魔物の母〜エキドナの妊娠〜
「はぁ・・・つい訪問販売で来たあのメイプルって人に買わされたけど・・・美味しいのか?これ。」
風の全く流れて居ない洞窟の奥底。そこに一人の[エキドナ]と呼ばれる種族の女性が居た。
彼女は今、訪問販売に訪れたハニービーから買わされた商品をマジマジと見詰めていた。
「『超高濃度ハチミツ10個入りセット』って書いてあるけど・・・媚薬よね?これ。」
彼女が手に取った領収書には、蜂蜜の代金と同等の支払額が明記されていた。内容も彼女が口にした物と全く同じだった。
箱を開けると中には幾つもの蜂蜜の瓶が入っていたのだ。それも、メイプルという女性の様にハニービーと言う種族の場合は原液であるこの元になっている蜜を加工する為、味の方は保障出来ていた。但し、一概の例無く総じて媚薬である。
原液からして媚薬なのだが、ハニービー達はこれに加工を加えて効果を薄めて大量生産したり逆に濃度を上げて一級品の媚薬を製作したりしていたのだ。
「イヴ?どうしたんだ・・・・・また買ったのか?押し売りセールス・・・」
「うぅ・・・・ごめんねぇ・・・・アダムゥ・・・」
「・・・・また無駄遣いしたの・・?」
家で途方に暮れていたイヴは、後ろから声を掛けられて少し驚いたように震えていた。イヴを呼んだ男性の名前はアダムと言う。イヴの夫だ。
二人の出会いは唐突だった。洞窟の奥底で暮らす習性のある彼女たちは、稀に外へ出ては悪戯をして故意に自分を退治してもらう様にクエストなどが貼られるよう仕向ける。それもこれも、退治しに来た勇者などを捕まえて伴侶とする為だ。しかし、イヴの場合は違った。その優しさから村を襲う事はおろか、人を(性的な意味で)襲う事も出来ないで居た彼女は、悪戯に行くたびに失敗して返り打ちに会い、泣きながら寝ることも多々あった。その内に村に対する恐怖心まで持ち始めたイヴは、思いもしない形でアダムと出会う。
彼は元々、イヴが襲おうとしていた村の人間で、村一番の人気者だった。それなりに地位を持つ人間として、周りから信頼を得ていたのだ。その彼は、イヴが寂しそうにしていると知り合いのサキュバスから聞き及んで彼女を迎えに来たのだ。
「・・・・・・・」
「どうしたんだ?黙って・・・」
「あっ、ごめんね。つい出会った時の事思い出しちゃって・・・」
話は戻り過去。
イヴと出会ったアダムは、イヴに襲われると思っていたのか武装していた。しかしイヴを改めてみたアダムは、体中に装備していた鎧や鏡の盾を外すと彼女に近づいてその頭を撫でてあげた。
怯えていた彼女の顔から、恐怖の表情が消えたが同時に愛欲の表情も浮かんだ。しかしそれをアダムは快く了承して交わった。
そしてそれから数カ月が過ぎて現在に至る訳である。因みに二人の愛し合った結晶はちゃんとイヴのお腹に宿っていた。もう彼女の腹が結構飛び出してきている。妊娠日月で言うとだいたい妊娠6カ月と言ったところだ。
「ちゃんと寝てなきゃ、体にも子供にも悪いぞ?」
「うん。そうだよね。でも・・・・おはようのチュウ・・・」
「分かったよ・・・・チュッ・・」
机の上に置いた荷物(媚薬)を無視して、イヴはアダムにキスを求めた。それに応じたアダムは軽くキスを交わす。お互いに柔らかな唇が触れあってくすぐったい感覚が走る。
「どれどれ・・・二人目の子はどんな元気な子が生まれてくるんだろうな・・・・」
「もぅ・・・聞き耳立てても種族まで分からないよ?」
イヴとアダムの間に子は居ない。しかし、これでイヴの子供は二人目なのだ。それは何故か。一人目の娘はもう既に何年も前にイヴの下を離れて愛する恋人と共に何処か遠くへ行っていたのだ。
それから数年間、愛する事も無く過ごしていた彼女にアダムが来たと言う訳だ。年老いるスピードが極端に遅いエキドナ種は、DNAの異変による物なのか魔力の悪戯による物なのか一人目の子供以外は産まれてくる種族がてんでバラバラなのだ。
エキドナとは全然関係の無いサハギン種が生まれることもあれば比較的近いメドゥーサ種も生まれてくる。それは二人とも文献を読んで確認済みだった。
「今から楽しみだよ・・・・元気に育てようね。」
「そうだね。それより、朝御飯作ろうか?今の君じゃ・・・」
「私は奥さんなのよ?それくらい出来ます♪」
笑顔を作ってイヴのお腹を擦っていたアダムは、微かに自分の腹の虫が鳴いたのを聞いてイヴに料理を作ろうと思ってメニューを聞こうとした。しかし、その途中で口を指で塞いだイヴは、アダムが手に取ったエプロンを奪い取ってそれを着た。そしてアダムに笑顔を向けて台所へと向かった。
元々洞窟の中と言う事もあり、内部には煙が篭もり易い。そこで彼女は以前に、ドワーフに頼んで換気扇を数台用意してもらった。穴掘りが得意なドワーフたちにとって、通気口を掘る程度の作業は一日で終わる範囲内だった。
「さぁて・・・腕によりを掛けて作るわよぉ・・・」
「余り無理はするなよ?」
「ンフッ♪もぉう♪心配症なんだからぁ。」
腕の上の方まで服を捲くったイヴは、改めて貯蓄してある食料を確認して何を作ろうか考えていた。そんな彼女を心配したアダムは、イヴの真後ろに立って一緒に献立を考えようとしていた。しかし、イヴが彼に笑い掛けると決った量の材料を貯蓄槽から取り出した。内容を把握すれば容易に献立が「カレーライス」な事が分かった。そして、二人の家庭はほのぼのとした空気を作りだしながら楽しい家庭を築いて行った。
風の全く流れて居ない洞窟の奥底。そこに一人の[エキドナ]と呼ばれる種族の女性が居た。
彼女は今、訪問販売に訪れたハニービーから買わされた商品をマジマジと見詰めていた。
「『超高濃度ハチミツ10個入りセット』って書いてあるけど・・・媚薬よね?これ。」
彼女が手に取った領収書には、蜂蜜の代金と同等の支払額が明記されていた。内容も彼女が口にした物と全く同じだった。
箱を開けると中には幾つもの蜂蜜の瓶が入っていたのだ。それも、メイプルという女性の様にハニービーと言う種族の場合は原液であるこの元になっている蜜を加工する為、味の方は保障出来ていた。但し、一概の例無く総じて媚薬である。
原液からして媚薬なのだが、ハニービー達はこれに加工を加えて効果を薄めて大量生産したり逆に濃度を上げて一級品の媚薬を製作したりしていたのだ。
「イヴ?どうしたんだ・・・・・また買ったのか?押し売りセールス・・・」
「うぅ・・・・ごめんねぇ・・・・アダムゥ・・・」
「・・・・また無駄遣いしたの・・?」
家で途方に暮れていたイヴは、後ろから声を掛けられて少し驚いたように震えていた。イヴを呼んだ男性の名前はアダムと言う。イヴの夫だ。
二人の出会いは唐突だった。洞窟の奥底で暮らす習性のある彼女たちは、稀に外へ出ては悪戯をして故意に自分を退治してもらう様にクエストなどが貼られるよう仕向ける。それもこれも、退治しに来た勇者などを捕まえて伴侶とする為だ。しかし、イヴの場合は違った。その優しさから村を襲う事はおろか、人を(性的な意味で)襲う事も出来ないで居た彼女は、悪戯に行くたびに失敗して返り打ちに会い、泣きながら寝ることも多々あった。その内に村に対する恐怖心まで持ち始めたイヴは、思いもしない形でアダムと出会う。
彼は元々、イヴが襲おうとしていた村の人間で、村一番の人気者だった。それなりに地位を持つ人間として、周りから信頼を得ていたのだ。その彼は、イヴが寂しそうにしていると知り合いのサキュバスから聞き及んで彼女を迎えに来たのだ。
「・・・・・・・」
「どうしたんだ?黙って・・・」
「あっ、ごめんね。つい出会った時の事思い出しちゃって・・・」
話は戻り過去。
イヴと出会ったアダムは、イヴに襲われると思っていたのか武装していた。しかしイヴを改めてみたアダムは、体中に装備していた鎧や鏡の盾を外すと彼女に近づいてその頭を撫でてあげた。
怯えていた彼女の顔から、恐怖の表情が消えたが同時に愛欲の表情も浮かんだ。しかしそれをアダムは快く了承して交わった。
そしてそれから数カ月が過ぎて現在に至る訳である。因みに二人の愛し合った結晶はちゃんとイヴのお腹に宿っていた。もう彼女の腹が結構飛び出してきている。妊娠日月で言うとだいたい妊娠6カ月と言ったところだ。
「ちゃんと寝てなきゃ、体にも子供にも悪いぞ?」
「うん。そうだよね。でも・・・・おはようのチュウ・・・」
「分かったよ・・・・チュッ・・」
机の上に置いた荷物(媚薬)を無視して、イヴはアダムにキスを求めた。それに応じたアダムは軽くキスを交わす。お互いに柔らかな唇が触れあってくすぐったい感覚が走る。
「どれどれ・・・二人目の子はどんな元気な子が生まれてくるんだろうな・・・・」
「もぅ・・・聞き耳立てても種族まで分からないよ?」
イヴとアダムの間に子は居ない。しかし、これでイヴの子供は二人目なのだ。それは何故か。一人目の娘はもう既に何年も前にイヴの下を離れて愛する恋人と共に何処か遠くへ行っていたのだ。
それから数年間、愛する事も無く過ごしていた彼女にアダムが来たと言う訳だ。年老いるスピードが極端に遅いエキドナ種は、DNAの異変による物なのか魔力の悪戯による物なのか一人目の子供以外は産まれてくる種族がてんでバラバラなのだ。
エキドナとは全然関係の無いサハギン種が生まれることもあれば比較的近いメドゥーサ種も生まれてくる。それは二人とも文献を読んで確認済みだった。
「今から楽しみだよ・・・・元気に育てようね。」
「そうだね。それより、朝御飯作ろうか?今の君じゃ・・・」
「私は奥さんなのよ?それくらい出来ます♪」
笑顔を作ってイヴのお腹を擦っていたアダムは、微かに自分の腹の虫が鳴いたのを聞いてイヴに料理を作ろうと思ってメニューを聞こうとした。しかし、その途中で口を指で塞いだイヴは、アダムが手に取ったエプロンを奪い取ってそれを着た。そしてアダムに笑顔を向けて台所へと向かった。
元々洞窟の中と言う事もあり、内部には煙が篭もり易い。そこで彼女は以前に、ドワーフに頼んで換気扇を数台用意してもらった。穴掘りが得意なドワーフたちにとって、通気口を掘る程度の作業は一日で終わる範囲内だった。
「さぁて・・・腕によりを掛けて作るわよぉ・・・」
「余り無理はするなよ?」
「ンフッ♪もぉう♪心配症なんだからぁ。」
腕の上の方まで服を捲くったイヴは、改めて貯蓄してある食料を確認して何を作ろうか考えていた。そんな彼女を心配したアダムは、イヴの真後ろに立って一緒に献立を考えようとしていた。しかし、イヴが彼に笑い掛けると決った量の材料を貯蓄槽から取り出した。内容を把握すれば容易に献立が「カレーライス」な事が分かった。そして、二人の家庭はほのぼのとした空気を作りだしながら楽しい家庭を築いて行った。
11/04/25 06:19更新 / 兎と兎