もの言わぬタタラ
とある山の中腹
そこに一人の鍛冶職人見習いの少女がいた。
「・・・・・・」
「良く見てろよ?これがお前の父親の打ち方だと言う事を・・・」
キンコンキンコン
金属に金属をぶつける音が響く。
それは段々と硬質な物になって行き、やがて一本の刀が出来あがる。
この部屋は石を組み合わせて作った謂わば隠れ家のような場所だ。
そこでこの親子はひっそりと暮らしては刃物や衣類などを街へ売りに行って生計を立てている。
それが、今から3年ほど前の話。
今では父親は流行病に罹り他界。
母親は修行に出ると言ったきり帰って来ない。
「・・・・・」
そんな中で、この少女「サイロ」は生きているのである。
―――――――――
そして、彼女は今日も街へ物を売りに来ていた。
こうでもしないと食べ物も買えずに飢えてしまうから。
「――でさ〜!あの子ったらなんて言ったと思う〜?」
「なんて言ったんだ?チョー気になる!」
「えっと、次の配達場所は――」
「・・・・」
通行人が目の前をたくさん横切って行く。
そんな中、サイロは1人座り込んで物を売り続ける。
無駄な客寄せなどしない。
どうせこの国には必要の無い武器類なのだから。
銃が国軍の正規武装となってから、剣や槍といった旧世代的な武器類は廃れて行く。
それは至極当然の事だろう。
便利な物は重宝され重要視される。
逆に古い物は次々と捨てられていく。
どこの世もそんなものだ。
「・・・・」
「うわぁ、何よアレ。チョー汚い」
「目合わせんな。アイツ一つ目だぜ?」
「うっわ、魔物なの〜?早く居なくなんないかな〜」
「・・・・・」
誹謗中傷など聞き飽きた。
元々は反魔物領で、王族が淫魔と婚儀を果たした事から親魔物領へと変わったこの国、強いてはこの城下町は未だに魔物を嫌う者など五万といる。
特に強く魔物を追い出そうとするのが老人達だ。
何かと文句をつけては魔物やその家族に執拗な嫌がらせばかりを行う集団が存在するらしい。
「またオマエか。もうここでの商売は止めろと言っとろうが!あぁ?!」
この爺さんもそうだ。
先の嫌がらせ集団の中でも上の階級に居るらしいが、相当ヒマなのかしょっちゅう私の邪魔をしに来る。
今日は用意が良いようで、杖ではなく古い箒で突いて来ている。
だが知った事か。
こんな老人の邪魔程度で立ち退くようでは商売など出来はしない。
「こら!何をしている!・・・・またアンタかじいさん!」
「離さんか!ワシはこのガキにこの街のルールを教えて・・」
「あ〜・・・おっ?先輩!この爺さんしょっ引いてくれませんか?」
「ん?ワタルか・・・・またアンタかじいさん・・・良かろう。んじゃ、署で待ってるからな。」
今回は運が良いらしい。
いつもなら私の服がボロボロになるくらいまで叩かれた後に爺さんがバテて帰るのだが、今回はあの人が助けてくれたのだ。
たまに私の事を助けてくれる自警団の男性。
ついさっきまで名前も知らなかったが、ワタルと言うらしいと言うのが分かった。
近所にある交番にいるらしい。
今度にでも遊びに行ってみようか。
「大丈夫だったか?またイジめられていたんだろ・・・」
「・・・うん・・」
この人の前だと、つい言葉を発してしまう。
何故こんな事になるのだろう。
自分でも分からない。
「ほら、一緒に署まで行こう?怪我直さないとな。」
「・・・・でも、売り物・・」
「一緒に運んでやるよ。な?」
そう言って、荷物をあっという間に包んだワタルは荷物を持った上で私を背負ってくれた。
見た目よりもずっと広い背中。
なんだか、懐かしいような気がする。
―――――――――
あっという間に交番まで着いてしまった。
案外近かったらしい。
「さ、適当に座って?薬箱出してくるから・・」
そう言って、私を降ろしたワタルは早々に部屋の奥に行ってしまう。
なんだか寂しい気分になったが、直ぐに戻ってきてくれて何だかホッとした。
「何故ワシが逮捕でコイツが保護なんじゃ〜!納得いか〜ん!」
「そりゃ、アンタが暴力振るってたからだろ?それも無抵抗な女の子を。」
「それでもじゃ!」
「・・・公務執行妨害と児童虐待、どっちがいい?」
「どっちもですよ、先輩?」
その通りである。
「・・・・」
「・・・よっし、これで完了っと。」
湿布が剥がれないように包帯を巻いただけの簡単な応急処置。
だけど、ワタルにして貰ったと言う事が無性に嬉しかった。
「・・・ありがと・・・」
「どういたしまして♪」
多分、この瞬間なのだろう。
恋に落ちてしまったのは。
笑顔が眩し過ぎたのか、心にキュンとした物が来たからかは分からない。
だが、一つだけは言える。
言い表しがたい形での愛を彼に覚えたのだ。
「しっかし、良く出来た摸造刀だよなぁ、これ。」
「・・・ちがう・・」
それは摸造刀なんかじゃない。
大根なんてスパッと斬れるような剣や刀だ。
「なぁ、一つ売ってくれない?」
「っ!?」
それはとてつもなく嬉しい言葉だった。
これまで、ロクな人間が買いに来た事の無い私の武器達を、彼は無邪気に求めて来たのだ。
「・・・・好きなの・・・」
「えっ?」
「・・持って行っていい・・・」
要はタダだと言う事だ、察して欲しい。
「それじゃ・・・・これがいいな!」
それは、私が生まれて初めて作ったものだった。
形も歪なら切れ味も皆無。
そんなナマクラを、彼はニコニコしながら銃のホルダーの隣に差した。
「いやぁ、こう言うナイフみたいなの欲しかったんだよね〜♪なんかカッコイイし。」
「・・・よかった・・・」
またつい本音が出てしまった。
彼に聞かれていなければ良かったのだが、そう上手く行くものではないらしい。
ワタルはしっかりと聞いていたらしく、無邪気に私の頭を撫でまわしてくる。
不意に、カラスが鳴いているのを聞いたワタルは窓の外を見た。
夕日はもう沈んで夜を迎えようとしているのだ。
「あらら・・・・もう遅いし、今日は俺の家に泊まるか・・?」
これは人が良いと言うレベルではないのだろう。
しかし、親魔物領においてはそう言う事もあるのだろう。
「魔物との親交を深めること即ち愛情と友情の糧なり」この城下町の言い伝えらしい。
「先輩、それじゃ俺帰りますから、その爺さん箱に放り込んでおいてくださいよ?」
「わぁってるよ。流石に罪状重なり過ぎてっからな、この爺さん。」
「これ!年寄りは労らんか!」
「黙れ老いぼれ畜生」
――――――――――――
あの爺さんのお陰で右足を痛めてしまっていた私は、ワタルに背負われて彼の家まで来ていた。
見た感じ、年相応の若者が住むようなアパートだ。
その一室の扉を開けて中に入る。
「さって、少し待っててくれ?晩御飯作るから。」
「・・うん・・・・」
1人暮らしなのか、部屋の中は殺風景と言うか、彩が無かった。
部屋の隅に無造作に置かれた箒、踏まれ続けてそのままのカーペット、自作らしいゴテゴテした椅子と机。
これくらいだった。
正直、どれも11歳の私には大きすぎる。
現に、降ろして貰った椅子も足が床に届いていない。
「こんなもんかな・・・・さ、どうぞ?」
出てきたのはサーモンか何かを炒めた切り身と、米を炊いた物、それとみそ汁だった。
ジパングと言う国ではこう言う献立が普通らしいが、私はこの様なメニュー食べたことも無いしそもそもここはジパングではない。
多分ワタルがジパングの人だからこの様な献立になるのだろう。
「・・・あれ?食べないの?」
「・・・・何だか悪い・・」
「そんな事無いって。これも好意だと思って。な?」
そう言って食べるのを急かしてくる。
どうやら早くこの食事の美味しさを知って欲しいようだ。
物は試しだ、食べて見よう。パクッ
「・・・・おいしい・・」
「だろう?!おいしいだろ?!」
まるで子供の様に目を輝かせて喜ぶワタルを、私はどんな目で見ていたのだろう。
サイクロプス故の一つ目の大きな瞳は、どのような形に歪んでいただろう。
それは、自分でも分からなかった。
―――――――
それから暫く経って、夜も更けて眠くなってきた。
「ふあぁ・・・もう眠いし寝ようか・・・」
風呂にも入った私たちは既に浴衣姿だ。
この国で今現在浴衣姿なのはおそらく私たちくらいなものだろう。
お互いに寝室に来た二人、しかし思っていた通りの光景が目に飛び込む。
1人暮らし故に容易に想像はついたのだが、ベットが一つしかないのだ。
「ん・・それじゃ、君はベッドで寝なよ。俺は下で寝るからさ。」
「・・・いや・・一緒が良い・・・」
「えっ・・」
まぁ、そうなるだろう。
「それに・・・・色々とお返ししたい・・・」
「いやいやいいよ、おかえしなんて・・・」
「ダメッ!」
正直、何故こんな展開になったのか私自身も分からない。
気が付けば私は、ワタルを引っ張ってベットの上でワタルに押し倒される形になっていた。
「っ!?」
「・・・・ワタル・・」
下から見て見てようやく気付いたが、ワタルって結構大きい。
丸くなれば私を包みこめそうな程に大きく感じる。
身長や体格で言えば一般男性と何ら変わりないのだろうけど、私にはとても大きく見えた。
「ん・・・」
初めてのキスは、味噌汁の味がした。
どこかでは「初めてのキスは甘酸っぱい」と言うが、真っ赤なウソらしい。
「ん・・・プハッ・・・」
お互いの舌が絡み合う。
その度に唾液の交換が行われるらしい。
でも、私にはそんな科学的な事は何も思わない。
私の舌にワタルの舌が絡まる度に頭の中がフワリと浮くような感覚になる。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「っ・・・本当に・・・良いのか・・?」
ダメな訳がない。
と、ここでコメディチックな事態が発生。
もう一度キスしようとしたら、お互いの額がぶつかってしまった。
「はにゅあぁ・・・」
「なっ!大丈夫かっ!」
大丈夫なんかじゃない。
相当痛いに決ってるじゃないか。
それにしても相当の石頭だ。
思わず走馬燈が見えた気がした。
「・・・そうだ!」
「はにゃっ!」
秘部に指を捻じ込ませるなんて卑怯な!
でも、物凄く気持ち良い。
お陰で朦朧としてた意識も取り戻した。
でも、グチュグチュ言うこの動きはなんだか好きになれない。
「はっ・・・いやっ・・・・」
「あっ、ごめ――」
「やぁっ!やめにゃいれ!」
アレ?やめてほしかったのでは無かったか?
でも、指が秘部を離れた時のあの切なさが忘れられない。
なんだろう、もっとしてほしい。
「あ・・・うん・・・・」
「んひゃぁ!いいぃぃ!いいにょぉぉ!」
ダメェ!駄目じゃないけど・・・ダメんなるぅ!
そうこうしていたら彼も我慢できなくなったのだろう。
股間にテントを作った、膨れた逸物が私の太股を押してくる。
「あっ・・・」
「ちょーらい!それいれてぇ!」
ん?私は何をしてほしいと言った?
ダメだ、考えても止められない。
こうなっては快楽の虜になるしかないのか。
その証拠なのか、私はいつの間にかワタルの大きく反りかえった逸物をズボンから取り出してしゃぶっていた。
「はむっ・・・ジュルルル・・・んむっ・・」
「うぐぁっ!」
相当気持ちいいらしい。
肉棒がビクンビクンと脈打って私の上あごに当たる。
その度に何やら液体の様なものが滲み出てくるので、私はそれを零さずに吸い取ってやる。
するとどうだろうか、それはなかなか美味で、いくらでも飲めそうな気がした。
「ぐっ・・・でるっ!」
「んんっ?!」
唐突に彼の肉棒が大きくなったと思ったら、今度はさっきまでの液体とは違う、もっと熱いのが流れ込んできた。
それの所為なのかは知らないが、私の頭の中は真っ白になった。
「ゴクッ・・・・プハァ・・・」
「っ!」
飲み干した精液の余りを口から見せた私。
すると彼の肉棒はそれだけでまた元気を取り戻していた。
正直言って嬉しい。
「いれへぇ!ちょぉらいぃ!このおひんぽぉぉぉ!」
自分で言うのもなんだが、何故こんなにも喋れているのだろうか、私は。
それも覚えて間もないような淫語ばかり。
「あぁ!入れるぞ・・・んぅ・・・」
「きたぁぁぁ!おちんぽきたのぉぉぉ!」
私の、まだ誰にも侵入を許さなかった場所に彼の充血した逸物が捻じ込まれた。
対格差もあってか、私の膣に対して彼の逸物は大きすぎた。
その為に私には酷とも言えるような痛みが身体中を襲う。
「んぎぃぃ・・・れも・・・・ぎもちぃぃぃぃぃ!」
「う・・・うごく・・血っ?!」
どうやら痛みの正体はこれらしい。
まぁ、これが初めてなのだから予想はしていた。
他にも膣が文字通り裂けたと言うのも考えたが、あれは空想の中だけの話らしい。
魔物の肉体は、脆そうに見えて意外と頑丈なのだ。
「きに・・・しないれ・・・・・うごいて・・・」
「あ・・・あぁ・・・・ぐぅ・・すっごくキツくて・・・・もぅ・・」
挿入してすぐだと言うのに、ワタルの逸物は激しく脈打って今にも精液を吐きだしそうになっていた。
私は私で、暴れ回る彼のペニスに屈して今は気が狂いそうになっている。
もう自分の顔がどれだけグシャグヤなのかも分からない。
「だ・・・・だす・・・・そと・・」
「やらぁ!なか!なかにらしてぇ!」
そう言えば、何で私はこんなお願いをしたんだろう。
答えはすぐに出た。
その場の気の迷いでも、単に魔物としての本能で精液を膣に浴びたかった訳でも無い。
純粋に彼を愛していて、その証が欲しかったのだ。
「う・・・うあぁぁぁぁぁぁぁ!」
ビュルルッ・・・ビュルルルルルルル・・・・・ビュルルッ・・・・ドクンッ・・・ドクンッ・・・
「あひゃぁぁぁぁぁぁ!らされていっひゃぅぅぅぅぅぅ!」
膣出しされた私に、それだけの快感を享受できるだけの余裕などある訳も無く、その場で潮を噴いて絶頂していた。
あれから何度も愛し合った。
何度も何度も、それこそ互いに体力が尽き果てて立てなくなるまで。
――――――――――――――――――――――
「こ・・・・これが、サイロさんとワタルさんの12年前の出会いで・・・・今は・・」
「うん・・・・」
彼の名はコーウェル。
私が現在働いている鍛冶工房の後輩だ。
実はワタルの学生時代の後輩でもあるらしい。
「おう!今ではこうして子宝にも恵まれ・・」
「パパ・・・・だっこ・・」
「パパ・・おんぶして・・」
この子たちは私とワタルの娘でリアとライ。
私と同じ(魔物なので当たり前だが)サイクロプスで、私の特徴を強く受け継いでいるのかとても口数が少ない。
かく言う私も口数はめっぽう少ない。
「ほらよっと!」
「パパ・・・ライは降ろして・・」
「パパ・・・リアは降ろして・・」
どうやらお互いに父親の取りあいをしているようだ。
このまま大人になって「娘に夫を寝取られる」なんて事にならない様私が注意しなくては。
「で・・・・用事って・・?」
「あぁ、その事なんですが・・」
さっきまで私のアルバムに釘付けにされていたのは、忘れていたからなんじゃないだろうか。
関係ない話だが、コーウェルには恋愛経験がまったくないらしいので、また今度にでも私の友人を紹介するつもりでいる。
「鑪場の近くに水脈があるのが分かったらしくて、今月中に立ち退きを願うとの事です。」
「ふぇ・・?」
突然過ぎて飲み込めない。
鑪場の近くに水脈?
そんなもの放っておいても良いではないか。
だが、良く良く考えると鑪場の辺りの地盤は確か比較的緩かった筈。
そう考えると、いつ水脈が盛り上がって鑪場を飲み込むかも分からないだろう。
「あっ、でも大丈夫です!新しい鑪場を用意してあるって言ってましたし。」
「なら・・・」
「あぁ、家の事なら気にするな!立派なおまわりさんが付いてるんだからな!」
『パパ・・・かっこいい・・・』
流石は警視まで昇りつめた人間だ。
それだけの自信が無尽蔵に湧いていそう。
これからも7歳の娘二人を守って下さいよ、正義のおまわりさん?
「にしても・・・」
「ん・・?」
「サイロさんと娘さん達って、親子と言うより姉妹・・」
「なんか言った?」
そう、私はワタルと婚約した頃から身長が一向に伸びないのだ。
病院にいる友人にも聞いてみたが、病気うんぬんでは無いらしい。
元々サイクロプスが成長しても身長の高い個体は希薄らしく、むしろ自然なんだそうな(辞典引用)
それにしても失礼な男だ。
「あ、すいません・・・・でも、サイロさんとワタルさんの夫婦ってのは本当に犯罪の匂いしか・・」
「ハハッ・・・・ん?なんか言ったか?」
聞き直してくれるな二児の父よ。
「アハハ・・・・なんでもないです・・・・それじゃ、僕はこれで・・」
「待って・・・・・・これ・・」
「電話番号・・・・・ヒョウサ・・・さん・・・?」
「この前言ってたお見合い・・」
「あぁ、分かりました。今度にでもお受けしますよ。それじゃこれで失礼しまーす♪」
そんなこんなで、私たちは今日も元気です♪
fin
そこに一人の鍛冶職人見習いの少女がいた。
「・・・・・・」
「良く見てろよ?これがお前の父親の打ち方だと言う事を・・・」
キンコンキンコン
金属に金属をぶつける音が響く。
それは段々と硬質な物になって行き、やがて一本の刀が出来あがる。
この部屋は石を組み合わせて作った謂わば隠れ家のような場所だ。
そこでこの親子はひっそりと暮らしては刃物や衣類などを街へ売りに行って生計を立てている。
それが、今から3年ほど前の話。
今では父親は流行病に罹り他界。
母親は修行に出ると言ったきり帰って来ない。
「・・・・・」
そんな中で、この少女「サイロ」は生きているのである。
―――――――――
そして、彼女は今日も街へ物を売りに来ていた。
こうでもしないと食べ物も買えずに飢えてしまうから。
「――でさ〜!あの子ったらなんて言ったと思う〜?」
「なんて言ったんだ?チョー気になる!」
「えっと、次の配達場所は――」
「・・・・」
通行人が目の前をたくさん横切って行く。
そんな中、サイロは1人座り込んで物を売り続ける。
無駄な客寄せなどしない。
どうせこの国には必要の無い武器類なのだから。
銃が国軍の正規武装となってから、剣や槍といった旧世代的な武器類は廃れて行く。
それは至極当然の事だろう。
便利な物は重宝され重要視される。
逆に古い物は次々と捨てられていく。
どこの世もそんなものだ。
「・・・・」
「うわぁ、何よアレ。チョー汚い」
「目合わせんな。アイツ一つ目だぜ?」
「うっわ、魔物なの〜?早く居なくなんないかな〜」
「・・・・・」
誹謗中傷など聞き飽きた。
元々は反魔物領で、王族が淫魔と婚儀を果たした事から親魔物領へと変わったこの国、強いてはこの城下町は未だに魔物を嫌う者など五万といる。
特に強く魔物を追い出そうとするのが老人達だ。
何かと文句をつけては魔物やその家族に執拗な嫌がらせばかりを行う集団が存在するらしい。
「またオマエか。もうここでの商売は止めろと言っとろうが!あぁ?!」
この爺さんもそうだ。
先の嫌がらせ集団の中でも上の階級に居るらしいが、相当ヒマなのかしょっちゅう私の邪魔をしに来る。
今日は用意が良いようで、杖ではなく古い箒で突いて来ている。
だが知った事か。
こんな老人の邪魔程度で立ち退くようでは商売など出来はしない。
「こら!何をしている!・・・・またアンタかじいさん!」
「離さんか!ワシはこのガキにこの街のルールを教えて・・」
「あ〜・・・おっ?先輩!この爺さんしょっ引いてくれませんか?」
「ん?ワタルか・・・・またアンタかじいさん・・・良かろう。んじゃ、署で待ってるからな。」
今回は運が良いらしい。
いつもなら私の服がボロボロになるくらいまで叩かれた後に爺さんがバテて帰るのだが、今回はあの人が助けてくれたのだ。
たまに私の事を助けてくれる自警団の男性。
ついさっきまで名前も知らなかったが、ワタルと言うらしいと言うのが分かった。
近所にある交番にいるらしい。
今度にでも遊びに行ってみようか。
「大丈夫だったか?またイジめられていたんだろ・・・」
「・・・うん・・」
この人の前だと、つい言葉を発してしまう。
何故こんな事になるのだろう。
自分でも分からない。
「ほら、一緒に署まで行こう?怪我直さないとな。」
「・・・・でも、売り物・・」
「一緒に運んでやるよ。な?」
そう言って、荷物をあっという間に包んだワタルは荷物を持った上で私を背負ってくれた。
見た目よりもずっと広い背中。
なんだか、懐かしいような気がする。
―――――――――
あっという間に交番まで着いてしまった。
案外近かったらしい。
「さ、適当に座って?薬箱出してくるから・・」
そう言って、私を降ろしたワタルは早々に部屋の奥に行ってしまう。
なんだか寂しい気分になったが、直ぐに戻ってきてくれて何だかホッとした。
「何故ワシが逮捕でコイツが保護なんじゃ〜!納得いか〜ん!」
「そりゃ、アンタが暴力振るってたからだろ?それも無抵抗な女の子を。」
「それでもじゃ!」
「・・・公務執行妨害と児童虐待、どっちがいい?」
「どっちもですよ、先輩?」
その通りである。
「・・・・」
「・・・よっし、これで完了っと。」
湿布が剥がれないように包帯を巻いただけの簡単な応急処置。
だけど、ワタルにして貰ったと言う事が無性に嬉しかった。
「・・・ありがと・・・」
「どういたしまして♪」
多分、この瞬間なのだろう。
恋に落ちてしまったのは。
笑顔が眩し過ぎたのか、心にキュンとした物が来たからかは分からない。
だが、一つだけは言える。
言い表しがたい形での愛を彼に覚えたのだ。
「しっかし、良く出来た摸造刀だよなぁ、これ。」
「・・・ちがう・・」
それは摸造刀なんかじゃない。
大根なんてスパッと斬れるような剣や刀だ。
「なぁ、一つ売ってくれない?」
「っ!?」
それはとてつもなく嬉しい言葉だった。
これまで、ロクな人間が買いに来た事の無い私の武器達を、彼は無邪気に求めて来たのだ。
「・・・・好きなの・・・」
「えっ?」
「・・持って行っていい・・・」
要はタダだと言う事だ、察して欲しい。
「それじゃ・・・・これがいいな!」
それは、私が生まれて初めて作ったものだった。
形も歪なら切れ味も皆無。
そんなナマクラを、彼はニコニコしながら銃のホルダーの隣に差した。
「いやぁ、こう言うナイフみたいなの欲しかったんだよね〜♪なんかカッコイイし。」
「・・・よかった・・・」
またつい本音が出てしまった。
彼に聞かれていなければ良かったのだが、そう上手く行くものではないらしい。
ワタルはしっかりと聞いていたらしく、無邪気に私の頭を撫でまわしてくる。
不意に、カラスが鳴いているのを聞いたワタルは窓の外を見た。
夕日はもう沈んで夜を迎えようとしているのだ。
「あらら・・・・もう遅いし、今日は俺の家に泊まるか・・?」
これは人が良いと言うレベルではないのだろう。
しかし、親魔物領においてはそう言う事もあるのだろう。
「魔物との親交を深めること即ち愛情と友情の糧なり」この城下町の言い伝えらしい。
「先輩、それじゃ俺帰りますから、その爺さん箱に放り込んでおいてくださいよ?」
「わぁってるよ。流石に罪状重なり過ぎてっからな、この爺さん。」
「これ!年寄りは労らんか!」
「黙れ老いぼれ畜生」
――――――――――――
あの爺さんのお陰で右足を痛めてしまっていた私は、ワタルに背負われて彼の家まで来ていた。
見た感じ、年相応の若者が住むようなアパートだ。
その一室の扉を開けて中に入る。
「さって、少し待っててくれ?晩御飯作るから。」
「・・うん・・・・」
1人暮らしなのか、部屋の中は殺風景と言うか、彩が無かった。
部屋の隅に無造作に置かれた箒、踏まれ続けてそのままのカーペット、自作らしいゴテゴテした椅子と机。
これくらいだった。
正直、どれも11歳の私には大きすぎる。
現に、降ろして貰った椅子も足が床に届いていない。
「こんなもんかな・・・・さ、どうぞ?」
出てきたのはサーモンか何かを炒めた切り身と、米を炊いた物、それとみそ汁だった。
ジパングと言う国ではこう言う献立が普通らしいが、私はこの様なメニュー食べたことも無いしそもそもここはジパングではない。
多分ワタルがジパングの人だからこの様な献立になるのだろう。
「・・・あれ?食べないの?」
「・・・・何だか悪い・・」
「そんな事無いって。これも好意だと思って。な?」
そう言って食べるのを急かしてくる。
どうやら早くこの食事の美味しさを知って欲しいようだ。
物は試しだ、食べて見よう。パクッ
「・・・・おいしい・・」
「だろう?!おいしいだろ?!」
まるで子供の様に目を輝かせて喜ぶワタルを、私はどんな目で見ていたのだろう。
サイクロプス故の一つ目の大きな瞳は、どのような形に歪んでいただろう。
それは、自分でも分からなかった。
―――――――
それから暫く経って、夜も更けて眠くなってきた。
「ふあぁ・・・もう眠いし寝ようか・・・」
風呂にも入った私たちは既に浴衣姿だ。
この国で今現在浴衣姿なのはおそらく私たちくらいなものだろう。
お互いに寝室に来た二人、しかし思っていた通りの光景が目に飛び込む。
1人暮らし故に容易に想像はついたのだが、ベットが一つしかないのだ。
「ん・・それじゃ、君はベッドで寝なよ。俺は下で寝るからさ。」
「・・・いや・・一緒が良い・・・」
「えっ・・」
まぁ、そうなるだろう。
「それに・・・・色々とお返ししたい・・・」
「いやいやいいよ、おかえしなんて・・・」
「ダメッ!」
正直、何故こんな展開になったのか私自身も分からない。
気が付けば私は、ワタルを引っ張ってベットの上でワタルに押し倒される形になっていた。
「っ!?」
「・・・・ワタル・・」
下から見て見てようやく気付いたが、ワタルって結構大きい。
丸くなれば私を包みこめそうな程に大きく感じる。
身長や体格で言えば一般男性と何ら変わりないのだろうけど、私にはとても大きく見えた。
「ん・・・」
初めてのキスは、味噌汁の味がした。
どこかでは「初めてのキスは甘酸っぱい」と言うが、真っ赤なウソらしい。
「ん・・・プハッ・・・」
お互いの舌が絡み合う。
その度に唾液の交換が行われるらしい。
でも、私にはそんな科学的な事は何も思わない。
私の舌にワタルの舌が絡まる度に頭の中がフワリと浮くような感覚になる。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「っ・・・本当に・・・良いのか・・?」
ダメな訳がない。
と、ここでコメディチックな事態が発生。
もう一度キスしようとしたら、お互いの額がぶつかってしまった。
「はにゅあぁ・・・」
「なっ!大丈夫かっ!」
大丈夫なんかじゃない。
相当痛いに決ってるじゃないか。
それにしても相当の石頭だ。
思わず走馬燈が見えた気がした。
「・・・そうだ!」
「はにゃっ!」
秘部に指を捻じ込ませるなんて卑怯な!
でも、物凄く気持ち良い。
お陰で朦朧としてた意識も取り戻した。
でも、グチュグチュ言うこの動きはなんだか好きになれない。
「はっ・・・いやっ・・・・」
「あっ、ごめ――」
「やぁっ!やめにゃいれ!」
アレ?やめてほしかったのでは無かったか?
でも、指が秘部を離れた時のあの切なさが忘れられない。
なんだろう、もっとしてほしい。
「あ・・・うん・・・・」
「んひゃぁ!いいぃぃ!いいにょぉぉ!」
ダメェ!駄目じゃないけど・・・ダメんなるぅ!
そうこうしていたら彼も我慢できなくなったのだろう。
股間にテントを作った、膨れた逸物が私の太股を押してくる。
「あっ・・・」
「ちょーらい!それいれてぇ!」
ん?私は何をしてほしいと言った?
ダメだ、考えても止められない。
こうなっては快楽の虜になるしかないのか。
その証拠なのか、私はいつの間にかワタルの大きく反りかえった逸物をズボンから取り出してしゃぶっていた。
「はむっ・・・ジュルルル・・・んむっ・・」
「うぐぁっ!」
相当気持ちいいらしい。
肉棒がビクンビクンと脈打って私の上あごに当たる。
その度に何やら液体の様なものが滲み出てくるので、私はそれを零さずに吸い取ってやる。
するとどうだろうか、それはなかなか美味で、いくらでも飲めそうな気がした。
「ぐっ・・・でるっ!」
「んんっ?!」
唐突に彼の肉棒が大きくなったと思ったら、今度はさっきまでの液体とは違う、もっと熱いのが流れ込んできた。
それの所為なのかは知らないが、私の頭の中は真っ白になった。
「ゴクッ・・・・プハァ・・・」
「っ!」
飲み干した精液の余りを口から見せた私。
すると彼の肉棒はそれだけでまた元気を取り戻していた。
正直言って嬉しい。
「いれへぇ!ちょぉらいぃ!このおひんぽぉぉぉ!」
自分で言うのもなんだが、何故こんなにも喋れているのだろうか、私は。
それも覚えて間もないような淫語ばかり。
「あぁ!入れるぞ・・・んぅ・・・」
「きたぁぁぁ!おちんぽきたのぉぉぉ!」
私の、まだ誰にも侵入を許さなかった場所に彼の充血した逸物が捻じ込まれた。
対格差もあってか、私の膣に対して彼の逸物は大きすぎた。
その為に私には酷とも言えるような痛みが身体中を襲う。
「んぎぃぃ・・・れも・・・・ぎもちぃぃぃぃぃ!」
「う・・・うごく・・血っ?!」
どうやら痛みの正体はこれらしい。
まぁ、これが初めてなのだから予想はしていた。
他にも膣が文字通り裂けたと言うのも考えたが、あれは空想の中だけの話らしい。
魔物の肉体は、脆そうに見えて意外と頑丈なのだ。
「きに・・・しないれ・・・・・うごいて・・・」
「あ・・・あぁ・・・・ぐぅ・・すっごくキツくて・・・・もぅ・・」
挿入してすぐだと言うのに、ワタルの逸物は激しく脈打って今にも精液を吐きだしそうになっていた。
私は私で、暴れ回る彼のペニスに屈して今は気が狂いそうになっている。
もう自分の顔がどれだけグシャグヤなのかも分からない。
「だ・・・・だす・・・・そと・・」
「やらぁ!なか!なかにらしてぇ!」
そう言えば、何で私はこんなお願いをしたんだろう。
答えはすぐに出た。
その場の気の迷いでも、単に魔物としての本能で精液を膣に浴びたかった訳でも無い。
純粋に彼を愛していて、その証が欲しかったのだ。
「う・・・うあぁぁぁぁぁぁぁ!」
ビュルルッ・・・ビュルルルルルルル・・・・・ビュルルッ・・・・ドクンッ・・・ドクンッ・・・
「あひゃぁぁぁぁぁぁ!らされていっひゃぅぅぅぅぅぅ!」
膣出しされた私に、それだけの快感を享受できるだけの余裕などある訳も無く、その場で潮を噴いて絶頂していた。
あれから何度も愛し合った。
何度も何度も、それこそ互いに体力が尽き果てて立てなくなるまで。
――――――――――――――――――――――
「こ・・・・これが、サイロさんとワタルさんの12年前の出会いで・・・・今は・・」
「うん・・・・」
彼の名はコーウェル。
私が現在働いている鍛冶工房の後輩だ。
実はワタルの学生時代の後輩でもあるらしい。
「おう!今ではこうして子宝にも恵まれ・・」
「パパ・・・・だっこ・・」
「パパ・・おんぶして・・」
この子たちは私とワタルの娘でリアとライ。
私と同じ(魔物なので当たり前だが)サイクロプスで、私の特徴を強く受け継いでいるのかとても口数が少ない。
かく言う私も口数はめっぽう少ない。
「ほらよっと!」
「パパ・・・ライは降ろして・・」
「パパ・・・リアは降ろして・・」
どうやらお互いに父親の取りあいをしているようだ。
このまま大人になって「娘に夫を寝取られる」なんて事にならない様私が注意しなくては。
「で・・・・用事って・・?」
「あぁ、その事なんですが・・」
さっきまで私のアルバムに釘付けにされていたのは、忘れていたからなんじゃないだろうか。
関係ない話だが、コーウェルには恋愛経験がまったくないらしいので、また今度にでも私の友人を紹介するつもりでいる。
「鑪場の近くに水脈があるのが分かったらしくて、今月中に立ち退きを願うとの事です。」
「ふぇ・・?」
突然過ぎて飲み込めない。
鑪場の近くに水脈?
そんなもの放っておいても良いではないか。
だが、良く良く考えると鑪場の辺りの地盤は確か比較的緩かった筈。
そう考えると、いつ水脈が盛り上がって鑪場を飲み込むかも分からないだろう。
「あっ、でも大丈夫です!新しい鑪場を用意してあるって言ってましたし。」
「なら・・・」
「あぁ、家の事なら気にするな!立派なおまわりさんが付いてるんだからな!」
『パパ・・・かっこいい・・・』
流石は警視まで昇りつめた人間だ。
それだけの自信が無尽蔵に湧いていそう。
これからも7歳の娘二人を守って下さいよ、正義のおまわりさん?
「にしても・・・」
「ん・・?」
「サイロさんと娘さん達って、親子と言うより姉妹・・」
「なんか言った?」
そう、私はワタルと婚約した頃から身長が一向に伸びないのだ。
病院にいる友人にも聞いてみたが、病気うんぬんでは無いらしい。
元々サイクロプスが成長しても身長の高い個体は希薄らしく、むしろ自然なんだそうな(辞典引用)
それにしても失礼な男だ。
「あ、すいません・・・・でも、サイロさんとワタルさんの夫婦ってのは本当に犯罪の匂いしか・・」
「ハハッ・・・・ん?なんか言ったか?」
聞き直してくれるな二児の父よ。
「アハハ・・・・なんでもないです・・・・それじゃ、僕はこれで・・」
「待って・・・・・・これ・・」
「電話番号・・・・・ヒョウサ・・・さん・・・?」
「この前言ってたお見合い・・」
「あぁ、分かりました。今度にでもお受けしますよ。それじゃこれで失礼しまーす♪」
そんなこんなで、私たちは今日も元気です♪
fin
11/10/07 09:45更新 / 兎と兎