連載小説
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第1章 水色のバカが仲間になりたそうに(ry
よく風の吹く良い環境の下にある小高い丘がある。そこは、特に何かの魔物たちが立ち止まるような場所でもない為、この少年[トリア]からすれば心地よく風を感じて眠れる場所で有るのだ。

「ふぅ・・さて、また此処で寝ると・・スライム?」
トリアがいつも昼寝しているポイントへ到着して、その場所ピッタリの位置で眠ろうとしていたトリア。しかし、その場所には既に先客がいた。

「zzz・・」
そこで眠っていたのは、体が半透明の水色で占めており体が半液状の魔物「スライム」だった。そのスライムの少女は、トリアが来たとも知らずにぐっすりと寝息を立てていた。

「おい・・起き・・うわっ!」
自分が眠ろうとしていた場所を奪われてしまったトリアは、それに腹を立てながらスライムの少女を起こそうとした。しかし、スライムの少女に触れた途端にトリアの手はスライムの少女の体にズブリと言う程の音を立ててトリアの手を取り込んだ。

「・・んぁ・・ふっ・・はぁ・・」
トリアの手を取り込んだ瞬間から、スライムの少女は喘ぐような声をあげて体をモジモジと小さく動かしていた。直ぐに慌てて手を少女の体から抜いたトリアは、学校で習ったスライムの体の構造をおさらいして見る事にした。

「えっと・・確かスライム種の危険性は・・・・人間を襲おうと平原を徘徊する!あぁ・・クソ!なんで忘れてたんだ?」
体に付着したスライム少女の一部のゲル状物質を払い落しながら、トリアは学校で学んだ事を思い出して悔しさから自分の頭を掻き毟った。

「んっ・・んん・・誰?こんな所に・・」
トリアが考え込んで悔しがっている最中、眠っていたスライムの少女は眼を覚まして起き上がった。その格好にトリアは驚いた。元々学校で「スライムに服と言う概念は存在しない」と教えられていたが、実物を見るのが初めてだったトリアは、その少女の格好に驚いた。その格好は、本当に服と言える物を何処にも身に着けておらず、普通ならば裸になっている状況だ。しかし、少女はそれをどうとも思っておらず、興味はトリアにだけ向いていた。

「あれ?人間?・・!男の子!わぁ・・ウニャ!・・・」
寝ぼけていたスライムの少女は、虚ろな瞳でトリアを見つめていたが意識がはっきりしてくると、その対象が男性だと分かって喜ぶと、トリアに襲いかかろうとして来た。しかし、足を滑らせたのか少女は顔面から飛ぶように転ぶと暫く動かなくなってしまった。

「あのぉ・・大丈夫・・」
「・・うぅ・・うわぁぁぁん!痛いよぉぉぉぉ・・」
トリアが少女に声を掛けるが、少しの間は反応が無かった。しかし、トリアが喋り終わる直前で起き上がった少女は、涙を眼に溜めて痛みを堪えていたが直ぐにそれも吹っ切れて痛みから泣き出してしまった。

「もう・・泣かないでよ。ほら、僕の持ってる本を読んであげるから。」
「・・うぅ・・ぐすっ・・ありがと・・」
トリアが、泣きだした少女に見かねて腰にぶら下げてある小説を取り出して少女に見せた。すると、少女は正直に泣きやんでトリアを見つめると素直にお礼を言ってトリアの隣に座った。見た目からしてまだ一人前になったばかりのスライムのようだ。平均的な図鑑に載っているスライムの物よりもふた周りほど小さかった。

「・・ところで、君の名前は?」
「えっ?私?・・・ミアだよ?ええっと・・トイリア君?」
ページを捲りながら名前を聞いたトリア。その問いに、ミアと答えた少女は本の背表紙に書かれている「Tollia」と書かれた文字を頼りにトリアを呼んだ。

「トイリアって・・僕はトリアだよ。」
「えっ?!間違ってた?」
名前に関しての突っ込みを確実にしたトリアは、少しミアの事を残念な子と見る様に常識が出来あがってしまった。そして、本を覗きこもうとしているミアを無視して、トリアは本の内容を音読し始めた。

「我々は神の御許より使わされし天使たち。そなた等にも我が神聖なる母が女神の恩恵を承らん事を、此処に伝えよう。(現代に置けるロシア語)」
「えっ?えっ?意味分かんない・・うぅ・・」
トリアが読み上げたのは、聖書と呼ばれる神々の善行の数々、悪行の数々が記された分厚い本だった。その内容を、ミアには理解不能な言葉で読み上げて行ったトリアだが、その隣ではミアが眼を回して頭を抱えて困っていた。

「あぁ・・もうっ!これしか今は無いからウチに来たら?そうしたらもっと簡単な本を読んであげるよ。」
「やった!それじゃ、付いて行くね?」
ミアの理解力の低さに苛立ったトリアは、仕方なく自宅までミアを連れていくことにした。最初は魔物を自分の家に連れ込むなど、神の教えに反すると心が反論していたが、それ以上にトリアはこのバカさ加減に腹が立っていた。そんなことなど知らないミアは、あっさりと何も疑う事もせずにトリアの後ろに並んでいた。そして、トリアは自分の家への帰路に着いた。
10/10/16 14:36更新 / 兎と兎
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■作者メッセージ
なんともバカなこのミア。
秀才も認める天才なトリア。
正反対の二人は、この先にどんな衝撃とコメディ、おまけにエロを持ち出してくるのか!それは次回からのお楽しみ!

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