Pandora joker
「今回の目的地、この洞窟で合ってるよな・・・」
仄暗い洞窟の入り口で、一人の少年が地図を広げて洞窟を見渡していた。
彼の名は「マイク・トゥガ」
彼は遊び半分から手に入れたこの宝の地図を頼りにこの洞窟までやって来たのだ。
「うん。合ってるよ。」
不意に後ろから地図を覗き込んできた、マイクと同年代ほどの少年はその場で即答した。
彼の名は「レオン・アルテラ」
今でこそ平静を保ってはいるが、普段は臆病で泣き虫な人間である。
レオンとマイクは家が隣同士と言う地の利を生かして、とても幼いころから幼馴染をしている。
彼らは何と言っても探検が大好きで、いつもこのような場所を見つけては探索しているのだ。
「それじゃ行くかっ!」
「うん。そうだねっ!」
ここでいつものマイクのムードメーカーが発動だ!
少し不安そうな顔をしていたレオンの顔がみるみる内に明るくなっている。
それに、二人の足取りも、ここに来るまでよりずっと軽い。
――――――――――――――――――――――――――
それから暫くの間、一人として魔物に遭遇する事は無かった。
ダンジョン的には面白味に欠けるかも知れないが、武器を持たないマイク達には大助かりだ。
そして二人は、ダンジョンの最深部までやってきた。
そこには、何の鍵もついていない宝箱と、蓋の無い古壷がポツンと置いてある。
その置き位置が怪し過ぎると感じたマイク達は、その場で考え込む。
「・・・どうする?開けるか・・?」
「罠かも知れないよ・・・もしかしたら、あの宝箱を開けた瞬間にトラップが発動して・・・」
「俺が見た限りだと、そんなトラップ何処にも無かったぞ?」
「ふぇ?そうなの?だったら開けようか♪」
「決断早いな・・・まぁ、お前のそう言う所も面白いけどね♪」
流石は何に関しても動きの速いマイクだ。
周りにトラップの痕跡が何もないのをレオンに早々に伝える。
レオンもレオンで決断が物凄く早い。
多分、コイツなら「お腹が空いた」という理由だけで食べ歩くだろう。
そう言う性格なのだ。レオンは。
「それじゃ、いくよ・・?」
「んっ?この壷なんd(ry」
「やっと来てく・・いたたぁ・・・」
せーの、で宝箱を開けようと手を掛けたマイクだったが、不意に隣の壷が気になったのかレオンはそ
の壷を覗き込んだ。
その瞬間、壷から一人の女の子が飛び出して来た。
質量的に考えても人が入れる大きさでは無いことからも、彼女がつぼまじんと呼ばれる魔物娘で在る
事は明白である。
しかし、この少女はどこか抜けているのか、レオンの顎に頭をぶつけて痛がっている。
レオンはレオンで、いきなり襲ってきた鈍痛に疑問を抱く。
「・・・・」
「いつつぅ・・・そだった!え〜い!?」
「レオンっ!?」
痛みで何も喋れなかったレオンは、その場で少しの間固まっていた。
何か考え事でもしているのだろうか。
その様子を見て、自分のしようとした事を思い出した少女は、レオンに抱きついてそのまま壷の中へ
と姿を消してしまう。
それを紙一重で助ける事の出来なかったマイクは、壷を覗き込んで何度もレオンを呼ぶ。
しかし、壷の中はすぐ目の前に底が見えていて、レオンの姿など何処にも見当たらない。
「レオン・・・くっ、せめて俺がこの宝箱だけでも持って帰らなきゃ・・・」
レオンの行方不明を悔やんだマイクだが、同じ場所にとどまるのもマズイと思い、すぐ横に置いてあ
ったあの宝箱を背負って洞窟を抜ける。
そして、マイクは自宅へ一目散に走って行った。
――――――――――――――――――――――――――
その頃、レオンと言うと、不可思議な空間でただボーッとしていた。
「・・・・・」
「・・・・・」
ボーッとしているレオンの隣で、先程の少女はレオンに懐くように身体を寄せて座っている。
この空間には、レオンと少女以外には何も無く、まるで二人きりの世界のようだ。
彼女の種族を考えれば、ここが彼女の作りだす閉鎖空間的な場所であると言うのは分かるが、それだ
けの理解力をレオンは持っていない。
「えと・・・・その・・・」
「・・・・なぁに?」
「な・・なんで襲ってこないのかなぁ・・・って・・」
いつまで経ってもボーッとしているレオンに、少女は少し小さめな声で聞いた。
内容は少し支離滅裂だが、彼女の疑問ももっともだ。
彼女たちの種族は、大概が男性をこのような空間へ引き入れた時に無意識で誘惑魔法や催淫魔法を男
性にかける。
しかし、それを浴びてもレオンは何一つ身体の不調を訴えないのである。
「・・・・」
「んんぅ・・・」
ちょっぴり膨れっ面になった少女は、それ以上は何も言わずにレオンの腕へ抱きついた。
彼女の控えめな胸がレオンの腕に当たるが、レオンは顔を少し赤くするくらいでそれ以上の反応はや
はり無い。
「・・・・ジョーカー・・・」
「・・・えっ?」
「だから・・・私の名前・・」
「あぁ・・・・なんだか、男の人見たいな名前だね。」
不意に呟いた彼女の名前を聞いたレオンは、やっと言葉を発した。
その事に少し嬉しくなったジョーカーだが、直ぐに少し拗ねたような顔をして明後日の方向を向いてレオ
ンにもう一度言う。
その名前が男性向けであると感じたレオンは、率直な感想を滑らせてしまう。
少しムッとした表情になったジョーカーだが、直ぐに表情を戻す。
「うん・・・・自分でも思うもん・・」
「そう・・・・」
そして、また沈黙が訪れる。
なぜこうまで黙り込んでしまうのだろうか。
「とりあえず・・・・ここから出してくれない?」
「う・・うん・・・」
そう言うと、いきなりジョーカーは腰に穿いている壷の様な形のスカートを脱ぎ始めた。
その所為で、レオンは顔を真っ赤にして慌てて視線をそらした。
「なっな、なななな、なんで脱ぐのさっ?!」
「ひぅ・・・ゴメン・・・怒らせちゃった・・?」
驚いて怒鳴ってしまったレオン。
その声で驚いたのか、ジョーカーは怯えたように身体を震わせる。
少しの間そんな状態が続いたが、唐突にレオンの様子が急変する。
「・・・・ジョーカーッ!?」
「きゃんっ!?」
少し黙っていたレオンだったが、不意にレオンがジョーカーを押し倒した。
唐突過ぎるが故に、ジョーカーもそのままの体勢で押し倒される。
一言で言えば、これからHをする体勢になった二人。
「ジョーカーの身体見てたら・・・すっごくドキドキしてきた・・・イイよね・・?」
「ふぇ?う・・うん・・・・君なら・・・いいよ・・?」
顔が真っ赤になる二人。
その二人の頭の中はもう、Hをすることしか入らなくなっていた。
「うわぁ・・・おっきぃ・・・んむぅっ?!」
「ほらっ・・・これ・・・舐めてよ・・・」
レオンの勃起した肉棒の大きさに驚いていたジョーカーだったが、それも束の間だった。
―――――――――――――――――――――――
その頃、逃げ帰ったマイクはただただレオンの無事を祈っていた。
「頼む・・・無事でいてくれよ・・・っと。」
慌てて持ち帰って来た宝箱をそっと降ろしたマイクは、心の中でレオンの無事を一身に願っている。
その表情は心配と焦りで酷く歪んでいる。
「と・・とりあえず中身を見よう・・」
「フフフッ・・・」
「っ?!」
何もすることが無かったマイクは、とりあえず宝箱を開くことにした。
しかし、箱の中から女の子の声が聞こえてきてそれを中断する。
マイクは聞いた事があった。
「ミミック」それは、宝箱に擬態した魔物で、遭遇した者は姿を消すとか。
それを頭に浮かべてしまったマイクは急に怖くなる。
しかし、その直後に外から女の子の声が聞こえてきた。
よく似ているので空耳だったのだと感じ取ったマイクは、不用意に宝箱に手を掛けた。
「・・・お久しぶりっ!?」
「ぅあっ?!」
「ずぅっと・・・待ってたんだよ?何年も何年も何年もっ!?」
宝箱を開けると、思いがけないものが飛んできた。
それは、宝箱の中身のお宝では無く、宝箱の中に潜んでいた一人の少女だった。
その少女は、飛び出してくるなりマイクに拘束魔法をかけて彼を動けなくしてしまう。
そのまま地面に倒れ伏したマイクは、受身も取れず尻もちを突く。
「ねぇ、私の事覚えてるよね・・?パンドラだよ・・?覚えてる・・?」
「つっつぅ・・・・パンドラ?だれ・・」
「誰だ、なんて言わせないよ?ね、旦那さん?」
パンドラと名乗った少女は、マイクの傍まで寄ると顔を覗き込んできた。
その表情にマイクは少し怖気づいてしまう。
彼女の顔は、まるでマイクしか見えていないかのようにボーッとした表情で、眼が虚ろになっている。
夢でも見ているのだろうかと思う表情をしている彼女だが、その光の無い瞳は確かにマイクを捉えて
いる。
「えっ・・・パン・・ドラ・・?」
「そう、思い出した?5年前のあの日に別れたっきりだね・・・今度は何処にも行かせないよ?」
やっとマイクはパンドラの事を思い出した。
あれはまだレオンもマイクも小さかった頃の事。(まぁ、いまでも十分小さいが)
―――――――――――――――――――
「あたしパンドラ♪アナタの名前は?」
「ぼくはマイク。」
幼いマイクは、確かにパンドラと会っていた。
彼はとある街道の路地で迷子になり、同じく迷子になってウロウロしていた彼女と出会ったのである。
「――ありがと〜、おかげで道に出られた〜♪」
「こっちこそ、ありがとね♪」
そして、無事に路地を抜けて大通りへと抜けた二人は、喜びに満ちた顔そしていた。
「――それじゃ、僕はこれで・・んむっ?!」
「・・・おっきくなったら、私をお嫁にしてね・・?」
それだけ言うと、パンドラはどこかへ走り去ってしまった。
マイクはと言うと、キスされた事が未だに信じられず、目を白黒させて驚くだけだった。
それからすぐに、マイクは親に連れられて引っ越してしまう。
―――――――――――――――――――
そして、時は経ち二人はやっと出会えたのである。
彼女の言う通り、マイクもそれなりには大きくなった。
しかし、まだ成長期である彼にとって、「お嫁にしてほしい」というからにはもう少し先の事だと思
っていたのだ。
「それじゃ、旦那様?私の箱の中で・・・ね?」
「ね?って言われても・・・うあっ?!」
「だ〜め、断ったりしたら・・・『殺すよ』・・?」
あらかたの事を思い出した所で、マイクはパンドラの箱の中に引きずられて行く。
少しやる気なさげに断ってみると、彼女は引き摺ることを止めてマイクの身体を浮かせて一気に箱の
中へ誘った。
そして、マイクの耳元で低い声で脅すと完全に箱の中に姿を消す。
残ったのは、中身の空っぽの宝箱だけだった
旦那様、これからずぅっと一緒だよ?愛してる・・・
fin
仄暗い洞窟の入り口で、一人の少年が地図を広げて洞窟を見渡していた。
彼の名は「マイク・トゥガ」
彼は遊び半分から手に入れたこの宝の地図を頼りにこの洞窟までやって来たのだ。
「うん。合ってるよ。」
不意に後ろから地図を覗き込んできた、マイクと同年代ほどの少年はその場で即答した。
彼の名は「レオン・アルテラ」
今でこそ平静を保ってはいるが、普段は臆病で泣き虫な人間である。
レオンとマイクは家が隣同士と言う地の利を生かして、とても幼いころから幼馴染をしている。
彼らは何と言っても探検が大好きで、いつもこのような場所を見つけては探索しているのだ。
「それじゃ行くかっ!」
「うん。そうだねっ!」
ここでいつものマイクのムードメーカーが発動だ!
少し不安そうな顔をしていたレオンの顔がみるみる内に明るくなっている。
それに、二人の足取りも、ここに来るまでよりずっと軽い。
――――――――――――――――――――――――――
それから暫くの間、一人として魔物に遭遇する事は無かった。
ダンジョン的には面白味に欠けるかも知れないが、武器を持たないマイク達には大助かりだ。
そして二人は、ダンジョンの最深部までやってきた。
そこには、何の鍵もついていない宝箱と、蓋の無い古壷がポツンと置いてある。
その置き位置が怪し過ぎると感じたマイク達は、その場で考え込む。
「・・・どうする?開けるか・・?」
「罠かも知れないよ・・・もしかしたら、あの宝箱を開けた瞬間にトラップが発動して・・・」
「俺が見た限りだと、そんなトラップ何処にも無かったぞ?」
「ふぇ?そうなの?だったら開けようか♪」
「決断早いな・・・まぁ、お前のそう言う所も面白いけどね♪」
流石は何に関しても動きの速いマイクだ。
周りにトラップの痕跡が何もないのをレオンに早々に伝える。
レオンもレオンで決断が物凄く早い。
多分、コイツなら「お腹が空いた」という理由だけで食べ歩くだろう。
そう言う性格なのだ。レオンは。
「それじゃ、いくよ・・?」
「んっ?この壷なんd(ry」
「やっと来てく・・いたたぁ・・・」
せーの、で宝箱を開けようと手を掛けたマイクだったが、不意に隣の壷が気になったのかレオンはそ
の壷を覗き込んだ。
その瞬間、壷から一人の女の子が飛び出して来た。
質量的に考えても人が入れる大きさでは無いことからも、彼女がつぼまじんと呼ばれる魔物娘で在る
事は明白である。
しかし、この少女はどこか抜けているのか、レオンの顎に頭をぶつけて痛がっている。
レオンはレオンで、いきなり襲ってきた鈍痛に疑問を抱く。
「・・・・」
「いつつぅ・・・そだった!え〜い!?」
「レオンっ!?」
痛みで何も喋れなかったレオンは、その場で少しの間固まっていた。
何か考え事でもしているのだろうか。
その様子を見て、自分のしようとした事を思い出した少女は、レオンに抱きついてそのまま壷の中へ
と姿を消してしまう。
それを紙一重で助ける事の出来なかったマイクは、壷を覗き込んで何度もレオンを呼ぶ。
しかし、壷の中はすぐ目の前に底が見えていて、レオンの姿など何処にも見当たらない。
「レオン・・・くっ、せめて俺がこの宝箱だけでも持って帰らなきゃ・・・」
レオンの行方不明を悔やんだマイクだが、同じ場所にとどまるのもマズイと思い、すぐ横に置いてあ
ったあの宝箱を背負って洞窟を抜ける。
そして、マイクは自宅へ一目散に走って行った。
――――――――――――――――――――――――――
その頃、レオンと言うと、不可思議な空間でただボーッとしていた。
「・・・・・」
「・・・・・」
ボーッとしているレオンの隣で、先程の少女はレオンに懐くように身体を寄せて座っている。
この空間には、レオンと少女以外には何も無く、まるで二人きりの世界のようだ。
彼女の種族を考えれば、ここが彼女の作りだす閉鎖空間的な場所であると言うのは分かるが、それだ
けの理解力をレオンは持っていない。
「えと・・・・その・・・」
「・・・・なぁに?」
「な・・なんで襲ってこないのかなぁ・・・って・・」
いつまで経ってもボーッとしているレオンに、少女は少し小さめな声で聞いた。
内容は少し支離滅裂だが、彼女の疑問ももっともだ。
彼女たちの種族は、大概が男性をこのような空間へ引き入れた時に無意識で誘惑魔法や催淫魔法を男
性にかける。
しかし、それを浴びてもレオンは何一つ身体の不調を訴えないのである。
「・・・・」
「んんぅ・・・」
ちょっぴり膨れっ面になった少女は、それ以上は何も言わずにレオンの腕へ抱きついた。
彼女の控えめな胸がレオンの腕に当たるが、レオンは顔を少し赤くするくらいでそれ以上の反応はや
はり無い。
「・・・・ジョーカー・・・」
「・・・えっ?」
「だから・・・私の名前・・」
「あぁ・・・・なんだか、男の人見たいな名前だね。」
不意に呟いた彼女の名前を聞いたレオンは、やっと言葉を発した。
その事に少し嬉しくなったジョーカーだが、直ぐに少し拗ねたような顔をして明後日の方向を向いてレオ
ンにもう一度言う。
その名前が男性向けであると感じたレオンは、率直な感想を滑らせてしまう。
少しムッとした表情になったジョーカーだが、直ぐに表情を戻す。
「うん・・・・自分でも思うもん・・」
「そう・・・・」
そして、また沈黙が訪れる。
なぜこうまで黙り込んでしまうのだろうか。
「とりあえず・・・・ここから出してくれない?」
「う・・うん・・・」
そう言うと、いきなりジョーカーは腰に穿いている壷の様な形のスカートを脱ぎ始めた。
その所為で、レオンは顔を真っ赤にして慌てて視線をそらした。
「なっな、なななな、なんで脱ぐのさっ?!」
「ひぅ・・・ゴメン・・・怒らせちゃった・・?」
驚いて怒鳴ってしまったレオン。
その声で驚いたのか、ジョーカーは怯えたように身体を震わせる。
少しの間そんな状態が続いたが、唐突にレオンの様子が急変する。
「・・・・ジョーカーッ!?」
「きゃんっ!?」
少し黙っていたレオンだったが、不意にレオンがジョーカーを押し倒した。
唐突過ぎるが故に、ジョーカーもそのままの体勢で押し倒される。
一言で言えば、これからHをする体勢になった二人。
「ジョーカーの身体見てたら・・・すっごくドキドキしてきた・・・イイよね・・?」
「ふぇ?う・・うん・・・・君なら・・・いいよ・・?」
顔が真っ赤になる二人。
その二人の頭の中はもう、Hをすることしか入らなくなっていた。
「うわぁ・・・おっきぃ・・・んむぅっ?!」
「ほらっ・・・これ・・・舐めてよ・・・」
レオンの勃起した肉棒の大きさに驚いていたジョーカーだったが、それも束の間だった。
―――――――――――――――――――――――
その頃、逃げ帰ったマイクはただただレオンの無事を祈っていた。
「頼む・・・無事でいてくれよ・・・っと。」
慌てて持ち帰って来た宝箱をそっと降ろしたマイクは、心の中でレオンの無事を一身に願っている。
その表情は心配と焦りで酷く歪んでいる。
「と・・とりあえず中身を見よう・・」
「フフフッ・・・」
「っ?!」
何もすることが無かったマイクは、とりあえず宝箱を開くことにした。
しかし、箱の中から女の子の声が聞こえてきてそれを中断する。
マイクは聞いた事があった。
「ミミック」それは、宝箱に擬態した魔物で、遭遇した者は姿を消すとか。
それを頭に浮かべてしまったマイクは急に怖くなる。
しかし、その直後に外から女の子の声が聞こえてきた。
よく似ているので空耳だったのだと感じ取ったマイクは、不用意に宝箱に手を掛けた。
「・・・お久しぶりっ!?」
「ぅあっ?!」
「ずぅっと・・・待ってたんだよ?何年も何年も何年もっ!?」
宝箱を開けると、思いがけないものが飛んできた。
それは、宝箱の中身のお宝では無く、宝箱の中に潜んでいた一人の少女だった。
その少女は、飛び出してくるなりマイクに拘束魔法をかけて彼を動けなくしてしまう。
そのまま地面に倒れ伏したマイクは、受身も取れず尻もちを突く。
「ねぇ、私の事覚えてるよね・・?パンドラだよ・・?覚えてる・・?」
「つっつぅ・・・・パンドラ?だれ・・」
「誰だ、なんて言わせないよ?ね、旦那さん?」
パンドラと名乗った少女は、マイクの傍まで寄ると顔を覗き込んできた。
その表情にマイクは少し怖気づいてしまう。
彼女の顔は、まるでマイクしか見えていないかのようにボーッとした表情で、眼が虚ろになっている。
夢でも見ているのだろうかと思う表情をしている彼女だが、その光の無い瞳は確かにマイクを捉えて
いる。
「えっ・・・パン・・ドラ・・?」
「そう、思い出した?5年前のあの日に別れたっきりだね・・・今度は何処にも行かせないよ?」
やっとマイクはパンドラの事を思い出した。
あれはまだレオンもマイクも小さかった頃の事。(まぁ、いまでも十分小さいが)
―――――――――――――――――――
「あたしパンドラ♪アナタの名前は?」
「ぼくはマイク。」
幼いマイクは、確かにパンドラと会っていた。
彼はとある街道の路地で迷子になり、同じく迷子になってウロウロしていた彼女と出会ったのである。
「――ありがと〜、おかげで道に出られた〜♪」
「こっちこそ、ありがとね♪」
そして、無事に路地を抜けて大通りへと抜けた二人は、喜びに満ちた顔そしていた。
「――それじゃ、僕はこれで・・んむっ?!」
「・・・おっきくなったら、私をお嫁にしてね・・?」
それだけ言うと、パンドラはどこかへ走り去ってしまった。
マイクはと言うと、キスされた事が未だに信じられず、目を白黒させて驚くだけだった。
それからすぐに、マイクは親に連れられて引っ越してしまう。
―――――――――――――――――――
そして、時は経ち二人はやっと出会えたのである。
彼女の言う通り、マイクもそれなりには大きくなった。
しかし、まだ成長期である彼にとって、「お嫁にしてほしい」というからにはもう少し先の事だと思
っていたのだ。
「それじゃ、旦那様?私の箱の中で・・・ね?」
「ね?って言われても・・・うあっ?!」
「だ〜め、断ったりしたら・・・『殺すよ』・・?」
あらかたの事を思い出した所で、マイクはパンドラの箱の中に引きずられて行く。
少しやる気なさげに断ってみると、彼女は引き摺ることを止めてマイクの身体を浮かせて一気に箱の
中へ誘った。
そして、マイクの耳元で低い声で脅すと完全に箱の中に姿を消す。
残ったのは、中身の空っぽの宝箱だけだった
旦那様、これからずぅっと一緒だよ?愛してる・・・
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11/05/22 20:07更新 / 兎と兎