捕らぬ狸の皮算用
「はぁ・・・はぁ・・・」
何故、私は走っているのか。
答えは簡単だ。
今の私は、いつものんびりとしているモモでも、慌てて皿を割ってしまうモモでもない。
今の私は、狩人としてのモモだ。
そのケンタウロス特有の4本脚を自在に駆使し、獲物を追い詰めて行く・・・はずだった。
「ま・・・まてっ!」
私が追っている今回の獲物は、いつもと同じように鳥などの小動物だ。
しかし・・
一発目、明後日の方向に飛んで行く。
二発目、樹の幹に刺さる。
三発目、土を思い切り抉る。
四発目、取り落とす。
五発目、手で圧し折ってしまう。
このように、まるで狩りになどなっていない。
「うぅ・・・・なんでいつも・・」
私だって女の子だ。泣きたくもなる。
周りは森林で誰も居ないのだから、泣き顔を見られることも無いだろう。
そう思っていた。少なくともさっきまでは。
「ひぐっ・・・・えぐっ・・・」
「んっ?誰か居るの?」
「っ!?」
とっさに隠れた私のすぐ傍を、一人の青年が歩いて行く。
どうやら私たちと同じように狩人らしい。
背中に背負ったコンポジットボウが光り輝いているようにさえ見える。
ケンタウロスである私からすれば、こういう類の人間は商売敵とも取れる。
同じように獲物を取られる。それはつまり、自分の取り分が半減しかねないと言う事に繋がる。
「う・・動くなッ!!」
「うんっ?」
そんな商売敵をみすみす見過ごす筈も無く、私は弓に矢を番えて・・・・番えて・・・
矢のストックが心配になっていた私ではあったが、まさかさっき5発も放って外し、挙句矢を切らしていたとは気付きもしなかった。
しかも、相手側はまだまだ矢のストックは存分にある。
戦力の差は明確過ぎていた。
―――――――――――――
「あっはっは!なんてお茶目な!」
「うぅ・・・・返す言葉も無い・・・」
先程の警戒態勢とは打って変わって、私はこの男(名前はガイとしか教えてくれなかった。)と一緒に昼食を御馳走になっていた。
既に狩りを始めていたらしいガイは、袋に詰めてあった数匹の鳥たちをあっという間に捌いて焼き鳥を作ってくれている。
それがまた美味しく、まるで一流の料理人が味の仕込みをしているかのように絶妙だった。
私には到底まねできないな、うん。
「どう?美味しい?」
「う・・・うん・・・・でも、良かったのか?折角獲った獲物なのに・・」
「いいんだよ♪まだまだ沢山あるし、それに君みたいな可愛い子にも出会えたしね♪」
な、な、な、な、な、な、な・・・何を言っているのだこの男は!?
確かに、顔も悪くなく、寧ろイケメンの部類に入るだろう。
見た目的に大人しそうで、ど真ん中で私の好みだ。
だが、この男は本当に褒め慣れているのか、その笑顔は一片の作り笑いも無い。
そのまるで天使の微笑みの様な笑顔を見ていると、なんだかこっちの心が溶かされて行く様な気がする。
「そ・・・・そうか・・」
な、なんで私はこんな生返事しか出来ないんだろうか!
こんな自分が時に妬ましいと思う。どうして思いを伝えないのか!
簡単ではないか!「貴方に一目ぼれしましたっ!」これでいい・・・・これで・・
「っっっ!?!」
「わっ、大丈夫?」
気が付けば私の顔は真っ赤になっていたようだ。
頬を触れば、いつもよりも少し暖かい。
ガイの瞳に微かに映る自分も、顔は熱でも出たかのように真っ赤っ赤だ。
それよりも、ガイが顔を近づけてきたことで私の顔はもっと赤くなる。
「や・・やめてくれっ!それ以上近づかないでっ!」
「ん・・・分かったよ・・・」
あぁあああああっ!なんでこんな断り方しか出来ないのだ私はっ!?
今度この様な事があったら、その時は自らの腕で首を撥ねよう。
そうでもしなければやっていられない。恥ずかし過ぎる。
そんな恥晒しな行為、我々が行って良い道理がない。
「あ・・・いや・・・別に怒ってる訳とかではなくだな・・」
「そう・・・・なら良かった・・」
今更自分のポニーテールを弄りながら照れても遅いっ!!
そんな事では獲物はこの世の果てまで逃げているぞ!
しかし、すっかり意気消沈したガイの表情は、怒られた子供の様に暗かった。
「す・・・すまない・・」
「いいよ・・・怒ってない・・・」
暫くお互いに暗い顔になってしまっていた二人だが、ここで転機が訪れる。
急に、ガイがモモに乗ったのだ。
「なっ!?なななななななななな・・」
「ははっ♪やっぱり視界高いんだ!」
急に上に乗られて、顔を真っ赤にして言葉が出てこなくなってしまったモモを余所に、ガイはまるで子供のようにモモの上で視界の高さを実感していた。
ガイのその子供のような表情を見て、更にモモの顔は赤く染め上げられていく。
そんな時、不意にガイの股間にある何かが、モモの馬部分の胴体に密着したので限界を迎えてしまったモモはその場に座り込んでしまう。
目を回しながらしゃがみこんだモモの頭の中は、もう桃色一色だ。
「えぇっ?!大丈夫?!」
「ふあぁぁ・・・」
上に乗っているガイが声を掛けたり震える手で身体に触れたりする度に、モモの欲情のボルテージがグングン上がっていく。
それは、彼女の荒い息遣いと表情に出ていた。
まるで既に突き上げられているかのような喘ぎ声と表情。
その表情は男性をその気にさせるには十分だ。
だが、そっちの方向の経験が無いのかガイが単なる発熱か何かと勘違いしている様子。
「苦しいのかい?薬は・・」
「やらぁ・・・離れないれぇ・・・」
「うわぁぁっ!?」
見た目からして曲がれないような角度で腰を曲げたモモが、その華奢な両腕でガイをしっかりと抱きしめた。
そしてそのまま、バネの応用でガイを馬の身体から離して自分の前方に動かしたモモは、まるでねだるかのように自分の胸にガイの顔を埋める。
その柔らかな胸に抱きすくめられたガイは、あっという間に自分の物を大きくしてしまう。
「あっ・・・いや、コレは・・」
「ねぇ・・・シて・・」
直立してモモの馬体と人体の間で濡れている小さな秘部に、ガイの大きくなった肉棒がズボン越しで擦りつけられる。
それだけでモモの表情は更に明るくなって、と言うより艶やかになって行く。
その内に、ズボンがモモの手であっという間に脱がされてガイの大きな逸物が姿を現す。
それは、時折ビクンビクンと震えてその存在をモモにありありと見せつけていた。
「ぅぐ・・・・」
「はぁ・・はぁ・・・」
秘部に擦りつけられている肉棒が、今にもはち切れんばかりに膨らんでモモの秘部を擦って濡らす。
その肉棒が擦れる度、モモの表情も蕩けていく。
「はぁ・・はぁ・・もうy・・うあぁあぁぁっ・・」
「ひぅ・・・来てる・・・来てるぅぅぅっ!!」
不意に訪れた、お互いに感じた事の無い快感。
その量と強さに、二人は身体を震わせ合っていた。
まるで遊ぶかのように擦れていた二人の性器は、不意にタイミングがズレてモモを貫いてしまったのである。
痛みの伴う快感に、モモは段々と意識が遠退いて行く。
しかし、ガイと繋がった嬉しさで意識は引き戻される。
「うぐ・・・モモの・・・気持ち・・いぃ・・」
いつの間にかモモの名前を覚えていたガイは、対面座位の要領でモモを下から突き上げ始めた。
その強い刺激に、モモは数秒も耐える事が出来ず絶頂を迎えてしまう。
「らめっ・・イクっ・・・・・」
一瞬と言えるほど短かったエクスタシーは、たちまち悦びと嬉しさで一杯になってモモから溢れ出て行く。
愛液となって漏れ出て行くソレは、少量だが薄く赤い色も混じっていた。
「・・・モモ・・もしかして・・」
「・・うん・・・・」
顔を真っ赤にしてガイの問いに小さな声で答えるモモ。
それは、彼女が処女である事を示していた。
それを貫いたガイも、童貞を卒業したところである。
要するに「はじめてのあげっこ」をしたのだ。
「ふあぁあ・・・」
「くっ・・・モモ・・・またキツ・・くぅ!」
快楽に浸って快感を貪るモモは、蕩けた表情のままガイに抱きつく。
それで身体が動いたためなのか、ガイのペニスは跳ねて再び大きさを取り戻す。
大きくなった振動がモモに伝わり、それはモモを快楽の中へと更に引き摺りこんでいく。
「がいぃ・・おねがい・・・ついてぇ・・・」
「うぁ!いま動いたら・・・うあぁぁぁ!」
ガイを強く抱きしめたモモは、そのまま絶頂を味わないがらガイが腰を振るのを待っていた。
しかし、馬体に圧し掛かられて腰を持ちあげられない程に脱力しているガイは腰を振る事が出来ない。
しかも、そのままモモの膣の締め付けだけでイッてしまったのだ。
初めての精液がモモの膣を突き進んで子宮口へと流れて行く。
だが、それはほとんどが子宮に入ることも無く流れ出して行ってしまう。
「がい・・・がいぃ・・」
「はぁ・・はぁ・・・んむっ?!」
射精による疲労で呼吸を乱していたガイだったが、不意にモモの唇がガイの口を塞いだ。
まるで悪戯が成功した子供の様な笑みを浮かべるモモ。
それだけでガイのペニスは再び大きく反りかえったのだ。
「がいぃ!まだまだシよ〜?!」
「こ〜なったらなんとでもなれだぁ〜!」
こうして、二人の狩人が恋に落ちた。
それから互いの身体を抱きしめ合った二人は、日が昇り始める頃まで行為を続けたんだとか。
―――――――――――――――――
それから3年後、そこにはあの頃と全く変わらない、しかしどこか愛嬌に満ち溢れたモモがいた。
「・・・・今日こそできる・・・今日こそできる・・・」
彼女がその手に持っている物。
それは、ガイと知り合った時に使っていた弓だ。
キチンとした使い方も知らずにいたモモだったが、今は違う。
もう矢の番え方も放ち方も熟知している。
が、問題はまだまだ続いていた。
「っ・・・・くっ・・」
今日も10発用意した矢をことごとく外して獲物がどこぞへ走り去ってしまう。
これで一体何度目になるだろうか。
数え切れないほどの獲物を取り逃がしたモモだが、今回も挫けるわけにはいかない。
なぜなら・・
「今回もダメだったのか・・・でも、そんなドジなモモも可愛いな!」
「なっ?!ドジとはなんだドジとはっ!私だってたまには・・」
とは言うモモだが、実際の所、今までに上手に狩りが出来た試しがない。
まるで成長しないモモとグングンと伸びてこの辺り一番の狩人になったガイ。
この二人が並び立つとなんだかモモが可哀そうに見えてくる。
「に、しても・・・・子供、出来そうにないよなぁ・・・」
「っっ?!?!どこをジロジロと見ているっ!そっ、それに毎晩お楽しみを・・・はぅぁっ?!」
そう、ガイの言う通り、モモはなかなか子供を授からなかったのだ。
医師に聞いても「不妊症でもないのでどうにも」くらいしか帰って来ない。
しかし、それはそれで良かったのかも知れない。
ガイが狩りを行う場所は、大抵が気候の厳しい場所や段差の多い場所なのだ。
モモを一緒に連れて行くにも、妊娠していたら赤ん坊に気が行く。
と言うよりまず最初に、妊娠していたら家で寝かせているだろう。
「そっ、それにだっ!!私とガイの行いが悪い所為で・・」
「本当にそう思うか?狩りが悪い行い?それが原因で・・」
暫く続いたガイの説教じみた説得も、途中でモモが顔を真っ赤にしてガイを後脚で蹴って終わらせてしまう。
まぁ、「なかなか孕まないのもその所為?」とか聞かれたらキーワードが原因で恥ずかしくもなるだろう。
しかし、昔のとある指ファイターは良く言ったものだ。「馬に蹴られて地獄に落ちろ」と。
文字通り、すっ飛んだガイはそのまま崖を滑り落ちていたのだから。
「うぐぐ・・・」
「だっ、大丈夫かっ?!」
アンタが蹴り落としたんだろうに。
しかし、そこで二人は思いがけない物と巡り合う。
「っ?!アレはっ!」
「うぅ・・・・狸か・・・」
二人の目の前を通って行った小さな動物。それは間違いなく狸だった。
このまま見逃せばそれこそ「捕らぬ狸の皮算用」である。
「待てっ!」
「あっ・・・」
ほんの威嚇のつもりで、番えた矢を放つモモ。
その矢は、狙った場所とは違う方向へ飛んで行ったが、そこで奇跡が起きた。
矢が飛んで行った先、そこには狸の心臓部分。
そして、矢は狸を撃ち貫いて地面に縛りつけた。
「やっ・・・た・・・?」
「おぉっ?!初めて成功したじゃないかっ!」
「はっ、初めてじゃないっ!!」
最初は自分の成果を疑うことしか出来ないでいたモモだったが、目の前の獲物を見れば見るほど、その実感に喜びが溢れてくる。
更にガイにも褒められたのだが、その時に「初めて」と言うキーワードが気になってつい顔を真っ赤にして怒鳴ってしまう。
実際の所は彼女自身、そこまで狩りに成功した事も無い。
矢をたくさん用意して、何も持たずに帰ってくるのが当り前な程だ。
だが、彼女もたまには鳥や猪なども狩る事が出来ていたのだ。
ただ、数が狩人としては少な過ぎると言うだけである。
「でも・・・・なんだか可哀そうだな・・・」
「それが狩りって物さ。俺達が生き残って行く為に必要な。ね?」
狸から矢を抜いて縄で括り持ち帰れるようにしたガイは、それをモモに手渡す。
その狸はもう息一つしてはいない。
モモが矢で貫いたのだから。
しかし、モモは此処に来て狩りでの心苦しさを味わうのだった。
―――――――――――――
それから数カ月後・・
「お姉ちゃん、そっち行ったよ?!」
「任せろっ!」
少し前まで弓を持つ手すら覚束なかったモモだが、今ではそんな面影などどこにもない。
今では狩りのエキスパートと肩を並べて名を知られている。
今にしたって、ガイの妹であるマリに狩りを教えているのである。
「はっ!」
そして、いつもの事のように、当たり前のように矢は獲物を貫く。
こうしてモモはグングンと成長していくのだった。
fin
何故、私は走っているのか。
答えは簡単だ。
今の私は、いつものんびりとしているモモでも、慌てて皿を割ってしまうモモでもない。
今の私は、狩人としてのモモだ。
そのケンタウロス特有の4本脚を自在に駆使し、獲物を追い詰めて行く・・・はずだった。
「ま・・・まてっ!」
私が追っている今回の獲物は、いつもと同じように鳥などの小動物だ。
しかし・・
一発目、明後日の方向に飛んで行く。
二発目、樹の幹に刺さる。
三発目、土を思い切り抉る。
四発目、取り落とす。
五発目、手で圧し折ってしまう。
このように、まるで狩りになどなっていない。
「うぅ・・・・なんでいつも・・」
私だって女の子だ。泣きたくもなる。
周りは森林で誰も居ないのだから、泣き顔を見られることも無いだろう。
そう思っていた。少なくともさっきまでは。
「ひぐっ・・・・えぐっ・・・」
「んっ?誰か居るの?」
「っ!?」
とっさに隠れた私のすぐ傍を、一人の青年が歩いて行く。
どうやら私たちと同じように狩人らしい。
背中に背負ったコンポジットボウが光り輝いているようにさえ見える。
ケンタウロスである私からすれば、こういう類の人間は商売敵とも取れる。
同じように獲物を取られる。それはつまり、自分の取り分が半減しかねないと言う事に繋がる。
「う・・動くなッ!!」
「うんっ?」
そんな商売敵をみすみす見過ごす筈も無く、私は弓に矢を番えて・・・・番えて・・・
矢のストックが心配になっていた私ではあったが、まさかさっき5発も放って外し、挙句矢を切らしていたとは気付きもしなかった。
しかも、相手側はまだまだ矢のストックは存分にある。
戦力の差は明確過ぎていた。
―――――――――――――
「あっはっは!なんてお茶目な!」
「うぅ・・・・返す言葉も無い・・・」
先程の警戒態勢とは打って変わって、私はこの男(名前はガイとしか教えてくれなかった。)と一緒に昼食を御馳走になっていた。
既に狩りを始めていたらしいガイは、袋に詰めてあった数匹の鳥たちをあっという間に捌いて焼き鳥を作ってくれている。
それがまた美味しく、まるで一流の料理人が味の仕込みをしているかのように絶妙だった。
私には到底まねできないな、うん。
「どう?美味しい?」
「う・・・うん・・・・でも、良かったのか?折角獲った獲物なのに・・」
「いいんだよ♪まだまだ沢山あるし、それに君みたいな可愛い子にも出会えたしね♪」
な、な、な、な、な、な、な・・・何を言っているのだこの男は!?
確かに、顔も悪くなく、寧ろイケメンの部類に入るだろう。
見た目的に大人しそうで、ど真ん中で私の好みだ。
だが、この男は本当に褒め慣れているのか、その笑顔は一片の作り笑いも無い。
そのまるで天使の微笑みの様な笑顔を見ていると、なんだかこっちの心が溶かされて行く様な気がする。
「そ・・・・そうか・・」
な、なんで私はこんな生返事しか出来ないんだろうか!
こんな自分が時に妬ましいと思う。どうして思いを伝えないのか!
簡単ではないか!「貴方に一目ぼれしましたっ!」これでいい・・・・これで・・
「っっっ!?!」
「わっ、大丈夫?」
気が付けば私の顔は真っ赤になっていたようだ。
頬を触れば、いつもよりも少し暖かい。
ガイの瞳に微かに映る自分も、顔は熱でも出たかのように真っ赤っ赤だ。
それよりも、ガイが顔を近づけてきたことで私の顔はもっと赤くなる。
「や・・やめてくれっ!それ以上近づかないでっ!」
「ん・・・分かったよ・・・」
あぁあああああっ!なんでこんな断り方しか出来ないのだ私はっ!?
今度この様な事があったら、その時は自らの腕で首を撥ねよう。
そうでもしなければやっていられない。恥ずかし過ぎる。
そんな恥晒しな行為、我々が行って良い道理がない。
「あ・・・いや・・・別に怒ってる訳とかではなくだな・・」
「そう・・・・なら良かった・・」
今更自分のポニーテールを弄りながら照れても遅いっ!!
そんな事では獲物はこの世の果てまで逃げているぞ!
しかし、すっかり意気消沈したガイの表情は、怒られた子供の様に暗かった。
「す・・・すまない・・」
「いいよ・・・怒ってない・・・」
暫くお互いに暗い顔になってしまっていた二人だが、ここで転機が訪れる。
急に、ガイがモモに乗ったのだ。
「なっ!?なななななななななな・・」
「ははっ♪やっぱり視界高いんだ!」
急に上に乗られて、顔を真っ赤にして言葉が出てこなくなってしまったモモを余所に、ガイはまるで子供のようにモモの上で視界の高さを実感していた。
ガイのその子供のような表情を見て、更にモモの顔は赤く染め上げられていく。
そんな時、不意にガイの股間にある何かが、モモの馬部分の胴体に密着したので限界を迎えてしまったモモはその場に座り込んでしまう。
目を回しながらしゃがみこんだモモの頭の中は、もう桃色一色だ。
「えぇっ?!大丈夫?!」
「ふあぁぁ・・・」
上に乗っているガイが声を掛けたり震える手で身体に触れたりする度に、モモの欲情のボルテージがグングン上がっていく。
それは、彼女の荒い息遣いと表情に出ていた。
まるで既に突き上げられているかのような喘ぎ声と表情。
その表情は男性をその気にさせるには十分だ。
だが、そっちの方向の経験が無いのかガイが単なる発熱か何かと勘違いしている様子。
「苦しいのかい?薬は・・」
「やらぁ・・・離れないれぇ・・・」
「うわぁぁっ!?」
見た目からして曲がれないような角度で腰を曲げたモモが、その華奢な両腕でガイをしっかりと抱きしめた。
そしてそのまま、バネの応用でガイを馬の身体から離して自分の前方に動かしたモモは、まるでねだるかのように自分の胸にガイの顔を埋める。
その柔らかな胸に抱きすくめられたガイは、あっという間に自分の物を大きくしてしまう。
「あっ・・・いや、コレは・・」
「ねぇ・・・シて・・」
直立してモモの馬体と人体の間で濡れている小さな秘部に、ガイの大きくなった肉棒がズボン越しで擦りつけられる。
それだけでモモの表情は更に明るくなって、と言うより艶やかになって行く。
その内に、ズボンがモモの手であっという間に脱がされてガイの大きな逸物が姿を現す。
それは、時折ビクンビクンと震えてその存在をモモにありありと見せつけていた。
「ぅぐ・・・・」
「はぁ・・はぁ・・・」
秘部に擦りつけられている肉棒が、今にもはち切れんばかりに膨らんでモモの秘部を擦って濡らす。
その肉棒が擦れる度、モモの表情も蕩けていく。
「はぁ・・はぁ・・もうy・・うあぁあぁぁっ・・」
「ひぅ・・・来てる・・・来てるぅぅぅっ!!」
不意に訪れた、お互いに感じた事の無い快感。
その量と強さに、二人は身体を震わせ合っていた。
まるで遊ぶかのように擦れていた二人の性器は、不意にタイミングがズレてモモを貫いてしまったのである。
痛みの伴う快感に、モモは段々と意識が遠退いて行く。
しかし、ガイと繋がった嬉しさで意識は引き戻される。
「うぐ・・・モモの・・・気持ち・・いぃ・・」
いつの間にかモモの名前を覚えていたガイは、対面座位の要領でモモを下から突き上げ始めた。
その強い刺激に、モモは数秒も耐える事が出来ず絶頂を迎えてしまう。
「らめっ・・イクっ・・・・・」
一瞬と言えるほど短かったエクスタシーは、たちまち悦びと嬉しさで一杯になってモモから溢れ出て行く。
愛液となって漏れ出て行くソレは、少量だが薄く赤い色も混じっていた。
「・・・モモ・・もしかして・・」
「・・うん・・・・」
顔を真っ赤にしてガイの問いに小さな声で答えるモモ。
それは、彼女が処女である事を示していた。
それを貫いたガイも、童貞を卒業したところである。
要するに「はじめてのあげっこ」をしたのだ。
「ふあぁあ・・・」
「くっ・・・モモ・・・またキツ・・くぅ!」
快楽に浸って快感を貪るモモは、蕩けた表情のままガイに抱きつく。
それで身体が動いたためなのか、ガイのペニスは跳ねて再び大きさを取り戻す。
大きくなった振動がモモに伝わり、それはモモを快楽の中へと更に引き摺りこんでいく。
「がいぃ・・おねがい・・・ついてぇ・・・」
「うぁ!いま動いたら・・・うあぁぁぁ!」
ガイを強く抱きしめたモモは、そのまま絶頂を味わないがらガイが腰を振るのを待っていた。
しかし、馬体に圧し掛かられて腰を持ちあげられない程に脱力しているガイは腰を振る事が出来ない。
しかも、そのままモモの膣の締め付けだけでイッてしまったのだ。
初めての精液がモモの膣を突き進んで子宮口へと流れて行く。
だが、それはほとんどが子宮に入ることも無く流れ出して行ってしまう。
「がい・・・がいぃ・・」
「はぁ・・はぁ・・・んむっ?!」
射精による疲労で呼吸を乱していたガイだったが、不意にモモの唇がガイの口を塞いだ。
まるで悪戯が成功した子供の様な笑みを浮かべるモモ。
それだけでガイのペニスは再び大きく反りかえったのだ。
「がいぃ!まだまだシよ〜?!」
「こ〜なったらなんとでもなれだぁ〜!」
こうして、二人の狩人が恋に落ちた。
それから互いの身体を抱きしめ合った二人は、日が昇り始める頃まで行為を続けたんだとか。
―――――――――――――――――
それから3年後、そこにはあの頃と全く変わらない、しかしどこか愛嬌に満ち溢れたモモがいた。
「・・・・今日こそできる・・・今日こそできる・・・」
彼女がその手に持っている物。
それは、ガイと知り合った時に使っていた弓だ。
キチンとした使い方も知らずにいたモモだったが、今は違う。
もう矢の番え方も放ち方も熟知している。
が、問題はまだまだ続いていた。
「っ・・・・くっ・・」
今日も10発用意した矢をことごとく外して獲物がどこぞへ走り去ってしまう。
これで一体何度目になるだろうか。
数え切れないほどの獲物を取り逃がしたモモだが、今回も挫けるわけにはいかない。
なぜなら・・
「今回もダメだったのか・・・でも、そんなドジなモモも可愛いな!」
「なっ?!ドジとはなんだドジとはっ!私だってたまには・・」
とは言うモモだが、実際の所、今までに上手に狩りが出来た試しがない。
まるで成長しないモモとグングンと伸びてこの辺り一番の狩人になったガイ。
この二人が並び立つとなんだかモモが可哀そうに見えてくる。
「に、しても・・・・子供、出来そうにないよなぁ・・・」
「っっ?!?!どこをジロジロと見ているっ!そっ、それに毎晩お楽しみを・・・はぅぁっ?!」
そう、ガイの言う通り、モモはなかなか子供を授からなかったのだ。
医師に聞いても「不妊症でもないのでどうにも」くらいしか帰って来ない。
しかし、それはそれで良かったのかも知れない。
ガイが狩りを行う場所は、大抵が気候の厳しい場所や段差の多い場所なのだ。
モモを一緒に連れて行くにも、妊娠していたら赤ん坊に気が行く。
と言うよりまず最初に、妊娠していたら家で寝かせているだろう。
「そっ、それにだっ!!私とガイの行いが悪い所為で・・」
「本当にそう思うか?狩りが悪い行い?それが原因で・・」
暫く続いたガイの説教じみた説得も、途中でモモが顔を真っ赤にしてガイを後脚で蹴って終わらせてしまう。
まぁ、「なかなか孕まないのもその所為?」とか聞かれたらキーワードが原因で恥ずかしくもなるだろう。
しかし、昔のとある指ファイターは良く言ったものだ。「馬に蹴られて地獄に落ちろ」と。
文字通り、すっ飛んだガイはそのまま崖を滑り落ちていたのだから。
「うぐぐ・・・」
「だっ、大丈夫かっ?!」
アンタが蹴り落としたんだろうに。
しかし、そこで二人は思いがけない物と巡り合う。
「っ?!アレはっ!」
「うぅ・・・・狸か・・・」
二人の目の前を通って行った小さな動物。それは間違いなく狸だった。
このまま見逃せばそれこそ「捕らぬ狸の皮算用」である。
「待てっ!」
「あっ・・・」
ほんの威嚇のつもりで、番えた矢を放つモモ。
その矢は、狙った場所とは違う方向へ飛んで行ったが、そこで奇跡が起きた。
矢が飛んで行った先、そこには狸の心臓部分。
そして、矢は狸を撃ち貫いて地面に縛りつけた。
「やっ・・・た・・・?」
「おぉっ?!初めて成功したじゃないかっ!」
「はっ、初めてじゃないっ!!」
最初は自分の成果を疑うことしか出来ないでいたモモだったが、目の前の獲物を見れば見るほど、その実感に喜びが溢れてくる。
更にガイにも褒められたのだが、その時に「初めて」と言うキーワードが気になってつい顔を真っ赤にして怒鳴ってしまう。
実際の所は彼女自身、そこまで狩りに成功した事も無い。
矢をたくさん用意して、何も持たずに帰ってくるのが当り前な程だ。
だが、彼女もたまには鳥や猪なども狩る事が出来ていたのだ。
ただ、数が狩人としては少な過ぎると言うだけである。
「でも・・・・なんだか可哀そうだな・・・」
「それが狩りって物さ。俺達が生き残って行く為に必要な。ね?」
狸から矢を抜いて縄で括り持ち帰れるようにしたガイは、それをモモに手渡す。
その狸はもう息一つしてはいない。
モモが矢で貫いたのだから。
しかし、モモは此処に来て狩りでの心苦しさを味わうのだった。
―――――――――――――
それから数カ月後・・
「お姉ちゃん、そっち行ったよ?!」
「任せろっ!」
少し前まで弓を持つ手すら覚束なかったモモだが、今ではそんな面影などどこにもない。
今では狩りのエキスパートと肩を並べて名を知られている。
今にしたって、ガイの妹であるマリに狩りを教えているのである。
「はっ!」
そして、いつもの事のように、当たり前のように矢は獲物を貫く。
こうしてモモはグングンと成長していくのだった。
fin
11/10/07 09:45更新 / 兎と兎