angel fall 協奏曲第一楽章〜舞い『落ちた』天使達〜
「……」
都会の喧騒から少し離れた、のどかで静かな公園のはずれにある小高い丘。
その樹の下で、一人の少年がいくつもの雲が漂う大空を見上げている。
何か物想いに耽るように、空を眺める少年の口元は、心なしか笑っているように見えた。
「………っ!アレなんかパンツっぽい♪」
…そう、少年の表情が笑顔に満ちた理由はこの通り。
彼が見つめる視線の先には、逆三角形の形をした雲が漂っている。
三角形とは言っても角は見当たらなく、少年の言うように女性物の下着のように見えなくも無い。
「くひひ…いいもん見れたなぁ……ん?」
顔を嫌らしい笑顔で染め上げ、ニヤニヤと笑いながら少年はその場を去ろうと立ち上がった。
柔らかな風と日差しに足止めを食らいそうになりながらもその場を去ろうとする。
しかし、自身のポケットから何かが落ちるのを感じて少年はふと振り返った。
「あぁっといけない…」
彼がポケットから落とした物は、両手で包めば収まるような大きさをした小さな本だった。
表紙には大きな文字で「紅一点!」と書かれている。
更にその下には、四角で囲った「R-18」と言う文字も見える。
そうして一番最初に目に入るのは、赤い髪をした裸の女性がいくつもの肉棒に囲まれ精液まみれになっている絵。
これらが指し示す事とは、これがエロ本であると言う事。
因みにこの本は、少年がたまたま拾った物だ。
「よいしょ…のわぁっ!」
その本を拾い上げようと身体を屈めた所で異変が発生。
まるで本を抹消するのが目的であったかのように、謎の物体が少年の目の前に激突し、地面を抉った。
飛び散る石や土の破片を直に浴びて、少年はそのまま倒れ込んでしまう。
「いつつぁ……なんなんだよ、これぇ…」
どこかファンタジックなクリスタルの結晶体を思わせるその物体に、少年が手を触れた。
次の瞬間、そのクリスタルは小さく展開したかと思えば白煙を噴き出す。
ブシューと言う音と共に、クリスタルは形を変える。
ダイヤ型だったクリスタルは、今では三つ葉のクローバーを思わせる形に変わって行く。
形が変わると、葉の一枚一枚がどこかベッドを思わせる形状に変わる。
「な、なんかヤバイかも……?…女…の子…?」
言い知れぬ身の危険を感じて、少年は手の痛みも忘れてその場から逃げ出そうと考え始めた。
走ればその場からは逃げられる。
が、少年の足を止める理由が目の前にあった。
「えぇと…ein…?どう読むんだ、これ?」
クリスタルの中には、血のように赤く長い髪の女性が静かな表情で眠っていたのだ。
彼女には大きな翼が付いており、まるで空想上の天使を思わせてしまう。
クリスタルには刻印が刻まれており、そこには「ein」と彫られている。
他の二つも見てみると、外見はそれぞれ違っているが女性が眠っており、どれにも記号が彫られていた。
「にしてもすっげぇおっぱい…のわぁ!」
下心丸出しの少年は、卑猥な指遣いで「ein」と刻まれたクリスタルに触れた。
心の中ではあの胸が揉めたら、などと思っていた事だろう。
だが、彼の予想を裏切ってクリスタルに変化が訪れる。
「……?」
「あわ…あわわ……やわっこ〜い…♪」
クリスタルの上半分が、まるで最初から無かったかのように消え去って行く。
触れた部分から消えて行き、少年はその勢いのままに進んで彼女の胸を鷲掴む。
一瞬身体がビクッと震えた少女を余所に、少年は一心不乱に豊満な胸の感触を味わう。
人間とは思えないような柔らかい感触。
弾力に溢れ、揉んでいる側にすら快感が伝わるような豊かな胸。
それを今、下心満載の男がもみしだいているのである。
「…アレク・ルシェールを確認。女神の命により、貴方をマスターとさせて頂きます」
「のわっ!ま、マスター…?」
眠っているままだと思った少女が、唐突にブツブツと言葉を発し始めた。
どこか優しい声音の少女は、しかし機械的な言葉を紡いでいく。
「と言うか、なんで俺の名前を知って…」
「…マスター、他の二人を起こしてあげては?」
自分の名前を知っていた事に疑問を持ち、それを少女にぶつけるアレク。
しかし彼女は、それらを無視してアレクに他の二人を起こすよう檄を飛ばす。
先程と同じようにやれば良いと付け加えられ、渋々それにアレクは従う。
「行くぞー?そりゃ…やっぱり小さい…」
「誰が小さいですって〜!?…って、キャァァァァァァァァァ!!」
中で眠っていたのは、年齢がいくつか下の子供のように小さな少女だった。
海よりも深い群青色に染まった髪を、両端でくくりツインテールとしているようだ。
アインと違い、この少女には翼は見当たらず、代わりに薄い被膜のような翼がヒラヒラと舞う。
言われたとおり「先程と同じように」クリスタルに触れて上半分が消え去り、少女の胸を鷲掴む。
だが、今度の少女はスタイルに乏しく揉める胸など無かった。
揉もうとしても掴めるものが無く、指で抓むのが精一杯。
数秒の時間を置いてから、少女が目を覚ますと顔を真っ赤にして悲鳴を上げる。
「変態!変態っ!このっ!死んじゃえ!死んじゃえ!」
「…ツヴァイ、そこまでです」
「ッ!…アインのマスターって事は……アタシも…コイツがぁぁっ!?」
目が覚めてみれば見知らない少年に胸を揉まれ、挙句小さいと言われ嫌そうな顔もされてしまう。
それだけの屈辱を受けたツヴァイが、アレクへ鉄拳を下してはいけない訳が無い。
これでもかと思うほどに拳で殴り付け、足で蹴ったりもした。
ドカドカと蹴られて、もうアレクは虫の息。
そこまで来てやっとアインが仲裁に入る。
アインの姿を認めたツヴァイは、女神の命を思い出し、同時に自身のマスターの顔を認識して驚愕の表情を浮かべる。
「…マスター、続けてドライも起こしてあげて下さい…」
「いっつつ……おっぱいどんな揉み心地かなぁ…(また殴られたりしたらイヤだなぁ)」
「…マスター、建前と本音が逆ですよ?」
先程までツヴァイにフルボッコにされ、ダウンしていた筈のアレクがスクッと何も無かったかのように立ち上がった。
三人目の少女の前に立ち、クリスタルに触れようとした時に、ふと言葉が口から洩れてしまう。
ボソッとしか聞こえない呟きを、アインはそのボケに対し的確なツッコミを飛ばす。
苦笑いをかましながら、恐る恐るクリスタルへ手を掛ける。
「んん〜ぅ♪良く寝たぁ〜♪」
「んん〜♪やわらけ〜♪」
三人目の少女の前に立ち、アレクがドライを起こし、そのまま身を乗り入れて胸を鷲塚む。
中に居た少女は、長い金髪に飾りっ気を施さず自然なまま、アホ毛が特徴的とも言える少女だった。
アインと同様に、スタイルは抜群で胸はもしかするとアイン以上かも知れない。
たった今、その胸を揉んでいるアレクには分かる。
この巨乳はアインのそれを凌駕していると。
だが、ドライは目が覚めると伸びをして身体を解し、まるで胸を揉まれている事に気付いていないように思う。
「あぁ〜、アインとツヴァイじゃ〜ん。おはよ〜…」
「何がおはよーよ。自分の胸を見てみなさい?」
「ほぇ?むね〜?」
「やわらけ〜♪ぱふぱふ〜♪」
完全に寝ぼけているドライは、ボンヤリとした意識のままで近くに見知った顔を見つけて声を掛ける。
その問いかけに、ツヴァイは溜め息を吐きながらドライの胸を指差して教える事にした。
寝ぼけた視線が自分の胸を見ると、そこには自分の胸を揉む見知らぬ男性。
しかも顔を突っ込んで至福の表情を浮かべている。
「お〜♪ぱふぱふ〜……ってぇ!何何ナニィ?!」
「ぐほぁ!お、おーけーかと思ったら膝…ゲリィ…(バタン」
アレクが胸を揉んでいると気付かなかったドライは、ついついつられて同じような言葉を続けてしまう。
だが、すぐに目がハッと覚醒して、条件反射的にアレクの両肩を掴んで拘束。
そのまま綺麗なフォームで鳩尾へ膝蹴りを放つ。
狙い通りの場所へ命中した蹴りは、アレクを気絶させるには十分な威力を誇っていた事だろう。
「あちゃー……ん?ドライ、何か落ちたわよ?」
「ほぇ?あぁ、うんありがと〜…ってアインッ?!」
「…『指令:アイン及びツヴァイを亡き者とし、マスター権限者を籠絡せよ』……女神…」
頭を抱えてやれやれと言った風に溜め息を吐くツヴァイだったが、ドライのクリスタルから何か紙の様な物が落ちたのを見つけ、それを拾い渡す。
手紙のようなそれを受け取ろうとしたドライだったが、手に取る寸前でアインがそれを素早く奪い取ってしまう。
そしてその手紙を読んだアインの言葉に、その場の全員が驚愕する。
「な、なによそれ……女神様は私達を殺し合わせて一体何を…」
「…分かりません。が、これに従うのは止した方がいいと思います…」
「ねー、『ろーらく』ってなに〜?」
約一名程、文章の内容以外が気になっているバカが居たが。
「とは言っても、お前達の背中にも同じようなの張ってあるぞ?」
「ちょ!?いきなり出てこないでよっ!」
「…マスター…デリカシーがないです…」
「ふぇ?テレパシーがなんだって?」
いきなり起き上ったアレクが、アインとツヴァイの背中に張ってあった紙を引っ手繰り全員に見えるように置く。
アレクに言われるまで二人は、背中に何かが張っているなど微塵も思ってはいない。
因みに、二人に張られていた紙に書いてあった内容は以下の通り。
アイン:【指令:ツヴァイ及びドライを監禁し、マスター権限者の精を絞り尽せ 女神】
ツヴァイ:【指令:アイン及びドライを堕落させ、マスター権限者との間に子を成せ 女神】
「……どう言う事よ、コレ…」
「……内部分裂でも狙っているのか?この女神って人…」
「…女神様がこのような指示を…」
「えぇと…えぇと……難しくてよめなーい…」
手紙の内容は、明らかに互いを潰し合わせるよう差し向ける指令書だった。
それも、どの指令でもアレクが巻き込まれる形になってしまう。
アインの指令にしても、ツヴァイの指令にしても、ドライの指令にしても、アレクがこの少女達と交わる事を強要されている。
「こんなの守る訳が無いじゃない…」
「…常軌を逸していると判断し、指令を無視します」
「うぅん…コレをしちゃいけないってコトなんだよね。うん、分かった♪」
指令所を手に取り改めてそれらを確認する3人。
いち早くその紙を破いたのは、ツヴァイだった。
ビリビリと破き、小さな細切れにして風に乗せて飛ばしてしまう。
アインもそれに続く形で同じように紙を破く。
ドライも見習って紙を破き、風に乗せて飛ばす。
「……ハーッ、なんかスッキリした」
「で、お前らこれからどうするんだ?」
「…どうするも何も、マスターのお蕎麦……失礼、お傍にいますよ」
「キャハハッ♪アインってばくいしんぼ〜♪」
それぞれが仕えるべき者への指示を吹き飛ばし、どこかスッキリとした表情になる。
が、まだ問題は残っている。
この三人をどうするかだった。
しかし、アインがすぐにアレクの手を握って問題は解決。
今この時より、アレクのありえないような数奇な運命が動き出す。
――――――――――――――――――――――――
アイン達と出会い、今日で3日が経つ。
最初こそ沢山のアクシデントが起こったが、今となってはすっかり落ち着いた。
まぁ、問題はまだまだ山積みな訳だが。
「はふはふ……しっかし、マスターがこんな生活してるだなんて、予想外だわ…」
「…マスターは、一人が好きだったのですか…?」
「ぷぷ〜!マスターはぼっち〜♪」
一般的な人が住むには少し広い、住宅街の一等地。
そこにある一軒の住居が、アレクの住む家だった。
2階建てで部屋は7つあり、そのどれもが広々としている。
この大きな家を、アレク一人が住んでいるだけなのだ。
「そんな訳ないだろ〜!?親父もお袋も、事故でポックリ逝っちまったんだよ!」
「あっ………ごめん…」
「…マスター……すみません…」
「あ…えと……ごめんなさい…」
アレクの一言で、その場の空気が静まり返る。
まるで最初から何も無かったのような沈黙がしばらく続く。
「ええと……まぁ、何だ。お前達が来てくれて俺は嬉しかったぞ?」
「マスター……ハッ!ど、どう言う意味で嬉しかったのよっ!?」
「…マスター、私も嬉しいです…」
「はふはふ…ずずず……ラーメン冷めちゃうよ〜?」
気まずい空気をなんとかしようと、アレクはアインとツヴァイの頭を撫でる。
二人とも嬉しそうな表情をしていたが、頭の回るツヴァイはすぐに手を跳ね退けて警戒心を剥き出す。
約一名、気にもせずラーメンを美味しそうに食べている者がいたが気にしない。
「さて…今日は用事があるからもう行くけど、お留守番よろしくな」
「分かってるわよ!さっさと行きなさいよ!」
「…マスター、お気を付けて…」
「いってらっしゃーい…ふー…ふー…ずずず…」
時計をチラッと見たアレクは、もう時間が無い事を知り大慌てで出掛ける用意を整えると、アイン達に留守を任せてすっ飛んで行く。
それから暫くは、この3人の談笑と麺を啜る音が部屋に響く時間が過ぎて行った。
――――――――――――――――――――――
「ふいぃ、ただいま〜」
夕日が傾き、オレンジ色の空が藍色に染まり始めた頃、ようやく用事を終わらせたアレクが帰って来た。
その手にはいくつかの袋が握られている。
アレクが買って来たアイン達のお土産品だ。
玄関でハイっと渡して、キャッキャと言いながらお土産を部屋へ持って行き、キラキラとした表情で袋を開ける皆の姿が目に浮かぶ。
ところがどっこい、誰も出迎えてはくれない。
「あれ〜?皆どこいった……なるほどね」
靴を脱ぎ捨て、早足で部屋へ入るアレク。
すると、部屋の中では三人が一枚のシーツを取り合いながらグッスリ眠っているではないか。
これは起こしてはいけないと思い、この場を離れようとするのだが。
「……んぅ……マスター…」
「…ん?寝言かな…」
「…マスター……スカートを覗こうとしないでください…」
三人が寝ているすぐ傍を通って寝室へ向かおうとしたアレクだったが、不意にアインに呼び止められてしまう。
何事かと振り向くが、アインを始め、3人ともまだグッスリ夢の中。
寝言だろうと判断したアレクがまた歩を進めようとすると、今度はハッキリとした口調で、いやどこかボンヤリとした口調でアインが話しかけてくる。
「してないって…それよりごめん。起こした?」
「…いえ、今起きた所ですので…」
それにしても、見れば見るほど聖書やらに出てきそうな天使そのものの姿をしている。
髪の色や長さはその都度違っているだろうけど、何と言うか、古代の神聖な衣のような布の服に、鳥の物によく似た純白の羽根。
そして、人間と差して変わりの無いその身体。
本当に昔の人は、天使や神様との交流があったのかもしれないと信じたくなってきた。
頭の輪っかもチョコンと乗っかっている訳では無くフワフワと浮いていて可愛らしい。
「そうか…ん?何か落ちたぞ?」
「…?…」
ゆっくり起き上ったアインの服の裾から、何かの紙切れがポロリと落ちて来た。
落ちた拍子に畳まれていた部分が開いたその紙には、まるで書き殴るような慌てた字で色々な事が書いてあった。
「…これは……女神様の字ですね…」
「うぇ?!女神様wっうぇwっうぇwww字ヘt…いででで!」
紙切れを拾ったアインは、それが女神の書いたものだと一瞬で言いきった。
アレクのイメージしていた女神と言う存在がガラスのように崩れ落ち、それに耐えきれず腹を抱えて噴き出す。
しかし、それをボーッとしてそうでどこかムッとした表情のアインがアレクの足を思いっきり鷲掴み、力の限り握る。
ギリギリと握られ、しかもどうやっているのかすね毛を抓まれ引っ張られて行く。
「…女神様の悪口は、マスターだとしても許せません…」
「ごごご、ごめんなさいぃぃっ!いででで……ふぅ…で、何て書いてあるの?」
アレクがそう言うと、アインはまた普通のボーッとした表情に戻りながらも紙切れを渡して来た。
そこに書いてあった文字は、明らかにアレクの見た事が無いような難解な字。
の筈なのだが、アレクにはそれが自然と読めてしまう。
スラスラと文字が走るように読める。
メモの内容は以下の通り。
ただし、単語だらけであり内容も一致しないものだったが。
『 開発部連絡 アイン ツヴァイ ドライ 実験 親子丼 クリスタル封印対象 異性接触 実験被験体 貧乳 ヨーグルト プリン ヨーグルトプリン作って(>∀<)』
とんだ女神様のメモ帳である。
一体全体、何がしたかったのやら。
「………マスター、ヨーグr」
「作らないぞ?!」
ズボンの裾をクイクイと引っ張って、上目遣いで懇願してもアレクには…
効果絶大だった。
思わず吐血しそうになる程の驚愕っぷりは、自身でも感心するほどの演技っぷりであっただろう。
「と、とにかくっ!この「クリスタルなんたら」とか「実験被験体」だとかを調べ…」
「…はい、調べました。マスター…」
とか言って抱きついてきた。
正直に言ってしまうと、もうそろそろ限界が近い。
なにせこんな可愛らしい女の子3人と一緒に暮らす事になってしまい?!
用事を済ませて帰ってきたら寝てた子が起きて抱きついて来て?!
しかも大きなおっぱいが足を包み込んでいる?!
「くぁwせdrftgyふじこlp」
「…クリスタルは私たちの居たクレイドルの事で、被験体とはマスターの……マスター…?」
一体、自分はどんなポーズをしていたのだろうか。
それすらも思い出せない程に焦燥していた事しか記憶にない。
気が付けば、アインがボーッとした表情で見つめている。
結局はいつも通りだと心の中で自分に言い付け、アレクは何とか落ち着きを取り戻す。
「……ふぅ」
「…マスター、お腹が空きました…」
「あぁっと、もうそんな時間なのか。何か作らなきゃ…」
こうして、天使達との奇妙な生活が走り出して行く。
そんな終わり方をしていたとしたら、どんなに綺麗なストーリーだっただろう。
――――――――――――――――――――――
アイン達と出会い、かれこれ一週間が経過した。
今日も天気に恵まれて快晴の気持ちの良い朝が始まる。
「マスターっ!おっきろ〜!」
「くわばらっ!?」
「ちょっとドライ!?何抜け駆け……コホン…アレクに飛びついてんのよ!離れなさいっ!」
「…マスター……ごはん…」
賑やかな面々が、今日もこうして動きだす。
ドライがドタドタと家の中を駆け回っていたかと思えば、いきなりアレクへダイビング。
無防備な状態のアレクはそのまま全体重をかけて圧し掛かられ、一瞬だが息が出来なくなってしまう。
激痛が身体を駆け巡るよりも早く、ドライの大きな胸がアレクの顔を挟む。
それこそがアレクの狙いであり、偶然であり、計略だった。
「…っ!?…えぇのう……ぱふぱふえぇのう…」
「ひゃん♪マスターくすぐったい〜♪」
「あ、アレクゥゥゥゥゥッ!?何なのよその幸せそうな顔はぁぁぁぁっ!!」
「…マスター…おはようございます…」
三者三様の反応を示し、今日も賑やかな一日が始まる。
因みにツヴァイだけ呼び方が「マスター」ではなく「アレク」である事には明確な理由があった。
「今日と言う今日は許さないんだからっ!破壊して蹂躙して、殲滅してやる〜!!」
「えぇのう……えぇのぅ…どわぉ!?」
「このっ!このっ!」
ドライのパフパフを堪能していたアレクの脳天を、ツヴァイの蹴りが直撃した。
盛大に何かが割れるような感覚の後、アレクは息を引き取るようにゆっくりと目を閉じる。
それでも尚、ドライの胸を弄る腕は止まる事を知らず、それどころか余計に激しく揉みしだいているようにすら見える。
胸を強く揉まれて気持ち良さそうに喘ぐドライがいい証拠だろう。
「な、何するのよ!ツヴァ…あふぅ♪マスター、気持ち良ぃ♪」
「ぐぎぎ……なんで私はコイツをマスターにしなくちゃ…クッ…」
「……72…」
「そこ!うっさい!!」
ツヴァイがアレクをマスターと呼ばない理由。
それは至極簡単。
アレクをマスターと認めていないからである。
ドライの大きな胸で幸福感に浸り、アインには色々とセクハラ紛いな行為を繰り返す。
それに対し自分にはやれ「残念な胸」やら「お子様」だのと馬鹿にされ、女性ではなく妹か何かに見られている。
いつの日か、ツヴァイは心の中で「コイツをマスターだとは認めない」と誓うのであった。
「あははっ♪ツヴァイのななじゅーにー♪……何が72なんだろ?」
「馬鹿は黙ってなさいっ!」
「…マスター……お腹が空きました…」
こうしてギャーギャーと喚き散らしながらの日常を送っていた一向だったが…
―――――――――――――
コンッコンッ♪
「アレクー?お届け物よー?」
「ふぇ?俺にか?」
「そう見たい……って」
昼食を済ませ、休みの日な事もあり家で寛いでいたアレクの元に、ツヴァイが郵便物を持って現れる。
そして、郵便物を渡そうと部屋の扉を開けると、ついさっきまで誰も居なかった筈なのに、アインとドライがアレクの膝で膝枕をして寝転がっていたのだ。
「コイツらは……まぁ、いいわ。それよりアレク、早く開けてみて?」
「あぁ、うん…」
「あふぅ……マスターの膝枕気持ちいぃ…zzz」
「…………zzz…」
膝枕されていて動き辛いものの、横に荷物を置いて開けやすくすれば問題ない。
気が付けば二人とも眠っていたのだが、この際置いておいても問題は無かった。
「これは……オイル瓶…?」
「ちょっと待って、手紙も付いてるわ。差出人は……女神様っ?!」
箱の底に入っていた封筒を見つけ、ツヴァイが取り上げ裏を見る。
そこには、なんとも雑な字体で「女神」と書かれていた。
間違いようが無い、アイン達の主である女神の事だろう。
「読んでみるわね…」
「あぁ、頼む…」
封筒から取り出した中にあった手紙を、ツヴァイが読み上げて行く。
内容は以下の通り。
『はいけい しばらく見ない天使達へ。
途中経過の報告が途絶えていて、私はとても心配しています。
手紙を読んだら、お返事が貰えると嬉しいな。
後、ウチの側近がみんなの指令書をすり替えたらしかったのでお仕置きしておきました。
なんだか喜んでたような気がするけど、気にしません。
お詫びの品に、美味しいバニラエッセンスを同封させてあります。
美味しく使ってね♪
p・s 納豆プリンアラモードが美味し過ぎてヤバい』
「……」
「………まぁ、甘い匂いするし、昨日のおすそわけもあるし…ホットケーキでも作るか…」
「っ!?ホットケーキ!ホットケーキ♪」
「…マスター、ホットケーキが食べたいです…」
最後の一文が本当にどうしようもなく関係の無い事だった。
しかも、「ホットケーキ」の単語が飛び出した途端に、アインもドライもいきなり起き上る。
因みにおすそわけと言うのは、昨日近所に越して来たと言う家族からの挨拶ついでに貰った物である。
小麦粉やら片栗粉やらととにかく粉モノばかり渡されて、使い道に困っていたアレクにとっては好都合だったと言えるだろう。
それと同様に近所に越して来たハーピー種の夫婦の何組かから卵も大量に渡されていた。
こいつはもうホットケーキを作るしかあるまい。
「やれやれ…ちょっと作ってくるから待ってて」
『はーい♪』
「……」
ホットケーキを楽しみにして、ワクワクしながらアレクを見つめ続けるアインとドライ。
だが、ツヴァイだけは読み終わった手紙を何度も読み返していた。
拝啓も書けないダ女神に怒りを覚える訳でも、手紙の最後に以上とか付けないダメな女神様略して駄女神に呆れた訳でも無い。
指令所の内容を思い出して違和感を覚えたのだ。
「よっし♪出来たぞー♪」
「わーい♪ホットケーキ!ホットケーキ♪」
「…甘くて良い匂いです…」
あれこれ考えていると、あっという間にホットケーキが出来あがっていたらしい。
送られてきたエッセンスは、生地に混ぜ込んだらしい。
何とも言えない甘く芳醇な香りが鼻腔を刺激してくる。
「どうしたんだ?ツヴァイの分もあるぞ?ほら、あーん」
「あー!ツヴァイずるーい!私も私もー!」
「…マスター、はいあーん…」
いつの間にか、三人とも食べ始めていた。
それぞれが幸せそうな表情でホットケーキを頬張って行く。
手紙を手に、未だに疑問を払拭し切れないでいたツヴァイへ、アレクはホットケーキを一切れ切って差しだす。
周りで色々な行動に出る姉妹がいるが気にしない。
「っ!こ、これくらい一人で……はむっ……おいひぃ…」
「だろ?この前教えてもらった作り方で…あぁ、アインごめん…はぐっ……うん、おいしいぞ」
「あぅあぅ!アインもずるーい!マスター!はいあーん!」
「…嬉しいです、マスター♪」
キャッキャワイワイとそれぞれ自分の皿に乗ったホットケーキを、他の誰かに食べさせあう時間が幾らか過ぎて行く。
―――――――――――――
「ぷぁー♪おなかいっぱーい♪」
「ははは、食べてすぐ寝転がると牛になるんだぞ、ドライ」
「…っ!?マスター、私は牛になってませんか…」
「全く…食後すぐに寝転がり、それを行儀が悪いと注意され仕方なく起き上る時に「もう」と言った事から始まった…状況を考えれば…」
皿の上にあったホットケーキを平らげ、それぞれに楽な姿勢でくつろぐ時間がやって来た。
アレクは壁に身体を預け、もたれ掛っていたり。
アインとドライは満腹になるまで食べたらしく、床に寝転がっていたり。
そしてツヴァイは、椅子の背もたれに抱き付くような格好で座っていたりした。
「さってと、後片付けしなくちゃ…ぅあ…」
「っ!?マスター!?どうしt…はにゃぁ…」
「…マスター、だいじょうb…うにぃ…」
「くぅっ…な、何なのコレ…」
アレクが皿を片づけようと立ち上がり、それを手伝う形で天使一同も手伝いをしようと立ち上がる。
が、次の瞬間に全員を強い眩暈が襲う。
視界が歪み、目の前で平衡感覚が無くなってその場に立っていられなくなり、ヘタリと崩れ落ちる。
それと同時に、身体中を奇怪な違和感が込み上げた。
熱いのだ。
身体の芯から火照るような、心臓の奥が燃えるような苦しさと倦怠感。
それらが、身体を動かそうとする自身の身体を押さえつけてしまう。
「はぁ…はぁ……なん、なんだ…これ…」
「はぅぁぁ……あつぃよぉ…」
「……んぅ!ま、ます…たー……ひぅ…」
「んくっ……や、やっぱり……あんの腰巾着めぇ…あふぅ…」
全員が、身体の疼きを覚え互いの様子を確認しあう。
アレクはその場に座り込み、身体の疼きと火照りを抑える事で精一杯。
アインとドライは、身体をクネクネさせながら荒い息で何かを我慢しているように見える。
そんな中で、ツヴァイだけは状況を分かっているらしかった。
「はぅぅ……つ、ツヴァイ……なんでこうなったか、お前知ってるのか…?」
「んふぅ……さっきの…て、手紙あったでしょ…?あれの「お詫びの品」って奴を…んひぁ!…す、すり替えた奴がいるのよ…」
「…そ、それが側近さん……ですか…」
「そゆこと……あのドMならやりかね…んんっ…」
ツヴァイが言う側近とは、女神の親衛隊を指揮する人物の事だった。
いつも女神に付き添い、妹同然の扱いで女神を褒め千切り愛で、そして何よりマゾプレイを執拗に要求するド変態。
それが側近の第一印象である。
次に彼女の強く残る印象は、悪戯が過ぎる事であった。
先の手紙に書かれていたように、最初に出会った時の物騒な指令書を書いたのも、側近なのだから。
今回の「詫びの品」にも細工を施してあったのだろう。
「ドMって……まぁいいや……と、とりあえずはこの状況…どうにか…っ!あ、アインサン…?ナニヲシテ…?」
「…マスター……マスターのココが…すごく…んぁ……お辛そうなので…」
「だ、だからってどうしてそうなるっ!?」
脳まで蕩けるような快楽へと徐々に変わってきた火照りが、尚も身体の自由を奪う中、アレクの腰へアインが手を伸ばしていた。
細い指がそっと腹に触れ、服の中へ手を滑り込ませて行く。
撫でさするように手を上下させていたかと思えば、スッとズボンの中へ手を差し込んでいきり立つモノに手を触れる。
チョンと触られるだけでも相当の快感が脳を焼いて身体を痺れさせていく。
あまりの気持ち良さに、身体がビクンと跳ねてしまう。
「…マスター……マスターのココ……すっごくあついです…」
「うぅ…」
「はぅあぁ〜…」
「ちょ!?なんてモン見せ…はぅあぁぁ!……くっ、こんな…」
滑るような手つきであっという間にズボンを脱がせ、いきり立ちビクビクと震える逸物が露わになる。
それをアインは、何のためらいも無く指を這わせて皮を剥いて、キツい匂いを堪能していく。
一方のアレクはと言うと、身体を起き上らせるだけで精一杯な程に身体が脱力して動けない。
媚薬の所為で敏感になっている愚息を、アインの指が何度も執拗に扱く。
「うあぁぁ…」
「…気持ち良いですか…マスター……れるっ…」
「はぅっ……ほ、欲しくなんか……ひぁ!……げ、解毒は…」
「あふぁ〜♪マスターのおいしそ〜♪」
何度も上下に扱き、アレクの愚息をいきり立たせる。
ソレはビクビクと時折震えて、その度にアレクは小さく呻く。
この繰り返しが、一体どれだけ続いただろうか。
いつの間にか、ドライもアインと一緒になってアレクのモノを舐めはじめていた。
「…そろそろですね……マスター、こっちに…入れますね……ひぁぁぁぁぁ…」
「むむぅ…ましゅたー!次、あたしらからねっ!」
「ちょっ!二人とも止め…あうぅっ!?」
何度も舌を這わせ、ピチャピチャと嫌らしい音を立てていたアレクの股間。
今となっては、アインが腰を降ろしてアレクの童貞を奪っていた。
気が狂いそうな快感と刺激に、両者ともに喘いでしまう。
その隣では、それらを羨ましそうに見つめるドライの姿があったが、その表情はトロンとしており、媚薬にあてられたのか酒に酔ったのか分からなくなっていた。
「んぁっ!…はぅ…んぅ……気持ち良いです…か…?……マスタ…あぁっ!?」
「うぐぅ……す、すっごく締まって……あっ!?ヤバイ!もう…」
「…出して下さい…あはぁ……マスターの…ドロっとしたの……らして…しゅっきり……してくらしゃいぃぃぃ…」
快楽をねだるように強く腰を振るアイン。
段々とそれらを制御できなくなって行き、呂律が回らなくなって行く。
それと比例するように、アインの腰の振りと締め付けは強さと気持ち良さを増して行った。
「出るっ!出る出る出る…うあぁああぁぁぁぁぁぁっ!?」
「…んんんっ♪きてまひゅ……ましゅたー…の……いっぱいぃぃぃぃ…」
我慢する事も出来ずに、アレクはとどめとばかりに自分で強く腰を打ち付け、アインの子宮口を穿つ。
強烈に打ち付ける快感を一番奥で受け止めたアインの膣を、アレクの精液が大量に流れ込む。
ドクドクと脈打ちながら己の滾りの限りをアインへ流し込んでいく。
「…はぁ……はぁ……ます…たー…」
「あが……ぐぁ……」
アレクの精を大量に流し込まれ、アインは嬉しそうに笑みを向ける。
だが、アレクは満身創痍一歩手前と言った感じにダウンしていた。
しかし。
「アインばっかりずるいー!マスター!いっくよー!」
「あぅ!…ど、ドラ…いぃぃぃぃぃぃいいぃっ?!?!」
快感の余韻に浸って、アレクとの愛を確かめようともたれ掛っていたアインを、ドライは引き剥がす。
二人の繋がりが無情にも引き裂かれ、代わりにドライがアレクの股間へ腰を落とす。
つい先程まで快感に浸る余裕も無かったアレクにとって第二ラウンドは、まさに地獄と言えた。
「あっはぁぁぁぁあ♪はじめてって痛いって聞くけど…んひぅ♪…やっぱりいったーい♪」
「ちょっ…き…きゅうけ…んんっ!?」
グッタリとしてほとんど身体を動かせないアレクを尻に敷き、ドライは強引に腰を振る。
ジュプジュプと音を立て、アレクの逸物に膣の奥を突いて貰う。
その気持ち良さは相当の物らしく、ドライの顔を見てみると物凄く恍惚に浸って蕩けていた。
舌はダランと垂れて涎は出ているし、目も虚ろで呼吸もすごく荒い。
なにより、性を貪るかのように腰を打ち付けてくるのだ。
「うぐぁぁぁ…ど、ドライィィィィィ…」
「あはぁぁぁぁ♪ますたー!きもひぃんらよねぇぇぇ♪」
「……zzz」
「……っ…」
ちょっとここでこの場所の状況を整理したいと思う。
まず初めに、アレクとドライは廊下への扉付近で互いに性を貪り合っている。
そのすぐ隣ではアインが精液まみれになりながら、疲労困憊で眠っている。
ツヴァイはと言うと、それらを見つめながら自慰に耽っていた。
「あっ!?うあぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
「んんっ!きったあぁぁぁぁぁぁぁぁ……ましゅたー…きもひ…よかったぁ…?」
あまりに強烈な責めに、アレクはあえなくドライの膣内へドクドクと精液を流し込む。
グリグリと膣肉を押し広げて、子宮のすぐ近くで一気にその迸りを叩き付ける。
それに呼応するように、ドライの膣内はキュッとアレクの逸物を締め上げて精液をもっとと強請った。
気持ち良い締め付けに耐えられる訳も無く、アレクはドクドクと何度もドライの膣内へ流し込み続ける。
「あひゃっ…もっ…らみぇぇぇ…」
「うぐっ……はぁ…はぁ…」
受け止めきれない程に大量の精液と快感を浴びて、ドライはフッと糸の切れた人形のように倒れ込む。
アレクの胸に倒れ込んだドライの呼吸はとてつもなく荒々しく、そして小さな物だった。
まるで今にも命を落としそうな小動物のような、そんな儚さが彼女からは感じられる。
そっと二人の繋がりを解いてやると、ドライは小さく喘いで眠るように意識を失う。
「はぁ…はぁ……」
「……ますたー…」
アインとドライを少し離れた場所に寝かせ、アレクはホッと一つ溜め息を吐いてその場に倒れ込む。
先程までの行為の所為で身体は疲労しきっており、ロクに身体を動かす事も出来ない。
するとそこへ、自身の胸と股間を指でいじくり回すツヴァイが現れる。
どうやら他の二人と同様に準備は万全らしく、後はアレク次第と言った所か。
「つ、ツヴァイ…」
「はぁ…はぁ……まだ、なんでしょ…?私が…満足させてあげるから…」
荒い呼吸をさせながら、仰向きになっているアレクの上にツヴァイが跨って体勢を整えた。
一向に衰える所を知らないアレクの逸物を手に掴み、その硬さを指で感じ取る。
触れられるだけで肉棒がビクンッと震えて刺激を待ち遠しそうにプルプルと震え始めた。
我慢汁が亀頭を濡らし、他の二人の愛液も混ざって逸物はびしょ濡れ。
そんな所へ、自身もタップリと濡れているのに入りにくい訳が無い。
「んっ……っはぁぁぁぁぁぁ…」
「うぁぁぁぁ…き、きついぃ…」
ツヴァイからすれば初めて膣内へ迎える男性器。
それがこんな逸物だったのならば、どれだけの快楽が彼女の身体を蝕むのだろうか。
だがそれはアレクの方にも言えることだった。
小さなツヴァイの膣がキュンキュンと締め付け、まるで愛した者を離さない覚悟の現れのようにすら思わせる。
痛みは感じさせず、快楽のみを与え続ける締め付けでツヴァイは軽く達してしまう。
「はぁ…はぁ……ましゅたー……らいすきぃ…」
「くぁぁ……お、俺も…うあっ!」
尚もキツくキュンキュンと締め上げてくる膣圧に、アレクはそう長く耐えることは出来ない。
今にも彼女の膣の奥へ吐きだしてしまいそうな時に彼女から告げられる告白の言葉。
心にドキッと来る物と共に理性のタガが外れてしまい、彼女たちを愛さずには居られなくなってくる。
それが、ツヴァイの蕩けた表情を可愛らしく思ったからなのか、魔力の影響なのかは誰も分からない。
ただそこに愛し合う者たちが居る。
これに尽きる、と言う物だ。
「ひんっ!ましゅたー!そこっ…りゃめぇ!」
「くぁ……で、出る出る……出すぞぉぉぉ!」
「くひぃぃ……い、いっぱいぃ…どくどくでてりゅぅ…」
何度となくツヴァイの膣内の気持ち良い場所を強く突き上げ、彼女を快楽へと溺れさせて行く。
ジュブジュブと嫌らしい音を立てながら腰を振り、互いを限界まで愛し合う。
そうして暫く経つと、アレクに限界が訪れる。
ビクンビクンと逸物の根本が数回脈打ち、彼女の膣のその奥へと深く腰を打ち付けた。
次の瞬間には、彼女の意識を焼き尽くしそうな程に熱い精液がドクドクと流し込まれて行く。
「……っあはぁ……まひゅたー……ひゅごいよぉぉ…」
「はぁ…はぁ……ツヴァイぃ…」
何度も何度も、ツヴァイの膣内へ射精したアレクは彼女を抱えたまま目の前が真っ白になって行く。
それを追いかけるように、ツヴァイもアレクにもたれかかったまま意識を闇の中へ手放す。
快感が二人を祝福するように、二人はとても安らかな気持ちで眠ってしまうのだった。
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「おぉい!三人とも〜?おやつが出来たぞー?」
「はーい♪今行くね、マスター♪」
「アレクの手作りねぇ……また何かおかしなものでも入ってなきゃいいけど…」
「…マスター…大好きです…」
ついこの間の様に感じていたあの事件(ホットケーキ媚薬事件と名付けた)からはや数日が経っていた。
今日も貰い物の粉モンと卵を沢山消費して、今回もホットケーキを焼いたのだ。
因みに、前回使って下さいと送られてきたバニラは勿論捨てさせて貰った。
あんな恐ろしい物をまた手違いで使ってしまった日には、気絶するまで絞り取られてしまうだろう。
貰い物故少し勿体無い気もしたのだが、やはり危ない物は処分するに限る。
食べ物を粗末にしてはいけないだろうが、危険な食べ物をわざわざ食べるほど彼らの身体は丈夫ではない。
「うん、今回も上々の出来だな………ツヴァイ?」
「……ふぇ?な、なに…?」
皆で美味しくホットケーキを食べていると、ふとアレクはツヴァイが少し暗そうにしているのが目に留まる。
何か考え事でもしているようだったが、どう見ても楽しい事を考えてるようには見えない。
「ツヴァイ〜♪はい、あーん♪」
「…ツヴァイ、私からも…」
「……よ、よっし、俺からもだ!ほら、あーん!」
まるでこのくらい空気を何とかしたいと言う意思が伝わったかのように、計算されたタイミングでドライとアインがフォークに一口大のケーキを刺してツヴァイの口元へ持って行く。
それに倣い、アレクも二人と同じようにケーキを彼女の口元へ持って行く。
「み、みっつもいっぺんだなんて…そんなの入らないよぉ…」
「あっはは♪ツヴァイかわい〜♪」
こんな微笑ましい生活が、いつまでも続く事をアレクは心の中で密かに願うのだった。
angel fall 狂想曲第二楽章〜舞い『堕ちる』天使達〜 へ続く
13/03/20 21:16更新 / 兎と兎