「ふにぃ〜……やっぱ冬はコタツにミカンが一番ね……」
「姉さん本当に変わってないね…昔から冬はずっとコタツに入ってミカン食べてたもんね」
「だって私真っ先に買った家電コタツなほどコタツ大好きだしね〜。ミカンは最近高いから買ってなかったけど、出来れば常備しておきたい程好き……」
「はは……」

今日は12月31日。つまり大晦日だ。
私は新しくなった実家のリビングで、コタツに入ってミカンを食べながら年末特番を見ていた。
クリスマスの時お母さんが言っていたように私の部屋は当時の形そのままを再現したかのようにあったが、部屋にはコタツもテレビもついでにミカンも無いからリビングにいる。

「姉さん大学受験のほうはどうなの？」
「うーん……最後の模試ではB判定だったから、希望が無いわけじゃないかな？」
「成る程ね〜。わたしも2年後は受験だもんな〜……今から不安だよ……」
「まあ琴音ならなんとかなると思うよ。勿論高望みしない前提だけどね」

妹とお喋りしながら正月を迎えるのは久しぶりだ……というか、二度と来ないと思っていた。

「これも美夜ちゃんのおかげか……」
「へっ？何か言いましたか美琴さん？」
「いや、こうして琴音とまたお喋り出来るのも美夜ちゃんが琴音を堕としてくれたからだなぁって……ところで何で美夜ちゃんいるの？」
「えっ？いたら駄目ですか?」
「いや、駄目ではないけど……」

なお、今このリビングにいるのは私と琴音、そして何故か家にいる美夜ちゃんの3人だけだった。
ちなみに両親は自分達の部屋で今日も元気に交わり中だ。

「だって私の家大晦日は紅白◯合戦しか観ないから暇なんですもん。私ガキ◯見たいのに、お母さんもお父さんもお姉ちゃんも紅白派なんですもん」
「まあ…というかうちはそもそもテレビ観てなかった気が……神に御祈りしてたような気が……」
「それはもう今更でしょ?それに堕落神様に御祈りしようにもわたし姉さんと違って彼氏いないからね……そういえば姉さん、円治さんは？」
「円治君は今家族水入らずで過ごしてるよ。数ヶ月ぶりに両親と会えるって事で今日はこの通り。明日初詣に一緒に行く予定だからその時に円治君の両親にご挨拶しに行く予定よ」
「成る程、だから今日の朝に帰ってきたんだ」

円治君は今自分の家で両親とお喋りしているだろう。
どうやらうまい具合に大晦日と正月は休みが取れたらしく、珍しく家族が揃うらしいので今日はそれぞれ家族と過ごし、明日初詣に行く事にしたのだ。
年納めと年初めのセックスの計画は見事潰れたが、まあこればかりは仕方が無い。

「まあ初詣が終わったらそのまま下宿先に戻るけどね」
「そう……じゃあ今のうちに姉さんにいっぱい甘えないとね♪」
「……琴音、その甘えるって普通の意味よね？」
「さあ？どうでしょうか？」
「やめてよね!!私の身体を好きに弄っていいのは円治君だけなんだからね！」

ただまあ私も今年は家族と過ごせるのでこれはこれで良かったかもしれない。
妹とじゃれ合いながら過ごす大晦日…楽しくて仕方がない。
これも円治君がクリスマスに私の家族に会いに行こうと言わなかったら迎えられなかった大晦日だ……あの瞬間は本当に嫌だったけど、あの日家族に会いに行って本当に良かった。
ホントに円治君には頭が上がらないなぁ…と思いながら、私は妹をあしらいながら円治君がくれた髪飾りを弄る。

「まあ仕方ないか…ところで姉さん、一つ聞いていい？」
「何？」
「姉さんって誰かを堕とした事ってある？」
「いや無いけど……そういえばあんたお母さん堕としたんだっけ」
「あれ言ったっけ？まあそうだよ……美夜ちゃんにエッチな事教えてもらって、姉さんもこんな気持ちだったんだってわかったからそのままお母さんにも教えてあげたんだ」
「へぇ……それ私ただの口実じゃないよね？」
「いやいや…本当に脳裏に姉さんの事が浮かんだんだ。それと同時に謝りたくなった……」
「琴音……」

そんな妹が他人を堕とした事があるかと聞いてきたが、私には経験は無い。
本当にたった1回だけ天野の奴を堕としてやろうかと考えた事はあるが、それ以前にウザく感じたのでやめてそれっきりそんな考えは浮かばなくなった。
まあ自分が堕とされたせいで家族に見離された経験があったから、あまり他人を堕とす気になれなかったのもある。
それで思い出したがたしか近所に住んでいたおばさん曰く、この一家が全員堕落した原因は琴音にあったらしいので事の真相を聞いてみたのだが……どうやら本当らしかった。
自分が堕落した時やお母さんを堕落させる際に私の事を思い浮かんでいたとは……なんだか少し嬉しかった。

「というかなんでいきなりそんな事聞いてきたの？」
「あー、んーとね、美夜ちゃんのお姉さんを堕とすの手伝ってもらおうかなと思って聞いてみた」
「へ？美夜ちゃんのお姉さん？」

そういえばどうして私に他人を堕落させた事があるのかなんて聞いてきたんだろうと思って聞き返したら……美夜ちゃんのお姉さんを堕としたいとの回答が返ってきた。
えっと……つまり美夜ちゃんのお姉さんは……

「もしかして美夜ちゃんのお姉さんエンジェル？」
「はい。私のお姉ちゃんはエンジェルなんですよ。家族全員ダークエンジェルなのに一人だけエンジェルなのはどうかなって思って堕とそうと頑張ってるんですが……」
「わたしと二人で襲いかかってもいつの間にか手篭めにされていて……毎回こっちがイキ狂っちゃうもんね……」
「え？」

どうやらお姉さんはエンジェルらしい……けど、二人が言っている事が信じられなかった。

「二人でおっぱい揉んだりおまんこに指入れてかき混ぜたりしてるんだけど……いつの間にかマウントポジションを取られてるというか……とにかく逆転されてるんだよね……」
「エンジェルと言えど魔物……サキュバスなんですようちのお姉ちゃんは……」
「ま、またそれは凄いエンジェルな事で……」
「もうスーパーエンジェルって感じだよね……」
「そうだね……性的な事に特化したスーパーエンジェルだね……」

ダークエンジェルに……それも2人に性的な事で勝るなんて……なんて凄いエンジェルなんだろうか。

「あれ？じゃあ美夜ちゃんも元エンジェル？」
「いえ。私は生まれながらにしてダークエンジェルです。当時ギリギリエンジェルだったお母さんがお姉ちゃんを産んで、堕天後に私を産みました」
「ほえ〜なるほどね〜……」

昔から魔物に囲まれて生きているエンジェルか……トラウマこそなくなったが、未だにエンジェルの事はそんなに好きじゃないけど、そのスーパーエンジェルにはぜひ会ってみたいものだ。



ﾋﾟｰﾝﾎﾟｰﾝ♪



「ん？お客さん？」
「こんな時間に誰だろう……とりあえずわたしが出るよ。どうせお母さん達は気付いてないだろうしね」
「ん。まかせた琴音」

と、私達がテレビを見ながら談笑していたら呼び鈴が響いた。
大晦日の、しかも日付が変わるちょっと前に来る客なんて居るんだなと思いながら、来客を琴音にまかせ私はまたテレビを見ていたのだが……

「はーい……あ、美夜ちゃんのお姉さん！」
「やあ琴音ちゃん。いつも妹がお世話になっている。ところで美夜はこちらに来ているか？」
「はい。うちでテレビ見てますが……お迎えですか？」
「ああ。まったく……年明けの時は家にいろと言っておいたのに……年越し蕎麦が食べれないじゃないか……」

どうやら例の美夜ちゃんのお姉さんが美夜ちゃんの迎えに来たらしい……

「……ん？」
「げ……紛れもないお姉ちゃんの声だ……どこに行くか言わずに出てきたのに簡単にバレてら……」

美夜ちゃんの反応からして本人だろうけど……


何故か私はその声に聞き覚えがあった。


「すまないが美夜を呼んできてくれないか？」
「そうですねー……なんなら上がりますか？寒かったと思いますし、少し温まっていきません？」
「それはありがたい。ではお邪魔させてもらおう」

喋り方といい、エンジェルという前情報といい、どう考えてもとある人物が脳裏に浮かぶ……
そういえば……美夜ちゃんの顔をじっくりと見てみると……面影があるような気もする……

「ね、ねえ美夜ちゃん……」
「なんですか美琴さん？」
「美夜ちゃんってさ……そういえば名字何？」

いやまさかと思いながらも、私は確かめてみた。


「私ですか？そういえば言ってなかったですね……私は天野美夜です」
「天野……って事は……」


名字は天野……つまり、美夜ちゃんのお姉さんというのは……


「お姉さんの名前は……もしかして……」
「はい、お姉ちゃんの名前はひｋ」


ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗｯ!!


美夜ちゃんがお姉さんの名前を言うと同時に、リビングの引き戸が開いた……


「おい美夜!!こんな日に友達とはいえお邪魔するのは迷惑だろうが!!さっさと帰る……ぞ…………黒羽？」
「あ…………天野…………」


そこに現れたのは、やはりその声のとおり……私が学校にいる人物の中で最も嫌いな奴、天野光里だった。


「あれ？お姉ちゃんと美琴さんって知り合い？」
「あ、ああ……同じ学校にいるダークエンジェルだ……ほら、この前お前に相談した……」
「あーあのダークエンジェルになって家を追い出された人か！あれって美琴さんの話だったんだ！」
「えっ!?姉さん光里さんと知り合いなの!?」
「あ、ああ……一応……」

まさかの天野の登場に、私は繋がったまま出てきたお母さん達を見た時以上に驚いた。

「そういえば『黒羽』だな……そうかここはお前の家だったのか」
「あ、ああ……お前が美夜ちゃんのお姉さんだったんだな……」
「まあな」

さっき二人の口から出ていたスーパーエンジェル……まさか天野の事だったとは……

「って事は……二人を性的に平伏させているエンジェルって……」
「は？ああ……そうだ黒羽、お前の妹をうちの妹が勝手に堕落させたようですまなかった」
「あ、いや……そのおかげで今私はここに居られるし美夜ちゃんには感謝してるけど……天野お前……」
「私は魔物だと言った事無かったか？」
「あ、いや……覚えてないけど……」


なんだかちょっとだけ天野の事嫌いじゃなくなった気がした、そんな大晦日だった。

■作者メッセージ
ということでおまけ。
実は美琴の妹、琴音を堕とした美夜ちゃんはちょいちょい言っていた天野の妹でしたというだけの回でした。

ここまで読むのは大変だったと思います（実は合計5万字程あります）が、最後までお読みいただきありがとうございました!!


なお次の現代舞台の作品はとうとうあの人のターンです。
ほら……あのリア充爆発しろとか言ってた人ですよ。
おそらく卒業シーズンになりますので待っていて下さいねキャラクター提供して下さったNさん。