旅26 旅していると様々な事があるよね!
「…やっと辿り着いたな…」
「ほんとだね…」
「あ〜…まだごっつ頭痛い…」
現在16時。
私達は山を下りて、今『伍宮(いつみや)』に到着した。
昨日の夜の時点で小さな山の頂上に辿り着いているのに、下りるだけでこんなに時間が経っている理由、それは…
「サマリお姉ちゃんにユウロお兄ちゃん、それにカリンお姉ちゃんも大丈夫?」
「うん…なんとか大丈夫…」
「俺もまあ一応は…かなり気持ち悪いけどな…」
「ウチ辛い…吐いて良いって言うなら今すぐ吐ける気がするわ…」
私とユウロ、それにカリンは昨日のアカオニさんやアオオニさん、それにオーガといったオーガ属の魔物達の宴会で飲んだお酒が原因で二日酔いになってしまったからだ。
「てかサマリとユウロはそんな飲んでへんやろ?なんで二日酔いになっとるん?」
「しるかよ…叩き起こされた後の一杯が効いてるんじゃねえの?」
「一杯で良いって言ってたのに終わり間近で更に飲まされたからね〜…」
たしかに私やユウロはカリンほど飲んではいないが、元々お酒は弱いのに結構飲まされたからな…
「まったく…皆情けないなぁ…」
「…なんでスズは平気なん?」
しかし、カリン以上にガバガバと飲んでいたスズは全くもって平気である。
やはり種族名にオニと付くだけあってお酒に強いのか、元々お酒に強かったのかはわからないが、昨日あんだけ飲んだのに二日酔いになっていないどころか朝から元気に動き回っている。
「まあスズが平気だったからいろいろ助かったけどね…」
「スズお姉ちゃんのごはんもおいしかったよ!」
「いやぁ…サマリの指示に従っただけだし…でもありがとうアメリ!」
だから今日のご飯やその他いろんなことは全部スズにやってもらった。
まあ一応気持ち悪さを頑張って堪えながら私も料理を手伝ったから特に問題は無かった…というか、私の指示を完璧にこなしていたしスズは結構器用だと思った。
で、昼過ぎになってようやく動ける位には回復したので、ゆっくりと無理無いペースで山を下り、ようやく伍宮に到着したという事だ。
「じゃあ早速だけど宿探そうぜ…」
「えっ?もうやど行くの?」
「アメリちゃん…ウチもうこのまま歩くの辛い…」
「あ、そうだよね…じゃあ宿さがそうか!」
という事で、私達3人はトボトボとスズとアメリちゃんの後ろに付いて行くように宿を探した。
…………
………
……
…
「こちらお夕食の鴨鍋です」
「ありがと!わあ〜おいしそ〜!!」
「たしかに美味しそうだね…お〜いご飯だよ〜」
現在19時。
私達は1泊2食付きの宿を探しだし泊まっていた。
まあ…もちろん私とユウロとカリンは……
「わかった…そっち行くよ…」
「あー…俺無理…先食べてて…」
「ウチも…後で食べるから置いといて〜…」
ご覧の有様である。
宿に着いてからずっと3人仲良くお布団で寝ていたのだが…まだまだ気分はスッキリしない。
まあまだ動けるしご飯食べる気力がある分私は残り2人よりは回復していると見て良いだろう。
「まったく…本当に情けないなぁ…まあ一応2人分は取っておくから後で食べなよ!」
「うーい…」
「おおきにー…」
という事で、スズとユウロはそのまま寝る事に、私はスズとアメリちゃんと一緒に夜ご飯の鴨鍋を食べる事にした。
出汁はもう鍋に入って温められているので、鴨肉とお野菜を豪快に入れて、蓋をしてちょっと待つか…
「明日はサマリお姉ちゃんもいっしょにおんせん入ろうね!」
「そうそう、ここの温泉すっごく広かったよ!絶対入っておくべきだって!」
「うん…明日の朝、気分が良くなってたら入ろっか…」
「うん!カリンお姉ちゃんもユウロお兄ちゃんもいっしょにね!」
「…え?ユウロも?」
「ここの温泉は混浴だったからね…まあ男女間での行為をちょっとでもしたら妖怪だろうが人間同士だろうがキツいペナルティがあるらしいけど」
「へぇ…まあ私達は大丈夫だろうけど…ユウロが他の人にやられないように気をつける必要が無いってのは良いね…」
流石に二日酔い状態でお風呂に入りたくなかったので私達3人はパスしたが、スズとアメリちゃんはこの宿にある温泉に入っていた。
結構有名なものらしいので是非入りたいが…明日の朝の体調次第だな…
「さてと…そろそろいいかな?」
「そうだね…お肉も火が通ったみたいだし、お野菜もちょうど味が染みて良さそうだしね…」
「じゃあ、手を合わせて…」
「「「いただきます!」」」
ちょっとお喋りをしているうちに鍋が煮え立ってきたので、中の様子を見ると美味しそうな匂いが漂ってきた。
それに食材もいい具合になっていたので、早速食べ始めることにした。
「はむはむ……お肉おいしー!」
「これ鴨肉だっけ?めちゃくちゃ美味しいな〜!」
「スズ…ちゃんと野菜も食べるのよ?とろけるし味も染みてて美味しいんだから!」
「わかってるよ…ちょっと苦手だけどいつも食べてるじゃん」
「もぐもぐ…白菜もおいしー!!」
スズがお肉ばかり食べている(まあ種族的にも仕方がないかもしれないが)のを注意しながらも、私達は鴨鍋を堪能した。
鍋の…というか煮てある白菜と葱ってかなり美味しいよね…もちろんお肉もね。
ちなみに、私達3人が食べ終わってゆっくりと昨日のあの宴会の事を話していたらユウロとカリンがようやくご飯を食べる気になったようで起きてきた。
少し寝て元気になったのか、お肉も野菜もしっかり2人前取っておいたが全部二人で平らげた。
食べた後少しだけまた皆でお話をして、ちょっとだけ宿をうろついた後私達は皆そろって寝た。
もちろん、私の胸には最高の抱き心地を持つアメリちゃんが抱かれていた。
ホント、アメリちゃんの寝顔は可愛いなぁ…絵として永久保存しておきたいぐらいだ……
====================
カポーン……
「ふぃ〜…気持ちいいね〜…」
「うん〜…アメリきもちよすぎてとろけそ〜…」
「んなアホな〜…でもわかるわ〜…」
現在7時。
特にこれと言った理由は無いけれど、今日は皆ちょっと早起きした。
私もユウロもカリンも二日酔いが醒めていたので、昨日言っていた温泉に皆で入る事にしたのだ。
「ところでユウロはどこ行った?」
「ユウロならあっちの岩陰にいるよ〜」
「ユウロお兄ちゃんもこっちにきていっしょに入ろうよ〜!」
「いや無茶言うなよ!!」
もちろん皆というのはユウロも含まれている。
なぜならば、この温泉は混浴だからである。
流石、宿を経営しているのが魔物の『ゆきおんな』さんなだけある…
あれ?今思ったけどゆきおんなさんが温泉って大丈夫なのかなぁ…?
まあ経営出来ているんだし大丈夫なんだろう…
「なんや?別にアメリちゃん以外はタオルでちゃんと隠してるから心配する事無いで?」
「ちゃんと考慮はしてあるんだから心配するなっての」
「そうそう…アメリちゃんに欲情するって言うなら話は別だけどね」
「え?ユウロお兄ちゃんアメリとラブラブしたいの?」
「話がぶっ飛び過ぎだよアメリちゃん!?」
まあ一緒に温泉に入ってはいるけれど、ユウロ一人だけ私達から見えない場所に入っている。
ちゃんとタオルとかで隠すべきところは隠してあるのだから問題無いと思うんだけどな…
ちなみに、時間が時間だからか今は私達以外のお客さんは誰も居ない。まるで貸し切り状態だ。
「で、なんでこっちに来ないの?」
「…目のやりどころに困るんだよ…」
「は?ちゃんと隠しとるゆうとるやん」
「それでも裸だって意識しちまうんだよ!!」
「ああ…そういうことか…」
どうやらユウロは私達が裸なのがいけないらしい。
まあ私達魔物は男を誘うように魅惑的な身体をしているらしい(自覚は無い)から無理もないのかな?
しかもカリンも人間にしてはかなり綺麗な身体してるしね。
「それにしてもユウロお兄ちゃんとカリンお姉ちゃんがいっしょにおんせんに入ってるってなんかふしぎだね!」
「ああ…まあ普段はウチも別に入っとるもんなぁ」
そういえば、ユウロやカリンは普段一緒にお風呂入ってないからなんか新鮮だなぁ…
…………あれ?
「カリン…そのタオルの下の膨らみは何?」
「え……あ…は、ははは…」
普段一緒に入らないカリンの身体をぼーっと見ていたのだが…よく見ると普段のカリンには無いものがカリンの胸の辺りに付いていた。
「おっかしいなぁ…カリンって私よりも無さそうに見えたんだけど…」
「あ、ホントだ!カリンお姉ちゃんのおっぱい大きいね!」
「え!?マジで!?いや見る気は無いけど少し気になるんだけど」
「そうだね…リンゴ並にはあるよ…いつの間にそんなに膨らんだの?」
そう…普段は私と同じかそれ以下位しかないはずのカリンの胸が、何故か今はリンゴと同じ位の大きさになっているのだ。
奇妙すぎるのだが…いったい何が起きているのだというのだろうか?
「ねえカリン…なんでかな?」
「い、いやあ…ウチ普段はサラシで抑えてるからなぁ…」
ほぉ…普段は抑えているときたか…
つまり…普段は胸が無いふりをしていたという事か……
なんか裏切られた気分だなぁ……
「ん?何でだ花梨?」
「い、いや…ウチみたいな商人は機動力重視せなあかんでな…そのままにしとくと邪魔で仕方ないんや」
「へぇ〜……邪魔なんだ〜……」
「っ!?な、なんやサマリ、そ、その眼は…」
しかもその理由が『大きな胸が邪魔だから』かぁ…
「だったらさ…私にその邪魔で大きなおっぱい頂戴…」
「いやそれは無理やってかなんで今にも飛び掛かろうとしとるん?」
「えー何の事かなーそれよりそのおっぱい私に譲ってよー」
大きな胸が邪魔なら…私が貰ってもいいよね?
だったらもいであげようと私はゆっくりと笑顔でカリンに近付き…
「言葉に抑揚が無いのが怖いわ!スズ!!」
「あいよ!」
飛び掛かる寸前にカリンの呼び掛けでスズが後ろから私を抑えつけてきた。
後ろから私のもこもこホールドみたいにがっしりと…その誇張されたスズの胸が私の背に存在を誇示しながら…
「ちょっとスズ…何するの?スズが私におっぱいくれるの?そっかスズのほうがカリンよりも大きいもんね…」
「あ、いや、サマリ…温泉内でやろうとしている事をやるのは非常にマズイからやめて下さい…」
「え?何の事かな?私はただカリンのおっぱい…ついでにスズのも一緒にもぎ取ろうとしてるだけだよ?」
「「えっなにそれこわい」」
怖いと言われても…そんな大きな胸を付けているほうがいけないんだよ…
どちらにしてもスズの力に逆らえるほどの力は無いからここは引き下がるか…
それに…もし事故で喘ぎ声とか出たらマズイしね…ここの温泉でエッチな事したらもの凄いペナルティらしいし。
「まあいいや…また後でね?」
「後でって……まあ落ち着こう、な?深呼吸しよ?」
「すぅ〜…はぁ〜……あ、そういえばアメリちゃんは?」
「え?あ、そういえばいつの間にかいないね…」
深呼吸してちょっと落ち着いて周りを見てみると、いつの間にかアメリちゃんが居なくなっていた。
…まさか溺れてないよね?
「アメリちゃんならお前らがアホな事してる間にもう上がったよ」
「あ、ユウロ…なんだタオルで隠してるのか」
「当たり前だアホ!」
溺れてないか調べようとしたところで頭上からユウロの声がした。
振り返ってみると、腰周りをタオルで隠したユウロが温泉から出て立っていた。
どうやらアメリちゃんは身体が十分に温まったのか先に出ていたようだ。
「んで俺ももう上がるつもりだけどお前らどうするんだ?」
「あ、じゃあ私も上がるよ。そろそろ朝ご飯の時間になるだろうしね」
「アタイも上がるよ。ちょっと逆上せそうだし」
そしてユウロも出るらしいので、私も一緒に出ることにした。
朝ご飯の時間もあるし、この毛皮を乾かすのにもちょっと時間が掛かるのでちょうどいいだろう。
スズもちょっと逆上せているらしく、一緒に上がると言ったが…
「あ、ウチもうちょっと入っとるわ」
どうやらカリンはまだ温泉に入っていたいらしい。
結構入っているのだが、そんなに温泉が好きなのだろうか……それとも……
「そう…そんなに自分のおっぱいを死守したいの?」
「そういう事やなくて…てかまだ言うか……」
「まあカリンはそういうと思ったよ。いっつもやけに風呂の時間長いし、まだ入るんだろ?」
「そういう事や」
まあ…温泉が好きなんだろう。
そういえばいつもカリンはやたらと入浴時間が長かったな…ジパング人だからだろうか?
「それじゃあ先に出てるけど…朝ご飯は7時半だからそれまでには出たほうが良いからね」
「わかっとる!もうちょっと一人で温泉を堪能したら出るって!」
そう言うカリンを一人残して、私達は温泉から出て脱衣場に向かった。
そこにはユウロが言ったとおりにちゃんとアメリちゃんが居たが、何故か私の事を恐る恐る見ていた。
=======[カリン視点]=======
カポーン……
「……もうええかな?」
サマリ達が脱衣場に行ったのを確認して、ウチは一旦温泉から上がり、術を解く事にした。
「……ふぅ〜…やっぱ温泉とかで息抜き挟まんと辛いわ〜…」
術を解いた事によって出てきた部分を洗おうと、石鹸を泡立てる。
ここの石鹸柔らかくてええわ…毛が痛まんで済むしな…
「はぁ…しっかしサマリも胸の事になると怖いわ〜…スズは毎日大変やなぁ…」
さっきウチの胸の事触れられたとき、もしそのまま揉まれなんかしてたら絶対術なんか解除されとったな…
ほんまこの温泉が淫らな行為の全面禁止を出しとって助かったわ…
それ破ったら宿主のゆきおんなさんの手によってカップルならタダ働きの重労働、男なら妖怪の巣窟に放り込まれ、女及び魔物なら氷漬けの刑やもんな…絶対破りたくないわ…
「んー…ウチの術もまだまだかなぁ…アメリちゃんみたいなリリムや同族には簡単にバレるもんな…」
結構上手くなっとると思うんやけどな…やっぱ魔力が高い魔物にはかなわんもんやな…
これで大陸の反魔物領なんかで商売とか出来るんかな…
「ま、でも今んところアメリちゃん以外にはバレとらへんし、もうちょっと頑張れば案外上手くいくかな…」
ま、ウチの夢…オカンみたいな立派な商人になるためやし、頑張るか…
さて、身体も洗い終わったし今度はこのまま温泉入るか…
チャポン……
「ふぅ〜…いやぁ…毛の一本一本まで染み渡るわ〜」
やっぱ温泉って気持ちいいなぁ…
そう思いながらゆったりと浸かっとったら…
ガラガラガラ……
「!?」
突然誰かが温泉に入ってきた…
ヤバい…完全に油断しとったから…耳も尻尾も出したままや…
せめて知らない人なら…そんな淡い期待を抱きながら恐る恐る振り向いたら……
「あ、珍しい…お客様居たのですか」
「……誰?従業員か?」
「はい…この宿で働かせてもらっている『ぬれおなご』の菫(スミレ)と言います」
そこにはここの宿の従業員の着物を着た…いやちゃうな…着物に擬態させている菫と名乗るぬれおなごがおった。
ほんま知り合いやなくてよかった…
「あれ?お客様は人間じゃありませんでしたっけ?」
「あ…ちゃうちゃう、ウチは訳あって人間に化けとるだけや…こっちが本当のウチの姿やけど…皆には内緒にしといてくれへんかな?」
「そういう事ですか…いいですよ。お客さまの要望にお応えするのが従業員の役目ですから」
「おおきにな菫さん…ところで、清掃かなんかの時間なんか?」
一応黙っといてくれるって約束してくれたし、いきなり菫さんが温泉にやってきた理由を尋ねてみた。
たしか清掃時間は朝10時〜11時やったはずなんやけど…どうしたんやろ?
「あ、いえ…昨日の清掃時に忘れ物をしていたのを今思い出したものでそれを取りに来たのですよ」
「ふーん…またなんで今なん?清掃しとる時でええんちゃうか?」
「それじゃあちょっと…」
どうやら菫さんは忘れ物を取りに来たらしいんやけど…客がおるかもしれん時間に来るほど大切なもんなのか?
「えっと…どこに置いたかな…あ、あったあった…」
ちょっと周りを見渡した後、すぐに見つけたらしく身体を引き摺らせながら奥のほうに行って、何かを手に持って戻ってきた。
手に持っとる物、それは…
「…なんやそれ?櫛か?」
「ええ…旦那様がわたくしにくださった大切なものです…清掃する時落とさないようにって置いといたのは良いのですが、昨日はちょっとしたトラブルがあって清掃後すぐ現場に向かったので置きっぱなしにしてしまって…」
「はぁ…まあ無くなっとらんで良かったな!」
「はい!!」
旦那さんから貰ったもんならしゃあないわな…見つかって満面の笑みを浮かべとるし良かったわ。
「それではわたくしはこれで…ゆっくりと温泉を満喫してくださいね!」
「おう!まあもうちょっとで朝ご飯の時間やで上がらせてもらうけどな」
まああと5分は入れるやろうから、全身ゆったりと伸ばして入っとろ…
そう思って菫さんを見送った後、ウチは足も腕も尻尾もと全身の力を抜いてぼーっと温泉に浸かっていた…
…………
………
……
…
「ふぅ〜…さっぱりした〜!!」
「あ、カリン。ちょうどいい時間に戻ってきたね。今朝ご飯運ばれてきたところだよ」
「お、ほんまか!じゃあ早速ご飯にしよか!」
温泉から上がり、全身隈なくタオルで水気を切ってからまた人化の術を使って人間に化けた後、泊まっとる部屋まで足取り軽く向かった。
そんで部屋に入ったら、すぐさまサマリにちょうど朝ご飯が来たと言われた。
机の上を見てみると…味噌汁を始め美味そうなもんがいっぱい並んどった。
ってかサマリが普通に戻っとってよかったわ…揉まれたらウチいろいろ我慢出来なくなる気がするしな…
「アメリおなかすいたー!」
「ん?ウチを待っとったんか?」
「いや本当に今来たところさ。アメリは温泉出てからずっとお腹空いたって言ってる」
「だっておなかすいたんだもん!」
「せやな。もう起きてから結構経つし、ウチもお腹減っとるしな」
皆集まったようやし…ってかウチが最後やったけど…早速食べようと思う。
「そんじゃ…」
『いただきます!!』
まあいっぱい豪勢なもんが並んどるけど、やっぱウチは最初は味噌汁やな……
…うん、めっちゃウマい。
他のもんも食べながら、今日はどうするかを皆と喋りながら、楽しい朝ご飯の時間は進んでいった…
=======[サマリ視点]=======
「ありがとうございました!またの御越しをお待ちしております!!」
「うん!おんせんきもちよかったよゆきおんなのお姉ちゃん!」
「本当ですか!ありがとうございます!!」
「本当だよ!また近くにくることあったらぜったいおとまりするね!!」
現在10時。
私達はホテルから出て、ノーベさんというアメリちゃんのお姉さんが居る『樫紅(かしく)』に向かおうとしていた。
「いやあ〜、昨日と違って清々しいぜ!!」
「気持ち悪さも無く快適な旅や〜!!」
「あんたら…まあ元気になってなによりだよ…」
昨日の二日酔いが嘘だったかのように元気になったので、どんどん進んで行こうと思う。
…あ、でも食糧は買っておいたほうがいいな……
それほど少ないわけじゃないけど、ここから樫紅まではちょっと掛かるらしいので、何日位掛かるかによっては買っておいたほうがいいだろう。
「ねえカリン、樫紅までちょっと掛かるって言ってたけど大体どれ位?」
「ん〜せやなぁ…いつものペースで、何も無ければ1週間程で到着すると思うで?」
「1週間か〜…それちょっとって言わないよ…食糧買わないと…」
カリンに詳しく聞いたところ、どうやら一週間も掛かるらしい。
それをちょっとって言うとは…実はカリンもベリリさんと同じクノイチなのか?
まあ、食糧を買いに行くか……ってどこに向かえばいいんだろうか?
あ、そうだ…
「あ、あのー…ちょっといいですか?」
「はい、どうしました?忘れ物ですか?」
「あ、いえ、そうではなくて…この街で食糧を買うならどこに行けばいいのか教えてほしいのですが…」
この街の事はこの街の人に聞けばいい…という事で、まだ私達を見送っていたゆきおんなさんに、食糧を買うにはどこに行けばいいか聞いてみた。
「あーそれでしたら市場のほうに行かれると良いかと」
「市場?どこにありますか?」
「えっとですね…この宿から真っ直ぐ東に進んで、大きな木が一本生えている広場に出たら北方面に向かい、ずっと歩いて行くといろんな物を売っている市場に辿り着けるはずですよ」
「ふんふん…わかりました!行ってみます!ありがとうございました!!」
「いえいえ…」
行き方も聞いた事だし、早速行ってみる事にしよう!
…………
………
……
…
「へいらっしゃーい!活きの良いもんそろってるよー!!」
「こっちは新鮮な野菜を沢山揃えてるよー!!」
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃーい!!」
現在11時。
ゆきおんなさんに教えてもらった市場に辿り着き、いろいろと食糧を買っている。
活気がよく、つい買う気が無かったものまで買ってしまう。
「へいそこの旅人さん!うちの店見てってよ!」
「ん?あ、河童のお姉ちゃんだ!」
「おっす元気なお譲ちゃん!じっくりとうちの店を見てってくれ!」
と、今度は緑色の肌に黄色い服…服か?まあ服みたいなものを着て、さらに背中に甲羅を背負い手足の指には水掻きが付いていて、頭には円形の皿みたいなものが乗っている女性に呼び止められた。
アメリちゃん曰く『河童』という魔物らしい…サハギンのジパング版ってところかな?
「ほぉ…めっちゃ新鮮なきゅうりやな…しかもこの値段とは結構お買い得やな…」
「お!お客さんお目がいいねえ!そのきゅうりはうちが厳選したもんだからね。いまなら大安売りだから買ってよ!」
品揃えを見たところ、どうやら野菜を売っているらしい…その商品の大半はきゅうりであるがちょっとだけ他の野菜も売っているのできっとそうだろう。
「きゅうりか…長くて太いのが多いね」
「そりゃあもちろん!野菜サラダからきゅうりの漬物、はたまた丸齧りしても問題なし!水分多めでそのまま食べても美味いよ!」
「へぇ…じゃあ何本か買おうかな…」
「おーありがとう!!」
「いっぱいいろんな食べ方があるんだね!」
たしかに新鮮で美味しそうなきゅうりだし、まだ野菜は買って無いから他の物も含めて沢山買おうかな…
「そうそう!料理に添えるのもよし!口でそのまま一本齧り付くのもよし!男性器に見立てて舌で舐めまわしてもよし!」
「……へ?」
「自分の乳首に押し付けてもよし!下の口に擦りつけて感じるのもよし!なんなら中に入れてぐちゃぐちゃに掻きまわして…って待ってお客さん!後半は冗談だから〜!!」
買おうとしたのだが、なんか話が途中からおかしな方向に行ったので黙って立ち去ろうと……したけど、それに気付いて話を戻したので買ってあげることにした。
もう…食べ物でそういう事するのはちょっと無いと思う…
まあ本物見た事無いけど太さも長さもそれっぽいし、小さな突起もあるから気持ちは良いかもしれないけどさ…でも流石に誰も実行はしないだろ…
「いやぁ…たまに同族の河童とかのお客さんはそういう目的で買っていくもんもおるもんでつい…」
「え……!?」
やる人居るんだ…驚きである。
「それじゃあこれで!ありがとな〜!!」
「いえいえ…ちゃんと食用で使いますから!」
「お、おう…美味しく食べてなー!!」
とまあ大量のきゅうりと、一緒に置いてあったナスやトマト、玉ねぎなんかも買って、次のお店に周った…
…………
………
……
…
「いやぁ…さっきは沢山買ったねー」
「そうだな…」
現在12時。
食糧も十分買ったので、私達は伍宮を出発して樫紅を目指して歩いている。
今度は山道では無く、平野なのでそんなに疲れずに歩けるだろう。
「ノーベお姉ちゃんが居るかしくってどんな街なんだろう?」
「せやなぁ…隣町言うてもあんま行った事無いからな…とりあえず大きな街で人間ばっかだって事しか知らんな」
「へぇ…じゃあ魔物は少ないの?」
「まあ全くおらんっちゅうわけやないけどな…樫紅にはあんま有名ではないけど退魔師の家系があるもんやで妖怪にはちっと住みづらいからな…」
「え?そうなのか?じゃあアタイ大丈夫かなぁ…今までの旅からしてウシオニって退魔師とかに狙われるイメージがあるんだけど…」
「まあそれは何年も前の話やと思うけどな…アメリちゃんのお姉さん、つまりリリムがおるっちゅう事は街の雰囲気も変わっとる可能性が高いからなぁ…」
「ん〜…そうだといいよね…」
カリン曰く樫紅には退魔師がいるらしい…が、ノーベさんがいる上にメーデさんとサツキさんが行くと良いと言ったのだからたぶん問題は無いのだろう。
…もしかしたらアメリちゃんが言っていたレスカティエみたいな事になっている可能性もあるしね。
いやぁ…アメリちゃんやメーデさんから聞いた話だと凄い事になってたからな〜…そんな事になってたらそれはそれで面白そうだけどユウロが大丈夫かどうか…
「ま、行ってみないとわからないからな…まあ楽しみにしながら行こうぜ!」
「そうだね!あーホントお姉ちゃんはどんな人なんだろー。それでどんな街なんだろーなー」
「せやな!ウチも幼い頃おかんとおとんに連れてってもらっただけやで楽しみやわ!!」
「あ、そうなんだ。隣町なのにそんなに行かなかったんだね」
「まあ妖怪の友達もおったし、あんまいい所じゃないっちゅう印象があったからな…」
「そうか…本当に友達の事だけか?」
「…何が言いたいんユウロ?」
「べっつにー、なんでも無いよ」
「ほーん…ならええけど…」
色鮮やかな花が咲き…青々とした草が生え揃って…蝶や小鳥(非魔物)が飛んでいるような穏やかな道を、私達はお喋りしながら楽しく旅をしていた。
「ほんとだね…」
「あ〜…まだごっつ頭痛い…」
現在16時。
私達は山を下りて、今『伍宮(いつみや)』に到着した。
昨日の夜の時点で小さな山の頂上に辿り着いているのに、下りるだけでこんなに時間が経っている理由、それは…
「サマリお姉ちゃんにユウロお兄ちゃん、それにカリンお姉ちゃんも大丈夫?」
「うん…なんとか大丈夫…」
「俺もまあ一応は…かなり気持ち悪いけどな…」
「ウチ辛い…吐いて良いって言うなら今すぐ吐ける気がするわ…」
私とユウロ、それにカリンは昨日のアカオニさんやアオオニさん、それにオーガといったオーガ属の魔物達の宴会で飲んだお酒が原因で二日酔いになってしまったからだ。
「てかサマリとユウロはそんな飲んでへんやろ?なんで二日酔いになっとるん?」
「しるかよ…叩き起こされた後の一杯が効いてるんじゃねえの?」
「一杯で良いって言ってたのに終わり間近で更に飲まされたからね〜…」
たしかに私やユウロはカリンほど飲んではいないが、元々お酒は弱いのに結構飲まされたからな…
「まったく…皆情けないなぁ…」
「…なんでスズは平気なん?」
しかし、カリン以上にガバガバと飲んでいたスズは全くもって平気である。
やはり種族名にオニと付くだけあってお酒に強いのか、元々お酒に強かったのかはわからないが、昨日あんだけ飲んだのに二日酔いになっていないどころか朝から元気に動き回っている。
「まあスズが平気だったからいろいろ助かったけどね…」
「スズお姉ちゃんのごはんもおいしかったよ!」
「いやぁ…サマリの指示に従っただけだし…でもありがとうアメリ!」
だから今日のご飯やその他いろんなことは全部スズにやってもらった。
まあ一応気持ち悪さを頑張って堪えながら私も料理を手伝ったから特に問題は無かった…というか、私の指示を完璧にこなしていたしスズは結構器用だと思った。
で、昼過ぎになってようやく動ける位には回復したので、ゆっくりと無理無いペースで山を下り、ようやく伍宮に到着したという事だ。
「じゃあ早速だけど宿探そうぜ…」
「えっ?もうやど行くの?」
「アメリちゃん…ウチもうこのまま歩くの辛い…」
「あ、そうだよね…じゃあ宿さがそうか!」
という事で、私達3人はトボトボとスズとアメリちゃんの後ろに付いて行くように宿を探した。
…………
………
……
…
「こちらお夕食の鴨鍋です」
「ありがと!わあ〜おいしそ〜!!」
「たしかに美味しそうだね…お〜いご飯だよ〜」
現在19時。
私達は1泊2食付きの宿を探しだし泊まっていた。
まあ…もちろん私とユウロとカリンは……
「わかった…そっち行くよ…」
「あー…俺無理…先食べてて…」
「ウチも…後で食べるから置いといて〜…」
ご覧の有様である。
宿に着いてからずっと3人仲良くお布団で寝ていたのだが…まだまだ気分はスッキリしない。
まあまだ動けるしご飯食べる気力がある分私は残り2人よりは回復していると見て良いだろう。
「まったく…本当に情けないなぁ…まあ一応2人分は取っておくから後で食べなよ!」
「うーい…」
「おおきにー…」
という事で、スズとユウロはそのまま寝る事に、私はスズとアメリちゃんと一緒に夜ご飯の鴨鍋を食べる事にした。
出汁はもう鍋に入って温められているので、鴨肉とお野菜を豪快に入れて、蓋をしてちょっと待つか…
「明日はサマリお姉ちゃんもいっしょにおんせん入ろうね!」
「そうそう、ここの温泉すっごく広かったよ!絶対入っておくべきだって!」
「うん…明日の朝、気分が良くなってたら入ろっか…」
「うん!カリンお姉ちゃんもユウロお兄ちゃんもいっしょにね!」
「…え?ユウロも?」
「ここの温泉は混浴だったからね…まあ男女間での行為をちょっとでもしたら妖怪だろうが人間同士だろうがキツいペナルティがあるらしいけど」
「へぇ…まあ私達は大丈夫だろうけど…ユウロが他の人にやられないように気をつける必要が無いってのは良いね…」
流石に二日酔い状態でお風呂に入りたくなかったので私達3人はパスしたが、スズとアメリちゃんはこの宿にある温泉に入っていた。
結構有名なものらしいので是非入りたいが…明日の朝の体調次第だな…
「さてと…そろそろいいかな?」
「そうだね…お肉も火が通ったみたいだし、お野菜もちょうど味が染みて良さそうだしね…」
「じゃあ、手を合わせて…」
「「「いただきます!」」」
ちょっとお喋りをしているうちに鍋が煮え立ってきたので、中の様子を見ると美味しそうな匂いが漂ってきた。
それに食材もいい具合になっていたので、早速食べ始めることにした。
「はむはむ……お肉おいしー!」
「これ鴨肉だっけ?めちゃくちゃ美味しいな〜!」
「スズ…ちゃんと野菜も食べるのよ?とろけるし味も染みてて美味しいんだから!」
「わかってるよ…ちょっと苦手だけどいつも食べてるじゃん」
「もぐもぐ…白菜もおいしー!!」
スズがお肉ばかり食べている(まあ種族的にも仕方がないかもしれないが)のを注意しながらも、私達は鴨鍋を堪能した。
鍋の…というか煮てある白菜と葱ってかなり美味しいよね…もちろんお肉もね。
ちなみに、私達3人が食べ終わってゆっくりと昨日のあの宴会の事を話していたらユウロとカリンがようやくご飯を食べる気になったようで起きてきた。
少し寝て元気になったのか、お肉も野菜もしっかり2人前取っておいたが全部二人で平らげた。
食べた後少しだけまた皆でお話をして、ちょっとだけ宿をうろついた後私達は皆そろって寝た。
もちろん、私の胸には最高の抱き心地を持つアメリちゃんが抱かれていた。
ホント、アメリちゃんの寝顔は可愛いなぁ…絵として永久保存しておきたいぐらいだ……
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カポーン……
「ふぃ〜…気持ちいいね〜…」
「うん〜…アメリきもちよすぎてとろけそ〜…」
「んなアホな〜…でもわかるわ〜…」
現在7時。
特にこれと言った理由は無いけれど、今日は皆ちょっと早起きした。
私もユウロもカリンも二日酔いが醒めていたので、昨日言っていた温泉に皆で入る事にしたのだ。
「ところでユウロはどこ行った?」
「ユウロならあっちの岩陰にいるよ〜」
「ユウロお兄ちゃんもこっちにきていっしょに入ろうよ〜!」
「いや無茶言うなよ!!」
もちろん皆というのはユウロも含まれている。
なぜならば、この温泉は混浴だからである。
流石、宿を経営しているのが魔物の『ゆきおんな』さんなだけある…
あれ?今思ったけどゆきおんなさんが温泉って大丈夫なのかなぁ…?
まあ経営出来ているんだし大丈夫なんだろう…
「なんや?別にアメリちゃん以外はタオルでちゃんと隠してるから心配する事無いで?」
「ちゃんと考慮はしてあるんだから心配するなっての」
「そうそう…アメリちゃんに欲情するって言うなら話は別だけどね」
「え?ユウロお兄ちゃんアメリとラブラブしたいの?」
「話がぶっ飛び過ぎだよアメリちゃん!?」
まあ一緒に温泉に入ってはいるけれど、ユウロ一人だけ私達から見えない場所に入っている。
ちゃんとタオルとかで隠すべきところは隠してあるのだから問題無いと思うんだけどな…
ちなみに、時間が時間だからか今は私達以外のお客さんは誰も居ない。まるで貸し切り状態だ。
「で、なんでこっちに来ないの?」
「…目のやりどころに困るんだよ…」
「は?ちゃんと隠しとるゆうとるやん」
「それでも裸だって意識しちまうんだよ!!」
「ああ…そういうことか…」
どうやらユウロは私達が裸なのがいけないらしい。
まあ私達魔物は男を誘うように魅惑的な身体をしているらしい(自覚は無い)から無理もないのかな?
しかもカリンも人間にしてはかなり綺麗な身体してるしね。
「それにしてもユウロお兄ちゃんとカリンお姉ちゃんがいっしょにおんせんに入ってるってなんかふしぎだね!」
「ああ…まあ普段はウチも別に入っとるもんなぁ」
そういえば、ユウロやカリンは普段一緒にお風呂入ってないからなんか新鮮だなぁ…
…………あれ?
「カリン…そのタオルの下の膨らみは何?」
「え……あ…は、ははは…」
普段一緒に入らないカリンの身体をぼーっと見ていたのだが…よく見ると普段のカリンには無いものがカリンの胸の辺りに付いていた。
「おっかしいなぁ…カリンって私よりも無さそうに見えたんだけど…」
「あ、ホントだ!カリンお姉ちゃんのおっぱい大きいね!」
「え!?マジで!?いや見る気は無いけど少し気になるんだけど」
「そうだね…リンゴ並にはあるよ…いつの間にそんなに膨らんだの?」
そう…普段は私と同じかそれ以下位しかないはずのカリンの胸が、何故か今はリンゴと同じ位の大きさになっているのだ。
奇妙すぎるのだが…いったい何が起きているのだというのだろうか?
「ねえカリン…なんでかな?」
「い、いやあ…ウチ普段はサラシで抑えてるからなぁ…」
ほぉ…普段は抑えているときたか…
つまり…普段は胸が無いふりをしていたという事か……
なんか裏切られた気分だなぁ……
「ん?何でだ花梨?」
「い、いや…ウチみたいな商人は機動力重視せなあかんでな…そのままにしとくと邪魔で仕方ないんや」
「へぇ〜……邪魔なんだ〜……」
「っ!?な、なんやサマリ、そ、その眼は…」
しかもその理由が『大きな胸が邪魔だから』かぁ…
「だったらさ…私にその邪魔で大きなおっぱい頂戴…」
「いやそれは無理やってかなんで今にも飛び掛かろうとしとるん?」
「えー何の事かなーそれよりそのおっぱい私に譲ってよー」
大きな胸が邪魔なら…私が貰ってもいいよね?
だったらもいであげようと私はゆっくりと笑顔でカリンに近付き…
「言葉に抑揚が無いのが怖いわ!スズ!!」
「あいよ!」
飛び掛かる寸前にカリンの呼び掛けでスズが後ろから私を抑えつけてきた。
後ろから私のもこもこホールドみたいにがっしりと…その誇張されたスズの胸が私の背に存在を誇示しながら…
「ちょっとスズ…何するの?スズが私におっぱいくれるの?そっかスズのほうがカリンよりも大きいもんね…」
「あ、いや、サマリ…温泉内でやろうとしている事をやるのは非常にマズイからやめて下さい…」
「え?何の事かな?私はただカリンのおっぱい…ついでにスズのも一緒にもぎ取ろうとしてるだけだよ?」
「「えっなにそれこわい」」
怖いと言われても…そんな大きな胸を付けているほうがいけないんだよ…
どちらにしてもスズの力に逆らえるほどの力は無いからここは引き下がるか…
それに…もし事故で喘ぎ声とか出たらマズイしね…ここの温泉でエッチな事したらもの凄いペナルティらしいし。
「まあいいや…また後でね?」
「後でって……まあ落ち着こう、な?深呼吸しよ?」
「すぅ〜…はぁ〜……あ、そういえばアメリちゃんは?」
「え?あ、そういえばいつの間にかいないね…」
深呼吸してちょっと落ち着いて周りを見てみると、いつの間にかアメリちゃんが居なくなっていた。
…まさか溺れてないよね?
「アメリちゃんならお前らがアホな事してる間にもう上がったよ」
「あ、ユウロ…なんだタオルで隠してるのか」
「当たり前だアホ!」
溺れてないか調べようとしたところで頭上からユウロの声がした。
振り返ってみると、腰周りをタオルで隠したユウロが温泉から出て立っていた。
どうやらアメリちゃんは身体が十分に温まったのか先に出ていたようだ。
「んで俺ももう上がるつもりだけどお前らどうするんだ?」
「あ、じゃあ私も上がるよ。そろそろ朝ご飯の時間になるだろうしね」
「アタイも上がるよ。ちょっと逆上せそうだし」
そしてユウロも出るらしいので、私も一緒に出ることにした。
朝ご飯の時間もあるし、この毛皮を乾かすのにもちょっと時間が掛かるのでちょうどいいだろう。
スズもちょっと逆上せているらしく、一緒に上がると言ったが…
「あ、ウチもうちょっと入っとるわ」
どうやらカリンはまだ温泉に入っていたいらしい。
結構入っているのだが、そんなに温泉が好きなのだろうか……それとも……
「そう…そんなに自分のおっぱいを死守したいの?」
「そういう事やなくて…てかまだ言うか……」
「まあカリンはそういうと思ったよ。いっつもやけに風呂の時間長いし、まだ入るんだろ?」
「そういう事や」
まあ…温泉が好きなんだろう。
そういえばいつもカリンはやたらと入浴時間が長かったな…ジパング人だからだろうか?
「それじゃあ先に出てるけど…朝ご飯は7時半だからそれまでには出たほうが良いからね」
「わかっとる!もうちょっと一人で温泉を堪能したら出るって!」
そう言うカリンを一人残して、私達は温泉から出て脱衣場に向かった。
そこにはユウロが言ったとおりにちゃんとアメリちゃんが居たが、何故か私の事を恐る恐る見ていた。
=======[カリン視点]=======
カポーン……
「……もうええかな?」
サマリ達が脱衣場に行ったのを確認して、ウチは一旦温泉から上がり、術を解く事にした。
「……ふぅ〜…やっぱ温泉とかで息抜き挟まんと辛いわ〜…」
術を解いた事によって出てきた部分を洗おうと、石鹸を泡立てる。
ここの石鹸柔らかくてええわ…毛が痛まんで済むしな…
「はぁ…しっかしサマリも胸の事になると怖いわ〜…スズは毎日大変やなぁ…」
さっきウチの胸の事触れられたとき、もしそのまま揉まれなんかしてたら絶対術なんか解除されとったな…
ほんまこの温泉が淫らな行為の全面禁止を出しとって助かったわ…
それ破ったら宿主のゆきおんなさんの手によってカップルならタダ働きの重労働、男なら妖怪の巣窟に放り込まれ、女及び魔物なら氷漬けの刑やもんな…絶対破りたくないわ…
「んー…ウチの術もまだまだかなぁ…アメリちゃんみたいなリリムや同族には簡単にバレるもんな…」
結構上手くなっとると思うんやけどな…やっぱ魔力が高い魔物にはかなわんもんやな…
これで大陸の反魔物領なんかで商売とか出来るんかな…
「ま、でも今んところアメリちゃん以外にはバレとらへんし、もうちょっと頑張れば案外上手くいくかな…」
ま、ウチの夢…オカンみたいな立派な商人になるためやし、頑張るか…
さて、身体も洗い終わったし今度はこのまま温泉入るか…
チャポン……
「ふぅ〜…いやぁ…毛の一本一本まで染み渡るわ〜」
やっぱ温泉って気持ちいいなぁ…
そう思いながらゆったりと浸かっとったら…
ガラガラガラ……
「!?」
突然誰かが温泉に入ってきた…
ヤバい…完全に油断しとったから…耳も尻尾も出したままや…
せめて知らない人なら…そんな淡い期待を抱きながら恐る恐る振り向いたら……
「あ、珍しい…お客様居たのですか」
「……誰?従業員か?」
「はい…この宿で働かせてもらっている『ぬれおなご』の菫(スミレ)と言います」
そこにはここの宿の従業員の着物を着た…いやちゃうな…着物に擬態させている菫と名乗るぬれおなごがおった。
ほんま知り合いやなくてよかった…
「あれ?お客様は人間じゃありませんでしたっけ?」
「あ…ちゃうちゃう、ウチは訳あって人間に化けとるだけや…こっちが本当のウチの姿やけど…皆には内緒にしといてくれへんかな?」
「そういう事ですか…いいですよ。お客さまの要望にお応えするのが従業員の役目ですから」
「おおきにな菫さん…ところで、清掃かなんかの時間なんか?」
一応黙っといてくれるって約束してくれたし、いきなり菫さんが温泉にやってきた理由を尋ねてみた。
たしか清掃時間は朝10時〜11時やったはずなんやけど…どうしたんやろ?
「あ、いえ…昨日の清掃時に忘れ物をしていたのを今思い出したものでそれを取りに来たのですよ」
「ふーん…またなんで今なん?清掃しとる時でええんちゃうか?」
「それじゃあちょっと…」
どうやら菫さんは忘れ物を取りに来たらしいんやけど…客がおるかもしれん時間に来るほど大切なもんなのか?
「えっと…どこに置いたかな…あ、あったあった…」
ちょっと周りを見渡した後、すぐに見つけたらしく身体を引き摺らせながら奥のほうに行って、何かを手に持って戻ってきた。
手に持っとる物、それは…
「…なんやそれ?櫛か?」
「ええ…旦那様がわたくしにくださった大切なものです…清掃する時落とさないようにって置いといたのは良いのですが、昨日はちょっとしたトラブルがあって清掃後すぐ現場に向かったので置きっぱなしにしてしまって…」
「はぁ…まあ無くなっとらんで良かったな!」
「はい!!」
旦那さんから貰ったもんならしゃあないわな…見つかって満面の笑みを浮かべとるし良かったわ。
「それではわたくしはこれで…ゆっくりと温泉を満喫してくださいね!」
「おう!まあもうちょっとで朝ご飯の時間やで上がらせてもらうけどな」
まああと5分は入れるやろうから、全身ゆったりと伸ばして入っとろ…
そう思って菫さんを見送った後、ウチは足も腕も尻尾もと全身の力を抜いてぼーっと温泉に浸かっていた…
…………
………
……
…
「ふぅ〜…さっぱりした〜!!」
「あ、カリン。ちょうどいい時間に戻ってきたね。今朝ご飯運ばれてきたところだよ」
「お、ほんまか!じゃあ早速ご飯にしよか!」
温泉から上がり、全身隈なくタオルで水気を切ってからまた人化の術を使って人間に化けた後、泊まっとる部屋まで足取り軽く向かった。
そんで部屋に入ったら、すぐさまサマリにちょうど朝ご飯が来たと言われた。
机の上を見てみると…味噌汁を始め美味そうなもんがいっぱい並んどった。
ってかサマリが普通に戻っとってよかったわ…揉まれたらウチいろいろ我慢出来なくなる気がするしな…
「アメリおなかすいたー!」
「ん?ウチを待っとったんか?」
「いや本当に今来たところさ。アメリは温泉出てからずっとお腹空いたって言ってる」
「だっておなかすいたんだもん!」
「せやな。もう起きてから結構経つし、ウチもお腹減っとるしな」
皆集まったようやし…ってかウチが最後やったけど…早速食べようと思う。
「そんじゃ…」
『いただきます!!』
まあいっぱい豪勢なもんが並んどるけど、やっぱウチは最初は味噌汁やな……
…うん、めっちゃウマい。
他のもんも食べながら、今日はどうするかを皆と喋りながら、楽しい朝ご飯の時間は進んでいった…
=======[サマリ視点]=======
「ありがとうございました!またの御越しをお待ちしております!!」
「うん!おんせんきもちよかったよゆきおんなのお姉ちゃん!」
「本当ですか!ありがとうございます!!」
「本当だよ!また近くにくることあったらぜったいおとまりするね!!」
現在10時。
私達はホテルから出て、ノーベさんというアメリちゃんのお姉さんが居る『樫紅(かしく)』に向かおうとしていた。
「いやあ〜、昨日と違って清々しいぜ!!」
「気持ち悪さも無く快適な旅や〜!!」
「あんたら…まあ元気になってなによりだよ…」
昨日の二日酔いが嘘だったかのように元気になったので、どんどん進んで行こうと思う。
…あ、でも食糧は買っておいたほうがいいな……
それほど少ないわけじゃないけど、ここから樫紅まではちょっと掛かるらしいので、何日位掛かるかによっては買っておいたほうがいいだろう。
「ねえカリン、樫紅までちょっと掛かるって言ってたけど大体どれ位?」
「ん〜せやなぁ…いつものペースで、何も無ければ1週間程で到着すると思うで?」
「1週間か〜…それちょっとって言わないよ…食糧買わないと…」
カリンに詳しく聞いたところ、どうやら一週間も掛かるらしい。
それをちょっとって言うとは…実はカリンもベリリさんと同じクノイチなのか?
まあ、食糧を買いに行くか……ってどこに向かえばいいんだろうか?
あ、そうだ…
「あ、あのー…ちょっといいですか?」
「はい、どうしました?忘れ物ですか?」
「あ、いえ、そうではなくて…この街で食糧を買うならどこに行けばいいのか教えてほしいのですが…」
この街の事はこの街の人に聞けばいい…という事で、まだ私達を見送っていたゆきおんなさんに、食糧を買うにはどこに行けばいいか聞いてみた。
「あーそれでしたら市場のほうに行かれると良いかと」
「市場?どこにありますか?」
「えっとですね…この宿から真っ直ぐ東に進んで、大きな木が一本生えている広場に出たら北方面に向かい、ずっと歩いて行くといろんな物を売っている市場に辿り着けるはずですよ」
「ふんふん…わかりました!行ってみます!ありがとうございました!!」
「いえいえ…」
行き方も聞いた事だし、早速行ってみる事にしよう!
…………
………
……
…
「へいらっしゃーい!活きの良いもんそろってるよー!!」
「こっちは新鮮な野菜を沢山揃えてるよー!!」
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃーい!!」
現在11時。
ゆきおんなさんに教えてもらった市場に辿り着き、いろいろと食糧を買っている。
活気がよく、つい買う気が無かったものまで買ってしまう。
「へいそこの旅人さん!うちの店見てってよ!」
「ん?あ、河童のお姉ちゃんだ!」
「おっす元気なお譲ちゃん!じっくりとうちの店を見てってくれ!」
と、今度は緑色の肌に黄色い服…服か?まあ服みたいなものを着て、さらに背中に甲羅を背負い手足の指には水掻きが付いていて、頭には円形の皿みたいなものが乗っている女性に呼び止められた。
アメリちゃん曰く『河童』という魔物らしい…サハギンのジパング版ってところかな?
「ほぉ…めっちゃ新鮮なきゅうりやな…しかもこの値段とは結構お買い得やな…」
「お!お客さんお目がいいねえ!そのきゅうりはうちが厳選したもんだからね。いまなら大安売りだから買ってよ!」
品揃えを見たところ、どうやら野菜を売っているらしい…その商品の大半はきゅうりであるがちょっとだけ他の野菜も売っているのできっとそうだろう。
「きゅうりか…長くて太いのが多いね」
「そりゃあもちろん!野菜サラダからきゅうりの漬物、はたまた丸齧りしても問題なし!水分多めでそのまま食べても美味いよ!」
「へぇ…じゃあ何本か買おうかな…」
「おーありがとう!!」
「いっぱいいろんな食べ方があるんだね!」
たしかに新鮮で美味しそうなきゅうりだし、まだ野菜は買って無いから他の物も含めて沢山買おうかな…
「そうそう!料理に添えるのもよし!口でそのまま一本齧り付くのもよし!男性器に見立てて舌で舐めまわしてもよし!」
「……へ?」
「自分の乳首に押し付けてもよし!下の口に擦りつけて感じるのもよし!なんなら中に入れてぐちゃぐちゃに掻きまわして…って待ってお客さん!後半は冗談だから〜!!」
買おうとしたのだが、なんか話が途中からおかしな方向に行ったので黙って立ち去ろうと……したけど、それに気付いて話を戻したので買ってあげることにした。
もう…食べ物でそういう事するのはちょっと無いと思う…
まあ本物見た事無いけど太さも長さもそれっぽいし、小さな突起もあるから気持ちは良いかもしれないけどさ…でも流石に誰も実行はしないだろ…
「いやぁ…たまに同族の河童とかのお客さんはそういう目的で買っていくもんもおるもんでつい…」
「え……!?」
やる人居るんだ…驚きである。
「それじゃあこれで!ありがとな〜!!」
「いえいえ…ちゃんと食用で使いますから!」
「お、おう…美味しく食べてなー!!」
とまあ大量のきゅうりと、一緒に置いてあったナスやトマト、玉ねぎなんかも買って、次のお店に周った…
…………
………
……
…
「いやぁ…さっきは沢山買ったねー」
「そうだな…」
現在12時。
食糧も十分買ったので、私達は伍宮を出発して樫紅を目指して歩いている。
今度は山道では無く、平野なのでそんなに疲れずに歩けるだろう。
「ノーベお姉ちゃんが居るかしくってどんな街なんだろう?」
「せやなぁ…隣町言うてもあんま行った事無いからな…とりあえず大きな街で人間ばっかだって事しか知らんな」
「へぇ…じゃあ魔物は少ないの?」
「まあ全くおらんっちゅうわけやないけどな…樫紅にはあんま有名ではないけど退魔師の家系があるもんやで妖怪にはちっと住みづらいからな…」
「え?そうなのか?じゃあアタイ大丈夫かなぁ…今までの旅からしてウシオニって退魔師とかに狙われるイメージがあるんだけど…」
「まあそれは何年も前の話やと思うけどな…アメリちゃんのお姉さん、つまりリリムがおるっちゅう事は街の雰囲気も変わっとる可能性が高いからなぁ…」
「ん〜…そうだといいよね…」
カリン曰く樫紅には退魔師がいるらしい…が、ノーベさんがいる上にメーデさんとサツキさんが行くと良いと言ったのだからたぶん問題は無いのだろう。
…もしかしたらアメリちゃんが言っていたレスカティエみたいな事になっている可能性もあるしね。
いやぁ…アメリちゃんやメーデさんから聞いた話だと凄い事になってたからな〜…そんな事になってたらそれはそれで面白そうだけどユウロが大丈夫かどうか…
「ま、行ってみないとわからないからな…まあ楽しみにしながら行こうぜ!」
「そうだね!あーホントお姉ちゃんはどんな人なんだろー。それでどんな街なんだろーなー」
「せやな!ウチも幼い頃おかんとおとんに連れてってもらっただけやで楽しみやわ!!」
「あ、そうなんだ。隣町なのにそんなに行かなかったんだね」
「まあ妖怪の友達もおったし、あんまいい所じゃないっちゅう印象があったからな…」
「そうか…本当に友達の事だけか?」
「…何が言いたいんユウロ?」
「べっつにー、なんでも無いよ」
「ほーん…ならええけど…」
色鮮やかな花が咲き…青々とした草が生え揃って…蝶や小鳥(非魔物)が飛んでいるような穏やかな道を、私達はお喋りしながら楽しく旅をしていた。
12/06/16 16:41更新 / マイクロミー
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