読切小説
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嘘つきな貴方へ夕顔を
 雲一つないほどに快晴の空の下、その少女は屋敷の縁側から外の景色を眺めていた。
 彼女の名は爽姫。この屋敷の持ち主である爽氏の娘である。
 長く黒い髪を結う事なく遊ばせ、風になびかせる姿は名前の通り、姫そのものであった。

「……」

 そんな彼女は今、物憂げに外を眺めている。
 本当なら外に出て庭を駆け回ったり父のように馬を乗りまわしたりする事に憧れているのだ。
 だが彼女にはそれが出来ない。
 爽姫は生まれつき身体が弱いのだから。

「はぁ……退屈です…」

 ほとんど外へ出る事も無い生活だからか、彼女は人と比べて肌が白く陽の光を知らなかった。
 勿論、ほんのりと暖かい日の光は心を癒し育んでくれる物だと彼女は知っている。
 ただ他人と比べて陽の光に素肌を晒す事が無いのだ。
 京では自分を美しく見せる為に化粧をして肌を白く見せるそうだが、彼女にはそれが必要無いほど。
 まあ彼女自身がまだ幼い事もあり、丈夫さや肌の白さは時間が解決してくれるだろうと医者も言っていた。

「齢13……その年ならもう夫を探すなり見つけるなりして嫁ぐものだ…そう思いませんか、小鳥さん?」

 そよ風と共にやって来た小鳥を見つけ、退屈の極致にいた彼女はその小鳥へと語り掛ける。
 返事を期待して喋っている訳では無い。
 言葉を投げかけれる相手は正直な所、何だっていいのだ。
 たまたま小鳥が入ってきたからそれに話しかけただけであり、入って来ていなかったなら天井のシミにでも語り掛けていたのではないだろうか。

「確かに、齢13では幼すぎるのではないかという声も聞こえますよ? ですが…」

「…おっと、これは失礼」

 小鳥へ語り掛けていた爽姫だったが、部屋を隔てる襖が開かれて言葉を失う。

「…あ、貴方様は…?」

「拙僧、陽観と申します。 爽氏とは少し縁がありましてな、暫く宿をお借りしようと伺った次第」

 自分の事を拙僧と呼ぶ、という事は僧侶なのだろう。
 見れば恰好こそ寺の僧侶そのものではあったが、顔はそうとは思えなかった。
 僧侶とは普通、修行に際し髪を全て剃るのが慣わし。
 だからこそ「坊主頭」なんて言葉もある訳なのだが。
 しかし彼の頭は道行く商人や男たちと同じく髪があった。
 その上、顔立ちはかなり整っていて贔屓目に見なくとも美男子だと分かる。
 年齢で言えば20歳かそこらだろうか。

「爽氏には目通り適った故、屋敷を探検しておったのですよ。 道を覚えると何かと便利ですからなぁ」

「そ、それでしたらわたくしがご案内させていただきます」

「おお、それはありがたい。 ではよろしくお頼み申し上げる」

 笑顔と共に差し出された手を取って、爽姫は屋敷の隅々までを陽観と共に歩き回った。
 何も退屈凌ぎにと彼の頼みを聞いた訳では無い。
 確かに退屈していた事は事実であり、彼を案内する事で退屈凌ぎになっていたのもまた事実。
 しかし爽姫にはそれ以上の理由があった。

 彼に一目惚れしてしまったのである。

「――これで、だいたいは案内し終わりました」

「なるほど、なかなかに広い屋敷ですな。 案内して貰わなければ迷っていたやも知れん。 感謝しますぞ、爽姫様」

「あぅ!? そ、そんな滅相も無い」

 陽観に頭を撫でられ、爽姫は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
 それは喜びや恥ずかしさが綯い交ぜになって表情に現れていた。
 もし俯いていなければ、そんな恥ずかしい顔を見せてしまう事になっていたかもしれない。
 13歳と言うには少し低い背丈の爽姫と、20歳らしくしっかりした体躯を持つ陽観という身長差だからこそ表情を隠す事が出来たと言っていいだろう。

「では私はこれにて」

「あっ…」

「ん? どうかされましたかな?」

「い、いえ…なんでもありません」

 まだまだ話したい事は山ほどある。
 だけど、それらを押し殺して、喉元まで出掛かっていたものを呑み込んでしまう。
 この恋心はきっと実らぬ思い。
 蕾が花を咲かせる事無く枯れてしまうようなもの。
 けれどこれでいいのです。
 迷惑を掛ける訳にもいかないのですから。

「そうですか? 暫くは奥の書斎の間で書をしたためています故、何かご用があれば…」

「っ?! はいっ!」

 まさかのお許しが出てしまった。
 これはもしかすると、好機なのかも知れない。
 そう思って心を躍らせていたのを、きっとお天道様は見逃さなかったのでしょう。
 修行を終えてからお邪魔しようと準備をしている間に、まさか風邪をひいてしまうだなんて。


「――ぜぇ……ぜぇ…」

 病気にかかるのもこれが初めてと言う訳ではありませんが、どうにもこれはつらい。
 頭はぼうっとして、どうにも熱っぽいこの感じ。
 元から身体は丈夫な方ではありませんけど、これはつらい。

「……(もうすっかり夜に……これはきっと御仏のお与えくださった修練なのでしょうね…)」

 このような病気に苦しんでなど居なければ、きっと今頃は陽観様の部屋で共に楽しくお喋りのひとつでもしていたでしょうに。
 だけど、それで御仏を恨むのはきっと恐ろしい事なのでしょう。
 私の浮わついた心が招いた結果なのですから。
 自分のせいだと言い聞かせなければ。

「失礼します」

「…? けほっ……ど、どちらさま…?」

 戸をそっと開けて入ってきたのは、まるでどこかの国のお姫様のような人でした。
 銀髪の長い髪に燃えるような瞳をした女性の身としては憧れの極致のような美しい方。
 きっと恋を知らなければ彼女に恋焦がれていた事でしょう。
 そんな方が、病に伏せる私の下へやってきたのです。

「旅の薬師でございます。 病に苦しむ者がいると聞き、馳せ参じました」

「そうですか…薬師の…」

 見れば、確かに彼女の背中にはとても細身の女性が背負うような物ではない大き目の薬棚が背負われていました。
 中身を空にすれば私などすっぽりと入ってしまいそうなその棚は、彼女にとってそんなに重い物でもないのかもしれません。
 商売道具は身体の一部、なんて言う方もいらっしゃいますけど、薬師のこの方はあの重そうな薬棚もきっと身体の一部なのでしょう。

「お風邪と聞いておりましたので、道すがら煎じた薬湯をどうぞ。 飲み易いよう冷ましてありますので、そのままお飲みください」

「道すがら…ありがとうございます…きっとさぞ腕の立つ方なのでしょうね?」

 竹で作った水筒を貰い、そのまま中身を呑み込んでいく。
 苦くも辛くもなく、寧ろ少し甘い香りのするその水を、思い返してみれば警戒しておくべきだったのでしょう。
 そうしていれば、あんな事にはならずに済んだかもしれないのに。

「ぷはぁ…甘い? それに、身体がだいぶ楽になったような…」

「ただ薬を水に溶かすだけでは苦いですからね。 果汁を混ぜ合わせてあるのです」

「果汁…たったそれだけでこんなにもすっと飲めるものなのですね」

「ええ。 ただ、果実によっては薬効の妨げになる物もありますから、注意して物を選ばなくてはいけませんけど」

 流石は薬師様、色んなことを知ってらっしゃる。
 私もいつか、それくらい勉学を積まなくては。
 でなければ陽観様の伴侶となるにはまだまだ修行不足というもの。

「それに、診るのはこれからですから。 病が何かしっかりと見極めてから薬を作る。 薬師の基本ですわ」

「おぉ……流石と言いましょうか…素晴らしいです」

 父上様の話では、薬を作るだけ作ってお金を貰えばすぐ帰るような薬師も居ると聞いていましたが、この方はそう言った者とは全く違った人のようで。
 薬師…いえ、人間の鑑と呼べるような方のようです。
 御仏様もさぞ褒め称えている事でしょう。

「さて、それでは診て行きましょうか」

「はい、よろしくお願いしま……あの…」

 何故、いきなり着物の帯を緩めているのでしょうか?
 帯の中に病気を見る為の道具でも仕舞いこんでいるのでしょうか。

「はい、なんでしょう?」

「どうしてお着物を脱いでいるのですか?」

「清潔な着物に着替えているだけですので、お構いなく」

 なるほど、そういう事でしたか。
 病人とはもう既に病に蝕まれ体力の衰えた身である事がほとんど。
 そんな状態の者と接するのに普段から着ている着物では清潔感に問題があるからという事でしょう。
 ですが、着物の下から出て来たその黒くて小さなお洋服は一体?

「それでは始めます」

「は、はい…」

 そう言って彼女は私の頬に手を添えて来ました。
 たったそれだけ、これから診察が始まるのだというのに、私の心は張り裂けてしまいそうな程に高鳴って居たのです。
 緊張感で心臓が弾け飛んでしまいそう。
 息も荒くなって行って、頭はぼうっとして、もしかすると風邪の度合いが強くなってしまったのかもしれません。

「はぁ…はぁ…」

「お辛そうですね…」

「は、はい…む、胸が苦しくて……それに、頭もぼうっとして…」

 見つめられているだけで、何故か私の胸はどんどん高鳴って行くばかり。
 私も彼女も女だというのに、これではまるで恋焦がれているみたい。

「あらあら…それは…恋ではなくて?」

「こ、こいっ?!」

 ま、まさか私の心を読んで…?
 そういった能力を持つ妖がいると本で読んだ事はありましたけど、まさか彼女が…?
 だったら何故病に伏せる私などの所へ?

「見た所、好いている殿方が居るようで」

「そ、そこまで分かるのですか?!」

「ええ。 手に取るようにはっきりと……あら、貴女が風邪で助けて欲しいと声を掛けてきた、あの若君…」

「っ?!」

 まさか人物の特定まで出来てしまうだなんて。
 でもこれは、もしかして危ないのでは?
 彼女は私など遠く及ばない程の美貌の持ち主。
 そんな彼女が陽観様を奪ってしまったりなんてしたら…

「やめて…」

「…? どうされましたか?」

「やめて……ください…」

 それ以上、声が出ませんでした。
 なんとも情けない事に、私は最悪の事態を想像して、その場で泣き崩れてしまったのです。
 陽観様がいつの間にか彼女の毒牙にかかり、二人でこの屋敷を出て行ってしまう事を恐れたのです。

「……何をやめればよろしいんでしょう?」

「…えっ…」

「私は貴女の診察中なだけですが……診察を止めてしまえばよろしいので?」

「あっ…」

 私はなんという事をしてしまったのでしょうか。
 病に苦しむ私を助けようと駆けつけ、診察してくれていた彼女にやめてくれとは。
 助かりたくないのかと言われてしまえば返す言葉もありません。
 そこでそう言ってくれないのは、彼女の慈悲深い優しさというものなのでしょう。

「……少々熱っぽいようなので、発熱を下げる薬を出しておきますね」

「え…あ…はい…」

「ほら、やはり頭が熱にやられて呆けているのです。 横になって…」

 あぁ、言われてみれば私は病気の身。
 熱が元で頭に血が昇ってしまっていたのかもしれません。
 気付かない内に身体がフラフラしていたらしく、彼女はゆっくりと布団の上へ寝かせてくれました。
 やはり、この方は女性として憧れてしまいますね。

「…どうですか? 少しは楽になったのでは?」

「はい……そんな気が…しま…す…」

 あれ…何故でしょう、とっても眠くなってきてしまいました。
 まだもう少しお話をしていたいのに。
 薄れ行く意識の中で見たのは、何か言い知れぬ、黒い炎のようなものを纏った彼女の姿でした。
 そういえば、名前を聞くのを忘れてしまっていましたね。
 目が醒めたらお聞きしなくては。

「それでは、最後におまじないを一つ…」

 そう呟く彼女の声音は、背筋が凍りつきそうな程に艶やかで、そして甘い色香を帯びていたような気がします。
 ゆっくりと少しずつ断たれ往く意識の中で、最後に感じたのは今まで口にした何よりも甘く胸が焼けてしまいそうな口づけの味でした。
 勿論、私に女性同士で乳繰り合ったりするような趣味などありません。
 けれど不思議と、その甘美な味を拒む事は私には出来そうにもありませんでした。



「……んっ…んぅ…」

 何か、とても甘くて蕩けてしまいそうな夢を見ていた気がします。
 どんな夢だったのか思い出せないのが残念でなりません。
 けれど、きっとそれは私にとって至福と言って良い物だったんでしょう。
 だってこんなにも胸が高鳴って心地が良いのですもの。

「はぁ…はぁ…はぁ……」

 この気持ちをお伝えしたい。
 もし修行の邪魔だと仰るならそれでも構いません。
 けれどこの気持ちを、あの方へぶつけなければ私の気がどうにかなってしまいそう。
 限界まで水を汲んだ器に、更に水を注ぐように私の心は限界などとうに振り切っているのです。

「陽観様…」

 出会って間もない陽観様。
 けれど、この気持ちは覆しようのない真実。
 年齢が多少離れているとは言っても、近くにある村の者でも年の差で所帯を持つ人などいくらでもいる。
 だったら私達もいいではないですか。

「いま…参ります…」

 心の中から溢れて零れ落ちてしまいそうなこの熱く滾るような情愛。
 全てだなんてワガママは言いません。
 ただ一掬いで構わないのです。
 一掬いだけでも、受け取って欲しい。

「……うふふ…」

 ああ、ここまで来てしまいました。
 そっと襖を開けば、布団を敷きぐっすりと眠っておられる陽観様の姿が。
 子供っぽく布団を蹴って外に出てきてしまっているのは、見ていてとても微笑ましく思います。

「失礼します…」

 読んでいた本も開きっぱなしのままで眠っている彼の姿を見ただけで、私の胸の高鳴りはどんどん高鳴って行くばかり。
 ああ、早く思いの限りを彼にぶつけたい。
 少しでも早く愛していますと伝えたい。
 心の中を占めるのは、そんな思いの塊でした。

「……」

 ですが、私とて名家の娘。
 獣や野蛮な方々のように己が欲望に身を委ねたりはしないのです。
 …と、きっと今までの私なら彼に指一本触れる事も出来ないまま静かにこの場を去っていたでしょう。
 けれど今日の私は覚悟が違うのです。

「陽観様…」

 気持ち良さそうに寝息を立てる彼の寝顔のなんと愛らしい事か。
 そっと手に触れると、何かを掴もうとしているのかわきわきと指が動いてとても可愛らしい。

「可愛らしいお顔…」

 今なら誰も見ていないし起きても居ない。
 きっと何をしても気付く者は誰も居ない。
 ならばと考えるのとは無関係に、無意識の間に私は彼の唇をそっと奪おうと…

「……の…」

「…?」

「くす…し…どのぉ……」

「っ?!」

 寝言だと言う事は分かっています。
 無意識だと言う事も私の心はしっかりと理解しています。
 けれど、我慢ならない事もある。
 私を助けてくれたあの薬師様の事を呼んでいるのだろう事は理解できる。
 無意識の内側で彼女を呼ぶくらいなら私は何の文句も言わない。
 寝ぼけていても、尻を揉まれている事だって構いやしない、寧ろ嬉しく思う。
 ただただ、彼が私を彼女と勘違いしている事。
 それがどうにも腹立たしかった。

「……きゃっ?! な、何ですか…?」

 寝ぼけながらも私の尻を揉みしだく彼に憤りを覚えた頃、私の手にある変化が起きました。
 周囲に燃えるような物は全く無かったというのに、私の右手が突然燃え出したのです。
 いつも見慣れた炎を赤色と呼ぶのなら、この炎は青色と呼ぶべき怪しい灯をしていましたが。

「……わ、わかる…わかります…」

 この炎の正体が何なのか、私は存じ上げません。
 けれど、なぜだか不思議とこの炎の使い道だけは、まるで幼い頃から何度も教わっていたかのようにすんなり思い出す事が出来ました。
 使い方自体は至極簡単。
 されど扱いには注意されたし。
 これは普通の炎にあらず。
 これは心の炎の灯なりと。

「……」

 無防備に曝け出された陽観様の胸に、一筆作るように指を走らせる。
 そして刻み込みたるは私の名前。
 炎は彼の身を焼く事も焦がす事も無く、何事も無かったように炎は消えていく。
 後に残されたるは、一つの煩悩に支配された娘が一人。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 あまりに無警戒で無防備で無遠慮なこの男を貪りたい。
 心の満たされるがままに犯し犯され尽き果てるまで狂いたい。
 絶対に誰にも渡したくない、私以外の女性との関係など全て焼き切ってしまいたい。
 あの薬師様なんかは最大の障害だ、彼を狙うと言うのなら刺し違えてでも奪い取って見せる。
 あぁ、今はそんな未来の話をしている場合ではないだろう。

「陽観…さまぁ…」

 彼の身体に触れれば触れる程、胸の高鳴りは増していく。
 ああ、もっとこの高鳴りの更にその先を味わいたい。
 私の喉は、いや心は最早砂漠の砂よりも彼の全てを渇望している。
 愛を言葉を仕草を匂いを味を形を舌触りを噛み応えを触り心地を。
 目で耳で鼻で舌で喉で歯で肌で指で胸で腹で腕で足で尻で股で全身で。
 私のありとあらゆる全てが、彼のありとあらゆる全てを欲しくて欲しくてたまらない。

「はぁぁぁ……れろっ…っ!!!」

 そっと彼の服を脱がし、滲んでいた汗の一滴を舌ですくい取って飲み込む。
 たったそれだけだというのに、私は全身が痺れる程の満足感に身体が震える。
 もっとこの感覚を楽しみたい、もっとこの刺激を味わいたい、もっとこの幸福に満たされたい。
 きっと私は壊れてしまったのでしょう。

「はぁ…はぁ…っ?! っ〜〜〜?!!」

 私の舌の感覚に釣られてなのでしょうか。
 陽観様の袴の一部が盛り上がって来て、それに気付いた私が触れると頭の中が燃え尽きてしまいそうな刺激に襲われました。
 私とて若輩者ながら乙女の端くれ、男性との経験はなくとも形くらいは知っています。
 触った事も無ければ見た事も無く、学問書に少し書いてあった程度でしか知らない。
 けれど、私が今、袴越しに触れている物は紛れもなく男性の象徴。
 女性にとってはどう逆立ちしたって手に入れる事の敵わないものが、私の手に触れられてびくんびくんと震えているのでした。

「うふふっ…もうこんなにお元気に…はうっ?!」

 陽観様の袴を脱がして行くと、隆起した場所からはとても大きく逞しい男性器が顔を覗かせているではありませんか。
 それどころか袴を全部脱がして飛び出してきた逸物は跳ね上がったかと思えば私の顔へ一撃。
 堅いとは言っても男性器、痛いとかそういう感覚はありませんでしたが。

「っっ〜〜?!?!」

 逸物から漂う独特な匂いは、私の鼻を…いえ、脳まで焼いてしまうような強さを帯びていたのです。
 これでは陽観様が他の誰かの毒牙にかかってしまうのは時間の問題。
 ならば私がこの場で頂いてしまうのが一番手っ取り早く、かつ安全なのでは?

「……い、いえ…待つのです私…陽観様は修行の身…私がその修行を壊すような事をしては…」

 心のどこかに残されていた私の良心が自分の最期の堰となってくれていたのは良いですが、その堰はあまりに脆く、そして小さかった。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 視線は今も血が滾り立つ男性器から離す事が出来ず、呼吸は荒さを増し、無意識の内に顔を近づけていく。
 びくんびくんと揺れるソレが微かに私の唇に触れてしまった時、私の心の中で感情の堰は虚しくも崩れ去った。

「はむっ! 〜〜〜〜〜!!!」

 一気に入れれるだけ口の中へ彼の逸物を招き入れ、もとい捻じ込んだ。
 次の瞬間には、むせ返る程のオトコの味と匂いと刺激が私の意識を蹂躙する。

「れるっ! じゅるるっ! じゅぽっ!じゅぷっ! ぷぁっ! んんんんぅ!?」

 舌で形を確認するように何度も舌先を往復させ、射精感を煽る。
 口の中全てを、男性器を喜ばせる事だけに集中して吸い上げる。
 刺激が全てを支配するように、頭全体を使って何度も上下に動かす。
 どれもこれも、学問書や御伽草子に出てくるはずもない知識ばかりだ。
 私が知り得るはずもない技術の数々を、何故か私は次々とやってこなしてみせている。

「んんっ?! じゅるるるっ…あむあむっ…」

 舌がある兆候を感じ取った。
 限界まで膨れ上がった逸物の先端が、我慢の限界を訴えるようにびくんびくんと震えている。
 それではトドメと参りましょう。

「んふふ……んっ…?!」

 先端の出口…ここは何という場所なんでしょうか。
 まあ仮に穴とでも言っておきましょうか。
 その穴へ舌を捻じ込んで、必死に蓋をしようとしているのをこじ開けてしまいましょう。
 無理矢理こじ開けた先には、我慢しようと凝り固まっていた精液が。
 けれどもう我慢する必要はないのです、どうか私に…爽姫のお口に注いでください。

「っ?!! んっふぅぅぅぅ!!」

 来たぁ!
 非情に粘性が高くドロドロしていて喉が焼けるような熱さとむせ返るような強い匂いが口の中をあっと言う間に蹂躙していく。
 一気に出過ぎたからか、喉から昇って来た精液が鼻から垂れてしまう始末。
 けれどそれも、手で拭って口に咥えてしまえば同じ事。
 後はこれを美味しく…おいしく……オイシク…

「んっ…んっ……ぷはぁぁぁぁ……ぁ…ぁはっ…」

 ゆっくりと時間をかけて、精液を呑み込んでいく。
 喉に引っ掛かる?熱くて飲めない? そんな事は全くありません。
 私の中に少しずつ少しずつ、陽観様が入り込んでくる。
 これを至福と言わず何と言うのでしょう。
 少々壊れてしまうくらいの嬉しさも、きっと笑って忘れてくれる事でしょう。
 あぁ、その笑顔が現実の物となってくれれば…そう願わずには居られません。

「けぷっ…あらいけない…」

 一気に飲み込み過ぎたからでしょうね、こんなものが出てきてしまうのは。
 欲しがりなのは良い事だが、欲張りなのはいけない事だとどこかで聞いた覚えがありますが、そんな事は今の私には関係ないのです。
 欲しがりになって、欲張りになって…そうまでして彼を欲して何が悪いと言うのでしょう。
 彼が私を拒みましたか?私が彼を諦めましたか? いいえ、断じて否!

「ふふふ…まだこんなに大きい…さぁさ、次はこっちですよ」

 お口で気持ち良くするのもここまで。
 次の段階へ進みたいのです。
 着物を適当にめくり上げて、私の大事な場所をお見せしましょう。

「ほら…さっきのでこんなに濡れてしまったのですよ? 御馳走を前にした獣みたいに涎を垂らして…はしたないとお叱りになりますか…?」

 眠っているのですから、返答がある訳もなく。
 つまりは陽観様もお許しになっているという事なのです。
 え、ゴリ押しに過ぎるですって?恋愛とは時に無理を通さなければ意味がないのでしょう?

「さぁさ…んっ…しゅごっ……あ、あわせただけにゃにょにぃ…」

 私と陽観様の、初めての繋がり。
 あぁ、一目見た時からずっと欲しかったものを、遂に手に入れるのですね。
 私と彼の愛を!私の純潔を贄として!
 あまりの刺激に舌が回らなくなったりしていますが、そのような些事は捨て置きます。

「わたひっ…こりぇれ……おとにゃに…」

 ゆっくりと腰を落としていく。
 もう彼の先端は私の舌のお口の中。
 既に一回出しているからか、ぬるぬると滑って私の中に入り込んでくる。

「っ〜?! ……くっ…ふぅっ…」

 書物や話で、男女の初めての性行為とは痛い物だと知っては居ました。
 居ましたけど、まさかここまでとは。
 あぁ、これが書に聞く「初めての証」というものなのですね。
 少し前から血が出る事があるのは知って居ましたけれど、それとは少し色味が違うような気が…

「……んっ…キツ…い…?」

「っ?! よ、陽観さま…?!」

 いけない、目を醒ましてしまった。
 これからが良い所だというのに、なんと間の悪い。
 …あ、でも目が醒めて私の中の逸物が少し大きくなったような?

「その声は…爽…ひ…め……っ?! う、うわぁぁぁ?!」

「ひゃんっ! どくどくきてっ…はいってきてますぅぅ!!」

 あぁ、あんなにも強くつよくツヨク求めた陽観様のが、こんなにもドプドプと膣内に…
 こうも注がれてしまってはすぐにでも赤子が出来てしまいそう。
 きっと私の子宮も喜んで注がれた傍から飲み干しているのでしょう。

 それにしても、陽観様は何に怯えているのでしょうか?
 男子の出すにはあまりにも弱弱しくて女々しい悲鳴まで上げてしまって。

「あはぁぁ……んっ…どうされたのですか、陽観様…?」

「っ?! ……そ…そなたは…爽姫…なのだよな…??」

 おかしなことを仰る陽観様。
 私を誰と見間違えたのでしょう?
 もしや、あの薬師様だったりするのでしょうか?
 さっきも寝ぼけて薬師様と勘違いしながら私のお尻を揉んでいましたものね?

 あら?

(赤い眼に白い髪、耳も尖って胸も大きく…これが…私…?)

 化粧台の鏡に映る私の姿は、いつもの私とは全く違っていたのです。
 黒く澄んでいた瞳は、今では鮮血のように紅く染まり、艶やかさはそのままに髪は白くなっておりました。
 よく見れば、吐息も先程私の手に現れた青い炎が浮かび上がって、その姿はまるで伝説にある龍神様のようでした。

「爽姫…なぜそのような姿に…」

「それは…っ! んひぃ!」

 もう少し繋がって居たかったなんて考えは即座に捨てて、陽観様から離れなければという意志に反射的に従って彼の上から急いで飛び退く。

「うぁっ…そ、爽姫…?」

「はぁ…はぁ…み……みないで…くださいませ…っ! あぁぁ!!」

 身体…主に下半身…に強烈な痛みとも快感とも言えるような刺激が頭の中まで狂ってしまいそうな程に強く私の身体を蝕んで来た。
 すぐに離れていなければ、きっと繋がっていた陽観様の逸物を膣が挟み潰していたかもしれない。
 実際にそんな事が出来るのかどうかは分からないしやってみたくもないですが、一つだけ言えることが。
 私、このまま死んでしまうかもしれません。

「い…いたい…痛いいたいイタイイタイいたい…」

「爽姫! 気をしっかりと保って!」

 さっきの陽観様との初めてよりもずっとずっと痛いこの感覚は、きっとついさっきまで欲望の限りに陽観様を辱めていた私への天罰なのでしょう。
 御仏様は私達の行為をお許しにはならなかったのです。
 修行中の身でありながら、女を抱いてしまった僧。
 修行僧の心を乱し、欲望の赴くままに性欲を貪った姫。
 双方の許し難い行為に下された天罰。

「陽観…さ…ま…」

「っ?! 爽姫、足が…」

 足がどうしたと言うのでしょう?
 確かに激痛が走っているのは足の方でしたけども。

「あ…あし……っ?! こ、これは一体…?」

 見れば、足が蛇の身体のようになっているではないですか。
 一体いつの間にこんな体になってしまったのやら。
 それに、足がこうなってしまったと気付いた瞬間には足の痛みはどんどん消えて行きました。

「痛みが…消えていく…?」

「っ!? よかった…あのまま死んでしまうかと思いましたぞ…」

 私の手を取り涙を流す陽観様。
 きっと彼がこうして手を取っていてくれなければ、本当にさっきの痛みで死んでいたかもしれない。

「それにしても、その姿は…」

「同じような姿をした者達を見た事がありますな……龍を…伝承ではなく魔物娘の…そう、龍の娘を祀る神社の巫女は皆そんな姿をしていたような」

 男性を容易く籠絡出来てしまうだけの美貌に、長く白い髪、赤い瞳に蛇の身体。
 何人か居た巫女全てがそんな容姿をしていたんだそうな。
 修行中の身でなければ一人くらい抱いていたかもしれないなんて冗談を言う物ですから、お仕置きをしてしまいましょう。

「陽観様……私との事をお忘れですか…?」

「いでっ! う、うおぉぉぉ?!」

 尾の先を彼の足に絡ませて、そのまま一気に彼をぐるぐると回して巻きついていく。
 昨日までのか弱い少女だった私では、こんな真似はどう頑張ったって出来なかった事でしょう。
 けれど、この身体を手に入れた私はどうやら非力ではなくなったみたいでした。

「そ、爽姫っ?! さっきのはほんの冗談で…」

「その冗談で、私がどれほどまでに傷ついた事か…お分かりですか?」

 縄を固く締めるが如く、彼の身体の逃げ道が無いほどにしっかりと巻き付いて動きを封じてしまいましょう。
 身体を出来得る限り、望むがままに密着させて、肌と肌を触れ合わせて感じあうのです。

「すまなか…うぁっちぃ?! ほ、炎っ?!」

 抱き寄せて互いを最大限に感じあって、私は彼の、彼は私の思いを受け取る。
 きっと分かってくれるでしょう、今の私の感情を。

それは、怒りと言う名の青い炎。
嘘つきな貴方の身を焦がす、制裁と願いを火種とした私の祈り。
どうかお願いします、私の前で陳腐な嘘など止めて頂きたいのです、ただ愛して欲しいのです。

「また嘘をつかれて…熱いのは炎ではなくこちらでしょう?」

「うぁっ!」

 隙間なく絡みつく蛇体の中で、一か所だけは外へ出るよう避けていた箇所があるのです。
 さっき私の中へ二度も出したというのに、まだまだ満足していないと自己主張してくる逸物が。
 炎を纏ったままの手で触れてあげれば狂ったようにびくんびくんと震えて可愛らしい。

「私を求めてこんなにも膨れさせて…」

「い、今触られたら…うあぁぁ…」

 少し手で擦ってあげただけで透明でネバネバした何かが垂れてきた。
 これはきっと、彼が必死に我慢している証拠なのでしょう。
 でしたらその我慢、容易く壊してしまいましょうか。
 私達の間に、嘘偽り隠し事、耐え忍ぶ事など必要ないのですから。

「さぁさ、まずは一度出してくださいな…ほら、しゅっしゅっ」

「う、うあぁぁあぁ…」

 逸物だけでなく身体全体がぶるぶると震えて。
 きっとすぐにでも果ててしまいそうなのですね。
 それなら、果てていただきましょう。

「…えいっ!」

「ひぎぃぃぃっ!?!」

 身体をずらして、尻尾の先端を彼の逸物の先端へと捻じ込む。
 くすぐっていただけならまだしも、いきなり尻尾を突っ込まれては彼も我慢が出来なかったようで。
 白くてネバネバとしたものが一気に噴き出してきました。

「っく……はぁ…はぁ…も、もう…」

「あら? まだまだお出しになれるようですね?」

「え…あ…ちが…」

 捻じ込んだ尻尾をすぐに抜いてあげると、まだ欲しいと訴えかけてくるようにびくんびくんと跳ねて。
 この要望に応えないなど、女性として、男を愛する者として有り得ません。

「では、お次はこちらに…」

「ままま、待ってくれ!」

 あら残念、もう一度繋がれると思っていたのに。
 けれど、愛する方が待ってくれと頼んでいるのです、待たない訳にはいきません。

「はい、どうかなさいましたか?」

「爽姫…お主は、本当に私で…こんな男でいいのですか?」

 なんだ、そんな事でしたか。
 私は、陽観様だから良いのです。
 それ以外に答えが必要でしょうか?

「本当なら、修行中の身故こんな事をするのはおろか考えるのですら御法度の僧だと言うのに」

「仕方がありませんよ。 これは私が我欲に負けて貴方様を貪っているに過ぎません。 不可抗力というものです」

「しかし…」

「罰は既に受けました。 だからこそのこの我が身と考えています。 けれど、叱られても一度じゃ聞き分けない悪い子なんです、私…」

 ですからその悪い子は、お叱りを受けてもなお、貪る事をやめたりはしないのです。
 誰かを愛する事をやめろと言われて、愛を捨てれる人がいるでしょうか?
 もし居たとすれば、私はその者を蔑み非難しましょう。
 誰かに言われて捨ててしまうような愛情は、愛情と呼ぶべき物ではないのです。
 好意だとか興味だとか、もっと軽い感情でしかなかったのですから。
 それを愛情だと勘違いして過ごしてきたアナタの間違いだと、私は責めましょう。

「こんな悪い子でも、貴方は愛してくれますでしょうか?」

「っ?! も、勿論だとも…」

「っ?!!」

 愛している。
 その一文が、その一言が欲しかった。
 口にするだけなら簡単な事でしょう。
 けれど、受け取る私の心には、そのたった一言は私の心を満たすのに十分な一言だったのです。

「その言葉、嘘偽りはございませんか…?」

「無いとも!私は爽姫、そなたが欲しい!」

「っ!?! あぁ…嬉しい…」

 嬉しすぎて、その場で子供のように泣き崩れてしまう事をどうかお許しください。
 愛する方に愛してると言われ、こうして蛇体の拘束から腕だけでも抜け出してまで抱きしめてくれる彼の腕は、とても暖かでした。

「私、嫉妬深い女かも知れませんよ?」

「構わないとも。爽姫だけを愛せばいい!」

「独占欲の強い女かもしれませんよ?」

「それは困るかな… 私だって欲深な生臭坊主かもしれませんからな」

 そして最後に…

「私、嘘は嫌いなんです…」

「嘘になどならないですとも!」

 ぎゅっと抱きしめてくれているだけで、その言葉が真実であると、私には分かる。
 心が、覚悟が籠って居なければこんな言葉、口にする事も出来ないでしょうから。
 あぁ、こんな事を言えてしまう彼になら、きっとお父様もきっと認めてくださることでしょう。

「陽観様…」

「爽姫…」

 互いを身体中で感じ合い、互いの名を呼んだ二人はそのまま見つめあい…
 そして、幸せな口づけを交わすのです。
 互いの息の続く限り、舌を絡ませ舐めまわす。
 ゆっくりと溶けてしまっているのではないかと思う程の錯覚に身を焦がし、やがて互いにキスを続けるよりも呼吸をする方の優先度が勝りどちらからともなく唇を離すのでした。
 互いが互いを蹂躙しあっていたからか、二人の繋がりを惜しむ唾液の橋はとても粘性が強かったような気がした。
 確認する間も無くプツリと切れてしまった橋は、もっと互いに交わろうと訴えるかのよう。

「はぁ…はぁ……陽観さまぁ…もう…よろしいですか?」

「はぁ…はぁ……うっ!」

 さっきはお預けを喰らってしまいましたけど、今回は待ったなどありません。
 身を捩り丁度いい位置まで動いてしまえば、後は互いのを触れ合わせるのみ。
 ほんの少し触れているだけだというのに、くちゅくちゅと淫靡な音を立てて逸物に吸い付こうとするのを見ていると、まるで別の生き物みたい。

「挿入致しますよ? んっ……ふぁ…あぁぁぁ!!」

「し、締まるっ…」

 二度目の挿入は、気持ち良さがこみあげてくるのみで、最初のような痛さは全くありませんでした。
 そのままずんずん飲み込んで行って、ついには根元まで全てを呑み込んでしまう。
 一番奥で逸物の先端が、私のとってもとっても大事な所に触れているのを感じると、ついつい彼ともっと身体を重ねたいと思う本能から身体を締め上げてしまいます。
 そして、ここである事に気付いたのでした。

「…あら? えいっ」

「ふぐぁ! い、一気に締まって…」

「……えいっ!」

「うあぁぁぁぁ!!!」

 どうやら蛇体に力を入れると、膣内もきゅうきゅうと締まって彼の逸物を苦しめている様子。
 膣肉で締め付ける度にびくんびくんと震え、反射的に腰を振ってしまっているようでした。
 それほど気持ちいいとは、私としても喜ばしい限り。
 けれど、彼が苦しむその姿を見ていると、どうしても沸き立つ衝動があるのです。
 それは嗜虐心とでも言えば良かったのでしょうか。

「えいっ!えいっ!」

「や…も…らめぇぇ!」

 子供みたいに悪戯っぽく笑いながら、膣を締め付け彼のモノを苛め抜く。
 膣内で震えるのと同じようにぶるぶると震えながらより一層抱きしめてきたかと思えば、そのまま果ててしまったご様子。
 あぁ、また私の中にどくどくと彼が流れ込んでくる。

「うふふ…まだ動いても居ないのに…」

「はぁ…はぁ……えっ、あ…ちょ…ま」

「待ちませんっ!」

 私の笑顔で何をするのか悟ってくれた彼の表情が青ざめて行くのは、見ていてとても気分がいい。
 とは言っても、それで加減をしてあげられるほど私は優しくないのですが。
 どくどくと精を吐くのもお構いなしに、体勢を変えて彼の上に乗るようにして、腰を繋がりが解けてしまわないギリギリまで抜いて、そしてまた一気に飲み込む。

「ふあぁぁぁ!! しゅっごいっ! ごちゅんっってぇ!」

「い、いってる!いってるから…あ…うあっぁぁぁあ!!」

 子宮の入り口にごつんとぶつかって、押し拡げようとする逸物が私の思考を狂わせる。
 極楽の快楽を噛み締める間にも、私の膣肉は彼の肉棒を味わおうとぐちゅぐちゅ音を立ててむしゃぶりつく。
 彼の方も果てている最中の刺激に酔い痴れて可愛らしい悲鳴と一緒に一生懸命腰を振って来た。
 私を持ち上げようとする腰の動きに、きっと私の子宮はぐんぐん降りて来ていた事でしょう。

「れろれろ……はむっ! あむあむ…」

「あひぃ! そ、そうひめぇ! いまそんな…甘噛みぃひぃ!!」

 びくびくと震える彼の肌に、蛇の身体となったからか少し長くなったような気のする舌を這わせて更なる快感を助長する。
 それだけでは足りないだろうと、私は彼のぴくぴくと跳ねる首筋へ噛み付く。
 勿論、異国の伝承に聞く吸血鬼のような事は致しません。
 ただちょーっと、私の炎を刻み込んで、快楽に敏感になってもらうだけです。

「んぅ…ちゅるる……あむ……れるれる……ぷぁ…どうですか?私の炎のお味は」

「はぁ…は…あぁっ!! うあぁぁぁ!! そうひめぇぇ!!」

 名前を呼びながら、ぎゅっと抱きしめながら、極楽浄土を味わいながら、私の中で果ててびくんびくんと震える彼は、私の心を十二分に満たしてくれる。
 身体も心も子宮も魂も、身体を重ねて愛し合い、共に狂ったようにまぐわって、快楽と言う海に溺れて行く。
 これほど幸せな事があるだなんて、十数年生きただけの私には少し贅沢が過ぎる気がします。

「そう…そ…そうひめっ……すき…すきだっ……あいして…あいしてるぅっ!!」

「っっ!?!? んにゃぁ?!! よーかんさまぁ!!」

 腰を振って捻って捏ね繰り回して締め上げて、あらゆる角度から責め立てる私でも流石に彼からの責めには対応が追い付きませんでした。
 いきなり私を抱きしめていた手を滑り落としてお尻を乱暴に掴んだかと思えば、強引に身体を動かして腰を深々と突き上げてくるんですもの。
 頭の中がバチバチとして狂ってしまいそうな程気持ちいい責めに、私は大満足でした。

「こ…この……このままっ…なかにっ! よいか…よいかぁ!」

「はいっ! どぷどぷって…あっつあつのをおそそぎ…んひっ! くらひゃいぃ!」

 さっきまで散々どくどくと精を吐いていたというのに、今更許しを乞うなんて、なんて可愛らしい。
 けれど、それと一緒に膣内で暴れる彼の逸物が一段と大きくなっているのも感じられた。
 いったいどれだけの精が寄り集まれば、これほどまでに大きくなるのか。
 そしてそれと一緒に、これだけ集められた精が放たれれば私の膣はどうなってしまうのか。

「で…でるっ! でるでるでる…うあぁああぁぁぁ!!」

「あっはぁぁ!! きて…きてまひゅっ…どくどくぅってぇぇ…いちばん…おくまでぇ!」

 最後の仕上げとばかりに互いに強く腰を振って、限界を振り切った所で互いに腰を一番深くまで突き入れる。
 限界を超えた逸物は大きく脈動したかと思えば溜め込んでいた精のありったけを私の一番奥へと吐き出した。
 吐き出している間も腰を一番奥へ押し込み続けていたのですし、これはきっと子宮の中を膨らむ程の精液が満たしている事でしょう。
 私の潮と一緒に溢れだしてくる精液がちょっともったいない。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「はぁ…はぁ……どくどくって……あはぁ…」

 果てた時の余韻がこんなにも陶酔させる心地の良い物だなんて。
 これはきっと、陽観様も極上の心地を味わっている事でしょう。
 だって、こんなにも安らかで愛嬌に溢れた表情をしているのですもの。

 ではこの安らかな表情を一気にブチ壊して差し上げましょうか。

「陽観さま…? 蛇の交尾をご存知ですか…?」

「はぁ…はぁ……へ、蛇の…? いや、詳しくは…」

「蛇の交尾は…巣穴の中に何十という番が寄り集まって一斉に交尾をする者もいるそうです」

「な、なんじゅう…まさかっ?!」

 いいえ、私は蛇ではなく一人の女性ですから。
 そのような獣畜生のように、何匹もの蛇らに貴方様を馳走しよう等とは毛ほども思っておりませんとも。
 もし不逞の者が居たとしたら私の炎で焼き殺してしまいましょう。
 私は貴方様だけのもの、そして貴方様は私だけのものなのですから。
 …あぁ、でも結論を空回りなりにも想像して青ざめた顔もこれはこれで可愛らしい。

「いえいえ。 そちらではございません」

「…? で、では…」

「蛇というのは愛に貪欲な生き物でして……何日間もかけて交尾を行うものだそうです」

「な、なんにちも?!」

 ふふふ、耳でこれからされる事を囁いてさしあげるだけで一気に血の気が引いたような顔をして、なんと愛らしい事でしょう。
 …あら?

「あらあら? 怯えている割には、私のお腹のものはお元気なようですが」

「そ、それは…あぅぅ!!」

 さっきあれほど出したというのに、私の膣内にまだ収まっている彼の肉棒はだんだんと大きくなってきていました。
 これからもいっぱい絞られると聞いて元気になってくれたのでしょう。
 ちょっと膣肉を締めて刺激してあげるだけでびくんびくんと震えてなんと可愛らしい事か。

「さぁさ、お夜伽はまだまだ始まったばかりですよ?」

「あ…あぁぁ…あぁぁぁぁ…」

 第二回戦の幕開けと行きましょう。
 夜はまだまだ長いのです。
 翌日になろうが、その翌日になろうが、更に日が昇ろうが、私達は止まる所を知らないのですから。


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「―――…そんな事も、ございましたね」

「あの時は流石の私も死ぬかと思いましたからな」

 あれからどれほどの年月が巡ったでしょうか。
 三度桜が咲いて散った頃から、数えるのをやめてしまったような気がします。
 だって、あの時よりも激しく長く愛し合う事なんていくらでもあったのですから。

「あらあら、またそんな御冗談を仰って…」

「火っ! その炎はやめてくだされっ!」

 私はすっかり、この炎の力を手にしていました。
 これが私の心の怒りや嫉妬を糧として燃えている事も、陽観様にご紹介頂いた神社の巫女や神主様にお教え頂きました。
 ただ、あまり乱用するのはよくないとも仰っていましたけれど。
 だって…

「いけません。冗談を言った罰を与えましょう」

「あっつ!あつ…あひぃぃ!」

 手に灯した炎を、予め逃げられないよう尾で巻き付いておいた上で彼の腿へ這わせる。
 ただそれだけで彼は服を精で濡らしてしまうのです。
 あぁ、また服を洗ってくれる女中の方々の視線が刺さるのでしょうか。

「我慢せずとも良いのですよ? さぁ…」

「あぁぁ…けれど夜には御父上との大事な話が…」

「あら、そうでした…私はなんて事を…」

 今更嘆いても仕方ありません。
 彼は股のものを大きくして、私もまた股を濡らし…そしてそのまま父上様との話し合いに臨まなくてはいけない。
 父上様との大事な話し合いに臨むか、陽観様との逢瀬に身を任せて酔い痴れるかの二択しかないのです。
 ちなみに、大事な話し合いの内容は分かり切っている。
 陽観様を我ら爽の者として招き入れるかどうかの大事な話し合い。
 つまり、陽観様を婿として迎え入れるかどうかという大大事でありました。
 何があろうと放り出して良いお話ではありません。

「日暮れまで…では私も陽観様も満足が行きませんし…」

「でも、今我慢するのも無理という話 ……爽姫…良いかな?」

 あら、これは珍しい。
 まさか陽観様からお誘いしてくれるなんて。
 これは応えなければ女が廃るというものです。
 何より、私の手を取って真摯に見つめてくるその顔だけで、私の中に燻る炎は燃え上がったのでした。
 ごめんなさい、父上様。
 けれど、聡明な父上様であればお許し下さると、私、信じております。

「はい、もちろん…」



結局、私達は夜になっても止める事は出来ず、翌日に父上様と母上様に怒られてしまいました。
けれど婿入りのお話についてはお二人とも快く歓迎してくれたのです。
こうして、晴れて私こと爽姫は陽観様を婿として迎え入れ、結婚と相成り幸せな家庭を築く事となっていくのでした。

「陽観様…」

「なんですかな?」

「私、嘘は嫌いなんです…この愛、嘘にはしないでくださいね?」

「誓いましょう…」

おわり
18/05/18 13:35更新 / 兎と兎

■作者メッセージ
だいぶ久しぶりの投稿となってしまいました。
その代わり、力の入った作品にはなっているはずです。

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