『第1話 結成?!文◎印読売紙!?』
時は戦国、火の手の絶えない動乱が続く時代…
から数十年が過ぎ去り、現在は安寧の世を迎え、人々は平和な日々を過ごしていた。
「はぁぁぁぁ……あの人は帰って来ないし、やることないし…はぁぁぁ…」
机に突っ伏しながらため息を吐くこの少女こそが、この物語の主人公にしてヒロインである。
その名は「アヤマル」と言う。
魔王の代替わりの直前に男として生を受けたものの、すぐに魔王が代替わりし身体は女性のソレへ入れ替わる。
よって、名前のみが男性らしさを残したという奇天烈な過去を持つ。
元は上流階級のカラステングの子息だったのだが、代替わり後に両親ともに母親になりそれぞれ別の夫と生活中。
かく言うアヤマルも、旦那は居るのだが…
「はぁぁぁぁぁ……早く帰ってきてくださいよぉ…」
ここ数週間の間は、旦那が出稼ぎへ出掛けていて会えないでいるのだった。
寂しさを紛らわせるために小説や絵なんかも書いてみたが全てがダメ。
旦那の元へシュバッと飛んで行きたくても、旦那が出掛ける際に「帰ってきたらうーんと楽しもう?」と言っていたのを思い出して自粛。
実家に帰った所で聞こえてくるのは喘ぎ声ばかりで腹が立つ。
「……んぁ?これは……読売ですか…」
ふと、窓の隅に置かれた丸められた紙を見つけた。
ノソリとした足取りでそれを取り、中身を改める。
中に書いてあったものは、旦那が出稼ぎへ行っていた鉱山の発掘作業が終わり、笑顔で帰還していく旦那達の聴取だった。
中身を良く探すと、旦那のものと思しき聴取が見つかってアヤマルの表情がどこか和らぐ。
「『早く帰ってカラステングの妻にただいまと言いたいです――20代・男性』ですか……うふふっ♪」
読売を広げ、その中身を読んでニヤニヤしているその様は、傍から見れば怪しい人以外の何者でも無い。
それと同時に、これはいいものを見つけたと言わんばかりの表情で読売を穴が開きそうな程見つめた。
「そうですよっ!私も作ればいいんです、読売をっ!?私ってば頭いい〜♪」
そう叫び、机の上に何処からともなく紙と筆を置く。
実は旦那のプレゼントであるこの机には少々面白い仕掛けが施されているのだ。
机の手前側に小さなくぼみがあり、それを勢いよく叩くと、反動で扉が開き中から筆と硯が飛び出す仕組みになっている。
旦那が、実家に置いてあった設計図から作り上げたらしく、作り上げた時の笑顔をアヤマルは忘れられないでいた。
「えっへへ〜、さて何を書きましょうかね〜♪」
墨を用意し、筆を握り、机とにらめっこを始めるアヤマル。
その表情は誰が見ても真剣そのものであった。
―――――――――――――――――――――――
「う〜〜〜〜〜〜ん………う〜〜〜〜ん……」
一体、どれだけの時間をこうやってにらめっこしているだけで過ごしただろうか。
当の昔に日は傾き赤茶けた空が一面を覆い、遊びから帰って来たのであろう子供たちの声や仕事から帰って来た大人たちの声が行き交う。
そんな雑踏をすぐ近くに感じながら、アヤマルは只管に読売の文面を考えていた。
「……どぅあ〜〜〜〜〜〜〜っ!何も思い付きません〜〜〜っ!!」
遂には怒りのタガが外れてしまい、筆を地面に叩きつけて自分の頭を掻き毟り始めてしまう。
「はぁっ……はぁっ……あぅぅ…」
まるで気が狂った狂人の様なポーズを取った後、アヤマルは改めて自分の状況を整理しようとした。
しかし、血眼になって考えていた文面の数々を思い出してしまった所為か、頭に血が昇り過ぎて急に意識が遠のいて倒れそうになる。
「危ないっ!」
「はぅぁ……あぅぅ…ご、ご主人〜…」
バランスを崩し倒れそうになった所へ、アヤマルの旦那が駆け付けた。
間一髪、彼女が倒れる前に手を伸ばし、あわや大惨事となる前に力強く受け止め抱き上げる。
「ひゃいっ?!ご、ご主人っ!?」
「良かったよ、アヤマルが無事で……ただいま♪」
まさか旦那に受け止めて貰うとは思っても見なかったアヤマルは、つい驚いて飛び跳ねた。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたアヤマルを見て、仕事帰りだった旦那の表情が自然と綻ぶ。
そのまま、旦那がアヤマルをお姫様抱っこで抱き上げる。
「ご、ごしゅっ…」
「…たまにはご主人じゃなくってちゃんと呼んで欲しいな」
お姫様抱っこのままの状態で、慌てて喋ろうとするアヤマルの口を、旦那がキスをして塞ぐ。
暫くの間、舌を絡ませるでもなくお互いにそのままの状態を維持していたが不意に唇を離す。
「は、はいっ……えと……く、九郎…」
「うん、それでよしっ♪」
いつものようにどこか余所余所しさを感じさせる呼び方では無く、名前で呼ばれて笑顔を向ける九郎。
作り笑いの一切感じられない、愛情の籠った笑顔に心を打たれたアヤマルは顔を真っ赤にしてしまう。
腕の羽根を用いて必死に隠そうとして入るのだが、その動作だけでも照れ隠しにしか見えないので意味が無い。
モジモジしているアヤマルを見ながら、九郎はアヤマルを寝室へ連れて行く。
それが意味するところとは。
「はぇ?!く、九郎?!そっちは寝室ですよっ?!」
「……」
居間を抜けて、布団が敷かれている寝室へアヤマルを運ぶ九郎。
そして、既に干して敷かれていた布団の上にアヤマルを優しく寝かせる。
「お、お仕事から帰ったばかりで疲れて…んむぅ!?」
「……プハッ…それ以上に、アヤマルを愛して居たいんだっ!」
そっと寝かせられたアヤマルは、慌てふためきながらもなんとかして九郎を落ち着かせようとする。
だが、もう既にスイッチの入っていた九郎は止まる術も無く、アヤマルの上へ覆いかぶさるように体勢を入れ替えた。
そしてそのまま、アヤマルが顔を真っ赤にして慌てるのも気にせず、顔に手を添えキスをして彼女の言葉を弾く。
「あ、あいしてって……はぅぅ…」
顔が先程以上に真っ赤に上気し、マトモに頭も回らなくなってきた頃。
アヤマルがどこかに設けていたのであろう心のタガが音を立てて砕け散っていく。
「くろぅ〜!くろ〜!くろ〜!くろ〜〜!!」
「おっとと…」
突然にアヤマルが、鳥の手足を器用に使って九郎へと抱き付く。
ピッタリと身体を密着させて、互いの体温を感じ会う様な強烈な抱擁。
「寂しかったよぉぉぉ!!くろぉぉぉっ!!」
「僕もだよ、アヤマルッ!」
互いに目の前で叫んでいる最愛の人物の名前を叫び、そうして次には深くそして淫らに舌を絡め合うキスを交わす。
「んぅぅぅっ……ジュルルッ…んふぅ……れぅ…」
ピチャピチャと水の弾けるような音を奏でながら、二人のキスは時間を追うごとに強くなって行く。
最初からガッツリ行ったと思いきや、何度も舌を絡め合い愛し合う。
そうした光景が、およそ数分間と続いた。
「…プハァ……はぁ…はぁ……くりょぉぉぉ…」
「はぁ…はぁ……アヤマル…」
深く強いキスを繰り返した末に、アヤマルの顔は涎や涙でクチャクチャになっていた。
それに加え、先程までの快感に身体が耐えきれないのか、その表情は少々女の子にあるまじき下品な顔になっていた。
だが九郎はそれを何も言わず、ただ笑みを向けながら顔の周りを拭いて行く。
「……はいっと、おわ…」
「おわっちゃやらぁぁぁ!つゆけてぇぇ!!」
「もちろんさぁっ!」
顔の身だしなみを整える作業が終わった事をアヤマルに伝えようとした九郎だったが、アヤマルは頭の中で勘違いをしている。
そして、そのまま意味が入れ換わりつつ二人は服を脱ぎ、生まれたままの姿になった。
九郎はやはり出稼ぎに出向くだけの事はあり、健康的でとても良い身体を持っていた。
アヤマルは、女性故に九郎の様な力のある身体付きはしていない。
だが、その代わりに肌は綺麗な肌色をしているし、肌の艶も良い。
それにスタイルを除けば、顔立ちだって綺麗だし非の打ちどころが無い。
胸の小ささをコンプレックスとしてはいたが。
「よっし、今度はこっちに挿れるよ?!」
「うんっ♪きてぇぇぇ♪」
ねだるアヤマルの望みに応えるように、九郎は自身のいきり立った逸物をアヤマルの膣内へ挿し入れる。
押し入るように、捻じ込むようにアヤマルの膣を犯し、蹂躙し、久々の旦那の快感をアヤマルに味わってもらう。
アヤマルの方も、久々に招き入れた旦那の剛直に押し広げられて頭の奥まで快楽で痺れそうになって行く。
「ひゃぁぁぁぁっ!ぞ、ぞくぞくぅって……くりょぉぉぉ…こわいにょぉぉぉ…」
「あぁ、すぐ楽にしてあげるから…ふぬぅぅぅ!!」
激しく腰をぶつけあい、お互いの愛の深さを再確認し合う。
久し振りに九郎と交わったアヤマルは、背筋が震えるような快楽に恐怖感すら覚え、九郎へ助けを求める。
助けて欲しいと言われた九郎は、言われたとおりに彼女を救い出そうと、出来る限り早く腰を振り続ける。
その速度は徐々に速まって行ってはアヤマルを絶頂へ何度も導いて行く。
「いっひゃうぅぅぅぅ!またっ!またぁぁ…っ!?っあぁぁぁぁぁぁぁぁああぁっ!?」
「ぼ、ぼくもっ!アヤマルの膣内にいっぱい…出るぅぅぅぅっ!!」
何度目になるか分からない程に果て続けたアヤマルは、その度に九郎の肉棒をこれでもかと締め付け精液を強請る。
その要望に応えるべく、九郎は一際強くアヤマルの膣内へ腰を突き入れ、奥の奥に到達すると同時に自身の迸りの全てを彼女にぶちまけた。
ドクドクと大量の精液が、九郎の元を離れてアヤマルの膣のその更に奥へ侵入して行く。
「あひゃぅあぁぁぁぁぁぁ♪れてりゅぅ♪いっぱぁい…れてりゅぅぅぅ♪」
「ぐぅあ…ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
鳥の足で九郎をかにばさみで挟み込み、両腕の翼で九郎に抱きついて愛する夫の絶頂を共に感じるアヤマル。
それと同じように、最愛の妻をそのしっかりとした両腕で包み込んでありったけの精液を流し込む九郎。
この二人は今、これまでに歩んできた人生の中で一番幸福な時間を過ごして行く。
――――――――――――――――――――――――――
「―――えへへ……これでいいかなっと♪」
あれからいくらか時が過ぎた。
机の前には、アヤマルが羽根ペンを器用に使って紙に文字を書いていた。
書いている内容は、そこらの井戸端会議で手に入る情報や最愛の夫からの一言アドバイスまで盛りだくさん。
「アヤマルー?何を書いているんだい?」
「ふぇ?!ご、ご主人!?みちゃらめぇぇぇぇ!!」
ヒョコッと横から顔を出して覗きこんでくる気配に、アヤマルは反射的に翼を用いて書いていた紙をその下へ隠して狸寝入りを決め込む。
が、そんな行動を取る前から最愛の妻の嬉しそうな表情を見ていた九郎に、そんな猿芝居は通用しない。
ヒョイと身体を軽々と持ち上げられて、机の上に広げられた数枚の紙に目が行く。
『文◎印の最速読売 創刊号〜愛する夫との情事集〜』
そんな文面がデカデカと書かれ、その下には今までアヤマルと九郎が重ねて来た淫行の数々がズラズラと書き連ねられていた。
「………///」
「………ポッ///」
ポッじゃねぇよ!!
読者の方々はそう思う事だろう。
かく言う私だってそうさ。
「え……えぇと……こ、子供が読んじゃいけないと思う…よ…?」
「は、はいぃ…」
どう言っていいのか上手い言葉が見つかる訳も無く、九郎は苦し紛れに常識溢れた指摘を上げてみた。
それに従い、紙を丸めて捨てるアヤマルの表情はどことなく落ち込んでいたのだが、自業自得としか言いようがない。
こうして、文◎印の最速読売は、アヤマルの集める情報読売として連載が開始された。
続く
――――――――――
文◎印の最速読売 〜愛する夫との情事集〜
婚儀を結んだ直後と言うのは互いに気持ちが高ぶっている場合が多いらしい。
それ故なのか、夫は私の唇をいきなり奪ってきました。
互いに唾液を交換し合う時の快感は、頭がどうにかなりそうな程です。
それから、着物を乱暴にずらして私と交わる夫の表情は、今でも忘れられないくらい可愛い顔でした。
何度となくドクドクと流される夫の愛の証は、私の中にずっと…(ここで文章は途切れている
――――――――――
から数十年が過ぎ去り、現在は安寧の世を迎え、人々は平和な日々を過ごしていた。
「はぁぁぁぁ……あの人は帰って来ないし、やることないし…はぁぁぁ…」
机に突っ伏しながらため息を吐くこの少女こそが、この物語の主人公にしてヒロインである。
その名は「アヤマル」と言う。
魔王の代替わりの直前に男として生を受けたものの、すぐに魔王が代替わりし身体は女性のソレへ入れ替わる。
よって、名前のみが男性らしさを残したという奇天烈な過去を持つ。
元は上流階級のカラステングの子息だったのだが、代替わり後に両親ともに母親になりそれぞれ別の夫と生活中。
かく言うアヤマルも、旦那は居るのだが…
「はぁぁぁぁぁ……早く帰ってきてくださいよぉ…」
ここ数週間の間は、旦那が出稼ぎへ出掛けていて会えないでいるのだった。
寂しさを紛らわせるために小説や絵なんかも書いてみたが全てがダメ。
旦那の元へシュバッと飛んで行きたくても、旦那が出掛ける際に「帰ってきたらうーんと楽しもう?」と言っていたのを思い出して自粛。
実家に帰った所で聞こえてくるのは喘ぎ声ばかりで腹が立つ。
「……んぁ?これは……読売ですか…」
ふと、窓の隅に置かれた丸められた紙を見つけた。
ノソリとした足取りでそれを取り、中身を改める。
中に書いてあったものは、旦那が出稼ぎへ行っていた鉱山の発掘作業が終わり、笑顔で帰還していく旦那達の聴取だった。
中身を良く探すと、旦那のものと思しき聴取が見つかってアヤマルの表情がどこか和らぐ。
「『早く帰ってカラステングの妻にただいまと言いたいです――20代・男性』ですか……うふふっ♪」
読売を広げ、その中身を読んでニヤニヤしているその様は、傍から見れば怪しい人以外の何者でも無い。
それと同時に、これはいいものを見つけたと言わんばかりの表情で読売を穴が開きそうな程見つめた。
「そうですよっ!私も作ればいいんです、読売をっ!?私ってば頭いい〜♪」
そう叫び、机の上に何処からともなく紙と筆を置く。
実は旦那のプレゼントであるこの机には少々面白い仕掛けが施されているのだ。
机の手前側に小さなくぼみがあり、それを勢いよく叩くと、反動で扉が開き中から筆と硯が飛び出す仕組みになっている。
旦那が、実家に置いてあった設計図から作り上げたらしく、作り上げた時の笑顔をアヤマルは忘れられないでいた。
「えっへへ〜、さて何を書きましょうかね〜♪」
墨を用意し、筆を握り、机とにらめっこを始めるアヤマル。
その表情は誰が見ても真剣そのものであった。
―――――――――――――――――――――――
「う〜〜〜〜〜〜ん………う〜〜〜〜ん……」
一体、どれだけの時間をこうやってにらめっこしているだけで過ごしただろうか。
当の昔に日は傾き赤茶けた空が一面を覆い、遊びから帰って来たのであろう子供たちの声や仕事から帰って来た大人たちの声が行き交う。
そんな雑踏をすぐ近くに感じながら、アヤマルは只管に読売の文面を考えていた。
「……どぅあ〜〜〜〜〜〜〜っ!何も思い付きません〜〜〜っ!!」
遂には怒りのタガが外れてしまい、筆を地面に叩きつけて自分の頭を掻き毟り始めてしまう。
「はぁっ……はぁっ……あぅぅ…」
まるで気が狂った狂人の様なポーズを取った後、アヤマルは改めて自分の状況を整理しようとした。
しかし、血眼になって考えていた文面の数々を思い出してしまった所為か、頭に血が昇り過ぎて急に意識が遠のいて倒れそうになる。
「危ないっ!」
「はぅぁ……あぅぅ…ご、ご主人〜…」
バランスを崩し倒れそうになった所へ、アヤマルの旦那が駆け付けた。
間一髪、彼女が倒れる前に手を伸ばし、あわや大惨事となる前に力強く受け止め抱き上げる。
「ひゃいっ?!ご、ご主人っ!?」
「良かったよ、アヤマルが無事で……ただいま♪」
まさか旦那に受け止めて貰うとは思っても見なかったアヤマルは、つい驚いて飛び跳ねた。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたアヤマルを見て、仕事帰りだった旦那の表情が自然と綻ぶ。
そのまま、旦那がアヤマルをお姫様抱っこで抱き上げる。
「ご、ごしゅっ…」
「…たまにはご主人じゃなくってちゃんと呼んで欲しいな」
お姫様抱っこのままの状態で、慌てて喋ろうとするアヤマルの口を、旦那がキスをして塞ぐ。
暫くの間、舌を絡ませるでもなくお互いにそのままの状態を維持していたが不意に唇を離す。
「は、はいっ……えと……く、九郎…」
「うん、それでよしっ♪」
いつものようにどこか余所余所しさを感じさせる呼び方では無く、名前で呼ばれて笑顔を向ける九郎。
作り笑いの一切感じられない、愛情の籠った笑顔に心を打たれたアヤマルは顔を真っ赤にしてしまう。
腕の羽根を用いて必死に隠そうとして入るのだが、その動作だけでも照れ隠しにしか見えないので意味が無い。
モジモジしているアヤマルを見ながら、九郎はアヤマルを寝室へ連れて行く。
それが意味するところとは。
「はぇ?!く、九郎?!そっちは寝室ですよっ?!」
「……」
居間を抜けて、布団が敷かれている寝室へアヤマルを運ぶ九郎。
そして、既に干して敷かれていた布団の上にアヤマルを優しく寝かせる。
「お、お仕事から帰ったばかりで疲れて…んむぅ!?」
「……プハッ…それ以上に、アヤマルを愛して居たいんだっ!」
そっと寝かせられたアヤマルは、慌てふためきながらもなんとかして九郎を落ち着かせようとする。
だが、もう既にスイッチの入っていた九郎は止まる術も無く、アヤマルの上へ覆いかぶさるように体勢を入れ替えた。
そしてそのまま、アヤマルが顔を真っ赤にして慌てるのも気にせず、顔に手を添えキスをして彼女の言葉を弾く。
「あ、あいしてって……はぅぅ…」
顔が先程以上に真っ赤に上気し、マトモに頭も回らなくなってきた頃。
アヤマルがどこかに設けていたのであろう心のタガが音を立てて砕け散っていく。
「くろぅ〜!くろ〜!くろ〜!くろ〜〜!!」
「おっとと…」
突然にアヤマルが、鳥の手足を器用に使って九郎へと抱き付く。
ピッタリと身体を密着させて、互いの体温を感じ会う様な強烈な抱擁。
「寂しかったよぉぉぉ!!くろぉぉぉっ!!」
「僕もだよ、アヤマルッ!」
互いに目の前で叫んでいる最愛の人物の名前を叫び、そうして次には深くそして淫らに舌を絡め合うキスを交わす。
「んぅぅぅっ……ジュルルッ…んふぅ……れぅ…」
ピチャピチャと水の弾けるような音を奏でながら、二人のキスは時間を追うごとに強くなって行く。
最初からガッツリ行ったと思いきや、何度も舌を絡め合い愛し合う。
そうした光景が、およそ数分間と続いた。
「…プハァ……はぁ…はぁ……くりょぉぉぉ…」
「はぁ…はぁ……アヤマル…」
深く強いキスを繰り返した末に、アヤマルの顔は涎や涙でクチャクチャになっていた。
それに加え、先程までの快感に身体が耐えきれないのか、その表情は少々女の子にあるまじき下品な顔になっていた。
だが九郎はそれを何も言わず、ただ笑みを向けながら顔の周りを拭いて行く。
「……はいっと、おわ…」
「おわっちゃやらぁぁぁ!つゆけてぇぇ!!」
「もちろんさぁっ!」
顔の身だしなみを整える作業が終わった事をアヤマルに伝えようとした九郎だったが、アヤマルは頭の中で勘違いをしている。
そして、そのまま意味が入れ換わりつつ二人は服を脱ぎ、生まれたままの姿になった。
九郎はやはり出稼ぎに出向くだけの事はあり、健康的でとても良い身体を持っていた。
アヤマルは、女性故に九郎の様な力のある身体付きはしていない。
だが、その代わりに肌は綺麗な肌色をしているし、肌の艶も良い。
それにスタイルを除けば、顔立ちだって綺麗だし非の打ちどころが無い。
胸の小ささをコンプレックスとしてはいたが。
「よっし、今度はこっちに挿れるよ?!」
「うんっ♪きてぇぇぇ♪」
ねだるアヤマルの望みに応えるように、九郎は自身のいきり立った逸物をアヤマルの膣内へ挿し入れる。
押し入るように、捻じ込むようにアヤマルの膣を犯し、蹂躙し、久々の旦那の快感をアヤマルに味わってもらう。
アヤマルの方も、久々に招き入れた旦那の剛直に押し広げられて頭の奥まで快楽で痺れそうになって行く。
「ひゃぁぁぁぁっ!ぞ、ぞくぞくぅって……くりょぉぉぉ…こわいにょぉぉぉ…」
「あぁ、すぐ楽にしてあげるから…ふぬぅぅぅ!!」
激しく腰をぶつけあい、お互いの愛の深さを再確認し合う。
久し振りに九郎と交わったアヤマルは、背筋が震えるような快楽に恐怖感すら覚え、九郎へ助けを求める。
助けて欲しいと言われた九郎は、言われたとおりに彼女を救い出そうと、出来る限り早く腰を振り続ける。
その速度は徐々に速まって行ってはアヤマルを絶頂へ何度も導いて行く。
「いっひゃうぅぅぅぅ!またっ!またぁぁ…っ!?っあぁぁぁぁぁぁぁぁああぁっ!?」
「ぼ、ぼくもっ!アヤマルの膣内にいっぱい…出るぅぅぅぅっ!!」
何度目になるか分からない程に果て続けたアヤマルは、その度に九郎の肉棒をこれでもかと締め付け精液を強請る。
その要望に応えるべく、九郎は一際強くアヤマルの膣内へ腰を突き入れ、奥の奥に到達すると同時に自身の迸りの全てを彼女にぶちまけた。
ドクドクと大量の精液が、九郎の元を離れてアヤマルの膣のその更に奥へ侵入して行く。
「あひゃぅあぁぁぁぁぁぁ♪れてりゅぅ♪いっぱぁい…れてりゅぅぅぅ♪」
「ぐぅあ…ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
鳥の足で九郎をかにばさみで挟み込み、両腕の翼で九郎に抱きついて愛する夫の絶頂を共に感じるアヤマル。
それと同じように、最愛の妻をそのしっかりとした両腕で包み込んでありったけの精液を流し込む九郎。
この二人は今、これまでに歩んできた人生の中で一番幸福な時間を過ごして行く。
――――――――――――――――――――――――――
「―――えへへ……これでいいかなっと♪」
あれからいくらか時が過ぎた。
机の前には、アヤマルが羽根ペンを器用に使って紙に文字を書いていた。
書いている内容は、そこらの井戸端会議で手に入る情報や最愛の夫からの一言アドバイスまで盛りだくさん。
「アヤマルー?何を書いているんだい?」
「ふぇ?!ご、ご主人!?みちゃらめぇぇぇぇ!!」
ヒョコッと横から顔を出して覗きこんでくる気配に、アヤマルは反射的に翼を用いて書いていた紙をその下へ隠して狸寝入りを決め込む。
が、そんな行動を取る前から最愛の妻の嬉しそうな表情を見ていた九郎に、そんな猿芝居は通用しない。
ヒョイと身体を軽々と持ち上げられて、机の上に広げられた数枚の紙に目が行く。
『文◎印の最速読売 創刊号〜愛する夫との情事集〜』
そんな文面がデカデカと書かれ、その下には今までアヤマルと九郎が重ねて来た淫行の数々がズラズラと書き連ねられていた。
「………///」
「………ポッ///」
ポッじゃねぇよ!!
読者の方々はそう思う事だろう。
かく言う私だってそうさ。
「え……えぇと……こ、子供が読んじゃいけないと思う…よ…?」
「は、はいぃ…」
どう言っていいのか上手い言葉が見つかる訳も無く、九郎は苦し紛れに常識溢れた指摘を上げてみた。
それに従い、紙を丸めて捨てるアヤマルの表情はどことなく落ち込んでいたのだが、自業自得としか言いようがない。
こうして、文◎印の最速読売は、アヤマルの集める情報読売として連載が開始された。
続く
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文◎印の最速読売 〜愛する夫との情事集〜
婚儀を結んだ直後と言うのは互いに気持ちが高ぶっている場合が多いらしい。
それ故なのか、夫は私の唇をいきなり奪ってきました。
互いに唾液を交換し合う時の快感は、頭がどうにかなりそうな程です。
それから、着物を乱暴にずらして私と交わる夫の表情は、今でも忘れられないくらい可愛い顔でした。
何度となくドクドクと流される夫の愛の証は、私の中にずっと…(ここで文章は途切れている
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13/01/02 22:13更新 / 兎と兎
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