旅５ お兄ちゃんといっしょ！
「…ユウロお兄ちゃん、アレ何？」
「なぁにあれぇ……」
えーっと、とりあえず状況を確認しようか。
親魔物領『テトラスト』に向かっていた俺達は途中で昼飯のお弁当を食べていた。
そして食べ終わったところでいきなり大きな斧が上から降ってきて、当たりこそしなかったもののその斧が落ちてきたときの衝撃でサマリが吹き飛び流れがこれでもかというほど速い川に落ちてしまった。
急いで助けなきゃと思ってサマリを見失わないように追い掛けようとしたところで、女勇者のホルミが立っていた。
どうやら斧はホルミが投げた物で、しかもサマリを魔物だと思って吹き飛ばしたらしい。なんて迷惑な。
しかもサマリが吹き飛んだ事によってもの凄く怒ったアメリちゃんがあれだけ使うのを躊躇っていた攻撃系の魔法でホルミに攻撃を始めてしまうし…ちょっと怖いし…こんなことしている場合じゃないと攻撃するのをやめさせたが。
あやうく手を出してしまうところだった。アメリちゃんが素直な子で、すぐに落ち着いてくれたからよかったよ。
で、サマリを探しに行こうとしたときに大きな音が響いた。
ホルミがやったわけでもなさそうで、とりあえず振り向いてみたら……
川の少し下流のほうに20メートルは超える水柱があったと。
うん、何がなんだかさっぱりだ。
「アメリちゃん何かした？」
「ううん、アメリ何もしてないよ。ホルミさんかな？」
「いや、あの表情を見る限り彼女ではないと思うよ」
「あっ！もしかしてサマリお姉ちゃんかも!!」
「あれ？サマリってあんな事できたっけ？」
「……じゃあなんだろ？」
「なんだろな……ん？」
とりあえず突然発生した水柱をじっと見ていると……
「ねえアメリちゃん、水柱の上のほうになんか見えない？」
「ん？……あっ!!」
高く伸びる水柱の上のほうに何か青いものが見えた。
どうやら何かを抱えている人型の何かのようだ。詳しくは見えない。
それをアメリちゃんに教えたら何か気付いたようだ。
「サマリお姉ちゃんだ!!」
「へっ!?」
どうやらサマリらしい。たぶん抱えられている何かのほうだろう。
じゃあ抱えているのはもしかして…………って!?
「こっちに向かってる!?」
「うん!!よかった〜!!サマリお姉ちゃん生きてた〜!!」
そのまま青い何かはこちらまで飛んできて…
すたっ！
「…………」じーっ
「げほっ！げほっ！……ううぅ……」
俺達の目の前で綺麗に着地した。
「…………」くいっ
「げほっ……」
「あ、ども…」
そして脇に抱えていたサマリを俺達のほうに渡してきたので受け取った。
咳込んでるのでちゃんと生きているし息している。
良かった〜。
「サマリお姉ちゃんをたすけてくれてありがとーサハギンのお姉ちゃん!!」
「…………」こくっ
目の前にいる何かは手足に青い鱗と水掻きがついてるし、魚の尾鰭の様な長い尻尾も腰から伸びている。顔は無表情だがどこか華麗さを感じ、どうみてもスク水にしか見えない服？鱗？を着ている。
これらの特徴から、アメリちゃんの言うとおり魔物『サハギン』なのだろう。教団に置いてあった図鑑で見た事あるけど、本物見るのは初めてだ。
「…ここ……危ない………」
「うわお!?」
「……何？」
「いや…なんでもないです…」
「……」じーっ
ずっと無口だったから、急に喋ったので驚いた。
「今回は…たまたま近くにいた………次…助けるの無理……気をつけて……」
「あ、はい…ありがとうございます…」
「……」ﾊﾟｼｬｯ!
そのまま俺達に注意をして川に戻っていった……
あ、そうだ……
「あの〜……」
「……何？」
「さっきの水柱は何だったのですか？」
ただ川から飛び出ただけではあんなに高く水柱は出来ないと思ったから聞いてみた。
「…………」
「……」
「………演出」ﾄﾞﾔｧ
「……」
おかしいな…このサハギンさん無表情のままなのにドヤ顔した気がする。なんか腹立つな…
「サマリお姉ちゃん！だいじょうぶ!?」
「けほっ……うん、なんとか…」
「ホント？よかった〜!!」
再び川に消えていったサハギンを見送り、サマリの様子を確認する。
全身びしょ濡れで苦しそうではあるが、特に目立った怪我はして無さそうだし命に別状はなさそうだ。
「ほっ…良かったです……」
「………あ」
「何ですか？」
「いや…なんでも…」
とりあえずサマリの無事を確認したところでホルミが口を開いた。
こいつが居た事をすっかり忘れていた……
「ごめんなさいね。リリムと一緒にいたからてっきり魔物かと……」
「けほっ……魔物なら殺すってずいぶん物騒な…クシュン！」
「それが私達勇者の使命ですから……そこにいる使命を忘れたおバカさんとは違うのです……」
「おバカさん!?」
一応背中にあるロングブレードは聖剣だからか…どうやらホルミは俺が元勇者とわかっていたらしい。
しかし…おバカさんって…ひどいな…
「ユウロお兄ちゃんはおバカさんじゃないもん!!」
アメリちゃん…キミは優しいね…そんなに好いていない俺の事を庇ってくれるなんて…
「いいえ、おバカさんです。アナタの様な魔物を殺さないだけでなく一緒にいるのですから」
「じゃあなんでアメリをころそうとするの？アメリ何もわるいことしてないよ？」
「そんなの簡単です……」
「!?」
ホルミが何を言おうとしているのかなんとなくわかった。だから俺は……
「あなた達魔物は存在している事自体g…」
「言わせねえよ!!」
ガキンッ!!
「……何ですかいきなり……危ないですよ……」
その言葉によってアメリちゃんが傷付かないように、ロングブレードでホルミに斬りかかった。
しかし、例の大きな斧『タウロ』で防がれてしまった。が、一応言葉を止めることはできたので結果オーライだ。
しかもわざわざ斧を地面に刺す形で防いでくれたので簡単には反撃されないだろう。
「もしかして……私と戦うつもりですか？」
「あんたみたいにアメリちゃんを殺そうとする奴らから護るために旅に誘われたようなものだから…な!!」
「くっ!!」
俺はロングブレードを手から離し、両手で斧を抑え込みながらホルミを蹴り飛ばした。
俺の行動に気付いたホルミは咄嗟に斧から手を離し後ろに下がり蹴りを回避したが、これによってやっかいな斧とホルミは離れたので有利に戦えるはずだ。
「……俺に注目させるから攻撃はまかせたよ…もちろん気絶する程度でな…」
「……」こくんっ
流石にこの斧を持ちあげ投げ捨てることはできないのでホルミが斧に近づかないようにしながら再び手に持ったロングブレードで斬りかかる。
もちろんホルミがギリギリでかわせる程度にわざと大きな動きでだ。狙いは斬ることじゃないからな。
「くっ！斧を私から離すとは…良い作戦ですね人殺しさん…!!」
「安心しな！俺は人殺しになるつもりは無い！あんたを気絶させるだけだ！」
「ふざけないでください……聖剣で斬りかかってきながら……」
「ふんっ！俺は当てる気は無いさ……こっちは囮だよ！」
「なんのこｔ「『マッドボム』!!」……きゃっ!?」
作戦通りホルミからは斧で死角になっていたアメリちゃんが魔法で攻撃してくれた。それによってホルミは倒れはした。
どうやらアメリちゃんの掌から放射状に撃ち出された泥の塊を相手にぶつけ爆発させ、動きを制限する魔法らしい。勇者なだけあって気絶こそはしていないが攻撃を当てられたホルミは全身泥まみれになって動きづらそうだ。
「不意打ちとは…やはり魔物は存在している事自体がｗ……」
ごつんっ！！
「……痛いです……」
「うるせーそういうのは魔物であっても子供の前で言っていいもんじゃねえんだよ馬鹿」
またアメリちゃんが傷つきそうな事を言いそうになったので頭にげんこつを落としてやった。
「アメリちゃん、全身を痺れさせて動けなくする魔法とかある？」
「あるよ！」
「じゃあ掛けといて。これ以上相手するの疲れるし、とりあえずサマリを休ませて着替えとかさせたいから」
「うん。わかった！」
そう言ってアメリちゃんはもうすでにあまり動けない勇者の前に出て…
「な、なにをする気ですか!?」
「もうアメリをおそってこないでね……『メドゥーサグレア』！」
「ぐっ!?……身体が……!?」
呪文を唱えたアメリちゃんの瞳が妖しく光り、その紅い瞳を見たホルミが身体を硬直させた。
少なくとも喋ることはできるようだし、名前からしてメドゥーサの石化能力の劣化版だろう。
「やれやれ……もう襲ってくるなよ？」
「……ふふふっ……」
「な、なんだよ…変な笑い声を出して……」
「これで勝った気にならないで下さい……転送、タウロ！」
「なっ!?」
ホルミが叫んだ瞬間、地面に刺さっていたはずの斧がホルミの右手に現れた！
「私がいつもこんな邪魔になる物を持ち運んでいるとでも思いましたか？」
どうやら転移魔法の応用でいつでも自分の手元に出せるようになっているらしい。
たしかにこんな大きなものを持ち運ぶのは大変だし、実際の戦闘においてもいくら斧とホルミを引き離しても無意味になる…これはよく考えられている。
でも……
「お前さ、身体動かないのに手元に斧移動させても意味ないだろ……」
「はっ!?しまった!!握れないし持ち上げられない!!」
先程の戦闘中に使われたらアメリちゃんが魔法を使おうとしてるのもバレただろうし、俺のロングブレードを弾くこともできただろう。そうすればきっとこちらが不利になっていたし、最悪やられていた。
しかし、アメリちゃんの魔法の効果で身体が全く動かない状態で武器を手元に移動させたところで何も出来ない。もう手遅れなのだ。
…もしかしてアホなのか？それともドジか？
「それで…私をどうする気ですか？殺さないのならば…私を魔物にでもするつもりですか？」
全てを諦めたのか若干怯えた表情と震えた声で俺に聞いてきた。
「別に…何もしないけど…アメリちゃん、ホルミを魔物にしたい？」
「ううん、アメリがすることないよ！」
「あ、そういえばこの縛りいつまで続くの？」
「1日ぐらい」
「じゃあ今から1日の間このまま放置するだけだ」
「なっ!?」
まあそれでも十分怖いよな…ホルミはさっきよりも顔を引きつらせていた。
「くぅ…今度は絶対私が勝ちます！覚悟しておいてください!!」
「おっけー。今度があったらその時はまた返り討ちにしてやるよ。今度は俺も本気出すから。せいぜい魔物に襲われないようになー」
最後に捨て台詞を吐いたので返答しておいた。
「じゃ、行こうかアメリちゃん。サマリは自分で歩けるか？」
「う、うん…なんとか…」
「じゃあさっさとこの場から離れよう。少し進んだらアメリちゃんはテント出して。サマリの服着換えさせるから」
「うん！」
で、例え動けなくても目の前に勇者が居る所でテントを出すのはあまり良くないと判断したので、サマリは辛いかもしれないけど俺達は移動することにした。
…………………………
「くしゅん!!」
「風邪引いたか？」
「いや、どうだろ？ダルさとかは無いけど…」
少し移動したところで昨日テントを張った場所と同じような広場を発見したので、そこにテントを張ってサマリを休ませることにした。
「それじゃあ出発しよう…」
「待てい！」
びしょ濡れになった服を着替えさせ、冷えた身体を温めるためにシャワーを浴びさせた。後は擦り傷や打撲をどうにかしようというところでサマリが出発しようと言いだした。
「もう私は大丈夫だから！それに動けるうちに動かないと街に着く前にさっきの人にまた襲われるかもしれないし」
「それでも、擦り傷の手当てぐらいはさせろ！こういうのって放っておくと後が大変だぞ！」
「大丈夫！こんなの唾付けとけば「治らないわ！つーかサマリは男か！」んもう…じゃあ早くしてよね」
とりあえず止めたが、サマリの言っていることは正しい。
ずっとここにいたらまたホルミは襲ってくるだろう。そうなる前に親魔物領であるテトラストに入った方が良い。
地図からすると今日中に着くことは出来無さそうだが、頑張れば明日の午前中にはたどり着くだろう。
テトラストにさえ着いてしまえばさすがにホルミも襲って来ないだろうし、最善ではある。
でも、もう少しサマリを休ませた方が良いだろう。
聞いた話だと、サマリは何の訓練もしてないただの人間…言うなれば一般人だ。無茶をさせるのはよくないだろう。
それに……
ぐうぅぅぅぅ……
「…………アメリおなかすいてないもん…」
「……」
「……」
ぐうぅぅぅぅ……
「ホントにすいてないもん……うぅ……」
サマリを気遣っているのか本人は否定しているが、さっきからアメリちゃんのお腹が壮大なオーケストラを奏でている。おやつでもあげたほうがよさそうだ。
「はぁ…しょうがない、俺が何か作るよ…」
「えっ!?ユウロも料理出来るの!?」
「サマリ程のものは無理だけど簡単なおやつなら作れるよ。たしか材料あったしホットケーキでいい？」
「え、アメリおなかすいてｎ…」
ぐうぅぅぅぅ……
「……いい？」
「うん、ありがとうユウロお兄ちゃん…」
「じゃあ食べたら出発ってことで。それでいいな？」
「「うん！」」
さて、これからどうするか決まったし早速作りますか……
…………
………
……
…
「ごちそうさま!!」
「結構おいしかったよユウロ！」
「ま、こんぐらいなら誰だってできるよ」
俺が作ったホットケーキはそこそこの評価を得られたようだ。
食べ終わったことだし、サマリも元気そうなので出発する事にしよう。
「ところでアメリちゃん、さっき言ってた事は本当なの？」
「うん。昔お母さんの知りあいが言ってた。それにあれはミノタウロスさんの魔力だよ」
「じゃあ、あれは古代の聖なる武器なんかじゃなくてただ魔物の魔力を帯びている呪いの武器ってことか…」
アメリちゃん曰く、ホルミが持っていた『コンステレーションシリーズ』は魔物が作った呪いの装備とのこと。
そして大きな斧『タウロ』は魔物『ミノタウロス』の魔力が込められているとのこと。
つまり、ホルミはいつかそう遠くない日にミノタウロスになってしまうと…
ご愁傷様である。
＝＝＝＝＝＝＝[アメリ視点]＝＝＝＝＝＝＝
「やっとついたー!!」
「結局昨日も夜遅くまで歩いて、今日も朝早くから歩いたってのに着いたのは昼前か…」
「よかった…ゲホッ……ゴホッ……」
ベリリお姉ちゃんがいたジーナを出てから3日と半分、やっとアメリたちはテトラストについた。
テトラストの入口なのにもういっぱい魔物のお姉ちゃんたちとすれちがった。ここは魔物にやさしい場所の中でも魔物が多い場所なのかな？
テトラストに入った時からたしかにお姉ちゃんの魔力を感じるけど……まださがしには行けないな……
だって……
「ゲホッ！ゴホンッ！…ぜぇ…はぁ…」
「おいサマリ、ホントに大丈夫かよ!?」
サマリお姉ちゃんが昨日のでカゼ引いちゃったらしくて朝からセキがヒドい。それになんだか苦しそう…
「とりあえず病院向かうか…」
「いいよ…ぜぇ…それよりアメリちゃんのお姉さんを…」
「アメリサマリお姉ちゃんのカゼがなおるまでお姉ちゃんに合わない！」
「えっ!?それは…」
「だからはやく元気になって！」
「…うん、わかった」
「じゃあ決まりだな。すいませーん、この近くに病院ありませんかー!?」
そんなふらふらのサマリお姉ちゃんは見ていたくないから、早くお姉ちゃんに会ってみたい気持ちをおさえて病院に行くことにした。
………
……
…
「で、結構重症だったと」
「サマリお姉ちゃんムリはだめだよ…」
「ゴホッ、ゴホッ……ううぅ…」
お医者さんにみてもらったらサマリお姉ちゃんのねつが39.0度もあるって。だからしばらくサマリお姉ちゃんは入院することになった。
「はぁ…じゃあいろいろ買い出ししてくるからおとなしく寝てろよ？」
「うん……ゴホゴホッ…」
だからアメリは今からユウロお兄ちゃんとおかいもの。旅に必要なものやもしものときのおくすりなんかを買いに行くんだ。
…まだちょっとユウロお兄ちゃんと二人きりってのはこわいな……
「ねえユウロお兄ちゃん、なんでその…ロングブレードだっけ？それもってくの？ここ安全だよ？」
「ん？ああ…ちょっとね。武器屋でもあれば売ろうかなーと」
えっ!?
「売っちゃうの!?」
「だってこれだと相手が死ぬ確率が高いだろ？だから殺傷能力が低い武器に換えようかなと」
「……ごめんなさい」
「へ？なにが？」
「なんでもない…」
どうやらホントにユウロお兄ちゃんはころそうとしないらしい…アメリまだちょっとうたがってた。
だからごめんなさいって言った。はずかしかったからごまかしたけど。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
「まいどー！」
「ロングブレードけっこう高く売れてよかったね！」
「おう！それにお手軽な武器も手に入ったぜ！」
そう言ったユウロお兄ちゃんの手には木で出来た剣みたいなものがにぎられていた。ジパングによくある木刀っていうもので、どうやらユウロお兄ちゃんの生まれたところにもあったらしいんだ。
木で出来てるからとうぜんきったりさしたり出来ないし、ドリアードさんおすみつきっていう木で作られたからものすごくがんじょうなんだって。
昨日のホルミさんのときみたいに当てないようにしてたたかう必要もなくなって本気をだせるって言ってたけど…ユウロお兄ちゃんってそんなにつよいのかなぁ？
「そんじゃあ薬品でも買いにいｋ……」
ぐうぅぅぅぅ……
「…く前に何か食べにいこっか。お金も余裕あるし。サマリには悪いけどさ」
「うう…///」
またおなかがなった。
昨日からアメリいっぱいごはん食べてもすぐおなかすいちゃう…なんでかなぁ…
………
……
…
「ご注文はお決まりですか〜？」
「俺はこんがりステーキセットで。アメリちゃんは？」
「お子さまランチAセットで!!」
「かしこまりました〜、少々お待ち下さ〜い」
ユウロお兄ちゃんといっしょにお肉屋さんに入った。
アメリはステーキとハンバーグが両方食べられるお子さまランチAセットをたのんだ。おなかすいたし、どっちも食べたいし、それにアメリおもちゃほしいもん。
「お子さまランチを頼んだ子には〜この中から〜好きなおもちゃを〜一つ選んでもらいま〜す！」
「わーい!!」
そんなにしないうちにホルスタウロスのお姉ちゃんがおもちゃがたくさん入ったかごをもってきた！
「どれにしようかな〜……ん？なんだろこれ？」
その中にあったふしぎなものに目がいった。
なんか丸いけどピラミッドみたいな…えーとたしか円すいって言うんだっけ…それの真ん中にボウがくっついている、変なもようがついている木で出来たふしぎなものがあった。
「あれ？これって独楽じゃないか？」
「こま？」
ユウロお兄ちゃんが言うにはこのふしぎなものはこまって言うらしいけど…どんなおもちゃなんだろ？
「これはこうして……ほれ」
「…わああ!!」
アメリがこまってたのに気付いたのか、ユウロお兄ちゃんがこまをアメリからとってボウの部分を指でもって、ひねってこまをかいてんさせた。
変なもようがかいてんすることによってとってもきれいなお花みたいになった！すごくきれい!!
しかもずっとまわってる!!
「これにしますか〜？」
「うん！アメリこのこまにする!!」
「え？いいのかい？もっと面白そうなのあるけど…」
「ううん、アメリはこれがいい!!自分でもまわしてあそびたい!!」
「じゃあいいか」
それに、なんかこのこま…ふしぎな感じがする…もってるといいことありそうな……なんだろ？
とにかく気になるからアメリがもってたいんだ。
「おまたせしました〜お子さまランチAセットで〜す」
「わーい！おいしそー!!いっただっきまーす!!」
「おう！落ち着いて食べろよ！」
「こちらはこんがりステーキセットで〜す」
「待ってました！じゃあ俺も食べよ！いただきます!!」
そのままユウロお兄ちゃんとおいしいお昼ごはんを二人でたのしく食べた。
なんだかユウロお兄ちゃんが恐くなくなった。
もっとなかよくなりたいな♪
…………
………
……
…
「ごちそうさま！アメリおなかいっぱい！」
「ふう…俺もお腹がいっぱいだ…」
お肉すごくおいしかったー♪
今度はサマリお姉ちゃんともいっしょに行けたらいいな…
「そんじゃあ買い物するか！」
「うん!!いこっ、ユウロお兄ちゃん!!」
アメリは右手をユウロお兄ちゃんのほうにさし出した。
「……ん？もしかして手を繋いでほしいの？」
「うん！ダメ？ユウロお兄ちゃんともっとなかよくなりたくて…」
「…ありがとアメリちゃんっ！はいっ!!」
ぎゅっ！
「…へへっ！」
「…ははっ！」
ユウロお兄ちゃんと手をつなぎながら、アメリたちはいろんなおくすりやたべものを買いにいろんなお店に行った。
ユウロお兄ちゃんの手は大きくて、あたたかかった。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
「ただいま〜！」
「いろいろと買ってきたよ〜!!」
いっぱいおかいものをしてサマリお姉ちゃんがいるおへやにかえってきたら…
「すー………すー………」
サマリお姉ちゃんはきもちよさそうにねていた。
「おっと…静かにしないとな…」
「うん……」
いつもいっしょにねてるけど、いつもアメリが先にねちゃうからサマリお姉ちゃんのねている時のかおはじめて見た…
やっぱりサマリお姉ちゃんってきれいな人だと思う…魔物じゃないのがとってもふしぎ…
サマリお姉ちゃんを魔物にしたいけど……サマリお姉ちゃんは人間でいたそうだし…アメリのわがままで魔物にしちゃったらぜったいサマリお姉ちゃんおこるから…もしかしたらアメリのことキライになっちゃうかもしれないからがまんしなきゃね…
「あ、看護師さん。サマリの具合はどうですか？」
「今は薬の効果で熱が37度代まで下がって楽になったからすやすやと寝ていますが、まだ様子見ですね」
「わかりました。では俺達は宿のほうへ行きますのでサマリをお願いします」
「はい、わかりました。何かありましたらすぐに跳んで行ってお知らせしますね」
「お願いします。じゃあ行こうかアメリちゃん」
「うん…」
アメリたちは近くにある宿で今日はねる。
本当はサマリお姉ちゃんの近くにいたいんだけど…カゼがうつるといけないからダメって。
アメリは魔物だからだいじょうぶだと思うんだけど、サマリお姉ちゃんにふたんがかかるからって言われちゃったからしょうがないよね…
ユウロお兄ちゃんはいっしょにねてくれない（アメリちゃんぐらいの女の子がお父さん以外の男の人とねるのはよくないよって言われた）し、今日は一人でねるのか…ひさしぶりだな…
まだ近くにユウロお兄ちゃんがいてくれるからいいけど…さみしいな……
はやく元気になってね、サマリお姉ちゃん。
「なぁにあれぇ……」
えーっと、とりあえず状況を確認しようか。
親魔物領『テトラスト』に向かっていた俺達は途中で昼飯のお弁当を食べていた。
そして食べ終わったところでいきなり大きな斧が上から降ってきて、当たりこそしなかったもののその斧が落ちてきたときの衝撃でサマリが吹き飛び流れがこれでもかというほど速い川に落ちてしまった。
急いで助けなきゃと思ってサマリを見失わないように追い掛けようとしたところで、女勇者のホルミが立っていた。
どうやら斧はホルミが投げた物で、しかもサマリを魔物だと思って吹き飛ばしたらしい。なんて迷惑な。
しかもサマリが吹き飛んだ事によってもの凄く怒ったアメリちゃんがあれだけ使うのを躊躇っていた攻撃系の魔法でホルミに攻撃を始めてしまうし…ちょっと怖いし…こんなことしている場合じゃないと攻撃するのをやめさせたが。
あやうく手を出してしまうところだった。アメリちゃんが素直な子で、すぐに落ち着いてくれたからよかったよ。
で、サマリを探しに行こうとしたときに大きな音が響いた。
ホルミがやったわけでもなさそうで、とりあえず振り向いてみたら……
川の少し下流のほうに20メートルは超える水柱があったと。
うん、何がなんだかさっぱりだ。
「アメリちゃん何かした？」
「ううん、アメリ何もしてないよ。ホルミさんかな？」
「いや、あの表情を見る限り彼女ではないと思うよ」
「あっ！もしかしてサマリお姉ちゃんかも!!」
「あれ？サマリってあんな事できたっけ？」
「……じゃあなんだろ？」
「なんだろな……ん？」
とりあえず突然発生した水柱をじっと見ていると……
「ねえアメリちゃん、水柱の上のほうになんか見えない？」
「ん？……あっ!!」
高く伸びる水柱の上のほうに何か青いものが見えた。
どうやら何かを抱えている人型の何かのようだ。詳しくは見えない。
それをアメリちゃんに教えたら何か気付いたようだ。
「サマリお姉ちゃんだ!!」
「へっ!?」
どうやらサマリらしい。たぶん抱えられている何かのほうだろう。
じゃあ抱えているのはもしかして…………って!?
「こっちに向かってる!?」
「うん!!よかった〜!!サマリお姉ちゃん生きてた〜!!」
そのまま青い何かはこちらまで飛んできて…
すたっ！
「…………」じーっ
「げほっ！げほっ！……ううぅ……」
俺達の目の前で綺麗に着地した。
「…………」くいっ
「げほっ……」
「あ、ども…」
そして脇に抱えていたサマリを俺達のほうに渡してきたので受け取った。
咳込んでるのでちゃんと生きているし息している。
良かった〜。
「サマリお姉ちゃんをたすけてくれてありがとーサハギンのお姉ちゃん!!」
「…………」こくっ
目の前にいる何かは手足に青い鱗と水掻きがついてるし、魚の尾鰭の様な長い尻尾も腰から伸びている。顔は無表情だがどこか華麗さを感じ、どうみてもスク水にしか見えない服？鱗？を着ている。
これらの特徴から、アメリちゃんの言うとおり魔物『サハギン』なのだろう。教団に置いてあった図鑑で見た事あるけど、本物見るのは初めてだ。
「…ここ……危ない………」
「うわお!?」
「……何？」
「いや…なんでもないです…」
「……」じーっ
ずっと無口だったから、急に喋ったので驚いた。
「今回は…たまたま近くにいた………次…助けるの無理……気をつけて……」
「あ、はい…ありがとうございます…」
「……」ﾊﾟｼｬｯ!
そのまま俺達に注意をして川に戻っていった……
あ、そうだ……
「あの〜……」
「……何？」
「さっきの水柱は何だったのですか？」
ただ川から飛び出ただけではあんなに高く水柱は出来ないと思ったから聞いてみた。
「…………」
「……」
「………演出」ﾄﾞﾔｧ
「……」
おかしいな…このサハギンさん無表情のままなのにドヤ顔した気がする。なんか腹立つな…
「サマリお姉ちゃん！だいじょうぶ!?」
「けほっ……うん、なんとか…」
「ホント？よかった〜!!」
再び川に消えていったサハギンを見送り、サマリの様子を確認する。
全身びしょ濡れで苦しそうではあるが、特に目立った怪我はして無さそうだし命に別状はなさそうだ。
「ほっ…良かったです……」
「………あ」
「何ですか？」
「いや…なんでも…」
とりあえずサマリの無事を確認したところでホルミが口を開いた。
こいつが居た事をすっかり忘れていた……
「ごめんなさいね。リリムと一緒にいたからてっきり魔物かと……」
「けほっ……魔物なら殺すってずいぶん物騒な…クシュン！」
「それが私達勇者の使命ですから……そこにいる使命を忘れたおバカさんとは違うのです……」
「おバカさん!?」
一応背中にあるロングブレードは聖剣だからか…どうやらホルミは俺が元勇者とわかっていたらしい。
しかし…おバカさんって…ひどいな…
「ユウロお兄ちゃんはおバカさんじゃないもん!!」
アメリちゃん…キミは優しいね…そんなに好いていない俺の事を庇ってくれるなんて…
「いいえ、おバカさんです。アナタの様な魔物を殺さないだけでなく一緒にいるのですから」
「じゃあなんでアメリをころそうとするの？アメリ何もわるいことしてないよ？」
「そんなの簡単です……」
「!?」
ホルミが何を言おうとしているのかなんとなくわかった。だから俺は……
「あなた達魔物は存在している事自体g…」
「言わせねえよ!!」
ガキンッ!!
「……何ですかいきなり……危ないですよ……」
その言葉によってアメリちゃんが傷付かないように、ロングブレードでホルミに斬りかかった。
しかし、例の大きな斧『タウロ』で防がれてしまった。が、一応言葉を止めることはできたので結果オーライだ。
しかもわざわざ斧を地面に刺す形で防いでくれたので簡単には反撃されないだろう。
「もしかして……私と戦うつもりですか？」
「あんたみたいにアメリちゃんを殺そうとする奴らから護るために旅に誘われたようなものだから…な!!」
「くっ!!」
俺はロングブレードを手から離し、両手で斧を抑え込みながらホルミを蹴り飛ばした。
俺の行動に気付いたホルミは咄嗟に斧から手を離し後ろに下がり蹴りを回避したが、これによってやっかいな斧とホルミは離れたので有利に戦えるはずだ。
「……俺に注目させるから攻撃はまかせたよ…もちろん気絶する程度でな…」
「……」こくんっ
流石にこの斧を持ちあげ投げ捨てることはできないのでホルミが斧に近づかないようにしながら再び手に持ったロングブレードで斬りかかる。
もちろんホルミがギリギリでかわせる程度にわざと大きな動きでだ。狙いは斬ることじゃないからな。
「くっ！斧を私から離すとは…良い作戦ですね人殺しさん…!!」
「安心しな！俺は人殺しになるつもりは無い！あんたを気絶させるだけだ！」
「ふざけないでください……聖剣で斬りかかってきながら……」
「ふんっ！俺は当てる気は無いさ……こっちは囮だよ！」
「なんのこｔ「『マッドボム』!!」……きゃっ!?」
作戦通りホルミからは斧で死角になっていたアメリちゃんが魔法で攻撃してくれた。それによってホルミは倒れはした。
どうやらアメリちゃんの掌から放射状に撃ち出された泥の塊を相手にぶつけ爆発させ、動きを制限する魔法らしい。勇者なだけあって気絶こそはしていないが攻撃を当てられたホルミは全身泥まみれになって動きづらそうだ。
「不意打ちとは…やはり魔物は存在している事自体がｗ……」
ごつんっ！！
「……痛いです……」
「うるせーそういうのは魔物であっても子供の前で言っていいもんじゃねえんだよ馬鹿」
またアメリちゃんが傷つきそうな事を言いそうになったので頭にげんこつを落としてやった。
「アメリちゃん、全身を痺れさせて動けなくする魔法とかある？」
「あるよ！」
「じゃあ掛けといて。これ以上相手するの疲れるし、とりあえずサマリを休ませて着替えとかさせたいから」
「うん。わかった！」
そう言ってアメリちゃんはもうすでにあまり動けない勇者の前に出て…
「な、なにをする気ですか!?」
「もうアメリをおそってこないでね……『メドゥーサグレア』！」
「ぐっ!?……身体が……!?」
呪文を唱えたアメリちゃんの瞳が妖しく光り、その紅い瞳を見たホルミが身体を硬直させた。
少なくとも喋ることはできるようだし、名前からしてメドゥーサの石化能力の劣化版だろう。
「やれやれ……もう襲ってくるなよ？」
「……ふふふっ……」
「な、なんだよ…変な笑い声を出して……」
「これで勝った気にならないで下さい……転送、タウロ！」
「なっ!?」
ホルミが叫んだ瞬間、地面に刺さっていたはずの斧がホルミの右手に現れた！
「私がいつもこんな邪魔になる物を持ち運んでいるとでも思いましたか？」
どうやら転移魔法の応用でいつでも自分の手元に出せるようになっているらしい。
たしかにこんな大きなものを持ち運ぶのは大変だし、実際の戦闘においてもいくら斧とホルミを引き離しても無意味になる…これはよく考えられている。
でも……
「お前さ、身体動かないのに手元に斧移動させても意味ないだろ……」
「はっ!?しまった!!握れないし持ち上げられない!!」
先程の戦闘中に使われたらアメリちゃんが魔法を使おうとしてるのもバレただろうし、俺のロングブレードを弾くこともできただろう。そうすればきっとこちらが不利になっていたし、最悪やられていた。
しかし、アメリちゃんの魔法の効果で身体が全く動かない状態で武器を手元に移動させたところで何も出来ない。もう手遅れなのだ。
…もしかしてアホなのか？それともドジか？
「それで…私をどうする気ですか？殺さないのならば…私を魔物にでもするつもりですか？」
全てを諦めたのか若干怯えた表情と震えた声で俺に聞いてきた。
「別に…何もしないけど…アメリちゃん、ホルミを魔物にしたい？」
「ううん、アメリがすることないよ！」
「あ、そういえばこの縛りいつまで続くの？」
「1日ぐらい」
「じゃあ今から1日の間このまま放置するだけだ」
「なっ!?」
まあそれでも十分怖いよな…ホルミはさっきよりも顔を引きつらせていた。
「くぅ…今度は絶対私が勝ちます！覚悟しておいてください!!」
「おっけー。今度があったらその時はまた返り討ちにしてやるよ。今度は俺も本気出すから。せいぜい魔物に襲われないようになー」
最後に捨て台詞を吐いたので返答しておいた。
「じゃ、行こうかアメリちゃん。サマリは自分で歩けるか？」
「う、うん…なんとか…」
「じゃあさっさとこの場から離れよう。少し進んだらアメリちゃんはテント出して。サマリの服着換えさせるから」
「うん！」
で、例え動けなくても目の前に勇者が居る所でテントを出すのはあまり良くないと判断したので、サマリは辛いかもしれないけど俺達は移動することにした。
…………………………
「くしゅん!!」
「風邪引いたか？」
「いや、どうだろ？ダルさとかは無いけど…」
少し移動したところで昨日テントを張った場所と同じような広場を発見したので、そこにテントを張ってサマリを休ませることにした。
「それじゃあ出発しよう…」
「待てい！」
びしょ濡れになった服を着替えさせ、冷えた身体を温めるためにシャワーを浴びさせた。後は擦り傷や打撲をどうにかしようというところでサマリが出発しようと言いだした。
「もう私は大丈夫だから！それに動けるうちに動かないと街に着く前にさっきの人にまた襲われるかもしれないし」
「それでも、擦り傷の手当てぐらいはさせろ！こういうのって放っておくと後が大変だぞ！」
「大丈夫！こんなの唾付けとけば「治らないわ！つーかサマリは男か！」んもう…じゃあ早くしてよね」
とりあえず止めたが、サマリの言っていることは正しい。
ずっとここにいたらまたホルミは襲ってくるだろう。そうなる前に親魔物領であるテトラストに入った方が良い。
地図からすると今日中に着くことは出来無さそうだが、頑張れば明日の午前中にはたどり着くだろう。
テトラストにさえ着いてしまえばさすがにホルミも襲って来ないだろうし、最善ではある。
でも、もう少しサマリを休ませた方が良いだろう。
聞いた話だと、サマリは何の訓練もしてないただの人間…言うなれば一般人だ。無茶をさせるのはよくないだろう。
それに……
ぐうぅぅぅぅ……
「…………アメリおなかすいてないもん…」
「……」
「……」
ぐうぅぅぅぅ……
「ホントにすいてないもん……うぅ……」
サマリを気遣っているのか本人は否定しているが、さっきからアメリちゃんのお腹が壮大なオーケストラを奏でている。おやつでもあげたほうがよさそうだ。
「はぁ…しょうがない、俺が何か作るよ…」
「えっ!?ユウロも料理出来るの!?」
「サマリ程のものは無理だけど簡単なおやつなら作れるよ。たしか材料あったしホットケーキでいい？」
「え、アメリおなかすいてｎ…」
ぐうぅぅぅぅ……
「……いい？」
「うん、ありがとうユウロお兄ちゃん…」
「じゃあ食べたら出発ってことで。それでいいな？」
「「うん！」」
さて、これからどうするか決まったし早速作りますか……
…………
………
……
…
「ごちそうさま!!」
「結構おいしかったよユウロ！」
「ま、こんぐらいなら誰だってできるよ」
俺が作ったホットケーキはそこそこの評価を得られたようだ。
食べ終わったことだし、サマリも元気そうなので出発する事にしよう。
「ところでアメリちゃん、さっき言ってた事は本当なの？」
「うん。昔お母さんの知りあいが言ってた。それにあれはミノタウロスさんの魔力だよ」
「じゃあ、あれは古代の聖なる武器なんかじゃなくてただ魔物の魔力を帯びている呪いの武器ってことか…」
アメリちゃん曰く、ホルミが持っていた『コンステレーションシリーズ』は魔物が作った呪いの装備とのこと。
そして大きな斧『タウロ』は魔物『ミノタウロス』の魔力が込められているとのこと。
つまり、ホルミはいつかそう遠くない日にミノタウロスになってしまうと…
ご愁傷様である。
＝＝＝＝＝＝＝[アメリ視点]＝＝＝＝＝＝＝
「やっとついたー!!」
「結局昨日も夜遅くまで歩いて、今日も朝早くから歩いたってのに着いたのは昼前か…」
「よかった…ゲホッ……ゴホッ……」
ベリリお姉ちゃんがいたジーナを出てから3日と半分、やっとアメリたちはテトラストについた。
テトラストの入口なのにもういっぱい魔物のお姉ちゃんたちとすれちがった。ここは魔物にやさしい場所の中でも魔物が多い場所なのかな？
テトラストに入った時からたしかにお姉ちゃんの魔力を感じるけど……まださがしには行けないな……
だって……
「ゲホッ！ゴホンッ！…ぜぇ…はぁ…」
「おいサマリ、ホントに大丈夫かよ!?」
サマリお姉ちゃんが昨日のでカゼ引いちゃったらしくて朝からセキがヒドい。それになんだか苦しそう…
「とりあえず病院向かうか…」
「いいよ…ぜぇ…それよりアメリちゃんのお姉さんを…」
「アメリサマリお姉ちゃんのカゼがなおるまでお姉ちゃんに合わない！」
「えっ!?それは…」
「だからはやく元気になって！」
「…うん、わかった」
「じゃあ決まりだな。すいませーん、この近くに病院ありませんかー!?」
そんなふらふらのサマリお姉ちゃんは見ていたくないから、早くお姉ちゃんに会ってみたい気持ちをおさえて病院に行くことにした。
………
……
…
「で、結構重症だったと」
「サマリお姉ちゃんムリはだめだよ…」
「ゴホッ、ゴホッ……ううぅ…」
お医者さんにみてもらったらサマリお姉ちゃんのねつが39.0度もあるって。だからしばらくサマリお姉ちゃんは入院することになった。
「はぁ…じゃあいろいろ買い出ししてくるからおとなしく寝てろよ？」
「うん……ゴホゴホッ…」
だからアメリは今からユウロお兄ちゃんとおかいもの。旅に必要なものやもしものときのおくすりなんかを買いに行くんだ。
…まだちょっとユウロお兄ちゃんと二人きりってのはこわいな……
「ねえユウロお兄ちゃん、なんでその…ロングブレードだっけ？それもってくの？ここ安全だよ？」
「ん？ああ…ちょっとね。武器屋でもあれば売ろうかなーと」
えっ!?
「売っちゃうの!?」
「だってこれだと相手が死ぬ確率が高いだろ？だから殺傷能力が低い武器に換えようかなと」
「……ごめんなさい」
「へ？なにが？」
「なんでもない…」
どうやらホントにユウロお兄ちゃんはころそうとしないらしい…アメリまだちょっとうたがってた。
だからごめんなさいって言った。はずかしかったからごまかしたけど。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
「まいどー！」
「ロングブレードけっこう高く売れてよかったね！」
「おう！それにお手軽な武器も手に入ったぜ！」
そう言ったユウロお兄ちゃんの手には木で出来た剣みたいなものがにぎられていた。ジパングによくある木刀っていうもので、どうやらユウロお兄ちゃんの生まれたところにもあったらしいんだ。
木で出来てるからとうぜんきったりさしたり出来ないし、ドリアードさんおすみつきっていう木で作られたからものすごくがんじょうなんだって。
昨日のホルミさんのときみたいに当てないようにしてたたかう必要もなくなって本気をだせるって言ってたけど…ユウロお兄ちゃんってそんなにつよいのかなぁ？
「そんじゃあ薬品でも買いにいｋ……」
ぐうぅぅぅぅ……
「…く前に何か食べにいこっか。お金も余裕あるし。サマリには悪いけどさ」
「うう…///」
またおなかがなった。
昨日からアメリいっぱいごはん食べてもすぐおなかすいちゃう…なんでかなぁ…
………
……
…
「ご注文はお決まりですか〜？」
「俺はこんがりステーキセットで。アメリちゃんは？」
「お子さまランチAセットで!!」
「かしこまりました〜、少々お待ち下さ〜い」
ユウロお兄ちゃんといっしょにお肉屋さんに入った。
アメリはステーキとハンバーグが両方食べられるお子さまランチAセットをたのんだ。おなかすいたし、どっちも食べたいし、それにアメリおもちゃほしいもん。
「お子さまランチを頼んだ子には〜この中から〜好きなおもちゃを〜一つ選んでもらいま〜す！」
「わーい!!」
そんなにしないうちにホルスタウロスのお姉ちゃんがおもちゃがたくさん入ったかごをもってきた！
「どれにしようかな〜……ん？なんだろこれ？」
その中にあったふしぎなものに目がいった。
なんか丸いけどピラミッドみたいな…えーとたしか円すいって言うんだっけ…それの真ん中にボウがくっついている、変なもようがついている木で出来たふしぎなものがあった。
「あれ？これって独楽じゃないか？」
「こま？」
ユウロお兄ちゃんが言うにはこのふしぎなものはこまって言うらしいけど…どんなおもちゃなんだろ？
「これはこうして……ほれ」
「…わああ!!」
アメリがこまってたのに気付いたのか、ユウロお兄ちゃんがこまをアメリからとってボウの部分を指でもって、ひねってこまをかいてんさせた。
変なもようがかいてんすることによってとってもきれいなお花みたいになった！すごくきれい!!
しかもずっとまわってる!!
「これにしますか〜？」
「うん！アメリこのこまにする!!」
「え？いいのかい？もっと面白そうなのあるけど…」
「ううん、アメリはこれがいい!!自分でもまわしてあそびたい!!」
「じゃあいいか」
それに、なんかこのこま…ふしぎな感じがする…もってるといいことありそうな……なんだろ？
とにかく気になるからアメリがもってたいんだ。
「おまたせしました〜お子さまランチAセットで〜す」
「わーい！おいしそー!!いっただっきまーす!!」
「おう！落ち着いて食べろよ！」
「こちらはこんがりステーキセットで〜す」
「待ってました！じゃあ俺も食べよ！いただきます!!」
そのままユウロお兄ちゃんとおいしいお昼ごはんを二人でたのしく食べた。
なんだかユウロお兄ちゃんが恐くなくなった。
もっとなかよくなりたいな♪
…………
………
……
…
「ごちそうさま！アメリおなかいっぱい！」
「ふう…俺もお腹がいっぱいだ…」
お肉すごくおいしかったー♪
今度はサマリお姉ちゃんともいっしょに行けたらいいな…
「そんじゃあ買い物するか！」
「うん!!いこっ、ユウロお兄ちゃん!!」
アメリは右手をユウロお兄ちゃんのほうにさし出した。
「……ん？もしかして手を繋いでほしいの？」
「うん！ダメ？ユウロお兄ちゃんともっとなかよくなりたくて…」
「…ありがとアメリちゃんっ！はいっ!!」
ぎゅっ！
「…へへっ！」
「…ははっ！」
ユウロお兄ちゃんと手をつなぎながら、アメリたちはいろんなおくすりやたべものを買いにいろんなお店に行った。
ユウロお兄ちゃんの手は大きくて、あたたかかった。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
「ただいま〜！」
「いろいろと買ってきたよ〜!!」
いっぱいおかいものをしてサマリお姉ちゃんがいるおへやにかえってきたら…
「すー………すー………」
サマリお姉ちゃんはきもちよさそうにねていた。
「おっと…静かにしないとな…」
「うん……」
いつもいっしょにねてるけど、いつもアメリが先にねちゃうからサマリお姉ちゃんのねている時のかおはじめて見た…
やっぱりサマリお姉ちゃんってきれいな人だと思う…魔物じゃないのがとってもふしぎ…
サマリお姉ちゃんを魔物にしたいけど……サマリお姉ちゃんは人間でいたそうだし…アメリのわがままで魔物にしちゃったらぜったいサマリお姉ちゃんおこるから…もしかしたらアメリのことキライになっちゃうかもしれないからがまんしなきゃね…
「あ、看護師さん。サマリの具合はどうですか？」
「今は薬の効果で熱が37度代まで下がって楽になったからすやすやと寝ていますが、まだ様子見ですね」
「わかりました。では俺達は宿のほうへ行きますのでサマリをお願いします」
「はい、わかりました。何かありましたらすぐに跳んで行ってお知らせしますね」
「お願いします。じゃあ行こうかアメリちゃん」
「うん…」
アメリたちは近くにある宿で今日はねる。
本当はサマリお姉ちゃんの近くにいたいんだけど…カゼがうつるといけないからダメって。
アメリは魔物だからだいじょうぶだと思うんだけど、サマリお姉ちゃんにふたんがかかるからって言われちゃったからしょうがないよね…
ユウロお兄ちゃんはいっしょにねてくれない（アメリちゃんぐらいの女の子がお父さん以外の男の人とねるのはよくないよって言われた）し、今日は一人でねるのか…ひさしぶりだな…
まだ近くにユウロお兄ちゃんがいてくれるからいいけど…さみしいな……
はやく元気になってね、サマリお姉ちゃん。
12/03/14 21:21更新 / マイクロミー
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