第四話 謎?謎!ガール登場
アルバイトが始まってあれこれあって一週間が経過した。
初めて初日から過酷な重労働を強いられたかと思えば、翌日には身体中ボロボロ。
そんな日常が続くかと思いきや、残りの日程は全て普通に働く事が出来た。
これも店長の心遣いなのかとも思ったが、ならば休みにしてくれてもいいのでは?
所変わって、現在は爲葉家のリビングにて。
「ふんふん……エゾ地方の大地主、その一人娘が行方不明…かぁ…」
「姉さん、また大変そう?」
「いや、こんな大それた人探しには上層の奴らばっかり向かうだろう。部下には手出しさせないんだろな。金が目当てなのさ、結局のところ…」
「だろうね…」
リビングで朝刊の新聞を広げて読んでいたシグレとの世間話を交わしながら、今日も光定は家族の朝食を作っていた。
あまり関係は無いのだが、今日の献立はバランスを考えて一工夫してみている。
「おも〜い…重いわぁ〜…」
「あぁ、私も気が重いと思っているぞ?」
「ただの二日酔いだろ?どれだけ飲んだんだよ…」
「奢ってくれりゅってかりゃ……10本くりゃい…」
「缶じゃなくて一升瓶なんだろうなぁ…」
そろそろ朝食が出来上がるかと言う頃合になって、ミナがリビングへ侵入してきた。
強烈な酒の匂いと共に。
いくらなんでも飲み過ぎだろう。
また今度、アルコールの過剰摂取で死んでしまう人の話でもしようかなと心に誓う光定だった。
「くぉらぁ、みちゅしゃだぁ!おねえちゃんのためにみじゅのひと…ぶべらっ!」
「お前も少しは頭を冷やせ」
「はい…」
すっかり意気消沈してしまった様子である。
流石は爲葉家の長女なだけの事はある。
そのすぐ目の前に、水をぶっかけられてずぶ濡れのままションボリしている三女が居る訳だが。
「やれやれ…はい、二人とも朝ごはん出来たよ?」
「あぁ、ありがとう」
「うぅぅ…みつさだ〜…」
御飯に味噌汁、焼き魚の他にサラダの盛り合わせと、そこそこに美味しそうな料理が並ぶ。
全てテーブルへ並べ終わるころには二人とも、新聞読んだり泣いたりするのも止めて席についている。
「…あれ?ヒメア姉さんは部屋だとして、アスカは?」
「ん?アスカなら今日は朝から練習があるとかでもう出掛けたぞ?」
「あぁ〜、そういや昨日言ってたっけ〜……あぅぅ〜…あたまいたぁ…」
光定からすればそれは初耳な訳だが、そんな事も気にせずにシグレやミナは料理へ箸をつけていた。
どうやらいつも通り美味しく作れたらしく、二人とも食べた後の表情が少し綻んでいる。
「…うん、今日も光定の作る御飯は美味しいな」
「これから毎日、私の為に味噌汁を…あぅ!」
冗談を言おうとしたミナへ鉄槌なのかは知らないが、シグレがミナのフラフラと揺れる尻尾を机の下でギュッと握っていた。
獣の爪がミナの尻尾に食いこんでなんとも痛そう。
ここで少し疑問が浮かび上がった。
シグレはさっきから箸を使って朝ごはんを食べている訳だが、あの獣の手でよく箸を使えるものだと思う。
器用に指を使っているのならまだしも、どう見たって掴んでいるようには見えないし、指の間に挟むだけなように見える。
「……何を見ている?」
「え?いや別に何も…」
「あぁ〜ん!みつさだ〜!だずげで〜!」
不機嫌そうに睨みを利かせて、シグレが光定を睨む。
それと一緒に、ミナの尻尾を握る手に力を込めた。
相当痛いのかそれとも気持ち良いのか、痛がって涙目になっているミナの顔は上気してほんのり紅く染まっている。
尻尾もウネウネしていたさっきまでと違ってピンッと伸びてプルプル震えているし、普段は小さくして隠している翼もピンと伸びて硬直している。
「はいはい、それじゃもう行くから」
「あぁ、気を付けてな」
「あひぃぃぃぃ!!」
笑顔でそう言って見送るシグレだったが、その手は未だにミナの尻尾をギュッと握ったままだった。
ミナの気持ち良いのか痛いのか分かり辛い嬌声を耳にしながらも、光定は家の扉をくぐるのだ。
―――――――――――――――――――――
「ふぅ、これで今日も終わりかぁ…」
学校での授業を終わらせて、教科書類を集めてカバンの中へと詰め込む。
もう太陽は低めの位置に陣取っていて、あと1時間もすれば山の向こう側へ消えるだろうと想像は容易い。
しかし、普通の学生ならばここで終わりなのだろうが光定は終わりでは無い。
「……なんで毎日…」
そんな事をボソリと呟きながらも、光定は今日もアルメリアへと足を運ぶのだ。
――――――――――――――――――
「う〜ん……う〜ん………あっ!ダメ破く〜ん!」
「仁賀さん!おはようございます♪」
いつものようにアルメリアの裏口から店内へ入ると、廊下の出入り口の所で首をかしげてウロウロしている仁賀の姿を見つけた。
どうやら既に業務自体は始めているらしい。
だってウェイトレス用のエプロン付けてるから。
エプロン姿の仁賀も可愛い、そして癒される。
そんな気持ちで仁賀の事を見つめる光定の姿があった。
「うん、おはよう…って!そうじゃないよ!」
「へ?何がです?」
とても明るくペコリと挨拶を交わした仁賀だったが、すぐにハッと何かを思い出してまた慌てたような表情になる。
「今日はね、支配人さんが帰って来る日なの!」
「支配人?オーナーって事ですか?」
「そうそう!でね、支配人さんすっごく疲れてるだろうから、あんまり悪戯しちゃダメだよ?!」
なんと慌てていた原因とはこれの事らしい。
ここのオーナーである人物が帰って来る。
起こさないでやってくれ、死ぬほど疲れている。
つまりはこう言う事らしい。
翌々考えてみれば、子供扱いされている気がする。
これが店長だったりタチの悪い客だったりするならば、一瞬で反論を罵声の如く浴びせているだろう。
だが仁賀の場合は勝手が、いや次元が違う。
光定からすれば、彼女の言う事は何でも許せるような、そんな気すらするのである。
「はい、分かりました」
「あぅぅ〜……ま、またそうやっていじめる〜!」
「…あぁ、なんだ新入り。来てたのか」
仁賀の頭を撫でていると、廊下の向こうから皇がやって来た。
どうやら少し機嫌が悪いらしく、半ば強引に光定から仁賀を引っ手繰ると、その髪型をグシャグシャに弄り始めた。
ポニーテールだったのが、ツインテール・サイドポニー・お下げ・三つ編みと変化して行って、最終的には三つ網お団子で落ち付いたようだ。
おまけなのかピョコッとアホ毛の様な物まで飛び出していてとても可愛らしい。
「ふぇぇ〜!皇さんがいじめるぅ〜!」
「っと!あらあら、大変だったわね〜…皇さん?」
「っ……なんだよ…」
「あなたはどうしていつもそうやって…」
こうしてこの場の雰囲気と空気は、突然にやってきた琴音によって全てが凍りついた。
あれからどれだけの時間が経っただろう。
気が付けば仁賀も泣き止んで琴音から離れると今度は無言のまま光定にそっと体を寄せてくる。
どうやら殆んど蚊帳の外になって同じ境遇に放り出されていた光定の傍の方が安心できるらしい。
「――だいたい、あなたは…あら?」
「…ふぁ!この時間に来るって事はっ!」
十中八九、オーナーである事に間違いないだろう。
事前にチラッとだけシフトの書かれた紙を見ていたのだが、これくらいの時間にやってくるアルバイトはいない筈だ。
遅刻でもなければ早めに来る訳でも無い。
となれば残るのは、消去法でオーナーしか居なくなると言う寸法である。
「みんなー…た、ただいまー…」
裏側の出入り口から聞こえて来たその声には、覇気が全く感じられなかった。
寧ろ、今にも消え入りそうな程に弱々しい声音だろう。
そんな声の持ち主が、ヨロヨロと事務室へ滑り込んできた。
「御藤さんっ!?しっかりしてくださいっ!!」
「よっ、みんな聞け?御藤が帰って……なんだもう居たのか」
「あれ?店長?」
グッタリとした御藤さんの後ろから、澄まし顔をした店長が入って来た。
どうやら既に琴音から食べ物を貰っていたらしく、パフェをモグモグと食べながらの登場だ。
服装に関しては既に制服に着替えているようだしもしかすると着たまま出勤しているのではなかろうか?
「それより面白い事があるぞ?ほら、来い?」
「……」
少し不気味な笑みを零しながら、美弥は入口の向こうに居た誰かに声を掛けて手招きをする。
一瞬の間を置いてから、その人物は裏口から姿を現した。
「……田中です…どうぞよろしくです…」
黒くて長い、艶のある髪をおかっぱ頭にした一人の少女がそこには立っていた。
だが、光定には彼女が人間ではない事が一目で分かる。
なにせ耳は人では無い何かの形をしているし、何より手がまるで怪物のソレのように鋭い鱗で覆われていて、しかも人間の手よりも遥かに大きい。
水生生物の特徴を持つそれらの特徴に加え、魚のそれらとは違い、どちらかと言えばマーメイドなどの魚人種の下半身に近い尾がパタパタと揺れ動く。
自身に生まれつき持つルーンと呼ばれる刻印が頬に刻まれていて神秘性すら感じさせる。
それらの特徴に該当する種族は一つしか居ない。
淡水性の川や沼などに生息している魔物娘、サハギンであった。
「よろしくって事は…」
「あぁ、コイツはな光定、お前の後輩になる訳だ」
「…よろしくお願いします、先輩方…」
ペコリと無表情のまま礼をした田中。
だがここで光定は疑問を率直にぶつけてみた。
「それはいいとしても、名前は?」
「…はい…?」
「そうだよ!田中ちゃん!なんてなんか呼び辛いよ!」
すると、少し慌てたような表情に変わった彼女がもう一度頭を下げる。
「…すいません、田中かなたと言います…」
「………(なんか嘘っぽい)」
「よろしくね!かなちゃん!」
「………(パフェウメェ)」
名前を聞いただけで、何故か光定はこの少女に対して懐疑心を持たずには居られなかった。
特にこれと言って証拠や理由があると言う訳ではない。
ただ、名前からして「苗字を逆さまにすると名前」だとか「突然帰って来た支配人にくっ付いてきた」とか疑問は色々と残る。
「…それじゃあ先輩、早速ですがオムライスを…」
「お前客じゃないだろ!?」
光定があれやこれやと疑問を頭の中で整理している間に、何故かかなたは客の居ない席に座り込んで澄まし顔でメニューを開いていた。
何を考えているんだコイツはと、怒りが早くも爆発しそうだった光定だったが、次の彼女の一言に言葉を失う。
「…店長さんが、祝いに何か食べさせてくれると…」
「っ!?ゲホッゴホッ!」
怒られたからなのか、少しションボリとしたかなたは、チラッとだけパフェを食べている店長を見るとそう言った。
いきなりの事に驚いて、パフェが喉に詰まりそうになった店長は苦しそうに咳込む。
「…と、言う訳なのでお願いします…」
「いいんですか?店長?」
「あ、あぁ…確かそんな事言った気が…」
今にも嘔吐しそうな程に苦しそうな店長をよそに、仕方なく光定はかなたの為にオムライスを作ってやる事にした。
その時にふと思ったのだが、ただ黙って座っていると気品を感じさせたり、さりげなさの中に優雅さがあったりする。
一目見ただけなら、どこかのお嬢様かと思ってしまうだろう。
服にしたって種族の鱗と言われているスクール水着のような服装では無く、その上からなのか紺色のワンピースを着ている。
「………あぁ、そうだ爲葉」
「はい?何ですか?」
「私の分も頼む。大盛りでな」
「………」
さっきまで自分の愚かな言葉にドヨンとした落ち込み方をしていた人とは到底思えない台詞だった。
とんでもなく立ち直りが早いのか、それとも食い気が圧倒的優位にあるのか。
とにかく、店長はあっという間にかなたの座る席の向かいに座ってパフェを頬張っていた。
ムシャムシャと食べる姿がハムスターみたいで可愛らしい、なんて思うのはきっと、店長を溺愛している琴音くらいのものだろう。
「………」
「……あぁもう、分かりましたよ…」
「早くしろよ?」
思わずプッツンしてしまいそうなので、もう店長は無視しようと心に誓った光定は、ふとかなたへ視線を向けた。
こうして黙って食事が来るのを待っている姿は、本当にどこかのお嬢様のような風格すら感じられる。
向かい合わせで座っている店長の姿勢が悪いだけなのかも知れないが、背筋はピンと伸びたままで体幹にブレが全く見られない。
「何だ?何か……何やってんだ、お前…」
「ん?見れば分かるだろう?注文を待ってるんだが?」
「客の座るテーブルに座って注文を待つのが店長の仕事なのか?おい?」
暫くの間、テーブルを囲んで雑談していたからなのか、客も少なくオーダーも出されていないで暇だったらしい直人が、キッチンからフライパン片手に皆の集まるテーブル席へやって来た。
遠くに居る客が野次馬精神旺盛だったのか、イスを乗り越えてこちらを見ているがどうした物だろうか。
まぁ、放っておいても何ら問題はなさそうなので光定は特にこれと言って気にしない。
「はぁ……台帳に飯代の分キッチリ差し引くよう書いておくからな?」
「それを決めるのは私だがな」
「いや、今は支配人の御藤さんがいるだろうが」
「あっ…」
今更思ったのだが、この店長、ドジッ娘である。
――――――――――――――――
あれから、結局なんだかんだで田中と店長の為に料理を作ってやった光定達。
少ししてから夕暮れ時になって、晩御飯に訪れる客足が多くなってくる頃合いとなっていた。
「……」
「………」
そんな頃合いになってすら、まだ田中はテーブル席を一人で陣取って堂々と座り込んでいた。
満席になるほどの客足では無い為、別に放置していても問題は無いのだが店内のモラルの低下にも繋がる恐れがある為、規則にもこう書かれている。
「一人で大テーブル席を陣取る客や、悪質なクレーマーにはそれ相応の制裁を」と。
作成された年や、書かれている事の暴力的な対処法の数々から考えるに作成者は店長であるとパッと見だけで分かる。
「……なぁ…」
「…なんでしょう?」
「なんでしょう?じゃないだろ…いつまで居座るつもりなんだ?」
そろそろ光定の堪忍袋もキューッと締まってきた所だ。
このまま行けば、ねじ切れてプツンッとなってしまうだろう。
しかし、そんな事など知った事では無いかのように、かなたは店のメニュー表を開いてジーッと目を通している。
これから働く所のメニューをこれから覚えていくつもりなのだろうか。
「………では、この鮭フレークの…」
「唐突に注文を取ろうとするな…」
そんな儚い希望の事なんて、最初から考えなければよかったのかもしれない。
メニューを覚えようとするどころか、数時間前と全く同じ状況になっているではないか。
もしかして、ここから延々と同じ事の堂々巡りが始まるのではないかと思うと、光定は少し胃にムカムカともキリキリとも感じる違和感を覚えるのだった。
「光定くーん!12番さんオーダーお願いー!」
「あ、はーい!」
「……鮭フレ…」
「お前は後で覚えてろ」
それだけ言って、光定はかなたの居るテーブルから離れて客のオーダーを取りに行くのだった。
心なしか、かなたの表情が涙ぐんでいるようにも見えたが、それによるプラス補正すらも打ち消して、なおもマイナスに吹っ切れている程に彼女のしている事は矛盾していたのだろう。
証拠と言うには不十分かもしれないし、意地とも見えるかもしれないが、かなたはそれからずっと閉店するまでその席に座っていたのだとか。
と言うのも、学生である光定が閉店時間まで働いていい訳でも無く、9時を回った辺りで別のアルバイトと交代で帰っていたのだから。
――――――――――――――――――
「――ただいm………ヒメア姉さん、何してるの…?」
「…あ、みつさだ……おかえり……」
家に帰って最初に光定の目の前に飛び込んできた光景。
それは、クシャクシャに丸められた紙屑の山に半身を埋めて雪崩に呑み込まれた遭難者の様な格好で倒れている自身の姉の姿だった。
「はぁ……姉さん、しっかりしなよ…」
「……みつさだ……ありがとう…」
やりきれない怒りや呆れを溜め息に乗せ、それらを吐き出してから光定はヒメアの救助作業へと入った。
路地裏とかによく置かれているような大型のポリバケツを取り出して、次から次へと紙屑をその中へ放り込んで行く。
次第に見えてくるヒメアの馬身は、やっぱりと思うほどにインクが滲んだりしていて、所々が牛の斑模様のように黒ずんでいた。
怪しげな紫色の身体がインクで汚れていて、それは日光の紫外線を知らずに生きて来た白い肌にもこびり付いていた。
「…さて、それじゃ後はお風呂を沸かしておいて…」
「おーい、ヒメア?風呂あいt…」
その刹那、聞こえた声はピタッと止まってしまう。
玄関から廊下が続き、ヒメアの部屋の隣のクローゼットのそのまた隣に位置する浴室から出てきたのは、一糸纏わぬ状態のシグレだった。
狼の特徴を持つ尖った灰色の耳や四肢の体毛が、艶やかで輝いているようにも見えた。
その一方で、当の本人の表情はと言うと。
「っっっっつつ?!?!」
灰色の体毛が際立たせているのか、リンゴのように顔が真っ赤になっていた。
家族とは言え光定は異性。
男性に自身の裸体を見られて恥じない女性などいるのだろうか。
「わわぁっ!?シグレ姉さんっ?!」
「みつさだ……見るな見るな見るなぁ!?!」
大慌てで後ろを向いた光定は、その背後から恥じらいと怒りとあと何かしらのゴチャゴチャした感情を剥き出しにしたシグレの声が襲い掛かる。
それは殺気を帯びているようにも、魔物の魔力を纏っているようにも感じられた。
どっちにしろ、この状況はマズい、非常に。
「ふぁあ……姉さん、光定、何やってんの…?」
「あっ、ミナね…なんて格好してるんだっ!?」
気不味い空気になりつつあった二人の間に、自室から出てきた人物が一人。
それは、大きなあくびをしながら風呂の準備を携えたミナだった。
ただし一つ問題があった。
全裸なのだ、文字通り一糸纏わぬ姿だと言う事だ。
「何って…お風呂入ろうと思って……ははぁ、さては光定…発情したなぁ?ホレホレ…」
「うぉわ!ちょっ!酒臭すぎっ!」
過激とも思える程にピッタリとくっついてスキンシップを取って来るあたりは、魔物娘らしいと言えばらしい。
しかし、その相手が実の弟であるとなると話は別だ。
人間と魔物娘とでは、確かに色々と違う所もあるだろう。
だが、それ以前に倫理観の問題だ。
兄弟でそんな事をしようなんて、そもそもが間違っているではないか。
「……はぁ、ミナ……私が居るのを分かってやっているのか…?」
「ふぇ?それどう言う…んひぅ!」
こうして、またしてもシグレによるミナへの愛の鞭(敏感部への爪弾き)が繰り広げられていく。
さて、アルメリアに新しい仲間が加わった訳ですが、今後の心配な点か若しくは目標とかを一言どうぞ。
「アスカ以外にマトモな登場人物が欲しい!」
さてさて、投げやりな所も多いだろうけれども、次回へ続く!続くったら続けぇ!
初めて初日から過酷な重労働を強いられたかと思えば、翌日には身体中ボロボロ。
そんな日常が続くかと思いきや、残りの日程は全て普通に働く事が出来た。
これも店長の心遣いなのかとも思ったが、ならば休みにしてくれてもいいのでは?
所変わって、現在は爲葉家のリビングにて。
「ふんふん……エゾ地方の大地主、その一人娘が行方不明…かぁ…」
「姉さん、また大変そう?」
「いや、こんな大それた人探しには上層の奴らばっかり向かうだろう。部下には手出しさせないんだろな。金が目当てなのさ、結局のところ…」
「だろうね…」
リビングで朝刊の新聞を広げて読んでいたシグレとの世間話を交わしながら、今日も光定は家族の朝食を作っていた。
あまり関係は無いのだが、今日の献立はバランスを考えて一工夫してみている。
「おも〜い…重いわぁ〜…」
「あぁ、私も気が重いと思っているぞ?」
「ただの二日酔いだろ?どれだけ飲んだんだよ…」
「奢ってくれりゅってかりゃ……10本くりゃい…」
「缶じゃなくて一升瓶なんだろうなぁ…」
そろそろ朝食が出来上がるかと言う頃合になって、ミナがリビングへ侵入してきた。
強烈な酒の匂いと共に。
いくらなんでも飲み過ぎだろう。
また今度、アルコールの過剰摂取で死んでしまう人の話でもしようかなと心に誓う光定だった。
「くぉらぁ、みちゅしゃだぁ!おねえちゃんのためにみじゅのひと…ぶべらっ!」
「お前も少しは頭を冷やせ」
「はい…」
すっかり意気消沈してしまった様子である。
流石は爲葉家の長女なだけの事はある。
そのすぐ目の前に、水をぶっかけられてずぶ濡れのままションボリしている三女が居る訳だが。
「やれやれ…はい、二人とも朝ごはん出来たよ?」
「あぁ、ありがとう」
「うぅぅ…みつさだ〜…」
御飯に味噌汁、焼き魚の他にサラダの盛り合わせと、そこそこに美味しそうな料理が並ぶ。
全てテーブルへ並べ終わるころには二人とも、新聞読んだり泣いたりするのも止めて席についている。
「…あれ?ヒメア姉さんは部屋だとして、アスカは?」
「ん?アスカなら今日は朝から練習があるとかでもう出掛けたぞ?」
「あぁ〜、そういや昨日言ってたっけ〜……あぅぅ〜…あたまいたぁ…」
光定からすればそれは初耳な訳だが、そんな事も気にせずにシグレやミナは料理へ箸をつけていた。
どうやらいつも通り美味しく作れたらしく、二人とも食べた後の表情が少し綻んでいる。
「…うん、今日も光定の作る御飯は美味しいな」
「これから毎日、私の為に味噌汁を…あぅ!」
冗談を言おうとしたミナへ鉄槌なのかは知らないが、シグレがミナのフラフラと揺れる尻尾を机の下でギュッと握っていた。
獣の爪がミナの尻尾に食いこんでなんとも痛そう。
ここで少し疑問が浮かび上がった。
シグレはさっきから箸を使って朝ごはんを食べている訳だが、あの獣の手でよく箸を使えるものだと思う。
器用に指を使っているのならまだしも、どう見たって掴んでいるようには見えないし、指の間に挟むだけなように見える。
「……何を見ている?」
「え?いや別に何も…」
「あぁ〜ん!みつさだ〜!だずげで〜!」
不機嫌そうに睨みを利かせて、シグレが光定を睨む。
それと一緒に、ミナの尻尾を握る手に力を込めた。
相当痛いのかそれとも気持ち良いのか、痛がって涙目になっているミナの顔は上気してほんのり紅く染まっている。
尻尾もウネウネしていたさっきまでと違ってピンッと伸びてプルプル震えているし、普段は小さくして隠している翼もピンと伸びて硬直している。
「はいはい、それじゃもう行くから」
「あぁ、気を付けてな」
「あひぃぃぃぃ!!」
笑顔でそう言って見送るシグレだったが、その手は未だにミナの尻尾をギュッと握ったままだった。
ミナの気持ち良いのか痛いのか分かり辛い嬌声を耳にしながらも、光定は家の扉をくぐるのだ。
―――――――――――――――――――――
「ふぅ、これで今日も終わりかぁ…」
学校での授業を終わらせて、教科書類を集めてカバンの中へと詰め込む。
もう太陽は低めの位置に陣取っていて、あと1時間もすれば山の向こう側へ消えるだろうと想像は容易い。
しかし、普通の学生ならばここで終わりなのだろうが光定は終わりでは無い。
「……なんで毎日…」
そんな事をボソリと呟きながらも、光定は今日もアルメリアへと足を運ぶのだ。
――――――――――――――――――
「う〜ん……う〜ん………あっ!ダメ破く〜ん!」
「仁賀さん!おはようございます♪」
いつものようにアルメリアの裏口から店内へ入ると、廊下の出入り口の所で首をかしげてウロウロしている仁賀の姿を見つけた。
どうやら既に業務自体は始めているらしい。
だってウェイトレス用のエプロン付けてるから。
エプロン姿の仁賀も可愛い、そして癒される。
そんな気持ちで仁賀の事を見つめる光定の姿があった。
「うん、おはよう…って!そうじゃないよ!」
「へ?何がです?」
とても明るくペコリと挨拶を交わした仁賀だったが、すぐにハッと何かを思い出してまた慌てたような表情になる。
「今日はね、支配人さんが帰って来る日なの!」
「支配人?オーナーって事ですか?」
「そうそう!でね、支配人さんすっごく疲れてるだろうから、あんまり悪戯しちゃダメだよ?!」
なんと慌てていた原因とはこれの事らしい。
ここのオーナーである人物が帰って来る。
起こさないでやってくれ、死ぬほど疲れている。
つまりはこう言う事らしい。
翌々考えてみれば、子供扱いされている気がする。
これが店長だったりタチの悪い客だったりするならば、一瞬で反論を罵声の如く浴びせているだろう。
だが仁賀の場合は勝手が、いや次元が違う。
光定からすれば、彼女の言う事は何でも許せるような、そんな気すらするのである。
「はい、分かりました」
「あぅぅ〜……ま、またそうやっていじめる〜!」
「…あぁ、なんだ新入り。来てたのか」
仁賀の頭を撫でていると、廊下の向こうから皇がやって来た。
どうやら少し機嫌が悪いらしく、半ば強引に光定から仁賀を引っ手繰ると、その髪型をグシャグシャに弄り始めた。
ポニーテールだったのが、ツインテール・サイドポニー・お下げ・三つ編みと変化して行って、最終的には三つ網お団子で落ち付いたようだ。
おまけなのかピョコッとアホ毛の様な物まで飛び出していてとても可愛らしい。
「ふぇぇ〜!皇さんがいじめるぅ〜!」
「っと!あらあら、大変だったわね〜…皇さん?」
「っ……なんだよ…」
「あなたはどうしていつもそうやって…」
こうしてこの場の雰囲気と空気は、突然にやってきた琴音によって全てが凍りついた。
あれからどれだけの時間が経っただろう。
気が付けば仁賀も泣き止んで琴音から離れると今度は無言のまま光定にそっと体を寄せてくる。
どうやら殆んど蚊帳の外になって同じ境遇に放り出されていた光定の傍の方が安心できるらしい。
「――だいたい、あなたは…あら?」
「…ふぁ!この時間に来るって事はっ!」
十中八九、オーナーである事に間違いないだろう。
事前にチラッとだけシフトの書かれた紙を見ていたのだが、これくらいの時間にやってくるアルバイトはいない筈だ。
遅刻でもなければ早めに来る訳でも無い。
となれば残るのは、消去法でオーナーしか居なくなると言う寸法である。
「みんなー…た、ただいまー…」
裏側の出入り口から聞こえて来たその声には、覇気が全く感じられなかった。
寧ろ、今にも消え入りそうな程に弱々しい声音だろう。
そんな声の持ち主が、ヨロヨロと事務室へ滑り込んできた。
「御藤さんっ!?しっかりしてくださいっ!!」
「よっ、みんな聞け?御藤が帰って……なんだもう居たのか」
「あれ?店長?」
グッタリとした御藤さんの後ろから、澄まし顔をした店長が入って来た。
どうやら既に琴音から食べ物を貰っていたらしく、パフェをモグモグと食べながらの登場だ。
服装に関しては既に制服に着替えているようだしもしかすると着たまま出勤しているのではなかろうか?
「それより面白い事があるぞ?ほら、来い?」
「……」
少し不気味な笑みを零しながら、美弥は入口の向こうに居た誰かに声を掛けて手招きをする。
一瞬の間を置いてから、その人物は裏口から姿を現した。
「……田中です…どうぞよろしくです…」
黒くて長い、艶のある髪をおかっぱ頭にした一人の少女がそこには立っていた。
だが、光定には彼女が人間ではない事が一目で分かる。
なにせ耳は人では無い何かの形をしているし、何より手がまるで怪物のソレのように鋭い鱗で覆われていて、しかも人間の手よりも遥かに大きい。
水生生物の特徴を持つそれらの特徴に加え、魚のそれらとは違い、どちらかと言えばマーメイドなどの魚人種の下半身に近い尾がパタパタと揺れ動く。
自身に生まれつき持つルーンと呼ばれる刻印が頬に刻まれていて神秘性すら感じさせる。
それらの特徴に該当する種族は一つしか居ない。
淡水性の川や沼などに生息している魔物娘、サハギンであった。
「よろしくって事は…」
「あぁ、コイツはな光定、お前の後輩になる訳だ」
「…よろしくお願いします、先輩方…」
ペコリと無表情のまま礼をした田中。
だがここで光定は疑問を率直にぶつけてみた。
「それはいいとしても、名前は?」
「…はい…?」
「そうだよ!田中ちゃん!なんてなんか呼び辛いよ!」
すると、少し慌てたような表情に変わった彼女がもう一度頭を下げる。
「…すいません、田中かなたと言います…」
「………(なんか嘘っぽい)」
「よろしくね!かなちゃん!」
「………(パフェウメェ)」
名前を聞いただけで、何故か光定はこの少女に対して懐疑心を持たずには居られなかった。
特にこれと言って証拠や理由があると言う訳ではない。
ただ、名前からして「苗字を逆さまにすると名前」だとか「突然帰って来た支配人にくっ付いてきた」とか疑問は色々と残る。
「…それじゃあ先輩、早速ですがオムライスを…」
「お前客じゃないだろ!?」
光定があれやこれやと疑問を頭の中で整理している間に、何故かかなたは客の居ない席に座り込んで澄まし顔でメニューを開いていた。
何を考えているんだコイツはと、怒りが早くも爆発しそうだった光定だったが、次の彼女の一言に言葉を失う。
「…店長さんが、祝いに何か食べさせてくれると…」
「っ!?ゲホッゴホッ!」
怒られたからなのか、少しションボリとしたかなたは、チラッとだけパフェを食べている店長を見るとそう言った。
いきなりの事に驚いて、パフェが喉に詰まりそうになった店長は苦しそうに咳込む。
「…と、言う訳なのでお願いします…」
「いいんですか?店長?」
「あ、あぁ…確かそんな事言った気が…」
今にも嘔吐しそうな程に苦しそうな店長をよそに、仕方なく光定はかなたの為にオムライスを作ってやる事にした。
その時にふと思ったのだが、ただ黙って座っていると気品を感じさせたり、さりげなさの中に優雅さがあったりする。
一目見ただけなら、どこかのお嬢様かと思ってしまうだろう。
服にしたって種族の鱗と言われているスクール水着のような服装では無く、その上からなのか紺色のワンピースを着ている。
「………あぁ、そうだ爲葉」
「はい?何ですか?」
「私の分も頼む。大盛りでな」
「………」
さっきまで自分の愚かな言葉にドヨンとした落ち込み方をしていた人とは到底思えない台詞だった。
とんでもなく立ち直りが早いのか、それとも食い気が圧倒的優位にあるのか。
とにかく、店長はあっという間にかなたの座る席の向かいに座ってパフェを頬張っていた。
ムシャムシャと食べる姿がハムスターみたいで可愛らしい、なんて思うのはきっと、店長を溺愛している琴音くらいのものだろう。
「………」
「……あぁもう、分かりましたよ…」
「早くしろよ?」
思わずプッツンしてしまいそうなので、もう店長は無視しようと心に誓った光定は、ふとかなたへ視線を向けた。
こうして黙って食事が来るのを待っている姿は、本当にどこかのお嬢様のような風格すら感じられる。
向かい合わせで座っている店長の姿勢が悪いだけなのかも知れないが、背筋はピンと伸びたままで体幹にブレが全く見られない。
「何だ?何か……何やってんだ、お前…」
「ん?見れば分かるだろう?注文を待ってるんだが?」
「客の座るテーブルに座って注文を待つのが店長の仕事なのか?おい?」
暫くの間、テーブルを囲んで雑談していたからなのか、客も少なくオーダーも出されていないで暇だったらしい直人が、キッチンからフライパン片手に皆の集まるテーブル席へやって来た。
遠くに居る客が野次馬精神旺盛だったのか、イスを乗り越えてこちらを見ているがどうした物だろうか。
まぁ、放っておいても何ら問題はなさそうなので光定は特にこれと言って気にしない。
「はぁ……台帳に飯代の分キッチリ差し引くよう書いておくからな?」
「それを決めるのは私だがな」
「いや、今は支配人の御藤さんがいるだろうが」
「あっ…」
今更思ったのだが、この店長、ドジッ娘である。
――――――――――――――――
あれから、結局なんだかんだで田中と店長の為に料理を作ってやった光定達。
少ししてから夕暮れ時になって、晩御飯に訪れる客足が多くなってくる頃合いとなっていた。
「……」
「………」
そんな頃合いになってすら、まだ田中はテーブル席を一人で陣取って堂々と座り込んでいた。
満席になるほどの客足では無い為、別に放置していても問題は無いのだが店内のモラルの低下にも繋がる恐れがある為、規則にもこう書かれている。
「一人で大テーブル席を陣取る客や、悪質なクレーマーにはそれ相応の制裁を」と。
作成された年や、書かれている事の暴力的な対処法の数々から考えるに作成者は店長であるとパッと見だけで分かる。
「……なぁ…」
「…なんでしょう?」
「なんでしょう?じゃないだろ…いつまで居座るつもりなんだ?」
そろそろ光定の堪忍袋もキューッと締まってきた所だ。
このまま行けば、ねじ切れてプツンッとなってしまうだろう。
しかし、そんな事など知った事では無いかのように、かなたは店のメニュー表を開いてジーッと目を通している。
これから働く所のメニューをこれから覚えていくつもりなのだろうか。
「………では、この鮭フレークの…」
「唐突に注文を取ろうとするな…」
そんな儚い希望の事なんて、最初から考えなければよかったのかもしれない。
メニューを覚えようとするどころか、数時間前と全く同じ状況になっているではないか。
もしかして、ここから延々と同じ事の堂々巡りが始まるのではないかと思うと、光定は少し胃にムカムカともキリキリとも感じる違和感を覚えるのだった。
「光定くーん!12番さんオーダーお願いー!」
「あ、はーい!」
「……鮭フレ…」
「お前は後で覚えてろ」
それだけ言って、光定はかなたの居るテーブルから離れて客のオーダーを取りに行くのだった。
心なしか、かなたの表情が涙ぐんでいるようにも見えたが、それによるプラス補正すらも打ち消して、なおもマイナスに吹っ切れている程に彼女のしている事は矛盾していたのだろう。
証拠と言うには不十分かもしれないし、意地とも見えるかもしれないが、かなたはそれからずっと閉店するまでその席に座っていたのだとか。
と言うのも、学生である光定が閉店時間まで働いていい訳でも無く、9時を回った辺りで別のアルバイトと交代で帰っていたのだから。
――――――――――――――――――
「――ただいm………ヒメア姉さん、何してるの…?」
「…あ、みつさだ……おかえり……」
家に帰って最初に光定の目の前に飛び込んできた光景。
それは、クシャクシャに丸められた紙屑の山に半身を埋めて雪崩に呑み込まれた遭難者の様な格好で倒れている自身の姉の姿だった。
「はぁ……姉さん、しっかりしなよ…」
「……みつさだ……ありがとう…」
やりきれない怒りや呆れを溜め息に乗せ、それらを吐き出してから光定はヒメアの救助作業へと入った。
路地裏とかによく置かれているような大型のポリバケツを取り出して、次から次へと紙屑をその中へ放り込んで行く。
次第に見えてくるヒメアの馬身は、やっぱりと思うほどにインクが滲んだりしていて、所々が牛の斑模様のように黒ずんでいた。
怪しげな紫色の身体がインクで汚れていて、それは日光の紫外線を知らずに生きて来た白い肌にもこびり付いていた。
「…さて、それじゃ後はお風呂を沸かしておいて…」
「おーい、ヒメア?風呂あいt…」
その刹那、聞こえた声はピタッと止まってしまう。
玄関から廊下が続き、ヒメアの部屋の隣のクローゼットのそのまた隣に位置する浴室から出てきたのは、一糸纏わぬ状態のシグレだった。
狼の特徴を持つ尖った灰色の耳や四肢の体毛が、艶やかで輝いているようにも見えた。
その一方で、当の本人の表情はと言うと。
「っっっっつつ?!?!」
灰色の体毛が際立たせているのか、リンゴのように顔が真っ赤になっていた。
家族とは言え光定は異性。
男性に自身の裸体を見られて恥じない女性などいるのだろうか。
「わわぁっ!?シグレ姉さんっ?!」
「みつさだ……見るな見るな見るなぁ!?!」
大慌てで後ろを向いた光定は、その背後から恥じらいと怒りとあと何かしらのゴチャゴチャした感情を剥き出しにしたシグレの声が襲い掛かる。
それは殺気を帯びているようにも、魔物の魔力を纏っているようにも感じられた。
どっちにしろ、この状況はマズい、非常に。
「ふぁあ……姉さん、光定、何やってんの…?」
「あっ、ミナね…なんて格好してるんだっ!?」
気不味い空気になりつつあった二人の間に、自室から出てきた人物が一人。
それは、大きなあくびをしながら風呂の準備を携えたミナだった。
ただし一つ問題があった。
全裸なのだ、文字通り一糸纏わぬ姿だと言う事だ。
「何って…お風呂入ろうと思って……ははぁ、さては光定…発情したなぁ?ホレホレ…」
「うぉわ!ちょっ!酒臭すぎっ!」
過激とも思える程にピッタリとくっついてスキンシップを取って来るあたりは、魔物娘らしいと言えばらしい。
しかし、その相手が実の弟であるとなると話は別だ。
人間と魔物娘とでは、確かに色々と違う所もあるだろう。
だが、それ以前に倫理観の問題だ。
兄弟でそんな事をしようなんて、そもそもが間違っているではないか。
「……はぁ、ミナ……私が居るのを分かってやっているのか…?」
「ふぇ?それどう言う…んひぅ!」
こうして、またしてもシグレによるミナへの愛の鞭(敏感部への爪弾き)が繰り広げられていく。
さて、アルメリアに新しい仲間が加わった訳ですが、今後の心配な点か若しくは目標とかを一言どうぞ。
「アスカ以外にマトモな登場人物が欲しい!」
さてさて、投げやりな所も多いだろうけれども、次回へ続く!続くったら続けぇ!
15/04/07 17:32更新 / 兎と兎
戻る
次へ