連載小説
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三品目 護精装甲モンスパンツァー
 夏真っ盛りの日曜日。テレビを付ければ子供向けの戦隊ヒーローが敵の怪人たちにボコボコにされているのも最早見慣れたお約束となったいつもの展開が繰り広げられていた。
 一度ピンチになるまで追い込まれて、機転を利かせた戦い方で今日もまた一発逆転の大技で敵の怪人が爆発四散して戦隊側の勝利という流れだ。
 コマーシャルに入る前にはしっかりと次に現れる敵怪人のチラ見せや戦隊のみんなの日常ギャグパートが挟まって場の空気を和ませていく。
 そして次に控える女の子向けの変身少女バトルモノへと引き継いでいくのである。

「こういう戦隊モノお好きなんですね、ご主人様」

「いや、好きとか嫌いじゃなくて「そうだよなぁ戦隊モノってこういうヤツだよなぁ」って再認識してるの」

「再認識、ですか…?」

「そう、再認識 変なところで口滑らせて場の空気感台無しにしたくないからな」

 朝食にはちょっと甘いくらいの卵焼きをもそもそ食べながら答えるシロウの手元には一つのDVDパッケージが置かれていた。
 食事時にそんなもの置いておくなよとは思いもするだろうが、取り寄せ品がようやく届いて確認も済ませた所だから手元にあるのもしょうがない。

「護精戦隊モンスパンツァー… 今テレビでやっているのとは違うシリーズなのですね? 昔のシリーズなんでしょうか」

「いや、それは今やってる所謂戦隊シリーズとは別枠だよ?」

「え? ですがどう見ても戦隊っぽいデザインの装備を着ていますよね?」

「まぁそういう作品だからな AVだけど」

「えっ」

 さも当然のように答えるシロウ。
 ココがパッケージをよく見てみれば確かに、端っこの方にAV作品おなじみのあのマークがしっかりと付けられていた。

「……戦隊シリーズのものとほとんど変わらないように見受けられますが… AV作品なのですね…」

「ウチの常連サマに仕入れてくれって頼まれてさ」

 表紙は戦隊モノさながらのビビッドな色合いを用いた少年心惹かれるパッケージとなっている。
 タイトルのモンス部分はモンスターの意味なのだろう、タイトルロゴはモンスターらしく翼や牙や爪の意匠があちこちに見られる、それこそ戦隊モノだろって感じのロゴだ。
 パッケージを飾る戦隊ヒーローたちも、それぞれのモンスターの力を宿した戦士たちとしてスーツもしっかり作られていた。裏面には戦士たちの紹介が書かれている。
 チームで最年少の熱血青年。ヒイロが纏う天使の力を宿した赤の装甲、レッドパンツァー
 チームの頭脳でツッコミ役。カイトが纏う海獣の力を宿した青の装甲、ブルーパンツァー
 チームのオカンで金の亡者。ヒトミが纏う野性の力を宿した黄の装甲、イエローパンツァー
 チームの教官で筋肉主義者。シズムが纏う賢者の力を宿した緑の装甲、グリーンパンツァー
 チームのアイドルで腹黒女。カスミが纏う悪魔の力を宿した桃の装甲、ピンクパンツァー

「この五人が繰り広げる、ドタバタヒーロー活劇だ」

 シーンの切り抜きで貼られている写真に写る敵怪人の完成度も、パンツァーたちと同じくらいクオリティが高い。
 表のパッケージに書かれた18禁マークを隠して子供向けコーナーに置いてたら興味を持つ子供も出てくるんじゃないだろうか。

「ヒーロー活劇… この方たちは、この敵怪人の方々から世界を守っているといった感じでしょうか?」

「いいや? 痴漢やら誘拐やらの方法で性的に襲い掛かってくる敵怪人から市民はもちろんだけど何より自分たちの貞操を死に物狂いで守る戦いだ」

「……はい?」

 前言撤回は意外と早くに起こりそうだ。
 そのあたりはしっかりAVなんだなと納得するところもあったが、さっきまでの戦隊モノ顔負けのクオリティを褒めた言葉を撤回したい気持ちがどうも強い。
 なんか分かっていたけど裏切られたような感じの気持ちになって胸の内がもごもごしてる。

「も、もしかして…」

「もちろん、お約束通りに形勢逆転からの一撃必殺大勝利ばっかりだよ」

 ほっ、という声がココから聞こえてきたのは、安堵からなのか残念と感じたからなのか。
 何かを伝えたかったのか、ココの触手の一本がシロウの肩に伸びてきて、申し訳なさそうに触れていたのが可愛かったのでもうぶっちゃけどうでもいいや。

「まぁ、その過程でいっつも搾り取られてるけど」

「いっつも…?」

「これ、シリーズ全部で8本の16話構成なんだよね」

 AVでシリーズモノと言ったらどれくらいのスケールで思い浮かべるだろうか。
 よくて前中後編の三作くらいだろうか?たまに五作連続とかはあるだろうが、8作なんてそう見る事はないだろう。

「言っておくけど、取り寄せを頼まれた品だから俺たちのプレイ対象外だからな?」

「えっ?そんな… ごしゅじんさま…」

「やめろやめろ、そんな泣きそうな顔するなって」

 現に猛抗議しようとしてるココの触手たちは既に何か言いたそうに粘液だらだら垂らしてたし。
 なんなら朝食のごはんにちょっと垂れてるんだが?あんかけですか?いいえ、嫁の粘液です。
 もったいないので食べるけど、人前でやったら容赦なく捨てるからね?

「こちらもご用意しましたのに…」

「いつの間に…」

 テーブルの下の物陰からひょいっと取り出して見せてきたのは、どうやって作ったのやらレッドパンツァーのヘルメットだった。
 続けてスーツも出てきたし、変身アイテムやレッドパンツァーの得意とする格闘用の儀礼剣までしっかり作っちゃってまあ。
 けれど、満足の行く造形に仕上がっているからだろうか、ココの表情は自慢げだ。
 パッケージを見ただけで内容もロクに分からないだろうによくやるよ。

「やれやれ… 使う事は無いとは思うけど、検品も兼ねて見てみるか?」

「それがよろしいかと お付きあい致しますご主人様。さあ、お早く」

「お付き合いって… 俺は開店時間になったら店番があるから、そこからは」

「一人でも検品のお仕事勤めてみせましょう。不備があれば後でリストをお渡ししますので。さぁ!」

 よっぽどモンスパンツァーを見たいらしい。すごい急かしてくるねこの奥さん。
 これだけ食いついて来てくれるのは、常連さんの頼みであったのもあるが取り寄せた甲斐があったかもしれない。
 となれば、さっさと朝食を済ませたら片づけをココが素早く済ませている間にモニタールームへと向かおう。

「機材に問題なし… 開店前だと楽でいいな」

「ご主人様ご主人様、ここへどうぞ」

 そう言ってウチにある中では大きなモニターの前にあるソファに座って自分の膝の上をぽんぽんと叩く。
 もしかして子ども扱いされてます?あそこに座ってしまえば最後、抱き着いてきたココに貪られる事は想像に難くない。
 なんなら今から見るのはそういう気分にさせる為のAVなんだから、確率はもっと高くなるだろう。

「ダメだぞ? 時間になったら仕事始めないとだからな」

「むぅ…」

「…ぶはっ! ちくしょう、可愛すぎる…」

 子供みたいにふくれっ面を向けてくるのがあまりに可笑しくって可愛くて、シロウも我慢の限界が足元まで見えていた。
 足元見ようとしたら股間が元気に盛り上がっていたのだから頭も身体もココにメロメロなようだ。

「仕方ありません… 早急に検品を進めてしまいましょう」

「うん、そうだな…」

 適当に座って検品を開始。まずはモンスパンツァー、その栄えある第一巻からだ。
 機器にディスクを挿入してリモコンを操作してメインメニューを開くのだが…もう既にここから戦隊ヒーローっぽいデザインになっていた。
 音声こそ日本語のみだったが、字幕で5か国語に対応しているこだわりっぷり。
 決定やキャンセルボタンを押して画面を移る度にパンツァーたちのセリフやカットインが挟み込まれて飽きがこない。
 本編が始まる前からメインメニューだけで既に視聴者を楽しませてくれるのはすごく高評価と言えるだろう。

『こいつでいくぜっ!』『これで全部ですかな?』

「字幕無くていいのか?」

「はい あとは本編を…」

『まいどおおきにー』『ひやかしのつもりかっ?!』

「検品兼ねてますのでチャプターは最初から行きます」

『はっじまっるよー!』

 画面が切り替わるごとにメンバーの台詞が入るのはいいが、流石に何度も切り替えしているとうるさく感じてしまう。
 子供心にはものすごく寄り添っている感じなのに、画面の前で全裸待機しているだろうお兄さんお姉さんの事はあまり考慮していないのかな。
 AVなのに?

「……」

「……よしよし」

「はにゃ… っ!もうっ?! い、今はいけません。検品中ですよ?」

 AVを真面目な顔して見ようとしているココが可愛くってついつい頭を撫でてしまった。
 一瞬ふやけた表情をしてたけどすぐに戻ったあたり、心の中の天秤はエロに傾いてはいないらしい。
 どうかシリーズ全部見終わるまでそのままで居てくれ。

「…あ、オープニングもそれっぽいですね」

「カラオケに無いのが残念でならないとか愚痴ってたっけ… 確かに歌いやすいし歌詞も音楽もかっこいいんだよな」

 AVのテーマ曲がカラオケに収録されていてたまるか……ないよね?
 ともあれ、戦隊ヒーローらしくバトルを繰り広げて行くかっこいいOPが流れて本編が始まり世界観などの説明が入る訳だが…

『人間の精神エネルギーから抽出されるラブジュースを狙い異世界から迫りくる侵略者ドクビュートから地球の人々を護るため、今日もモンスパンツァーは戦うのだ』

「…今なんと…?」

「悪の組織のドクビュートか? こっちも結構凝ったデザインしてるし全体的に昆虫系メインで統一されたテーマ性とかも」

「いえ、そちらではなく… コホン、今は内容に集中します」

 そこから暫くは、モンスパンツァーが結成されるまでの流れがしばらく続く…のだが、ドクビュート側の描写がどうにもおかしい。
 とてもお子様に見せられるような背景をしていない。具体的な事を言うとピンクのスモークが焚かれたホテルの一室のような空間だったのだから。
 そんな空間に三人の魔物娘たちがそれぞれの目的の為に会議を開く…が、議題はまだ見ぬ理想の旦那様のイメージ像について。AVらしくなってきた。

『またこのメンツ〜? いつメンじゃーん なら議題も一緒だろうし、この会議無くてよくなーい?』

『雑魚に用はねぇ! もっと骨のあるやつと戦いたいんだよアタシは』

『こらこらダメよ? お母さんとの約束でしょ? はい、ちゃんとおすわりしましょうね』

『…チッ』『はーい』『よしよし、えらいこたちねー』

 退屈そうにだらけて部屋を無意味に散らかすヴァンプモスキートの少女・ミナモ
 戦いに飢えて吠える事をやめない戦闘狂の様な事を言うウシオニの女性・ウキヨ
 その二人をあやしていっぱい愛でる母性の権化のようなパピヨンの女性・ハニエ
 彼女たちが戦隊モノで言う所の幹部たちと言ったところだろうか。なおパッケージによると今回の当たり枠…要は男優側とAVらしい事をするのは…パピヨンのハニエだそうだ。

「ご主人さま、私決めました。今夜はコレで行かせていただきます」

「…ん? もしかして俺は今、犯行予告を突き付けられた…?」

 戦隊モノとしては少し趣旨のズレた内容に思う所こそあれど、物語はようやくドクビュートとモンスパンツァーの邂逅へと至った。
 平穏だった公園に現れたドクビュートの三人は、それぞれの影を使い魔のように操ってそこに居た人々へ襲い掛かり恐怖に濡らす。
 そこへ異変を感じ取ったモンスパンツァーが駆け付けて戦闘直前。さあ変身の時だ。

『『『『『パンツァー・イン!』』』』』

 五人が息を合わせて、ベルトのバックル部分になっている変身アイテムにそれぞれが持つ変身キーとなるアクセサリーをセットした。
 変身ポーズも変身キーもそれぞれ違っているあたり戦隊モノへの愛がやっぱりすごく強いのを感じる。
 変身シーンも五人それぞれでも分割していっきにでもなく、それぞれの目立つ場所が装着される所をズームアップして画面を転々としていく本気っぷり。
 これが初変身ってホントですか?とか思ってる内に変身シーン部分が終わる。しっかりばっちりCG処理とかもしてて本物の戦隊モノ顔負けの完成度だ。

『深紅に燃える正義の心! レッドパンツァー!』

『大洋に浮かぶ知性の証 ブルーパンツァー…』

『黄金に煌めく信頼の印 イエローパンツァー』

『深緑に揺れる自然の力 グリーンパンツァー』

『甘美に蕩ける魅惑の愛 ピンクパンツァー!』

『護精装甲!』

『『『『『モンスパンツァー!!』』』』』

 第一回とは思えないくらい完璧な名乗り口上、そしてド派手な爆発演出。それらを盛り上げるBGM。そして戦闘へ移るわけだが…いちいち書いてたらキリないので短縮だ!

幹部の分身体たちは難なく消滅させられるが、その中で突出したレッドパンツァーがハニエの罠にかかりドクビュート側の撤退に紛れて誘拐されてしまう。
お持ち帰りされたレッドパンツァーことヒイロは、拘束されたままハニエの淫靡で甘い蜜に心を奪われてしまう。
すっかりハニエの甘えん坊な赤ちゃんにされてしまって、二人は心も体も繋がってお互いの甘い蜜を貪り合い続けるのだった。
姿を消して心配している他の仲間の事などすっかり忘れてそれはもう濃厚のどろっどろに…
何度もハニエにどくどくと精を吐き出して限界まで搾り取られたところで、次回へと続く形でシーンが切り取られた。

「……これ、本当に第一話なのですか…?」

 早々にレッドが退場したのが心配でならないが、次回予告が流れるともはやネタバレのオンパレードで安心感まで出てきた。
 ハニエの赤ちゃんにされたヒイロだが、仲間たちの声に答える形で力を取り戻してハニエを撃退して帰ってくる。
 帰ってこなかったのはヒイロの童貞だけだった、という話の流れであったわけだが…

「赤ちゃんプレイ… ふむ…」

 今回のシロウとココのプレイが今ここに決定した。
 当のシロウはと言えば…

「ではご主人様… ご主人様? あぁ… んっ! はぁぁ…」

「ふぅ…これでよしっと それじゃあココ、検品の方引き続き頼む」

 この感覚には覚えがある。店内で着けているエプロンから伝わってくる、シロウの温もりがココの心を揺さぶった。
 ヒイロとハニエの熱くて甘々でどろどろとした赤ちゃんプレイと濃厚種付けプレイをまじまじと観察していた間に仕事に戻っていたのである。
 シャッターやトビラの鍵が開く音も、ヒイロとハニエのあっついまぐわいに集中している間に聞き逃していたわけだ。
 様子を覗きに来たついでに今日の業務内容も決定してしまった。

「…仕方ありません‥か… 後はこれを…」

 常連さんとやらがこれをレンタルしていってくれる事を祈るばかり。
 とは言ったものの、シロウが言うには取り寄せ品と言っていたしきっとこのまま常連さんはセットまるごと買い取っていくのだろうか。
 そうなってはレンタルされたという事にはならずこれから先の営みに持ち出される事もないだろう。
 なんとも残念な事だ。なんて思っていたのだが、どうやら天の神様とやらはココを応援してくれているようだ。

「待て待て聞いてないぞ!」

「言ってなかったっけ? ごめんごめーん」

「女性の声…? それも聞き覚えのある声ですが…」

 検品は一旦中止。店内の様子を見に行くことにしたココ。
 モニタールームの外に出てみれば、快活そうなスポーツガールがシロウと口論になっていた。
 その顔はココも知っている。この店の常連客でシロウが言っていた取り寄せを頼んでいた常連さんの緋色さんだ。
 よくヒーローモノの作品をレンタルしにやってくるお客さんで、その際に話す趣味の内容も実に男の子らしいカッコイイものばかり。
 ただ確かに、今回の騒ぎのように適当でずぼらな所が目立つ事もまた事実。

「買い取るから確保をするものだとばかり思ってたんだが」

「レンタルした方が安上がりじゃん? だからここでちょっとずつ借りて行こうかなって」

 作品自体の単価もそうだが、セット8巻全巻購入ともなると少なくない額にはなってしまう。
 買い取るならと新品をわざわざ探して買って来て、いざ受け取りに来たらレンタルしたいと申し出てくる。
 これは困った。想定の一割もお金になってくれないではないか。これはシロウも声を荒げるというものだ。

「それなら… 緋色さん、二周以上見るのはどうでしょう?」

「繰り返しレンタルしたらいいの? 乗った」

「ちょっ?! 勝手に話を進め」

「それじゃ早速一巻は借りてくねー」

 棚にレンタル用のダミーを配置する前のモンスパンツァーをココから引っ手繰ってレンタル代金を代金トレイに放り投げると嵐のように去っていった。
 神は居る。ココはそう信じたくなった。アダルトビデオの神様が居ると。

「……さぁ、ご主人様…?」

「ぐっ… もういい、好きにしてくれ…」

 シロウの同意も得られた事により、今日の営みメニューが決定した。第一巻のヒイロとハニエのプレイが採用される事となる。
 その日の仕事はと言えば、モンスパンツァーの検品でほぼ一日が終わったし、客もあまり来なかったのでシロウはしてやられたと嘆くばかり。
 あっという間に閉店時間がやってきて、すぐさま店のシャッターを閉めると検品の終わったココはシロウを寝室へと拉致していく。

「…はーい、ねんねのお部屋に着きましたよー?」

「今日はそういうプレイかんもごぉ?!」

「ふふふふ… ママのおっぱい、おいしいでちゅかー?」

 布団の上で、シロウを膝枕する体勢となったココはメイド服を脱いで胸を晒すとそのままシロウの顔というか口に押し付けてきた。
 母乳こそ出ないがそれっぽい事も出来なくはない。だからやった。
 ココの胸から滲みだしていたのは母乳でもなければ種族特有の粘液でもない。
 予め大量に摂取しておいたはちみつがじんわりと、それこそ母乳のように滲みだしてシロウの口の中を潤わせていく。

「んっ…んっ…んっ… ふぅ… けぷっ」

「あらあらあら? ごちそうさまでちゅかー じゃあシロウちゃんのもびゅっびゅーしましょうねー」

「なぁココ」

「あら? 赤ちゃんはお喋りなんてしないでしょー?」

 役に入り込んでいるからなのか、ココの圧が戦闘している時のハニエのような闇を帯びた感じになっていた。
 一瞬ゾッとした背筋の寒気もシロウの股間で揺れる中途半端に元気なものを握られてしまえば気持ちよさへと変わっていく。
 優しく、そして気持ちよく上に下にと手を動かして刺激して大きくさせる。

「うっ… あうぅ… ままぁ…」

「あっこれいけません… ご主人さま、お許し…んおぉ?!」

「わっぷ?!」

 圧をかけてきたと思ったら、今度は母乳がわりのハチミツがシャワーのようにシロウの顔面に降りかかってきた。
 どこにそんなに興奮する要素があったのか。
 まさかママ呼びされて興奮したと言う訳でも

「ご主人さま… もう一回…もう一回ママって呼んでいただけませんか?」

「ま…ママ…?」

「はうっ!! あはぁ!」

 どうやらママ呼びされて興奮しているらしい。
 すっかり役作りも抜け落ちてしまっている。

「ご主人さま…ご主人様… ほら、びゅっびゅーしましょ」

「ぐっ… うあ… ココ、出るっ!!」

 嬉しそうに手を動かすココの顔を見ていると、シロウの方まで興奮してしまう。
 気が付けば彼女の要求通りびゅびゅっと射精して彼女の手を白くねっとりと汚していた。

「はぁ…はぁ… ココ、ちょっと待って」

「ご主人さま、ママですよ?ココでなくママとお呼びくださいな」

「ちょ、調子にの…わっぷ」

「むぅ… ママ怒りました。私の…赤ちゃんだろうと容赦はしません…からぁ!」

 赤ちゃんプレイってこういうものだったっけ?
 まだまだ元気なシロウの逸物を、ココは体勢を変えて対面座位の姿勢になってずっぷしと飲み込んでしまった。
 その上でハチミツ滴るおっぱいにシロウの顔を押し付けてくるものだからロクに喋れもしない。
 どうにか引き剥がそうにも、彼女の触手が両手を塞いできて抵抗のひとつも叶わない。

「んっ…んっ…んぐっ…」

「はぅぁ… そう、そのまま… ママのこともっと気持ちよくしてぇ… あ、出た?」

「んっ…んぉ…」

 甘く蕩かすような、優しく包み込んでくる交わり。
 いつものココと比べると緩やかな気がしないでもないが、それでも欲しがりさんな所はしっかり健在であった。
 繋がったまま、頭の中でちょっとでもママという言葉を思い浮かべる度に反応してきゅんと締まるココの膣は、あっという間にシロウを射精へ導く。
 自分で思っているタイミングでもない、ココがコントロールを掌握しているような感覚の中でびゅっと滴るような鈍い射精感。
 なのに辛さや苦しさは感じない。だって夫婦の愛の営みには変わらないのだから。

「んー…」

「美味しいでちゅかー? あっ… おちんちんビクビクしてお返事するの偉いでちゅねー」

「ぷはっ… ママ… わぶっ」

「だーめ、もっとちゃーんとおっぱい飲んでねー んっ…」

 これから先、こういうプレイに執心してしまわないか心配でならない。
 心配なのもあったが、シロウはもっと心配な事があった。
 赤ちゃんプレイに徹しているのはいいが、その居心地がそこそこ良いと感じてしまっているのは個人的によろしくない。
 ふとした瞬間、ココを呼ぼうとしたときにママと呼び間違えてしまわないか、ちょっと心配になってしまう。
 まぁ、二人に子供が出来てしまえばその心配も吹っ飛ぶのだろうけれども。

「んぐ…んぐ… んぅっ?!」

「あはっ… また出しちゃったの? 可愛い可愛い私の赤ちゃん… もーっと気持ちよくなってね…」

 緩やかでねちっこいながらも、愛情に満ちたココの仕草や表情がシロウの性癖を歪ませていく。
 心の中で軋みをあげるシロウの性癖は射精と言う形で確かな亀裂を増やしていった。
 だんだんと元に戻れなくなっていく感覚がシロウを襲う。
 これを怖いと感じられなくなってしまえば、きっともうこの性癖からは逃れられないのだろう。

「ぐっ… っはぁ… あぁっ!!」

「また出たぁ いいよ? もーっと出して? ママのいっちばん奥の… ここにちょーだい…?」

 どくどくと膣内から滲むのを感じて、嬉しそうに微笑むココの顔は子供を愛でる母親そのものだ。
 びくんと揺れて、どくんと吐き出し、また奥までずんずん突き上げて互いに快感を貪りあって時間はあっという間に過ぎ去っていく。




「…ふぅ… 満足しました… ご主人様…?」

「……ここ…」

 しばらく続いた赤ちゃんプレイも、すっかり終わりの時間に行き着いていた。
 二人の繋がりは解かれ、ココの顔は満足そうに緩んでツヤツヤになっている。
 シロウはと言えば、連続での射精から来る疲労感からココに抱き着いたまま眠っていた。
 その口元はココのはちみつおっぱいに塗れた跡が、拭きとってもしっかりとテラテラ光って残されていた。

「ご主人さま… ふふっ… あっ…」

 二人の愛が実を結び、子供が出来て互いをパパママと呼び合う未来を想像して、ココは軽く絶頂した。
 そんな日が来ることを夢見るのは、きっと愛し合う人が居るなら誰でも通る道だろう。
 人ならざる魔物娘なら猶更だし、ショゴスであるココだってきっとその気持ちに変わりはない。

「んっ…やっ ご主人様? ひゃぅ!」

「ここ… んぁむ… んんんぅ」

「うひゃぁ!」

 寝ぼけたままのシロウは、ココの手を掴んで手繰り寄せて抱き枕みたいに抱き寄せてきた。
 しかも何か食べてる夢でも見てるのか、ココの胸を咥えてしゃぶる。
 彼の舌が服である触手を這っている感覚だけでココはその場で軽く絶頂していた。

「はぁ…はぁ… ご主人様…んっ…もう…」

「ここぉ…」

 気持ちよさそうに眠るシロウの顔を眺めているだけでココの心の中はどろっと蕩けていきそうな感覚が走りまわる。
 たまにはこういう赤ちゃんプレイもいいかもしれない。そんな風に思うココであった。
 なおその翌日、第一巻を借りて行った緋色さんが慌ててやってきて第二巻も借りてさっさと帰っていった。
 次回が気になり過ぎて居ても経っても居られなかったらしい。
 本日もご主人様との営みに題名を与えてくださってありがとうございます。
 ええと第二巻の内容は〜…しまった!これじゃご主人様とのいちゃいちゃにはなり得ない!

「こういうのもあるのですか…」

 パッケージに映っているのは怪人側のハニエたちではなく、イエローパンツァーとピンクパンツァーだった。
 お互い女性同士で何をするのかと思いきや、相当ハードなレズセックス。
 竿役でも居ればシロウがその役になれたのだろうが、どうやら終始ピンクとイエローが攻守を入れ替えながらぐちゃどろに交わり合うらしい。
 あとで調べてみたらまぁ当然と言えば当然ではあるのだが、男優側と女優側、どこもペアばかりだった。
 レッドのヒイロ役とパピヨンのハニエ役の二人は、ハニエ役の人がグリーンワームだった頃からのいちゃいちゃ幼馴染夫婦。
 ブルーのカイト役とヴァンプモスキートのミナモ役の二人は、そう遠くないリゾート地で海の家を経営する凄腕料理人夫婦。
 グリーンのシズム役とウシオニのウキヨ役の二人は、有名なジムの鬼コーチと鬼軍曹として良くも悪くも有名な夫婦らしい。
 そしてイエローとピンクはと言えば…ピンクは特撮業界では名の知れた編集者、イエローは経営コンサルタントをしているらしい。
 ピンクとイエロー、愛し合ってるレズカップルである事は割と有名な話なんだそうな。世間は広くて狭くて怖いものだ。
 このモンスパンツァー、イエローが立ち上げてピンクが頑張って作り上げたものと言う事だろうか。

「ふむふむ… 勉強になりました ご主人様ー?いい事思いついたのですがー」

その日の夜、レンタルショップ456の奥、シロウとココの二人の寝室からは聞くに堪えない程情けないシロウのメスイキ声が鳴り響いたんだとか。

つづく
25/10/08 16:01更新 / 兎と兎
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