言葉足らずの代償
「あぁ神よ……彼とここ数日はヤっておりません…寂しさで股から涙が溢れてしまいそうですわ…」
登場早々、危ない発言をする女性が居た。
シスター服を身に纏ってはいるが、神へ祈りを捧げてはいるが、教会に居るが、彼女はここのシスターではない。
ダークプリースト、れっきとした魔物娘である。
この祈りにしても「神への近況報告」とかではなく「彼とシたいです」という愚痴めいた物だろう。
まぁ、彼とは不仲と言う訳ではないのだが。
その理由と言うのが…
「おや?朝から神へのお祈りですか、シスター・マリア?」
「み、ミーシャ神父?!」
奥の部屋から出てきた神父と顔を合わせた途端に、自分の愚痴のような告白を思い出して顔を真っ赤にしてしまう。
俯いて何も話せなくなってしまうマリアの頭を、ミーシャは優しく撫でてやる。
「何か話せない事でもありましたか?私で良ければ力になりますよ?」
「実はその…」
言えない……近々誘われたサバトに一緒に行かないかなんてとても…
と思うのはマリア。
「……?」
そういえば悩んでいると言ってましたし、悩みを解決する一助の為にも今度のミサに誘ってみましょうかね…
と思うのはミーシャ。
「…分かりました。お手伝いしましょう、他でもないマリアの為ですから」
「えっ…?………いいんですか?」
「はい。私はいつも行ってますよ?」
「いつもっ!?」
純朴で女遊びなんて言葉とは無縁そうなミーシャ神父がいつもサバトに参加を?!
いやでも初めて性行を行ったあの時に彼は童貞だと言っていましたし、魔女やバフォメットの匂いもしなかった。
いつも行っているなんて、正直言って見損ないそうです。
「い、いつも行っているんですかっ?!」
「…?え、えぇ……いつも10人くらいで集まってますよ?」
「10人も?!」
さっきから何故そんなに彼女は驚いているのでしょう。
何もミサを体験したことが無いわけでもないでしょうに。
「だ、だったら…ヤりかたもさぞ詳しいんですよね…?」
「え?えぇ…そりゃまあ、神父ですから…」
「神父関係あるんですかっ?!」
神父の肩書きをまさか自己保身の盾に使うだなんて!
でも、順調に堕落への道を辿ってくれているようで嬉しくもありますね。
その調子で堕落して、どんどん私と致してくれる事を願いましょう。
「なるほど…神父だからこそ出来るんですか…」
「普通の人がやってもただの儀式みたいな物ですからね。真似事みたいな物でしょうか」
真似事?!
神父様だからこそ、本当のセックスの仕方を知っているという事ですか?!
これは、また致す時に本当のセックスとやらを教えて貰わねば。
「ふむ…そうやって数々の少女を泣かせているんですね…」
「少女…?老若男女問わずですよ?」
「ふぁ?!」
サバトに参加する老人なんかも居るとは聞きましたが、まさか参加者の方々まで守備範囲に収めているだなんて…
しかも泣かせている事に関しては否定しないという事は、魔女や他の使い魔、果てはバフォメットに至るまで全てを満足させたという事?!
私とのセックスの時は一杯一杯な感じでしたけど、もしかして演技?
「当たり前じゃないですか…儀式に若いも何も無いですよ?」
「そ、そうですよね…」
まさかここまでの方だったとは……これは見直すべきなのか、はたまた見下すべきなのか…
「さて、話は戻りますが…」
「あっ!行くんでしたよね?!支度は必要ないですしすぐにでも行きましょう!」
「え?用意しなくていい訳ないじゃないですか…」
慌てん坊なのは結構ですが、ミサとは言ってもその場ですぐ始められるような物じゃ無いんですから…
曜日は決められていますし時間も決められていて、場所の指定もだいたいは決まっていますし用意する物も様々。
事前に参加者の方々を誘致しておく必要もありますし、場所の確保も時の運。
それを簡単にはい行きましょうという事は、準備が出来ていたのでしょうか?
「そ、そうなんですか?!いつも向こうで用意してくれていたのでてっきり…」
なるほど、どこか別の教会でのミサに参加するという事でしたか。
なら確かにこちらが用意する必要はないですね。
「あぁ、なら大丈夫ですね」
「ですよね。彼女たちなら全部上手く用意してくれているでしょうし」
彼女たち……向こう側の教会のシスターたちの事でしょうか?
まあ用意するだけなのに男も女もないでしょう。
「さて、それじゃ行きましょうか」
「はい……って、やけにノリノリですね神父様…」
「そうですか?やはりいつもする側だった立場だから、される側になる事に期待してるのかもしれませんね」
す、スる側?!いつも幼くいたいけなあの子たちをヒィヒィ言わせてる側という事ですか?!
それを今度はサレる側になってとことん絞られるつもりでいると。
そんな「今日は気分転換に料理でもしますか」みたいなノリで言われても!
「(パンを)千切った物と一緒に食べると美味しいんですよね…(ワインが)」
「ち、契った者と一緒に食べる?!それはつまり私って事ですかっ?!」
「ま、マリアさん?!何もマリアさんの事を言ってる訳じゃないですよっ?!」
いきなり何を言い出すんでしょうか、この人は。
驚きすぎて私の寿命が少し縮んだかと思いましたよ。
「なっ!ま、まさか私以外とも誰か関係を持った女性が…そんなぁ…」
「落ち着いて!私はマリアさんだけを愛していますから!」
「本当ですか……?」
「ええ、もちろんですとも」
抱擁してくれるのはとっても嬉しいですけど、手が震えているのは何故なんでしょう?
きっと心に疚しい物を抱えているからなんでしょう…
けど、妻として彼を信じないなんてどうかしてる!
ならば彼を最後まで信じて愛を貫くのが妻としての私の務め!
「…分かりました…では、行きましょうかサバトへ」
「えっ?」
「えっ?」
どうしてそんな反応するんでしょう?
今二人の考えが完全にシンクロした瞬間であった。
「えっ?あのっ、サバトの常連で参加者の悉くを満足させているって…」
「えっ?いやいや、マリアさんが最近悩んでそうな顔してたからミサに誘おうと思ったら貴女の方で準備してるって…」
『……あっ…』
それから、お互いが目を合わせて会話できるようになるまで二か月ほどかかったんだとか。
マリアにとってはその二か月の間もセックスレスは続き、話せるようになる頃には既に野獣のような眼光を瞳に湛えていたとかなんとか。
皆さんも会話の中で誤解が生まれる事もままございましょうが、私から一言プレゼント。
「それがどうした」
あまり過度に信用するのもアレですが、多少の事はこれでどうにか乗りきっちゃいましょう。
おわり
登場早々、危ない発言をする女性が居た。
シスター服を身に纏ってはいるが、神へ祈りを捧げてはいるが、教会に居るが、彼女はここのシスターではない。
ダークプリースト、れっきとした魔物娘である。
この祈りにしても「神への近況報告」とかではなく「彼とシたいです」という愚痴めいた物だろう。
まぁ、彼とは不仲と言う訳ではないのだが。
その理由と言うのが…
「おや?朝から神へのお祈りですか、シスター・マリア?」
「み、ミーシャ神父?!」
奥の部屋から出てきた神父と顔を合わせた途端に、自分の愚痴のような告白を思い出して顔を真っ赤にしてしまう。
俯いて何も話せなくなってしまうマリアの頭を、ミーシャは優しく撫でてやる。
「何か話せない事でもありましたか?私で良ければ力になりますよ?」
「実はその…」
言えない……近々誘われたサバトに一緒に行かないかなんてとても…
と思うのはマリア。
「……?」
そういえば悩んでいると言ってましたし、悩みを解決する一助の為にも今度のミサに誘ってみましょうかね…
と思うのはミーシャ。
「…分かりました。お手伝いしましょう、他でもないマリアの為ですから」
「えっ…?………いいんですか?」
「はい。私はいつも行ってますよ?」
「いつもっ!?」
純朴で女遊びなんて言葉とは無縁そうなミーシャ神父がいつもサバトに参加を?!
いやでも初めて性行を行ったあの時に彼は童貞だと言っていましたし、魔女やバフォメットの匂いもしなかった。
いつも行っているなんて、正直言って見損ないそうです。
「い、いつも行っているんですかっ?!」
「…?え、えぇ……いつも10人くらいで集まってますよ?」
「10人も?!」
さっきから何故そんなに彼女は驚いているのでしょう。
何もミサを体験したことが無いわけでもないでしょうに。
「だ、だったら…ヤりかたもさぞ詳しいんですよね…?」
「え?えぇ…そりゃまあ、神父ですから…」
「神父関係あるんですかっ?!」
神父の肩書きをまさか自己保身の盾に使うだなんて!
でも、順調に堕落への道を辿ってくれているようで嬉しくもありますね。
その調子で堕落して、どんどん私と致してくれる事を願いましょう。
「なるほど…神父だからこそ出来るんですか…」
「普通の人がやってもただの儀式みたいな物ですからね。真似事みたいな物でしょうか」
真似事?!
神父様だからこそ、本当のセックスの仕方を知っているという事ですか?!
これは、また致す時に本当のセックスとやらを教えて貰わねば。
「ふむ…そうやって数々の少女を泣かせているんですね…」
「少女…?老若男女問わずですよ?」
「ふぁ?!」
サバトに参加する老人なんかも居るとは聞きましたが、まさか参加者の方々まで守備範囲に収めているだなんて…
しかも泣かせている事に関しては否定しないという事は、魔女や他の使い魔、果てはバフォメットに至るまで全てを満足させたという事?!
私とのセックスの時は一杯一杯な感じでしたけど、もしかして演技?
「当たり前じゃないですか…儀式に若いも何も無いですよ?」
「そ、そうですよね…」
まさかここまでの方だったとは……これは見直すべきなのか、はたまた見下すべきなのか…
「さて、話は戻りますが…」
「あっ!行くんでしたよね?!支度は必要ないですしすぐにでも行きましょう!」
「え?用意しなくていい訳ないじゃないですか…」
慌てん坊なのは結構ですが、ミサとは言ってもその場ですぐ始められるような物じゃ無いんですから…
曜日は決められていますし時間も決められていて、場所の指定もだいたいは決まっていますし用意する物も様々。
事前に参加者の方々を誘致しておく必要もありますし、場所の確保も時の運。
それを簡単にはい行きましょうという事は、準備が出来ていたのでしょうか?
「そ、そうなんですか?!いつも向こうで用意してくれていたのでてっきり…」
なるほど、どこか別の教会でのミサに参加するという事でしたか。
なら確かにこちらが用意する必要はないですね。
「あぁ、なら大丈夫ですね」
「ですよね。彼女たちなら全部上手く用意してくれているでしょうし」
彼女たち……向こう側の教会のシスターたちの事でしょうか?
まあ用意するだけなのに男も女もないでしょう。
「さて、それじゃ行きましょうか」
「はい……って、やけにノリノリですね神父様…」
「そうですか?やはりいつもする側だった立場だから、される側になる事に期待してるのかもしれませんね」
す、スる側?!いつも幼くいたいけなあの子たちをヒィヒィ言わせてる側という事ですか?!
それを今度はサレる側になってとことん絞られるつもりでいると。
そんな「今日は気分転換に料理でもしますか」みたいなノリで言われても!
「(パンを)千切った物と一緒に食べると美味しいんですよね…(ワインが)」
「ち、契った者と一緒に食べる?!それはつまり私って事ですかっ?!」
「ま、マリアさん?!何もマリアさんの事を言ってる訳じゃないですよっ?!」
いきなり何を言い出すんでしょうか、この人は。
驚きすぎて私の寿命が少し縮んだかと思いましたよ。
「なっ!ま、まさか私以外とも誰か関係を持った女性が…そんなぁ…」
「落ち着いて!私はマリアさんだけを愛していますから!」
「本当ですか……?」
「ええ、もちろんですとも」
抱擁してくれるのはとっても嬉しいですけど、手が震えているのは何故なんでしょう?
きっと心に疚しい物を抱えているからなんでしょう…
けど、妻として彼を信じないなんてどうかしてる!
ならば彼を最後まで信じて愛を貫くのが妻としての私の務め!
「…分かりました…では、行きましょうかサバトへ」
「えっ?」
「えっ?」
どうしてそんな反応するんでしょう?
今二人の考えが完全にシンクロした瞬間であった。
「えっ?あのっ、サバトの常連で参加者の悉くを満足させているって…」
「えっ?いやいや、マリアさんが最近悩んでそうな顔してたからミサに誘おうと思ったら貴女の方で準備してるって…」
『……あっ…』
それから、お互いが目を合わせて会話できるようになるまで二か月ほどかかったんだとか。
マリアにとってはその二か月の間もセックスレスは続き、話せるようになる頃には既に野獣のような眼光を瞳に湛えていたとかなんとか。
皆さんも会話の中で誤解が生まれる事もままございましょうが、私から一言プレゼント。
「それがどうした」
あまり過度に信用するのもアレですが、多少の事はこれでどうにか乗りきっちゃいましょう。
おわり
16/06/17 20:26更新 / 兎と兎