ここは風が良く通るほどの大草原のど真ん中。
ここに一人のﾜｰﾊﾞｯﾄの少女が1人、日陰に隠れてモジモジしていた。
理由は簡単だ。ﾜｰﾊﾞｯﾄは、基本的に光に弱い。
今の彼女もそれによって極端に臆病になっているのだろう。

「ひぅ・・・・ひぐっ・・・」
日の光が怖いのか、それともただ単に本能的に怯えているだけなのか、この少女「ベル」は日陰で泣きだしそうな自分を慰めようとしていた。

「・・・なにしてるんだ・・？」
「ひぅっ！」
樹の裏側から出て来た一人の青年に、ベルは過剰にも思えるほどに驚いて見せた。
人見知りならばそれくらいの反応をするかもしれないが、この子はそれを超えるほどに驚いている。
身体を震えさせて怯えるほどに。
そこまでの仕打ちをした覚えがこの少年には全くない。と言うより出来る訳も無い。

「どうしたって言うんだ・・・この子は・・」
「ひぃっ・・・・ひぐっ・・・えぐっ・・・」
疑問を感じずには居られなかった少年だが、その間にもベルの目には涙が溜まって行っている。
今にも溢れだしそうな程に溜まったそれは、ベルがどれだけ臆病なのかを表していた。

「ひぅっ・・・・うわぁぁぁぁぁぁんぅ・・・」
「どしたの〜・・・」
遂に限界に達したのか、ベルは泣き出してしまった。
何だか泣いている顔も怯えている顔同様に可愛らしさが溢れていて可愛らしい。
そんな事を考えている間にも、木陰から一人のﾜｰｳﾙﾌがやってきた。
どうやら暑さに当てられているようで、顔が疲れ切っている。
どうやらこの二人、それなりに面識があるらしい。
特に何かを疑う様子も無く青年の前を通り過ぎたﾜｰｳﾙﾌは、ベルの横に座り込んだ。

「はうぅ・・・・あつぅいよぉ・・・」
「ひぅ・・・う・・・ｳﾙﾙちゃん・・」
どうやら、このﾜｰｳﾙﾌは暑がりの様だ。舌をだらしなく垂らしている。
しかし、これを幼い少女がやって良い物だろうか。紳士としてこれを見過ごすわけにはいかない。
少年はそのだらしない行為を注意しに行く。

「こらっ。女の子がそんなはしたない格好をしちゃいけないだろう？」
「へぅ・・・だれ・・・」
「うぅ・・・ｳﾙﾙちゃん・・・」
この少年が、この二人に何かしでかしただろうか？そんなのは決っている。
何もしていない。何も出来た筈が無い。
それなのに、ワーウルフの少女---確かｳﾙﾙと呼ばれていた---は、ベルに抱き付いて怯えていた。
熱いので舌を相変わらず垂らしているせいか、非常にレズビアンの匂いがする。

「うっ・・・俺は・・シュナイダーだ。君らは？」
「へっ・・？わ・・・わたしは・・ｳﾙﾙ・・・」
「・・・ベル・・」
一瞬、変な気にさせられそうになったシュナイダーだったが、何とか正気を保って自己紹介に移れた。
それぞれに自己紹介を済ませた三人は、肩を並べて木陰に座り込んだ。
もう、大分シュナイダーに慣れてくれているようで、二人ともシュナイダーに懐く様な仕草を見せてくれる。

「どうしたんだ？二人していきなり・・・」
「ううん。なんでもないの・・・・こうしていたい・・・」
「そ・・・そうだよ・・・・このままがいいの・・・」
日の照り方がより一層激しくなった頃、ｳﾙﾙとﾍﾞﾙは、未だにシュナイダーの両腕に抱き付いていた。
別に、シュナイダーがﾛﾘｺﾝ趣味だとは思わない。
だが、隣の二人があまりにも幼すぎるので、客観視してしまえばそう見えてしまっている。

「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
暫くの間、沈黙が流れる。
シュナイダーもウルルもベルも、何も喋ろうとしない。
別に喉が潰れたとかそんな事じゃないのは明白だ。
ただ単に、この状態が一番落ち着いていられるのだろう。
良く見れば、ｳﾙﾙの目が段々と細くなっていっている。眠たくなってきたのだろう。安心感から来るものだと思う。
ベルも、前髪が垂れていて良くは見えないのだが、多分目を細めていた。元々彼女たちは夜行性であることも相まって、余計に眠たいのだろう。

「・・・・ｚｚｚ」
「うにゅにゅぅ・・・・ままぁ・・・」
「寝ちゃった・・・か・・とりあえず俺は皆のところへ・・？」
いつの間にか眠っていた二人を見たシュナイダーは、心が安らいでいた。
この二人の寝顔が、シュナイダー好みだったからなのかもしれない。
とりあえず、眠っている二人をそっと降ろしたシュナイダーは、これから集合する予定になっている場所に再び戻ろうと立ち上がった。
しかし、不意にシュナイダーの服の袖を手が掴む。
それは、先程まで眠っていた筈のｳﾙﾙの手だ。
しかし、不思議な事に彼女は目を閉じて寝息を立てている。
それなのに、シュナイダーの袖をちゃんと掴んでいた。



「・・おにぃ・・・・いやぁ・・・・いかないでぇ・・・」
「おにぃ？・・・魔物娘から男が生まれる訳ないし・・・俺の事でも無いだろうし・・・誰だろうか・・・」
シュナイダーは、ｳﾙﾙの夢に居るこの子の兄を思い浮かべて足を止めていた。
そこへ、今度はベルの腕も伸びて来る。
そして容易く腕の中へｼｭﾅｲﾀﾞｰを招き入れたベルとウルルは、尚も気持ち良さそうに寝息を立てている。
こうなれば、もう拘束されたも同然の様なものだろう。
シュナイダーは、集合の約束も忘れて二人の様子を見ていた。

「・・・・可愛いな・・・」
ｼｭﾅｲﾀﾞｰが、無意識に言葉を漏らすと、その言葉に反応したかのようにｳﾙﾙとﾍﾞﾙがシュナイダーの腕を握る力を強めた。
喜んでいるのだろうか。顔が笑顔になっている。
ますます可愛く思えてきたｼｭﾅｲﾀﾞｰは、段々と心の中に雑念とも邪念とも思える思いを抱き始めた。
しかし、彼は猛獣では無く紳士だ。眠っている少女を犯すような馬鹿では無い。

「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
暫く黙って空気の流れを感じていたｼｭﾅｲﾀﾞｰだが、その内に二人の寝息に誘われる様に眠ってしまった。
心が極限まで安らいでいたシュナイダーは、その所為か夢の中でウルルとベルと遊んだ夢を見て深い眠りに付いた。

「・・・ふみゅぅ・・・」
「うにゅぅ・・おにぃ・・・」
「・・・・・」
全員揃って眠った木陰は、段々と日光に近づいてくる。
しかし、途中で止まると逆方向へとってもゆっくりと進みだした。
要は日中も半分を通り越したと言う事だ。
そこまで来ても、三人ともなかなか目を覚まさなかった。

それから数時間。すっかり夜になってからシュナイダーは目を覚ました。しかし・・

「うっ・・・うぅん・・・」
「あっ・・・おにぃ・・・」
「起きたの・・？」
身体に異変を感じたシュナイダーが、半分は本能と言っても良いほどに無意識に目を覚ました。
そこには、昼間と同じようにｳﾙﾙとﾍﾞﾙがいる。
だが、二人の様子が昼とは違っていると、少し経ってからｼｭﾅｲﾀﾞｰは気が付いた。

「な・・・なにを・・」
「もぉ夜だよ？だったらぁ・・・」
「こうするよね〜・・」
気が付けば服を全て脱がされて全裸になっていたシュナイダーは、そのままなすがままにウルルに圧し掛かられる。
意外と力があるらしく、身体の小さなウルルはシュナイダーを起こさせようとしなかった。
ベルはベルで、何だか昼とは違う妖艶な笑みを浮かべてシュナイダーの小さな肉棒を掴む。

「うぁ・・・ベル・・・やめろ・・」
「やだよ。おにいちゃんの子供、作るんだもん♪」
「えへへ〜、私もおにぃの子供作るのぉ〜♪」
肉棒を掴まれて、小さいながらも快感を感じているシュナイダーは、上で跨っているウルルを引き剥がそうとした。
しかし、ウルルはシュナイダーにしがみついて離れようともせず、ベルが肉棒を弄んで嫐っているお陰でシュナイダーの腕の力も抜けて来ていた。

「夜の私たちって、凶暴なんだよ？」
「だから〜、おにぃの子供作るの〜♪」
「さっきから子作り子作りって・・・くぁ・・」
肉棒を握る強さを強くしたベルは、妖艶な笑みを見せて、否定的なシュナイダーと嬉しそうにしているウルルを余所に肉棒を銜えた。
銜えた傍から啜り始めたベルは、シュナイダーが先走りを迸らせるまでずっと肉棒を涎で濡らす事だけ専念する。
ウルルは、ベルが銜えているソレを、自分の膣に埋めるのだと思うと興奮してなのか、シュナイダーの顔の傍まで行って、下着で隠れている自分の秘部をシュナイダーの顔に擦り付けた。

「んんっ！」
「あひゃぁ♪おにぃ・・・きもちいいぃ・・」
「こっちはどうなの？おにいちゃん？」
自分の秘部を恥じらう事無くシュナイダーの顔面に擦り付けるウルル。
シュナイダーの肉棒を必死に銜えて快楽を与え続けるベル。
快楽から来た射精感を堪えて、なんとか踏ん張ろうと頑張るｼｭﾅｲﾀﾞｰ。
この三人が、夜の月明かりの下で交わっている。
それは、最早神秘的にすら思えてくるほどだった。

「な・・・なんでこんなこと・・くっ・・」
「んんんんっ？！」
「ほぉら、おにぃ？もっと舐めてよぉ！ほらぁ！」
快楽に悶えながらも堪えていたシュナイダーだが、肉棒を銜えたまま喋るベルと無理矢理秘部を押しつけてくるウルルの与える衝撃が強すぎる。
そのまま、シュナイダーは快楽に耐えきれずにベルの口の中に射精した。
濃くて苦い精液がベルの口内を白く汚して行く。
それを、ベルは表情を保てなくなっていたウルルの口に流し込んだ。

「？！？！」
「んっ・・・んっ・・・ﾌﾟﾊｧ！」
「あうぅ・・・にがぁい・・」
その光景に驚いたシュナイダーは、無意識に肉棒をすぐさま全開状態にしていた。
吐きだされた精子を、ウルルに飲ませて自分も飲み込んだベルは、ウルルから口を放す。
そこからは、白い液体が二人の間を橋で掛けたかのような状態になり、物凄くエロく感じられる。
二人とも息を切らしているので、尚の事エロっぽさが際立つ。
口移しされた精液を飲み込んだウルルは、嫌そうな顔をしながら、しかし嬉しそうな顔でシュナイダーを見つめていた。

「今度は、私がこれ・・・食べるよ？」
そう言ったウルルは、既にスタンバイが完了しているシュナイダーの勃起した肉棒を握って座る位置を移動し始めた。
その時、ベルがシュナイダーにウィンクしたのが見えた気がしたが、そんな考えを途切れさせるほどの衝撃が襲ってくる。

「ひぁぅぅぅぅっ！」
「うぁっ！！！」
シュナイダーの予想では、ウルルもベルと同じくフェラで来るものだとばかり思っていた。
と言うより、彼女たちの小さな秘部では、シュナイダーの大人と同程度の肉棒を受け止めたら裂けてしまうのではないかと思っていたのだ。
しかし、ウルルはそんな躊躇も無くシュナイダーの肉棒を膣に埋め込んだ。一瞬の事に戸惑うシュナイダー。
しかし、その次の瞬間には強烈な締め付けから来る快楽と、ちいさな子供を犯してしまったと言う罪悪感が襲う。

「ぐあぁぁっ！」
「ひはぁぁっ！おにぃ・・おにぃぃぃぃっ！」
「あははっ♪おにいちゃんもすっかり夢中だね♪んむっ・・」
激痛とも取れるほどに痛みを感じているシュナイダーは、声を上げて呻く。
それを掻き消すかのようにウルルも大きな声でシュナイダーを何度も呼ぶ。その表情は、もう快楽を覚えてHに夢中になっている顔だ。
ベルは、多少寂しい気もするがそれでも高らかに笑ってシュナイダーの口へと舌を入れてキスを強要していた。

「んっ・・んぅ・・《ヤバい・・頭が・・・》」
「おに・・・おにぃっ！もっと、もっと突くのぉぉぉっ！」
「んんんっ？！」
尚も続くウルルからの激しい快楽とベルの舌を絡めるキスのお陰で、シュナイダーは段々と意識を失いつつあった。
しかし、そんな事など知らずにウルルは腰を振り続ける。
嫌らしい音がそこらじゅうに響き渡るのだが、誰も居ないこの辺りではなんの躊躇も必要無い。
そして、更に二人の動きは激しさを増して行く。

「はゃっ・・・ひゃゃくらしてぇ・・・おにぃ・・・らしてってばぁ・・」
「んむぅ・・・はぅ・・」
「・・・(もう・・・何も考えられない・・)」
息を切らしたウルルだが、腰のピストンは止めはしない。
それどころか、少し前よりも動きが早くなったようにすら感じられた。
ベルも、夢中になってシュナイダーの舌を舐め回している。
その顔は、何もかもを満足感で埋め尽くしたかのような表情をしていた。

「んっ？！」

ﾄﾞｸﾝｯ････ﾋﾞｭﾙｯ・・・ﾋﾞｭﾙﾙﾙﾙﾙﾙｯ・・・ﾋﾞｭﾌﾞｯ・・ﾋﾞｭｯ・・・

気が付けば、シュナイダーはウルルの膣の奥の奥、子宮に大量の精液を放っていた。
ウルルの表情も、射精してもらった事によってなのか、とても満足そうな表情をしている。
ベルはと言うと、その様子を羨ましそうに見ているだけだった。

「ひゃうぅ・・・おにぃ・・・おにぃのが・・いっぱぁい・・・」
「・・・？！」
「おにいちゃん？気が付いた？」
子宮に沢山精液を出されたウルルは、喜びで一杯になりながら下腹部を擦っていた。
そして、いつの間にか気絶していたシュナイダーは、射精が終わった頃に目を覚ます。
そのことを分かっていたかのように、ベルはシュナイダーに問いかけた。
その瞳には、何か裏があると言いたげな光が伺える。

「どいてウルル。今度は私の番だから・・」
「はぅ・・・ひぁっ！？」
「うぁっ・・・ベ・・ベル・・・くぁっ？！」
少しの間快楽の渦に浸っていた二人だったが、顔を紅潮させたベルの手によってそれは中断された。
跨っていたｳﾙﾙを、その細い腕で持ち上げたベルは、そのまま二人の繋がりを解く。
すると、肉棒を抜いた時の快楽でウルルはもう一度絶頂を味わう。
シュナイダーも少し顔を顰めたが、それも直ぐに別の快楽で包まれた。
ベルが、シュナイダーに跨って来たのだ。
それも、跨ると同時に自分の膣の奥深くまでシュナイダーの肉棒を受け入れている。

「・・っ！」
「い・・・いま何か柔らかい物が・・くっ・・・当たって・・・」
「おにいちゃんに・・・あげちゃった・・・・私の・・・はじめて・・・」
最奥部まで突き入れたシュナイダーは、その時に何かを破いた感触を感じた。
快楽の中に含まれて直ぐに消えたその違和感は、ベルがまだ幼いと言う事を考えるとすぐに理解が及ぶ。
その証拠に、ベルが言った通り、腰を少し上げるとそこから少量の血が流れていた。
見た目よりも痛く感じていないのか、ベルは余裕の表情をしている。
腰を振り始めてもその表情をなかなか崩さない。

「はひっ・・・んぅ・・はぁぁっ・・・おにい・・ちゃん・・」
「くっ・・・きつっ・・・うあぁっ・・」
ゆっくりと腰を振るようになったベルの表情は、あっという間に余裕の表情を失っていた。
今ではすっかり快楽に溺れていて、その表情も醜い物になっている。
しかし、それでもベルの腰振りは続いて行く。
シュナイダーがそれに合わせて腰を振ろうとしたものの、余りのベルの膣の狭さに、直ぐに腰を動かせなくなった。

「ま・・・まら・・・いかにゃ・・・いにょ・・？」
「ベ・・・ベル・・・・だい・・・じょうぶ・・・か・・？」
快楽からお互いに言葉を上手くしゃべれなくなってきた二人だが、それでもベルは腰を振り続けている。
シュナイダーの心配する声も、快楽の所為で途切れ途切れにしか出てきていない。
そんな中、シュナイダーに射精感が押し寄せて来る。

「あひぁっ！おにいひゃんの・・・おひんひん・・・ビクゥッてぇ・・・」
「ま・・・また・・・孕ませちまうのか・・・いや・・だ・・」
「や・・らよぉ・・おに・・いひゃん・・・にゃかにぃ・・・らしてぇ・・」
もうすっかり呂律も回らなくなったベルは、腰を振る事に最早生甲斐すら感じているような顔をしていた。
そんな中込み上げて来たシュナイダーの射精感。
それを膣で感じ取ったベルは、それを何とかして受け入れたいとシュナイダーにしがみついた。
ウルルに続けてベルにも射精しそうになっていたシュナイダーは、背徳感に抗うように射精感を否定しようとしたが、ベルはそれを許す事は無い。
ベルの軽い身体を持ち上げて退かせようとしたシュナイダーだったが、ベルは両足でシュナイダーの腰を締め上げると、そのまま肉棒を最奥部にまで再び押し込む。

「うぁっ！で・・・出るっ！！」

ﾋﾞｭﾙﾙﾙｯ・・・ﾋﾞｭﾙﾙﾙﾙﾙﾙｯ・・・ﾋﾞｭﾙﾙﾙﾙﾙｯ・・・ﾋﾞｭﾙｯ・・ﾋﾞｭｯ・・・

「ひあぁぁぁっ！おにいひゃんのせ〜えき・・にゃがれてりゅ〜・・・」
足を回されて動けなくなったのと、最奥部まで突き入れられた事による衝撃とが重なって、シュナイダーはそのまま子宮に届く位置で射精してしまった。
それも、ウルルの時よりも若干濃くて多い気がする。
射精している本人には分からなかったが、きっとそれだけベルの方が気持ち良かったと言う事なのだろう。


それから数時間、シュナイダーはウルルとベルに代わる代わる性交を強要されていた。
しかし、時間が経つにつれて実権はシュナイダーの手中に収まっていき、最後にはウルルもベルもシュナイダーも、気持ち良さで一杯になって行った。

その後、二人が身寄りを失っている事を知ったシュナイダーは、二人を妹として迎え入れた。
近所からは「魔物を一人暮らしが飼うなんてどうかしてる」とまで言われたがそんな事は知らない。
どうせ、魔物を排他的にしているこの町ではもう余り長い間暮らす事も無いだろう。

「おにぃ♪今日はね？これだけ買って来たんだよ？どう、すごいでしょ？」
「おっ・・・これだけあったらカレーが出来るな・・・・でも、お店の人に勧められてもこれはダメだぞ？」
買い物から帰って来たウルル。
その手には、買い物袋が握られている。
中には野菜や肉、調味料と言った具合に色々入っている。
中身を確認した限りではカレーがたくさん作れる量なのだ。
それを取り出して、シュナイダーが料理をしようとしたのだが、とある物を見つけてシュナイダーはウルルに注意した。
それは、カレーの中でも結構重要な食材、「タマネギ」だった。
通常、ﾀﾏﾈｷﾞは動物の大多数にとっては毒だ。
それを、シュナイダーはバッチリ知っていた。
しかし、まだ幼いウルルはそんな事知っている訳も無く、シュナイダーからの注意をしっかりと聞いていた。

「うんっ！分かったよ、おにぃ♪」
シュナイダーの注意方法とはごく簡単だ。
子供でも分かるような言葉を選んで説明して、直ぐに理解させる事。
その為、時間もかからないし直ぐに覚えてくれる。
何より、怒ったりする注意法と違っているので、小さな子供でも泣きだす事はまず無い。

「おにいちゃん！！こんなの見つけて来たの！」
外から帰って来たベルは、とても嬉しそうな表情をしていた。
年相応な明るい少女になっていたベルは、手に鮮やかな色の百合を持っている。
それを握っているベルの声には、とてもはきはきした調子が出されている。

「へぇ・・・綺麗だな。とりあえず花瓶に・・」
「は〜いっ♪」
シュナイダーが、言葉を言い終える事も無くベルは一目散に玄関口にある花瓶へ百合を刺しに行った。
カレーの方も、後は煮込むだけとなっていたので暇を持て余していたウルルは、いつの間にかベルを追いかけているのかここに居ない。
玄関口の方でなにやら可愛らしい声が聞こえるので、まず二人ともいるのだろう。

「今月末・・・かぁ・・・」
シュナイダーが手に取って読んでいる物は、この町の市長から出された礼状だった。
内容は簡潔に言えば、魔物を嫌う者たちの集まりの様なこの町から、一刻も早く立ち去れと言う命令状だ。
それなりの資金や土地も用意してもらえている分だけマシなのだが、きっと向こうでもこんな事が起こるかも知れない。
それは、古い考えを持つ者達の偏見が消えない限りは、もっと多くの人々を巻き込んでいくのだろう。

そんなこんなしている内に、約束の日が来てしまった。

「それじゃ、お世話になりました。」
「それじゃね〜！」
「ばいば〜いっ♪」
それぞれに簡単な物だけ詰め込んだカバンを背負って、この町を三人同時に出た。
もう、この村に戻ってくることも、ましてや立ち寄る事すらも無いだろう。
今まで住んでいた家が名残惜しいとも思ってはいなかった。
寧ろ、清々した気分なのだ。シュナイダーは。
あの家は、元々自分の母親を捨てた父親が住んでいたもので、シュナイダーの母が死んだ時に仕方なく引き取らされた場所なのだ。
しかし、その父親は酒に溺れ、結局２年でこの世を去った。
忌わしくすら思っていた父を捨てたシュナイダーは、晴れて独り身となったが、街からは軽蔑されるばかり。
というのが、シュナイダーの昔話の一部である。

「よっし。それじゃ、牧場まで競争だ！」
「ウルルちゃん！背中乗せて？！」
「OK！じゃぁ行くよ？！」
村を出て暫く、シュナイダーは果てしなく遠く感じた道のりを想って、少しでも時間を縮めたいと考えた。
その結果で出て来たのが競争だ。
一体、何キロ続くのかは分からない。だけど、シュナイダーは二人と楽しみたいと思うようになる。
ベルは、四足歩行で加速を付けるウルルの背中に乗って遊んでいる。
ウルルはそれを、重さと解せず重りと解して重心を後ろの方へ引き、加速を強めていた。

そして、数時間後には目的の牧場まで辿りついた。
先に住処としていたホルスタウルスやワーシープ達と、シュナイダー達は楽しくも淫らな生活を送って行くのだった。

fin