても問題はないはずじゃ」
ヴァレンティナは小さく溜め息をついた。
「……仕方ないわね。ただ、彼女を刺激するような言動は慎むっていうことだけは約束してくれる?」
「心得てるよ。案内してくれ」
――――――――――――――――――――
レスカティエのとある区画には、国家に重大な損失を及ぼしかねない人物を一時的に閉じ込めるための、存在そのものが秘匿された地下牢がある。
その中の牢屋の1つに、古代遺跡研究所を襲撃したヴァルキリーが閉じ込められていた。
「……! 『白き竜』よ……!」
ヴァルキリーはアーノルドの姿を見るなり鉄格子にしがみつき、血走った目で捲し立て始めた。
「貴方は我々主神教団の最後の希望なのです! 裏切り者の勇者たちを打ち倒し、この堕落したレスカティエを救済することができるのは、もはや貴方以外にありません! さぁ、早く私と共に――」
「なぁヴァレンティナ。儂はこいつをとっとと魔力汚染して、ダークヴァルキリーにするべきたと思うぞ」
ナターシャは呆れ果てた様子でヴァレンティナに進言したが、アーノルドはその提案に対して、首を振って否定する。
「彼女の意思も尊重されるべきだ。とにかく話し合ってみる」
アーノルドは鉄格子の前まで歩み寄ると、ヴァルキリーの目を真正面から見据えて口を開いた。
「聖騎士様。ご存じだろうが、私の名前は『アーノルド=クレイン』。貴女の名前を教えてくれ」
「えっ……あっ、あぁ、分かった。私の名は『フリスト』」
フリストという名のヴァルキリーは、ハンサムな顔を間近にしたからか、少し動揺した様子でアーノルドの問いに答える。
「フリストさん。私は研究所の書庫で魔物娘の生態と、レスカティエが歩んできた歴史を確かめた。私なりの結論として、魔物娘は人間の敵ではないし、レスカティエは滅ぶべくして滅んだ」
アーノルドはフリストの眼を真っ直ぐに見据えながら話を続ける。
「私は確かに勇者だった。だが戦う理由は人々の命を守るためであり、魔物を狩ることが目的ではなかった。……例え私が貴女に協力したとして、今更誰を『救済』するというのですか?」
フリストはアーノルドの言葉に目を伏せ、唇を噛み締める。だが、少しすると彼の眼差しを正面から捉えて、先ほどとは打って変わった落ち着いた様子で語り始めた。
「貴方は……本気で魔物娘が信用するに値すると思っているのですか?」
フリストの唇は震えていたが、言葉には確かな意思が込められている。
「魔物は人を殺めるために生み出された存在です。そして実際、歴史の中で数え切れないほどの人間を殺してきました。今でも魔物娘には、人を殺そうと思えば殺せるだけの力があります」
顔をしかめて口を挟もうとするナターシャを、ヴァレンティナが制止する。
「一国の中枢から末端に至るまで食い込んだ魔物娘たちが、もし本心では人間を殺したがっていたとしたら? そうでなくとも、『やはり人間は滅ぶべきだ』と心変わりをしたら? 魔物娘が洗脳されたとしたら? 今の魔王が不慮の事故で突然死したり、勇者に討伐されることで、魔物娘が昔の魔物へと戻っていったとしたら?」
フリストは音を立てて、神族が触れると激痛が走る呪術が仕込まれた鉄格子を握りしめた。
「貴方が目覚めた時、ハーピーの女の子を抱き上げたという噂を聞きました。貴方が見たのは、手足が鳥である以外は可憐な少女だったのでしょうが、それが汚物を巻き散らかす下品で醜い化け物へと戻ることはないと、どうして信用できるので――」
ガキィン!!!
鉄格子に雷撃を帯びた斧が食い込み、フリストは思わずのけぞった。
「すまんな……手が滑ってしまった」
微笑みながらそう呟くナターシャの眼には、激しく燃え盛る怒りの炎が浮かんでいる。
「……」
アーノルドは鉄格子に食い込んだ斧の柄を握りしめて刃を外すと、そのまま一言もしゃべらずにその斧を持ち主の手へと運んでいく。ナターシャもまた、それを無言で受け取った。
「フリストさん。私が封印された理由は知っていますか?」
「それは……確か文献には明確な理由が記録されていなかったと……」
「やはり……あの事件のことはもみ消されたか」
アーノルドの顔に不穏な色がよぎり始めていた。
「あの日、私はレスカティエの将軍と共に、サキュバスが潜む集落への討伐作戦を実行していた。しかし、私と将軍が率いる部隊の前に出てきたのは、白旗を上げたサキュバスたちだった」
ナターシャとヴァレンティナはお互いに顔を見合わせる。どちらもアーノルドが語るような出来事があったという事実は、把握していなかった。
「彼女たちはレスカティエや他の国々から爪弾きにあった人々を保護してるいるだけだと主張した。見逃してもらえるなら、決してこちらから手出しはしないと。だが私は、彼女たちの言うことが信じられなかった。サキュバスは男を誘惑して生命を吸い取り、女を同族へと変える存在だと見なしていたからだ」
アーノルドは話し続ける。
「将軍は信じられないどころでは済まなかった。彼はサキュバスたちが人々を家畜として扱い、尊厳を踏みにじっているのだと考え、激昂した。私の相棒とも言える兵士はサキュバスたちの言うことが真実だったとしても、集落に国を追われた反逆者の類いがいる可能性を考え、潰すべきだと主張した」
落ち着きなくその場を歩き回るアーノルド。
「結局私たちはサキュバスたちに剣を向け、戦闘が始まった。決着がつくのに時間はかからなかった。生き残りのサキュバスを縛り上げていると、集落の方から彼女たちと暮らしていた人々が姿を現し、私達にサキュバスの命乞いをしてきた」
ヴァレンティナはアーノルドの手が震えていることに気が付いた。
「将軍は……私に彼らを殺すよう命じた……魔物に洗脳されていると……私はそんなことはできないと抗議した……揺らいでいたんだ。間違いを犯しているのは私たちの方かもしれないと……兵士たちの中でも意見が割れ……デニーは将軍側だった……サキュバスの伏兵たちが姿を現したのをきっかけに……仲間割れが始まった」
アーノルドが突然拳で壁を叩き、轟音が地下牢中に響き渡った。
「デニーは死んだ……! 彼だけじゃない、私を信じてついて来てくれた兵士も大勢死んだ! くそっ、デニー!! 死ぬべきだったのは優柔不断な私の方だというのに!」
アーノルドの拳には血がにじんでいる。
「レスカティの上層部は私の判断が討伐隊に多大な犠牲をもたらしたと考え、死刑の次に厳しい『封印刑』を執行することに決めた。これが事の真相なんだ、フリストさん」
再びフリストの方に向き直ったアーノルドの淡褐色の眼には、深い悲しみが湛えられていた。
「今の世界を知って、あの時間違っていたのはやはり私の方だったと気づいたよ。もう二度と自分の中の恐怖に屈して、信じるものを間違えたくはないんだ」
アーノルドはそう言い残すと、踵を返して地下牢の出口へと歩いていく。その背中はかつて「白き竜」と呼ばれ、称えられた男のそれとは思えないほど寂しく、孤独なものだった。
――――――――――――――
「なぁ、それほど自分を責める必要はないと儂は思うぞ。少なくともお主は途中から罪の無い人々を守るために動いたわけで――」
「ヴァレンティナ様!」
沈んだ面持ちで街道を歩くアーノルドを、ナターシャがどうにか慰めようとしていると、向かいから血相を変えたサキュバスがヴァレンティナの元へと走り寄ってきた。
「……分かったわ。すぐに作戦会議を始めましょう。ナターシャ、『銃』の強奪犯の正体が分かったわ」
サキュバスに耳打ちされたヴァレンティナはナターシャに向かってそう告げると、羽を大きく広げて城の方へと飛び立っていく。
「……『じゅう』……?」
生まれて初めて耳にした言葉に、アーノルドはただ首をかしげることしかできなかった。
――中編へ続く。
――恐らく、僕を封印した人間たちもとっくに天寿を全うし、誰も僕のことを覚えていないだろう。
――きっと僕はこのまま外に出ることも死ぬこともできず、永遠の時間を孤独に過ごすことになる。
――そう、何の喜びも悲しみも、苦しみさえも感じられない凍りついた時の中で、まるで眠っているかのように永遠に――
ガキンッ!
「(うわっ、ビックリした!)」
「たいちょー! このでっかいクリスタル、中に人がいます!」
―――――――――――――――――
――レスカティエ古代遺跡研究所。
「まさか本当にあの伝説の勇者が発掘されるだなんて驚いたわナターシャ。」
研究所の廊下をバフォメットと共に歩くのは、落ち着いた雰囲気を醸し出す魔界軍師のサキュバスだった。
「ドワーフたちが儂らの調査団の発掘作業に協力してくれたおかげじゃよヴァレンティナ。今頃研究室では魔女たちがクリスタルの研究を進めているところじゃな」
ナターシャと呼ばれた栗色の髪のバフォメットが得意げに微笑む。
「おい、お主ら! 魔界軍師のお目見えじゃ――」
「ああんっ! 雄っぱいでかすぎだよぉ……たくましい……♥(クチュクチュ)」
「お尻も引き締まってセクシー……あたしのお兄ちゃんになってぇ……♥(クチュクチュ)」
「……って何をしておるのじゃこの馬鹿チンどもーー!!」
研究室の扉を勢いよく開けたナターシャが目にしたのは、巨大なクリスタルの中に閉じ込められた青年の肉体をオカズにして、自慰に励む魔女たちの姿だった。
おまけに、その近くではドワーフが巨大なつるはしを持って、精密装置にはめ込まれたクリスタルを容赦なく殴り続けている。
「えいえい! うーん割れないなあ」
「おいよさんか! 中に人がおるのじゃぞ!」
「だってー。こうやってぶち割るのが一番手っ取り早いじゃないのぉ?」
配下たちを叱りつけているナターシャを尻目にして、ヴァレンティナは装置の上に鎮座する巨大なクリスタル――その中に封印された青年の姿を仰ぎ見た。
「『アーノルド=クレイン』……かつて『白き竜』と呼ばれた貴方は、この新しい時代に何を見出し、何をもたらすのかしら……?」
その時研究室に、地震のような自然現象とは明らかに異なる、大きな揺れが襲い掛かった。
「……ナターシャ」
「分かっておる。主神教団もあの古代遺跡に目を付けていたからのう」
ナターシャはそう言うと、懐から2本の魔法陣が刻まれた柄のようなものを取り出した。
「来るわよ……みんな、下がって!」
ヴァレンティナの合図とほぼ同時に、研究室の壁が轟音を立てて切り崩される。その向こうから紺色を基調とした荘厳な鎧に身を包んだ、ダイヤモンドのように輝く長髪の女性が姿を現した。
「ヴァルキリーがたったの1人か……舐められたものじゃのう!」
ナターシャの体から青白い雷光が迸り、握りしめた2本の柄に雷の魔力で斧刃が形成されていく。好戦的な笑みを浮かべる彼女の栗色の髪の毛もまた、雷の魔力に反応して青白く染まっていった。
ヴァルキリーはナターシャの姿を捕らえると、常人の眼には捕らえられない速度で突進して躊躇なく聖剣を振り下ろす。ナターシャはその刃を2本の雷斧を交差して受け止めた。
「ふん!」
ナターシャは青白い火花と共にヴァルキリーの剣を押し切って相手の体勢を崩すと、右手の雷斧を振り払って聖剣を床に叩き落す。しかしヴァルキリーは少しも怯まずに主神の紋章が刻まれた盾を振りかぶり、その勢いでナターシャの体を壁に叩きつけた。
「伝説の『白き竜』よ……今こそ目を覚まし、世界を覆う闇を振り払う時が来た」
「みんな、伏せて!」
ヴァレンティナの指示通りに頭を抱えて床に伏せた魔女たちの頭上を、ヴァルキリーが投擲した聖剣が通り過ぎていく。そして聖剣は真っ直ぐに青年が閉じ込められたクリスタルに突き刺さり、白い光を放ち始めた。
「クリスタルが……崩壊する!」
ヴァレンティナが目にしたのは、聖剣が作り出したひび割れが光を放ちつつクリスタル全体に広がっていき、中にいた1人の男がゆっくりと瞼を空ける姿だった。
やがて聖剣が光を放つのを止めて床に落ちた時、研究室にいる全員が伝説の勇者の復活を目の当たりにした。
「ここは……?」
ぼろきれのような衣服をまとった伝説の勇者は、鍛え上げられた肉体に、黒髪と強い意志を秘めたヘーゼルの瞳が印象的な青年だった。
彼の足元で聖剣が独りでに動き出し、そのまま宙を進んでヴァルキリーの手の中に納まる。
「とうとう目覚めたか……白き竜よ」
ヴァルキリーはそう呟くと、先ほどよりも激しい魔力を迸らせて立ち上がったナターシャと対峙する。
「これ以上レスカティエを好きに出来ると思うな魔物よ。彼が我々主神教団の、新たなる希望となるのだ」
そう呟くと、ヴァルキリーは再びナターシャに向かって聖剣を振り上げる。しかし、その剣が振り下ろされることはなく、ヴァルキリーは驚愕の表情で目を見開いた。
「な……!?」
今しがた封印を解かれたばかりの青年が、いつのまにかヴァルキリーとナターシャの間に立ちはだかり、ヴァルキリーの腕を渾身の力で握りしめていた。
そのまま腕を振り払うと、完全に意表を突かれたヴァルキリーはあっけなく床に尻餅をついてしまう。
「どうして……」
その隙にヴァレンティナが黒い羽を広げて飛び出し、青年の体を抱き上げて、ヴァルキリーが作り出した壁の穴から屋外へと飛び出す。
それを追おうとしたヴァルキリーを、異変を感じて壁の穴からなだれ込んできた魔物娘たちが阻むのだった。
――――――――――――――――
「ここなら安全だわ。驚かせてしまってごめんなさいね」
ヴァレンティナはレスカティエの一角にある時計塔の上までアーノルドを運び上げると、彼の体をそっと床の上に下ろす。
「……あの部屋にいた女の子たちは……」
「ナターシャたちなら大丈夫よ。あれを見て」
ヴァレンティナが指差した先にあったのは、研究所を完全に包囲する魔物娘たちの姿だった。
「僕は……どれくらいの間封印されていたんだ?」
「200年よ」
ヴァレンティナはアーノルドの質問に答える。
「貴方が封印されている間に、世界は大きく変わったの。これから順を追って説明するわ――」
「あー! ヴァレンティナさんだ!」
時計塔の二人の元にやってきたのは、桃色の髪の毛が可愛らしい小さなハーピーの子供だった。
「もしかしてこの人がうわさの勇者さま? つよそうだねー」
「そうよ。彼が伝説の『白き竜』。今起きたばかりだから、あんまり質問攻めにするのはやめてあげてね」
「……君は――」
アーノルドは何かを言おうとして慌ててハーピーの子の体を抱き上げた。彼女がいきなりぴょんと飛び上がって彼に体を預けに来たからだ。
「えへへーおひめさま抱っこー♥」
アーノルドは自身の胸の中でいたずらっぽく笑う少女をぽかんとした表情で見つめると、彼女を抱えたまま時計塔からレスカティエを見渡した。
夜空に大きく輝く深紅の満月。その下では煌めく蛍のような幻想的な光の粒が辺りを漂い、その中を体の一部が異形と化した女性と人間の男性のつがいが仲睦まじそうに歩いている。
彼の目に映るレスカティエの景色に、200年前の記憶と同じものは何1つ残されていなかった。
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ガーディアンズ・オブ・レスカティエ
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2日後、古代遺跡研究所ーー。
「ねぇどう? 見える?」
「うーん、薄暗くて良くわかんない……」
ナターシャの魔女たちを初めとした魔物娘たちが、こぞって書物庫の鍵穴を覗こうとしていた。
「こらお前たち! アーノルドの邪魔をするでない!」
「だってー、気になるんですよー!」
ヴァレンティナを連れたナターシャの叱責に、悪びれもせずに文句を垂らす魔女たち。
「アーノルド! ヴァレンティナを連れてきたのじゃ! 今から入るぞ!」
「あっ! バフォ様ずるい! ヴァレンティナさんを使って抜け駆けする気でしょ!」
抗議する魔女たちを無視してナターシャは、ヴァレンティナと共に書物庫へと足を踏み入れた。
書物庫の中は薄暗く、アーノルドが持ち込んだランタンの灯りだけが光源として機能している。その中でアーノルドは質素な椅子に座って黙々と書物を読み込んでいた。
「あぁ……君たちか……」
顔を上げたアーノルドの目は疲れからか少し赤くなっており、その下には隈まで浮かんでいる。足元には読み終えたものであろう図鑑や歴史書の類いが山のように積み上げられていた。
「大丈夫か? 少し休んだ方がよいと思うぞ?」
「ああ、そうだね。ありがとう……」
アーノルドはそう言うと本を閉じ、心ここに在らずといった様子で書物庫の外へと歩いていく。
「あっ! アーノルドさん出てきた!」
足元にわちゃわちゃと取り付いてくる魔女たちには目もくれずに、廊下の窓からぼんやりと外を眺めるアーノルド。
「200年か……僕が眠っている間に、世界は大きく変わったみたいだ。魔物は人を傷つけなくなり、レスカティエは滅んでしまった」
「アーノルド……」
ヴァレンティナはアーノルドの心中を察した。
彼は魔物が容赦なく人を喰らい、その魔物と対立する主神教団が絶対的な正義とされた時代に勇者として活躍し、魔王の代替わりによる世界の変化を目撃せずに、今の時代に目覚めさせられた人間である。
ましてやかつての故郷であり、心の拠り所としていたレスカティエが勇者たちの翻心によってあっさりと陥落し、魔物たちの手に堕ちたという事実。数日で変化を受け入れろというのも無理な話だろう。
「……僕が目を覚ました時、あの場にはヴァルキリーがいた。彼女は今もこの近くに?」
「ええ。身柄を拘束しているわ」
「彼女と話がしたい」
「駄目よアーノルド。あのヴァルキリーは、貴方を使って、この国を攻撃するために派遣されたの。接触させることはできないわ」
アーノルドの目に一瞬戸惑いが現れたが、すぐにヴァレンティナの目を真っ直ぐに見据えて口を開いた。
「僕は誰も傷つけはしない。彼女がもし貴女たちに危害を加えるつもりなら、そうするべきじゃないと分からせるためにも、話す必要がある。お願いだ。彼女と会わせてくれ」
「良いじゃろう、ヴァレンティナ。儂とお主の立ち会いのもとで、あのヴァルキリーと話ぐらいさせても問題はないはずじゃ」
ヴァレンティナは小さく溜め息をついた。
「……仕方ないわね。ただ、彼女を刺激するような言動は慎むっていうことだけは約束してくれる?」
「心得てるよ。案内してくれ」
――――――――――――――――――――
レスカティエのとある区画には、国家に重大な損失を及ぼしかねない人物を一時的に閉じ込めるための、存在そのものが秘匿された地下牢がある。
その中の牢屋の1つに、古代遺跡研究所を襲撃したヴァルキリーが閉じ込められていた。
「……! 『白き竜』よ……!」
ヴァルキリーはアーノルドの姿を見るなり鉄格子にしがみつき、血走った目で捲し立て始めた。
「貴方は我々主神教団の最後の希望なのです! 裏切り者の勇者たちを打ち倒し、この堕落したレスカティエを救済することができるのは、もはや貴方以外にありません! さぁ、早く私と共に――」
「なぁヴァレンティナ。儂はこいつをとっとと魔力汚染して、ダークヴァルキリーにするべきたと思うぞ」
ナターシャは呆れ果てた様子でヴァレンティナに進言したが、アーノルドはその提案に対して、首を振って否定する。
「彼女の意思も尊重されるべきだ。とにかく話し合ってみる」
アーノルドは鉄格子の前まで歩み寄ると、ヴァルキリーの目を真正面から見据えて口を開いた。
「聖騎士様。ご存じだろうが、私の名前は『アーノルド=クレイン』。貴女の名前を教えてくれ」
「えっ……あっ、あぁ、分かった。私の名は『フリスト』」
フリストという名のヴァルキリーは、ハンサムな顔を間近にしたからか、少し動揺した様子でアーノルドの問いに答える。
「フリストさん。私は研究所の書庫で魔物娘の生態と、レスカティエが歩んできた歴史を確かめた。私なりの結論として、魔物娘は人間の敵ではないし、レスカティエは滅ぶべくして滅んだ」
アーノルドはフリストの眼を真っ直ぐに見据えながら話を続ける。
「私は確かに勇者だった。だが戦う理由は人々の命を守るためであり、魔物を狩ることが目的ではなかった。……例え私が貴女に協力したとして、今更誰を『救済』するというのですか?」
フリストはアーノルドの言葉に目を伏せ、唇を噛み締める。だが、少しすると彼の眼差しを正面から捉えて、先ほどとは打って変わった落ち着いた様子で語り始めた。
「貴方は……本気で魔物娘が信用するに値すると思っているのですか?」
フリストの唇は震えていたが、言葉には確かな意思が込められている。
「魔物は人を殺めるために生み出された存在です。そして実際、歴史の中で数え切れないほどの人間を殺してきました。今でも魔物娘には、人を殺そうと思えば殺せるだけの力があります」
顔をしかめて口を挟もうとするナターシャを、ヴァレンティナが制止する。
「一国の中枢から末端に至るまで食い込んだ魔物娘たちが、もし本心では人間を殺したがっていたとしたら? そうでなくとも、『やはり人間は滅ぶべきだ』と心変わりをしたら? 魔物娘が洗脳されたとしたら? 今の魔王が不慮の事故で突然死したり、勇者に討伐されることで、魔物娘が昔の魔物へと戻っていったとしたら?」
フリストは音を立てて、神族が触れると激痛が走る呪術が仕込まれた鉄格子を握りしめた。
「貴方が目覚めた時、ハーピーの女の子を抱き上げたという噂を聞きました。貴方が見たのは、手足が鳥である以外は可憐な少女だったのでしょうが、それが汚物を巻き散らかす下品で醜い化け物へと戻ることはないと、どうして信用できるので――」
ガキィン!!!
鉄格子に雷撃を帯びた斧が食い込み、フリストは思わずのけぞった。
「すまんな……手が滑ってしまった」
微笑みながらそう呟くナターシャの眼には、激しく燃え盛る怒りの炎が浮かんでいる。
「……」
アーノルドは鉄格子に食い込んだ斧の柄を握りしめて刃を外すと、そのまま一言もしゃべらずにその斧を持ち主の手へと運んでいく。ナターシャもまた、それを無言で受け取った。
「フリストさん。私が封印された理由は知っていますか?」
「それは……確か文献には明確な理由が記録されていなかったと……」
「やはり……あの事件のことはもみ消されたか」
アーノルドの顔に不穏な色がよぎり始めていた。
「あの日、私はレスカティエの将軍と共に、サキュバスが潜む集落への討伐作戦を実行していた。しかし、私と将軍が率いる部隊の前に出てきたのは、白旗を上げたサキュバスたちだった」
ナターシャとヴァレンティナはお互いに顔を見合わせる。どちらもアーノルドが語るような出来事があったという事実は、把握していなかった。
「彼女たちはレスカティエや他の国々から爪弾きにあった人々を保護してるいるだけだと主張した。見逃してもらえるなら、決してこちらから手出しはしないと。だが私は、彼女たちの言うことが信じられなかった。サキュバスは男を誘惑して生命を吸い取り、女を同族へと変える存在だと見なしていたからだ」
アーノルドは話し続ける。
「将軍は信じられないどころでは済まなかった。彼はサキュバスたちが人々を家畜として扱い、尊厳を踏みにじっているのだと考え、激昂した。私の相棒とも言える兵士はサキュバスたちの言うことが真実だったとしても、集落に国を追われた反逆者の類いがいる可能性を考え、潰すべきだと主張した」
落ち着きなくその場を歩き回るアーノルド。
「結局私たちはサキュバスたちに剣を向け、戦闘が始まった。決着がつくのに時間はかからなかった。生き残りのサキュバスを縛り上げていると、集落の方から彼女たちと暮らしていた人々が姿を現し、私達にサキュバスの命乞いをしてきた」
ヴァレンティナはアーノルドの手が震えていることに気が付いた。
「将軍は……私に彼らを殺すよう命じた……魔物に洗脳されていると……私はそんなことはできないと抗議した……揺らいでいたんだ。間違いを犯しているのは私たちの方かもしれないと……兵士たちの中でも意見が割れ……デニーは将軍側だった……サキュバスの伏兵たちが姿を現したのをきっかけに……仲間割れが始まった」
アーノルドが突然拳で壁を叩き、轟音が地下牢中に響き渡った。
「デニーは死んだ……! 彼だけじゃない、私を信じてついて来てくれた兵士も大勢死んだ! くそっ、デニー!! 死ぬべきだったのは優柔不断な私の方だというのに!」
アーノルドの拳には血がにじんでいる。
「レスカティの上層部は私の判断が討伐隊に多大な犠牲をもたらしたと考え、死刑の次に厳しい『封印刑』を執行することに決めた。これが事の真相なんだ、フリストさん」
再びフリストの方に向き直ったアーノルドの淡褐色の眼には、深い悲しみが湛えられていた。
「今の世界を知って、あの時間違っていたのはやはり私の方だったと気づいたよ。もう二度と自分の中の恐怖に屈して、信じるものを間違えたくはないんだ」
アーノルドはそう言い残すと、踵を返して地下牢の出口へと歩いていく。その背中はかつて「白き竜」と呼ばれ、称えられた男のそれとは思えないほど寂しく、孤独なものだった。
――――――――――――――
「なぁ、それほど自分を責める必要はないと儂は思うぞ。少なくともお主は途中から罪の無い人々を守るために動いたわけで――」
「ヴァレンティナ様!」
沈んだ面持ちで街道を歩くアーノルドを、ナターシャがどうにか慰めようとしていると、向かいから血相を変えたサキュバスがヴァレンティナの元へと走り寄ってきた。
「……分かったわ。すぐに作戦会議を始めましょう。ナターシャ、『銃』の強奪犯の正体が分かったわ」
サキュバスに耳打ちされたヴァレンティナはナターシャに向かってそう告げると、羽を大きく広げて城の方へと飛び立っていく。
「……『じゅう』……?」
生まれて初めて耳にした言葉に、アーノルドはただ首をかしげることしかできなかった。
――中編へ続く。
18/05/13 14:43更新 / SHAR!P
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