旅46 悪役だって幸せになる権利はある
「死んだと思っていてやっと会えた娘が一人で実力者と戦っていると聞いたから心配になり急いで駆けつけたらなんと娘はその男と性行為をしていた。しかも男が娘に性的暴行を加えているならば男の方を遠慮なくバッサリ斬れるが残念ながら逆でなんと娘がその男を強姦していた挙句私の存在に気付かぬままやれ愛してるだのやれイクだの言い続けてやっとこさ終わったと思ったら結婚するとか言い始めたのだが私はいったいどうすればいいのだ!?」
「知らんがな」
「魔物ってそんなもんだと思います」
「アタシもそんなだしいいんじゃないかな」
「おめでとスズ!」
「認めん!!私は絶対に認めんぞ!!」
現在13時。
ドデカルアとの戦いも終わり、皆ぐっすりと朝寝坊した後、私達は後処理やこれからの予定を決める為にもルヘキサ自警団本部に集まっていた。
「いい加減認めろよ父ちゃん!!」
「誰が認めるか!!たしかにチモンは私より強いし、頭も良い奴だからそこいらのヘナチョコよりかは幾分かはマシだが……」
「じゃあいいじゃないか!」
「それとこれとは別だ!!」
とりあえず今は場が荒れている。
原因はそう、スズとチモンが何故か相思相愛になっているところをイヨシさんが認めておらず親子喧嘩をしているからだ。
しかも私達まで巻き込んでくるから堪ったものじゃない……
「まあまあ落ち着いて下さいよ……」
「無理だ!!大体娘が生きてたと思ったらすぐさま男と性交していたとか平然としていられるか!!」
「なんだよ!アタイがどうしようがアタイの自由だろ!?」
まあイヨシさんが言っている事もわからなくは無い。
折角再会できた娘が数日足らずで他の男の下に行ってしまう……父親としては認めがたいのだろう。
「こんな……こんな男に桜を幸せにする事なんか出来るか!!」
「幸せにしてみますよ!!」
「ぬぅ……口先だけならなんとでも言えるわ!!」
チモンさんもこんな調子で言われ続けているので苦笑いしっぱなしだ。
本人曰く、スズとは相性も良いし可愛いし、何よりアツい戦いが出来たのもあってウシオニの血の効果も重ね合わさり好きになったとの事だ。
スズ本人も満更でもなさそうなのでいいと思うが……イヨシさんがずっとこの調子なので困り顔をしている。
「まあイヨシさんの事はひとまず置いといて……スズはこれからどうするの?お父さんも記憶も夫も手に入ったわけだけど……」
「ああ、その事ね……」
まあこの問題の解決は時間が掛かりそうなので、私はとりあえずイヨシさんの標的がチモンさんにいった事で話しかけられるようになったスズに、この先も一緒に旅をするのか聞いてみた。
「まあ……旅は好きだからしたいけど……とりあえずはこのルヘキサでアタイは父ちゃんやチモンと一緒に暮らす事にするよ」
「そっか…………」
予想は出来ていたけど、やはりここでイヨシさんやチモンさんと一緒に暮らす事にするようだ。
つまり……スズとはここでお別れだ……
「スズとは長かったから寂しくなるな」
「まあね……記憶が無かったアタイを旅に誘ってくれてありがとうな皆……アタイ楽しかったよ」
「私も、スズと一緒にした旅は凄く面白かった……偶然だったけど、スズに遇えて良かったよ!」
ツバキ達と別れてからずっと一緒だったスズ……もう居るのが普通みたいな感じだったので、居なくなるのはかなり寂しい……
「まあ今すぐ出発じゃないんでしょ?」
「うん。カリンの荷物があるからそう長居はしないけど、まだ数日はルヘキサにいるつもりだよ」
「そうか……じゃあその時まではよろしくな!」
「ああ、よろしく!」
とは言ってもまだまだ戦いの後処理などで用はあるのですぐ出発はしないけどね。
だからそれまでにいっぱいスズとお話をしよう……今までの旅の思い出も、時間が無くてあまり聞けてなかったサクラとしての記憶のお話も。
「えースズお姉ちゃんここでお別れなのー!?アメリさみしいな……」
「まあそれはアタイも……お、アメリ終わったのか?」
「うん!いた人たちはみんな魔物にしてあげたよ!!」
と、話が纏まったところでアメリちゃんがやってきた。
アメリちゃんはブランチを食べた後からずっと実験を受けていた人達を魔物に変えていたのだ。
おそらくこれでルヘキサ側の人達は全員魔物になったはずだ……しかし、ドデカルア側はやはり悩んでいるようで、未だに3人しか来ていない。
まあ魔物になるかは相当悩むもんな……自分も反魔物領出身で、魔物になるかならないかを自分で決めるという点では似たような状況になってたからその気持ちは痛いほどわかる。
「なんやアメリちゃん、聞いた話やと魔物化する時めっちゃ魔力使うからすぐお腹空かせるって聞いたんやけど……そんな事無さそうやな」
「うん!このネックレス、なんと魔物化のときもアメリの魔力あまり使わないですむんだ!!」
「へぇ〜……良かったねアメリちゃん」
「うん!!」
そんなアメリちゃんは魔力を大量に使っているのにも関わらずお腹の音が鳴らない。
なんでだろうと思ったら以前空理さんにもらったネックレスのおかげらしい……便利なもんだ。
「あ、あの〜……」
「あ、さっきのお姉ちゃん!もう大丈夫?」
「はい。なんだか生まれ変わった気分です!」
そんな感じでアメリちゃんと話していたら、後ろからホルスタウロスの女性がやってきた。
たしかドデカルア側の人で唯一最初からアメリちゃん達の事を信用していた人だったかな……おっぱいうらや……おっと、今はそれどころじゃなかった。
「本当にホルスタウロスで良かったの?」
「ええ。おいしいミルクに大きなおっぱいに可愛い尻尾に大きなおっぱいに力強い足腰に大きなおっぱいがあるので大満足です♪」
「……」
あれおかしいな……なんだろ……
なんかこう……どす黒い物というか……ハッキリ言っちゃえば殺意が湧いてきた……
「はいどーどー。落ち着きいやサマリ。ホルスタウロスはそういう種族や」
「う゛〜……」
「な、なんですか……?」
「あーサマリお姉ちゃんは気にしないで……というか早く出たほうがいいかも……」
まあ状況が状況だしカリンに止められなくても最初から跳びかかったりする気は無いけども……ホルミさんといいこの人といい爆乳は皆滅ぶべきだと思う。
「あ、あの……」
「ん?」
「その……わ、私も魔物に……」
「あ、次はお姉ちゃんが魔物になりに来たんだね!」
と、ここで更に新たな女性が入ってきた。
どうやらまた一人魔物になる決心がついた人がアメリちゃんの下を訪れてきたようだ。
「じゃあ行こうか!何になりたい?」
「えっと……空飛べて力がある種族なら……私の家では畑仕事を生業にしてるので、空飛べて力があったら便利かなと……」
「ん〜そうだなぁ〜……あ、お姉ちゃん凄い素質あるよ!!ドラゴンにもなれるよ!!」
「ドラゴン……あールヘキサの領主さんと同じか……いいですね。ではドラゴンでお願いします」
「わかった。じゃあおへやでまってて!アメリもすぐ行くから!!」
こうして覚悟を決めて魔物になるのは大変だろう。
それでも前に進む為、こうしてアメリちゃんに頼んで魔物にしてもらいに来ている……この人達はきっとこれからも強く生きていけると思う。
「あーあの快感を味わう人がまた一人……あんなの初めてでした〜……子供なのに凄いテクニシャンで……♪」
「……」
「今後の参考にも見学させてもらおーっと♪」
「……」
そういえば私の時は魔力を一度に大量に流し込んで魔物化させてたけど……今回はどのようにしてるんだろうか?
まさかとは思うけど……性交じゃないよ……ね?
いや8歳でもリリムだし天性的に出来そうだけど……いやまさかね……
微妙にアメリちゃんが来てる服が着崩れてるけど……気のせいだよね?
「じゃあアメリ行ってくるね!スズお姉ちゃんもお母さんとお父さんとだんなさんとおしあわせに!!」
「おう!…………ん?」
そして被害者の人々を魔物にするため再びこの部屋を出ていったアメリちゃんだったが……出ていく際にスズに掛けた言葉に違和感があった。
お父さんと旦那さんはわかるけど……スズのお母さんは故人だって話だった気がするのだが……
そういえばいつの間にかイヨシさんの怒鳴り声が聞こえなくなったなと思い、アメリちゃんの不思議な言葉を頭の片隅に追いやりつつイヨシさん達のほうを見てみたら……
「もう……駄目ですよ猪善さん。桜自身が決めた事なのに親が出しゃばるのはよくないですよ?」
「あ……ああ……」
「もう……あんなに怒鳴って……って聞いてます?」
「あ……ああ……」
さっきまでは……いや、今まで見た事も無い女性…にしては白いうえに足も無く浮いているのでゴーストだろう…がイヨシさんに説教していた。
チモンさんは状況を一切飲み込めていないようで、イヨシさんは驚きで目を見開いたまま固まっている。
「……誰?」
「さあ……父ちゃんの事知ってるっぽいけど……」
突然現れたゴースト……いったい何者なのだろうか?
とりあえずスズの本名であるサクラと言っているから相手はスズの事はわかるらしいのでスズに聞いてみたが、反応からしてスズはあのゴーストの事は知らないらしい。
しかしあのゴースト……なんとなくスズと似ているような……
「まったく……娘が心配なのはわかりますが親が子離れ出来ないのは問題ありですよ。ねえ桜?」
「えっ、まあそうだけど……あんた誰?」
「あんた誰って……まあ桜は私の事わからなくても仕方ないかな……」
イヨシさんに説教を続けていたゴーストは話をスズに振ってきた。
その時スズが誰かと聞いた……瞬間、そのゴーストさんがとても悲しい顔をした……と思ったら、何かを納得した表情に変わり……
「私は……桜、お前の母ちゃんですよ」
「……は?」
「だから、私は猪善さんの妻で、桜の母親の香澄ですよ」
「……えっ!?」
なんと、自分をスズの母親だと言い出した。
でも……顔が似てるから、もしかして本当かもしれない……
「なあ父ちゃん……」
「ああ……本当だ……このゴーストは正真正銘本物の母ちゃんだ……」
「ええっ!?ほ、本当に母ちゃんなのか!?」
「ええ……私はあなたの母ちゃんですよ」
どうやら本当にスズのお母さんらしい。
「そうなのか……なんかアタイどうしたらいいかわからないよ……」
「ん?なんでだ?」
「だって……今まで母ちゃんの話は聞いた事あっても実際の母ちゃんに会ったのはこれが初めてだもん……」
「まあ…今まで猪善さんがなかなか精を私にくれませんでしたからね……桜が小さい頃から見守ってましたけど、今日でようやく実体化する事が出来ました」
「……どおりで桜が帰って来てから香澄とあんな事している夢ばかり見ていたわけか……」
どうやらずっと猪善さんに憑いてはいたようだけど、今まであまり魔力も無かった場所にいたからなかなか実体化までに至らなかったらしい。
だがルヘキサという魔物が多い地域に来た事で魔力が上手い具合に働きカスミさんを活性化、そしてイヨシさんから精を貰って実体化したという事らしい。
「良かったねスズ!これで家族揃ったじゃんか!!」
「そう…そうか!そうだよな!!」
記憶を失い家族も何もわからなかったスズ……しかし、これでスズの記憶も家族も夫もできた……とても良い事だ。
「ま、親子で募る話もあるだろうし俺達は出てくか」
「せやな。ほないくでサマリ」
「うん!じゃあスズ、また後で」
「あ、ああ……」
折角家族揃った事だし、私達は退散する事にした。
「な、なあ母ちゃん……」
「そんなに固くならなくても良いですよ桜。私達は種族こそ違えど実の親子なんですから……」
「そうだぞ桜……って難しいかもしれないけどな。いきなり母ちゃんが出てきても困るわな」
「もう……そんな事無いですよ。それで何ですか?」
「いや……もし母ちゃんがいたら聞こうと思ってた事なんだけど……アタイの名前、桜って……」
「ええ、昔住んでいた家に生えていた桜の木から採ってますよ」
「それなんだけどさ……なんでアタイにそんな綺麗な名前を付けてくれたんだ?」
「それはですね……」
まだまだ緊張した様子を見せつつも楽しそうに自分の両親と話をするスズを温かく見守りながら、私達は静かに部屋の扉を閉めたのだった。
「しかしまあスズもいろいろと良かったな」
「そうだね……家族か……」
「そんなに不安なら一度帰ってみるか?拒絶なんかしたら俺がぶん殴ってやるよ」
「それやったら私がユウロを寝かせた後この蹄で思いっきり顔面踏むからね?」
「う……冗談だよ……」
「どうだか……イヨシさん殴り倒したという話じゃないか」
「まあそうだけど…………ってチモン!なんでお前まで外に出てるんだよ!?」
そして外でまた話をしていたら……何故かチモンさんまで外に出ていた。
「いやまあまだイヨシさんには認めてもらってないし……それにどうやら親子3人揃ったのは初めてっぽいしな。後でまた合流させてもらう事にしたよ。それ以外にも俺は重要参考人として呼ばれてるからな」
「なるほど……そういえばあんた喋り方そんなだったか?」
「いや…普段は畏まっていたさ。ただサクラはこっちの喋り方のが好きだって言ったからもう素の喋り方だけにする事にした」
「あっそう……」
どうやら親子水入らずにしたいがためと、別件で呼びだされているらしい。
まあチモンさんはイヨシさんに並ぶほどの実力者だったわけだし、エルビが居ない今参考人としていろいろと聞かれる立場にあるのだろう。
「そういえば……ホルミさんとエルビってどうなったんだろ……」
「あのミノタウロスがエルビを拉致したというのは本当の話のようだが……心配だ……」
「ま、ホルミならきっと大丈夫だろ……きっとな……」
「だといいけど……でもどちらにしろあっちは俺の事心配しないだろうな……」
「あー、まあ……ドンマイ」
そんなエルビはホルミさんに攫われたあと、いったいどうなったのだろうか……
=======[エルビ視点]=======
「じゃあ行ってくる。数日したら帰ってくるから大人しく家で待ってるんだぞ!」
「うん!ぜったい帰ってきてね!!」
うそだ……帰ってこなかったじゃないか……
「でも今回はこの街にいる魔物さんとちがってあぶない魔物さんがいるところでしょ?」
「まあ……でも俺には母さんがいるから安心しな!それにエルビ、俺にとってお前が一番大切な存在なんだ!魔物の誘惑なんかに乗るわけないだろ!」
「うん!」
行かせるな……帰って来ないんだぞ……
「じゃあ父さん、ボク良い子におるすばんしてるね!!」
「おう!良い子で待ってるんだぞエルビ!」
とめろ……とめてくれ……!!
「いってらっしゃい父さん!!」
「いってきます!一人でも寂しがるなよ!男の約束だ!!」
「うん!父さんも魔物に負けないでね!男のやくそくだよ!!」
引き留めるんだ……父さんを行かせるな……!!
……………………
…………
……
…
「……はっ!?」
目が覚めたら……ボクは見覚えの無い小屋らしき場所で寝かされていた。
たしかボクは……教会でユウ……なんだったかな……元勇者と戦ってて、あいつがボクの事を言って気が動転してその隙をつかれて殴られ、眼鏡が無くなった状態でルヘキサの自警団長のドラゴンに切り掛かったと思ったらホルミに殴られて……
「ん?目が覚めたようですね」
「この声は……ホル……!?」
どうして自分がこんな場所で寝かされているのか考えていたら足下から女性の声が聞こえてきた。
その声はボクを気絶させた張本人、ミノタウロスのホルミのものだった。
もしや彼女がボクを誘拐しこんな小屋に寝かせたのかと思い、声がしたほうを見たら……
「な、何してるんだ!?」
「何って……んっ……たしかパイズリとかいうものだったかと」
「そういう事聞いてるんじゃないよ!!」
下半身裸にされて、彼女の大きく柔らかなおっぱいでボクの性器を挟み扱いていたのだ。
どうりで下半身が涼しいと思った……ってそんな事思ってる場合じゃない!!
「やめ……!?」
「あ、暴れられないように手足は結びつけてありますから。もちろんベッド自体もタウロと結んであるので動きませんよ」
「くっ……うっ」
どうにかしてホルミの魔の手……いや、魔の乳から逃げ出そうとして起き上がろうとしたのだが、手足が引っ張られたように動かせなかった。
ホルミの言った通り頑丈そうなロープでベッドの足に結ばれている……これじゃあ手足を動かす事は出来ない。
「くそ……ふぅっ、こ、こんな事して何になるんだ!?」
「そうですね……私がしたかっただけってのもありますが、精を放出する事であなたの得意な魔法を封じられるのと、射精による疲労で体力の消耗を誘い暴れ無くする事も目的になってますね」
「くっ、この……あうっ!?」
さらにエスカレートするホルミのおっぱいによる責め……包み込む柔らかな動きとぐちゅぐちゅと響く卑猥な音がボクに射精感を込み上げさせる……
でも射精するわけにはいかない……それは魔物に屈服した事になる……それだけは避けないと……
なんて思ってたら……
「あ、そういえばもう既にエルビは2回射精してますからね」
「うっ…………へ?」
「精液をいただいたのは初めてでしたが、なかなか美味しかったです。これも魔物になったからそう感じるのですかね?」
「そ、そんな……ううっ!!」
もう既にボクは気絶している間にホルミの手によって射精させられていたらしい。
いつの間にか眼鏡が掛けられていたので相手の姿もよく見えるが……たしかに精液らしき白い物がホルミのおっぱいに付着していた。
つまりもうボクは既に魔物に屈服していたわけで……そう思った瞬間、今まで我慢していた射精感に歯止めが効かなくなり……
「うゎぁぁあっ!!」
「んぷっ!3発目だというのにいっぱい出ますね……んっおいし……」
気付いたらボクはホルミのおっぱいの中で射精していた。
ボクの性器から迸る白濁液が、ホルミの健康そうな小麦色のおっぱいを白く染め上げていく……
そんな精液をホルミは胸から手を離し、指で掬って口に運んで行く……そんなものを美味しそうに食べているのが信じられない。
「はぁ……はぁ……くそ、いったいなんだって言うんだよ……」
「いえ、いろいろと聞きたい事がありましてね。その前になんだか無性に襲いたくなっただけですから」
「酷いよその理由……まあ魔物なんてそんなとこだろうけど……」
元々戦いのせいで疲れていた上、さらに激しい射精のせいでボクは息も絶え絶えになっていた。
しかし……こんな事されたらかなりの嫌悪感が生じるはずなのに、それほど嫌じゃないのはなんでだろうか?
「で、何?聞きたい事ってさ。どうせボクを解放する気はなさそうだし、なんでも答えてあげるよ」
「そうですか、それはありがたいです」
だからかボクは、自らホルミが言う聞きたい事に答えてあげる事にした。
おそらくあの事についてだろうけど……まあ屈服させられたし、動けない以上答える事にしよう。
「では単刀直入に聞きますが……先程、といいましても既に一晩は越えてますが……自分は父親に捨てられたと言ってましたよね?」
「ああ……聞こえてたのか……そうだよ……」
やはりあの事……ボクが父さんに捨てられた事についてだった。
ああやって叫びながらあの事を言ったのは久しぶりな気がする……
だからなのか、気絶していた間に父さんが出ていった日の夢を見たのは……もう7年にもなるんだよな……
「3ヶ月待っても帰って来なかった……きっと今ホルミがボクにしてるような事をして魔物について行ったんだろうね……」
「……」
「ボクが一番大切な存在って言っておきながら……母さんがいるからって言っておきながら……あいつは帰って来なかったんだ!!」
そんな夢を見たからか……はたまたあの木刀使いに言われたのを引き摺っているのか……柄にもなく感情的に叫ぶボク……
「だから……だからボクは勇者として選ばれた時、魔物以上に魔物について行った男どもを根絶やしにしてやろうと思ったんだ!!どうせインキュバス、魔物なんだから問題は無いと考えて……何人ものインキュバスを葬ってきた!!」
言葉がどんどん溢れだしてくる……塞ぎ止める事なんかできない……
「いづれは父さんも……その魔物の目の前で殺すんだって心に決めたんだ!!ボクを捨てた事を後悔させてやるために!!」
叫ぶ度に、どうしてあの時引き止めなかったのかと、後悔ばかりが込み上げてくる……
「ところで……エルビ、あなたはどこ出身ですか?」
「へ?」
そんな中で、唐突にボクがどこ出身かを聞いてきたホルミ……いきなり全く関係ない気がする事を聞いてきたので一瞬何を言っているのかわからなかった。
「ボクの出身……それがどうかしたのか?」
「なんでも答えてくれると言ってましたよね?」
「まあ言ったけど……ウンデカルダだよ……」
だがまあどうという事はないので、ボクが街を出てから数年後に、中立領だった故郷が親魔物領になったと聞いてから一度も行っていない故郷の名前をボクは素直に答えた。
「そうですか……では、その父親、またあなたの母親の名前は?」
「……」
そして次に聞いてきたのはボクの両親の名前だった。
そんなものを知ったところで何があるというのだろうか。
元人間の勇者だって言うからボクの父さんを誘惑した魔物では無いだろうし、そんな事を聞く理由がわからない。
「父さんがイリジ、母さんがオスミ。そんなの知ってどうするんだよ……」
「そうですか。わかりました……」
とりあえず答えたが……ホルミは何かを納得したようにうなずいた。
それがいったいどうしたのかと思っていたら……
「あなたのお父様は、あなたの事を捨ててなんかいませんよ」
「……は?」
いきなり自信たっぷりにそんな事を言い始めた。
「な、何言ってるんだ!!どうしてそんな事がわかるんだ!?」
ボクの気を休める為に言ったとは思えないその発言だが……ボクは信じられなかった。
もしそうであるならばどうして父さんは帰って来なかったというのだろうか。
「お前なんかに父さんの事がわかるわkぷぶっ!?」
「それは今から説明するので大人しくしていて下さい」
怒鳴り散らしていたらホルミのおっぱいを顔に押し付けられ声を出せなくされた。
さっきボクがそこに射精したせいで青臭いが、不思議といい匂いもした。
その匂いがボクを落ち着かせる……それと同時に、ボクは少し冷静になれた。
冷静になった頭で考えた結果、こいつがボクの父さんの事を知っている理由が思い付いた。
「……つまり、ホルミはボクの父さんに会ったとでも言うのか?」
「ええ、そうですよ」
やはりボクの父さんに会ったらしい。
「私は魔物になった時、ウンデカルダにいたのですが……そこでとある夫婦に出会いました」
「とある夫婦……?」
そして、ホルミはボクに語り始めた。
「ええ……リリムのトリーと……イリジと名乗る男性の夫婦です」
「なっ……!?」
ホルミの話からして、どうやらボクの父さんはリリムに誘惑されたらしい……なら仕方が無い……とはならない。
リリムという強力な魔物が相手とはいえ誘惑に負けた父さんがより一層許せない……次の言葉を聞くまではそう思っていた。
「その夫婦……いえ、正確にはさらにもう一人の妻であるグールのオスミの3人から私はある依頼をされました」
「えっ!?」
「どうやらイリジさんの頼みでトリーさんがグール化させたようですよ」
なんと……母さんもグールとなって一緒にいるらしい……
そういえば親魔物領と化した故郷での話と言っていた……という事は父さんは戻ってきている?
しかも父さんの頼みで母さんを復活させてるとか……いったいどういう事なんだ?
「本人達に聞いた話ですけど、7年前の丁度これくらいの時期に魔界近くにあった鉱山で採掘していた人間のグループが土砂崩れに巻き込まれてしまったようです」
「鉱山の採掘……まさか!?」
「ええ……そこで作業していらしたイリジさんも巻き込まれて重傷を負ったようです」
そして……ホルミはあの日に、父さんに何が起きたのかを話し始めた。
「幸いトリーさんやその部下の方達が救助に向かったようで誰一人命は落とさなかったようですが……大体の人は全治3ヶ月の怪我を負ったそうです」
「3ヶ月……じゃあ父さんが帰って来なかったのは……」
話からすると、父さんは大怪我を負って動けなかったから3ヶ月も帰って来なかったらしい……
あの元勇者が言ってたように、たった3ヶ月じゃわからなかったというのか……
「そしてその間、イリジさんに惚れたトリーさんは一生懸命看護していたようです。ただ、イリジさんに告白しても「自分には大切な妻と、大切な息子がいるから」と断り続けていたそうです」
「そう……なの?嘘……じゃないよね?」
「あくまで私が本人達から聞いた話ですので、信じるかどうかはエルビ自身に任せます」
とても信じがたい話だけど……ホルミが嘘をつくとは思えなかった。
自分でもなんでこんなにこいつを信用しているのかはわからないけど……自然とそう思っていた。
「ただまあそんなイリジさんの事を本気で好きになったトリーさんは2番目でもいいからとイリジさんに言い張り、結局折れたイリジさんと一緒にウンデカルダまで行ったそうで……着いた後で待っているはずの息子さん……つまりあなたが居なくなっていたので相当血相を抱えたようです」
「そう……なのか……」
どうやらボクが勇者としてあの街を出た少し後に父さんはちゃんと帰ってきてくれていたらしい……
「そしてあなたをあの場から連れだしたのが教団の人間と知った二人は、トリーさんの魔力でグールとして生まれ変わったオスミさんと3人でエルビを取り返す為教会を潰したそうです」
「……は?いや……リリムの力があれば簡単か……」
「はい。それだけあなたの事を大切に思っていたという事です」
そして、ボクが勇者としてついて行っただけなのにボクを連れ去ったと勘違いしたっぽい父さん達はボクを取り返そうと街にあった教会をドデカルアでルヘキサの連中がしたように潰したらしい……
「私はそんな3人から息子の捜索を依頼されました。勇者だという情報は得られていなかったのであなたかどうかは自身が無かったのですが、どうやらあなたの事のようですね」
「そう……だったのか……」
今してくれたホルミの話をまとめると……父さんはボクを捨てたどころか……ボクや母さんが大切だからとリリムの魅了にも抗ったらしい……
「そんな……じゃあ……ボクは……」
「捨てられたどころか、今でも行方がわからないあなたの事を心配していますよ。あ、トリーさんもまだ見ぬあなたの事心配してたりもしますよ」
「っ……!!」
ボクは……父さんに捨てられていなかったのか……
「じゃあ……ボクが今までしてきた事は……なんだっていうんだ……」
「……」
勝手に父さんに恨みを抱いて……全く関係ない人や魔物達をこの手で葬ってきた……
ボクは……いったい何をしていたというのか……
「……それでどうします?ご両親の下に行きますか?」
「……無理だよ……父さんに合わせる顔が無い……」
勝手に失望し、勝手に恨み、自分の意思で大勢の魔物や人を傷付けたボクに……父さんに会う資格なんかない。
「きっとイリジさんもオスミさんも気にしていないとは思いますよ?」
「それでも……それでもボクは両親に顔向けできないよ!!」
多くの魔物を、多くの魔物の伴侶を……ボクは傷付けてきた……
そんなボクが……魔物になった母さんと、魔物の伴侶になった父さんに会えるわけがない……
「はぁ……まああなた自身がどう思っていようが関係ありません。私が連れていきます」
「はあっ!?」
それなのに、ホルミはボクを父さん達の下に連れていくと言い始めた。
「やめてよ!ボクにはそんな権利……」
「権利がどうこうなんて聞いてません。親御さんはあなたに会える日を楽しみにしているのですよ?」
「そうかもしれないけど……」
「大体親御さんがあなたに会いたいと私に依頼してまで探しているのですよ?会いに行くのが親孝行です」
「でも……」
「それともなんですか?まさかあなたの両親はあなたが大勢の魔物やその伴侶を傷付けてきた程度で愛想を尽かすとでも思っているのですか?私はあなたと比べたら全然あの人達の事は知りませんがそんな事は無いとハッキリと言えますよ」
「……」
ボクは父さん達に会う権利なんかないと言おうとしたけど……ホルミがボクの言い分なんか聞く気は無いとでも言いたげに押しきるつもりだ。
「それに……」
「……!?」
そしてホルミは、ベッドの上で寝ているボクに抱きついて……
「もしあなたが今までの自分がした事を後悔しているなら……これからどうしていくのかを親御さんに宣言して下さい」
「え……」
「私だって元勇者……あなたと同じく何人もの魔物を傷付けています……だけどもう過去にやった事は覆す事は出来ません。なので私はこれから今まで傷付けた者に謝りに行き、傷付けた以上に大勢の魔物や人々を助けたいと思っています。それが私にできる罪滅ぼし……と言えるかは微妙ですがね。あなたはどうしますか?」
「……」
耳元で、優しく抱きしめてくれながらそう言ってきた……
「ボクは……きっとホルミ以上に多くの人達を傷付けてきた……」
「……」
「だから……ボクもホルミと同じく多くの人達を助けたい……駄目かな?」
「そうですね……それをご両親に宣言しましょう……そうすればその気持ちを忘れる事もありませんから……」
「うん……」
ホルミに嫌悪感を抱けない理由がわかった気がする……
なんだか……母さんみたいだ……
「一人で不安なら、私もあなたと一緒に罪滅ぼしの旅について行きますから……というか同行します」
「え……」
「どうやら私はあなたの事が気になって仕方ないようです。なのでこれからもずっと一緒に居させて下さい」
「……」
そんなホルミから、まさかのこれからもずっと一緒にいたいと言われてしまった……
「……仕方ないなぁ……どうせいいよって言わないとこれ解いてくれないんでしょ?」
「ありがとうございます」
一人じゃないのはとても心強い……しかも自分と同じ『罪』を持った人が一緒だ……
その申し出はとても嬉しかったけど……素直に言うのは恥ずかしかったから仕方なくを装って了承した。
「では……誓いの性交を……」
「…………はあっ!?」
でも……なんだかおかしな方向に話が動き始めた。
ボクの聞き間違いじゃなければ今性交しようとか言わなかったか?
「いやちょっとなんでそうなるのさ!?」
「それはまあ……私がシたいからですよ」
「なんて勝手な……う……」
どうやら聞き間違いではないらしい。
ホルミはボクの性器をぎゅっと掴んでゆっくりと扱いてきた。
おっぱいとは違う掌の柔らかさがもたらす性器への刺激が、ボクを勃起へと誘う。
「まあまあ…エルビもココを硬くしてますし……」
「そりゃそんな事されたら身体が勝手に反応するよ!!」
「素直じゃないですね……まあいいでしょう」
そしてガチガチに勃起したボクの性器を片手で掴んだままボクの上に跨り……
「ではそろそろ挿入してみようと思います」
「へっ!?えっ!?」
自らの股にもう一方の手を持ってきて、魔力で自分の毛を消し去り女性器を露わにした。
「えっと……拒否権は?」
「無いに決まってるじゃないですか」
元人間でさらに丁寧語であるけど、3大欲求以外はさほど興味を持たないミノタウロスらしいホルミ……
ボクはこれから先もこいつにこうして振り回されるのだろう……
「じゃあ挿れますね」
「や、待って……」
「無理です。エルビが欲しくてもう我慢なんかできません」
「発情期じゃないよね!?」
「違いますけど子供が出来たらいいですね」
「そういう問題じゃないから!!やたら積極的で怖いだけだから!!」
「まあ魔物なんてそんなものですよ。愛する人の前では欲求に歯止めなんて効かないんですよ」
「ちょ!?さらっと愛する人とか言わな……う、うわああああっ!!」
でも……それもいいかもしれない。
彼女が居ればきっと、ボクはもう道を踏み違う事も無いだろうし、寂しい思いもしなくて済むのだから……
=======[サマリ視点]=======
「それでスズはこの街に残るとして、他の皆は?」
現在19時。
夜になったので一先ず私達はルヘキサ自警団の食堂で皆集まって夜ご飯を食べていた。
「ウチは前言った通りとりあえず届け先のリリムのとこまでは同行するよ」
「アメリもそのお姉ちゃんに会いたい!!だからカリンお姉ちゃんよろしくね!!」
「おう、よろしゅうな!」
そこでこれからどうするかを話しあっていたのだ。
とりあえず私達はカリンと一緒にカリンの実家のお店に注文したのがリリムの従者のバフォメットという事で、そのリリムに会いに行く事にしたのだ。
「プロメ達は?」
「アタイ達はまだ調査しないといけないからな」
「それに調査を終えたらすぐに帰らないと、また父さん達が捜索届けとか出すかもしれないからね」
「ははは……そういえばそんな事もありましたね」
プロメとネオムさんはまだこのルヘキサに残って周辺の自然の調査を続けるらしい。
今回の事でドデカルア周辺も安全に調査できるようになったわけだから、そちらも調べるので時間が掛かるのだろう。
「まあ俺達の出発は5日後を目安にするか?」
「そうだね。それまでに他の人達も決心つけばいいけどね」
「でもそれ以上はカリンお姉ちゃんが困るでしょ?」
「せやな。相手もそう長くは待ってくれへんやろうしな……そもそも待たせるのは商売としてよくないしな」
まだ実験されてたドデカルアの人は5人も魔物になる決心がついていない。
彼女達の為にも、私達はギリギリまでここにいる事にしたのだ。
「それじゃあ5日間はまだ一緒にいられるんだな!」
「まあ……でもスズは家族やチモンと一緒じゃなくていいのか?」
「父ちゃんや母ちゃん、それにチモンとはこれからもずっと一緒に居られるけど、皆と一緒に居られるのはあと少しだもん。それに……」
「それに?」
「記憶が無かったアタイにとって、アメリ達はアタイにとって家族のようだったからね。お別れは寂しいから、せめて居るうちは一緒に居たいんだ」
「そういう事か……そうだな。じゃあ明日はこの街をゆっくり見て周ろうぜ!なんだかんだで結局ルヘキサの観光してないしな!」
「そういえばそうだったね。アメリちゃんにいつ呼び出しが掛かるかわからないけど、皆で一緒に観光しようか!」
「さんせー!!」
だから私達はお別れするスズとも最大5日は一緒に居られるのだ。
その間に、碌に観光していなかったこの街で、スズと思い出作りをしようと思う。
別に思い出が少ないわけじゃない……それどころかジパングからここまでずっと一緒だったからいっぱい思い出はあるけど……よりいっぱいあっても困るものではないからね。
「じゃあそうと決まれば今日はゆっくりと寝るかー!」
「そうだな……でもアタイはチモンと……」
「はは……スズもウシオニらしく立派に性欲が強くなったようやな……」
「そうかな?四六時中繋がっていたいとかじゃないからそうでもないとは思うけど……あ、でも隙あらばってのもあるな……」
「はははは……」
私達は笑いながら、夜ご飯を食べ続けたのだった……
スズが抜け、再びカリンと共にするここからの旅は、どんな事が待っているのだろうか…………とっても楽しみだ!
=======[セレン視点]=======
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
ワタシは血の滲み出る脇腹を押えながら、一生懸命道を走っていた。
いえ……正確にいえば、ワタシは全力で逃げていた……
「はぁっ……なんで……こんな事に……」
ワタシが何から逃げているか……
それは……
「……見つけたぞセレン……もう観念するんだ……」
「はぁ……セニック……」
ワタシの脇腹から出た血が付着している聖剣を持ったセニックが、ワタシの前に立ち憚った。
いつの間にか先回りされていたらしい……
そう、ワタシはセニックから逃げていた。
「なんで……なんでこんな事に……」
「それは……お前が魔物と判断されたからだ……」
「……」
アメリと名乗る幼いリリムと共にいたウシオニの血を浴びたワタシは、ペンタディアに帰った後で検査を受けた。
その結果、ワタシの身体には魔物の魔力が既に定着していたらしい……つまり、ワタシはもう神の使徒では無く……魔物だと判断された。
自分にはそんな自覚は無いのだが……そう検査結果が出てしまえば覆る事は無い……だからワタシは死刑される事になった。
なぜならば、魔物化は新たなる魔物化を呼ぶからだ……ペンタディアでは魔物になった者は即死刑なのだ。
「オレだって辛いさ……お前は良いパートナーだったからな……」
「なら……」
「でもな……これは命令なんだ……それに、お前がこのまま大人しくいる保証は無いんだ……」
そして、そんなワタシの命を絶つ役割を命じられたのが……かつてのパートナー、セニックだった。
「だから……もう逃げないでくれ……」
「……嫌です……ワタシはまだ……まだ死にたくは……」
「わかってるよ!!でも……もうどうしようもないんだ!!」
魔物になったと言われても、ワタシにはそんな自覚は無い……それだけで殺されるのは嫌だった。
だからワタシは隙を見て逃げ出したのだが……遠くまで逃げた事により安心していたところで追いつかれてしまい、出会い頭に斬られてしまった。
それでもワタシは痛いのを我慢しながら走り続けたのだが……このように追いつかれてしまったのだ。
「今……ワタシと共にセニックが逃げるという事は……」
「無理だ。呪譜の力でオレがお前と逃げたらオレは重傷を負う……死ぬかもしれないんでね……」
「そんな……なんて酷い……」
「お前が逃げなければそんな事もされなかったさ……」
セニックに……元パートナーに殺されるのは嫌だ……
「という事だ……諦めてくれ……」
「絶対に嫌です!!」
「オレだって嫌だよ!!でも仕方ないんだよ!!」
いや、それだけじゃない……
「仕方なくなんてないです!!それにワタシは……セニックの事が好きです!!」
「なっ……!?」
ワタシは、セニックが好きだった。
好きな人に、殺されたくなんて無かった。
「一緒に魔物を討伐する為に任務をしているうちに……いえ、初めて会った日から好きでした!!」
「……」
だからワタシは、セニックに想いを伝えた。
もしここで死ぬしか無くても、後悔が無いようにしたかった。
「セレン……」
「セニック……」
そんなワタシの想いを聞いたセニックは、聖剣を投げ捨ててワタシのところにゆっくりと近づき……
「ありがとう……」
「セニ…………っ!?」
「そして…………ごめん…………」
ワタシを抱きしめながら……ワタシのお腹を、隠し持っていたナイフで刺した。
「せ、セニ……ク……」
「……じゃあなセレン……好きだって言ってくれて嬉しかったよ……」
刺されたところから血を流し、足に力が入らなくなって、力無く横たわるワタシを一目見て去っていくセニック……
「あ…………う…………」
段々ぼやけていく視界……薄れていく意識の中で……
ワタシは涙を流し……セニックの笑顔を思い浮かべながら……意識を手放したのだった…………
……………………
…………
……
…
「知らんがな」
「魔物ってそんなもんだと思います」
「アタシもそんなだしいいんじゃないかな」
「おめでとスズ!」
「認めん!!私は絶対に認めんぞ!!」
現在13時。
ドデカルアとの戦いも終わり、皆ぐっすりと朝寝坊した後、私達は後処理やこれからの予定を決める為にもルヘキサ自警団本部に集まっていた。
「いい加減認めろよ父ちゃん!!」
「誰が認めるか!!たしかにチモンは私より強いし、頭も良い奴だからそこいらのヘナチョコよりかは幾分かはマシだが……」
「じゃあいいじゃないか!」
「それとこれとは別だ!!」
とりあえず今は場が荒れている。
原因はそう、スズとチモンが何故か相思相愛になっているところをイヨシさんが認めておらず親子喧嘩をしているからだ。
しかも私達まで巻き込んでくるから堪ったものじゃない……
「まあまあ落ち着いて下さいよ……」
「無理だ!!大体娘が生きてたと思ったらすぐさま男と性交していたとか平然としていられるか!!」
「なんだよ!アタイがどうしようがアタイの自由だろ!?」
まあイヨシさんが言っている事もわからなくは無い。
折角再会できた娘が数日足らずで他の男の下に行ってしまう……父親としては認めがたいのだろう。
「こんな……こんな男に桜を幸せにする事なんか出来るか!!」
「幸せにしてみますよ!!」
「ぬぅ……口先だけならなんとでも言えるわ!!」
チモンさんもこんな調子で言われ続けているので苦笑いしっぱなしだ。
本人曰く、スズとは相性も良いし可愛いし、何よりアツい戦いが出来たのもあってウシオニの血の効果も重ね合わさり好きになったとの事だ。
スズ本人も満更でもなさそうなのでいいと思うが……イヨシさんがずっとこの調子なので困り顔をしている。
「まあイヨシさんの事はひとまず置いといて……スズはこれからどうするの?お父さんも記憶も夫も手に入ったわけだけど……」
「ああ、その事ね……」
まあこの問題の解決は時間が掛かりそうなので、私はとりあえずイヨシさんの標的がチモンさんにいった事で話しかけられるようになったスズに、この先も一緒に旅をするのか聞いてみた。
「まあ……旅は好きだからしたいけど……とりあえずはこのルヘキサでアタイは父ちゃんやチモンと一緒に暮らす事にするよ」
「そっか…………」
予想は出来ていたけど、やはりここでイヨシさんやチモンさんと一緒に暮らす事にするようだ。
つまり……スズとはここでお別れだ……
「スズとは長かったから寂しくなるな」
「まあね……記憶が無かったアタイを旅に誘ってくれてありがとうな皆……アタイ楽しかったよ」
「私も、スズと一緒にした旅は凄く面白かった……偶然だったけど、スズに遇えて良かったよ!」
ツバキ達と別れてからずっと一緒だったスズ……もう居るのが普通みたいな感じだったので、居なくなるのはかなり寂しい……
「まあ今すぐ出発じゃないんでしょ?」
「うん。カリンの荷物があるからそう長居はしないけど、まだ数日はルヘキサにいるつもりだよ」
「そうか……じゃあその時まではよろしくな!」
「ああ、よろしく!」
とは言ってもまだまだ戦いの後処理などで用はあるのですぐ出発はしないけどね。
だからそれまでにいっぱいスズとお話をしよう……今までの旅の思い出も、時間が無くてあまり聞けてなかったサクラとしての記憶のお話も。
「えースズお姉ちゃんここでお別れなのー!?アメリさみしいな……」
「まあそれはアタイも……お、アメリ終わったのか?」
「うん!いた人たちはみんな魔物にしてあげたよ!!」
と、話が纏まったところでアメリちゃんがやってきた。
アメリちゃんはブランチを食べた後からずっと実験を受けていた人達を魔物に変えていたのだ。
おそらくこれでルヘキサ側の人達は全員魔物になったはずだ……しかし、ドデカルア側はやはり悩んでいるようで、未だに3人しか来ていない。
まあ魔物になるかは相当悩むもんな……自分も反魔物領出身で、魔物になるかならないかを自分で決めるという点では似たような状況になってたからその気持ちは痛いほどわかる。
「なんやアメリちゃん、聞いた話やと魔物化する時めっちゃ魔力使うからすぐお腹空かせるって聞いたんやけど……そんな事無さそうやな」
「うん!このネックレス、なんと魔物化のときもアメリの魔力あまり使わないですむんだ!!」
「へぇ〜……良かったねアメリちゃん」
「うん!!」
そんなアメリちゃんは魔力を大量に使っているのにも関わらずお腹の音が鳴らない。
なんでだろうと思ったら以前空理さんにもらったネックレスのおかげらしい……便利なもんだ。
「あ、あの〜……」
「あ、さっきのお姉ちゃん!もう大丈夫?」
「はい。なんだか生まれ変わった気分です!」
そんな感じでアメリちゃんと話していたら、後ろからホルスタウロスの女性がやってきた。
たしかドデカルア側の人で唯一最初からアメリちゃん達の事を信用していた人だったかな……おっぱいうらや……おっと、今はそれどころじゃなかった。
「本当にホルスタウロスで良かったの?」
「ええ。おいしいミルクに大きなおっぱいに可愛い尻尾に大きなおっぱいに力強い足腰に大きなおっぱいがあるので大満足です♪」
「……」
あれおかしいな……なんだろ……
なんかこう……どす黒い物というか……ハッキリ言っちゃえば殺意が湧いてきた……
「はいどーどー。落ち着きいやサマリ。ホルスタウロスはそういう種族や」
「う゛〜……」
「な、なんですか……?」
「あーサマリお姉ちゃんは気にしないで……というか早く出たほうがいいかも……」
まあ状況が状況だしカリンに止められなくても最初から跳びかかったりする気は無いけども……ホルミさんといいこの人といい爆乳は皆滅ぶべきだと思う。
「あ、あの……」
「ん?」
「その……わ、私も魔物に……」
「あ、次はお姉ちゃんが魔物になりに来たんだね!」
と、ここで更に新たな女性が入ってきた。
どうやらまた一人魔物になる決心がついた人がアメリちゃんの下を訪れてきたようだ。
「じゃあ行こうか!何になりたい?」
「えっと……空飛べて力がある種族なら……私の家では畑仕事を生業にしてるので、空飛べて力があったら便利かなと……」
「ん〜そうだなぁ〜……あ、お姉ちゃん凄い素質あるよ!!ドラゴンにもなれるよ!!」
「ドラゴン……あールヘキサの領主さんと同じか……いいですね。ではドラゴンでお願いします」
「わかった。じゃあおへやでまってて!アメリもすぐ行くから!!」
こうして覚悟を決めて魔物になるのは大変だろう。
それでも前に進む為、こうしてアメリちゃんに頼んで魔物にしてもらいに来ている……この人達はきっとこれからも強く生きていけると思う。
「あーあの快感を味わう人がまた一人……あんなの初めてでした〜……子供なのに凄いテクニシャンで……♪」
「……」
「今後の参考にも見学させてもらおーっと♪」
「……」
そういえば私の時は魔力を一度に大量に流し込んで魔物化させてたけど……今回はどのようにしてるんだろうか?
まさかとは思うけど……性交じゃないよ……ね?
いや8歳でもリリムだし天性的に出来そうだけど……いやまさかね……
微妙にアメリちゃんが来てる服が着崩れてるけど……気のせいだよね?
「じゃあアメリ行ってくるね!スズお姉ちゃんもお母さんとお父さんとだんなさんとおしあわせに!!」
「おう!…………ん?」
そして被害者の人々を魔物にするため再びこの部屋を出ていったアメリちゃんだったが……出ていく際にスズに掛けた言葉に違和感があった。
お父さんと旦那さんはわかるけど……スズのお母さんは故人だって話だった気がするのだが……
そういえばいつの間にかイヨシさんの怒鳴り声が聞こえなくなったなと思い、アメリちゃんの不思議な言葉を頭の片隅に追いやりつつイヨシさん達のほうを見てみたら……
「もう……駄目ですよ猪善さん。桜自身が決めた事なのに親が出しゃばるのはよくないですよ?」
「あ……ああ……」
「もう……あんなに怒鳴って……って聞いてます?」
「あ……ああ……」
さっきまでは……いや、今まで見た事も無い女性…にしては白いうえに足も無く浮いているのでゴーストだろう…がイヨシさんに説教していた。
チモンさんは状況を一切飲み込めていないようで、イヨシさんは驚きで目を見開いたまま固まっている。
「……誰?」
「さあ……父ちゃんの事知ってるっぽいけど……」
突然現れたゴースト……いったい何者なのだろうか?
とりあえずスズの本名であるサクラと言っているから相手はスズの事はわかるらしいのでスズに聞いてみたが、反応からしてスズはあのゴーストの事は知らないらしい。
しかしあのゴースト……なんとなくスズと似ているような……
「まったく……娘が心配なのはわかりますが親が子離れ出来ないのは問題ありですよ。ねえ桜?」
「えっ、まあそうだけど……あんた誰?」
「あんた誰って……まあ桜は私の事わからなくても仕方ないかな……」
イヨシさんに説教を続けていたゴーストは話をスズに振ってきた。
その時スズが誰かと聞いた……瞬間、そのゴーストさんがとても悲しい顔をした……と思ったら、何かを納得した表情に変わり……
「私は……桜、お前の母ちゃんですよ」
「……は?」
「だから、私は猪善さんの妻で、桜の母親の香澄ですよ」
「……えっ!?」
なんと、自分をスズの母親だと言い出した。
でも……顔が似てるから、もしかして本当かもしれない……
「なあ父ちゃん……」
「ああ……本当だ……このゴーストは正真正銘本物の母ちゃんだ……」
「ええっ!?ほ、本当に母ちゃんなのか!?」
「ええ……私はあなたの母ちゃんですよ」
どうやら本当にスズのお母さんらしい。
「そうなのか……なんかアタイどうしたらいいかわからないよ……」
「ん?なんでだ?」
「だって……今まで母ちゃんの話は聞いた事あっても実際の母ちゃんに会ったのはこれが初めてだもん……」
「まあ…今まで猪善さんがなかなか精を私にくれませんでしたからね……桜が小さい頃から見守ってましたけど、今日でようやく実体化する事が出来ました」
「……どおりで桜が帰って来てから香澄とあんな事している夢ばかり見ていたわけか……」
どうやらずっと猪善さんに憑いてはいたようだけど、今まであまり魔力も無かった場所にいたからなかなか実体化までに至らなかったらしい。
だがルヘキサという魔物が多い地域に来た事で魔力が上手い具合に働きカスミさんを活性化、そしてイヨシさんから精を貰って実体化したという事らしい。
「良かったねスズ!これで家族揃ったじゃんか!!」
「そう…そうか!そうだよな!!」
記憶を失い家族も何もわからなかったスズ……しかし、これでスズの記憶も家族も夫もできた……とても良い事だ。
「ま、親子で募る話もあるだろうし俺達は出てくか」
「せやな。ほないくでサマリ」
「うん!じゃあスズ、また後で」
「あ、ああ……」
折角家族揃った事だし、私達は退散する事にした。
「な、なあ母ちゃん……」
「そんなに固くならなくても良いですよ桜。私達は種族こそ違えど実の親子なんですから……」
「そうだぞ桜……って難しいかもしれないけどな。いきなり母ちゃんが出てきても困るわな」
「もう……そんな事無いですよ。それで何ですか?」
「いや……もし母ちゃんがいたら聞こうと思ってた事なんだけど……アタイの名前、桜って……」
「ええ、昔住んでいた家に生えていた桜の木から採ってますよ」
「それなんだけどさ……なんでアタイにそんな綺麗な名前を付けてくれたんだ?」
「それはですね……」
まだまだ緊張した様子を見せつつも楽しそうに自分の両親と話をするスズを温かく見守りながら、私達は静かに部屋の扉を閉めたのだった。
「しかしまあスズもいろいろと良かったな」
「そうだね……家族か……」
「そんなに不安なら一度帰ってみるか?拒絶なんかしたら俺がぶん殴ってやるよ」
「それやったら私がユウロを寝かせた後この蹄で思いっきり顔面踏むからね?」
「う……冗談だよ……」
「どうだか……イヨシさん殴り倒したという話じゃないか」
「まあそうだけど…………ってチモン!なんでお前まで外に出てるんだよ!?」
そして外でまた話をしていたら……何故かチモンさんまで外に出ていた。
「いやまあまだイヨシさんには認めてもらってないし……それにどうやら親子3人揃ったのは初めてっぽいしな。後でまた合流させてもらう事にしたよ。それ以外にも俺は重要参考人として呼ばれてるからな」
「なるほど……そういえばあんた喋り方そんなだったか?」
「いや…普段は畏まっていたさ。ただサクラはこっちの喋り方のが好きだって言ったからもう素の喋り方だけにする事にした」
「あっそう……」
どうやら親子水入らずにしたいがためと、別件で呼びだされているらしい。
まあチモンさんはイヨシさんに並ぶほどの実力者だったわけだし、エルビが居ない今参考人としていろいろと聞かれる立場にあるのだろう。
「そういえば……ホルミさんとエルビってどうなったんだろ……」
「あのミノタウロスがエルビを拉致したというのは本当の話のようだが……心配だ……」
「ま、ホルミならきっと大丈夫だろ……きっとな……」
「だといいけど……でもどちらにしろあっちは俺の事心配しないだろうな……」
「あー、まあ……ドンマイ」
そんなエルビはホルミさんに攫われたあと、いったいどうなったのだろうか……
=======[エルビ視点]=======
「じゃあ行ってくる。数日したら帰ってくるから大人しく家で待ってるんだぞ!」
「うん!ぜったい帰ってきてね!!」
うそだ……帰ってこなかったじゃないか……
「でも今回はこの街にいる魔物さんとちがってあぶない魔物さんがいるところでしょ?」
「まあ……でも俺には母さんがいるから安心しな!それにエルビ、俺にとってお前が一番大切な存在なんだ!魔物の誘惑なんかに乗るわけないだろ!」
「うん!」
行かせるな……帰って来ないんだぞ……
「じゃあ父さん、ボク良い子におるすばんしてるね!!」
「おう!良い子で待ってるんだぞエルビ!」
とめろ……とめてくれ……!!
「いってらっしゃい父さん!!」
「いってきます!一人でも寂しがるなよ!男の約束だ!!」
「うん!父さんも魔物に負けないでね!男のやくそくだよ!!」
引き留めるんだ……父さんを行かせるな……!!
……………………
…………
……
…
「……はっ!?」
目が覚めたら……ボクは見覚えの無い小屋らしき場所で寝かされていた。
たしかボクは……教会でユウ……なんだったかな……元勇者と戦ってて、あいつがボクの事を言って気が動転してその隙をつかれて殴られ、眼鏡が無くなった状態でルヘキサの自警団長のドラゴンに切り掛かったと思ったらホルミに殴られて……
「ん?目が覚めたようですね」
「この声は……ホル……!?」
どうして自分がこんな場所で寝かされているのか考えていたら足下から女性の声が聞こえてきた。
その声はボクを気絶させた張本人、ミノタウロスのホルミのものだった。
もしや彼女がボクを誘拐しこんな小屋に寝かせたのかと思い、声がしたほうを見たら……
「な、何してるんだ!?」
「何って……んっ……たしかパイズリとかいうものだったかと」
「そういう事聞いてるんじゃないよ!!」
下半身裸にされて、彼女の大きく柔らかなおっぱいでボクの性器を挟み扱いていたのだ。
どうりで下半身が涼しいと思った……ってそんな事思ってる場合じゃない!!
「やめ……!?」
「あ、暴れられないように手足は結びつけてありますから。もちろんベッド自体もタウロと結んであるので動きませんよ」
「くっ……うっ」
どうにかしてホルミの魔の手……いや、魔の乳から逃げ出そうとして起き上がろうとしたのだが、手足が引っ張られたように動かせなかった。
ホルミの言った通り頑丈そうなロープでベッドの足に結ばれている……これじゃあ手足を動かす事は出来ない。
「くそ……ふぅっ、こ、こんな事して何になるんだ!?」
「そうですね……私がしたかっただけってのもありますが、精を放出する事であなたの得意な魔法を封じられるのと、射精による疲労で体力の消耗を誘い暴れ無くする事も目的になってますね」
「くっ、この……あうっ!?」
さらにエスカレートするホルミのおっぱいによる責め……包み込む柔らかな動きとぐちゅぐちゅと響く卑猥な音がボクに射精感を込み上げさせる……
でも射精するわけにはいかない……それは魔物に屈服した事になる……それだけは避けないと……
なんて思ってたら……
「あ、そういえばもう既にエルビは2回射精してますからね」
「うっ…………へ?」
「精液をいただいたのは初めてでしたが、なかなか美味しかったです。これも魔物になったからそう感じるのですかね?」
「そ、そんな……ううっ!!」
もう既にボクは気絶している間にホルミの手によって射精させられていたらしい。
いつの間にか眼鏡が掛けられていたので相手の姿もよく見えるが……たしかに精液らしき白い物がホルミのおっぱいに付着していた。
つまりもうボクは既に魔物に屈服していたわけで……そう思った瞬間、今まで我慢していた射精感に歯止めが効かなくなり……
「うゎぁぁあっ!!」
「んぷっ!3発目だというのにいっぱい出ますね……んっおいし……」
気付いたらボクはホルミのおっぱいの中で射精していた。
ボクの性器から迸る白濁液が、ホルミの健康そうな小麦色のおっぱいを白く染め上げていく……
そんな精液をホルミは胸から手を離し、指で掬って口に運んで行く……そんなものを美味しそうに食べているのが信じられない。
「はぁ……はぁ……くそ、いったいなんだって言うんだよ……」
「いえ、いろいろと聞きたい事がありましてね。その前になんだか無性に襲いたくなっただけですから」
「酷いよその理由……まあ魔物なんてそんなとこだろうけど……」
元々戦いのせいで疲れていた上、さらに激しい射精のせいでボクは息も絶え絶えになっていた。
しかし……こんな事されたらかなりの嫌悪感が生じるはずなのに、それほど嫌じゃないのはなんでだろうか?
「で、何?聞きたい事ってさ。どうせボクを解放する気はなさそうだし、なんでも答えてあげるよ」
「そうですか、それはありがたいです」
だからかボクは、自らホルミが言う聞きたい事に答えてあげる事にした。
おそらくあの事についてだろうけど……まあ屈服させられたし、動けない以上答える事にしよう。
「では単刀直入に聞きますが……先程、といいましても既に一晩は越えてますが……自分は父親に捨てられたと言ってましたよね?」
「ああ……聞こえてたのか……そうだよ……」
やはりあの事……ボクが父さんに捨てられた事についてだった。
ああやって叫びながらあの事を言ったのは久しぶりな気がする……
だからなのか、気絶していた間に父さんが出ていった日の夢を見たのは……もう7年にもなるんだよな……
「3ヶ月待っても帰って来なかった……きっと今ホルミがボクにしてるような事をして魔物について行ったんだろうね……」
「……」
「ボクが一番大切な存在って言っておきながら……母さんがいるからって言っておきながら……あいつは帰って来なかったんだ!!」
そんな夢を見たからか……はたまたあの木刀使いに言われたのを引き摺っているのか……柄にもなく感情的に叫ぶボク……
「だから……だからボクは勇者として選ばれた時、魔物以上に魔物について行った男どもを根絶やしにしてやろうと思ったんだ!!どうせインキュバス、魔物なんだから問題は無いと考えて……何人ものインキュバスを葬ってきた!!」
言葉がどんどん溢れだしてくる……塞ぎ止める事なんかできない……
「いづれは父さんも……その魔物の目の前で殺すんだって心に決めたんだ!!ボクを捨てた事を後悔させてやるために!!」
叫ぶ度に、どうしてあの時引き止めなかったのかと、後悔ばかりが込み上げてくる……
「ところで……エルビ、あなたはどこ出身ですか?」
「へ?」
そんな中で、唐突にボクがどこ出身かを聞いてきたホルミ……いきなり全く関係ない気がする事を聞いてきたので一瞬何を言っているのかわからなかった。
「ボクの出身……それがどうかしたのか?」
「なんでも答えてくれると言ってましたよね?」
「まあ言ったけど……ウンデカルダだよ……」
だがまあどうという事はないので、ボクが街を出てから数年後に、中立領だった故郷が親魔物領になったと聞いてから一度も行っていない故郷の名前をボクは素直に答えた。
「そうですか……では、その父親、またあなたの母親の名前は?」
「……」
そして次に聞いてきたのはボクの両親の名前だった。
そんなものを知ったところで何があるというのだろうか。
元人間の勇者だって言うからボクの父さんを誘惑した魔物では無いだろうし、そんな事を聞く理由がわからない。
「父さんがイリジ、母さんがオスミ。そんなの知ってどうするんだよ……」
「そうですか。わかりました……」
とりあえず答えたが……ホルミは何かを納得したようにうなずいた。
それがいったいどうしたのかと思っていたら……
「あなたのお父様は、あなたの事を捨ててなんかいませんよ」
「……は?」
いきなり自信たっぷりにそんな事を言い始めた。
「な、何言ってるんだ!!どうしてそんな事がわかるんだ!?」
ボクの気を休める為に言ったとは思えないその発言だが……ボクは信じられなかった。
もしそうであるならばどうして父さんは帰って来なかったというのだろうか。
「お前なんかに父さんの事がわかるわkぷぶっ!?」
「それは今から説明するので大人しくしていて下さい」
怒鳴り散らしていたらホルミのおっぱいを顔に押し付けられ声を出せなくされた。
さっきボクがそこに射精したせいで青臭いが、不思議といい匂いもした。
その匂いがボクを落ち着かせる……それと同時に、ボクは少し冷静になれた。
冷静になった頭で考えた結果、こいつがボクの父さんの事を知っている理由が思い付いた。
「……つまり、ホルミはボクの父さんに会ったとでも言うのか?」
「ええ、そうですよ」
やはりボクの父さんに会ったらしい。
「私は魔物になった時、ウンデカルダにいたのですが……そこでとある夫婦に出会いました」
「とある夫婦……?」
そして、ホルミはボクに語り始めた。
「ええ……リリムのトリーと……イリジと名乗る男性の夫婦です」
「なっ……!?」
ホルミの話からして、どうやらボクの父さんはリリムに誘惑されたらしい……なら仕方が無い……とはならない。
リリムという強力な魔物が相手とはいえ誘惑に負けた父さんがより一層許せない……次の言葉を聞くまではそう思っていた。
「その夫婦……いえ、正確にはさらにもう一人の妻であるグールのオスミの3人から私はある依頼をされました」
「えっ!?」
「どうやらイリジさんの頼みでトリーさんがグール化させたようですよ」
なんと……母さんもグールとなって一緒にいるらしい……
そういえば親魔物領と化した故郷での話と言っていた……という事は父さんは戻ってきている?
しかも父さんの頼みで母さんを復活させてるとか……いったいどういう事なんだ?
「本人達に聞いた話ですけど、7年前の丁度これくらいの時期に魔界近くにあった鉱山で採掘していた人間のグループが土砂崩れに巻き込まれてしまったようです」
「鉱山の採掘……まさか!?」
「ええ……そこで作業していらしたイリジさんも巻き込まれて重傷を負ったようです」
そして……ホルミはあの日に、父さんに何が起きたのかを話し始めた。
「幸いトリーさんやその部下の方達が救助に向かったようで誰一人命は落とさなかったようですが……大体の人は全治3ヶ月の怪我を負ったそうです」
「3ヶ月……じゃあ父さんが帰って来なかったのは……」
話からすると、父さんは大怪我を負って動けなかったから3ヶ月も帰って来なかったらしい……
あの元勇者が言ってたように、たった3ヶ月じゃわからなかったというのか……
「そしてその間、イリジさんに惚れたトリーさんは一生懸命看護していたようです。ただ、イリジさんに告白しても「自分には大切な妻と、大切な息子がいるから」と断り続けていたそうです」
「そう……なの?嘘……じゃないよね?」
「あくまで私が本人達から聞いた話ですので、信じるかどうかはエルビ自身に任せます」
とても信じがたい話だけど……ホルミが嘘をつくとは思えなかった。
自分でもなんでこんなにこいつを信用しているのかはわからないけど……自然とそう思っていた。
「ただまあそんなイリジさんの事を本気で好きになったトリーさんは2番目でもいいからとイリジさんに言い張り、結局折れたイリジさんと一緒にウンデカルダまで行ったそうで……着いた後で待っているはずの息子さん……つまりあなたが居なくなっていたので相当血相を抱えたようです」
「そう……なのか……」
どうやらボクが勇者としてあの街を出た少し後に父さんはちゃんと帰ってきてくれていたらしい……
「そしてあなたをあの場から連れだしたのが教団の人間と知った二人は、トリーさんの魔力でグールとして生まれ変わったオスミさんと3人でエルビを取り返す為教会を潰したそうです」
「……は?いや……リリムの力があれば簡単か……」
「はい。それだけあなたの事を大切に思っていたという事です」
そして、ボクが勇者としてついて行っただけなのにボクを連れ去ったと勘違いしたっぽい父さん達はボクを取り返そうと街にあった教会をドデカルアでルヘキサの連中がしたように潰したらしい……
「私はそんな3人から息子の捜索を依頼されました。勇者だという情報は得られていなかったのであなたかどうかは自身が無かったのですが、どうやらあなたの事のようですね」
「そう……だったのか……」
今してくれたホルミの話をまとめると……父さんはボクを捨てたどころか……ボクや母さんが大切だからとリリムの魅了にも抗ったらしい……
「そんな……じゃあ……ボクは……」
「捨てられたどころか、今でも行方がわからないあなたの事を心配していますよ。あ、トリーさんもまだ見ぬあなたの事心配してたりもしますよ」
「っ……!!」
ボクは……父さんに捨てられていなかったのか……
「じゃあ……ボクが今までしてきた事は……なんだっていうんだ……」
「……」
勝手に父さんに恨みを抱いて……全く関係ない人や魔物達をこの手で葬ってきた……
ボクは……いったい何をしていたというのか……
「……それでどうします?ご両親の下に行きますか?」
「……無理だよ……父さんに合わせる顔が無い……」
勝手に失望し、勝手に恨み、自分の意思で大勢の魔物や人を傷付けたボクに……父さんに会う資格なんかない。
「きっとイリジさんもオスミさんも気にしていないとは思いますよ?」
「それでも……それでもボクは両親に顔向けできないよ!!」
多くの魔物を、多くの魔物の伴侶を……ボクは傷付けてきた……
そんなボクが……魔物になった母さんと、魔物の伴侶になった父さんに会えるわけがない……
「はぁ……まああなた自身がどう思っていようが関係ありません。私が連れていきます」
「はあっ!?」
それなのに、ホルミはボクを父さん達の下に連れていくと言い始めた。
「やめてよ!ボクにはそんな権利……」
「権利がどうこうなんて聞いてません。親御さんはあなたに会える日を楽しみにしているのですよ?」
「そうかもしれないけど……」
「大体親御さんがあなたに会いたいと私に依頼してまで探しているのですよ?会いに行くのが親孝行です」
「でも……」
「それともなんですか?まさかあなたの両親はあなたが大勢の魔物やその伴侶を傷付けてきた程度で愛想を尽かすとでも思っているのですか?私はあなたと比べたら全然あの人達の事は知りませんがそんな事は無いとハッキリと言えますよ」
「……」
ボクは父さん達に会う権利なんかないと言おうとしたけど……ホルミがボクの言い分なんか聞く気は無いとでも言いたげに押しきるつもりだ。
「それに……」
「……!?」
そしてホルミは、ベッドの上で寝ているボクに抱きついて……
「もしあなたが今までの自分がした事を後悔しているなら……これからどうしていくのかを親御さんに宣言して下さい」
「え……」
「私だって元勇者……あなたと同じく何人もの魔物を傷付けています……だけどもう過去にやった事は覆す事は出来ません。なので私はこれから今まで傷付けた者に謝りに行き、傷付けた以上に大勢の魔物や人々を助けたいと思っています。それが私にできる罪滅ぼし……と言えるかは微妙ですがね。あなたはどうしますか?」
「……」
耳元で、優しく抱きしめてくれながらそう言ってきた……
「ボクは……きっとホルミ以上に多くの人達を傷付けてきた……」
「……」
「だから……ボクもホルミと同じく多くの人達を助けたい……駄目かな?」
「そうですね……それをご両親に宣言しましょう……そうすればその気持ちを忘れる事もありませんから……」
「うん……」
ホルミに嫌悪感を抱けない理由がわかった気がする……
なんだか……母さんみたいだ……
「一人で不安なら、私もあなたと一緒に罪滅ぼしの旅について行きますから……というか同行します」
「え……」
「どうやら私はあなたの事が気になって仕方ないようです。なのでこれからもずっと一緒に居させて下さい」
「……」
そんなホルミから、まさかのこれからもずっと一緒にいたいと言われてしまった……
「……仕方ないなぁ……どうせいいよって言わないとこれ解いてくれないんでしょ?」
「ありがとうございます」
一人じゃないのはとても心強い……しかも自分と同じ『罪』を持った人が一緒だ……
その申し出はとても嬉しかったけど……素直に言うのは恥ずかしかったから仕方なくを装って了承した。
「では……誓いの性交を……」
「…………はあっ!?」
でも……なんだかおかしな方向に話が動き始めた。
ボクの聞き間違いじゃなければ今性交しようとか言わなかったか?
「いやちょっとなんでそうなるのさ!?」
「それはまあ……私がシたいからですよ」
「なんて勝手な……う……」
どうやら聞き間違いではないらしい。
ホルミはボクの性器をぎゅっと掴んでゆっくりと扱いてきた。
おっぱいとは違う掌の柔らかさがもたらす性器への刺激が、ボクを勃起へと誘う。
「まあまあ…エルビもココを硬くしてますし……」
「そりゃそんな事されたら身体が勝手に反応するよ!!」
「素直じゃないですね……まあいいでしょう」
そしてガチガチに勃起したボクの性器を片手で掴んだままボクの上に跨り……
「ではそろそろ挿入してみようと思います」
「へっ!?えっ!?」
自らの股にもう一方の手を持ってきて、魔力で自分の毛を消し去り女性器を露わにした。
「えっと……拒否権は?」
「無いに決まってるじゃないですか」
元人間でさらに丁寧語であるけど、3大欲求以外はさほど興味を持たないミノタウロスらしいホルミ……
ボクはこれから先もこいつにこうして振り回されるのだろう……
「じゃあ挿れますね」
「や、待って……」
「無理です。エルビが欲しくてもう我慢なんかできません」
「発情期じゃないよね!?」
「違いますけど子供が出来たらいいですね」
「そういう問題じゃないから!!やたら積極的で怖いだけだから!!」
「まあ魔物なんてそんなものですよ。愛する人の前では欲求に歯止めなんて効かないんですよ」
「ちょ!?さらっと愛する人とか言わな……う、うわああああっ!!」
でも……それもいいかもしれない。
彼女が居ればきっと、ボクはもう道を踏み違う事も無いだろうし、寂しい思いもしなくて済むのだから……
=======[サマリ視点]=======
「それでスズはこの街に残るとして、他の皆は?」
現在19時。
夜になったので一先ず私達はルヘキサ自警団の食堂で皆集まって夜ご飯を食べていた。
「ウチは前言った通りとりあえず届け先のリリムのとこまでは同行するよ」
「アメリもそのお姉ちゃんに会いたい!!だからカリンお姉ちゃんよろしくね!!」
「おう、よろしゅうな!」
そこでこれからどうするかを話しあっていたのだ。
とりあえず私達はカリンと一緒にカリンの実家のお店に注文したのがリリムの従者のバフォメットという事で、そのリリムに会いに行く事にしたのだ。
「プロメ達は?」
「アタイ達はまだ調査しないといけないからな」
「それに調査を終えたらすぐに帰らないと、また父さん達が捜索届けとか出すかもしれないからね」
「ははは……そういえばそんな事もありましたね」
プロメとネオムさんはまだこのルヘキサに残って周辺の自然の調査を続けるらしい。
今回の事でドデカルア周辺も安全に調査できるようになったわけだから、そちらも調べるので時間が掛かるのだろう。
「まあ俺達の出発は5日後を目安にするか?」
「そうだね。それまでに他の人達も決心つけばいいけどね」
「でもそれ以上はカリンお姉ちゃんが困るでしょ?」
「せやな。相手もそう長くは待ってくれへんやろうしな……そもそも待たせるのは商売としてよくないしな」
まだ実験されてたドデカルアの人は5人も魔物になる決心がついていない。
彼女達の為にも、私達はギリギリまでここにいる事にしたのだ。
「それじゃあ5日間はまだ一緒にいられるんだな!」
「まあ……でもスズは家族やチモンと一緒じゃなくていいのか?」
「父ちゃんや母ちゃん、それにチモンとはこれからもずっと一緒に居られるけど、皆と一緒に居られるのはあと少しだもん。それに……」
「それに?」
「記憶が無かったアタイにとって、アメリ達はアタイにとって家族のようだったからね。お別れは寂しいから、せめて居るうちは一緒に居たいんだ」
「そういう事か……そうだな。じゃあ明日はこの街をゆっくり見て周ろうぜ!なんだかんだで結局ルヘキサの観光してないしな!」
「そういえばそうだったね。アメリちゃんにいつ呼び出しが掛かるかわからないけど、皆で一緒に観光しようか!」
「さんせー!!」
だから私達はお別れするスズとも最大5日は一緒に居られるのだ。
その間に、碌に観光していなかったこの街で、スズと思い出作りをしようと思う。
別に思い出が少ないわけじゃない……それどころかジパングからここまでずっと一緒だったからいっぱい思い出はあるけど……よりいっぱいあっても困るものではないからね。
「じゃあそうと決まれば今日はゆっくりと寝るかー!」
「そうだな……でもアタイはチモンと……」
「はは……スズもウシオニらしく立派に性欲が強くなったようやな……」
「そうかな?四六時中繋がっていたいとかじゃないからそうでもないとは思うけど……あ、でも隙あらばってのもあるな……」
「はははは……」
私達は笑いながら、夜ご飯を食べ続けたのだった……
スズが抜け、再びカリンと共にするここからの旅は、どんな事が待っているのだろうか…………とっても楽しみだ!
=======[セレン視点]=======
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
ワタシは血の滲み出る脇腹を押えながら、一生懸命道を走っていた。
いえ……正確にいえば、ワタシは全力で逃げていた……
「はぁっ……なんで……こんな事に……」
ワタシが何から逃げているか……
それは……
「……見つけたぞセレン……もう観念するんだ……」
「はぁ……セニック……」
ワタシの脇腹から出た血が付着している聖剣を持ったセニックが、ワタシの前に立ち憚った。
いつの間にか先回りされていたらしい……
そう、ワタシはセニックから逃げていた。
「なんで……なんでこんな事に……」
「それは……お前が魔物と判断されたからだ……」
「……」
アメリと名乗る幼いリリムと共にいたウシオニの血を浴びたワタシは、ペンタディアに帰った後で検査を受けた。
その結果、ワタシの身体には魔物の魔力が既に定着していたらしい……つまり、ワタシはもう神の使徒では無く……魔物だと判断された。
自分にはそんな自覚は無いのだが……そう検査結果が出てしまえば覆る事は無い……だからワタシは死刑される事になった。
なぜならば、魔物化は新たなる魔物化を呼ぶからだ……ペンタディアでは魔物になった者は即死刑なのだ。
「オレだって辛いさ……お前は良いパートナーだったからな……」
「なら……」
「でもな……これは命令なんだ……それに、お前がこのまま大人しくいる保証は無いんだ……」
そして、そんなワタシの命を絶つ役割を命じられたのが……かつてのパートナー、セニックだった。
「だから……もう逃げないでくれ……」
「……嫌です……ワタシはまだ……まだ死にたくは……」
「わかってるよ!!でも……もうどうしようもないんだ!!」
魔物になったと言われても、ワタシにはそんな自覚は無い……それだけで殺されるのは嫌だった。
だからワタシは隙を見て逃げ出したのだが……遠くまで逃げた事により安心していたところで追いつかれてしまい、出会い頭に斬られてしまった。
それでもワタシは痛いのを我慢しながら走り続けたのだが……このように追いつかれてしまったのだ。
「今……ワタシと共にセニックが逃げるという事は……」
「無理だ。呪譜の力でオレがお前と逃げたらオレは重傷を負う……死ぬかもしれないんでね……」
「そんな……なんて酷い……」
「お前が逃げなければそんな事もされなかったさ……」
セニックに……元パートナーに殺されるのは嫌だ……
「という事だ……諦めてくれ……」
「絶対に嫌です!!」
「オレだって嫌だよ!!でも仕方ないんだよ!!」
いや、それだけじゃない……
「仕方なくなんてないです!!それにワタシは……セニックの事が好きです!!」
「なっ……!?」
ワタシは、セニックが好きだった。
好きな人に、殺されたくなんて無かった。
「一緒に魔物を討伐する為に任務をしているうちに……いえ、初めて会った日から好きでした!!」
「……」
だからワタシは、セニックに想いを伝えた。
もしここで死ぬしか無くても、後悔が無いようにしたかった。
「セレン……」
「セニック……」
そんなワタシの想いを聞いたセニックは、聖剣を投げ捨ててワタシのところにゆっくりと近づき……
「ありがとう……」
「セニ…………っ!?」
「そして…………ごめん…………」
ワタシを抱きしめながら……ワタシのお腹を、隠し持っていたナイフで刺した。
「せ、セニ……ク……」
「……じゃあなセレン……好きだって言ってくれて嬉しかったよ……」
刺されたところから血を流し、足に力が入らなくなって、力無く横たわるワタシを一目見て去っていくセニック……
「あ…………う…………」
段々ぼやけていく視界……薄れていく意識の中で……
ワタシは涙を流し……セニックの笑顔を思い浮かべながら……意識を手放したのだった…………
……………………
…………
……
…
12/12/30 19:53更新 / マイクロミー
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